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特許7487690材料測定装置および材料測定方法および電極製造装置および電極の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】材料測定装置および材料測定方法および電極製造装置および電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20240514BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240514BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G01N21/27 F
H01M4/139
H01M4/04 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021034863
(22)【出願日】2021-03-04
(65)【公開番号】P2022135211
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】浅野 佳祐
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-65028(JP,A)
【文献】国際公開第2011/093245(WO,A1)
【文献】特開2002-365213(JP,A)
【文献】特開2011-251262(JP,A)
【文献】国際公開第2012/137675(WO,A1)
【文献】特開2011-222299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
H01M 4/00-H01M 4/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合材料に光を照射する発光部と、
前記混合材料からの光を受光する受光部と、
前記混合材料の膜厚を測定する膜厚測定部と、
制御部と、
を有し、
前記混合材料は、
溶媒と固体材料とを含有し、
前記溶媒は、
吸光度のピークを有する透光性材料であり、
前記発光部は、
前記溶媒が吸収する波長を含む光を照射し、
前記制御部は、
前記受光部により受光された光のうちの第1波長の光強度と第2波長の光強度とを取得する光強度取得部と、
前記光強度取得部により取得された前記第1波長の光強度と前記第2波長の光強度とから前記第1波長の吸光度と前記第2波長の吸光度との差である吸光度差を算出する吸光度差算出部と、
前記混合材料における前記溶媒の含有量または含有率と前記混合材料の膜厚との間の関係を示す第1検量線を記憶する第1検量線記憶部と、
前記混合材料における前記溶媒の含有量または含有率と前記吸光度差との間の関係を示す第2検量線を記憶する第2検量線記憶部と、
前記第1検量線および前記第2検量線から前記溶媒の含有量または含有率を算出する含有量算出部と、
を含み、
前記混合材料に照射される前記光の前記第1波長における光強度と前記第2波長における光強度とが等しく、
前記第1波長と前記第2波長の差は、前記第1波長における受光方向以外の方向の光による光強度の減少分と、前記第2波長における受光方向以外の方向の光による光強度の減少分とが等しいと近似できる程度に小さい、材料測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の材料測定装置において、
前記混合材料は、
前記溶媒が減少することにより膜厚が変化する第1期間と、
前記第1期間の次の期間であるとともに前記溶媒が減少することにより前記第1期間より膜厚の変化量が少ない第2期間と、
を有し、
前記含有量算出部は、
前記第1期間の場合に、
前記混合材料の膜厚と前記第1検量線記憶部により記憶された前記第1検量線とから前記溶媒の含有量または含有率を算出し、
前記第2期間の場合に、
前記吸光度差算出部により算出された前記吸光度差と前記第2検量線記憶部により記憶された前記第2検量線とから前記溶媒の含有量または含有率を算出すること
を含む材料測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の材料測定装置において、
前記制御部は、
膜厚取得部と、
期間判定部と、を有し、
前記膜厚取得部は、
前記膜厚測定部から前記混合材料の膜厚を取得し、
前記期間判定部は、
前記混合材料の膜厚が予め定めた閾値以上である場合に、
前記混合材料を前記第1期間であると判定し、
前記混合材料の膜厚が予め定めた閾値未満である場合に、
前記混合材料を前記第2期間であると判定すること
を含む材料測定装置。
【請求項4】
請求項2に記載の材料測定装置において、
前記制御部は、
膜厚取得部と、
期間判定部と、を有し、
前記膜厚取得部は、
前記膜厚測定部から前記混合材料の膜厚を取得し、
前記期間判定部は、
前記混合材料の膜厚の変化量が予め定めた閾値以上である場合に、
前記混合材料を前記第1期間であると判定し、
前記混合材料の膜厚の変化量が予め定めた閾値未満である場合に、
前記混合材料を前記第2期間であると判定すること
を含む材料測定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の材料測定装置において、
前記第2検量線記憶部は、
前記混合材料の膜厚範囲ごとに前記第2検量線を記憶し、
前記含有量算出部は、
前記混合材料の膜厚に応じた前記第2検量線を用いて前記溶媒の含有量または含有率を算出すること
を含む材料測定装置。
【請求項6】
第1面と第2面とを備える集電体の少なくとも一方に塗工層を塗工する塗工部と、
前記塗工層を乾燥させる乾燥部と、
前記塗工層に光を照射する発光部と、
前記塗工層からの光を受光する受光部と、
前記塗工層の膜厚を測定する膜厚測定部と、
制御部と、
を有し、
前記塗工層は、
溶媒と固体材料とを含有し、
前記溶媒は、
吸光度のピークを有する透光性材料であり、
前記発光部は、
前記溶媒が吸収する波長を含む光を照射し、
前記制御部は、
前記受光部により受光された光のうちの第1波長の光強度と第2波長の光強度とを取得する光強度取得部と、
前記光強度取得部により取得された前記第1波長の光強度と前記第2波長の光強度とから前記第1波長の吸光度と前記第2波長の吸光度との差である吸光度差を算出する吸光度差算出部と、
前記塗工層における前記溶媒の含有量または含有率と前記塗工層の膜厚との間の関係を示す第1検量線を記憶する第1検量線記憶部と、
前記塗工層における前記溶媒の含有量または含有率と前記吸光度差との間の関係を示す第2検量線を記憶する第2検量線記憶部と、
前記第1検量線および前記第2検量線から前記溶媒の含有量または含有率を算出する含有量算出部と、
を含み、
前記塗工層に照射される前記光の前記第1波長における光強度と前記第2波長における光強度とが等しく、
前記第1波長と前記第2波長の差は、前記第1波長における受光方向以外の方向の光による光強度の減少分と、前記第2波長における受光方向以外の方向の光による光強度の減少分とが等しいと近似できる程度に小さい、電極製造装置。
【請求項7】
溶媒と固体材料とを含有する混合材料の膜厚を測定し、
前記混合材料に前記溶媒が吸収する波長を含む光を照射し、
前記混合材料からの光を受光し、
前記溶媒は吸光度のピークを有する透光性材料であり、
受光した光のうちの第1波長の光強度と第2波長の光強度とを取得し、
前記第1波長の光強度と前記第2波長の光強度とから前記第1波長の吸光度と前記第2波
長の吸光度との差である吸光度差を算出し、
前記混合材料の膜厚から前記混合材料が、
前記溶媒が減少することにより膜厚が変化する第1期間と、
前記第1期間の次の期間であるとともに前記溶媒が減少することにより前記第1期間
より膜厚の変化量が少ない第2期間と、
のいずれであるかを判定し、
前記第1期間であると判定した場合に、
前記混合材料の膜厚と、前記混合材料における前記溶媒の含有量または含有率と前記混合材料の膜厚との間の関係を示す第1検量線と、から前記溶媒の含有量または含有率を算出し、
前記第2期間であると判定した場合に、
前記吸光度差と、前記混合材料における前記溶媒の含有量または含有率と前記吸光度差との間の関係を示す第2検量線と、から前記溶媒の含有量または含有率を算出することを含み、
前記混合材料に照射される前記光の前記第1波長における光強度と前記第2波長における光強度とが等しく、
前記第1波長と前記第2波長の差は、前記第1波長における受光方向以外の方向の光による光強度の減少分と、前記第2波長における受光方向以外の方向の光による光強度の減少分とが等しいと近似できる程度に小さい、材料測定方法。
【請求項8】
第1面と第2面とを備える集電体の少なくとも一方に溶媒と活物質とを含有する塗工層を塗工し、
前記塗工層を乾燥させつつ、
前記塗工層の膜厚を測定し、
前記塗工層に前記溶媒が吸収する波長を含む光を照射し、
前記塗工層からの光を受光し、
前記溶媒は吸光度のピークを有する透光性材料であり、
受光した光のうちの第1波長の光強度と第2波長の光強度とを取得し、
前記第1波長の光強度と前記第2波長の光強度とから前記第1波長の吸光度と前記第2波長の吸光度との差である吸光度差を算出し、
前記塗工層の膜厚から前記塗工層が、
前記溶媒が減少することにより膜厚が変化する第1期間と、
前記第1期間の次の期間であるとともに前記溶媒が減少することにより前記第1期間より膜厚の変化量が少ない第2期間と、
のいずれであるかを判定し、
前記第1期間であると判定した場合に、
前記塗工層の膜厚と、前記塗工層における前記溶媒の含有量または含有率と前記塗工層の膜厚との間の関係を示す第1検量線と、から前記溶媒の含有量または含有率を算出し、
前記第2期間であると判定した場合に、
前記吸光度差と、前記塗工層における前記溶媒の含有量または含有率と前記吸光度差との間の関係を示す第2検量線と、から前記溶媒の含有量または含有率を算出すること
を含み、
前記塗工層に照射される前記光の前記第1波長における光強度と前記第2波長における光強度とが等しく、
前記第1波長と前記第2波長の差は、前記第1波長における受光方向以外の方向の光による光強度の減少分と、前記第2波長における受光方向以外の方向の光による光強度の減少分とが等しいと近似できる程度に小さい、電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、材料測定装置および材料測定方法および電極製造装置および電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池の電極は、集電体である金属箔に正極活物質または負極活物質を積層させたものである。リチウムイオン二次電池の電極の製造工程においては、集電体である金属箔に正極活物質または負極活物質を含む塗工液を塗工し、その塗工液の層を乾燥させる。また、必要に応じて、乾燥済みの塗工層をプレスする。ここで塗工液は、正極活物質または負極活物質と結着剤とを含む。また塗工液は、必要に応じて導電助剤と増粘剤とを含む。
【0003】
そのため、原材料等の良否判定をする技術が開発されてきている。例えば、特許文献1には、電極の材料である中空活物質をNMPに浸漬し、その前後の窒素含有率を測定する技術が開示されている(特許文献1の請求項1)。その際に吸光光度法を用いる(特許文献1の段落[0031])。これにより、中空活物質の良否判定を窒素含有率の増分を用いて実施する旨が開示されている(特許文献1の段落[0010])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-6188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、乾燥後の電極の塗工層には少量の溶媒が残留する。電極は電解液に浸漬されるため、塗工層には溶媒は残留しないことが好ましい。特許文献1に記載の技術では、塗工して乾燥させた後の電極の塗工層に含まれる溶媒の量を測定し、良否判定をすることは困難である。特許文献1の技術は、そもそも溶媒を測定する技術ではない。また、仮に中空活物質の良否判定をするとしても、電極のうちの一部を抜き出して、電極の塗工層から中空活物質を取り出す必要がある。すなわち、特許文献1の技術では、非破壊検査をすることが困難である。
【0006】
また、一般に、リチウムイオン二次電池の電極に限らず、溶媒と固体材料とが混合している混合材料に対して、混合材料中の溶媒の存在量を非接触で測定することは困難である。
【0007】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、溶媒と固体材料とが混合している混合材料における乾燥途中の溶媒の存在量を非接触で測定可能な材料測定装置および材料測定方法および電極製造装置および電極の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様における材料測定装置は、混合材料に光を照射する発光部と、混合材料からの光を受光する受光部と、混合材料の膜厚を測定する膜厚測定部と、制御部と、を有する。混合材料は、溶媒と固体材料とを含有する。溶媒は、吸光度のピークを有する透光性材料である。発光部は、溶媒が吸収する波長を含む光を照射する。制御部は、受光部により受光された光のうちの第1波長の光強度と第2波長の光強度とを取得する光強度取得部と、光強度取得部により取得された第1波長の光強度と第2波長の光強度とから第1波長の吸光度と第2波長の吸光度との差である吸光度差を算出する吸光度差算出部と、混合材料における溶媒の含有量または含有率と混合材料の膜厚との間の関係を示す第1検量線を記憶する第1検量線記憶部と、混合材料における溶媒の含有量または含有率と吸光度差との間の関係を示す第2検量線を記憶する第2検量線記憶部と、第1検量線および第2検量線から溶媒の含有量または含有率を算出する含有量算出部と、を有する。混合材料に照射される光の第1波長における光強度と第2波長における光強度とが等しい。第1波長と第2波長の差は、第1波長における受光方向以外の方向の光による光強度の減少分と、第2波長における受光方向以外の方向の光による光強度の減少分とが等しいと近似できる程度に小さい。
【0009】
この材料測定装置は、溶媒と固体材料とが混合している混合材料における乾燥途中の溶媒の存在量を非接触で測定することができる。このため、例えば、混合材料を破壊する必要がない。また、材料測定装置は、混合材料における溶媒の含有量または含有率をインラインで測定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本明細書では、溶媒と固体材料とが混合している混合材料における乾燥途中の溶媒の存在量を非接触で測定可能な材料測定装置および材料測定方法および電極製造装置および電極の製造方法が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態における測定対象物M10の構造を模式的に示す図である。
図2】第1の実施形態の材料測定装置100の概略構成図である。
図3】第1の実施形態の材料測定装置100の制御系を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態における溶媒量と吸光度差との間の関係を例示するグラフである。
図5】NMPの吸光度を示すグラフである。
図6】水の吸光度を示すグラフである。
図7】第1の実施形態の材料測定装置100の制御部140が実行する処理を説明するフローチャートである。
図8】第1の実施形態の変形例における材料測定装置200の概略構成図である。
図9】第1の実施形態の変形例における材料測定装置300の概略構成図である。
図10】第2の実施形態の正極板PEおよび負極板NEの積層構造を示す図である。
図11】第2の実施形態の電極製造装置1000の概略構成図である。
図12】試験片における膜厚および溶媒量の経時変化を示すグラフである。
図13】試験片における溶媒量と吸光度差との間の関係を示すグラフである。
図14】膜厚および吸光度差と溶媒量との間の関係を示すグラフである。
図15図14から溶媒量を算出するにあたって好適な量を抜き出して描いたグラフである。
図16】膜厚と吸光度差との2つを説明変数とし溶媒量を目的変数とする検量線を用いた場合の予測精度を示すグラフである。
図17】第1期間には膜厚を説明変数とし溶媒量を目的変数とする第1検量線を用いるとともに第2期間には吸光度差を説明変数とし溶媒量を目的変数とする第2検量線を用いた場合の予測精度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施形態について、材料測定装置および材料測定方法および電極製造装置および電極の製造方法を例に挙げて説明する。しかし、本明細書の技術はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0013】
(第1の実施形態)
1.測定対象物
1-1.混合材料
図1は、第1の実施形態における測定対象物M10の構造を模式的に示す図である。測定対象物M10は、基材M11と、混合材料M12と、を有する。基材M11は、混合材料M12を支持するためのものである。混合材料M12は、溶媒M12aと固体材料M12bとを有する。
【0014】
溶媒M12aは、材料測定装置100が測定の対象とする材料である。溶媒M12aは、吸光度のピークを有する透光性材料である。溶媒M12aの吸光度は、波長依存性を有する。固体材料M12bは、非透光性粒子である。溶媒M12aは、固体材料M12bの周囲に存在する。溶媒M12aおよび固体材料M12bは、このように混合された状態で層状に積層されている。ここで、透光性とは、少なくとも一部の波長の光を透過させる性質である。
【0015】
図1は、測定対象物M10に光が照射されたときの様子を示している。図1に示すように、光L1は混合材料M12の表面の固体材料M12bで反射されている。光L2は混合材料M12の内部で反射を繰り返しながら混合材料M12の奥まで到達した後に混合材料M12の外部に進んでいる。光L2は、混合材料M12の内部を固体材料M12bに反射されながら溶媒M12aを透過している。
【0016】
1-2.乾燥
第1の実施形態においては、測定対象物M10は徐々に乾燥していく。つまり、溶媒M12aは、揮発し、時間の経過とともに減少する。材料測定装置100は、減少する溶媒M12aの含有量または含有率を測定する。
【0017】
測定対象物M10の混合材料M12は、乾燥の段階によって膜厚が変化する。測定対象物M10の混合材料M12は、第1期間と第2期間とを経て乾燥する。第2期間は、第1期間の次の期間であり、第1期間と第2期間とは連続している。
【0018】
第1期間は、混合材料M12の膜厚が変化する期間である。第1期間では、溶媒M12aが主に混合材料M12の膜厚を担っている。第1期間には溶媒M12aが揮発し、それにともなって混合材料M12の膜厚が減少する。このように、第1期間においては、溶媒M12aが減少することにより混合材料M12の膜厚が変化する。
【0019】
第2期間は、混合材料M12の膜厚がほとんど変化しない期間である。第2期間においては、混合材料M12の溶媒M12aの大部分は揮発している。第2期間では、固体材料M12bが主に混合材料M12の膜厚を担っている。このため、第2期間には溶媒M12aが揮発するが、混合材料M12の膜厚はほとんど変化しない。第2期間においては、溶媒が減少することによる膜厚の変化量が第1期間より少ない。
【0020】
2.材料測定装置
図2は、第1の実施形態の材料測定装置100の概略構成図である。材料測定装置100は、複数の材料が混合している混合材料M12における透光性材料の存在量を測定することができる。材料測定装置100は、発光部110と、受光部120と、膜厚測定部130と、制御部140と、ロールR1、R2と、を有する。
【0021】
発光部110は、測定対象物M10の混合材料M12に光を照射する光照射部である。発光部110は、ブロードな波長分布をもつ光を照射する。発光部110は、光を局所的に照射可能であるとよい。発光部110は、溶媒M12aが吸収する波長を含む光を照射する。
【0022】
受光部120は、測定対象物M10の混合材料M12からの光を受光する。受光部120は、受光した光の情報を制御部140に送信することができる。受光部120は、受光した光を波長ごとに分解可能であるとよい。受光部120は、例えば、分光光度計であるとよい。
【0023】
膜厚測定部130は、ロールR1、R2により搬送される測定対象物M10の混合材料M12の膜厚を非接触で測定することができる。膜厚測定部130は、例えば、レーザー変位計である。ロールR1、R2は、フリーロールであってもよいし、モーター等から回転駆動を受けてもよい。
【0024】
制御部140は、受光部120により受光された光に基づいて、測定対象物M10に含まれる溶媒M12aの存在量を測定する。制御部140は、受光部120により受光された光の情報を受光部120から取得することができる。また、制御部140は、発光部110の発光状態を制御してもよい。
【0025】
3.制御系
図3は、第1の実施形態の材料測定装置100の制御系を示すブロック図である。図3に示すように、制御部140は、材料情報取得部141と、膜厚取得部142と、受光光情報取得部143と、光強度取得部144と、吸光度差算出部145と、含有量算出部146と、検量線記憶部147と、期間判定部148と、材料情報記憶部149と、を有する。検量線記憶部147は、第1検量線記憶部147aと、第2検量線記憶部147bと、を有する。
【0026】
材料情報取得部141は、測定対象物M10の混合材料M12がどのような材料を含有しているかの情報を取得する。
【0027】
膜厚取得部142は、膜厚測定部130により測定された混合材料M12の膜厚を取得する。
【0028】
受光光情報取得部143は、受光部120により受光された光のスペクトルの情報を取得する。
【0029】
光強度取得部144は、受光部120により受光された光のうちの第1波長λ1の光強度I(λ1)と第2波長λ2の光強度I(λ2)とを取得する。具体的には、光強度取得部144は、受光光情報取得部143により取得された光のスペクトルから第1波長λ1と第2波長λ2とを選択するとともに、第1波長λ1の光強度I(λ1)と第2波長λ2の光強度I(λ2)とを取得する。
【0030】
吸光度差算出部145は、吸光度差ΔAを算出する。吸光度差算出部145は、光強度取得部144により取得された第1波長λ1の光強度I(λ1)と第2波長λ2の光強度I(λ2)とから第1波長λ1の吸光度A1と第2波長λ2の吸光度A2との差である吸光度差ΔA(=A1-A2)を算出する。
【0031】
含有量算出部146は、混合材料M12の膜厚が変化する第1期間の場合には、混合材料M12の膜厚と第1検量線記憶部147aに記憶された第1検量線とから溶媒M12aの含有量または含有率を算出する。含有量算出部146は、混合材料M12の膜厚がほとんど変化しない第2期間の場合には、吸光度差算出部145により算出された吸光度差ΔAと第2検量線記憶部147bに記憶された第2検量線とから溶媒M12aの含有量または含有率を算出する。第2検量線は、後述するように、膜厚範囲に応じて用意されている。含有量算出部146は、混合材料M12の膜厚に応じた第2検量線を用いて溶媒の含有量または含有率を算出する。
【0032】
第1検量線記憶部147aは、第1検量線を記憶している。第1検量線は、混合材料M12における溶媒M12aの含有量と混合材料M12の膜厚との間の関係を示している。第1検量線は、例えば、目的変数を溶媒M12aの含有量とするとともに説明変数を混合材料M12の膜厚とする回帰分析により決定された検量線である。
【0033】
第2検量線記憶部147bは、第2検量線を記憶している。第2検量線は、混合材料M12における溶媒M12aの含有量と吸光度差ΔAとの間の関係を示している。第2検量線は、例えば、目的変数を溶媒M12aの含有量とするとともに説明変数を吸光度差ΔAとする回帰分析により決定された検量線である。第2検量線は、混合材料M12の膜厚の範囲ごとに用意されている。例えば、膜厚が90μm以上100μm未満の場合の第2検量線、膜厚が80μm以上90μm未満の場合の第2検量線、が第2検量線記憶部147bに記憶されている。もちろん、膜厚の数値範囲の刻み幅は変更してよい。
【0034】
期間判定部148は、膜厚取得部142により取得された混合材料M12の膜厚から、混合材料M12が第1期間と第2期間とのいずれであるかを判定する。期間判定部148は、混合材料M12の膜厚が予め定めた閾値以上である場合に、混合材料M12が第1期間であると判定し、混合材料M12の膜厚が予め定めた閾値未満である場合に、混合材料M12が第2期間であると判定する。
【0035】
材料情報記憶部149は、第1検量線記憶部147aおよび第2検量線記憶部147bにより記憶されている検量線の材料の種類を記憶している。また、材料情報記憶部149は、混合材料M12の種類に応じて光強度取得部144が選択すべき第1波長λ1の値および第2波長λ2の値を記憶しているとよい。
【0036】
4.測定原理
4-1.ランベルト・ベールの法則
ランベルト・ベールの法則を用いる。ランベルト・ベールの法則は、次の式(1)で表される。
I=I0 exp(-εlc) ………(1)
I :透過光の強度
0 :入射光の強度
ε :モル吸収係数(m2 /mol)
l :光路長(m)
c :光が透過する物質の濃度(mol/m3
式(1)の常用対数をとることにより、次の式(2)が得られる。
A=-log(I/I0 )=εlc ………(2)
A :吸光度
【0037】
ランベルト・ベールの法則は、光が物質を透過する際に物質が吸収する光の強度の割合が一定であることを示している。また、式(2)より、吸光度Aは、モル吸光係数εと、光路長lと、光が透過する物質の濃度cと、の積である。モル吸収係数εは物質固有の値であり、光の波長に依存する。吸光度Aは、あらかじめ測定することができ、光の波長に依存する。このため、式(2)から光路長lを決定すれば、光が透過する物質の濃度を求めることができる。
【0038】
図1で説明したように、混合材料M12を有する測定対象物M10では光の反射や散乱が生じる。この場合には、受光部120に入射しない反射光や散乱光が存在し、その分だけ受光部120によって取得される光の強度が減少する。このように見かけ上の吸光度が増大するため、ランベルト・ベールの法則をそのまま適用することはできない。また、光路長lを特定することは困難である。
【0039】
4-2.二波長分光測光法
式(2)に散乱項Asを追加し、2つの波長λ1、λ2を代入すると次の式(3)、(4)が得られる。
A(λ1)=-log(I(λ1)/I0 )=ε(λ1)lc+As(λ1)
………(3)
A(λ2)=-log(I(λ2)/I0 )=ε(λ2)lc+As(λ2)
………(4)
【0040】
2つの波長λ1、λ2がある程度近い波長であると考え、As(λ1)とAs(λ2)とが等しいと近似する。そして、式(3)および式(4)の差をとると、次の式(5)が得られる。
ΔA=A(λ1)-A(λ2)
=-log(I(λ1)/I(λ2))
=(ε(λ1)-ε(λ2))lc ………(5)
ΔA:吸光度差
【0041】
式(5)を用いても、ランベルト・ベールの法則と同様に光路長lを特定することが困難である。
【0042】
4-3.第2検量線
光路長lは未知であるため、その代わりに第2検量線を用いる。つまり、式(5)と第2検量線とを用いて、混合材料M12における溶媒M12aの濃度を算出する。そのためにまず、2つの波長λ1、λ2を選定する。そして、予め準備したサンプルの吸光度差ΔA=-log(I(λ1)/I(λ2))を測定する。ここで、吸光度差ΔA=-log(I(λ1)/I(λ2))は入射光の強度I0 を含んでいない。このため、入射光の強度I0 は未知のままであってよい。また、第2検量線の説明変数が吸光度差ΔAであるため、第1波長λ1の吸光度A1(λ1)および第2波長λ2の吸光度A2(λ2)は未知のままであってよい。
【0043】
図4は、第1の実施形態における溶媒量と吸光度差ΔAとの間の関係を例示するグラフである。図4の横軸は溶媒量(wt%)である。図4の縦軸は吸光度差ΔA=-log(I(λ1)/I(λ2))である。式(5)では光が透過する物質の濃度cの単位は(mol/m3 )であるが、混合材料M12の種類と大まかな量とが分かっていれば、濃度の単位を容易に(wt%)に変換することができる。
【0044】
図4に示すように、溶媒量が増加するほど吸光度差ΔAは減少する。また、溶媒量と吸光度差ΔAとの間の関係は直線で近似できる。
【0045】
なお、第2検量線は予め導出しておき、記憶させておけばよい。
【0046】
4-4.波長の例
4-4-1.NMP
図5は、NMPの吸光度を示すグラフである。図5の横軸は光の波長である。図5の縦軸は吸光度である。ここで、NMPとは、N-メチル-2-ピロリドンである。この吸光度のグラフは、物質固有である。つまり、同種の材料について吸光度を測定すると、同様のグラフが得られる。
【0047】
図5に示すように、1720nm近傍と2280nm近傍とにピークが存在する。吸光度がゼロに近い波長領域では、NMPはその波長の光をほとんど透過させる。上記のピークの近傍では、NMPはその波長領域の光を吸収する。
【0048】
このため、選択する2つの波長として、ピークに近い波長と、吸光度がゼロに近い波長と、を選択する。例えば、波長λ1として1713nmを選択し、波長λ2として1823nmを選択する。図5に示すように、1713nmの波長の光はNMPにある程度吸収され、1823nmの波長の光はNMPにほとんど吸収されない。このように吸収度に差がある2つの波長λ1、λ2を選択することにより、測定精度は向上する。
【0049】
原理的には、選択する波長として2280nm近傍の波長を選択してもよい。ただし、2280nmという長波長の光を高精度で測定可能な素子は一般に高価である。そのため、このような素子をインライン計測装置に適用することは現実的ではない。
【0050】
4-4-2.水
図6は、水の吸光度を示すグラフである。図6の横軸は光の波長である。図6の縦軸は吸光度である。水では、1450nm近傍と1900nm近傍とにピークが存在する。そのため、例えば、波長λ1として1450nmを選択し、波長λ2として1350nmを選択することができる。
【0051】
4-4-3.波長の選択
上記のように、測定対象である溶媒M12aの吸光スペクトルに応じて、波長を自由に選択することができる。ただし、2つの波長のうちの第1の波長は、吸光度がゼロでない波長を選択する必要がある。2つの波長のうちの第2の波長は、吸光度がゼロに近いことが好ましい。例えば、第1の波長はピーク近傍の波長であり、第2の波長はピーク近傍以外の波長であるとよい。
【0052】
ここで、発光部110は、溶媒M12aが吸収する波長を含む光を照射する必要がある。また、第1の波長の吸光度A1と第2の波長の吸光度A2とは異なっている必要がある。式(5)においてΔA=0の場合には、溶媒M12aの濃度を測定することが原理的に不可能である。
【0053】
5.材料測定方法
5-1.S101
図7は、第1の実施形態の材料測定装置100の制御部140が実行する処理を説明するフローチャートである。まず、材料情報取得部141が混合材料M12の情報を取得する(S101)。これにより、材料情報取得部141は、混合材料M12が含む材料の情報を得る。つまり、材料情報取得部141は、混合材料M12が溶媒M12aと固体材料M12bとを含有しているという情報を得る。例えば、溶媒M12aが水であれば、材料情報取得部141は溶媒M12aが水であるという情報を取得する。
【0054】
5-2.S102
次に、膜厚取得部142が、膜厚測定部130により測定された混合材料M12の膜厚を取得する(S102)。
【0055】
5-3.S103
次に、期間判定部148が、第1期間と第2期間とのいずれであるかを判定する(S103)。期間判定部148は、混合材料M12の膜厚が予め定めた閾値以上である場合に(S103:Yes)、混合材料M12が第1期間であると判定するとともにS104に進む。期間判定部148は、混合材料M12の膜厚が予め定めた閾値未満である場合に(S103:No)、混合材料M12が第2期間であると判定するとともにS105に進む。
【0056】
5-4.S104
含有量算出部146は、第1検量線を用いて溶媒M12aの含有量を算出する(S104)。第1検量線は、混合材料M12における溶媒M12aの含有量と混合材料M12の膜厚との間の関係を示している。含有量算出部146は、混合材料M12の膜厚と、第1検量線とから、溶媒の含有量を算出する。
【0057】
5-5.S105
次に、発光部110が溶媒M12aと固体材料M12bとを含有する混合材料M12に溶媒M12aが吸収する波長を含む光を照射し、受光部120が混合材料M12からの光を受光する。そして、受光光情報取得部143が受光部120により受光された光の情報を取得する(S105)。この光の情報には、波長ごとの光強度の情報が含まれている。
【0058】
5-6.S106
次に、光強度取得部144は光強度を取得する。具体的には、光強度取得部144は、材料情報取得部141により取得された材料の情報から、混合材料M12が溶媒M12aと固体材料M12bとを含有するという情報を得る。そして、光強度取得部144は第1波長λ1と第2波長λ2とを選択する。その際に、材料情報記憶部149に記憶されている情報を参照してもよい。そして、光強度取得部144は、受光部120により受光された光のうちの第1波長λ1の光強度I(λ1)と第2波長λ2の光強度I(λ2)とを取得する(S106)。
【0059】
5-7.S107
次に、吸光度差算出部145は、吸光度差ΔAを算出する(S107)。吸光度差算出部145は、光強度取得部144により取得された第1波長λ1の光強度I(λ1)と第2波長λ2の光強度I(λ2)とから第1波長λ1の吸光度A1と第2波長λ2の吸光度A2との差である吸光度差ΔAを算出する。
【0060】
5-8.S108
含有量算出部146は、第2検量線を用いて溶媒M12aの含有量を算出する(S108)。含有量算出部146は、混合材料M12における溶媒M12aの含有量と吸光度差ΔAとの間の関係を示す第2検量線と、吸光度差ΔAと、から溶媒の含有量を算出する。第2検量線は、混合材料M12における溶媒M12aの含有量と吸光度差ΔAとの間の関係を示している。第2検量線は、混合材料M12の膜厚の数値範囲ごとに用意されている。このため、含有量算出部146は、膜厚取得部142により取得された混合材料M12の膜厚に相当する第2検量線を抽出するとともにその第2検量線を用いて溶媒M12aの含有量を算出する。膜厚取得部142により取得された混合材料M12の膜厚が73μmである場合に、含有量算出部146は、73μmを含む第2検量線をピックアップする。例えば、膜厚範囲が70μm以上75μm未満の第2検量線が存在すれば、含有量算出部146は、その第2検量線を採用する。
【0061】
6.第1の実施形態の効果
材料測定装置100は、溶媒M12aと固体材料M12bとが混合している混合材料M12における溶媒M12aの含有量を非接触で算出することができる。また、混合材料M12が乾燥する場合に、その乾燥の度合いによらず、混合材料M12中の溶媒M12aの含有量を算出することができる。特に、乾燥が進んで混合材料M12の膜厚がほとんど変化しないような混合材料M12に対して、高い精度で溶媒M12aの含有量を算出することができる。第1期間は溶媒M12aが膜厚を決める主要な材料であり、第2期間は固体材料M12bが膜厚を決める主要な材料である。第1期間の場合には、膜厚の値を基にして溶媒M12aの存在量を算出する。このため、この材料測定装置100の測定精度は高い。
【0062】
7.変形例
7-1.ハイパースペクトルカメラ
図8は、第1の実施形態の変形例における材料測定装置200の概略構成図である。材料測定装置200は、発光部210と、受光部220と、制御部140と、を有する。発光部210は、例えば、ハロゲンランプである。受光部220は、例えば、ハイパースペクトルカメラである。ハイパースペクトルカメラは、光を波長ごとに分光して撮影することができる。材料測定装置200は、材料測定装置100と同様に溶媒M12aの含有量を測定することができる。測定対象物M10として種々の材料を測定するためには、発光部110は幅広い波長の光を照射可能であり、受光部120は幅広い波長の光を受光可能であるとよい。また、受光部120は幅広い波長の光を分解可能であるとよい。
【0063】
7-2.2波長帯プリズム分光カメラ
図9は、第1の実施形態の変形例における材料測定装置300の概略構成図である。材料測定装置300は、発光部210と、受光部320と、制御部140と、を有する。受光部320は、例えば、2波長帯プリズム分光カメラとバンドパスフィルタとを有する。溶媒M12aの種類が、例えば、水と決まっている場合には、測定に用いる2波長を予め決定することができる。この場合には、2波長帯プリズム分光カメラとバンドパスフィルタとを用いることにより、第1波長λ1の吸光度A1と第2波長λ2の吸光度A2とを測定することができる。2波長帯プリズム分光カメラの代わりに2台のカメラを用いてもよい。
【0064】
7-3.期間判定部
期間判定部148は、混合材料M12の膜厚の変化量が予め定めた閾値以上である場合に、混合材料M12を第1期間であると判定し、混合材料M12の膜厚の変化量が予め定めた閾値未満である場合に、混合材料M12を第2期間であると判定してもよい。
【0065】
7-4.状態判定部
材料測定装置100は、期間判定部148の代わりに、状態判定部を有していていもよい。状態判定部は、混合材料M12が第1状態または第2状態のいずれであるかを判定する。第1状態は、混合材料M12の第1期間に対応する。第2状態は、混合材料M12の第2期間に対応する。状態判定部は、第1状態から第2状態に移行するところを確認しなくてもよい。混合材料M12の膜厚の変化量から、混合材料M12が第1状態または第2状態のいずれであるかを判定する。その際には、別途閾値を設定すればよい。
【0066】
7-5.検量線記憶部
検量線記憶部147は、多数の材料に対する検量線を記憶していることが好ましい。より多くの材料を測定することができるからである。第2検量線記憶部147bは、混合材料M12における溶媒M12aおよび固体材料M12bの複数の組み合わせに対する第2検量線を記憶しているとよい。
【0067】
材料測定装置100が利用する第2検量線は、溶媒M12aのみに対する第2検量線ではなく、溶媒M12aおよび固体材料M12bを有する混合材料M12に対する第2検量線であるためである。
【0068】
7-6.含有率
材料測定装置100は、溶媒M12aの含有率を測定することができる。そのためには、含有量算出部146は、材料情報取得部141または材料情報記憶部149から材料の情報を取得すればよい。含有量算出部146は、混合材料M12の材料の質量比等から溶媒M12aの含有率を算出することができる。第2検量線記憶部147bは、目的変数を溶媒M12aの含有率とし、説明変数を吸光度差ΔAとする回帰分析により決定された第2検量線を記憶しているとよい。第2検量線記憶部147bは、目的変数を溶媒M12aの含有量または含有率とし、説明変数を吸光度差ΔAとする回帰分析により決定された第2検量線を記憶している。含有量算出部146は、吸光度差算出部145により算出された吸光度差ΔAと第2検量線記憶部147bにより記憶された第2検量線とから溶媒の含有量または含有率を算出することができる。
【0069】
7-7.検量線
検量線は、回帰分析以外のその他の方法により導出してもよい。検量線を導出するために、機械学習済みのモデルを用いてもよい。
【0070】
7-8.基材
材料測定装置100は、基材が存在しない混合材料M12を測定することができる。このため、基材M11は必ずしも必要ではない。
【0071】
7-9.組み合わせ
上記の変形例を自由に組み合わせてよい。
【0072】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、電極製造装置が電極の残留溶媒を測定する。つまり、第2の実施形態では、測定対象物は、リチウムイオン二次電池の電極である。
【0073】
1.電極
1-1.電極の構造
電極は、正極板と負極板とがセパレータを介して交互に配置されている。
【0074】
図10は、第2の実施形態の正極板PEおよび負極板NEの積層構造を示す図である。正極板PEは、リチウムイオン二次電池の正極板である。正極板PEは、集電体P1と、塗工層P2と、を有する。集電体P1は、第1面P1aと第2面P1bとを有する。第2面P1bは第1面P1aの反対側の面である。塗工層P2は、集電体P1の第1面P1aおよび第2面P1bの上に形成されている。
【0075】
集電体P1は、金属箔である。集電体P1は、例えば、アルミニウム箔である。塗工層P2は、正極活物質と、導電助剤と、結着剤と、を含有する。正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、三元系材料である。導電助剤は、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラックである。結着剤は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)である。
【0076】
負極板NEは、リチウムイオン二次電池の負極板である。負極板NEは、集電体N1と、塗工層N2と、を有する。集電体N1は、第1面N1aと第2面N1bとを有する。第2面N1bは第1面N1aの反対側の面である。塗工層N2は、集電体N1の第1面N1aおよび第2面N1bの上に形成されている。
【0077】
集電体N1は、金属箔である。集電体N1は、例えば、銅箔である。塗工層N2は、負極活物質と、結着剤と、を含有する。負極活物質は、例えば、黒鉛などの炭素材料である。結着剤は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)である。
【0078】
塗工層P2の膜厚は、例えば、30μm以上200μm以下である。車載用のリチウムイオン二次電池における塗工層P2の膜厚は、例えば、35μm以上75μm以下である。負極板NEの塗工層N2の膜厚は正極板PEの塗工層P2の膜厚と同程度である。もちろん、負極板NEの塗工層N2の膜厚は正極板PEの塗工層P2の膜厚と異なっていてもよい。
【0079】
1-2.残留溶媒
正極板PEは、集電体P1に正極活物質等を溶媒に分散させたスラリーを塗工し、乾燥させることにより製造される。負極板NEは、集電体N1に負極活物質等を溶媒に分散させたスラリーを塗工し、乾燥させることにより製造される。しかしながら、乾燥条件および乾燥時の環境によっては正極板PEの塗工層P2および負極板NEの塗工層N2に微量の溶媒が残留するおそれがある。
【0080】
リチウムイオン二次電池では、正極板PEおよび負極板NEは電解液等に浸漬される。このため、このような残留溶媒は存在しないほうが好ましい。実際には、前述のように正極板PEの塗工層P2および負極板NEの塗工層N2には、微量の溶媒が残留する。
【0081】
リチウムイオン二次電池の品質管理のために、正極板PEの塗工層P2および負極板NEの塗工層N2における残留溶媒を測定することが好ましい。活物質等を含む塗工液の溶媒は、例えば、水、NMPである。これらの溶媒は、溶媒M12aに該当する。正極活物質および負極活物質は、固体材料M12bに該当する。塗工層P2および塗工層N2は、溶媒M12aと固体材料M12bとを含有する混合材料M12の一種である。
【0082】
2.電極製造装置
図11は、第2の実施形態の電極製造装置1000の概略構成図である。電極製造装置1000は、集電体P1に塗工層P2を塗工して乾燥させる塗工乾燥装置である。電極製造装置1000は、塗工部1100と、乾燥炉1200と、材料測定装置100と、を有する。材料測定装置100は、第1の実施形態と同様の構成である。
【0083】
塗工部1100は、集電体P1の第1面P1aまたは第2面P1bに塗工層を塗工する。塗工部1100は、塗工用ダイ1110と、バックアップロール1120と、を有する。塗工用ダイ1110は、バックアップロール1120に支持されつつ搬送される集電体P1に塗工液を塗工する。塗工液は、活物質と結着剤とを含む。
【0084】
乾燥炉1200は、集電体P1の上の塗工層P2を乾燥させる乾燥部である。乾燥炉1200は、送風部1210を有する。送風部1210は、集電体P1の搬送方向に対して垂直である上下方向から交互に集電体P1に熱風を吹き付けることができるようになっている。
【0085】
発光部110は、塗工層P2に光を照射する。受光部120は、塗工層P2からの光を受光する。そして、制御部140の含有量算出部146は、膜厚測定部130により測定された塗工層P2の膜厚と、吸光度差算出部145により算出された吸光度差ΔAと、検量線記憶部147により記憶された検量線と、から溶媒M12aの含有量または含有率を算出する。
【0086】
電極製造装置1000は、同様にして負極板NEを製造することができる。
【0087】
3.電極の製造方法
塗工部1100の塗工用ダイ1110は、バックアップロール1120に支持されつつ搬送される集電体P1の第1面P1aに塗工液を塗工する。乾燥炉1200の送風部1210は、集電体P1の上の塗工層P2を乾燥させる。
【0088】
次に、膜厚測定部130が、塗工層P2の膜厚を測定する。そして、材料測定装置100の発光部110が集電体P1の第1面P1aの側の塗工層P2に光を照射する。受光部120が塗工層P2からの光を受光する。制御部140が、残留溶媒の存在量を測定する。
【0089】
第2面P1bにも塗工層P2を形成するとともに、材料測定装置100による測定を実施する。これにより、正極板PEが製造される。また、同様に、負極板NEを製造する。
【0090】
溶媒の含有量または含有率が予め定めた閾値以上である場合に、その塗工層を有する電極を不良品と判断し、溶媒の含有量または含有率が予め定めた閾値未満である場合に、その塗工層を有する電極を良品と判断する。
【0091】
そして、良品と判断された正極板PEおよび負極板NEを後工程にまわし、不良品と判断された正極板PEおよび負極板NEを後工程にまわさないようにすればよい。
【0092】
4.第2の実施形態の効果
第2の実施形態の電極製造装置1000は、正極板PEおよび負極板NEを製造することができるとともに塗工層P2および塗工層N2の内部の残留溶媒の含有量または含有率を測定することができる。電極製造装置1000は、正極板PEおよび負極板NEの残留溶媒を非破壊・非接触で測定することができる。
【0093】
5.変形例
5-1.残留溶媒の含有量または含有率の最大値
電極製造装置1000は、正極板PEおよび負極板NEの位置とその位置での残留溶媒の含有量または含有率との情報を有する。このため、残留溶媒の存在量の最大値を正極板PEおよび負極板NEの良否判定に用いることができる。この場合には、残留溶媒の含有量または含有率の最大値が予め定めた閾値以上である場合には、その正極板PEまたは負極板NEを不良品であると判断し、残留溶媒の含有量または含有率の最大値が予め定めた閾値未満である場合には、その正極板PEまたは負極板NEを良品であると判断する。
【0094】
5-2.再度の乾燥
残留溶媒の含有量または含有率の最大値が予め定めた閾値以上である場合に、その正極板PEまたは負極板NEを再度乾燥させてもよい。
【0095】
5-3.正極板および負極板の部分的な切除
電極製造装置1000は、箔状の正極板PEの位置と残留溶媒の存在量との関係性の情報を取得することができる。そのため、正極板PEおよび負極板NEについて残留溶媒が多い部分を部分的に切除してもよい。
【0096】
5-4.乾燥炉の再設定
乾燥炉1200の内部の露点または炉内温度、送風部1210が噴き出す熱風の温度等、乾燥炉1200の各種の設定を変更してもよい。つまり、材料測定装置100による測定結果を乾燥炉1200の各種の設定にフィードバックするのである。これにより、例えば、電極製造装置1000により製造される正極板PEおよび負極板NEの品質が、気候等の影響を受けにくくすることができる。
【0097】
5-5.バックアップロール
塗工部は、バックアップロール1120上の集電体P1に塗工する方式でなくともよい。また、乾燥炉は、集電体P1上の塗工液に熱風を吹き付ける方式でなくてもよい。塗工部および乾燥炉については、第2の実施形態以外のものを用いてもよい。
【0098】
5-6.片面塗工
正極板および負極板は、両面塗工でなく片面塗工であってもよい。片面塗工の電極に対して、材料測定装置100は、同様に残留溶媒を測定することができる。塗工部は、第1面P1aと第2面P1bとを備える集電体P1の少なくとも一方に塗工層を塗工する。
【0099】
5-7.組み合わせ
上記の変形例を自由に組み合わせてよい。
【0100】
(実施形態の組み合わせ)
第1の実施形態から第2の実施形態までについて変形例を含めて自由に組み合わせてよい。
【0101】
(実験)
1.試験片の製作
正極板を製作した。集電体として厚さ5mmのアルミニウム板を用いた。アルミニウム板が十分に厚いため、実験においてたわみや傾き等の影響は極力排除される。スラリーは、正極の塗工層となる材料である。スラリーは、正極活物質と導電助剤と結着剤と溶媒とを含む。正極活物質として、ニッケル-マンガン-コバルト酸リチウム(LiNiMnCoO2 )を用いた。導電助剤としてアセチレンブラックを用いた。結着剤(バインダ)として、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた。溶媒としてNMPを用いた。正極スラリーの固形分濃度は53.5wt%であった。
【0102】
まず、PVdFをNMPに投入した溶液を作製した。次に、その溶液にアセチレンブラックを投入して混ぜ合わせた。その後、その混合物を自転・公転ミキサーで撹拌した。その混合物にニッケル-マンガン-コバルト酸リチウムを添加し、撹拌してスラリーを製造した。アルミニウム板にスラリーを塗布した。
【0103】
2.測定方法
発光部としてハロゲンランプを用い、受光部としてハイパースペクトルカメラを用いた。また、膜厚測定部として変位センサを用いた。試験片を載置するステージは、受光部が試験片からの光を受光可能な位置と、膜厚測定部が試験片の膜厚を測定可能な位置と、の間で移動可能なようにした。試験片は、ハロゲンランプにより光を照射されるとともに、熱を与えられて乾燥される。そのため、試験片はハロゲンランプの近くに一定時間毎に配置されることとなる。
【0104】
3.乾燥プロファイル
図12は、試験片における膜厚および溶媒量の経時変化を示すグラフである。図12の横軸は時間である。図12の縦軸は膜厚または溶媒量である。図12の破線は試験片の膜厚を示している。図12の点線は溶媒量を示している。図12に示すように、溶媒が揮発することにより試験片の膜厚は薄くなり、所定の膜厚で一定値をとる。この実験では、試験片の膜厚が70μm程度で一定になった。一方、膜厚の減少が停止した後にも溶媒量は減少し続けた。この実験では、溶媒量が約18wt%以下の場合に、試験片の膜厚がほぼ一定となった。
【0105】
4.吸光度差と溶媒量との間の関係
図13は、試験片における溶媒量と吸光度差との間の関係を示すグラフである。図13の横軸は溶媒量である。図13の縦軸は吸光度差である。図13においては、1713nmの波長と1823nmの波長とを2つの波長として採用し、吸光度差を測定した。また、吸光度差と乾燥後期における溶媒量との間の関係について単回帰分析した。説明変数が吸光度差であり、目的変数が溶媒量である。図13に示すように、非常に精度の高い検量線が得られたと考えられる。なお、図13では、試験片の膜厚は考慮されていない。
【0106】
5.第1検量線および第2検量線
図14は、膜厚および吸光度差と溶媒量との間の関係を示すグラフである。図14の横軸は溶媒量(wt%)である。図14の縦軸は吸光度差または膜厚である。乾燥により溶媒量は徐々に減少する。つまり、図14において、時間の経過とともに横軸の右側の状態から左側の状態に移行する。実際に膜厚に着目すると、乾燥の前半では膜厚が線形的に減少し、乾燥の後半では膜厚がほとんど変化しない。
【0107】
乾燥の前半において、吸光度差は、乾燥の経過とともに一旦上昇した後に下降する。乾燥の後半において、吸光度差は、乾燥の経過とともに線形的に上昇する。
【0108】
図14に示すように、乾燥の前半においては、膜厚が線形的に変化しており、吸光度差が一旦上昇した後に下降する。このため、乾燥の前半においては、吸光度差と溶媒量とが一対一で対応していない。これに対して、膜厚は溶媒量に対して、一対一で対応している。すなわち、乾燥の前半においては、膜厚と溶媒量とが一対一で対応しており、溶媒量を算出するにあたって、膜厚が好適な指標であることを示している。
【0109】
図14に示すように、乾燥の後半においては、膜厚が溶媒量によらずほぼ一定値である。吸光度差が上昇するほど、溶媒量が減少する。このように、乾燥の後半においては、膜厚と溶媒量とが一対一で対応していない。そして、吸光度差と溶媒量とが一対一で対応している。このため、乾燥の後半においては、溶媒量を算出するにあたって、吸光度差と溶媒量が好適な指標であることを示している。
【0110】
図15は、図14から溶媒量を算出するにあたって好適な量を抜き出して描いたグラフである。図15の横軸および縦軸は図14と同様である。図15に示すように、第1期間では膜厚と溶媒量との間の関係を示す第1検量線を用いるとよい。第2期間では吸光度差と溶媒量との間の関係を示す第2検量線を用いるとよい。
【0111】
6.溶媒量の算出
2つの方法を用いて溶媒量を算出した。第1の方法では、膜厚と吸光度差との2つを説明変数とし溶媒量を目的変数とする検量線を用いる。第2の方法では、第1の実施形態の方法を用いる。すなわち、第1期間には膜厚を説明変数とし溶媒量を目的変数とする第1検量線を用いる。第2期間には吸光度差を説明変数とし溶媒量を目的変数とする第2検量線を用いる。
【0112】
図16は、膜厚と吸光度差との2つを説明変数とし溶媒量を目的変数とする検量線を用いた場合の予測精度を示すグラフである。図16の横軸は溶媒量の実測値(wt%)である。図16の縦軸は溶媒量の予測値である。予測値を算出するにあたってリーブワンアウト法を用いた。このときの平均二乗誤差は5.99wt%であった。
【0113】
図17は、第1期間には膜厚を説明変数とし溶媒量を目的変数とする第1検量線を用いるとともに第2期間には吸光度差を説明変数とし溶媒量を目的変数とする第2検量線を用いた場合の予測精度を示すグラフである。図17の横軸は溶媒量の実測値(wt%)である。図17の縦軸は溶媒量の予測値である。予測値を算出するにあたってリーブワンアウト法を用いた。このときの平均二乗誤差は1.39wt%であった。
【0114】
7.実験のまとめ
第1期間には膜厚を説明変数とし溶媒量を目的変数とする第1検量線を用いるとともに第2期間には吸光度差を説明変数とし溶媒量を目的変数とする第2検量線を用いた場合には、高い精度で溶媒量を測定することができる。
【0115】
(付記)
第1の態様における材料測定装置は、混合材料に光を照射する発光部と、混合材料からの光を受光する受光部と、混合材料の膜厚を測定する膜厚測定部と、制御部と、を有する。混合材料は、溶媒と固体材料とを含有する。溶媒は、吸光度のピークを有する透光性材料である。発光部は、溶媒が吸収する波長を含む光を照射する。制御部は、受光部により受光された光のうちの第1波長の光強度と第2波長の光強度とを取得する光強度取得部と、光強度取得部により取得された第1波長の光強度と第2波長の光強度とから第1波長の吸光度と第2波長の吸光度との差である吸光度差を算出する吸光度差算出部と、混合材料における溶媒の含有量または含有率と混合材料の膜厚との間の関係を示す第1検量線を記憶する第1検量線記憶部と、混合材料における溶媒の含有量または含有率と吸光度差との間の関係を示す第2検量線を記憶する第2検量線記憶部と、第1検量線および第2検量線から溶媒の含有量または含有率を算出する含有量算出部と、を有する。
【0116】
第2の態様における材料測定装置においては、混合材料は、溶媒が減少することにより膜厚が変化する第1期間と、第1期間の次の期間であるとともに溶媒が減少することにより第1期間より膜厚の変化量が少ない第2期間と、を有する。含有量算出部は、第1期間の場合に、混合材料の膜厚と第1検量線記憶部により記憶された第1検量線とから溶媒の含有量または含有率を算出し、第2期間の場合に、吸光度差算出部により算出された吸光度差と第2検量線記憶部により記憶された第2検量線とから溶媒の含有量または含有率を算出する。
【0117】
第3の態様における材料測定装置においては、制御部は、膜厚取得部と、期間判定部と、を有する。膜厚取得部は、膜厚測定部から混合材料の膜厚を取得する。期間判定部は、混合材料の膜厚が予め定めた閾値以上である場合に、混合材料を第1期間であると判定し、混合材料の膜厚が予め定めた閾値未満である場合に、混合材料を第2期間であると判定する。
【0118】
第4の態様における材料測定装置においては、制御部は、膜厚取得部と、期間判定部と、を有する。膜厚取得部は、膜厚測定部から混合材料の膜厚を取得する。期間判定部は、混合材料の膜厚の変化量が予め定めた閾値以上である場合に、混合材料を第1期間であると判定し、混合材料の膜厚の変化量が予め定めた閾値未満である場合に、混合材料を第2期間であると判定する。
【0119】
第5の態様における材料測定装置においては、第2検量線記憶部は、混合材料の膜厚範囲ごとに第2検量線を記憶する。含有量算出部は、混合材料の膜厚に応じた第2検量線を用いて溶媒の含有量または含有率を算出する。
【0120】
第6の態様における電極製造装置は、第1面と第2面とを備える集電体の少なくとも一方に塗工層を塗工する塗工部と、塗工層を乾燥させる乾燥部と、塗工層に光を照射する発光部と、塗工層からの光を受光する受光部と、塗工層の膜厚を測定する膜厚測定部と、制御部と、を有する。塗工層は、溶媒と固体材料とを含有する。溶媒は、吸光度のピークを有する透光性材料である。発光部は、溶媒が吸収する波長を含む光を照射する。制御部は、受光部により受光された光のうちの第1波長の光強度と第2波長の光強度とを取得する光強度取得部と、光強度取得部により取得された第1波長の光強度と第2波長の光強度とから第1波長の吸光度と第2波長の吸光度との差である吸光度差を算出する吸光度差算出部と、塗工層における溶媒の含有量または含有率と塗工層の膜厚との間の関係を示す第1検量線を記憶する第1検量線記憶部と、塗工層における溶媒の含有量または含有率と吸光度差との間の関係を示す第2検量線を記憶する第2検量線記憶部と、第1検量線および第2検量線から溶媒の含有量または含有率を算出する含有量算出部と、を含有する。
【0121】
第7の態様における材料測定方法は、溶媒と固体材料とを含有する混合材料の膜厚を測定する。混合材料に溶媒が吸収する波長を含む光を照射し、混合材料からの光を受光する。溶媒は吸光度のピークを有する透光性材料である。受光した光のうちの第1波長の光強度と第2波長の光強度とを取得する。第1波長の光強度と第2波長の光強度とから第1波長の吸光度と第2波長の吸光度との差である吸光度差を算出する。混合材料の膜厚から混合材料が、溶媒が減少することにより膜厚が変化する第1期間と、第1期間の次の期間であるとともに溶媒が減少することにより第1期間より膜厚の変化量が少ない第2期間と、のいずれであるかを判定する。第1期間であると判定した場合に、混合材料の膜厚と、混合材料における溶媒の含有量または含有率と混合材料の膜厚との間の関係を示す第1検量線と、から溶媒の含有量または含有率を算出する。第2期間であると判定した場合に、吸光度差と、混合材料における溶媒の含有量または含有率と吸光度差との間の関係を示す第2検量線と、から溶媒の含有量または含有率を算出する。
【0122】
第8の態様における電極の製造方法は、第1面と第2面とを備える集電体の少なくとも一方に溶媒と活物質とを含有する塗工層を塗工する。塗工層を乾燥させつつ、塗工層の膜厚を測定し、塗工層に溶媒が吸収する波長を含む光を照射し、塗工層からの光を受光する。溶媒は吸光度のピークを有する透光性材料である。受光した光のうちの第1波長の光強度と第2波長の光強度とを取得する。第1波長の光強度と第2波長の光強度とから第1波長の吸光度と第2波長の吸光度との差である吸光度差を算出する。塗工層の膜厚から塗工層が、溶媒が減少することにより膜厚が変化する第1期間と、第1期間の次の期間であるとともに溶媒が減少することにより第1期間より膜厚の変化量が少ない第2期間と、のいずれであるかを判定する。第1期間であると判定した場合に、塗工層の膜厚と、塗工層における溶媒の含有量または含有率と塗工層の膜厚との間の関係を示す第1検量線と、から溶媒の含有量または含有率を算出する。第2期間であると判定した場合に、吸光度差と、塗工層における溶媒の含有量または含有率と吸光度差との間の関係を示す第2検量線と、から溶媒の含有量または含有率を算出する。
【符号の説明】
【0123】
100…材料測定装置
110…発光部
120…受光部
130…膜厚測定部
140…制御部
M10…測定対象物
M11…基材
M12…混合材料
M12a…溶媒
M12b…固体材料
図1
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