(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】固定用部材の取付構造
(51)【国際特許分類】
F16B 5/10 20060101AFI20240514BHJP
F16B 35/04 20060101ALI20240514BHJP
F02M 35/04 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
F16B5/10 J
F16B35/04 J
F02M35/04 Z
(21)【出願番号】P 2021028928
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森川 裕章
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-146115(JP,U)
【文献】実開昭57-049916(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/10
F16B 35/04
F02M 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品本体の固定に利用する固定用部材が同部品本体に取り付けられてなる固定用部材の取付構造において、
前記部品本体は、当該部品本体の外壁面で開口するとともに同部品本体の内部で延びる装着孔を有しており、
前記固定用部材は
、前記装着孔の延設方向において延びる板状をなすステー部
を有し、
前記ステー部
は、
前記固定用部材の延設幅方向および厚さ方向の一方である第1方向の両端
部分であって、且つ、前記装着孔の内面に押し付けられた状態で同装着孔の内部に配置される
前記両端部分と、
前記
両端部分の間に設けられて、前記固定用部材の延設幅方向および厚さ方向の他方である第2方向に突出する形状をなすとともに、弾性変形した状態、且つ弾性復元力によって突端が前記装着孔の内面に押し付けられた状態の押し付け部と、
前記ステー部に設けられて、雄ねじおよび雌ねじの一方を備えるねじ部と、を有する
ことを特徴とする固定用部材の取付構造。
【請求項2】
前記押し付け部は、
前記突端よりも前記装着孔の開口から遠い側の部分を起点に前記
ステー部の一部が部分的に曲げられた形状をなし、且つ、前記装着孔の開口に近づくに連れて同装着孔の内面に近づく態様で傾斜して延びている
請求項1に記載の固定用部材の取付構造。
【請求項3】
前記装着孔の内面における前記押し付け部の前記突端に対向する部分であり、且つ、最も前記突端の側の部分は、前記装着孔の開口から離れるに連れて前記突端に近づく態様で傾斜した傾斜面になっている
請求項2に記載の固定用部材の取付構造。
【請求項4】
前記部品本体の外壁には、前記固定用部材における前記装着孔の開口から遠い側の端部にあたる部分に、前記装着孔の内部と前記部品本体の外部とを連通する貫通孔が設けられている
請求項1~3のいずれか一項に記載の固定用部材の取付構造。
【請求項5】
前記固定用部材における前記装着孔の開口から遠い側の端部は、同装着孔の底に当接している
請求項1~4のいずれか一項に記載の固定用部材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定用部材の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、部品本体に、同部品本体を固定対象機器に固定する際に利用する固定用部材を予め取り付けておく構造が多用されている(例えば特許文献1)。
特許文献1に記載の取付構造では、部品本体としてのエアクリーナの外壁に、平板状をなす取付部が一体形成されている。また固定用部材は、断面コの字形状の金属板からなるステー部を有している。そして、上記取付構造では、断面コの字状をなすステー部の対向壁の間にエアクリーナの取付部を進入させる態様で、固定用部材のステー部がエアクリーナの取付部に嵌められている。この取付構造では、断面コの字状のステー部の対向壁が板状の取付部を挟み込むことで、固定用部材がエアクリーナに支持されている。
【0003】
固定用部材は、ステー部の対向壁に設けられる雌ねじ部材を有している。そして、この雌ねじ部材を利用して、エアクリーナは固定対象機器に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記取付構造では、エアクリーナへの固定用部材の取り付けに際して、同固定用部材のステー部が弾性変形する。このようにしてステー部が弾性変形すると、その分だけステー部、ひいては同ステー部に設けられる雌ねじ部がエアクリーナの取付部に対して傾いた状態になってしまう。したがって上記取付構造は、固定用部材の取り付けにかかる位置精度、詳しくは前記固定対象機器への固定に用いる部分(雌ねじ部材)の位置精度が低くなり易い構造になっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための固定用部材の取付構造は、部品本体の固定に利用する固定用部材が同部品本体に取り付けられてなる固定用部材の取付構造において、前記部品本体は、当該部品本体の外壁面で開口するとともに同部品本体の内部で延びる装着孔を有しており、前記固定用部材は、前記装着孔の延設方向において延びる板状をなすステー部と、前記ステー部の少なくとも一部をなすとともに、前記固定用部材の延設幅方向および厚さ方向の一方である第1方向の両端が前記装着孔の内面に押し付けられた状態で同装着孔の内部に配置される圧入部と、前記圧入部に設けられて、前記固定用部材の延設幅方向および厚さ方向の他方である第2方向に突出する形状をなすとともに、弾性変形した状態、且つ弾性復元力によって突端が前記装着孔の内面に押し付けられた状態の押し付け部と、前記ステー部に設けられて、雄ねじおよび雌ねじの一方を備えるねじ部と、を有する。
【0007】
上記構成によれば、部品本体の装着孔に固定用部材の圧入部を嵌めるといったように、部品本体への固定用部材の取り付けを行うことができる。
そして上記構成では、固定用部材のステー部の延設方向と部品本体の装着孔の延設方向とが同一になっている。これにより、固定用部材の圧入部を部品本体の装着孔に嵌める際に、同圧入部を含むステー部をその厚さ方向に弾性変形させる力が作用し難い構造になっている。こうした構成によれば、固定用部材、ひいては同固定用部材に設けられるねじ部が上記部品本体の装着孔に対して傾いた状態になることを抑えることができる。したがって、部品本体に対して固定用部材(詳しくは、そのねじ部)を高い位置精度で取り付けることができる。
【0008】
しかも上記構成によれば、固定用部材の押し付け部の突端が部品本体の装着孔の内面に押し付けられた状態になっているため、押し付け部の突端と装着孔の内面との間で発生する摩擦力によって、部品本体と固定用部材との相対移動を規制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態の取付構造が適用されるエアクリーナ本体の斜視図。
【
図4】固定用部材の(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は側断面図。
【
図5】装着孔の(a)は開口部側から見た側面図であり、(b)は(a)における5b矢視図。
【
図6】装着孔の
図5(a)の6-6線に沿った断面図。
【
図7】装着孔の
図5(a)の7-7線に沿った断面図。
【
図8】装着孔の
図5(a)の8-8線に沿った断面図。
【
図9】(a)~(c)装着状態の固定部の内部構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、固定用部材の取付構造の一実施形態について説明する。
図1に示すように、エアクリーナ本体10は、筒状をなす周壁部11と、同周壁部11の軸線方向における一方の開口を塞ぐ形状の蓋部12とを有する有蓋円筒状をなしている。蓋部12には円筒状の吸気管部13が設けられている。この吸気管部13によってエアクリーナ本体10の内部と外部とが連通されている。
図1~
図3に示すように、エアクリーナ本体10の周壁部11には4つの装着孔20が設けられている。エアクリーナ本体10は合成樹脂材料によって形成されている。なお
図1に示すエアクリーナ本体10は、内部にフィルタが収容される半割構造のエアクリーナ本体の一方の分割体を構成するものである。本実施形態では、エアクリーナ本体10が部品本体に相当する。
【0011】
エアクリーナ本体10の4つの装着孔20にはそれぞれ固定用部材30が取り付けられている。本実施形態では、一つの装着孔20と同装着孔20に設けられた固定用部材30とによって固定部14が構成されている。
図1に示すように、本実施形態では、そうした固定部14が、長方形状の仮想線を描いた場合に同長方形状の4つの角部に配置される態様で周壁部11に4つ設けられている。これら固定部14は、エアクリーナ本体10の固定対象物(例えば自動車)への固定に利用される。
【0012】
以下、各固定部14の構造について詳細に説明する。なお本実施形態では、4つの固定部14の基本構造は同一である。そのため以下では、4つの固定部14のうちの一つの構造についてのみ説明し、それ以外の3つの固定部14の構造についての説明は省略する。
【0013】
先ず、固定用部材30の構造について説明する。
図3および
図4に示すように、固定用部材30は金属板によって形成されたステー部31を有している。ステー部31は、平板状で延びるベース部32と、延設幅方向(
図4(b)の上下方向)における両端部分が一方向(
図4(b)の右方向)に90度曲がった形状の曲げ部33とを有する断面U字状で延びている。
【0014】
ステー部31には、上記装着孔20(
図3参照)の開口側(
図4(a)の左側)の部分に、金属材料からなるボルト部34が設けられている。詳しくは、ボルト部34がステー部31の挿通孔35に挿通された状態で、同ボルト部34の端部が同ステー部31に溶接固定されている。これにより、ボルト部34は上記ベース部32の厚さ方向、詳しくは上記曲げ部33の曲げ方向と反対の方向(
図4(b)の左方向)に突出した状態で同ステー部31に設けられている。ボルト部34の突端側の部分は雄ねじになっている。本実施形態では、このボルト部34の雄ねじが、エアクリーナ本体10を固定対象物に締結固定する際に利用される。
【0015】
ステー部31には、上記装着孔20(
図3参照)の開口から遠い側(
図4(a)の右側)の部分である圧入部31Aに、押し付け部36が設けられている。この押し付け部36は、ステー部31のベース部32の一部が同ベース部32の厚さ方向に曲げられた形状をなしている。これにより、押し付け部36は、ステー部31のベース部32から同ベース部32の厚さ方向において突出する形状をなしている。
【0016】
詳しくは、ステー部31のベース部32には、ボルト部34から遠ざかる方向(
図4(a)の右側)に向けて開口するU字状のスリット37が設けられている。本実施形態では、ベース部32においてU字状のスリット37に三方を囲まれた部分が押し付け部36を構成している。そして、この押し付け部36は、延設方向(
図4(a)の左右方向)における中間部分36Aにおいて厚さ方向に折り曲げられた形状をなしている。これにより、押し付け部36は、突端よりも前記装着孔20の開口部21から遠い側の部分である上記中間部分36Aを起点に曲げられた形状をなしている。そして、押し付け部36は、ボルト部34に近づくに連れてベース部32における同押し付け部36以外の部分から離れる態様、言い換えれば装着孔20(
図3参照)の内面に近づく態様で傾斜して延びている。本実施形態では、ベース部32の厚さ方向が第2方向に相当する。
【0017】
ここで、
図4(c)に示すように、固定用部材30が装着孔20に嵌められていない非装着状態での上記押し付け部36のベース部32からの突出高さを「H1」とする。また、固定用部材30が装着孔20に嵌められた装着状態(
図2に示す状態)での上記ベース部32と装着孔20の内面(詳しくは、後述する突条25の突端面25A)との隙間の長さを「L1」とする。本実施形態では、この場合、非装着状態における上記押し付け部36の突出高さH1が装着状態での上記隙間の長さL1よりも大きくなっている(H1>L1)。
【0018】
次に、エアクリーナ本体10の装着孔20の構造について説明する。
図5~
図8に示すように、エアクリーナ本体10の装着孔20は、同エアクリーナ本体10の周壁部11の外壁面において開口する開口部21を有している。装着孔20は、エアクリーナ本体10(
図1参照)の周壁部11の内部において同周壁部11の外面に沿って延びている。
【0019】
装着孔20の内面における周壁部11の外面側の部分である外側面22Aは平面状をなしている。装着孔20の側壁のうちの上記周壁部11の外周側の部分である外側壁22には、開口部21側(
図5(b)の左側)の端部が切り欠かれた形状の切り欠き部23が設けられている。この切り欠き部23は、内端面がU字状をなしている。本実施形態では、
図2に示すように、固定用部材30が装着孔20に嵌められると、この切り欠き部23の内部に固定用部材30のボルト部34が進入した状態になる。
【0020】
図5~
図7に示すように、本実施形態では、装着孔20の内面における同装着孔20の延設方向の両側にあたる部分である幅側面24の形状は、開口部21側の部分(以下、案内部20A)と、開口部21から遠い側の部分(以下、被圧入部20B)とで異なる。
【0021】
具体的には、装着孔20の入口側の部分である案内部20Aにおいては、一対の幅側面24は開口部21から遠ざかるに連れて間隔が狭くなる、いわゆる先細のテーパ形状をなす態様で延びている。
【0022】
一方、装着孔20の奥側の部分である被圧入部20Bにおいては、一対の幅側面24は略平行に延びている。ここで、
図4(a)に示すように、固定用部材30の圧入部31Aの延設方向における幅を「W1」とする。また、
図6に示すように、固定用部材30が装着孔20に嵌められていない非装着状態での上記被圧入部20Bにおける一対の幅側面24の間隔を「W2」とする。本実施形態では、非装着状態における一対の幅側面24の間隔W2が、上記圧入部31Aの延設方向における幅W1と略同一に(若しくは若干小さく)なっている。
【0023】
図5、
図6、および
図8に示すように、装着孔20の側壁における上記周壁部11の内周側の部分である内側壁26には、同装着孔20の内方に突出する二本の突条25が設けられている。これら突条25は装着孔20の延設方向(
図6の左右方向)において平行に延びている。
【0024】
本実施形態では、各突条25の突端面25Aが、固定用部材30(
図3参照)の押し付け部36の突端に対向する部分を構成している。
図8に示すように、各突条25の突端面25Aは、上記開口部21から離れるに連れて装着孔20の内面における対向面(外側面22A)に近づく態様で、言い換えれば押し付け部36(
図4(c)参照)の突端に近づく態様で、傾斜した傾斜面になっている。
【0025】
図5、
図7、および
図8に示すように、エアクリーナ本体10の周壁部11、詳しくは前記外側壁22には、装着孔20の内部とエアクリーナ本体10の外部とを連通する貫通孔15が設けられている。この貫通孔15は、エアクリーナ本体10の外壁における装着孔20の底面27に当たる部分に設けられている。
【0026】
図2および
図3に示すように、本実施形態では、固定用部材30が装着孔20に対して正規の位置に取り付けられた場合に、固定用部材30のステー部31における上記圧入部31A側の端部が装着孔20の底面27に当接した状態になる構造が採用されている。これにより、固定用部材30の装着孔20への取り付けに際して、ステー部31の先端を装着孔20の底面27に突き当てることによって、同固定用部材30の延設方向における位置が正規の位置になる構造になっている。このことから貫通孔15は、外側壁22の各部のうち、固定用部材30を正規の位置に取り付けた場合において同固定用部材30の上記開口部21から遠い側の端部、すなわちステー部31における圧入部31A側の端部にあたる部分に設けられているとも云える。
【0027】
次に、装着孔20に固定用部材30を取り付ける取付態様をその作用効果とともに説明する。
エアクリーナ本体10に固定用部材30を取り付ける際には先ず、
図3中に太線の矢印で示すように、固定用部材30のステー部31における圧入部31A側の部分を、エアクリーナ本体10の装着孔20の開口部21を介して同装着孔20の内部に進入させる。
【0028】
図9に示すように、装着孔20の開口部21側の部分である案内部20Aにおいては、同装着孔20の一対の幅側面24が同開口部21から遠ざかるに連れて間隔が狭くなる、いわゆる先細のテーパ形状をなす態様で延びている。そのため、固定用部材30の圧入部31Aが装着孔20の案内部20Aを通過する際には、先細のテーパ形状をなす一対の幅側面24によって、固定用部材30の圧入部31A、詳しくは延設幅方向における両端をなす曲げ部33が案内されるようになる。これにより、固定用部材30の圧入部31Aは、装着孔20の上記開口部21から遠い側の部分である被圧入部20Bまでスムーズに案内されるようになる。
【0029】
その後、固定用部材30の圧入部31Aは、装着孔20の被圧入部20Bに押し込まれる。本実施形態では、固定用部材30が装着孔20に嵌められていない非装着状態において、固定用部材30の圧入部31Aの延設方向における幅W1が、装着孔20の被圧入部20Bにおける両幅側面24の間隔W2と略同一に(あるいは、若干大きく)なっている。そのため、このとき固定用部材30の圧入部31Aは装着孔20の被圧入部20Bに圧入されるようになる。
【0030】
これにより、固定用部材30の圧入部31Aの延設幅方向(第1方向)における両端の曲げ部33が、装着孔20の一対の幅側面24に挟まれた状態になるとともに押し付けられた状態になる。このようにして圧入部31Aの両端の曲げ部33が装着孔20の両幅側面24によって支持されることで、固定用部材30がエアクリーナ本体10の周壁部11に支持および固定されるようになる。本実施形態では、圧入部31Aの延設幅方向が第1方向に相当する。
【0031】
本実施形態によれば、エアクリーナ本体10の装着孔20に固定用部材30の圧入部31Aを嵌めるといったように、エアクリーナ本体10への固定用部材30の取り付けを行うことができる。そして本実施形態では、固定用部材30のステー部31の延設方向とエアクリーナ本体10の装着孔20の延設方向とが同一になっている。これにより、固定用部材30の構造が、固定用部材30の圧入部31Aをエアクリーナ本体10の装着孔20に嵌める際に同圧入部31Aを含むステー部31をその厚さ方向に弾性変形させる力が作用し難い構造になっている。そのため、固定用部材30、ひいては同固定用部材30に設けられるボルト部34が上記エアクリーナ本体10の装着孔20に対して不要に傾いた状態になることを抑えることができる。したがって、エアクリーナ本体10に対して固定用部材30、詳しくはボルト部34を高い位置精度で取り付けることができる。
【0032】
また本実施形態では、非装着状態での上記押し付け部36のベース部32からの突出高さH1(
図4(c)参照)が、装着状態での上記ベース部32と前記突条25の突端面25Aとの隙間の長さL1よりも大きくなっている。そのため、固定用部材30の圧入部31Aをエアクリーナ本体10の装着孔20に嵌める過程においては、押し付け部36の突端が突条25の突端面25Aに押し付けられることによって、同押し付け部36がベース部32側に倒れる態様で弾性変形した状態になる。そして、この場合には、押し付け部36の突端が、同押し付け部36の弾性復元力によって突条25の突端面25Aに押し付けられた状態(
図9(c)に示す状態)になる。この状態では、押し付け部36の突端と突条25の突端面25Aとの間で発生する摩擦力によってエアクリーナ本体10と固定用部材30との相対移動が規制されるようになる。これにより、エアクリーナ本体10の装着孔20から固定用部材30が脱落することを抑えることができる。
【0033】
なお本実施形態では、エアクリーナ本体10が合成樹脂材料によって形成されているのに対して、固定用部材30は合成樹脂材料と比較して硬質な金属材料によって形成されている。そのため、エアクリーナ本体10の使用に伴い、その振動等に起因して、固定用部材30の押し付け部36の突端を上記突条25の突端面25Aに食い込ませる態様で同突端面25Aが変形することが見込まれる。このようにして押し付け部36の突端が上記突条25の突端面25Aに食い込んだ部分においては、同押し付け部36の突端と突条25の突端面25Aとが係合した状態になる。本実施形態では、こうした押し付け部36の突端と突条25の突端面25Aとの係合によっても、エアクリーナ本体10の装着孔20からの固定用部材30の脱落が抑えられるようになっている。
【0034】
本実施形態では、装着孔20の内部において各突条25の突端面25Aが固定用部材30の押し付け部36の突端に対向する部分を構成している。そして、各突条25の突端面25Aは、上記開口部21から離れるに連れて押し付け部36の突端に近づく態様で傾斜した傾斜面になっている。そのため、固定用部材30を取り付ける過程においては、突条25の突端面25Aによって固定用部材30の押し付け部36の突端が押圧されることにより、同押し付け部36の弾性変形量、詳しくは押し付け部36の傾斜角度が徐々に大きくなる。本実施形態によれば、このようにして固定用部材30をエアクリーナ本体10の装着孔20に嵌めることができるため、固定用部材30をエアクリーナ本体10に取り付ける作業をスムーズに行うことができる。
【0035】
また本実施形態では、固定用部材30の装着孔20への取り付けに際して、ステー部31の先端を装着孔20の底面27に突き当てることによって、同固定用部材30の延設方向における位置が正規の位置になる構造になっている。エアクリーナ本体10の周壁部11には、固定用部材30を正規の位置に取り付けた場合において同固定用部材30における開口部21から遠い側の端部にあたる部分に、装着孔20の内部とエアクリーナ本体10の外部とを連通する貫通孔15が設けられている。
【0036】
本実施形態では、固定用部材30をエアクリーナ本体10に取り付ける際に、
図9(c)中に破線の矢印で示すように、上記貫通孔15を確認用の覗き窓として利用することができる。詳しくは、この貫通孔15を介して、ステー部31の先端が装着孔20の底面27に突き当たった状態になっていること、すなわち固定用部材30が正規の位置に取り付けられていることを、作業者が目で見て容易に確認することができる。
【0037】
また本実施形態では、エアクリーナ本体10の使用に際して装着孔20の内部に進入する水分を同装着孔20の外部に排出するための水排出孔として、上記貫通孔15を利用することもできる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)固定用部材30のステー部31は装着孔20の延設方向において延びる板状をなしている。ステー部31の一部をなす圧入部31Aは、延設幅方向における両端の曲げ部33がエアクリーナ本体10の装着孔20の内面に押し付けられた状態で同装着孔20の内部に配置されている。また固定用部材30の押し付け部36が、弾性変形した状態であって、且つ自身の弾性復元力によって突条25の突端面25Aに押し付けられた状態になっている。これにより、エアクリーナ本体10に対して固定用部材30、詳しくはボルト部34を高い位置精度で取り付けることができる。
【0039】
(2)押し付け部36は、突端よりも装着孔20の開口部21から遠い側の部分を起点に圧入部31Aの一部が部分的に曲げられた形状をなすとともに、装着孔20の開口部21に近づくに連れて突条25の突端面25Aに近づく態様で傾斜して延びている。そのため、固定用部材30をエアクリーナ本体10の装着孔20に嵌める過程で、固定用部材30の押し付け部36の突端が突条25の突端面25Aに突き当たった状態になることが回避される。したがって、固定用部材30の押し付け部36を突条25の突端面25Aにならって弾性変形させつつ、同固定用部材30を装着孔20にスムーズに嵌めることができる。
【0040】
(3)装着孔20の内部において各突条25の突端面25Aが固定用部材30の押し付け部36の突端に対向する部分を構成している。そして、各突条25の突端面25Aは、上記開口部21から離れるに連れて押し付け部36の突端に近づく態様で傾斜した傾斜面になっている。これにより、固定用部材30をエアクリーナ本体10に取り付ける作業をスムーズに行うことができる。
【0041】
(4)エアクリーナ本体10には、固定用部材30が正規の位置に取り付けられた場合において同固定用部材30における前記開口部21から遠い側の端部にあたる部分に、装着孔20の内部とエアクリーナ本体10の外部とを連通する貫通孔15が設けられている。これにより、固定用部材30が正規の位置に取り付けられていることを、貫通孔15を介して作業者が目で見て容易に確認することができる。
【0042】
(5)固定用部材30が装着孔20に対して正規の位置に取り付けられた場合に、固定用部材30のステー部31における上記圧入部31A側の端部が装着孔20の底面27に当接した状態になる構造を採用した。そのため、ステー部31の先端が装着孔20の底面27に突き当たるまで固定用部材30を装着孔20に圧入するといった簡単な作業を通じて、装着孔20の延設方向における固定用部材30の取付位置の調整を行うことができる。しかも、エアクリーナ本体10の外壁における装着孔20の底面27に当たる部分に設けられた貫通孔15を介して、固定用部材30が正規の位置に取り付けられていることを作業者が容易に確認することもできる。
【0043】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0044】
・エアクリーナ本体10に対する固定用部材30の延設方向における取付位置を調整するための構成は、任意に変更することができる。こうした構成としては例えば、固定用部材30が正規の位置に取り付けられた場合に、同固定用部材30のボルト部34の外周面が上記エアクリーナ本体10の周壁部11における切り欠き部23の内面に当接した状態になる構成を採用することができる。また、固定用部材30の一部分を装着孔20の内面(または周壁部11の端面)に突き当てる構成に限らず、位置調整のための専用の治具を用いてエアクリーナ本体10に対する固定用部材30の取り付け位置を調節する構成を採用するなども可能である。
【0045】
・エアクリーナ本体10の周壁部11における貫通孔15の形成位置は任意に変更することができる。例えばエアクリーナ本体10の周壁部11における装着孔20の底面27から若干離れた位置に、貫通孔15を設けるようにしてもよい。なお、貫通孔15を固定用部材30の取付位置を確認するための覗き窓として利用するうえでは、貫通孔15は固定用部材30の一部分が装着孔20の内面に突き当たる位置に設けられることが好ましい。
【0046】
・貫通孔15を省略することができる。
・突条25の突端面25Aの形状は、前記開口部21から離れるに連れて押し付け部36の突端に近づく態様で傾斜した傾斜面にすることに限らず、任意に変更することができる。例えば突条25の突端面25Aを、装着孔20の外側面22Aと平行に延びる形状に形成したり、延設方向における断面が鋸歯形状になるように形成したりしてもよい。
【0047】
・押し付け部36の延設形状は任意に変更することができる。例えば押し付け部36を、突条25の突端面25Aに向けて凸状をなす態様で屈曲した形状(あるいは湾曲した形状)に形成してもよい。
【0048】
・固定用部材30のベース部32に金属板からなる押し付け部を溶接固定するようにしてもよい。また、固定用部材30のベース部32に、合成樹脂材料からなる押し付け部を取り付けるようにしてもよい。要は、装着状態において、押し付け部が弾性変形した状態になり、且つ自身の弾性復元力によって押し付け部の突端が装着孔20の内面に押し付けられた状態になるのであれば、押し付け部の形状や配設態様、材質は任意に変更することができる。
【0049】
・上記実施形態にかかる取付構造は、雄ねじを有するねじ部が設けられた固定用部材をエアクリーナ本体に取り付ける取付構造に限らず、雌ねじ有するねじ部が設けられた固定用部材をエアクリーナ本体に取り付ける取付構造にも適用することができる。
【0050】
・上記実施形態にかかる固定用部材の取付構造は、次の(条件A)~(条件D)の全てを満たす固定用部材の取付構造にも適用することができる。(条件A)固定用部材の圧入部が、その厚さ方向(第1方向)における両端がエアクリーナ本体の装着孔の内面に押し付けられた状態で同装着孔の内部に配置される。(条件B)押し付け部がステー部から同ステー部の延設幅方向(第2方向)において突出する形状をなしている。(条件C)押し付け部が弾性変形した状態になっている。(条件D)押し付け部の弾性復元力によって同押し付け部の突端が装着孔の内面に押し付けられた状態になっている。
【0051】
・上記実施形態にかかる取付構造は、エアクリーナ本体以外のものである部品本体に固定用部材を取り付ける取付構造にも適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10…エアクリーナ本体
11…周壁部
14…固定部
15…貫通孔
20…装着孔
21…開口部
22…外側壁
24…幅側面
25…突条
25A…突端面
26…内側壁
27…底面
30…固定用部材
31…ステー部
31A…圧入部
33…曲げ部
34…ボルト部
36…押し付け部
中間部分…36A
37…スリット