IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 5/02 20060101AFI20240514BHJP
   F25B 5/00 20060101ALI20240514BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240514BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
F25B5/02 B
F25B5/00 B
F25B1/00 321L
F25B13/00 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021060963
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156990
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩治
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-219133(JP,A)
【文献】特開2013-002749(JP,A)
【文献】特開2008-196775(JP,A)
【文献】特開2010-060144(JP,A)
【文献】特開2001-272114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00-49/04
B60H 1/22
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクル装置であって、
冷媒が流れる冷媒循環通路(21)と、
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された吐出冷媒を熱源として、空調対象空間へ送風される送風空気を加熱する加熱部(40、44)と、
前記加熱部から流出した冷媒を減圧させる暖房用膨張弁(14a)と、
前記暖房用膨張弁から流出した冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器(16)と、
前記加熱部から流出した冷媒を減圧させる冷房用膨張弁(14b)と、
前記冷房用膨張弁から流出した冷媒を蒸発させて、前記加熱部にて加熱される前の前記送風空気を冷却する室内蒸発器(18)と、
前記加熱部から流出した冷媒を減圧させる冷却用膨張弁(54)と、
前記冷却用膨張弁から流出した冷媒を蒸発させて、冷却対象物を冷却する冷却部(51、55、57、58、59)と、
前記冷媒循環通路を開閉する開閉弁(15a、15b)と、
前記暖房用膨張弁、前記冷房用膨張弁、前記冷却用膨張弁それぞれの開口面積を変更するとともに、前記開閉弁の作動を制御することで運転モードを切り替える制御装置(60)と、を備え、
前記制御装置は、
前記運転モードを、冷媒を前記暖房用膨張弁および前記冷房用膨張弁に流して減圧し、前記冷却用膨張弁に流さない除湿暖房モードと、冷媒を少なくとも前記冷却用膨張弁に流して減圧する冷却対象物冷却モードと、冷媒を前記暖房用膨張弁、前記冷房用膨張弁、前記冷却用膨張弁に流して減圧する除湿暖房+冷却モードに切り替え可能であって、
前記除湿暖房+冷却モードで動作を開始する動作開始タイミングにおける前記暖房用膨張弁および前記冷房用膨張弁それぞれの開口面積の合計値である除湿合成面積と、前記冷却用膨張弁の開口面積との合計値である合成面積を、仮に前記動作開始タイミングに前記除湿暖房モードで動作を開始させたとした場合における冷凍サイクルのサイクル成績係数が極大値に近づくように算出した前記暖房用膨張弁および前記冷房用膨張弁それぞれの開口面積の合計値である最適除湿合成面積と、仮に前記動作開始タイミングに前記冷却対象物冷却モードで動作を開始させたとした場合における前記冷却用膨張弁の開口面積との合計値よりも前記最適除湿合成面積に近付ける冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記運転モードを、冷媒を前記冷房用膨張弁および前記冷却用膨張弁に流して減圧し、前記暖房用膨張弁で減圧しない冷房+冷却モードに切り替え可能であって、
前記合成面積を、前記最適除湿合成面積と、仮に前記動作開始タイミングに前記冷房+冷却モードで動作を開始させたとした場合における冷凍サイクルのサイクル成績係数が極大値に近づくように算出した前記冷却用膨張弁の開口面積である最適冷却面積との合計値よりも前記最適除湿合成面積に近付ける請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記除湿合成面積を前記最適除湿合成面積より小さくすることで、前記合成面積を前記最適除湿合成面積と前記最適冷却面積との合計値よりも前記最適除湿合成面積に近付ける請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記暖房用膨張弁の開口面積および前記冷房用膨張弁の開口面積の組合せを決定するためのパラメータであって、前記運転モードで動作を開始する際の前記除湿合成面積を決定するための開度パターンを予め記憶しており、
前記除湿合成面積が前記最適除湿合成面積よりも小さくなるように、前記除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の前記開度パターンの値を、仮に前記動作開始タイミングに前記除湿暖房モードで動作を開始させたとした場合における前記開度パターンの値とは異なる値に決定する請求項1ないし3のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記暖房用膨張弁の開口面積および前記冷房用膨張弁の開口面積の組合せを決定するためのパラメータであって、前記運転モードで動作を開始する際の前記除湿合成面積を決定するための開度パターンを予め記憶するとともに、前記開度パターンの値に一次関数的に前記除湿合成面積が変更するように前記開度パターンが設定されており、
前記開度パターンの値および前記除湿合成面積の関係を一次関数で示した際における前記一次関数の傾きの大きさと、仮に前記動作開始タイミングに前記除湿暖房モードで動作を開始させたとした場合の前記除湿合成面積が前記最適除湿合成面積となるように決定される前記開度パターンの値と、前記最適冷却面積とに基づいて前記開度パターンの値を決定する請求項2または3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記暖房用膨張弁の開口面積および前記冷房用膨張弁の開口面積の組合せを決定するためのパラメータであって、前記運転モードで動作を開始する際の前記除湿合成面積を決定するための開度パターンと、前記除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の前記開度パターンの値を決定するための補正係数とを予め記憶しており、
前記除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の前記開度パターンの値を、仮に前記動作開始タイミングに前記除湿暖房モードで動作を開始させたとした場合における前記開度パターンの値および前記補正係数に基づいて決定する請求項1ないし3のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記暖房用膨張弁の開口面積および前記冷房用膨張弁の開口面積の組合せを決定するためのパラメータであって、前記運転モードで動作を開始する際の前記除湿合成面積を決定するための開度パターンを予め記憶しており、
前記除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の前記開度パターンの値を決定するための補正係数を、仮に前記動作開始タイミングに前記除湿暖房モードで動作を開始させたとした場合における前記除湿合成面積と、仮に前記動作開始タイミングに前記冷却対象物冷却モードで動作を開始させたとした場合おける前記冷却用膨張弁の開口面積とに基づいて算出し、前記除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の前記開度パターンの値を、仮に前記動作開始タイミングに前記除湿暖房モードで動作を開始させたとした場合における前記開度パターンの値および前記補正係数に基づいて決定する請求項1ないし3のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内へ温度調整した空気を送風するとともに、電気自動車の走行用モータ等への電力供給用のバッテリの温度を調整する冷凍サイクル装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の冷凍サイクル装置は、運転モードを、冷却した空気を車室内へ送風する冷房モードと、加熱した空気を車室内へ送風する暖房モードと、バッテリを冷却する冷却モードに切り替え可能に構成されている。また、特許文献1に記載の冷凍サイクル装置は、運転モードを、加熱および除湿した空気を車室内へ送風する直列除湿暖房モードおよび並列除湿暖房モードと、車室内を冷房しつつバッテリを冷却する冷房+冷却モードに切り替え可能に構成されている。さらに、特許文献1に記載の冷凍サイクル装置は、運転モードを、加熱および除湿した空気を車室内へ送風しつつバッテリを冷却する直列除湿暖房+冷却モードおよび並列除湿暖房+冷却モードにも切り替え可能に構成されている。
【0003】
以下、直列除湿暖房モードおよび並列除湿暖房モードを単に除湿暖房モード、直列除湿暖房+冷却モードおよび並列除湿暖房+冷却モードを単に除湿暖房+冷却モードとも呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-211197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のような冷凍サイクル装置は、各運転モードにおけるサイクル成績係数が最適となるように冷房用膨張弁、暖房用膨張弁、冷却用膨張それぞれの絞り開度(すなわち、各膨張弁の開口面積)を調整することが望ましい。
【0006】
このため、特許文献1に記載の冷凍サイクル装置において、冷房モードでは、サイクル成績係数が極大値に近づくように冷房用膨張弁の開口面積が決定され、暖房モードでは、サイクル成績係数が極大値に近づくように暖房用膨張弁の開口面積が決定される。また、冷却モードでは、サイクル成績係数が極大値に近づくように冷却用膨張弁の開口面積が決定される。
【0007】
さらに、暖房用膨張弁および冷房用膨張弁が直列的に接続される直列除湿暖房モードでは、暖房用膨張弁および冷房用膨張弁の組合せパターンを決定する開度パターンが、ヒータコアに流入する高温側熱媒体が目標高温側熱媒体温度となるように算出される。そして、暖房用膨張弁および冷房用膨張弁が並列的に接続される並列除湿暖房モードでは、開度パターンが蒸発器から流出する冷媒が目標過熱度となるように算出される。
【0008】
除湿暖房モードでは、このように開度パターンを決定し、各運転モードにおいて冷媒が流れる各膨張弁の開口面積の合計値である合成面積を決定することで、サイクル成績係数が最適となるようにしている。
【0009】
ところで、特許文献1に記載の冷凍サイクル装置の除湿暖房+冷却モードにおける開度パターンは、除湿暖房モードを単独で動作させる際と同じ制御処理で算出される。すなわち、除湿暖房+冷却モードでの暖房用膨張弁および冷房用膨張弁それぞれの開口面積は、冷却用膨張弁にも冷媒が流れるにも関わらず、除湿暖房モードで動作する際と同じ開口面積で決定される。
【0010】
このため、除湿暖房+冷却モードでの動作する際における合成面積は、除湿暖房モード単独で動作する際における合成面積よりも冷却用膨張弁の開口面積だけ増加する。
【0011】
発明者の検討によれば、このように開度パターンを決定して除湿暖房+冷却モードで動作を開始させると、循環する冷媒の温度が安定するまでサイクル成績係数が除湿暖房モード単独で動作を開始させた場合に比較して低下する要因となる。
【0012】
本開示は、除湿暖房+冷却モードでの動作開始時におけるサイクル成績係数が除湿暖房モードでの動作開始時のサイクル成績係数よりも低下することを抑制可能な冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、
冷凍サイクル装置であって、
冷媒が流れる冷媒循環通路(21)と、
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、
圧縮機から吐出された吐出冷媒を熱源として、空調対象空間へ送風される送風空気を加熱する加熱部(40、44)と、
加熱部から流出した冷媒を減圧させる暖房用減圧部(14a)と、
暖房用減圧部から流出した冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器(16)と、
加熱部から流出した冷媒を減圧させる冷房用膨張弁(14b)と、
冷房用膨張弁から流出した冷媒を蒸発させて、加熱部で加熱される前の送風空気を冷却する室内蒸発器(18)と、
加熱部から流出した冷媒を減圧させる冷却用膨張弁(54)と、
冷却用膨張弁から流出した冷媒を蒸発させて、冷却対象物を冷却する冷却部(51、55、57、58、59)と、
冷媒循環通路を開閉する開閉弁(15a、15b)と、
暖房用膨張弁、冷房用膨張弁、冷却用膨張弁それぞれの開口面積を変更するとともに、開閉弁の作動を制御することで運転モードを切り替える制御装置(60)と、を備え、
制御装置は、
運転モードを、冷媒を暖房用膨張弁および冷房用膨張弁に流して減圧し、冷却用膨張弁に流さない除湿暖房モードと、冷媒を少なくとも冷却用膨張弁に流して減圧する冷却対象物冷却モードと、冷媒を暖房用膨張弁、冷房用膨張弁、冷却用膨張弁に流して減圧する除湿暖房+冷却モードに切り替え可能であって、
除湿暖房+冷却モードで動作を開始する動作開始タイミングにおける暖房用膨張弁および冷房用膨張弁それぞれの開口面積の合計値である除湿合成面積と、冷却用膨張弁の開口面積との合計値である合成面積を、仮に動作開始タイミングに除湿暖房モードで動作を開始させたとした場合における冷凍サイクルのサイクル成績係数が極大値に近づくように算出した暖房用膨張弁および冷房用膨張弁それぞれの開口面積の合計値である最適除湿合成面積と、仮に動作開始タイミングに冷却対象物冷却モードで動作を開始させたとした場合における冷却用膨張弁の開口面積との合計値よりも最適除湿合成面積に近付ける。
【0014】
これによれば、除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の冷凍サイクル装置全体の合成面積を、同じ動作開始タイミングに除湿暖房モードで動作を開始したとした場合の最適除湿合成面積に近付けることができる。このため、除湿暖房+冷却モードでの動作開始時におけるサイクル成績係数が除湿暖房モードでの動作開始時のサイクル成績係数よりも低下することを抑制することができる。
【0015】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
図2】第1実施形態に係る車両用空調装置の制御装置を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の運転モードを選択する制御処理の一部を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の運転モードを選択する制御処理の別の一部を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の運転モードを切り替えるための制御特性図である。
図6】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の運転モードを切り替えるための別の制御特性図である。
図7】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の運転モードを切り替えるためのさらに別の制御特性図である。
図8】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の冷房モードの制御処理を示すフローチャートである。
図9】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の直列除湿暖房モードの制御処理を示すフローチャートである。
図10】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の直列除湿暖房モードにおける開度パターンを決定するための制御特性図である。
図11】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の並列除湿暖房モードの制御処理を示すフローチャートである。
図12】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の並列除湿暖房モードにおける開度パターンを決定するための制御特性図である。
図13】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の暖房モードの制御処理を示すフローチャートである。
図14】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の冷房+冷却モードの制御処理を示すフローチャートである。
図15】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の暖房+冷却モードの制御処理を示すフローチャートである。
図16】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の暖房+直列冷却モードの制御処理を示すフローチャートである。
図17】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の暖房+直列冷却モードにおける開度パターンを決定するための制御特性図である。
図18】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の暖房+並列冷却モードの制御処理を示すフローチャートである。
図19】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の暖房+並列冷却モードにおける開度パターンを決定するための制御特性図である。
図20】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の冷却モードの制御処理を示すフローチャートである。
図21】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の比較例の直列除湿暖房+冷却モードにおける開度パターンを説明するための説明図である。
図22】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の直列除湿暖房+冷却モードの動作モードを選択する制御処理を示すフローチャートである。
図23】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の直列除湿暖房+冷却モードのKPN補正動作モードの制御処理を示すフローチャートである。
図24】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の直列除湿暖房+冷却モードのKPN補正動作モードにおける開度パターンを決定するための制御特性図である。
図25】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の直列除湿暖房+冷却モードのKPN維持動作モードの制御処理を示すフローチャートである。
図26】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の直列除湿暖房+冷却モードのKPN通常動作モードの制御処理を示すフローチャートである。
図27】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の並列除湿暖房+冷却モードの動作モードを選択する制御処理を示すフローチャートである。KPN補正動作モードの制御処理を示すフローチャートである。
図28】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の並列除湿暖房+冷却モードのKPN補正動作モードの制御処理を示すフローチャートである。
図29】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の並列除湿暖房+冷却モードのKPN維持動作モードの制御処理を示すフローチャートである。
図30】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の並列除湿暖房+冷却モードのKPN通常動作モードの制御処理を示すフローチャートである。
図31】第2実施形態に係る冷凍サイクル装置の直列除湿暖房+冷却モードのKPN補正動作モードの制御処理を示すフローチャートである。
図32】第2実施形態の変形例に係る冷凍サイクル装置の直列除湿暖房+冷却モードのKPN補正動作モードの制御処理を示すフローチャートである。
図33】第3実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
図34】第4実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
図35】第4実施形態に係る冷凍サイクル装置の直列除湿暖房+冷却モードのKPN通常動作モードの制御処理を示すフローチャートである。
図36】第5実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
図37】第5実施形態に係る冷凍サイクル装置の直列除湿暖房+冷却モードのKPN通常動作モードの制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組合せに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組合せることができる。
【0018】
(第1実施形態)
本実施形態について、図1~30を参照して説明する。本実施形態では、本発明に係る冷凍サイクル装置10を、不図示の電動モータから走行用の駆動力を得る電気自動車に搭載された車両用空調装置1に適用している。この車両用空調装置1は、空調対象空間である車室内の空調を行うだけでなく、電動モータ等に電力を供給する電池パック50に収容された電池冷却器51に冷媒を流すことでバッテリ52の温度を調整する機能を有している。このため、車両用空調装置1は、バッテリ温度調整機能付きの空調装置と呼ぶこともできる。
【0019】
バッテリ52は、電動モータ等の車載機器へ供給される電力を蓄える二次電池である。本実施形態のバッテリ52は、リチウムイオン電池である。バッテリ52は、複数の電池セル52aを積層配置し、これらの電池セル52aを電気的に直列あるいは並列に接続することによって形成された、いわゆる組電池である。
【0020】
このような二次電池は、低温になると出力が低下しやすく、高温になると劣化が進行しやすい。このため、バッテリ52の温度は、バッテリ52の充放電容量を充分に活用することができる適切な温度範囲内(例えば、15℃以上、かつ、55℃以下)に維持されている必要がある。
【0021】
そこで、車両用空調装置1では、冷凍サイクル装置10によって生成された冷熱によってバッテリ52を冷却することができるようになっている。従って、本実施形態の冷凍サイクル装置10における冷却対象物は、バッテリ52である。
【0022】
車両用空調装置1は、図1に示すように、冷凍サイクル装置10、室内空調ユニット30、高温側熱媒体回路40等を備えている。
【0023】
冷凍サイクル装置10は、車室内の空調を行うために、車室内へ送風される送風空気を冷却する機能、および高温側熱媒体回路40を循環する高温側熱媒体を加熱する機能を有する。さらに、冷凍サイクル装置10は、電気自動車に搭載された電池パック50に冷媒を送ることでバッテリ52を冷却する機能を有する。
【0024】
冷凍サイクル装置10は、車室内の空調を行うために、様々な運転モード用の冷媒回路に切替可能に構成されている。具体的に、冷凍サイクル装置10は、冷媒回路を冷房モードの冷媒回路、除湿暖房モードの冷媒回路、暖房モードの冷媒回路等に切替可能に構成されている。また、冷凍サイクル装置10は、空調用の各運転モードにおいて、バッテリ52を冷却する冷媒回路とバッテリ52の冷却を行わない冷媒回路とに切替可能に構成されている。さらに、冷凍サイクル装置10は、空調を行わず、バッテリ52を冷却する冷却モードの冷媒回路にも切替可能に構成されている。
【0025】
また、冷凍サイクル装置10では、冷媒としてHFO系冷媒(具体的には、R1234yf)を採用しており、圧縮機11から吐出された吐出冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されている。冷凍機油の一部は、冷媒とともにサイクルを循環している。
【0026】
冷凍サイクル装置10は、図1に示すように、冷媒を流すための冷媒循環通路21を有している。そして、冷媒循環通路21には、冷媒を圧縮する圧縮機11と、冷媒と熱媒体との間で熱交換させる水-冷媒熱交換器12、室外熱交換器16、室内蒸発器18と、冷媒の圧力を制御する蒸発圧力調整弁19、3つの膨張弁14a、14b、54とが設けられている。また、冷媒循環通路21には、冷媒回路を切り替える2つの開閉弁15a、15bおよび6つの三方継手13a~13fと、冷媒の温度を検出する4つの冷媒温度センサ64a~64dと、冷媒の圧力を検出する冷媒圧力センサ65とが設けられている。
【0027】
圧縮機11は、冷凍サイクル装置10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機11は、車室の前方に配置されて電動モータ等が収容される駆動装置室内に配置されている。圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータで回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、後述する制御装置60から出力される制御信号によって、回転数(すなわち、冷媒吐出能力)が制御される。圧縮機11の吐出口には、水-冷媒熱交換器12の冷媒通路の入口側が接続されている。
【0028】
また、圧縮機11の吐出口側の冷媒循環通路21には、圧縮機11から吐出された冷媒の温度T1を検出する第1冷媒温度センサ64aが設けられている。第1冷媒温度センサ64aは、圧縮機11から吐出された冷媒の温度T1に応じた検出信号を制御装置60に送信する。
【0029】
水-冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を流通させる冷媒通路と、高温側熱媒体回路40を循環する高温側熱媒体を流通させる水通路とを有している。そして、水-冷媒熱交換器12は、冷媒通路を流通する高圧冷媒と、水通路を流通する高温側熱媒体とを熱交換させて、高温側熱媒体を加熱する加熱用の熱交換器である。
【0030】
また、水-冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口側の冷媒循環通路21には、水-冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出された冷媒の温度T2を検出する第2冷媒温度センサ64bが設けられている。第2冷媒温度センサ64bは、水-冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出された冷媒の温度T2に応じた検出信号を制御装置60に送信する。
【0031】
そして、水-冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口には、互いに連通する3つの流入出口を有する第1三方継手13aの流入口側が接続されている。第1三方継手13aは、複数の配管を接合して形成されたものや、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けることによって形成されたものを採用することができる。第1三方継手13aは、1つの流入口および2つの流出口を有し、1つの流入口から流入した冷媒を一方および他方の流出口に流出させる。
【0032】
なお、後述する第2三方継手13b~第6三方継手13fは、基本的構成が第1三方継手13aと同様である。第2三方継手13b~第6三方継手13fは、互いに連通する1つの流入口および2つの流出口を有する構成、または互いに連通する2つの流入口および1つの流出口を有する構成である。
【0033】
第1三方継手13aの一方の流出口には、暖房用膨張弁14aの入口側が接続されている。第1三方継手13aの他方の流出口には、バイパス通路21aを介して、第2三方継手13bの一方の流入口側が接続されている。第2三方継手13bは、2つの流入口および1つの流出口を有し、バイパス通路21aを介して一方の流入口から流入した冷媒を下流側へ導く。
【0034】
また、第1三方継手13aの一方の出口側と暖房用膨張弁14aとの間における冷媒循環通路21には、水-冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の圧力P1を検出する冷媒圧力センサ65が設けられている。冷媒圧力センサ65は、水-冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の圧力P1に応じた検出信号を制御装置60に送信する。
【0035】
バイパス通路21aは、冷媒循環通路21の一部であって、水-冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒を、暖房用膨張弁14aおよび室外熱交換器16をバイパスさせて下流側へ導くための通路である。バイパス通路21aには、除湿用開閉弁15aが配置されている。
【0036】
除湿用開閉弁15aは、第1三方継手13aの他方の流出口側と第2三方継手13bの一方の流入口側とを接続するバイパス通路21aを開閉する電磁弁である。除湿用開閉弁15aは、バイパス通路21aを開閉することで、後述する各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。除湿用開閉弁15aは、制御装置60から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。なお、後述する暖房用開閉弁15bは、基本的構成が除湿用開閉弁15aと同様である。
【0037】
暖房用膨張弁14aは、少なくとも車室内の暖房を行う運転モード時に、水-冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した高圧冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量(質量流量)を調整する暖房用減圧部である。暖房用膨張弁14aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
【0038】
本実施形態の暖房用膨張弁14aは、弁体の開口面積を調整することで絞り開度を0~100%の範囲で変更可能に構成されている。すなわち、暖房用膨張弁14aは、弁開度を全開(すなわち絞り開度を100%)にすることで流量調整作用および冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能を有する。また暖房用膨張弁14aは、弁開度を全閉(すなわち、絞り開度を0%)にすることで冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。以下、暖房用膨張弁14aにおいて、絞り開度を変化することによって調整される冷媒の通過可能な範囲を暖房用膨張弁14aの開口面積とも呼ぶ。
【0039】
そして、この全開機能および全閉機能によって、暖房用膨張弁14aは、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、本実施形態の暖房用膨張弁14aは、冷媒回路切替部としての機能も兼ね備えている。暖房用膨張弁14aは、制御装置60から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。暖房用膨張弁14aの出口側には、室外熱交換器16の冷媒入口側が接続されている。なお、後述する冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁54は、基本的構成が暖房用膨張弁14aと同様である。
【0040】
室外熱交換器16は、暖房用膨張弁14aから流出した冷媒と不図示の冷却ファンにより送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器16は、駆動装置室内の前方側に配置されている。このため、室外熱交換器16は、車両走行時に走行風が当たる構成となっている。
【0041】
室外熱交換器16の冷媒出口側の冷媒循環通路21には、室外熱交換器16から流出された冷媒の温度T3を検出する第3冷媒温度センサ64cが設けられている。第3冷媒温度センサ64cは、室外熱交換器16から流出された冷媒の温度T3に応じた検出信号を制御装置60に送信する。
【0042】
また、室外熱交換器16の冷媒出口側には、第3三方継手13cの流入口側が接続されている。第3三方継手13cは、1つの流入口および2つの流出口を有し、一方の流出口側には、暖房用通路21bを介して、第4三方継手13dの一方の流入口側が接続されている。暖房用通路21bには、この暖房用通路21bを開閉する暖房用開閉弁15bが配置されている。暖房用通路21bは、冷媒循環通路21の一部であって、車室内の暖房を行う運転モードの際に、室外熱交換器16から流出した冷媒を圧縮機11の吸入口側へ導くための通路である。
【0043】
第3三方継手13cの他方の流出口側には、第2三方継手13bの他方の流入口側、すなわちバイパス通路21aが接続されている側とは反対側の流入口側が接続されている。第3三方継手13cの他方の流出口と第2三方継手13bの他方の流入口とを接続する冷媒循環通路21には、逆止弁17が配置されている。逆止弁17は、第3三方継手13c側から第2三方継手13b側へ冷媒が流れることを許容し、第2三方継手13b側から第3三方継手13c側へ冷媒が流れることを禁止する機能を果たす。
【0044】
第2三方継手13bの流出口側には、第5三方継手13eの流入口側が接続されている。第5三方継手13eは、1つの流入口および2つの流出口を有し、一方の流出口に冷房用膨張弁14bの入口側が接続されている。第5三方継手13eの他方の流出口には、電池パック50の冷媒通路の入口側が接続されている。
【0045】
冷房用膨張弁14bは、少なくとも車室内の冷房を行う運転モード時に、室外熱交換器16から流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する冷房用減圧部である。冷房用膨張弁14bの出口には、室内蒸発器18の冷媒入口側が接続されている。
【0046】
室内蒸発器18は、冷房用膨張弁14bにおいて減圧された低圧冷媒と後述する送風機32から送風された送風空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、低圧冷媒に吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。室内蒸発器18は、後述する室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。
【0047】
室内蒸発器18の冷媒出口側の冷媒循環通路21には、室内蒸発器18から流出された冷媒の温度T4を検出する第4冷媒温度センサ64dが設けられている。第4冷媒温度センサ64dは、室内蒸発器18から流出された冷媒の温度T4に応じた検出信号を制御装置60に送信する。
【0048】
また、室内蒸発器18の冷媒出口には、第6三方継手13fの一方の流入口側が接続されている。第6三方継手13fは、2つの流入口および1つの流出口を有し、他方の流入口側が電池パック50の冷媒通路の出口側に接続されている。第6三方継手13fの流出口には、蒸発圧力調整弁19の入口側が接続されている。第6三方継手13fは、室内蒸発器18および電池パック50から流出した冷媒を蒸発圧力調整弁19へ導く。
【0049】
蒸発圧力調整弁19は、室内蒸発器18の着霜を抑制するために、室内蒸発器18における冷媒蒸発圧力を、予め定めた基準圧力以上に維持する機能を果たす。蒸発圧力調整弁19は、室内蒸発器18の出口側冷媒の圧力の上昇に伴って、弁開度を増加させる機械式の可変絞り機構で構成されている。
【0050】
これにより、蒸発圧力調整弁19は、室内蒸発器18における冷媒が蒸発する温度を、室内蒸発器18の着霜を抑制可能な着霜抑制温度(例えば、1℃)以上に維持している。さらに、本実施形態の蒸発圧力調整弁19は、第6三方継手13fよりも冷媒流れ下流側に配置されている。このため、蒸発圧力調整弁19は、後述する電池冷却器51における冷媒が蒸発する温度についても、着霜抑制温度以上に維持している。
【0051】
蒸発圧力調整弁19の出口には、第4三方継手13dの他方の流入口側が接続されている。第4三方継手13dは、2つの流入口および1つの流出口を有し、流出口にアキュムレータ20の入口側が接続されている。アキュムレータ20は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰液相冷媒を蓄える気液分離器である。アキュムレータ20の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
【0052】
次に、高温側熱媒体回路40について説明する。高温側熱媒体回路40は、高温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。高温側熱媒体としては、エチレングリコール、ジメチルポリシロキサン、あるいはナノ流体等を含む溶液、不凍液等を採用することができる。高温側熱媒体回路40には、水-冷媒熱交換器12の水通路、高温側熱媒体ポンプ41、ヒータコア42、高温側熱媒体温度センサ43等が配置されている。
【0053】
高温側熱媒体ポンプ41は、高温側熱媒体を水-冷媒熱交換器12の水通路の入口側へ圧送する水ポンプである。高温側熱媒体ポンプ41は、制御装置60から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
【0054】
水-冷媒熱交換器12の水通路の出口には、ヒータコア42の熱媒体入口側が接続されている。ヒータコア42は、水-冷媒熱交換器12において加熱された高温側熱媒体と室内蒸発器18を通過した送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する熱交換器である。ヒータコア42は、室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。ヒータコア42の熱媒体出口には、高温側熱媒体ポンプ41の吸入口側が接続されている。
【0055】
また、ヒータコア42の熱媒体出口側には、ヒータコア42から流出された高温側熱媒体の高温側熱媒体温度TWHを検出する高温側熱媒体温度センサ43が設けられている。高温側熱媒体温度センサ43は、ヒータコア42から流出された高温側熱媒体の高温側熱媒体温度TWHに応じた検出信号を制御装置60に送信する。
【0056】
従って、高温側熱媒体回路40では、高温側熱媒体ポンプ41が、ヒータコア42へ流入する高温側熱媒体の流量を調整することによって、ヒータコア42における高温側熱媒体の送風空気への放熱量を調整する。すなわち、高温側熱媒体回路40は、ヒータコア42における送風空気の加熱量を調整することができる。
【0057】
つまり、本実施形態では、水-冷媒熱交換器12および高温側熱媒体回路40の各構成機器によって、圧縮機11から吐出された冷媒を熱源として、送風空気を加熱する加熱部が構成されている。
【0058】
次に、電池パック50について説明する。電池パック50は、バッテリ52およびバッテリ冷媒通路53aを収容し、冷凍サイクル装置10から流入する冷媒をバッテリ冷媒通路53aに循環させることでバッテリ52を冷却させる機能を有する。バッテリ冷媒通路53aには、電池冷却器51、冷却用膨張弁54、冷却器入口温度センサ55a、冷却器出口温度センサ55b等が配置されている。
【0059】
冷却用膨張弁54は、少なくともバッテリ52の冷却を行う運転モード時に、室外熱交換器16から流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する冷却用減圧部である。冷却用膨張弁54は、入口に第5三方継手13eの他方の流出口側が接続されており、出口に電池冷却器51の冷媒流入口側が接続されている。
【0060】
電池冷却器51は、バッテリ冷媒通路53aを流通する冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによってバッテリ52を冷却する、いわゆる直冷式の冷却器である。電池冷却器51は、バッテリ52の全域を均等に冷却できるように、互いに並列的に接続された複数の冷媒流路を有する。
【0061】
このような電池冷却器51は、積層配置された電池セル52a同士の間に熱媒体流路を配置することによって形成すればよい。また、電池冷却器51は、バッテリ52に一体的に形成されていてもよい。例えば、電池冷却器51は、積層配置された電池セル52aを収容する専用ケースに熱媒体流路を設けることによって、バッテリ52に一体的に形成されていてもよい。電池冷却器51の冷媒流出口には、第6三方継手13fの他方の流入口側が接続されている。
【0062】
また、電池冷却器51の冷媒流入口側のバッテリ冷媒通路53aには、電池冷却器51に流入する冷媒の温度である冷却器入口温度TW1を検出する冷却器入口温度センサ55aが設けられている。冷却器入口温度センサ55aは、電池冷却器51に流入する冷媒の冷却器入口温度TW1に応じた検出信号を制御装置60に送信する。
【0063】
また、電池冷却器51の冷媒流出口側のバッテリ冷媒通路53aには、電池冷却器51から流出された冷媒の温度である冷却器出口温度TW2を検出する冷却器出口温度センサ55bが設けられている。冷却器出口温度センサ55bは、電池冷却器51から流出した冷媒の冷却器出口温度TW2に応じた検出信号を制御装置60に送信する。
【0064】
また、バッテリ52には、バッテリ温度TBを検出するバッテリ温度センサ52bが設けられている。本実施形態のバッテリ温度センサ52bは、複数の温度センサを有し、電池セル52aそれぞれの箇所の温度を検出することによって、複数の温度センサの検出値の平均値をバッテリ温度TBとして採用している。バッテリ温度センサ52bは、検出したバッテリ温度TBに応じた検出信号を制御装置60に送信する。
【0065】
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、冷凍サイクル装置10によって温度調整された送風空気を車室内へ吹き出すためのものである。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。
【0066】
室内空調ユニット30は、図1に示すように、その外殻を形成する空調ケース31内に形成された空気通路内に送風機32、室内蒸発器18、ヒータコア42、PTCヒータ36等を収容したものである。
【0067】
空調ケース31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成している。空調ケース31は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)で成形されている。
【0068】
空調ケース31の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置33が配置されている。内外気切替装置33は、空調ケース31内へ導入する空気を内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とに切り替えるものである。
【0069】
内外気切替装置33は、空調ケース31内へ内気を導入させる内気導入口33aおよび外気を導入させる外気導入口33bの開口面積を、内外気切替ドア33cによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させるものである。内外気切替ドア33cは、内外気切替ドア33c用の不図示の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。内外気切替装置33の送風空気流れ下流側には、送風機32が配置されている。
【0070】
送風機32は、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風するものである。送風機32は、遠心多翼ファン32aを電動モータ32bで駆動する電動送風機である。送風機32は、制御装置60から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、送風能力)が制御される。
【0071】
送風機32の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器18、ヒータコア42、PTCヒータ36が、送風空気流れに対して、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器18は、ヒータコア42およびPTCヒータ36よりも、送風空気流れ上流側に配置されている。
【0072】
また、室内蒸発器18には、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度センサ64eが設けられている。具体的に、蒸発器温度センサ64eは、室内蒸発器18の熱交換フィン温度を検出している。蒸発器温度センサ64eは、室内蒸発器18の冷媒蒸発温度Tefinに応じた検出信号を制御装置60に送信する。
【0073】
空調ケース31内には、室内蒸発器18通過後の送風空気を、ヒータコア42およびPTCヒータ36を迂回して流す冷風バイパス通路35が設けられている。空調ケース31内の室内蒸発器18の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア42の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア34が配置されている。また、ヒータコア42の送風空気流れ下流側には、PTCヒータ36が配置されている。
【0074】
エアミックスドア34は、室内蒸発器18通過後の送風空気のうち、ヒータコア42側を通過する送風空気の風量と冷風バイパス通路35を通過させる送風空気の風量との風量割合を調整する風量割合調整部である。エアミックスドア34は、エアミックスドア34用の不図示の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0075】
PTCヒータ36は、供給される電力に応じて発熱し、ヒータコア42を通過する空気を加熱する補助加熱器である。PTCヒータ36は、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。空調ケース31内のPTCヒータ36および冷風バイパス通路35の送風空気流れ下流側には、混合空間37が配置されている。
【0076】
混合空間37は、ヒータコア42およびPTCヒータ36によって加熱された送風空気と冷風バイパス通路35を通過して加熱されていない送風空気とを混合させる空間である。
【0077】
また、混合空間37には、混合空間37から車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する空調風温度センサ64fが設けられている。空調風温度センサ64fは、送風空気温度TAVに応じた検出信号を制御装置60に送信する。
【0078】
さらに、空調ケース31の送風空気流れ下流部には、混合空間37で混合された送風空気(すなわち、空調風)を、空調対象空間である車室内へ吹き出すための開口穴が配置されている。
【0079】
この開口穴としては、いずれも不図示のフェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
【0080】
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたいずれも不図示のフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口に接続されている。
【0081】
従って、エアミックスドア34が、ヒータコア42およびPTCヒータ36を通過させる風量と冷風バイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間37で混合される空調風の温度が調整される。そして、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度が調整される。
【0082】
また、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、いずれも不図示のフェイスドア、フットドア、およびデフロスタドアが配置されている。フェイスドアは、フェイス開口穴の開口面積を調整するものである。フットドアは、フット開口穴の開口面積を調整するものである。デフロスタドアは、フロスタ開口穴の開口面積を調整するものである。
【0083】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替装置を構成するものである。これらのドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータも、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0084】
吹出口モード切替装置によって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
【0085】
フェイスモードは、フェイス吹出口を全開としてフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。フットモードは、フット吹出口を全開とするとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出す吹出口モードである。
【0086】
さらに、乗員が操作パネル70に設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタモードに切り替えることもできる。デフロスタモードは、デフロスタ吹出口を全開としてデフロスタ吹出口からフロント窓ガラス内面に空気を吹き出す吹出口モードである。
【0087】
次に、本実施形態の制御装置60の概要について説明する。制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含むマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、制御装置60は、ROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器11、14a、14b、15a、15b、32、41、46、54等の作動を制御する。なお、制御装置60のROMおよびRAMは、非遷移的実体的記憶媒体で構成される。
【0088】
また、制御装置60の入力側には、図2に示すように、上述した第1冷媒温度センサ64a~第4冷媒温度センサ64d、蒸発器温度センサ64e、空調風温度センサ64f、冷媒圧力センサ65、高温側熱媒体温度センサ43が接続されている。また、制御装置60の入力側には、冷却器入口温度センサ55a、冷却器出口温度センサ55b、バッテリ温度センサ52b、内気温センサ61、外気温センサ62、日射センサ63等が接続されている。制御装置60には、これらのセンサ群の検出信号が入力される。
【0089】
内気温センサ61は、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ62は、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ63は、車室内へ照射される日射量Tsを検出する日射量検出部である。
【0090】
さらに、制御装置60の入力側には、図2に示すように、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル70が接続され、この操作パネル70に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0091】
操作パネル70に設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の自動制御運転を設定あるいは解除するオートスイッチ、室内蒸発器18で送風空気の冷却を行うことを要求するエアコンスイッチがある。また、各種操作スイッチとしては、送風機32の風量をマニュアル設定する風量設定スイッチ、車室内の目標温度Tsetを設定する温度設定スイッチ、吹出モードをマニュアル設定する吹出モード切替スイッチ等がある。
【0092】
また、制御装置60の出力側には、図2に示すように、圧縮機11、送風機32、高温側熱媒体ポンプ41、PTCヒータ36が接続されている。また、制御装置60の出力側には、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁54、除湿用開閉弁15a、暖房用開閉弁15b、エアミックスドア34を動作させる電動アクチュエータ等が接続されている。本実施形態の制御装置60は、その出力側に接続された各種制御対象機器11、14a、14b、54、15a、15b、32、34、36、41等の動作を制御する。
【0093】
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。前述の如く、本実施形態の車両用空調装置1は、車室内の空調を行うだけでなく、バッテリ52の温度を調整する機能を有している。このため、冷凍サイクル装置10では、冷媒回路を切り替えて、以下の11種類の運転モードでの運転を行うことができる。
【0094】
(1)冷房モード:冷房モードは、バッテリ52の冷却を行うことなく、送風空気を冷却して車室内へ吹き出すことによって車室内の冷房を行う運転モードである。
【0095】
(2)直列除湿暖房モード:直列除湿暖房モードは、バッテリ52の冷却を行うことなく、冷却されて除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
【0096】
(3)並列除湿暖房モード:並列除湿暖房モードは、バッテリ52の冷却を行うことなく、冷却されて除湿された送風空気を直列除湿暖房モードよりも高い加熱能力で再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。以下においては、直列除湿暖房モードおよび並列除湿暖房モードを、単に、除湿暖房モードとも呼ぶことがある。
【0097】
(4)暖房モード:暖房モードは、バッテリ52の冷却を行うことなく、送風空気を加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
【0098】
(5)冷房+冷却モード:冷房+冷却モードは、バッテリ52の冷却を行うとともに、送風空気を冷却して車室内へ吹き出すことによって車室内の冷房を行う運転モードである。
【0099】
(6)暖房+冷却モード:暖房+冷却モードは、バッテリ52の冷却を行うとともに、送風空気を加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
【0100】
(7)暖房+直列冷却モード:暖房+直列冷却モードは、バッテリ52の冷却を行うとともに、送風空気を暖房+冷却モードよりも高い加熱能力で加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
【0101】
(8)暖房+並列冷却モード:暖房+並列冷却モードは、バッテリ52の冷却を行うとともに、送風空気を暖房+直列冷却モードよりも高い加熱能力で加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
【0102】
(9)冷却モード:車室内の空調を行うことなく、バッテリ52の冷却を行う運転モードである。
【0103】
(10)直列除湿暖房+冷却モード:直列除湿暖房+冷却モードは、バッテリ52の冷却を行うとともに、冷却されて除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
【0104】
(11)並列除湿暖房+冷却モード:並列除湿暖房+冷却モードは、バッテリ52の冷却を行うとともに、冷却されて除湿された送風空気を直列除湿暖房+冷却モードよりも高い加熱能力で再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。以下においては、直列除湿暖房+冷却モードおよび並列除湿暖房+冷却モードを、単に、除湿暖房+冷却モードとも呼ぶことがある。
【0105】
これらの運転モードの切り替えは、空調制御プログラムが実行されることによって行われる。空調制御プログラムは、乗員の操作によって操作パネル70のオートスイッチが投入(ON)されて、車室内の自動制御が設定された際に制御装置60によって実行される。なお、本実施形態では、(5)冷房+冷却モード、(6)暖房+冷却モード、(7)暖房+直列冷却モード、(8)暖房+並列冷却モード、(9)冷却モード、(10)直列除湿暖房+冷却モード、(11)並列除湿暖房+冷却モードが冷却対象物であるバッテリ52を冷却する冷却対象物冷却モードに対応する。制御装置60が実行する空調制御プログラムについて、図3図30を用いて説明する。
【0106】
まず、図3に示すように、制御装置60は、ステップS10において、上述したセンサ群の検出信号、および操作パネル70の操作信号を読み込む。続くステップS20において、制御装置60は、ステップS10において読み込んだ検出信号および操作信号に基づいて、車室内へ送風される送風空気の目標温度である目標吹出温度TAOを決定する。具体的には、目標吹出温度TAOは、以下の数式1によって算出される。
【0107】
(数1)
TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×Ts+C
ここで、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度である。Trは内気温センサ61によって検出された車室内温度である。Tamは外気温センサ62によって検出された車室外温度である。Tsは日射センサ63によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0108】
次に、制御装置60は、ステップS30において、エアコンスイッチがON(投入)されているか否かを判定する。エアコンスイッチがONされていることは、乗員が車室内の冷房あるいは除湿を要求していることを意味している。換言すると、エアコンスイッチがONされていることは、室内蒸発器18において送風空気を冷却することが要求されていることを意味している。
【0109】
ステップS30において、エアコンスイッチがONされていると判定された場合、制御装置60は、ステップS40の処理を実行する。ステップS30において、エアコンスイッチがONされていないと判定された場合、制御装置60は、後述するステップS160へ進む。
【0110】
ステップS40において、制御装置60は、外気温Tamが予め定めた基準外気温KA(例えば、0℃)以上であるか否かを判定する。基準外気温KAは、室内蒸発器18において送風空気を冷却することが、空調対象空間の冷房あるいは除湿を行うために有効となるように設定されている。
【0111】
より詳細には、本実施形態において、室内蒸発器18の着霜を抑制するために、蒸発圧力調整弁19は、室内蒸発器18における冷媒が蒸発する温度を着霜抑制温度(例えば、1℃)以上に維持している。このため、室内蒸発器18では、送風空気を着霜抑制温度より低い温度に冷却することができない。
【0112】
つまり、室内蒸発器18へ流入する送風空気の温度が着霜抑制温度の温度よりも低くなっている際には、室内蒸発器18において送風空気を冷却することは有効ではない。そこで、制御装置60は、基準外気温KAが着霜抑制温度より低い値に予め設定されており、外気温Tamが基準外気温KAより低くなっている際に、室内蒸発器18において送風空気を冷却しないようにする。
【0113】
ステップS40において、外気温Tamが基準外気温KA以上であると判定した場合、制御装置60は、ステップS50の処理を実行する。ステップS40において、外気温Tamが基準外気温KA以上ではないと判定した場合、制御装置60は、後述するステップS160へ進む。
【0114】
ステップS50で、制御装置60は、目標吹出温度TAOが冷房用基準温度α1以下であるか否かを判定する。冷房用基準温度α1は、外気温Tamに基づいて、予め制御装置60に記憶された制御マップを参照して決定される。本実施形態では、冷房用基準温度α1は、図5に示すように、外気温Tamの低下に伴って低い値となるように予め定められている。
【0115】
ステップS50において、目標吹出温度TAOが冷房用基準温度α1以下であると判定した場合、制御装置60は、ステップS60の処理を実行する。ステップS50において、目標吹出温度TAOが冷房用基準温度α1以下ではないと判定した場合、制御装置60は、ステップS90の処理を実行する。
【0116】
ステップS60において、制御装置60は、バッテリ52の冷却が必要であるか否かを判定する。具体的には、本実施形態では、制御装置60は、バッテリ温度センサ52bによって検出されたバッテリ温度TBが予め定めた基準冷却温度KTB(例えば、35℃)以上となっている際に、バッテリ52の冷却が必要であると判定する。また、制御装置60は、バッテリ温度TBが基準冷却温度KTBより低くなっている際に、バッテリ52の冷却は必要でないと判定する。
【0117】
ステップS60において、バッテリ52の冷却が必要であると判定した場合、制御装置60は、ステップS70へ進み、運転モードとして(5)冷房+冷却モードを選択する。ステップS60において、バッテリ52の冷却が必要でないと判定した場合、制御装置60は、ステップS80へ進み、運転モードとして(1)冷房モードを選択する。
【0118】
また、ステップS90において、制御装置60は、目標吹出温度TAOが除湿用基準温度β1以下であるか否かを判定する。除湿用基準温度β1は、外気温Tamに基づいて、予め制御装置60に記憶された制御マップを参照して決定される。
【0119】
本実施形態では、除湿用基準温度β1は、図5に示すように、冷房用基準温度α1と同様に、外気温Tamの低下に伴って低い値となるように予め定められている。さらに、除湿用基準温度β1は、冷房用基準温度α1よりも高い値に定められている。
【0120】
ステップS90において、目標吹出温度TAOが除湿用基準温度β1以下であると判定した場合、制御装置60は、ステップS100の処理を実行する。ステップS90において、目標吹出温度TAOが除湿用基準温度β1以下ではないと判定した場合、制御装置60は、ステップS130の処理を実行する。
【0121】
そして、ステップS100で、制御装置60は、ステップS60と同様に、バッテリ52の冷却が必要であるか否かを判定する。
【0122】
ステップS100において、バッテリ52の冷却が必要であると判定した場合、制御装置60は、ステップS110へ進み、冷凍サイクル装置10の運転モードとして(10)直列除湿暖房+冷却モードを選択する。ステップS100において、バッテリ52の冷却が必要でないと判定した場合、制御装置60は、ステップS120へ進み、運転モードとして(2)直列除湿暖房モードを選択する。
【0123】
また、ステップS130において、ステップS60およびステップS100と同様に、バッテリ52の冷却が必要であるか否かを判定する。
【0124】
ステップS130において、バッテリ52の冷却が必要であると判定した場合、制御装置60は、ステップS140へ進み、冷凍サイクル装置10の運転モードとして(11)並列除湿暖房+冷却モードを選択する。ステップS100において、バッテリ52の冷却が必要でないと判定した場合、制御装置60は、ステップS150へ進み、運転モードとして(3)並列除湿暖房モードを選択する。
【0125】
続いて、ステップS30あるいはステップS40からステップS160へ進んだ場合について図4を参照して説明する。ステップS30あるいはステップS40からステップS160へ進んだ場合とは、室内蒸発器18で送風空気を冷却することが有効ではないと判定した場合である。まず、ステップS160において、制御装置60は、目標吹出温度TAOが暖房用基準温度γ以上であるか否かを判定する。
【0126】
暖房用基準温度γは、外気温Tamに基づいて、予め制御装置60に記憶された制御マップを参照して決定される。本実施形態では、暖房用基準温度γは、図6に示すように、外気温Tamの低下に伴って低い値となるように決定される。また、暖房用基準温度γは、ヒータコア42で送風空気を加熱することが、空調対象空間の暖房を行うために有効となるように設定されている。
【0127】
ステップS160において、目標吹出温度TAOが暖房用基準温度γ以上であると判定した場合、ヒータコア42で送風空気を加熱する必要がある場合であり、制御装置60は、ステップS170の処理を実行する。ステップS160において、目標吹出温度TAOが暖房用基準温度γ以上ではないと判定した場合、ヒータコア42で送風空気を加熱する必要がない場合であり、制御装置60は、ステップS240の処理を実行する。
【0128】
ステップS170において、制御装置60は、ステップS60等と同様に、バッテリ52の冷却が必要であるか否かを判定する。
【0129】
ステップS170において、バッテリ52の冷却が必要であると判定した場合、制御装置60は、ステップS180の処理を実行する。ステップS170において、バッテリ52の冷却が必要でないと判定した場合、制御装置60は、ステップS230へ進み、運転モードとして(4)暖房モードを選択する。
【0130】
ステップS180において、制御装置60は、目標吹出温度TAOが低温側冷却基準温度α2以下であるか否かを判定する。低温側冷却基準温度α2は、外気温Tamに基づいて、予め制御装置60に記憶された制御マップを参照して決定される。
【0131】
本実施形態では、低温側冷却基準温度α2は、図7に示すように、外気温Tamの低下に伴って低い値となるように決定される。さらに、低温側冷却基準温度α2は、同一の外気温Tamの条件において、冷房用基準温度α1よりも高い値となるように決定される。
【0132】
ステップS180において、目標吹出温度TAOが低温側冷却基準温度α2以下であると判定した場合、制御装置60は、ステップS190へ進み、運転モードとして(6)暖房+冷却モードを選択する。ステップS180において、目標吹出温度TAOが低温側冷却基準温度α2以下ではないと判定した場合、制御装置60は、ステップS200の処理を実行する。
【0133】
ステップS200において、制御装置60は、目標吹出温度TAOが高温側冷却基準温度β2以下であるか否かを判定する。高温側冷却基準温度β2は、外気温Tamに基づいて、予め制御装置60に記憶された制御マップを参照して決定される。
【0134】
本実施形態では、高温側冷却基準温度β2は、図7に示すように、低温側冷却基準温度α2と同様に、外気温Tamの低下に伴って低い値となるように決定される。さらに、高温側冷却基準温度β2は、低温側冷却基準温度α2よりも高い値に決定される。また、高温側冷却基準温度β2は、同一の外気温Tamの条件において、除湿用基準温度β1よりも高い値に決定される。
【0135】
ステップS200において、目標吹出温度TAOが高温側冷却基準温度β2以下であると判定した場合、制御装置60は、ステップS210へ進み、運転モードとして(7)暖房+直列冷却モードを選択する。ステップS200において、目標吹出温度TAOが高温側冷却基準温度β2以下ではないと判定した場合、制御装置60は、ステップS220へ進み、運転モードとして(8)暖房+並列冷却モードを選択する。
【0136】
続いて、ステップS160からステップS240へ進んだ場合について説明する。ステップS160からステップS240へ進んだ場合とは、ヒータコア42で送風空気を加熱する必要がない場合である。また、ステップS240において、制御装置60は、ステップS60等と同様に、バッテリ52の冷却が必要であるか否かを判定する。
【0137】
ステップS240において、バッテリ52の冷却が必要であると判定した場合、制御装置60は、ステップS250へ進み、運転モードとして(9)冷却モードを選択する。ステップS200において、バッテリ52の冷却が必要でないと判定した場合、制御装置60は、ステップS260へ進み、運転モードとして送風モードが選択して、ステップS10へ戻る。
【0138】
送風モードは、圧縮機11を停止させて、風量設定スイッチによって設定された設定信号に応じて送風機32を作動させる運転モードである。ステップS240において、バッテリ52の冷却が必要でないと判定される場合とは、車室内の空調および電池の冷却のために冷凍サイクル装置10を作動させる必要がない場合である。
【0139】
本実施形態の制御装置60は、ステップS10~ステップS260の処理において、以上の如く、冷凍サイクル装置10の運転モードの切り替えを行う。さらに、この空調制御プログラムでは、制御装置60は、冷凍サイクル装置10の各構成機器の作動のみならず、加熱部を構成する高温側熱媒体回路40の高温側熱媒体ポンプ41の作動も制御している。
【0140】
具体的には、制御装置60は、上述した冷凍サイクル装置10の運転モードによらず、予め定めた運転モード毎の基準圧送能力を発揮するように、高温側熱媒体ポンプ41の作動を制御する。
【0141】
従って、高温側熱媒体回路40では、水-冷媒熱交換器12の水通路において、高温側熱媒体が加熱されると、加熱された高温側熱媒体がヒータコア42へ圧送される。ヒータコア42へ流入した高温側熱媒体は、送風空気と熱交換する。これにより、送風空気は加熱される。また、ヒータコア42から流出した高温側熱媒体は、高温側熱媒体ポンプ41に吸入されて、水-冷媒熱交換器12へ圧送される。
【0142】
車両用空調装置1は、上述した運転モードを選択するための制御フローおよび当該制御フローによって選択された運転モード毎の以下に説明する制御フローを制御周期毎に繰り返し実行する。すなわち、車両用空調装置1は、ステップS10~ステップS260の処理によって選択した運転モードを実行するために、各制御対象機器を制御する。以下に、各運転モードにおける車両用空調装置1の詳細作動について説明する。以下の説明の各運転モードで参照される制御マップは、予め運転モード毎に制御装置60に記憶されたものである。各運転モードの対応する制御マップ同士は、互いに同等の場合もあるし、互いに異なる場合もある。
【0143】
(1)冷房モード
冷房モードでは、制御装置60が、図8に示す冷房モードでの制御フローを実行する。まず、制御装置60は、ステップS300で、目標蒸発器温度TEOを決定する。目標蒸発器温度TEOは、目標吹出温度TAOに基づいて、制御装置60に予め記憶された制御マップを参照して決定される。本実施形態の制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標蒸発器温度TEOが上昇するように決定される。
【0144】
ステップS310において、制御装置60は、圧縮機11の回転数の増減量ΔIVOを決定する。増減量ΔIVOは、目標蒸発器温度TEOと蒸発器温度センサ64eによって検出された冷媒蒸発温度Tefinとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、冷媒蒸発温度Tefinが目標蒸発器温度TEOに近づくように決定される。
【0145】
なお、エアコンスイッチが投入されてからの最初の制御周期におけるステップS310では、車両用空調装置1が冷房モードで動作を開始する際の圧縮機11の回転数が決定される。後述する各運転モードにおける圧縮機11の回転数の増減量ΔIVOを決定する処理も同様に、エアコンスイッチが投入されてからの最初の制御周期では、車両用空調装置1が動作を開始する際の圧縮機11の回転数が決定される。
【0146】
ステップS320において、制御装置60は、室外熱交換器16から流出した冷媒の目標過冷却度SCO1を決定する。目標過冷却度SCO1は、例えば、外気温Tamに基づいて、制御マップを参照して決定される。本実施形態の制御マップでは、サイクル成績係数が極大値に近づくように、目標過冷却度SCO1を決定する。
【0147】
ステップS330において、制御装置60は、冷房用膨張弁14bの開口面積の増減量ΔEVCを決定する。増減量ΔEVCは、目標過冷却度SCO1と室外熱交換器16の出口側冷媒の過冷却度SC1との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、室外熱交換器16の出口側冷媒の過冷却度SC1が目標過冷却度SCO1に近づくように決定される。
【0148】
室外熱交換器16の出口側冷媒の過冷却度SC1は、第3冷媒温度センサ64cによって検出された温度T3および冷媒圧力センサ65によって検出された圧力P1に基づいて算出される。
【0149】
なお、エアコンスイッチが投入されてからの最初の制御周期におけるステップS330では、車両用空調装置1が冷房モードで動作を開始する際の冷房用膨張弁14bの開口面積が決定される。後述する各運転モードにおける冷房用膨張弁14bの開口面積の増減量ΔEVCを決定する処理も同様に、エアコンスイッチが投入されてからの最初の制御周期では、車両用空調装置1が動作を開始する際の冷房用膨張弁14bの開口面積が決定される。
【0150】
ステップS340において、制御装置60は、以下の数式2を用いて、エアミックスドア34の開度SWを算出する。
【0151】
(数2)
SW={TAO+(Tefin+C2)}/{TWH+(Tefin+C2)}
なお、TWHは、高温側熱媒体温度センサ43によって検出された高温側熱媒体の温度である。C2は制御用の定数である。
【0152】
ステップS350において、制御装置60は、冷凍サイクル装置10を冷房モードの冷媒回路に切り替える。具体的に、制御装置60は、暖房用膨張弁14aを全開状態とし、冷房用膨張弁14bを冷媒減圧作用を発揮する絞り状態とし、冷却用膨張弁54を全閉状態とし、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bを閉じる。さらに、制御装置60は、ステップS310、S330、S340で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器11、14b、34に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0153】
これにより、圧縮機11は、ステップS310で決定された増減量ΔIVOだけ変化して回転する。また、冷房用膨張弁14bの開口面積は、ステップS330で決定された増減量ΔEVCだけ変更する。そして、エアミックスドア34の開度は、ステップS340で決定された開度SWになる。
【0154】
従って、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12(→暖房用膨張弁14a)→室外熱交換器16→逆止弁17→冷房用膨張弁14b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0155】
つまり、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12および室外熱交換器16が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能する。また、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、冷房用膨張弁14bが冷媒を減圧させる減圧部として機能し、室内蒸発器18が蒸発器として機能する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。なお、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、冷媒が暖房用膨張弁14aを通過するが、全開状態である暖房用膨張弁14aでは冷媒減圧作用が発揮されない。
【0156】
これによれば、冷房モードの車両用空調装置1は、室内蒸発器18にて、送風空気を冷却することができるとともに、水-冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができる。
【0157】
従って、冷房モードの車両用空調装置1は、エアミックスドア34の開度調整によって、室内蒸発器18にて冷却された送風空気の一部をヒータコア42にて再加熱し、目標吹出温度TAOに近づくように温度調整された送風空気を車室内へ吹き出す。これにより、車両用空調装置1は、車室内の冷房を行うことができる。
【0158】
さらに、室外熱交換器16の出口側冷媒の過冷却度SC1が目標過冷却度SCO1に近づくように冷房用膨張弁14bの開口面積を調整することによって、冷房モードでの動作におけるサイクル成績係数を向上させることができる。
【0159】
(2)直列除湿暖房モード
直列除湿暖房モードでは、制御装置60が、図9に示す直列除湿暖房モードでの制御フローを実行する。まず、制御装置60は、ステップS400において、冷房モードと同様に、目標蒸発器温度TEOを決定する。そして、制御装置60は、ステップS410において、冷房モードと同様に、圧縮機11の増減量ΔIVOを決定する。
【0160】
ステップS420において、制御装置60は、ヒータコア42にて送風空気を加熱できるように、高温側熱媒体の目標高温側熱媒体温度TWHOを決定する。目標高温側熱媒体温度TWHOは、目標吹出温度TAOおよびヒータコア42の効率に基づいて、制御マップを参照して決定される。本実施形態の制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標高温側熱媒体温度TWHOが上昇するように決定される。
【0161】
ステップS430において、制御装置60は、開度パターンKPN1の変化量ΔKPN1を決定する。開度パターンKPN1は、暖房用膨張弁14aの絞り開度および冷房用膨張弁14bの絞り開度の組合せを決定するためのパラメータであって、予め定められた制御マップに基づいて決定される。
【0162】
本実施形態における直列除湿暖房モードでは、図10に示すように、開度パターンKPN1を決定するための制御マップは、目標吹出温度TAOが上昇するに伴って開度パターンKPN1の値が小さくなるように設定されている。また、開度パターンKPN1は、暖房用膨張弁14aの絞り開度が最小値、かつ、冷房用膨張弁14bの絞り開度が最大値の際に0%となるように設定されている。そして、開度パターンKPN1は、暖房用膨張弁14aの絞り開度が最大値、かつ、冷房用膨張弁14bの絞り開度が最小値の際に100%になるように設定されている。
【0163】
また、暖房用膨張弁14aの絞り開度、すなわち、暖房用膨張弁14aの開口面積は、開度パターンKPN1の値が大きくなるに伴って大きくなる。これに対して、冷房用膨張弁14bの絞り開度、すなわち、冷房用膨張弁14bの開口面積は、開度パターンKPN1の値が大きくなるに伴って小さくなる。そして、開度パターンKPN1の値が大きくなるに伴って、暖房用膨張弁14aの開口面積および冷房用膨張弁14bの開口面積の合計値が大きくなるように暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの絞り開度の組合せが設定されている。具体的に、直列除湿暖房モードでの暖房用膨張弁14aの開口面積および冷房用膨張弁14bの開口面積の合計値は、開度パターンKPN1の値が増加するに伴って一次関数的に増加するように設定されている。以下、暖房用膨張弁14aの開口面積および冷房用膨張弁14bの開口面積の合計値を除湿合成面積とも呼ぶ。
【0164】
また、開度パターンKPN1、すなわち、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの組合せは、目標吹出温度TAOの変化に応じて、サイクル成績係数が最適となるように予め実験結果等から設定されている。換言すれば、開度パターンKPN1によって決定される除湿合成面積は、サイクル成績係数が最適となるように予め設定されている。開度パターンKPN1は、冷凍サイクル装置10の製造時にあらかじめ定められおり、例えば、制御装置60のROMなどのメモリに記憶しておくことができる。
【0165】
また、暖房用膨張弁14aの絞り開度を大きくするほど水-冷媒熱交換器12における冷媒通路を流通する高圧冷媒から水通路を流通する高温側熱媒体への放熱量が減少する。このため、高温側熱媒体回路40を流れる高温側熱媒体の温度は、開度パターンKPN1が0%の際に最も高くなり、開度パターンKPN1の値が大きくなるに伴って低下し、開度パターンKPN1が100%の際に最も低くなる。
【0166】
なお、エアコンスイッチが投入されてからの最初の制御周期におけるステップS430では、車両用空調装置1が直列除湿暖房モードで動作を開始する際の開度パターンKPN1の値が決定される。後述する各運転モードにおける変化量ΔKPN1を決定する処理も同様に、エアコンスイッチが投入されてからの最初の制御周期では、車両用空調装置1が動作を開始する際の開度パターンKPN1の値が決定される。これにより、車両用空調装置1が動作を開始する際の暖房用膨張弁14aの開口面積および冷房用膨張弁14bの開口面積が決定される。
【0167】
ステップS440において、制御装置60は、冷房モードと同様に、エアミックスドア34の開度SWを算出する。ここで、直列除湿暖房モードでは、冷房モードよりも目標吹出温度TAOが高くなるので、エアミックスドア34の開度SWが100%に近づく。このため、直列除湿暖房モードでは、室内蒸発器18通過後の送風空気のほぼ全流量がヒータコア42を通過するように、エアミックスドア34の開度が決定される。
【0168】
ステップS450において、制御装置60は、冷凍サイクル装置10を直列除湿暖房モードの冷媒回路に切り替える。具体的に、制御装置60は、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bを絞り状態とし、冷却用膨張弁54を全閉状態とし、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bを閉じる。さらに、制御装置60は、ステップS410、S430、S440で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器11、14a、14b、34に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0169】
これにより、圧縮機11は、ステップS410で決定された増減量ΔIVOだけ変化して回転する。また、開度パターンKPN1の値は、ステップS430で決定された変化量ΔKPN1だけ変更する。これにより、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bそれぞれの開口面積の合計値、すなわち、除湿合成面積は、開度パターンKPN1の増減により変更する。そして、エアミックスドア34の開度は、ステップS440で決定された開度SWになる。
【0170】
ところで、直列除湿暖房モードでは、冷却用膨張弁54が全閉される。このため、冷凍サイクル装置10全体としての合成面積は、除湿合成面積と等しい。
【0171】
従って、直列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→暖房用膨張弁14a→室外熱交換器16→逆止弁17→冷房用膨張弁14b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0172】
つまり、直列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能し、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bが減圧部として機能し、室内蒸発器18が蒸発器として機能する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0173】
さらに、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高くなっている際には、室外熱交換器16が放熱器として機能するサイクルが構成される。室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低くなっている際には、室外熱交換器16が蒸発器として機能するサイクルが構成される。
【0174】
これによれば、直列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、室内蒸発器18にて、送風空気を冷却することができるとともに、水-冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができる。従って、直列除湿暖房モードの車両用空調装置1では、室内蒸発器18にて冷却されて除湿された送風空気を、ヒータコア42にて再加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。
【0175】
さらに、直列除湿暖房モードでは、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高くなっている際には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って開度パターンKPN1の値を小さくする。すなわち、直列除湿暖房モードでは、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高くなっている際には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って暖房用膨張弁14aの絞り開度を小さくする。すると、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が低下して外気温Tamとの差が縮小する。これにより、直列除湿暖房モードでは、室外熱交換器16における冷媒の放熱量を減少させて、水-冷媒熱交換器12における冷媒の放熱量を増加させることができる。
【0176】
また、直列除湿暖房モードでは、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低くなっている際には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って開度パターンKPN1の値を大きくする。すなわち、直列除湿暖房モードでは、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低くなっている際には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って暖房用膨張弁14aの絞り開度を小さくする。すると、室外熱交換器16における冷媒の温和温度が低下して外気温Tamとの温度差が拡大する。これにより、直列除湿暖房モードでは、室外熱交換器16における冷媒の吸熱量を増加させて、水-冷媒熱交換器12における冷媒の放熱量を増加させることができる。
【0177】
つまり、直列除湿暖房モードでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って開度パターンKPN1の値を小さくすることによって、水-冷媒熱交換器12における冷媒の高温側熱媒体への放熱量を増加させることができる。従って、直列除湿暖房モードでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴ってヒータコア42における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
【0178】
さらに、目標吹出温度TAOの変化に応じて開度パターンKPN1の値を変更して冷凍サイクル装置10全体としての合成面積を調整することで、直列除湿暖房モードでの動作におけるサイクル成績係数を向上させることができる。
【0179】
(3)並列除湿暖房モード
並列除湿暖房モードでは、制御装置60が、図11に示す並列除湿暖房モードでの制御フローを実行する。まず、ステップS500において、制御装置60は、ヒータコア42にて送風空気を加熱できるように、直列除湿暖房モードのステップS420と同様に、高温側熱媒体の目標高温側熱媒体温度TWHOを決定する。
【0180】
ステップS510において、制御装置60は、圧縮機11の増減量ΔIVOを決定する。並列除湿暖房モードでは、増減量ΔIVOは、目標高温側熱媒体温度TWHOと高温側熱媒体温度TWHとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、高温側熱媒体温度TWHが目標高温側熱媒体温度TWHOに近づくように決定される。
【0181】
ステップS520において、制御装置60は、室内蒸発器18の出口側冷媒の目標過熱度SHEOを決定する。目標過熱度SHEOとしては、予め定めた定数(例えば、5℃)を採用することができる。
【0182】
ステップS530において、制御装置60は、開度パターンKPN1の変化量ΔKPN1を決定する。並列除湿暖房モードでは、目標過熱度SHEOと室内蒸発器18の出口側冷媒の過熱度SHEとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、過熱度SHEが目標過熱度SHEOに近づくように決定される。
【0183】
室内蒸発器18の出口側冷媒の過熱度SHEは、第4冷媒温度センサ64dによって検出された温度T4および冷媒蒸発温度Tefinに基づいて算出される。
【0184】
本実施形態における並列除湿暖房モードでは、図12に示すように、開度パターンKPN1は、暖房用膨張弁14aの絞り開度が最大値、かつ、冷房用膨張弁14bの絞り開度が最小値の際に100%になるように設定されている。また、開度パターンKPN1の値は、暖房用膨張弁14aの絞り開度が最小値、かつ、冷房用膨張弁14bの絞り開度が最大値の際に0%となるように設定されている。
【0185】
また、暖房用膨張弁14aの絞り開度は、開度パターンKPN1の値が大きくなるに伴って大きくなる。これに対して、冷房用膨張弁14bの絞り開度は、開度パターンKPN1の値が大きくなるに伴って小さくなる。そして、開度パターンKPN1の値が大きくなるに伴って、除湿合成面積が大きくなるように暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの絞り開度の組合せが設定されている。具体的に、並列除湿暖房モードでの除湿合成面積は、開度パターンKPN1の値が増加するに伴って一次関数的に増加するように設定されている。
【0186】
また、開度パターンKPN1、すなわち、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの組合せは、サイクル成績係数が最適となるように予め実験結果等から設定されている。換言すれば、除湿合成面積は、サイクル成績係数が最適となるように予め設定されている。
【0187】
また、並列除湿暖房モードでは、冷媒流れに対して室外熱交換器16および室内蒸発器18が並列接続される冷媒流路となる。このため、並列除湿暖房モードでは、暖房用膨張弁14aの絞り開度を大きくするほど室外熱交換器16に流れる冷媒の流量が大きくなるのに対して、室内蒸発器18に流れる冷媒の流量が少なくなる。このため、室内蒸発器18の出口側冷媒の過熱度SHEは、開度パターンKPN1の値が大きくなるに伴って上昇する。従って、室内蒸発器18から流出された冷媒の温度T4は、開度パターンKPN1が0%の際に最も低くなり、開度パターンKPN1の値が大きくなるに伴って上昇し、開度パターンKPN1が100%の際に最も高くなる。
【0188】
ステップS540において、制御装置60は、冷房モードと同様に、エアミックスドア34の開度SWを算出する。ここで、並列除湿暖房モードでは、冷房モードよりも目標吹出温度TAOが高くなるので、直列除湿暖房モードと同様に、エアミックスドア34の開度SWが100%に近づく。このため、並列除湿暖房モードでは、室内蒸発器18通過後の送風空気のほぼ全流量がヒータコア42を通過するように、エアミックスドア34の開度が決定される。
【0189】
ステップS550において、制御装置60は、冷凍サイクル装置10を並列除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bを絞り状態とし、冷却用膨張弁54を全閉状態とする。また、制御装置60は、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bを開く。さらに、制御装置60は、ステップS510、S530、S540で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器11、14a、14b、34に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0190】
これにより、圧縮機11は、ステップS510で決定された増減量ΔIVOだけ変化して回転する。また、開度パターンKPN1の値は、ステップS530で決定された変化量ΔKPN1だけ変更する。これにより、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bそれぞれの開口面積の合計値、すなわち、除湿合成面積は、開度パターンKPN1の増減により変更する。そして、エアミックスドア34の開度は、ステップS540で決定された開度SWになる。
【0191】
ところで、並列除湿暖房モードでは、冷却用膨張弁54が全閉される。このため、冷凍サイクル装置10全体としての合成面積は、直列除湿暖房モードと同様に、除湿合成面積と等しい。
【0192】
従って、並列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→暖房用膨張弁14a→室外熱交換器16→暖房用通路21b→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→バイパス通路21a→冷房用膨張弁14b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0193】
つまり、並列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能し、暖房用膨張弁14aが減圧部として機能し、室外熱交換器16が蒸発器として機能するとともに、暖房用膨張弁14aおよび室外熱交換器16に対して並列的に接続された冷房用膨張弁14bが減圧部として機能し、室内蒸発器18が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
【0194】
これによれば、並列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、室内蒸発器18にて送風空気を冷却することができるとともに、水-冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができる。従って、並列除湿暖房モードの車両用空調装置1では、室内蒸発器18にて冷却されて除湿された送風空気を、ヒータコア42にて再加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。
【0195】
さらに、並列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、室外熱交換器16と室内蒸発器18が冷媒流れに対して並列的に接続され、室内蒸発器18の下流側に蒸発圧力調整弁19が配置されている。これにより、室外熱交換器16における冷媒が蒸発する温度を、室内蒸発器18における冷媒が蒸発する温度よりも低下させることができる。
【0196】
従って、並列除湿暖房モードでは、直列除湿暖房モードよりも、室外熱交換器16における冷媒の吸熱量を増加させることができ、水-冷媒熱交換器12における冷媒の放熱量を増加させることができる。その結果、並列除湿暖房モードでは、直列除湿暖房モードよりも高い加熱能力で送風空気を再加熱することができる。
【0197】
さらに、目標過熱度SHEOの変化に応じて開度パターンKPN1の値を変更して冷凍サイクル装置10全体としての合成面積を調整することで、並列除湿暖房モードでの動作におけるサイクル成績係数を向上させることができる。
【0198】
(4)暖房モード
暖房モードでは、制御装置60が、図13に示す暖房モードでの制御フローを実行する。まず、ステップS600~S610において、制御装置60は、並列除湿暖房モードのステップS500~S510と同様に、高温側熱媒体の目標高温側熱媒体温度TWHOおよび圧縮機11の増減量ΔIVOを決定する。
【0199】
ステップS620において、制御装置60は、水-冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の目標過冷却度SCO2を決定する。目標過冷却度SCO2は、室内蒸発器18へ流入する送風空気の吸込温度あるいは外気温Tamに基づいて、制御マップを参照して決定される。本実施形態の制御マップでは、サイクル成績係数が極大値に近づくように、目標過冷却度SCO2が決定される。
【0200】
ステップS630において、制御装置60は、暖房用膨張弁14aの開口面積の増減量ΔEVHを決定する。増減量ΔEVHは、目標過冷却度SCO2と水-冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の過冷却度SC2との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、当該過冷却度SC2が目標過冷却度SCO2に近づくように決定される。
【0201】
水-冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の過冷却度SC2は、第2冷媒温度センサ64bによって検出された温度T2および冷媒圧力センサ65によって検出された圧力P1に基づいて算出される。
【0202】
なお、エアコンスイッチが投入されてからの最初の制御周期におけるステップS630では、車両用空調装置1が暖房モードで動作を開始する際の暖房用膨張弁14aの開口面積が決定される。後述する各運転モードにおける増減量ΔEVHを決定する処理も同様に、エアコンスイッチが投入されてからの最初の制御周期では、車両用空調装置1が動作を開始する際の暖房用膨張弁14aの開口面積が決定される。
【0203】
ステップS640において、制御装置60は、冷房モードと同様に、エアミックスドア34の開度SWを算出する。ここで、暖房モードでは、冷房モードよりも目標吹出温度TAOが高くなるので、エアミックスドア34の開度SWが100%に近づく。このため、暖房モードでは、室内蒸発器18通過後の送風空気のほぼ全流量がヒータコア42を通過するように、エアミックスドア34の開度が決定される。
【0204】
ステップS650において、制御装置60は、冷凍サイクル装置10を暖房モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁54を全閉状態とし、除湿用開閉弁15aを閉じ、暖房用開閉弁15bを開く。さらに、制御装置60は、ステップS610、S630、S640で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器11、14a、34に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0205】
これにより、圧縮機11は、ステップS610で決定された増減量ΔIVOだけ変化して回転する。また、暖房用膨張弁14aの開口面積は、ステップS630で決定された増減量ΔEVHだけ変更する。そして、エアミックスドア34の開度は、ステップS640で決定された開度SWになる。
【0206】
従って、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→暖房用膨張弁14a→室外熱交換器16→暖房用通路21b→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0207】
つまり、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能し、暖房用膨張弁14aが減圧部として機能し、室外熱交換器16が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
【0208】
これによれば、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができる。従って、暖房モードの車両用空調装置1では、ヒータコア42にて加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
【0209】
さらに、水-冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の過冷却度SC2が目標過冷却度SCO2に近づくように暖房用膨張弁14aの開口面積を調整することによって、暖房モードでの動作におけるサイクル成績係数を向上させることができる。
【0210】
(5)冷房+冷却モード
冷房+冷却モードでは、制御装置60が、図14に示す冷房+冷却モードでの制御フローを実行する。まず、ステップS700~S740において、制御装置60は、冷房モードのステップS300~S340と同様に、目標蒸発器温度TEO、圧縮機11の増減量ΔIVO、目標過冷却度SCO1、冷房用膨張弁14bの増減量ΔEVC、エアミックスドア34の開度SWを決定する。
【0211】
次に、ステップS750において、電池冷却器51の出口側冷媒の目標過熱度SHCO1を決定する。目標過熱度SHCO1としては、予め定めた定数(例えば、5℃)を採用することができる。
【0212】
ステップS760において、制御装置60は、冷却用膨張弁54の開口面積の増減量ΔEVBを決定する。冷房+冷却モードでは、増減量ΔEVBは、目標過熱度SHCO1と電池冷却器51から流出した冷媒の過熱度SHC1との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、当該過熱度SHC1が目標過熱度SHCO1に近づくように決定される。
【0213】
電池冷却器51から流出した冷媒の過熱度SHC1は、冷却器入口温度センサ55aによって検出された冷却器入口温度TW1および冷却器出口温度センサ55bによって検出された冷却器出口温度TW2に基づいて算出される。
【0214】
なお、エアコンスイッチが投入されてからの最初の制御周期におけるステップS760では、車両用空調装置1が冷房+冷却モードで動作を開始する際の冷却用膨張弁54の開口面積が決定される。後述する各運転モードにおける増減量ΔEVBを決定する処理も同様に、エアコンスイッチが投入されてからの最初の制御周期では、車両用空調装置1が動作を開始する際の冷却用膨張弁54の開口面積が決定される。
【0215】
電池冷却器51から流出した冷媒の過熱度SHC1は、冷却器出口温度センサ55bによって検出された冷却器出口温度TW2と電池冷却器51から流出した冷媒の圧力に基づいて算出してもよい。この場合、電池冷却器51の冷媒流出口側のバッテリ冷媒通路53aに電池冷却器51から流出された冷媒の圧力を検出する圧力センサが設けられていてもよい。
【0216】
そして、ステップS770~S800において、過度に冷却された冷媒が電池冷却器51に流れることを防ぐため、ステップS760で決定された増減量ΔEVBだけ開口面積を変更して冷却用膨張弁54を開放するかどうかの決定処理を行う。このため、まず、ステップS770において、直前の制御周期における冷却用膨張弁54の状態が開放状態であったか否かを判定する。ステップS770において、冷却用膨張弁54の状態が開放状態であったと判定した場合、制御装置60は、ステップS780へ進む。また、ステップS770において、冷却用膨張弁54の状態が開放状態であったと判定されなかった場合、制御装置60は、ステップS790へ進む。
【0217】
ステップS780において、制御装置60は、冷媒が過度に冷却されているか否かを判定する。具体的には、制御装置60は、冷却器出口温度センサ55bによって検出された冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であるか否かを判定する。冷却用基準温度σ1は、電池冷却器51に過度に冷却された冷媒が流れることによってバッテリ52が過冷却されることを防ぐために定められる温度として定数(例えば、2℃)を採用することができる。
【0218】
ステップS780において、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定した場合、制御装置60は、ステップS800へ進む。また、ステップS780において、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定されなかった場合、制御装置60は、ステップS800の処理をスキップする。
【0219】
ステップS790において、制御装置60は、冷媒が過度に冷却されたことによって直前の制御周期で冷却用膨張弁54が閉じられた状態であったと判定された場合において、時間が経過したことによって、再度冷媒が冷却可能な温度まで上昇したか否かを判定する。具体的に、制御装置60は、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ2以上であるか否かを判定する。冷却用基準温度σ2は、冷媒が過度に冷却された場合であっても、時間経過によって冷媒の温度が上昇した際に電池冷却器51に再度冷媒を流し始めるための判断基準として定められる。冷却用基準温度σ2は、冷却用基準温度σ1よりも高い温度であって、定数(例えば、5℃)を採用することができる。冷却用基準温度σ1と冷却用基準温度σ2との温度差である3℃という値は、冷却用膨張弁54の開閉のハンチング防止のためのヒステリシス幅である。
【0220】
ステップS790において、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ2以上であると判定されなかった場合、制御装置60は、ステップS800へ進む。また、ステップS790において、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合、制御装置60は、ステップS800の処理をスキップする。
【0221】
ステップS800において、制御装置60は、冷却用膨張弁54の絞り開度を全閉(すなわち、0%)に決定し、ステップS810へ進む。このように、制御装置60は、ステップS760の処理によらず、冷媒が充分に冷却されているか否かに基づいて、冷却用基準温度σ1および冷却用基準温度σ2を用いて冷却用膨張弁54の開閉状態を決定する。すなわち、制御装置60は、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下まで低下すると、冷却用膨張弁54の状態を全閉状態に決定し、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ2以上まで上昇すると、冷却用膨張弁54の状態を開放状態に決定する。なお、ヒステリシス幅は、2℃など、3℃に比べて小さい値でもよいし、4℃など、3℃に比べて大きい値であってもよい。
【0222】
ステップS810において、制御装置60は、冷凍サイクル装置10を冷房+冷却モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを全開状態とし、冷房用膨張弁14bを絞り状態とし、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bを閉じる。そして、ステップS780において、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定されなかった場合、ステップS810において、制御装置60は、冷却用膨張弁54を絞り状態とする。または、ステップS790において、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合、ステップS810において、制御装置60は、冷却用膨張弁54を絞り状態とする。
【0223】
さらに、制御装置60は、ステップS710、S730、S740、S760で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器11、14b、54、34に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0224】
これにより、圧縮機11は、ステップS710で決定された増減量ΔIVOだけ変化して回転する。また、冷房用膨張弁14bの開口面積は、ステップS730で決定された増減量ΔEVCだけ変更する。そして、冷却用膨張弁54の開口面積は、ステップS760で決定された増減量ΔEVBだけ変更する。このため、冷凍サイクル装置10全体の合成面積は、冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁54それぞれの開口面積の合計値となる。さらに、エアミックスドア34の開度は、ステップS740で決定された開度SWになる。
【0225】
なお、ステップS780、S790で冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定した場合、または、冷却用基準温度σ2以上であると判定されなかった場合、ステップS810における冷却用膨張弁54の作動のみが異なる。具体的に、ステップS810において、制御装置60は、冷却用膨張弁54を全閉状態とする。冷却用膨張弁54以外の各制御対象機器の作動は、ステップS780、S790で冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定されなかった場合、または、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合と同様である。
【0226】
これにより、圧縮機11は、ステップS710で決定された増減量ΔIVOだけ変化して回転する。また、冷房用膨張弁14bの開口面積は、ステップS730で決定された増減量ΔEVCだけ変更する。そして、冷却用膨張弁54は、全閉状態となる。このため、冷凍サイクル装置10全体の合成面積は、冷房用膨張弁14bの開口面積となる。さらに、エアミックスドア34の開度は、ステップS740で決定された開度SWになる。
【0227】
従って、冷房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、ステップS810において、冷却用膨張弁54が絞り状態とされた場合、図1の白抜き矢印で示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられる。すなわち、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12(→暖房用膨張弁14a)→室外熱交換器16→逆止弁17→冷房用膨張弁14b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12(→暖房用膨張弁14a)→室外熱交換器16→逆止弁17→冷却用膨張弁54→電池冷却器51→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0228】
つまり、冷房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12および室外熱交換器16が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能し、冷房用膨張弁14bが減圧部として機能し、室内蒸発器18が蒸発器として機能するとともに、冷房用膨張弁14bおよび室内蒸発器18に対して並列的に接続された冷却用膨張弁54が減圧部として機能し、電池冷却器51が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
【0229】
これによれば、冷房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、室内蒸発器18にて送風空気を冷却することができるとともに、水-冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができる。さらに、冷房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、電池冷却器51に冷却用膨張弁54で減圧した低圧の冷媒を流すことができる。
【0230】
従って、冷房+冷却モードの車両用空調装置1では、エアミックスドア34の開度調整によって、室内蒸発器18にて冷却された送風空気の一部をヒータコア42にて再加熱し、目標吹出温度TAOに近づくように温度調整された送風空気を車室内へ吹き出す。これにより、車両用空調装置1は、車室内の冷房を行うことができる。
【0231】
さらに、電池冷却器51にて冷媒を蒸発させることによって、バッテリ52の冷却を行うことができる。
【0232】
また、冷房+冷却モードでは、冷房モード単独での動作と異なり、冷凍サイクル装置10全体の合成面積が、冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁54それぞれの開口面積の合計値となる。そして、冷房+冷却モードでは、過冷却度SC1が目標過冷却度SCO1に近づくように冷房用膨張弁14bの開口面積を調整し、過熱度SHC1が目標過熱度SHCO1に近づくように冷却用膨張弁54の開口面積を調整する。これにより、冷房+冷却モードでの動作におけるサイクル成績係数を向上させることができる。
【0233】
また、冷房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、ステップS810において、冷却用膨張弁54が全閉状態とされた場合、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12(→暖房用膨張弁14a)→室外熱交換器16→逆止弁17→冷房用膨張弁14b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0234】
この場合、冷房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12および室外熱交換器16が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能し、冷房用膨張弁14bが減圧部として機能し、室内蒸発器18が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。なお、冷房+冷房モードの冷凍サイクル装置10では、冷却用膨張弁54の状態が絞り状態であるか全閉状態であるかに関わらず、冷媒が暖房用膨張弁14aを通過するが、全開状態である暖房用膨張弁14aでは冷媒減圧作用が発揮されない。
【0235】
これによれば、車両用空調装置1は、冷媒が過度に冷却された場合に、過度に冷却された冷媒が電池冷却器51に流れることを抑制することによって、バッテリ52が過冷却されることを防ぎつつ、車室内の冷房を行うことができる。
【0236】
(6)暖房+冷却モード
暖房+冷却モードでは、制御装置60が、図15に示す暖房+冷却モードの制御フローを実行する。まず、ステップS900において、制御装置60は、電池冷却器51にてバッテリ52を冷却できるように、電池冷却器51に流入する冷媒の目標電池冷却冷媒温度TWO1を決定する。
【0237】
ステップS910において、制御装置60は、圧縮機11の増減量ΔIVOを決定する。暖房+冷却モードでは、増減量ΔIVOは、目標電池冷却冷媒温度TWO1と冷却器入口温度TW1との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、冷却器入口温度TW1が目標電池冷却冷媒温度TWO1に近づくように決定される。
【0238】
ステップS920において、制御装置60は、室外熱交換器16から流出した冷媒の目標過冷却度SCO1を決定する。暖房+冷却モードの目標過冷却度SCO1は、外気温Tamに基づいて、制御マップを参照して決定される。本実施形態の制御マップでは、サイクル成績係数が極大値に近づくように、目標過冷却度SCO1を決定する。
【0239】
ステップS930において、制御装置60は、冷却用膨張弁54の開口面積の増減量ΔEVBを決定する。増減量ΔEVBは、目標過冷却度SCO1と室外熱交換器16の出口側冷媒の過冷却度SC1との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、室外熱交換器16の出口側冷媒の過冷却度SC1が目標過冷却度SCO1に近づくように決定される。室外熱交換器16の出口側冷媒の過冷却度SC1は、冷房モードと同様に、第3冷媒温度センサ64cによって検出された温度T3および冷媒圧力センサ65によって検出された圧力P1に基づいて算出される。
【0240】
ステップS940において、制御装置60は、冷房モードのステップS340と同様に、エアミックスドア34の開度SWを算出する。
【0241】
ステップS950において、制御装置60は、冷凍サイクル装置10を暖房+冷却モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを全開状態とし、冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、冷却用膨張弁54を絞り状態とし、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bを閉じる。さらに、制御装置60は、ステップS910、S930、S940で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器11、54、34に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0242】
これにより、圧縮機11は、ステップS910で決定された増減量ΔIVOだけ変化して回転する。また、冷却用膨張弁54の開口面積は、ステップS930で決定された増減量ΔEVBだけ変更する。そして、エアミックスドア34の開度は、ステップS940で決定された開度SWになる。
【0243】
従って、暖房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、図1の横線矢印で示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられる。すなわち、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12(→暖房用膨張弁14a)→室外熱交換器16→逆止弁17→冷却用膨張弁54→電池冷却器51→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0244】
つまり、暖房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12および室外熱交換器16が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能し、冷却用膨張弁54が冷媒を減圧させる減圧部として機能し、電池冷却器51が蒸発器として機能することで蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。なお、暖房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、冷媒が暖房用膨張弁14aを通過するが、全開状態である暖房用膨張弁14aでは冷媒減圧作用が発揮されない。
【0245】
これによれば、水-冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができるとともに、電池冷却器51に冷却用膨張弁54で減圧した低圧の冷媒を流すことができる。
【0246】
従って、暖房+冷却モードの車両用空調装置1では、ヒータコア42にて加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。さらに、電池冷却器51にて冷媒を蒸発させることによって、バッテリ52の冷却を行うことができる。
【0247】
また、室外熱交換器16の出口側冷媒の過冷却度SC1が目標過冷却度SCO1に近づくように冷却用膨張弁54の開口面積を調整することによって、暖房+冷却モードでの動作におけるサイクル成績係数を向上させることができる。
【0248】
(7)暖房+直列冷却モード
暖房+直列冷却モードでは、制御装置60が、図16に示す暖房+直列冷却モードの制御フローを実行する。まず、ステップS1000~S1010において、制御装置60は、暖房+冷却モードと同様に、目標電池冷却冷媒温度TWO1および圧縮機11の増減量ΔIVOを決定する。
【0249】
ステップS1020において、制御装置60は、直列除湿暖房モードと同様に、高温側熱媒体の目標高温側熱媒体温度TWHOを決定する。
【0250】
ステップS1030において、制御装置60は、開度パターンKPN2の変化量ΔKPN2を決定する。開度パターンKPN2は、暖房用膨張弁14aの絞り開度および冷却用膨張弁54の絞り開度の組合せを決定するためのパラメータである。
【0251】
本実施形態における暖房+直列冷却モードでは、図17に示すように、開度パターンKPN2は、暖房用膨張弁14aの絞り開度が最小値、かつ、冷却用膨張弁54の絞り開度が最大値の際に0%となるように設定されている。また、開度パターンKPN2は、暖房用膨張弁14aの絞り開度が最大値、かつ、冷却用膨張弁54の絞り開度が最小値の際に100%になるように設定されている。そして、開度パターンKPN2を決定するための制御マップは、目標吹出温度TAOが上昇するに伴って小さくなるように設定されている。
【0252】
また、暖房用膨張弁14aの絞り開度は、開度パターンKPN2の値が大きくなるに伴って大きくなる。これに対して、冷却用膨張弁54の絞り開度は、開度パターンKPN2の値が大きくなるに伴って小さくなる。そして、開度パターンKPN2の値が大きくなるに伴って、暖房用膨張弁14aの開口面積および冷却用膨張弁54の開口面積の合計値が大きくなるように暖房用膨張弁14aおよび冷却用膨張弁54の絞り開度の組合せが設定されている。具体的に、暖房+直列冷却モードでの暖房用膨張弁14aの開口面積および冷却用膨張弁54の開口面積の合計値は、開度パターンKPN2の値が増加するに伴って一次関数的に増加するように設定されている。
【0253】
また、開度パターンKPN2、すなわち、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの組合せは、目標吹出温度TAOの変化に応じて、サイクル成績係数が最適となるように予め実験結果等から設定されている。開度パターンKPN2は、開度パターンKPN1と同様に、冷凍サイクル装置10の製造時にあらかじめ定められおり、例えば、制御装置60のROMなどのメモリに記憶しておくことができる。
【0254】
また、暖房用膨張弁14aの絞り開度を大きくするほど水-冷媒熱交換器12における冷媒通路を流通する高圧冷媒から、水通路を流通する高温側熱媒体への放熱量が減少する。このため、高温側熱媒体回路40を流れる高温側熱媒体の温度は、開度パターンKPN2が0%の際に最も高くなり、開度パターンKPN2の値が大きくなるに伴って低下し、開度パターンKPN2が100%の際に最も低くなる。
【0255】
なお、エアコンスイッチが投入されてからの最初の制御周期におけるステップS1030では、車両用空調装置1が暖房+直列冷却モードで動作を開始する際の暖房用膨張弁14aの開口面積および冷却用膨張弁54の開口面積が決定される。後述する各運転モードにおける変化量ΔKPN2を決定する処理も同様に、エアコンスイッチが投入されてからの最初の制御周期では、車両用空調装置1が動作を開始する際の暖房用膨張弁14aの開口面積および冷却用膨張弁54の開口面積が決定される。
【0256】
ステップS1040において、制御装置60は、冷房モードのステップS340と同様に、エアミックスドア34の開度SWを算出する。
【0257】
ステップS1050において、制御装置60は、冷凍サイクル装置10を暖房+直列冷却モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aおよび冷却用膨張弁54を絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bを閉じる。さらに、制御装置60は、ステップS1010、S1030、S1040で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0258】
これにより、圧縮機11は、ステップS1010で決定された増減量ΔIVOだけ変化して回転する。また、開度パターンKPN2は、ステップS1040で決定された変化量ΔKPN2だけ変更する。これにより、暖房用膨張弁14aおよび冷却用膨張弁54それぞれの開口面積の合計値は、開度パターンKPN2の増減により変更する。そして、エアミックスドア34の開度は、ステップS1040で決定された開度SWになる。
【0259】
ところで、暖房+直列冷却モードでは、冷房用膨張弁14bが全閉される。このため、暖房用膨張弁14aの開口面積および冷却用膨張弁54の開口面積の合計値が、冷凍サイクル装置10全体としての合成面積となる。
【0260】
従って、暖房+直列冷却モードの冷凍サイクル装置10では、暖房+冷却モードと同様、横線矢印で示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられる。すなわち、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→暖房用膨張弁14a→室外熱交換器16→逆止弁17→冷却用膨張弁54→電池冷却器51→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0261】
つまり、暖房+直列冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能し、暖房用膨張弁14aおよび冷却用膨張弁54が減圧部として機能し、電池冷却器51が蒸発器として機能する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0262】
さらに、暖房+直列冷却モードの冷凍サイクル装置10では、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高くなっている際には、室外熱交換器16が放熱器として機能するサイクルが構成される。また、暖房+直列冷却モードの冷凍サイクル装置10では、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低くなっている際には、室外熱交換器16が蒸発器として機能するサイクルが構成される。
【0263】
これによれば、暖房+直列冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができるとともに、電池冷却器51に冷却用膨張弁54で減圧した低圧の冷媒を流すことができる。
【0264】
従って、暖房+直列冷却モードの車両用空調装置1では、ヒータコア42にて加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。さらに、暖房+直列冷却モードの車両用空調装置1では、電池冷却器51にて冷媒を蒸発させることによって、バッテリ52の冷却を行うことができる。
【0265】
さらに、暖房+直列冷却モードでは、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高くなっている際には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って開度パターンKPN2の値を小さくする。すなわち、暖房+直列冷却モードでは、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高くなっている際には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って暖房用膨張弁14aの絞り開度を小さくする。すると、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が低下して外気温Tamとの差が縮小する。これにより、暖房+直列冷却モードでは、室外熱交換器16における冷媒の放熱量を減少させて、水-冷媒熱交換器12における冷媒の放熱量を増加させることができる。
【0266】
また、暖房+直列冷却モードでは、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低くなっている際には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って開度パターンKPN2の値を小さくする。すなわち、暖房+直列冷却モードでは、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低くなっている際には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って暖房用膨張弁14aの絞り開度を小さくする。すると、室外熱交換器16における冷媒の温和温度が低下して外気温Tamとの温度差が拡大する。これにより、暖房+直列冷却モードでは、室外熱交換器16における冷媒の吸熱量を増加させて、水-冷媒熱交換器12における冷媒の放熱量を増加させることができる。
【0267】
つまり、暖房+直列冷却モードでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って開度パターンKPN2の値を小さくすることによって、水-冷媒熱交換器12における冷媒の高温側熱媒体への放熱量を増加させることができる。従って、暖房+直列冷却モードでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴ってヒータコア42における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
【0268】
その結果、暖房+直列冷却モードでは、暖房+冷却モードよりも高い加熱能力で送風空気を加熱することができる。換言すると、暖房+冷却モードは、暖房+直列冷却モードよりも低い加熱能力で送風空気を加熱する運転モードである。
【0269】
また、暖房+直列冷却モードでは、暖房モード単独での動作と異なり、冷凍サイクル装置10全体の合成面積が、暖房用膨張弁14aおよび冷却用膨張弁54それぞれの開口面積の合計値となる。そして、暖房+直列冷却モードでは、目標吹出温度TAOの変化に応じて開度パターンKPN2の値を変更して冷凍サイクル装置10全体としての合成面積を調整することで、暖房+直列冷却モードでの動作におけるサイクル成績係数を向上させることができる。
【0270】
(8)暖房+並列冷却モード
暖房+並列冷却モードでは、制御装置60が、図18に示す暖房+並列冷却モードの制御フローを実行する。まず、ステップS1100において、制御装置60は、ヒータコア42にて送風空気を加熱できるように、並列除湿暖房モードと同様に、高温側熱媒体の目標高温側熱媒体温度TWHOが決定される。
【0271】
ステップS1110において、制御装置60は、圧縮機11の増減量ΔIVOを決定する。暖房+並列冷却モードでは、増減量ΔIVOは、並列除湿暖房モードと同様に、目標高温側熱媒体温度TWHOと高温側熱媒体温度TWHとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、高温側熱媒体温度TWHが目標高温側熱媒体温度TWHOに近づくように決定される。
【0272】
ステップS1120において、制御装置60は、電池冷却器51の出口側冷媒の目標過熱度SHCO1を決定する。目標過熱度SHCO1としては、予め定めた定数(例えば、5℃)を採用することができる。
【0273】
ステップS1130において、制御装置60は、開度パターンKPN2の変化量ΔKPN2を決定する。暖房+並列冷却モードでは、目標過熱度SHCO1と電池冷却器51から流出した冷媒の過熱度SHC1との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、過熱度SHC1が目標過熱度SHCO1に近づくように決定される。
【0274】
本実施形態における暖房+並列除湿暖房モードでは、図19に示すように、開度パターンKPN2は、暖房用膨張弁14aの絞り開度が最大値、かつ、冷却用膨張弁54の絞り開度が最小値の際に100%となるように設定されている。また、開度パターンKPN2は、暖房用膨張弁14aの絞り開度が最小値、かつ、冷却用膨張弁54の絞り開度が最大値の際に0%になるように設定されている。
【0275】
また、開度パターンKPN2の値が大きくなるに伴って、暖房用膨張弁14aの絞り開度が大きくなり、冷却用膨張弁54の絞り開度が小さくなる。そして、開度パターンKPN2の値が大きくなるに伴って、暖房用膨張弁14aの開口面積および冷却用膨張弁54の開口面積の合計値が大きくなるように暖房用膨張弁14aおよび冷却用膨張弁54の絞り開度の組合せが設定されている。具体的に、暖房+並列除湿暖房モードでの暖房用膨張弁14aの開口面積および冷却用膨張弁54の開口面積の合計値は、開度パターンKPN2の値が増加するに伴って一次関数的に増加するように設定されている。
【0276】
また、開度パターンKPN2、すなわち、暖房用膨張弁14aおよび冷却用膨張弁54の組合せは、サイクル成績係数が最適となるように予め実験結果等から設定されている。換言すれば、暖房用膨張弁14aの開口面積および冷却用膨張弁54の開口面積の合計値は、サイクル成績係数が最適となるように予め設定されている。
【0277】
また、暖房+並列冷却モードでは、冷媒流れに対して室外熱交換器16および電池冷却器51が並列接続される冷媒流路となる。このため、暖房+並列冷却モードでは、暖房用膨張弁14aの絞り開度を大きくするほど室外熱交換器16に流れる冷媒の流量が大きくなるのに対して、電池冷却器51に流れる冷媒の流量が少なくなる。このため、電池冷却器51の出口側冷媒の過熱度SHC1は、開度パターンKPN2が大きくなるに伴って上昇する。従って、電池冷却器51から流出された冷媒の冷却器出口温度TW2は、開度パターンKPN2が0%の際に最も低くなり、開度パターンKPN2が大きくなるに伴って上昇し、開度パターンKPN2が100%の際に最も高くなる。
【0278】
ステップS1140において、制御装置60は、冷房モードのステップS340と同様に、エアミックスドア34の開度SWを算出する。
【0279】
また、ステップS1150~S1180において、制御装置60は、冷房+冷却モードのステップS770~S800と同様の処理を実行する。具体的に、制御装置60は、ステップS1150において直前の制御周期における冷却用膨張弁54の状態が開放状態であったか否かを判定する。
【0280】
そして、ステップS1150において、冷却用膨張弁54の状態が開放状態であったと判定した場合、ステップS1160において、制御装置60は、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であるかを判定する。また、ステップS1150において、冷却用膨張弁54の状態が開放状態であったと判定されなかった場合、ステップS1170において、制御装置60は、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ2以上であるかを判定する。
【0281】
ステップS1160において、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定されなかった場合、制御装置60は、ステップS1180の処理をスキップする。また、ステップS1170において、冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合、制御装置60は、ステップS1180の処理をスキップする。
【0282】
これに対して、ステップS1160、S1170で冷却器出口温度TW2が、冷却用基準温度σ1以下であると判定した場合、または、冷却用基準温度σ2以上であると判定されなかった場合、制御装置60は、冷却用膨張弁54の絞り開度を全閉に決定する。
【0283】
ステップS1190において、制御装置60は、冷凍サイクル装置10を暖房+並列冷却モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bを開く。そして、ステップS1160において、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定されなかった場合、ステップS1190において、制御装置60は、冷却用膨張弁54を絞り状態とする。または、S1170において、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合、ステップS1190において、制御装置60は、冷却用膨張弁54を絞り状態とする。
【0284】
さらに、制御装置60は、ステップS1110、S1130、S1140で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器に11、14a、54、34対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0285】
これにより、圧縮機11は、ステップS1110で決定された増減量ΔIVOだけ変化して回転する。また、開度パターンKPN2は、ステップS1130で決定された変化量ΔKPN2だけ変更する。これにより、暖房用膨張弁14aおよび冷却用膨張弁54それぞれの開口面積の合計値は、開度パターンKPN2の増減により変更する。そして、エアミックスドア34の開度は、ステップS1140で決定された開度SWになる。
【0286】
ところで、暖房+並列冷却モードでは、冷房用膨張弁14bが全閉される。このため、暖房+直列冷却モードと同様に、暖房用膨張弁14aの開口面積および冷却用膨張弁54の開口面積の合計値が、冷凍サイクル装置10全体としての合成面積となる。
【0287】
なお、ステップS1160、S1170で冷却器出口温度TW2が、冷却用基準温度σ1以下であると判定した場合、または、冷却用基準温度σ2以上であると判定されなかった場合、ステップS1190における冷却用膨張弁54の作動のみが異なる。具体的に、ステップS1190において、制御装置60は、冷却用膨張弁54を全閉状態とする。冷却用膨張弁54以外の各制御対象機器の作動は、ステップS1160、S1170で冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定されなかった場合、または、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合と同様である。
【0288】
この場合、圧縮機11は、ステップS1110で決定された増減量ΔIVOだけ変化して回転する。また、開度パターンKPN2は、ステップS1130で決定された変化量ΔKPN2だけ変更する。これにより、暖房用膨張弁14aの開口面積は、開度パターンKPN2の増減により変更する。そして、冷却用膨張弁54は、全閉状態となる。そして、エアミックスドア34の開度は、ステップS1140で決定された開度SWになる。
【0289】
従って、ステップS1190において、冷却用膨張弁54が絞り状態とされた場合、暖房+並列冷却モードの冷凍サイクル装置10では、図1の縦線矢印で示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられる。すなわち、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→暖房用膨張弁14a→室外熱交換器16→暖房用通路21b→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→バイパス通路21a→冷却用膨張弁54→電池冷却器51→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0290】
つまり、暖房+並列冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能し、暖房用膨張弁14aが減圧部として機能し、室外熱交換器16が蒸発器として機能するとともに、暖房用膨張弁14aおよび室外熱交換器16に対して並列的に接続された冷却用膨張弁54が減圧部として機能し、電池冷却器51が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
【0291】
これによれば、暖房+並列冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができるとともに、電池冷却器51に冷却用膨張弁54で減圧した低圧の冷媒を流すことができる。
【0292】
従って、暖房+並列冷却モードの車両用空調装置1では、ヒータコア42にて加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。さらに、暖房+並列冷却モードの車両用空調装置1では、電池冷却器51にて冷媒を蒸発させることによって、バッテリ52の冷却を行うことができる。
【0293】
さらに、暖房+並列冷却モードの冷凍サイクル装置10では、室外熱交換器16と電池冷却器51が冷媒流れに対して並列的に接続され、電池冷却器51の冷媒通路の下流側に蒸発圧力調整弁19が配置されている。これにより、室外熱交換器16における冷媒が蒸発する温度を、電池冷却器51の冷媒通路における冷媒が蒸発する温度よりも低下させることができる。
【0294】
従って、暖房+並列冷却モードでは、暖房+直列冷却モードよりも、室外熱交換器16における冷媒の吸熱量を増加させることができ、水-冷媒熱交換器12における冷媒の放熱量を増加させることができる。その結果、暖房+並列冷却モードでは、暖房+直列冷却モードよりも高い加熱能力で送風空気を再加熱することができる。
【0295】
また、暖房+並列冷却モードでは、目標過熱度SHCO1の変化に応じて開度パターンKPN2を変更して冷凍サイクル装置10全体としての合成面積を調整することで、暖房+並列冷却モードでの動作におけるサイクル成績係数を向上させることができる。
【0296】
また、ステップS1190において、冷却用膨張弁54が全閉状態とされた場合、暖房+並列冷却モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→暖房用膨張弁14a→室外熱交換器16→暖房用通路21b→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0297】
この場合、暖房+並列冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能し、暖房用膨張弁14aが減圧部として機能し、室外熱交換器16が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
【0298】
これによれば、冷房+冷却モードと同様に、車両用空調装置1は、冷媒が過度に冷却された場合に、過度に冷却された冷媒が電池冷却器51に流れることを抑制することによって、バッテリ52が過冷却されることを防ぎつつ、車室内の暖房を行うことができる。
【0299】
(9)冷却モード
冷却モードでは、制御装置60が、図20に示す冷却モードの制御フローを実行する。まず、ステップS1200~S1240において、制御装置60は、暖房+冷却モードのステップS900~S940と同様に、低温側熱媒体の目標電池冷却冷媒温度TWO1、圧縮機11の増減量ΔIVO、目標過冷却度SCO1、冷却用膨張弁54の増減量ΔEVB、エアミックスドア34の開度SWを決定する。
【0300】
ここで、冷却モードでは、目標吹出温度TAOが暖房用基準温度γより低くなるので、エアミックスドア34の開度SWが0%に近づく。このため、冷却モードでは、室内蒸発器18通過後の送風空気のほぼ全流量が冷風バイパス通路35を通過するように、エアミックスドア34の開度が決定される。
【0301】
ステップS1250において、制御装置60は、冷凍サイクル装置10を冷却モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを全開状態とし、冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、冷却用膨張弁54を絞り状態とし、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bを閉じる。さらに、制御装置60は、ステップS1210、S1230、S1240で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0302】
これにより、圧縮機11は、ステップS1210で決定された増減量ΔIVOだけ変化して回転する。また、冷却用膨張弁54の開口面積は、ステップS1230で決定された増減量ΔEVBだけ変更する。また、エアミックスドア34の開度は、ステップS1240で決定された開度SWになる。
【0303】
従って、冷却モードの冷凍サイクル装置10では、図1の黒矢印で示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられる。すなわち、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12(→暖房用膨張弁14a)→室外熱交換器16→逆止弁17→冷却用膨張弁54→電池冷却器51→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0304】
つまり、冷却モードの冷凍サイクル装置10では、室外熱交換器16が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能し、冷却用膨張弁54が減圧部として機能し、電池冷却器51が蒸発器として機能する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。なお、冷却モードの冷凍サイクル装置10では、冷媒が暖房用膨張弁14aを通過するが、全開状態である暖房用膨張弁14aでは冷媒減圧作用が発揮されない。
【0305】
これによれば、冷却モードの冷凍サイクル装置10では、電池冷却器51に冷却用膨張弁54で減圧した低圧の冷媒を流すことができる。従って、冷却モードの車両用空調装置1では、電池冷却器51にて冷媒を蒸発させることによって、バッテリ52の冷却を行うことができる。
【0306】
また、室外熱交換器16の出口側冷媒の過冷却度SC1が目標過冷却度SCO1に近づくように冷却用膨張弁54の開口面積を調整することによって、冷却モードでの動作におけるサイクル成績係数を向上させることができる。
【0307】
(10)直列除湿暖房+冷却モード
直列除湿暖房+冷却モードにおいて、冷却および除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出すことができるように、制御装置60は、直列除湿暖房モードと同様、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bを絞り状態とする。さらに、制御装置60は、冷房用膨張弁14bに並列的に接続された冷却用膨張弁54で減圧した低圧の冷媒を電池冷却器51に流すことができるように、冷房+冷却モードと同様、冷却用膨張弁54を絞り状態とする。
【0308】
ここで、仮に、制御装置60が暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bそれぞれの開口面積を暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bが直列的に接続される直列除湿暖房モードの制御処理と同じ処理で決定したとする。また、冷却用膨張弁54の開口面積を冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁54が並列的に接続される冷房+冷却モードの制御処理と同じ処理で決定したとする。そして、このように暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁54それぞれの開口面積を決定した場合の動作モードを、本実施形態の直列除湿暖房+冷却モードと比較するための比較例である仮直列除湿暖房+冷却モードとする。以下に、仮直列除湿暖房+冷却モードで冷凍サイクル装置10を動作させる場合の開度パターンKPN1および冷凍サイクル装置10全体の合成面積について、図21を参照して説明する。
【0309】
仮直列除湿暖房+冷却モードのおける暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの組合せは、直列除湿暖房モードのステップS430において決定される変化量ΔKPN1で定まる暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの組合せと同じ組合せとなる。このため、仮直列除湿暖房+冷却モードにおける暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bそれぞれの開口面積は、直列除湿暖房モードの制御処理で決まる暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bそれぞれの開口面積と同じ面積となる。
【0310】
この場合、仮直列除湿暖房+冷却モードにおける除湿合成面積は、図21の破線で示すように直列除湿暖房モードにおける除湿合成面積と同じ面積となる。また、図21に示すように、仮直列除湿暖房+冷却モードにおける除湿合成面積は、直列除湿暖房モードにおける除湿合成面積と同様に目標吹出温度TAOが上昇するに伴って小さくなる。
【0311】
また、仮直列除湿暖房+冷却モードにおける冷却用膨張弁54の開口面積は、冷房+冷却モードのステップS760において決定される開口面積と同じ面積になる。この場合の冷却用膨張弁54の開口面積を、例えば、図21の一点鎖線で示すように面積Aとする。
【0312】
そして、仮直列除湿暖房+冷却モードにおける冷凍サイクル装置10全体としての合成面積は、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁54それぞれの開口面積の合計値となる。すると、仮直列除湿暖房+冷却モードにおける冷凍サイクル装置10全体としての合成面積は、図21の二点鎖線で示すように、除湿合成面積よりも面積Aだけ大きくなる。
【0313】
ここで、上述のように、仮直列除湿暖房+冷却モードにおける除湿合成面積は、直列除湿暖房モードにおける除湿合成面積と同じ面積である。このため、仮直列除湿暖房+冷却モードにおける冷凍サイクル装置10全体としての合成面積は、直列除湿暖房モードよりも面積Aだけ大きくなる。
【0314】
このように、仮直列除湿暖房+冷却モードでの合成面積は、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bそれぞれの開口面積に加えて冷却用膨張弁54の開口面積の合計値となる。そして、仮直列除湿暖房+冷却モードで動作する際の冷凍サイクル装置10全体の合成面積は、直列除湿暖房モード単独で動作する際の冷凍サイクル装置10全体の合成面積よりも冷却用膨張弁54の開口面積だけ増加する。
【0315】
また、仮直列除湿暖房+冷却モードが選択される最初の制御周期において決定される冷凍サイクル装置10全体の合成面積は、車両用空調装置1が仮直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の冷凍サイクル装置10全体の合成面積となる。
【0316】
ここで、直列除湿暖房モードのステップS430において決定される暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの開口面積は、冷凍サイクル装置10が直列除湿暖房モードで動作した場合にサイクル成績係数が最適となるように設定される。すなわち、直列除湿暖房モードでは、車両用空調装置1が動作を開始する際おけるサイクル成績係数が最適となるように除湿合成面積が設定される。並列除湿暖房モードのステップS530において決定される暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの開口面積も同様に、車両用空調装置1が動作を開始する際おけるサイクル成績係数が最適となるように除湿合成面積が設定される。
【0317】
また、冷房+冷却モードのステップS760において決定される冷却用膨張弁54の開口面積は、車両用空調装置1が冷房+冷却モードで動作を開始する際おけるサイクル成績係数が最適となるように冷却用膨張弁54の開口面積が設定される。
【0318】
以下、直列除湿暖房モードおよび並列除湿暖房モードで動作を開始する場合において、サイクル成績係数が最適となるように算出された暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの開口面積の合計値を最適除湿合成面積とも呼ぶ。また、冷房+冷却モードで動作を開始する場合において、サイクル成績係数が最適となるように算出された冷却用膨張弁54の開口面積を最適冷却面積とも呼ぶ。
【0319】
ところで、直列除湿暖房+冷却モードで動作する際の冷凍サイクル装置10では、冷媒が暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bに加えて冷却用膨張弁54にも流れる。
【0320】
しかし、上述のように、仮直列除湿暖房+冷却モードにおいて、直列除湿暖房モードの制御処理と同じ処理で暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bそれぞれの開口面積を決定する方法では、冷媒が冷却用膨張弁54に流れることが加味されない。すなわち、冷却用膨張弁54に流れることによって暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bに流れる冷媒の流量が減少するにもかかわらず、冷媒の減少量を加味せずに暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bそれぞれの開口面積を決定することとなる。
【0321】
ここで、このように決定した開口面積になるように各膨張弁14a、14b、54を制御して仮直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始した際のサイクル成績係数について、直列除湿暖房モード単独で動作を開始した際のサイクル成績係数と比較する。
【0322】
仮直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の動作開始タイミング時におけるサイクル成績係数は、当該動作開始タイミング時における冷凍サイクル装置10全体の開口面積の合成面積によって定められる。そして、仮直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始タイミング時における冷凍サイクル装置10全体としての合成面積は、上述したように最適除湿合成面積と最適冷却面積との合計であるため、最適除湿合成面積から離れた値となる。
【0323】
このため、仮直列除湿暖房+冷却モードの動作開始タイミング時におけるサイクル成績係数は、直列除湿暖房モード単独での動作開始時におけるサイクル成績係数よりも低下してしまう。また、仮直列除湿暖房+冷却モードの動作開始タイミング時におけるサイクル成績係数は、冷凍サイクル装置10全体としての合成面積が最適除湿合成面積から離れるにしたがい低下する。換言すれば、仮直列除湿暖房+冷却モードの動作開始タイミング時におけるサイクル成績係数は、冷凍サイクル装置10全体としての合成面積と最適除湿合成面積との差が大きくなるほど低下する。
【0324】
そこで、本実施形態では、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時におけるサイクル成績係数が、直列除湿暖房モード単独での動作開始時におけるサイクル成績係数よりも低下することを防ぐため、図22に示す処理を実行する。制御装置60は、図22に示す処理によって決定される各動作モードで動作することによって、直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始してから時間の経過とともに暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁54それぞれの開口面積を各動作モードに応じて調整する。
【0325】
まず、制御装置60は、ステップS1300において、今回実施する制御周期におけるステップS110で選択された直列除湿暖房+冷却モードが直前の制御周期で選択された運転モードから変更されているか否かを判定する。直前の制御周期で選択された運転モードから直列除湿暖房+冷却モードに変更されている場合とは、制御装置60は、今回の制御周期で決定された各制御対象機器の作動内容で直列除湿暖房+冷却モードの運転を開始することを意味する。
【0326】
ステップS1300において、今回実施する制御周期で選択された直列除湿暖房+冷却モードが直前の制御周期で選択された運転モードから変更されていると判定した場合、ステップS1310へ進み、KPN補正動作モードを選択する。ステップS1300において、今回の制御周期で選択された直列除湿暖房+冷却モードが直前の制御周期で選択された運転モードから変更されていると判定されない場合、ステップS1320へ進む。
【0327】
なお、乗員の操作によって操作パネル70のオートスイッチが投入されてから初めて実施された制御周期において直列除湿暖房+冷却モードが選択された場合もステップS1310へ進み、KPN補正動作モードを選択する。
【0328】
ステップS1320において、制御装置60は、直列除湿暖房+冷却モードが選択された状態からKPN安定時間が経過したか否かを判定する。ステップS1320において、KPN安定時間が経過していないと判定した場合、制御装置60は、ステップS1330へ進み、KPN維持動作モードを選択する。ステップS1320において、KPN安定時間が経過したと判定した場合、制御装置60は、ステップS1340へ進み、KPN通常動作モードを選択する。
【0329】
KPN安定時間は、直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始してからヒータコア42から流出された冷媒の高温側熱媒体温度TWHが安定するまでに必要な時間として予め定めた定数(例えば、10秒)を採用することができる。また、KPN安定時間は、予め実験結果等から得ることができる。
【0330】
以下、KPN補正動作モード、KPN維持動作モード、KPN通常動作モードの詳細について説明する。
【0331】
[KPN補正動作モード]
KPN補正動作モードは、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時に実行される制御処理である。すなわち、KPN補正動作モードは、運転モードが他の運転モードから直列除湿暖房+冷却モードに変更される制御処理と同じ制御周期に実行される制御処理である。KPN補正動作モードでは、制御装置60が、図23に示す制御フローを実行する。
【0332】
まず、ステップS1400~S1420において、制御装置60は、直列除湿暖房モードのステップS400~S420と同様に、目標蒸発器温度TEO、圧縮機11の増減量ΔIVO、目標高温側熱媒体温度TWHOを決定する。
【0333】
そして、ステップS1430~S1490において、制御装置60は、KPN補正動作モードで動作する際における補正後開度パターンKPN3の値を決定する。補正後開度パターンKPN3は、車両用空調装置1がKPN補正動作モードで動作する際における暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの組合せを決定するためのパラメータである。
【0334】
具体的に、ステップS1430において、制御装置60は、予め定められた制御マップに基づいて補正用開度パターンKKPNの値を決定する。補正用開度パターンKKPNは、補正後開度パターンKPN3を決定するための暖房用膨張弁14aの絞り開度および冷房用膨張弁14bの仮の組合せを決定するためのパラメータである。補正用開度パターンKKPNは、予め定められた制御マップに基づいて決定される。補正用開度パターンKKPNを決定するための制御マップは、直列除湿暖房モードの開度パターンKPN1を決定するための制御マップと同じものが採用される。
【0335】
具体的に、補正用開度パターンKKPNを決定するための制御マップは、図24に示すように、目標吹出温度TAOが上昇するに伴って補正用開度パターンKKPNの値が小さくなるように設定されている。また、暖房用膨張弁14aの絞り開度が最小値、かつ、冷房用膨張弁14bの絞り開度が最大値の組合せの際に補正用開度パターンKKPNが0%となるように設定されている。また、暖房用膨張弁14aの絞り開度が最大値、かつ、冷房用膨張弁14bの絞り開度が最小値の際に補正用開度パターンKKPNが100%になるように設定されている。
【0336】
そして、補正用開度パターンKKPNの値が大きくなるに伴って暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの合計値が大きくなるように暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの仮の組合せが設定されている。具体的に、当該合計値は、補正用開度パターンKKPNの値が増加するに伴って一次関数的に増加するように設定されている。すなわち、当該合計値は、補正用開度パターンKKPNの値が増加するに伴って線形に増加するように設定されている。
【0337】
続いて、ステップS1440において、制御装置60は、決定した補正用開度パターンKKPNに基づいて、仮除湿合成面積を算出する。仮除湿合成面積は、ステップS1430で決定した補正用開度パターンKKPNの値によって定まる仮の暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの組合せにおける除湿合成面積である。
【0338】
ここで、図24に示すように、ステップS1430で決定された補正用開度パターンKKPNの値をx1、補正用開度パターンKKPNの値がx1である際の仮除湿合成面積を面積Bとすると、仮除湿合成面積の面積Bは、図24の破線で示すように、以下の数式3によって算出される。
【0339】
(数3)
B=(k1×x1)+b
数式3における定数k1は、補正用開度パターンKKPNの値および仮除湿合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の傾きである。すなわち、定数k1は補正用開度パターンKKPNの変動量に対する仮除湿合成面積の変動量の比である。そして、補正用開度パターンKKPNの値が大きくなるに伴って仮除湿合成面積の値が大きくなるため、当該定数k1は正の値である。
【0340】
数式3における定数bは、補正用開度パターンKKPNの値および仮除湿合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の切片であって、補正用開度パターンKKPNの値が0である際の仮除湿合成面積の値である。
【0341】
定数k1および定数bは、予め実験結果等から制御装置60に設定されている。また、定数k1および定数bは、冷凍サイクル装置10の製造時にあらかじめ定められた一定値であって、例えば、制御装置60のROMなどのメモリに記憶しておくことができる。
【0342】
ところで、上述のように、補正用開度パターンKKPNは、直列除湿暖房モードの開度パターンKPN1を決定するための制御マップと同じ制御マップに基づいて決定されている。このため、ステップS1430において決定した補正用開度パターンKKPNの値は、仮に同じ制御周期で直列除湿暖房モードが選択されたとした場合におけるステップS430で決定される開度パターンKPN1の値と同じとなる。
【0343】
また、ステップS1440において算出される仮除湿合成面積の算出方法は、直列除湿暖房モードで動作を開始した場合に決定される除湿合成面積と同じ算出方法である。従って、ステップS1440において算出される仮除湿合成面積は、仮に同じ制御周期で直列除湿暖房モードが選択されたとした場合にステップS430で決定される開度パターンKPN1の値で定まる除湿合成面積と等しい。すなわち、ステップS1440において算出される仮除湿合成面積の面積Bは、最適除湿合成面積である。
【0344】
換言すれば、ステップS1440において算出される仮除湿合成面積は、この時点において外的要因が変化しない場合に直列除湿暖房モードで動作を開始させた場合における除湿合成面積と同じ面積でもある。外的要因が変化しない場合とは、各種センサから制御装置60に送信される検出信号の値が同じ場合をいう。
【0345】
当該検出信号は、ステップS1400において目標蒸発器温度TEOを決定するために用いられる目標吹出温度TAOを算出するための検出信号およびステップS1410において圧縮機11の回転数の増減量ΔIVOを決定するための検出信号である。すなわち、当該検出信号は、内気温センサ61、外気温センサ62、日射センサ63、蒸発器温度センサ64eそれぞれから制御装置60に送信される検出信号である。
【0346】
さらに、数式3における定数k1は、直列除湿暖房モードにおける開度パターンKPN1の値および最適除湿合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の傾きと等しい値である。そして、数式3における定数bは、直列除湿暖房モードにおける開度パターンKPN1の値および最適除湿合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の切片と等しい値である。
【0347】
ステップS1450~S1460において、制御装置60は、冷房+冷却モードのステップS750~S760と同様に、目標過熱度SHCO1、冷却用膨張弁54の増減量ΔEVBを決定する。KPN補正動作モードは、直列除湿暖房+冷却モードが選択されて最初に実行される制御処理であるため、ステップS1460では、直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の冷却用膨張弁54の開口面積が決定される。
【0348】
ここで、ステップS1460で決定される冷却用膨張弁54の開口面積は、仮に同じ制御周期で冷房+冷却モードが選択されたとした場合におけるステップS760で決定される増減量ΔEVBによって定まる冷却用膨張弁54の開口面積と同じ面積となる。すなわち、ステップS1460で決定される冷却用膨張弁54の開口面積は、ステップS760で決定される冷却用膨張弁54の開口面積と等しい。このため、ステップS1460において決定される冷却用膨張弁54の開口面積は、最適冷却面積である。
【0349】
なお、ステップS1460において算出される冷却用膨張弁54の開口面積の決定処理方法は、冷房+冷却モードで動作を開始した場合に決定される冷却用膨張弁54の開口面積と同じ決定処理方法である。このため、ステップS1460において算出される冷却用膨張弁54の開口面積は、この時点において外的要因が変化しない場合に冷房+冷却モードで動作を開始させた場合における冷却用膨張弁54の開口面積と同じ面積でもある。外的要因が変化しない場合とは、ステップS1460において冷却用膨張弁54の開口面積の増減量ΔEVBを決定するために用いられる冷却器入口温度センサ55aと冷却器出口温度センサ55bとから制御装置60に送信される検出信号の値が同じ場合をいう。
【0350】
ステップS1470において、制御装置60は、ステップS1440で算出した仮除湿合成面積およびステップS1460で決定した冷却用膨張弁54の開口面積に基づいて、冷凍サイクル装置10全体の補正前合成面積を算出する。補正前合成面積は、ステップS1440で算出した仮除湿合成面積とステップS1460で決定された冷却用膨張弁54の開口面積との合計値である。
【0351】
ここで、ステップS1460で決定された冷却用膨張弁54の開口面積を図24の一点鎖線で示すように面積Aとする。そして、補正前合成面積を図24の二点鎖線で示すように面積Cとすると、面積Cは仮除湿合成面積の面積Bと冷却用膨張弁54の開口面積の面積Aとの合計値であるため、以下の数式4によって算出される。
【0352】
(数4)
C=(k1×x1)+b+A
数式4に示すように、ステップS1430で決定された補正用開度パターンKKPNの値がx1である際の補正前合成面積の面積Cは、数式3で算出される仮除湿合成面積の面積Bよりも冷却用膨張弁54の開口面積の面積Aだけ大きくなる。すなわち、補正前合成面積の面積Cは、最適除湿合成面積の面積Bよりも最適冷却面積の面積Aだけ大きくなる。
【0353】
また、図24に示すように、補正前合成面積は、補正用開度パターンKKPNの値が増加するに伴って一次関数的に増加する。そして、補正用開度パターンKKPNの値および補正前合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の傾きは、補正用開度パターンKKPNの値および仮除湿合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の傾きに等しい。すなわち、補正用開度パターンKKPNの値および補正前合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の傾きは、定数k1である。
【0354】
また、補正用開度パターンKKPNの値および補正前合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の切片は、補正用開度パターンKKPNの値および仮除湿合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の切片と最適冷却面積との合計値である。すなわち、補正用開度パターンKKPNの値および補正前合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の切片は、定数bに最適冷却面積の面積Aを加算した値である。
【0355】
ここで、仮にKPN補正動作モードでの動作開始時における冷凍サイクル装置10全体の合成面積をステップS1470で算出した補正前合成面積の面積Cで設定した場合の冷凍サイクル装置10のサイクル成績係数について検討する。この場合、補正前合成面積の面積Cは、最適除湿合成面積の面積Bから離れた値であるため、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時におけるサイクル成績係数は、直列除湿暖房モード単独での動作開始時におけるサイクル成績係数よりも低下する。そして、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時におけるサイクル成績係数は、冷凍サイクル装置10全体としての合成面積が最適除湿合成面積から離れるにしたがい低下する。
【0356】
このため、KPN補正動作モードでの動作開始時における冷凍サイクル装置10全体の合成面積は、ステップS1470で算出した補正前合成面積よりも直列除湿暖房モード単独での動作開始時の最適除湿合成面積に近付けた値であることが望ましい。さらに言えば、KPN補正動作モードでの動作開始時における冷凍サイクル装置10全体の合成面積は、直列除湿暖房モード単独での動作開始時の最適除湿合成面積と等しい値であることが望ましい。また、この場合、バッテリ52を冷却できるよう、冷却用膨張弁54の開口面積が確保されていることが望ましい。
【0357】
このため、本実施形態では、冷却用膨張弁54の開口面積を確保しつつ、冷凍サイクル装置10全体の合成面積を最適除湿合成面積に近付けることが可能なように、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時における補正後開度パターンKPN3の値が定められる。具体的に、ステップS1480において、制御装置60は、冷却用膨張弁54の開口面積が最適冷却面積に決定された状態で冷凍サイクル装置10全体の合成面積が最適除湿合成面積の値に等しくなるように補正後開度パターンKPN3の値を決定する。
【0358】
ここで、補正後開度パターンKPN3は、図24に示すように、補正用開度パターンKKPNを決定するための制御マップと同じ制御マップに基づいて決定される。このため、補正後開度パターンKPN3の値および除湿合成面積を一次関数で示した際における当該一次関数の傾きは、補正用開度パターンKKPNの値および仮除湿合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の傾きと同じ値になる。すなわち、補正後開度パターンKPN3の値および除湿合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の傾きは、定数k1である。
【0359】
また、冷凍サイクル装置10全体の合成面積は、補正後開度パターンKPN3の値によって決定される除湿合成に最適冷却面積を加算した値になる。このため、補正後開度パターンKPN3の値および合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の傾きも定数k1である。
【0360】
そして、補正後開度パターンKPN3の値および合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の切片は、補正用開度パターンKKPNの値および補正前合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の切片と最適冷却面積との合計である。すなわち、補正後開度パターンKPN3の値および合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の切片は、定数bに最適冷却面積の面積Aを加算した値である。
【0361】
このため、補正後開度パターンKPN3の値をx2、補正後開度パターンKPN3の値がx2である際の冷凍サイクル装置10全体の合成面積を面積Dとすると、冷凍サイクル装置10全体の合成面積の面積Dは、以下の数式5によって算出される。
【0362】
(数5)
D=(k1×x2)+b+A
そして、本実施形態では、KPN補正動作モードで動作する際の冷凍サイクル装置10全体の合成面積が最適除湿合成面積と等しい値となるように補正後開度パターンKPN3の値が決定される。すなわち、冷凍サイクル装置10全体の合成面積の面積DがステップS1440で算出された仮除湿合成面積の面積Bと等しい値になるように決定される。このため、冷凍サイクル装置10全体の合成面積の面積Dと仮除湿合成面積の面積Bとが等しいという関係を数式3および数式5に基づいて、以下の数式6に示すことができる。
【0363】
(数6)
(k1×x1)+b=(k1×x2)+b+A
そして、数式6に基づいて、補正後開度パターンKPN3の値であるx2を以下の数式7によって算出することができる。
【0364】
(数7)
x2=x1-(A/k1)
このように、補正後開度パターンKPN3の値は、ステップS1430で決定された補正用開度パターンKKPNの値と、ステップS1460で決定される最適冷却面積と、補正後開度パターンKPN3の値および仮除湿合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の傾きの大きさとに基づいて算出される。
【0365】
なお、ステップS1430で決定された補正用開度パターンKKPNの値は、仮に同じ制御周期で直列除湿暖房モードが選択されたとした場合におけるステップS430で決定される開度パターンKPN1の値と等しい値である。また、上述したように、補正後開度パターンKPN3の値および仮除湿合成面積の関係を一次関数で示した際における当該一次関数の傾きの大きさは、定数k1であって、正の値である。そして、このように算出される補正後開度パターンKPN3の値は、補正用開度パターンKKPNの値から最適冷却面積に対する当該一次関数の傾きの大きさの比率を除いた値である。このため、数式7に基づいて決定される補正後開度パターンKPN3の値は、補正用開度パターンKKPNの値より小さい値となる。
【0366】
従って、補正後開度パターンKPN3の値がx2である際の除湿合成面積を面積Eとすると、図24に示すように、当該面積Eは、補正用開度パターンKKPNの値がx1である際の仮除湿合成面積である面積Bより小さい値となる。具体的に、除湿合成面積の面積Eは、仮除湿合成面積の面積Bから冷却用膨張弁54の開口面積の面積Aを除いた値である。
【0367】
また、補正後開度パターンKPN3の値がx2である際の暖房用膨張弁14aの開口面積は、補正用開度パターンKKPNの値がx1である際の暖房用膨張弁14aの開口面積より小さい。これに対して、補正後開度パターンKPN3の値がx2である際の冷房用膨張弁14bの開口面積は、補正用開度パターンKKPNの値がx1である際の冷房用膨張弁14bの開口面積より大きい。補正後開度パターンKPN3の値がx2である際の暖房用膨張弁14aの開口面積および冷房用膨張弁14bの開口面積の合計値である除湿合成面積が面積Eである。
【0368】
また、除湿合成面積の面積Eと冷却用膨張弁54の開口面積の面積Aとの合計が直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の冷凍サイクル装置10全体の合成面積となる。そして、当該合成面積は、補正前合成面積の面積Cよりも最適除湿合成面積に近い値となる。具体的に、当該合成面積は、ステップS1440において算出される最適除湿合成面積と等しい値となる。
【0369】
ここで、合成面積が補正前合成面積よりも最適除湿合成面積に近い値とは、合成面積と最適除湿合成面積との差の絶対値が、補正前合成面積と最適除湿合成面積との差の絶対値よりも小さいことを意味する。
【0370】
このように、ステップS1400~S1480において、制御装置60は、直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の冷凍サイクル装置10全体の合成面積を最適除湿合成面積と等しい値に決定する。
【0371】
そして、ステップS1490において、制御装置60は、直列除湿暖房モードのステップS440と同様に、エアミックスドア34の開度SWを決定する。
【0372】
ステップS1500において、制御装置60は、冷凍サイクル装置10を直列除湿暖房+冷却モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁54を絞り状態とし、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bを閉じる。
【0373】
さらに、制御装置60は、ステップS1410、S1460、S1480、S1490で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器11、14a、14b、54、34に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0374】
これにより、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時における圧縮機11は、ステップS1410で決定された回転数で回転する。また、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時における冷却用膨張弁54の開口面積は、ステップS1460で決定された開口面積になる。そして、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時における暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bそれぞれの開口面積は、ステップS1480で決定された補正後開度パターンKPN3に基づいて決定される。さらに、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時におけるエアミックスドア34の開度は、ステップS1490で決定された開度SWになる。
【0375】
[KPN維持動作モード]
続いて、KPN維持動作モードについて、説明する。KPN維持動作モードでは、制御装置60が、図25に示す制御フローを実行する。KPN維持動作モードは、KPN補正動作モードを実行する制御処理の次の制御周期以降に実行される制御処理である。また、KPN維持動作モードでは、KPN補正動作モードと異なり、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁54それぞれの開口面積が変更されない。
【0376】
具体的に、ステップS1600~S1620において、制御装置60は、KPN補正動作モードのステップS1400~S1420と同様に、目標蒸発器温度TEO、圧縮機11の増減量ΔIVO、目標高温側熱媒体温度TWHOを決定する。そして、ステップS1630において、制御装置60は、KPN補正動作モードのステップS1490と同様に、エアミックスドア34の開度SWを決定する。
【0377】
ステップS1640において、制御装置60は、冷凍サイクル装置10を直列除湿暖房+冷却モードの冷媒回路で維持するために、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁54の状態をKPN補正動作モードと同じ絞り状態で維持する。また、制御装置60は、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bを閉じた状態で維持する。
【0378】
さらに、制御装置60は、ステップS1610およびS1630で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器11および34に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0379】
これにより、直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始するための制御処理の次の制御周期以降における圧縮機11は、ステップS1610で決定された増減量ΔIVOだけ変化して回転する。また、直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始するための制御処理の次の制御周期以降におけるエアミックスドア34の開度は、ステップS1630で決定された開度SWになる。
【0380】
そして、KPN維持動作モードでは、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁54それぞれの開口面積がKPN安定時間だけKPN補正動作モードで決定された面積で維持される。
【0381】
[KPN通常動作モード]
続いて、KPN通常動作モードについて、説明する。KPN通常動作モードでは、制御装置60が、図26に示す制御フローを実行する。KPN通常動作モードは、KPN維持動作モードがKPN安定時間だけ実行された後に実行される制御処理であって、ヒータコア42から流出された冷媒の高温側熱媒体温度TWHが安定してから実行されるものである。また、KPN通常動作モードでは、KPN維持動作モードと異なり、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁54それぞれの開口面積が必要に応じて変更される。
【0382】
具体的に、ステップS1700~S1730において、制御装置60は、直列除湿暖房モードのステップS400~S430と同様に、目標蒸発器温度TEO、圧縮機11の増減量ΔIVO、目標高温側熱媒体温度TWHO、開度パターンKPN1の変化量ΔKPN1を決定する。そして、ステップS1740~S1760において、制御装置60は、冷房+冷却モードのステップS740~S760と同様に、エアミックスドア34、目標過熱度SHCO1、冷却用膨張弁54の増減量ΔEVBを決定する。
【0383】
また、ステップS1770~S1800において、制御装置60は、冷房+冷却モードのステップS770~S800と同様の処理を実行する。具体的に、制御装置60は、ステップS1770において直前の制御周期における冷却用膨張弁54の状態が開放状態であったか否かを判定する。
【0384】
そして、ステップS1770において、冷却用膨張弁54の状態が開放状態であったと判定した場合、ステップS1780において、制御装置60は、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であるかを判定する。また、ステップS1770において、冷却用膨張弁54の状態が開放状態であったと判定されなかった場合、ステップS1790において、制御装置60は、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ2以上であるかを判定する。
【0385】
ステップS1780において、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定されなかった場合、制御装置60は、ステップS1800の処理をスキップする。また、S1790において、冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合、制御装置60は、ステップS1800の処理をスキップする。これに対して、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定されなかった場合、または、冷却用基準温度σ2以上であると判定されなかった場合、ステップS1800において、制御装置60は、冷却用膨張弁54の絞り開度を全閉に決定する。
【0386】
ステップS1810において、制御装置60は、冷凍サイクル装置10を直列除湿暖房+冷却モードの冷媒回路で維持するために、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bの状態を閉じた状態で維持する。また、制御装置60は、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bを絞り状態のまま必要に応じて変更する。そして、ステップS1780において、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定されなかった場合、ステップS1810において、制御装置60は、冷却用膨張弁54を絞り状態のまま必要に応じ変更する。または、S1790において、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合、ステップS1810において、制御装置60は、冷却用膨張弁54を絞り状態のまま必要に応じ変更する。
【0387】
さらに、制御装置60は、ステップS1710、S1730、S1740、S1760で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器11、14a、14b、54、34に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0388】
これにより、直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始し、KPN安定時間経過後における圧縮機11は、ステップS1710で決定された増減量ΔIVOだけ変化して回転する。また、直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始し、KPN安定時間経過後における暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bそれぞれの開口面積は、ステップS1730で決定された開度パターンKPN1によって決定される。そして、直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始し、KPN安定時間経過後における冷却用膨張弁54の開口面積は、ステップS1760で決定された増減量ΔEVBだけ変更する。さらに、直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始し、KPN安定時間経過後におけるエアミックスドア34の開度は、ステップS1740で決定された開度SWになる。
【0389】
なお、ステップS1780、S1790で冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定した場合、または、冷却用基準温度σ2以上であると判定されなかった場合、ステップS1810における冷却用膨張弁54の作動のみ異なる。具体的に、ステップS1810において、制御装置60は、冷却用膨張弁54を全閉状態とする。冷却用膨張弁54以外の各制御対象機器の作動は、ステップS1780、S1790で冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定されなかった場合、または、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合と同様である。
【0390】
この場合、圧縮機11は、ステップS1710で決定された増減量ΔIVOだけ変化して回転する。また、開度パターンKPN1は、ステップS1730で決定された変化量ΔKPN1だけ変更する。これにより、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bそれぞれの開口面積は、開度パターンKPN1の増減により変更する。そして、冷却用膨張弁54は、全閉状態となる。そして、エアミックスドア34の開度は、ステップS1740で決定された開度SWになる。
【0391】
以上より、ステップS1810において、冷却用膨張弁54が絞り状態とされた場合、直列除湿暖房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、図1のドット柄のハッチングを付した矢印で示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられる。すなわち、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→暖房用膨張弁14a→室外熱交換器16→逆止弁17→冷房用膨張弁14b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→暖房用膨張弁14a→室外熱交換器16→逆止弁17→冷却用膨張弁54→電池冷却器51→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0392】
つまり、直列除湿暖房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能し、暖房用膨張弁14aが減圧部として機能し、さらに、冷房用膨張弁14bが減圧部として機能し、室内蒸発器18が蒸発器として機能するとともに、冷房用膨張弁14bおよび室内蒸発器18に対して並列的に接続された冷却用膨張弁54が減圧部として機能し、電池冷却器51が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
【0393】
さらに、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が、外気温Tamよりも高くなっている際には、室外熱交換器16が放熱器として機能するサイクルが構成される。室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が、外気温Tamよりも低くなっている際には、室外熱交換器16が蒸発器として機能するサイクルが構成される。
【0394】
これによれば、直列除湿暖房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、室内蒸発器18にて送風空気を冷却することができるとともに、水-冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができる。さらに、直列除湿暖房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、電池冷却器51に冷却用膨張弁54で減圧した低圧の冷媒を流すことができる。
【0395】
従って、直列除湿暖房+冷却モードの車両用空調装置1では、室内蒸発器18にて冷却されて除湿された送風空気を、ヒータコア42にて再加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。この際、補正後開度パターンKPN3の値を大きくすることにより、直列除湿暖房モードと同様に、ヒータコア42における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
【0396】
さらに、直列除湿暖房+冷却モードの車両用空調装置1では、電池冷却器51にて冷媒を蒸発させることによって、バッテリ52の冷却を行うことができる。
【0397】
また、直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の冷凍サイクル装置10全体の合成面積を、同じ動作開始タイミングに直列除湿暖房モードで動作を開始したとした場合の最適除湿合成面積と、同じ動作開始タイミングに冷房+冷却モードで動作を開始したとした場合の最適冷却面積との合計値よりも最適除湿合成面積に近付けることができる。具体的に、当該合成面積を、同じ動作開始タイミングに直列除湿暖房モードで動作を開始したとした場合の最適除湿合成面積と同じ面積とすることができる。
【0398】
このため、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時におけるサイクル成績係数が直列除湿暖房モードでの動作開始時のサイクル成績係数よりも低下することを抑制することができる。
【0399】
また、本実施形態では、KPN補正動作モード後、KPN安定時間が経過するまで、KPN維持動作モードを実行する。仮に、KPN安定時間が経過するまでKPN補正動作モードを制御周期毎に繰り返し実行すると、制御処理の負担が拡大する虞がある。
【0400】
また、仮に、KPN補正動作モードの制御処理を実行した次の制御処理からKPN通常動作モードを実行すると、高温側熱媒体温度TWHが安定する前に冷凍サイクル装置10全体の合成面積が決定されることとなる。すると、KPN補正動作モードの制御処理を実行した次の制御処理から動作する際の冷凍サイクル装置10全体の合成面積が最適除湿合成面積から離れた値となり易い。このため、サイクル成績係数が直列除湿暖房モードでの動作開始時のサイクル成績係数よりも低下する虞がある。
【0401】
これに対して、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始後、高温側熱媒体温度TWHが安定するまでKPN維持動作モードを実行することで、制御処理の負担を抑制するとともに、サイクル成績係数の低下も抑制することができる。
【0402】
さらに、直列除湿暖房+冷却モードで動作開始し、KPN安定時間経過後にKPN通常動作モードを実行することで、KPN補正動作モードを制御周期毎に繰り返し実行する場合に比較して制御処理の負担を小さくすることができる。また、KPN補正動作モードにおいて、目標吹出温度TAOの変化に応じて開度パターンKPN1の値を変更するとともに、目標過冷却度SCO1に近づくように冷却用膨張弁54の開口面積を調整するで、直列除湿暖房+冷却モードでの動作におけるサイクル成績係数を向上させることができる。
【0403】
また、ステップS1810において、冷却用膨張弁54が全閉状態とされた場合、直列除湿暖房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→暖房用膨張弁14a→室外熱交換器16→逆止弁17→冷房用膨張弁14b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0404】
この場合、直列除湿暖房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能し、暖房用膨張弁14aが減圧部として機能し、さらに、冷房用膨張弁14bが減圧部として機能し、室内蒸発器18が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
【0405】
これによれば、冷房+冷却モードと同様に、車両用空調装置1は、冷媒が過度に冷却された場合に、過度に冷却された冷媒が電池冷却器51に流れることを抑制することによって、バッテリ52が過冷却されることを防ぎつつ、車室内の除湿暖房を行うことができる。
【0406】
(11)並列除湿暖房+冷却モード
並列除湿暖房+冷却モードにおいて、制御装置60は、直列除湿暖房+冷却モードと同様、暖房用膨張弁14aと、冷房用膨張弁14bと、冷却用膨張弁54とを絞り状態とする。並列除湿暖房+冷却モードでは、直列除湿暖房+冷却モードと異なり、暖房用膨張弁14aと冷房用膨張弁14bとが並列的に接続されている。
【0407】
ここで、仮に、制御装置60が暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの開口面積を暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bが並列に接続される並列除湿暖房モードの制御処理と同じ処理で決定したとする。また、冷却用膨張弁54の開口面積を暖房用膨張弁14aおよび冷却用膨張弁54が並列に接続される冷房+冷却モードとの制御処理と同じ処理で決定したとする。
【0408】
すると、仮直列除湿暖房+冷却モードと同じように、並列除湿暖房+冷却モードの動作開始タイミング時における冷凍サイクル装置10全体の合成面積は、最適除湿合成面積から離れてしまう。この結果、並列除湿暖房+冷却モードの動作開始タイミング時におけるサイクル成績係数は、並列除湿暖房モード単独での動作開始時におけるサイクル成績係数よりも低下してしまう。
【0409】
そこで、本実施形態では、並列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時におけるサイクル成績係数が、並列除湿暖房モード単独での動作開始時におけるサイクル成績係数よりも低下することを防ぐため、直列除湿暖房+冷却モードと同様の図27に示す処理を実行する。
【0410】
具体的に、制御装置60は、ステップS1900~S1940の処理を実行することで、直列除湿暖房+冷却モードのステップS1300~S1340と同様に、KPN補正動作モード、KPN維持動作モード、KPN通常動作モードのいずれかを選択する。
【0411】
なお、並列除湿暖房+冷却モードでは、後述するように、冷媒回路が直列除湿暖房+冷却モードよりも多く分岐されるため、動作を開始してから高温側熱媒体温度TWHの温度が安定するまでに必要な時間が多くなる。このため、ステップS1920において採用されるKPN安定時間は、直列除湿暖房+冷却モードのステップS1320で採用される時間よりも長い時間が採用されてもよい。
【0412】
具体的に、ステップS1920において採用されるKPN安定時間は、直列除湿暖房+冷却モードでのステップS1320で採用される時間の2倍の時間(例えば、20秒)を採用することができる。なお、ステップS1920において採用されるKPN安定時間は、直列除湿暖房+冷却モードでのステップS1320で採用される時間と同じ時間または同じ時間であってもよい。
【0413】
以下、並列除湿暖房+冷却モードにおけるKPN補正動作モード、KPN維持動作モード、KPN通常動作モードの詳細について説明する。
【0414】
[KPN補正動作モード]
KPN補正動作モードでは、制御装置60が、図28に制御フローを実行する。まず、ステップS2000~S2020において、制御装置60は、並列除湿暖房モードのステップS500~S520と同様に、目標高温側熱媒体温度TWHO、圧縮機11の増減量ΔIVO、目標過熱度SHEOを決定する。
【0415】
そして、ステップS2030~S2090において、制御装置60は、補正後開度パターンKPN3を直列除湿暖房+冷却モードと同様の処理によって決定する。
【0416】
具体的に、ステップS2030において、制御装置60は、予め定められた制御マップに基づいて補正用開度パターンKKPNの値を決定する。補正用開度パターンKKPNを決定するための制御マップは、並列除湿暖房モードを決定するための制御マップと同じものである。
【0417】
ステップS2040において、制御装置60は、ステップS2030で決定した補正用開度パターンKKPNの値に基づいて、仮除湿合成面積を算出する。仮除湿合成面積は、ステップS2030で決定した補正用開度パターンKKPNの値によって定まる仮の暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの組合せにおける除湿合成面積である。
【0418】
ステップS2050~S2060において、制御装置60は、冷房+冷却モードのステップS750~S760と同様に、目標過熱度SHCO1、冷却用膨張弁54の増減量ΔEVBを決定する。ステップS2060では、直列除湿暖房+冷却モードと同様、並列除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の冷却用膨張弁54の開口面積が決定される。
【0419】
ステップS2070~S2080において、制御装置60は、直列除湿暖房+冷却モードのKPN補正動作モードと同様に、上述の数式3~数式7を用いて、冷凍サイクル装置10全体の補正前合成面積を算出し、補正後開度パターンKPN3の値を決定する。
【0420】
このように算出される補正後開度パターンKPN3の値は、直列除湿暖房+冷却モードと同様に、ステップS2030で決定された補正用開度パターンKKPNより小さい値となる。また、当該補正後開度パターンKPN3の値によって決定される除湿合成面積とステップS2060で算出した冷却用膨張弁54の開口面積との合計である冷凍サイクル装置10全体の合成面積は、補正前合成面積よりも最適除湿合成面積に近い値となる。具体的に、当該合成面積は、ステップS2040において算出される最適除湿合成面積と等しい値となる。
【0421】
また、ステップS2080で決定される補正後開度パターンKPN3の値によって決定される暖房用膨張弁14aの開口面積は、ステップS2030で決定される補正用開度パターンKKPNの値によって決定される暖房用膨張弁14aの開口面積より小さい。そして、ステップS2080で決定される補正後開度パターンKPN3の値によって決定される冷房用膨張弁14bの開口面積は、ステップS2030で決定される補正用開度パターンKKPNの値によって決定される冷房用膨張弁14bの開口面積より大きい。
【0422】
続くステップS2090において、制御装置60は、並列除湿暖房モードのステップS540と同様にエアミックスドア34の開度SWを決定する。
【0423】
ステップS2100において、制御装置60は、冷凍サイクル装置10を並列除湿暖房+冷却モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁54を絞り状態とし、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bを開く。
【0424】
さらに、制御装置60は、ステップS2010、S2060、S2080、S2090で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器11、14a、14b、54、34に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0425】
これにより、並列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時における圧縮機11は、ステップS2010で決定された回転数で回転する。また、並列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時における暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bそれぞれの開口面積は、ステップS2080で決定された補正後開度パターンKPN3の値によって決定される。そして、並列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時における冷却用膨張弁54の開口面積は、ステップS2060で決定された開口面積になる。さらに、並列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時におけるエアミックスドア34の開度は、ステップS2090で決定された開度SWになる。
【0426】
[KPN維持動作モード]
続いて、KPN維持動作モードについて、説明する。KPN維持動作モードでは、制御装置60が、図29に示す制御フローを実行する。
【0427】
具体的に、ステップS2200~S2220において、制御装置60は、KPN補正動作モードのステップS2000~S2020と同様に、目標高温側熱媒体温度TWHO、圧縮機11の増減量ΔIVO、目標過熱度SHEOを決定する。そして、ステップS2230において、制御装置60は、KPN補正動作モードのステップS2090と同様に、エアミックスドア34の開度SWを決定する。
【0428】
ステップS2240において、制御装置60は、冷凍サイクル装置10を並列除湿暖房+冷却モードの冷媒回路で維持するために、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁54をKPN補正動作モードと同じ絞り状態で維持する。また、制御装置60は、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bを開いた状態で維持する。
【0429】
さらに、制御装置60は、ステップS2210およびS2230で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器11および34に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0430】
これにより、並列除湿暖房+冷却モードで動作を開始するための制御処理の次の制御周期以降における圧縮機11は、ステップS2210で決定された増減量ΔIVOだけ変化して回転する。また、並列除湿暖房+冷却モードで動作を開始するための制御処理の次の制御周期以降におけるエアミックスドア34の開度は、ステップS2230で決定された開度SWになる。
【0431】
そして、KPN維持動作モードでは、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁54それぞれの開口面積がKPN安定時間だけKPN補正動作モードで決定された面積で維持される。
【0432】
[KPN通常動作モード]
続いて、KPN通常動作モードについて、説明する。KPN通常動作モードでは、制御装置60が、図30に示す制御フローを実行する。
【0433】
具体的に、ステップS2300~S2330において、制御装置60は、並列除湿暖房モードのステップS500~S530と同様に、目標高温側熱媒体温度TWHO、圧縮機11の増減量ΔIVO、目標過熱度SHEO、開度パターンKPN1の変化量ΔKPN1を決定する。そして、ステップS2340~S2360において、制御装置60は、冷房+冷却モードのステップS740~S760と同様に、エアミックスドア34の開度SW、目標過熱度SHCO1、冷却用膨張弁54の増減量ΔEVBを決定する。
【0434】
また、ステップS2370~S2400において、制御装置60は、直列除湿暖房+冷却モードのステップS1770~S1800と同様の処理を実行する。具体的に、制御装置60は、ステップS2370において直前の制御周期における冷却用膨張弁54の状態が開放状態であったか否かを判定する。そして、ステップS2370において、冷却用膨張弁54の状態が開放状態であったと判定した場合、ステップS2380において、制御装置60は、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であるかを判定する。また、ステップS2370において、冷却用膨張弁54の状態が開放状態であると判定されなかった場合、ステップS2390において、制御装置60は、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ2以上であるかを判定する。
【0435】
ステップS2380において、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下あると判定されなかった場合、制御装置60は、ステップS2400の処理をスキップする。また、S2390において、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合、制御装置60は、ステップS2400の処理をスキップする。これに対して、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定した場合、または、冷却用基準温度σ2以上であると判定されなかった場合、ステップS2400において、制御装置60は、冷却用膨張弁54の絞り開度を全閉に決定する。
【0436】
ステップS2410において、制御装置60は、冷凍サイクル装置10を並列除湿暖房+冷却モードの冷媒回路で維持するために、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bの状態を維持する。また、制御装置60は、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bを絞り状態のまま必要に応じて調整する。そして、ステップS2380において、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定されなかった場合、ステップS2410において、制御装置60は、冷却用膨張弁54を絞り状態のまま必要に応じて調整する。または、ステップS2390において、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合、ステップS2410において、制御装置60は、冷却用膨張弁54を絞り状態のまま必要に応じ調整する。
【0437】
さらに、制御装置60は、ステップS2310、S2330、S2340、S2360で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器11、14a、14b、54、34に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0438】
これにより、並列除湿暖房+冷却モードで動作開始し、KPN安定時間経過後における圧縮機11は、ステップS2310で決定された増減量ΔIVOだけ変化して回転する。また、並列除湿暖房+冷却モードで動作開始し、KPN安定時間経過後における暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bそれぞれの開口面積は、ステップS2330で決定された開度パターンKPN1の値によって決定される。そして、並列除湿暖房+冷却モードで動作開始し、KPN安定時間経過後における冷却用膨張弁54の開口面積は、ステップS2360で決定された増減量ΔEVBだけ変更する。さらに、並列除湿暖房+冷却モードで動作開始し、KPN安定時間経過後におけるエアミックスドア34の開度は、ステップS2340で決定された開度SWになる。
【0439】
なお、ステップS2380、S2390で冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定した場合、または、冷却用基準温度σ2以上であると判定されなかった場合、ステップS2410における冷却用膨張弁54の作動のみ異なる。具体的に、ステップS2410において、制御装置60は、冷却用膨張弁54を全閉状態とする。冷却用膨張弁54以外の各制御対象機器の作動は、ステップS2380、S2390で冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定されなかった場合、または、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合と同様である。
【0440】
この場合、圧縮機11は、ステップS2310で決定された増減量ΔIVOだけ変化して回転する。また、開度パターンKPN1は、ステップS2330で決定された変化量ΔKPN1だけ変更する。これにより、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bそれぞれの開口面積は、開度パターンKPN1の増減により変更する。そして、冷却用膨張弁54は、全閉状態となる。そして、エアミックスドア34の開度は、ステップS2340で決定された開度SWになる。
【0441】
以上より、ステップS2410において、冷却用膨張弁54が絞り状態とされた場合、並列除湿暖房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、図1の斜線矢印で示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられる。すなわち、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→暖房用膨張弁14a→室外熱交換器16→暖房用通路21b→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→バイパス通路21a→冷房用膨張弁14b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環し、さらに、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→バイパス通路21a→冷却用膨張弁54→電池冷却器51→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0442】
つまり、並列除湿暖房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能し、暖房用膨張弁14aが減圧部として機能し、室外熱交換器16が蒸発器として機能するとともに、暖房用膨張弁14aおよび室外熱交換器16に対して並列的に接続された冷房用膨張弁14bが減圧部として機能し、室内蒸発器18が蒸発器として機能し、さらに、暖房用膨張弁14aおよび室外熱交換器16に対して並列的に接続された冷却用膨張弁54が減圧部として機能し、電池冷却器51が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
【0443】
これによれば、並列除湿暖房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、室内蒸発器18にて送風空気を冷却することができるとともに、水-冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができる。さらに、並列除湿暖房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、電池冷却器51に冷却用膨張弁54で減圧した低圧の冷媒を流すことができる。
【0444】
従って、並列除湿暖房+冷却モードの車両用空調装置1では、室内蒸発器18にて冷却されて除湿された送風空気を、ヒータコア42にて再加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。この際、室外熱交換器16における冷媒が蒸発する温度を室内蒸発器18における冷媒が蒸発する温度よりも低下させることで、直列除湿暖房+冷却モードよりも高い加熱能力で送風空気を再加熱することができる。
【0445】
さらに、並列除湿暖房+冷却モードの車両用空調装置1では、電池冷却器51にて冷媒を蒸発させることによって、バッテリ52の冷却を行うことができる。
【0446】
また、並列除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の冷凍サイクル装置10全体の合成面積を、同じ動作開始タイミングに並列除湿暖房モードで動作を開始したとした場合の最適除湿合成面積と、同じ動作開始タイミングに冷房+冷却モードで動作を開始したとした場合の最適冷却面積との合計値よりも最適除湿合成面積に近付けることができる。具体的に、当該合成面積を、同じ動作開始タイミングに並列除湿暖房モードで動作を開始したとした場合の最適除湿合成面積と同じ面積とすることができる。
【0447】
このため、並列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時におけるサイクル成績係数が並列除湿暖房モードでの動作開始時のサイクル成績係数よりも低下することを抑制することができる。
【0448】
また、並列除湿暖房+冷却モードでの動作開始後、高温側熱媒体温度TWHが安定するまでKPN維持動作モードを実行することで、制御処理の負担を抑制するとともに、サイクル成績係数の低下も抑制することができる。
【0449】
さらに、KPN補正動作モードを制御周期毎に繰り返し実行する場合に比較して制御処理の負担を小さくすることができる。また、KPN通常動作モードにおいて、目標過熱度SHEOの変化に応じて開度パターンKPN1の値を変更するとともに、目標過冷却度SCO1に近づくように冷却用膨張弁54の開口面積を調整するで、並列除湿暖房+冷却モードでの動作におけるサイクル成績係数を向上させることができる。
【0450】
また、ステップS2410において、冷却用膨張弁54が全閉状態とされた場合、並列除湿暖房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→暖房用膨張弁14a→室外熱交換器16→暖房用通路21b→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→バイパス通路21a→冷房用膨張弁14b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0451】
つまり、並列除湿暖房+冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能し、暖房用膨張弁14aが減圧部として機能し、室外熱交換器16が蒸発器として機能するとともに、暖房用膨張弁14aおよび室外熱交換器16に対して並列的に接続された冷房用膨張弁14bが減圧部として機能し、室内蒸発器18が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
【0452】
これによれば、冷房+冷却モードと同様に、車両用空調装置1は、冷媒が過度に冷却された場合に、過度に冷却された冷媒が電池冷却器51に流れることを抑制することによって、バッテリ52が過冷却されることを防ぎつつ、車室内の除湿暖房を行うことができる。
【0453】
以上の如く、冷凍サイクル装置10では、直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の冷凍サイクル装置10全体の合成面積を、同じ動作開始タイミングに直列除湿暖房モードで動作を開始したとした場合の最適除湿合成面積と同じ面積とすることができる。そして、並列除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の冷凍サイクル装置10全体の合成面積を、同じ動作開始タイミングに並列除湿暖房モードで動作を開始したとした場合の最適除湿合成面積と同じ面積とすることができる。
【0454】
このため、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時におけるサイクル成績係数が直列除湿暖房モードでの動作開始時のサイクル成績係数よりも低下することを抑制することができる。さらに、並列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時におけるサイクル成績係数が並列除湿暖房モードでの動作開始時のサイクル成績係数よりも低下することを抑制することができる。
【0455】
(第1実施形態の変形例)
上述の第1実施形態では、除湿暖房+冷却モードでの動作開始時の冷凍サイクル装置10全体の合成面積が最適除湿合成面積と等しい値となるように補正後開度パターンKPN3の値を定める例について説明したが、これに限定されない。
【0456】
例えば、冷凍サイクル装置10全体の合成面積が最適除湿合成面積と最適冷却面積との合計値よりも最適除湿合成面積に近付く値であれば、最適除湿合成面積より大きい値または小さい値となるように補正後開度パターンKPN3の値を定める構成であってもよい。
【0457】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図31を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態の直列除湿暖房+冷却モードおよび並列除湿暖房+冷却モードの処理において、補正後開度パターンKPN3の値の決定処理方法が変更されている。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0458】
本実施形態における直列除湿暖房+冷却モードにおける補正後開度パターンKPN3の値の決定処理と、並列除湿暖房+冷却モードにおける補正後開度パターンKPN3の値の決定処理は同様の処理方法である。このため、第1実施形態の処理と異なる部分について、図31に示す直列除湿暖房+冷却モードの制御フローを一例に説明する。本実施形態では、第1実施形態における直列除湿暖房+冷却モードのKPN補正動作モードを示す図23の処理に代えて、図31に示す処理が採用されている。
【0459】
まず、ステップS2500~S2530において、制御装置60は、第1実施形態のステップS1400~S1430と同様に、目標蒸発器温度TEO、圧縮機11の回転数の増減量ΔIVO、目標高温側熱媒体温度TWHO、補正用開度パターンKKPNの値を決定する。
【0460】
そして、ステップS2540において、制御装置60は、補正後開度パターンKPN3の値を決定する。ここで、ステップS2530で決定された補正用開度パターンKKPNの値をx1とすると、補正後開度パターンKPN3の値x3は、補正用開度パターンKKPNの値x1と予め定められる補正係数k2に基づいて以下の数式8によって算出される。
【0461】
(数8)
x3=k2×x1
補正係数k2は、補正用開度パターンKKPNの値を補正するための補正用の定数であって、予め実験結果等から制御装置60に設定されている。この補正係数k2は、冷凍サイクル装置10の製造時にあらかじめ定められた一定値であって、制御装置60のROMなどのメモリに記憶しておくことができる。
【0462】
また、補正係数k2は、KPN補正動作モードで定まる直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の冷凍サイクル装置10全体の合成面積が最適除湿合成面積と最適冷却面積との合計値よりも最適除湿合成面積に近付くように設定されている。
【0463】
本実施形態では、直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の冷凍サイクル装置10全体の合成面積が最適除湿合成面積に近づくように、補正係数k2を整数1より小さい値(例えば、0.9)で採用することができる。
【0464】
なお、補正係数k2は、当該冷凍サイクル装置10全体の合成面積が最適除湿合成面積と最適冷却面積との合計値よりも最適除湿合成面積に近付く値であれば、0.9より小さい値であってもよいし、0.9よりも大きい値であってもよい。また、補正係数k2は、当該冷凍サイクル装置10全体の合成面積が最適除湿合成面積と最適冷却面積との合計値よりも最適除湿合成面積に近付く値であれば、補正用開度パターンKKPNの値毎に同じ値で定められてもよいし、互いに異なる値で定められてもよい。
【0465】
補正後開度パターンKPN3は、このように予め定められた補正係数k2に補正用開度パターンKKPNの値を乗算することによって算出される。このように算出される補正後開度パターンKPN3は、補正係数k2が整数1より小さい値であるため、補正用開度パターンKKPNより小さい値となる。また、このように算出される補正後開度パターンKPN3がx3である際の除湿合成面積は、補正用開度パターンKKPNの値がx1である際の除湿合成面積よりも小さい値となる。
【0466】
また、補正後開度パターンKPN3の値がx3である際の暖房用膨張弁14aの開口面積は、補正用開度パターンKKPNの値がx1である際の暖房用膨張弁14aの開口面積より小さい。これに対して、補正後開度パターンKPN3の値がx3である際の冷房用膨張弁14bの開口面積は、補正用開度パターンKKPNの値がx1である際の冷房用膨張弁14bの開口面積より大きい。
【0467】
このように、ステップS2540において、制御装置60は、直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の除湿合成面積を決定する。
【0468】
続いて、ステップS2550~S2570において、制御装置60は、第1実施形態のステップS1450、S1460、S1500と同様に、目標過熱度SHCO1、冷却用膨張弁54の増減量ΔEVB、エアミックスドア34の開度SWを決定する。
【0469】
ステップS2580において、制御装置60は、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁54を絞り状態とし、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bを閉じる。また、制御装置60は、ステップS2510、S2540、S2560、S2570で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器11、14a、14b、54、34に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0470】
これにより、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時における圧縮機11は、ステップS2510で決定された回転数で回転する。また、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時における暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bそれぞれの開口面積は、ステップS2540で決定された補正後開度パターンKPN3の値によって決定される。そして、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時における冷却用膨張弁54の開口面積は、ステップS2560で決定された開口面積になる。さらに、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時におけるエアミックスドア34の開度は、ステップS2570で決定された開度SWになる。
【0471】
従って、本実施形態では、直列除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の冷凍サイクル装置10全体の合成面積を、同じ動作開始タイミングに直列除湿暖房モードで動作を開始したとした場合の最適除湿合成面積と、同じ動作開始タイミングに冷房+冷却モードで動作を開始したとした場合の最適冷却面積との合計値よりも最適除湿合成面積に近付けることができる。このため、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時におけるサイクル成績係数が直列除湿暖房モードでの動作開始時のサイクル成績係数よりも低下することを抑制することができる。
【0472】
また、予め定められた補正係数k2に基づいて補正後開度パターンKPN3の値を決定するため、第1実施形態のように、仮除湿合成面積および補正前合成面積を算出することが不要となる。このため、本実施形態では、第1実施形態における直列除湿暖房+冷却モードを実行する場合に比較して、制御処理の負担を小さくすることができる。
【0473】
また、本実施形態の並列除湿暖房+冷却モードでは、第1実施形態における並列除湿暖房+冷却モードの補正後開度パターンKPN3の値を決定する処理に代えて、直列除湿暖房+冷却モードのステップS2530およびS2540と同様の処理が採用される。
【0474】
このため、並列除湿暖房+冷却モードで動作を開始する際の冷凍サイクル装置10全体の合成面積を、同じ動作開始タイミングに並列除湿暖房モードで動作を開始したとした場合の最適除湿合成面積と、同じ動作開始タイミングに冷房+冷却モーで動作を開始したとした場合の最適冷却面積との合計値よりも最適除湿合成面積に近付けることができる。このため、並列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時におけるサイクル成績係数が並列除湿暖房モードでの動作開始時のサイクル成績係数よりも低下することを抑制することができる。
【0475】
また、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、補正後開度パターンKPN3の値を決定する方法が第1実施形態と異なるが、その他の冷凍サイクル装置10の構成および作動は第1実施形態と同様である。これによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0476】
(第2実施形態の変形例)
上述の第2実施形態では、補正後開度パターンKPN3の値を算出するための補正係数k2が予め制御装置60に定められている例について説明したが、これに限定されない。例えば、補正係数k2は、予め制御装置60に定められておらず、KPN補正動作モードが実行される制御周期において算出される構成でもよい。
【0477】
具体的な補正係数k2の算出方法について、図32に示すKPN補正動作モードの制御フローを参照して説明する。図32に示すKPN補正動作モードの制御フローは、図31に示したKPN補正動作モードの制御フローに対して、補正係数k2を算出する処理が追加されている点が異なる。図31図32で同じ符号が付されたステップは、処理内容が同じであるため、その説明を省略する。
【0478】
ステップS2531において、制御装置60は、ステップS2530で決定した補正用開度パターンKKPNの値に基づいて、仮除湿合成面積を算出する。仮除湿合成面積は、ステップS2530で決定した補正用開度パターンKKPNの値によって定まる仮の暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの組合せにおける除湿合成面積である。
【0479】
なお、ステップS2531における仮除湿合成面積の算出方法は、第1実施形態のKPN補正動作モードのステップS1440における仮除湿合成面積の算出方法と同じである。このため、ステップS2531で算出される仮除湿合成面積は、最適除湿合成面積でもある。
【0480】
ステップS2561において、制御装置60は、ステップS2531で算出した仮除湿合成面積およびステップS2560で算出した冷却用膨張弁54の開口面積に基づいて、補正係数k2を算出する。ここで、ステップS2531で算出した仮除湿合成面積を面積F、ステップS2560で決定された冷却用膨張弁54の開口面積を面積Gとすると、補正係数k2は、以下の数式9によって算出される。
【0481】
(数9)
k2=F/(F+G)
このように、補正係数k2は、仮除湿合成面積に対する仮除湿合成面積と最適冷却面積との合計値の比率として求めることができる。換言すれば、補正係数k2は、最適除湿合成面積に対する最適除湿合成面積と最適冷却面積との合計値の比率として求めることができる。そして、最適除湿合成面積と最適冷却面積との合計値より最適除湿合成面積の方が小さい値となることから、このように算出される補正係数k2は、整数1より小さい値となる。
【0482】
ステップS2562において、制御装置60は、ステップS2530で決定した補正用開度パターンKKPNの値およびステップS2561で算出した補正係数k2に基づいて、補正後開度パターンKPN3の値を決定する。ここで、ステップS2530で決定した補正用開度パターンKKPNの値をx3、ステップS2562で決定される補正後開度パターンKPN3の値をx4とすると、補正後開度パターンKPN3の値x4は、以下の数式10によって算出される。
【0483】
(数10)
x4=k2×x3
上述のように、補正係数k2が整数1より小さい値であるため、補正係数k2に補正用開度パターンKKPNの値x3を乗じた値である補正後開度パターンKPN3の値x4は、補正用開度パターンKKPNの値x3より小さい値となる。このため、補正後開度パターンKPN3の値がx4である際の除湿合成面積は、補正用開度パターンKKPNの値がx3である際の仮除湿合成面積より小さい。すなわち、補正後開度パターンKPN3の値がx4である際の除湿合成面積は、最適除湿合成面積より小さい。
【0484】
また、当該補正後開度パターンKPN3の値によって決定される除湿合成面積とステップS2560で算出した冷却用膨張弁54の開口面積との合計値が冷凍サイクル装置10全体の合成面積となる。従って、当該合成面積は、最適除湿合成面積に等しい値とはならないものの、最適除湿合成面積と最適冷却面積との合計値よりも最適除湿合成面積に近い値となる。
【0485】
このため、直列除湿暖房+冷却モードでの動作開始時におけるサイクル成績係数が直列除湿暖房モードでの動作開始時のサイクル成績係数よりも低下することを抑制することができる。
【0486】
このように、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、補正係数k2を算出する点が第2実施形態と異なるが、その他の冷凍サイクル装置10の構成および作動は第2実施形態と同様である。これによれば、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0487】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図33を参照して説明する。本実施形態では、図33に示すように、高温側熱媒体回路40を廃止しており、さらにヒータコア42の代わりに室内凝縮器44を採用している点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0488】
室内凝縮器44は、圧縮機11から吐出された高温高圧冷媒と送風空気とを熱交換させて、冷媒を凝縮させるとともに送風空気を加熱する加熱部である。室内凝縮器44は、第1実施形態で説明したヒータコア42と同様に室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。また、室内凝縮器44は、冷媒入口側に高温側熱媒体ポンプ41の吸入口側が接続されているおり、冷媒出口側に第1三方継手13aの流入口側が接続されている。
【0489】
そして、冷凍サイクル装置10が各運転モードで動作する際において、エアミックスドア34の開度SWを算出する際の数式2に用いられる高温側熱媒体温度TWHの代わりに、第1冷媒温度センサ64aによって検出される温度T1が用いられる。
【0490】
その他の冷凍サイクル装置10の構成および作動は、第1実施形態と同様である。これによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0491】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図34および図35を参照して説明する。本実施形態では、図34に示すように、電池パック50の内部に低温側熱媒体を循環する低温側熱媒体回路53bおよび水冷媒熱交換器56が追加されており、低温側熱媒体を循環させてバッテリ52を冷却する機能を有する点が第1実施形態と相違している。
【0492】
第1実施形態のように冷凍サイクル装置10を循環する冷媒を電池冷却器51に直接流して電池を冷却する方式を直冷タイプとすると、本実施形態は、冷却させた低温側熱媒体を電池冷却器51に循環させてバッテリ52を冷却する水冷タイプである。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0493】
低温側熱媒体回路53bは、低温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。低温側熱媒体としては、高温側熱媒体と同様の流体を採用することができる。低温側熱媒体回路53bには、水冷媒熱交換器56、低温側熱媒体ポンプ57、電池冷却器51等が配置されている。
【0494】
水冷媒熱交換器56は、冷却用膨張弁54にて減圧された低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発部である。水冷媒熱交換器56は、冷却用膨張弁54にて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路と、低温側熱媒体回路53bを循環する低温側熱媒体を流通させる水通路とを有している。そして、水冷媒熱交換器56は、冷媒通路を流通する低圧冷媒と、水通路を流通する低温側熱媒体とを熱交換させることによって、低圧冷媒を蒸発させる。
【0495】
水冷媒熱交換器56は、冷媒通路の入口に冷却用膨張弁54の出口側が接続されており、冷媒通路の出口には、第6三方継手13fの他方の流入口側が接続されている。また、水冷媒熱交換器56は、水通路の入口に低温側熱媒体ポンプ57の出口側が接続されており、水通路の出口には、電池冷却器51の入口側が接続されている。
【0496】
低温側熱媒体ポンプ57は、低温側熱媒体を水冷媒熱交換器56の水通路の入口側へ圧送する水ポンプである。低温側熱媒体ポンプ57の基本的構成は、高温側熱媒体ポンプ41と同様である。低温側熱媒体ポンプ57は、制御装置60から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
【0497】
制御装置60は、上述した冷凍サイクル装置10のそれぞれの運転モードによらず、予め定めた運転モード毎の基準圧送能力を発揮するように、低温側熱媒体ポンプ57の作動を制御する。
【0498】
また、水冷媒熱交換器56の水通路の出口側の低温側熱媒体回路53bには、水冷媒熱交換器56の水通路から流出し、電池冷却器51に流入する低温側熱媒体の温度である低温側熱媒体温度TWLを検出する低温側熱媒体温度センサ55cが設けられている。低温側熱媒体温度センサ55cは、水冷媒熱交換器56の水通路から流出した低温側熱媒体の低温側熱媒体温度TWLに応じた検出信号を制御装置60に送信する。
【0499】
続いて、各運転モードにおける車両用空調装置1の詳細作動について説明する。本実施形態では、冷房+冷却モード、冷却モード、直列除湿暖房+冷却モード、並列除湿暖房+冷却モードの4つの運転モードの制御処理の一部が第1実施形態と異なる。具体的に、制御装置60は、当該4つの運転モードにおいて、冷却用膨張弁54の増減量ΔEVBの決定処理と、冷却用膨張弁54の開閉を決定する処理が異なる。
【0500】
本実施形態では、第1実施形態と異なる点について、図35を参照して直列除湿暖房+冷却モードでの動作を一例に説明するが、冷房+冷却モード、冷却モード、並列除湿暖房+冷却モードにおいても第1実施形態と異なる点は同様である。
【0501】
具体的に、ステップS2600~S2640において、制御装置60は、第1実施形態のステップS1700~S1740と同様に、目標蒸発器温度TEO、圧縮機11の増減量ΔIVO、目標高温側熱媒体温度TWHO、開度パターンKPN1の変化量ΔKPN1、エアミックスドア34の開度SWを決定する。
【0502】
ステップS2650において、制御装置60は、水冷媒熱交換器56の冷媒通路の出口側低温側熱媒体の目標過熱度SHCO2を決定する。そして、ステップS2660において、制御装置60は、冷却用膨張弁54の増減量ΔEVBを決定する。
【0503】
本実施形態では、増減量ΔEVBは、目標過熱度SHCO2と水冷媒熱交換器56の冷媒通路から流出した低温側熱媒体の過熱度SHC2との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、当該過熱度SHC2が目標過熱度SHCO2に近づくように決定される。
【0504】
また、ステップS2670~S2700において、制御装置60は、第1実施形態の直列除湿暖房+冷却モードのステップS1770~S1800と同様の処理を実行する。具体的に、制御装置60は、ステップS2670において直前の制御周期における冷却用膨張弁54の状態が開放状態であったか否かを判定する。そして、ステップS2670において、冷却用膨張弁54の状態が開放状態であったと判定した場合、ステップS2680において、制御装置60は、低温側熱媒体温度TWLが冷却用基準温度σ1以下であるか否かを判定する。また、ステップS2670において、冷却用膨張弁54の状態が開放状態であると判定されなかった場合、ステップS2690において、制御装置60は、低温側熱媒体温度TWLが冷却用基準温度σ2以上であるかを判定する。
【0505】
ステップS2680において、低温側熱媒体温度TWLが冷却用基準温度σ1以下あると判定されなかった場合、制御装置60は、ステップS2700の処理をスキップする。また、S2690において、低温側熱媒体温度TWLが冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合、制御装置60は、ステップS2700の処理をスキップする。これに対して、低温側熱媒体温度TWLが冷却用基準温度σ1以下であると判定した場合、または、冷却用基準温度σ2以上であると判定されなかった場合、ステップS2700において、制御装置60は、冷却用膨張弁54の絞り開度を全閉に決定する。
【0506】
なお、第1実施形態では電池冷却器51から流出した冷媒の温度に基づいて冷却用膨張弁54の開閉を決定するが、本実施形態では、電池冷却器51に流入する前の低温側熱媒体の温度に基づいて冷却用膨張弁54の開閉を決定する。このため、本実施形態では、冷却用基準温度σ1および冷却用基準温度σ2で採用される温度が第1実施形態と異なっている。具体的に、本実施形態では、第1実施形態のそれぞれの温度より高い温度であって、冷却用基準温度σ1が25℃で設定されており、冷却用基準温度σ2が30℃で設定されている。
【0507】
ステップS2700において、制御装置60は、冷却用膨張弁54の絞り開度を全閉(すなわち、0%)に決定し、ステップS2710へ進む。
【0508】
ステップS2710において、制御装置60は、冷凍サイクル装置10を直列除湿暖房+冷却モードの冷媒回路で維持するために、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bの状態を維持する。また、制御装置60は、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bを絞り状態のまま調整する。
【0509】
そして、ステップS2680において、低温側熱媒体温度TWLが冷却用基準温度σ1以下であると判定されなかった場合、ステップS2710において、制御装置60は、冷却用膨張弁54を絞り状態のまま必要に応じて調整する。または、ステップS2690において、低温側熱媒体温度TWLが冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合も、ステップS2710において、冷却用膨張弁54を絞り状態のまま調整する。
【0510】
さらに、制御装置60は、ステップS2610、S2630、S2640、S2660で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器11、14a、14b、54、34に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0511】
なお、ステップS2680、S2690で低温側熱媒体温度TWLが冷却用基準温度σ1以下であると判定した場合、または、冷却用基準温度σ2以上であると判定されなかった場合、ステップS2710における冷却用膨張弁54の作動のみ異なる。具体的に、ステップS2710において、制御装置60は、冷却用膨張弁54を全閉状態とする。冷却用膨張弁54以外の各制御対象機器の作動は、ステップS2680、S2690で冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ1以下であると判定されなかった場合、または、冷却器出口温度TW2が冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合と同様である。
【0512】
以上の如く、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷却用膨張弁54の増減量ΔEVBの決定処理と、冷却用膨張弁54の開閉を決定する処理とが第1実施形態と異なる。その他の冷凍サイクル装置10の構成および作動は、第1実施形態と同様である。これによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0513】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、図36および図37を参照して説明する。本実施形態では、図36に示すように、電池パック50の内部の電池冷却器51を廃止し、代わりに、電池用蒸発器55、電池用送風機58、バッテリケース59を追加している点が第1実施形態と相違している。
【0514】
第1実施形態のように冷凍サイクル装置10を循環する冷媒を電池冷却器51に直接流して電池を冷却する方式を直冷タイプとすると、当該実施形態は電池用送風機58から送風された冷却用送風空気を用いてバッテリ52を冷却する空冷タイプである。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0515】
電池用蒸発器55は、冷却用膨張弁54にて減圧された冷媒と電池用送風機58から送風された冷却用送風空気とを熱交換させて冷媒を蒸発させ、冷媒に吸熱作用を発揮させることによって冷却用送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。電池用蒸発器55は、冷媒入口に冷却用膨張弁54の冷媒出口側が接続されているおり、冷媒出口に第6三方継手13fの他方の流入口側が接続されている。
【0516】
電池用送風機58は、電池用蒸発器55にて冷却された冷却用送風空気をバッテリ52へ向けて送風するものである。電池用送風機58の基本的構成は、送風機32と同様である。電池用送風機58は、制御装置60に接続されている。電池用送風機58は、制御装置60から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風能力)が制御される電動送風機である。
【0517】
バッテリケース59は、内部に電池用蒸発器55と、バッテリ52と、電池用送風機58の遠心多翼ファンとを収容するとともに、電池用送風機58から送風された冷却用送風空気をバッテリ52へ導く空気通路を形成するものである。この空気通路は、バッテリ52に吹き付けられた冷却用送風空気を電池用送風機58の吸い込み側へ導く循環通路となっていてもよい。
【0518】
従って、本実施形態では、電池用送風機58が、電池用蒸発器55にて冷却された冷却用送風空気を、バッテリ52に吹き付けることによって、バッテリ52が冷却される。つまり、本実施形態では、電池用蒸発器55、電池用送風機58、バッテリケース59によって冷却部が構成されている。
【0519】
本実施形態の制御装置60は、運転モードによらず、予め定めた運転モード毎の基準送風能力を発揮するように、電池用送風機58の作動を制御する。
【0520】
また、電池用蒸発器55には、電池用蒸発器55における冷媒が蒸発する温度(電池用蒸発器温度)Tcfinを検出する電池用蒸発器温度センサ55dが設けられている。具体的に、電池用蒸発器温度センサ55dは、電池用蒸発器55の熱交換フィン温度を検出している。電池用蒸発器温度センサ55dは、電池用蒸発器55の電池用蒸発器温度Tcfinに応じた検出信号を制御装置60に送信する。
【0521】
続いて、各運転モードにおける車両用空調装置1の詳細作動について説明する。本実施形態では、冷房+冷却モード、冷却モード、直列除湿暖房+冷却モード、並列除湿暖房+冷却モードの4つの運転モードの制御処理の一部が第1実施形態と異なる。具体的に、制御装置60は、当該4つの運転モードにおいて、冷却用膨張弁54の増減量ΔEVBの決定処理と、冷却用膨張弁54の開閉を決定する処理が第1実施形態と異なる。
【0522】
本実施形態では、第1実施形態と異なる点について、図37を参照して直列除湿暖房+冷却モードでの動作を一例に説明するが、冷房+冷却モード、冷却モード、並列除湿暖房+冷却モードにおいても第1実施形態と異なる点は同様である。
【0523】
具体的に、ステップS2800~S2840において、制御装置60は、第1実施形態のステップS1700~S1740と同様に、目標蒸発器温度TEO、圧縮機11の増減量ΔIVO、目標高温側熱媒体温度TWHO、開度パターンKPN1の変化量ΔKPN1、エアミックスドア34の開度SWを決定する。
【0524】
ステップS2850において、制御装置60は、電池用蒸発器55の出口側冷媒の目標過熱度SHCO3を決定する。そして、ステップS2660において、制御装置60は、冷却用膨張弁54の増減量ΔEVBを決定する。
【0525】
本実施形態では、増減量ΔEVBは、目標過熱度SHCO3と電池用蒸発器55の冷媒通路から流出した冷媒の過熱度SHC3との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、当該過熱度SHC3が目標過熱度SHCO3に近づくように決定される。
【0526】
また、ステップS2870~S2900において、制御装置60は、第1実施形態の直列除湿暖房+冷却モードのステップS1770~S1800と同様の処理を実行する。具体的に、制御装置60は、ステップS2870において直前の制御周期における冷却用膨張弁54の状態が開放状態であったか否かを判定する。そして、ステップS2870において、冷却用膨張弁54の状態が開放状態であったと判定した場合、ステップS2880において、制御装置60は、電池用蒸発器温度Tcfinが冷却用基準温度σ1以下であるか否かを判定する。また、ステップS2870において、冷却用膨張弁54の状態が開放状態であると判定されなかった場合、ステップS2690において、制御装置60は、電池用蒸発器温度Tcfinが冷却用基準温度σ2以上であるかを判定する。
【0527】
ステップS2880において、電池用蒸発器温度Tcfinが冷却用基準温度σ1以下あると判定されなかった場合、制御装置60は、ステップS2900の処理をスキップする。また、S2890において、電池用蒸発器温度Tcfinが冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合、制御装置60は、ステップS2900の処理をスキップする。これに対して、電池用蒸発器温度Tcfinが冷却用基準温度σ1以下であると判定した場合、または、冷却用基準温度σ2以上であると判定されなかった場合、ステップS2900において、制御装置60は、冷却用膨張弁54の絞り開度を全閉に決定する。
【0528】
なお、本実施形態では、冷却用基準温度σ1で採用される温度が第1実施形態と異なる温度であって、冷却用基準温度σ2で採用される温度が第1実施形態と同じ温度で設定されている。具体的に、本実施形態では、冷却用基準温度σ1が1℃で設定されており、冷却用基準温度σ2が5℃で設定されている。
【0529】
ステップS2900において、制御装置60は、冷却用膨張弁54の絞り開度を全閉(すなわち、0%)に決定し、ステップS2910へ進む。
【0530】
ステップS2910において、制御装置60は、冷凍サイクル装置10を直列除湿暖房+冷却モードの冷媒回路で維持するために、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bの状態を維持する。そして、また、制御装置60は、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bを絞り状態のまま調整する。
【0531】
そして、ステップS2880において、電池用蒸発器温度Tcfinが冷却用基準温度σ1以下であると判定されなかった場合、ステップS2910において、制御装置60は、冷却用膨張弁54を絞り状態のまま必要に応じて調整する。または、ステップS2890において、電池用蒸発器温度Tcfinが冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合も、ステップS2910において、冷却用膨張弁54を絞り状態のまま調整する。
【0532】
さらに、制御装置60は、ステップS2810、S2830、S2840、S2860で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器11、14a、14b、54、34に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0533】
なお、ステップS2880、S2890で電池用蒸発器温度Tcfinが冷却用基準温度σ1以下であると判定した場合、または、冷却用基準温度σ2以上であると判定されなかった場合、ステップS2910における冷却用膨張弁54の作動のみ異なる。具体的に、ステップS2910において、制御装置60は、冷却用膨張弁54を全閉状態とする。冷却用膨張弁54以外の各制御対象機器の作動は、ステップS2880、S2890で電池用蒸発器温度Tcfinが冷却用基準温度σ1以下であると判定されなかった場合、または、冷却用基準温度σ2以上であると判定した場合と同様である。
【0534】
以上の如く、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷却用膨張弁54の増減量ΔEVBの決定処理と、冷却用膨張弁54の開閉を決定する処理とが第1実施形態と異なる。その他の冷凍サイクル装置10の構成および作動は、第1実施形態と同様である。これによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0535】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0536】
上述の実施形態では、冷凍サイクル装置10を車両用空調装置1に適用した例を説明したが、これに限定されない。冷凍サイクル装置10は、車両用空調装置1以外の機器に適用してもよい。
【0537】
上述の実施形態では、複数の運転モードに切り替え可能な冷凍サイクル装置10について説明したが、冷凍サイクル装置10の空調運転モードの切り替えはこれに限定されない。例えば、冷凍サイクル装置10は、少なくとも直列除湿暖房モード、直列除湿暖房+冷却モード、冷却対象物冷却モードの3つの運転モードに切り替え可能であればよい。また、冷凍サイクル装置10は、少なくとも並列除湿暖房モード、並列除湿暖房+冷却モード、冷却対象物冷却モードの3つの運転モードに切り替え可能であればよい。
【0538】
上述の実施形態では、除湿暖房+冷却モードでの動作開始時の冷凍サイクル装置10全体の合成面積を最適除湿合成面積と最適冷却面積との合計値よりも小さくして最適除湿合成面積に近付ける例について説明したが、これに限定されない。
【0539】
例えば、除湿暖房+冷却モードでの動作開始時の冷凍サイクル装置10全体の合成面積を、最適除湿合成面積と、最適冷却面積とは異なる値で決定された冷却用膨張弁54の開口面積との合計値よりも小さくして最適除湿合成面積に近づけてもよい。すなわち、除湿暖房+冷却モードでの動作開始時の冷却用膨張弁54の開口面積が最適冷却面積とは異なる値で決定された場合、除湿暖房+冷却モードでの動作開始時の冷凍サイクル装置10全体の合成面積を、最適除湿合成面積と、当該最適冷却面積とは異なる値との合計値よりも小さくしてもよい。
【0540】
上述の実施形態では、除湿暖房+冷却モードでの動作開始時の除湿合成面積を最適除湿合成面積よりも小さくして冷凍サイクル装置10全体の合成面積を最適除湿合成面積と最適冷却面積との合計値よりも最適除湿合成面積に近付ける例について説明したが、これに限定されない。
【0541】
例えば、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁54のうちのいずれか1つの膨張弁の開口面積だけを調整して、除湿暖房モードでの動作開始時の冷凍サイクル装置10全体の合成面積を最適除湿合成面積に近付ける実施形態であってもよい。また、暖房用膨張弁14aおよび冷却用膨張弁54それぞれの開口面積だけを調整して、除湿暖房モードでの動作開始時の冷凍サイクル装置10全体の合成面積を最適除湿合成面積に近付ける実施形態であってもよい。あるいは冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁54それぞれの開口面積だけを調整して、除湿暖房モードでの動作開始時の冷凍サイクル装置10全体の合成面積を最適除湿合成面積に近付ける実施形態であってもよい。さらに、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁54それぞれの開口面積全てを調整して、除湿暖房モードでの動作開始時の冷凍サイクル装置10全体の合成面積を最適除湿合成面積に近付ける実施形態であってもよい。
【0542】
上述の実施形態では、電池パック50が冷却用膨張弁54と、冷却器入口温度センサ55aと、冷却器出口温度センサ55bとを備えている例について説明したが、これに限定されない。冷凍サイクル装置10が冷却用膨張弁54と、冷却器入口温度センサ55aと、冷却器出口温度センサ55bとを備えている構成であってもよい。
【0543】
上述の実施形態では、冷媒としてR1234yfを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R134a、R600a、R410A、R404A、R32、R407C、等を採用してもよい。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。さらに、冷媒として二酸化炭素を採用して、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成してもよい。
【0544】
上述の実施形態では、冷却部にて冷却される冷却対象物がバッテリ52である例を説明したが、冷却対象物はこれに限定されない。冷却対象物は、直流電流と交流電流とを変換するインバータ、バッテリ52に電力を充電する充電器、電力を供給されることによって走行用の駆動力を出力するとともに、減速時等には回生電力を発生させるモータジェネレータのように作動時に発熱を伴う電気機器であってもよい。
【0545】
上述の実施形態において、センサから車両の外部環境情報(例えば車外の湿度)を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。
【0546】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0547】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0548】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【符号の説明】
【0549】
11 圧縮機
40 加熱部
14a 暖房用膨張弁
14b 冷房用膨張弁
15a、15b 開閉弁
16 室外熱交換器
18 室外熱交換器
54 冷房用膨張弁
51 冷却部
60 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37