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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】トランスファ装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/344 20060101AFI20240514BHJP
   F16H 3/093 20060101ALI20240514BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20240514BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20240514BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20240514BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20240514BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20240514BHJP
   B60K 6/36 20071001ALI20240514BHJP
   B60K 6/387 20071001ALI20240514BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20240514BHJP
【FI】
B60K17/344 B ZHV
F16H3/093
B60K17/04 G
B60K6/48
B60K6/442
B60K6/54
B60K6/52
B60K6/36
B60K6/387
B60K6/40
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021161895
(22)【出願日】2021-09-30
(65)【公開番号】P2023051313
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 拓紀
(72)【発明者】
【氏名】神谷 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】深谷 剛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 篤
(72)【発明者】
【氏名】大澤 英也
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-184655(JP,A)
【文献】特開2015-196413(JP,A)
【文献】特許第4823119(JP,B2)
【文献】特開平7-304343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/344
F16H 3/093
B60K 17/04
B60K 6/48
B60K 6/442
B60K 6/54
B60K 6/52
B60K 6/36
B60K 6/387
B60K 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の回転が伝達されるトランスファ装置において、
前記駆動源の回転が入力される第1軸部材と、
前記第1軸部材と平行に配置され、前記第1軸部材の回転により回転される第2軸部材と、
前記第2軸部材と平行に配置され、前記第2軸部材の回転により回転され、かつ前輪に駆動連結される第1伝達軸と後輪に駆動連結される第2伝達軸との一方に駆動連結された第3軸部材と、
回転電機と、
前記回転電機と同軸上に配置され、前記回転電機により駆動される第4軸部材と、
前記第2軸部材及び前記第4軸部材と平行に配置され、前記第4軸部材の回転を減速して前記第2軸部材に伝達する第5軸部材と、
前記第3軸部材と同軸上に配置され、前記第1伝達軸と前記第2伝達軸との他方に駆動連結された第6軸部材と、
第1速段又は前記第1速段より高速な第2速段を形成し、前記第2軸部材の回転を変速して前記第3軸部材に伝達する変速機構と、
前記第3軸部材と前記第6軸部材とを係合可能な係合機構と、
前記第4軸部材に固定された第1ギヤと、
前記第5軸部材に固定され、前記第1ギヤに噛合する第2ギヤと、
前記第5軸部材に固定された第3ギヤと、
前記第2軸部材に固定された第4ギヤと、
前記第1軸部材に固定された第5ギヤと、を備え、
前記第4ギヤは、前記第3ギヤと前記第5ギヤとに噛合
前記トランスファ装置が車両に搭載された状態において、
前記回転電機、前記第1ギヤ、及び前記第2ギヤは、前記第1軸部材に対して前記駆動源とは軸方向の反対側に配置され、
前記変速機構は、前記第4ギヤに対して前記回転電機とは軸方向の反対側に配置され、
前記第1軸部材は、前記変速機構よりも上方に配置された、
トランスファ装置。
【請求項2】
前記第3ギヤと前記第5ギヤとは、前記第4ギヤに対してそれぞれ周方向にオフセットした位置で噛合し、かつ径方向から視て軸方向に少なくとも一部が重なるように配置された、
請求項1に記載のトランスファ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機の回転を変速して前輪と後輪とに伝達可能なトランスファ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、四輪駆動の車両においては、エンジンの回転を変速機で変速し、その変速機の回転を前輪及び後輪の両方又は一方に選択的に伝達すると共にLo/Hi切換して伝達するトランスファ装置が用いられている。また、このような四輪駆動の車両にあって、車両の燃費向上のため、トランスファ装置にモータジェネレータを取付け、ハイブリッド走行やEV走行を可能にしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-196413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1のものは、変速機に駆動連結される入力軸(62)と、入力軸の回転を減速して伝達するカウンタ軸(64)と、前後のプロペラシャフトに駆動連結される出力軸(71)とを有しており、モータジェネレータ(50)の入力軸(69)に設けられたドライブギヤ(70)がカウンタ軸のドリブンギヤ(68)に噛合している。しかしながら、このような構造で、モータジェネレータによる走行性能(EV走行性能やアシスト走行性能)を向上しようとすると、モータジェネレータを大型化する必要が生じ、車両搭載性が低下してしまう。さらに、モータジェネレータの大型化を防ごうとして、新たにギヤや別の軸を設けると、さらに車両搭載性が低下してしまう虞がある。
【0005】
そこで本発明は、回転電機による走行性能を向上し、かつ車両搭載性の低下を防ぐことが可能なトランスファ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様としてのトランスファ装置は、
駆動源の回転が伝達される駆動装置において、
前記駆動源の回転が入力される第1軸部材と、
前記第1軸部材と平行に配置され、前記第1軸部材の回転により回転される第2軸部材と、
前記第2軸部材と平行に配置され、前記第2軸部材の回転により回転され、かつ前輪に駆動連結される第1伝達軸と後輪に駆動連結される第2伝達軸との一方に駆動連結された第3軸部材と、
回転電機と、
前記回転電機と同軸上に配置され、前記回転電機により駆動される第4軸部材と、
前記第2軸部材及び前記第4軸部材と平行に配置され、前記第4軸部材の回転を減速して前記第2軸部材に伝達する第5軸部材と、
前記第3軸部材と同軸上に配置され、前記第1伝達軸と前記第2伝達軸との他方に駆動連結された第6軸部材と、
第1速段又は前記第1速段より高速な第2速段を形成し、前記第2軸部材の回転を変速して前記第3軸部材に伝達する変速機構と、
前記第3軸部材と前記第6軸部材とを係合可能な係合機構と、
前記第4軸部材に固定された第1ギヤと、
前記第5軸部材に固定され、前記第1ギヤに噛合する第2ギヤと、
前記第5軸部材に固定された第3ギヤと、
前記第2軸部材に固定された第4ギヤと、
前記第1軸部材に固定された第5ギヤと、を備え、
前記第4ギヤは、前記第3ギヤと前記第5ギヤとに噛合し、
前記トランスファ装置が車両に搭載された状態において、
前記回転電機、前記第1ギヤ、及び前記第2ギヤは、前記第1軸部材に対して前記駆動源とは軸方向の反対側に配置され、
前記変速機構は、前記第4ギヤに対して前記回転電機とは軸方向の反対側に配置され、
前記第1軸部材は、前記変速機構よりも上方に配置された。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、第5軸部材によって回転電機の回転を減速して第2軸部材に伝達できるので、回転電機の大型化を招くことなく、回転電機による走行性能を向上することができ、かつ第4ギヤを第3ギヤと第5ギヤとに噛合する共通ギヤとして構成でき、車両搭載性の低下も防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係る車両を示す概略模式図。
図2】本実施の形態に係るトランスファ装置を示すスケルトン図。
図3】本実施の形態に係るトランスファ装置を車両の後方側から視た状態を示す概略模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施の形態を図1乃至図3に沿って説明する。まず、図1を用い、本実施の形態に係るハイブリッド車両の一例を説明する。
【0010】
[ハイブリット車両の構成]
図1に示すように、本実施の形態に係るハイブリッド車両である車両100は、四輪駆動の車両であり、矢印Aで示す前方側にエンジン(E/G)(駆動源)10と、該エンジン10の回転を変速する変速機(T/M)11とを搭載している。また、その変速機11の出力軸11aには、詳しくは後述する、変速機11の出力回転を変速しつつ、第2伝達軸としての後輪側プロペラシャフト13に、又は第1伝達軸としての前輪側プロペラシャフト12及び後輪側プロペラシャフト13の両方に、エンジン10の駆動力を伝達する駆動装置としてのトランスファ装置1が備えられている。トランスファ装置1は、詳しくは後述するようにトランスファ機構2と、回転電機であるモータジェネレータ(以下、単に「モータ」という)3とを、ケース5に収納する形で備えている。モータ3は、図示を省略したバッテリに接続され、バッテリの電力により力行可能であり、かつ回生してバッテリに充電することも可能に構成されている。
【0011】
なお、変速機11は、本実施の形態では、例えばシフト操作を電動で行うことで変速を行う自動変速機を用いているが、これに限らず、プラネタリギヤと摩擦クラッチを用いて変速する有段式の自動変速機、ベルト式無段変速機(CVT)等であってもよく、さらには、手動変速機であってもよく、要するにどのような変速機であってもよい。
【0012】
上記前輪側プロペラシャフト12は、ディファレンシャル装置であるフロントデフ14に駆動連結され、さらにフロントデフ14から左右ドライブシャフト16L,16Rを介して左右の車輪である前輪17L,17Rに駆動連結されている。一方の後輪側プロペラシャフト13は、ディファレンシャル装置であるリヤデフ15に駆動連結され、さらにリヤデフ15から左右ドライブシャフト18L,18Rを介して左右の車輪である後輪19L,19Rに駆動連結されている。
【0013】
従って、本車両100では、エンジン10の駆動回転を変速機11で変速し、さらに、トランスファ装置1で変速しつつモータ3によりアシスト或いは回生し、そのトランスファ装置1の出力回転を、後輪19L,19Rだけに伝達する所謂FR(フロントエンジン・リヤドライブ)状態での二輪駆動のハイブリッド走行、或いは前輪17L,17R及び後輪19L,19Rに伝達する四輪駆動のハイブリッド走行を可能としている。さらに、エンジン10を停止し、変速機11をニュートラル状態にすることで、トランスファ装置1のモータ3の出力回転を、後輪19L,19Rだけに伝達する二輪駆動のEV走行、或いは前輪17L,17R及び後輪19L,19Rに伝達する四輪駆動のEV走行も可能としている。なお、例えば手動変速機において、エンジン10と変速機構との間にあるクラッチをアクチュエータで駆動して解放し、それによりニュートラル状態を形成することでEV走行を可能にするものであっても構わない。
【0014】
[トランスファ装置の構成]
続いて、本実施の形態に係るトランスファ装置1の構成について図2及び図3を用いて説明する。トランスファ装置1は、上述したようにトランスファ機構2と、モータ3と、モータ3の回転をトランスファ機構2に伝達するモータ回転伝達部4とを備えて構成されている。
【0015】
また、トランスファ機構2には、第1速段としての低速段(Lo)と、第1変速段よりも高速な第2速段としての高速段(Hi)とを形成可能な変速機構28が備えられている。また、トランスファ機構2には、係合することで前輪側プロペラシャフト12及び後輪側プロペラシャフト13を駆動連結して四輪駆動の状態に、解放することで後輪側プロペラシャフト13から前輪側プロペラシャフト12の駆動連結を切離して二輪駆動の状態に、切替可能な係合機構29を備えている。
【0016】
また、図3に示すように、トランスファ装置1は、そのケース5が車両100の運転席と助手席との間の下方にあるフロアトンネル101に収まるように、かつケース5の最下端が車両100に設定された設計上の最低地上高Lhよりも上方となるように配置されている。
【0017】
詳細には、図2に示すように、トランスファ機構2において、第1軸AX1上には、上記変速機11の出力軸11aに駆動連結される第1軸部材としての入力軸21が回転自在に配置されている。この入力軸21には、第5ギヤとしてのドライブギヤG1が回転不能に固定されており、該ドライブギヤG1は、後述のカウンタ軸22のドリブンギヤG2に噛合して、ギヤ列31を構成している。
【0018】
上記第1軸AX1と平行で、かつ第1軸AX1よりも下方に配置された第2軸AX2上には(図3参照)、上記ギヤ列31を介して入力軸21の回転により回転される第2軸部材としてのカウンタ軸22が回転自在に配置されている。カウンタ軸22には、ドリブンギヤG2が回転不能に固定されており、さらに、大径ギヤG3及び小径ギヤG5も回転不能に固定されている。大径ギヤG3は、後述の変速機構28の高速段ギヤG4に噛合してギヤ列32を構成しており、小径ギヤG5は、後述の変速機構28の低速段ギヤG6に噛合してギヤ列33を構成している。
【0019】
上記第1軸AX1及び上記第2軸AX2と平行で、かつ第2軸AX2よりも下方に配置された第3軸AX3上には(図3参照)、第3軸部材としての後輪側出力軸23Rと、その同軸上に第6軸部材としての前輪側出力軸23Fと、変速機構28と、係合機構29とが配置されている。後輪側出力軸23Rには、変速機構28の出力ドッグDOが回転不能に固定されている。そして、後輪側出力軸23Rには第1駆動軸と第2駆動軸との一方である後輪側プロペラシャフト13が駆動連結され、前輪側出力軸23Fには第1駆動軸と第2駆動軸との他方である前輪側プロペラシャフト12が駆動連結されている。即ち、後輪側出力軸23Rは車輪としての左右の後輪19L,19Rに駆動連結され、前輪側出力軸23Fは車輪としての左右の前輪17L,17Rに駆動連結されている。なお、本実施の形態では、後輪側出力軸23Rが後述の変速機構28を介して第2軸部材に駆動連結される第3軸部材、前輪側出力軸23Fが第3軸部材に後述の係合機構29を介して駆動連結される第4軸部材であるものを一例として説明しているが、その逆であっても構わない。この場合、後輪側プロペラシャフト13は第1伝達軸と第2伝達軸との他方となり、前輪側プロペラシャフト12は第1伝達軸と第2伝達軸との一方となる。
【0020】
変速機構28は、上記高速段ギヤG4と、その高速段ギヤG4に固定された高速段ドッグDHと、上記低速段ギヤG6と、その低速段ギヤG6に固定された低速段ドッグDLと、上記出力ドッグDOと、出力ドッグDOに噛合して軸方向に移動可能な第1スリーブSL1と、を備えており、低速段ドッグDLと出力ドッグDOと第1スリーブSL1とで低速段ドッグクラッチCLを、高速段ドッグDHと出力ドッグDOと第1スリーブSL1とで高速段ドッグクラッチCHを、それぞれ構成している。即ち、第1スリーブSL1は、不図示の切替機構によって、低速段ドッグDLと出力ドッグDOとの両方に噛合する低速段位置に移動されることで低速段ドッグクラッチCLを係合し、ギヤ列33を用いた大きいギヤ比の動力伝達経路である低速段を形成し、高速段ドッグDHと出力ドッグDOとの両方に噛合する高速段位置に移動されることで高速段ドッグクラッチCHを係合し、ギヤ列32を用いたギヤ列33より小さいギヤ比の動力伝達経路である高速段を形成する。従って、変速機構28は、カウンタ軸22の回転を低速段又は高速段で変速して後輪側出力軸23Rに伝達し、或いは後述の係合機構29の係合により後輪側出力軸23R及び前輪側出力軸23Fに伝達する。
【0021】
係合機構29は、後輪側出力軸23Rに固定された後輪側ドッグDRと、前輪側出力軸23Fに固定された前輪側ドッグDFと、軸方向に移動可能な第2スリーブSL2と、を備えて、四輪駆動クラッチCAを構成している。即ち、第2スリーブSL2は、図示を省略した切替機構によって、後輪側ドッグDRだけに噛合して四輪駆動クラッチCAを解放した二輪駆動位置と、後輪側ドッグDR及び前輪側ドッグDFの両方に噛合して四輪駆動クラッチCAを係合した四輪駆動位置と、に移動されることで、後輪側出力軸23Rと前輪側出力軸23Fとを係合可能(係合又は解放可能)に構成され、つまり二輪駆動の状態と四輪駆動の状態とを切替える。
【0022】
例えば運転席に配置されたトランスファレバー(不図示)が二輪駆動かつ高速段の位置に操作されると、不図示の切替機構によって、第1スリーブSL1を図2中右側の上記高速段ドッグクラッチCHを係合する位置に、かつ第2スリーブSL2も図2中右側の上記四輪駆動クラッチCAを解放する位置に、それぞれの位置を設定する。これにより、トランスファ装置1は、高速段かつ二輪駆動の状態に設定される。つまり、この状態では、エンジン10の駆動力を変速機11で変速し、さらにトランスファ装置1で高速段に変速しつつ後輪19L,19Rに伝達する。なお、詳しくは後述するモータ3の駆動回転も、高速段かつ二輪駆動の状態で後輪19L,19Rに伝達し、非駆動時(コースト時)には、高速段かつ二輪駆動の状態で後輪19L,19Rからの回転を回生する。
【0023】
また、上記トランスファレバーが四輪駆動かつ高速段の位置に操作されると、不図示の切替機構によって、第1スリーブSL1を図2中右側の上記高速段ドッグクラッチCHを係合する位置に、かつ第2スリーブSL2は図2中左側の上記四輪駆動クラッチCAを係合する位置に、それぞれの位置を設定する。これにより、トランスファ装置1は、高速段かつ四輪駆動の状態に設定される。つまり、この状態では、エンジン10の駆動力を変速機11で変速し、さらにトランスファ装置1で高速段に変速しつつ後輪19L,19R及び前輪17L,17Rに伝達する。なお、詳しくは後述するモータ3の駆動回転も、高速段かつ四輪駆動の状態で後輪19L,19R及び前輪17L,17Rに伝達し、非駆動時(コースト時)には、高速段かつ四輪駆動の状態で後輪19L,19R及び前輪17L,17Rからの回転を回生する。
【0024】
そして、上記トランスファレバーが四輪駆動かつ低速段の位置に操作されると、不図示の切替機構によって、第1スリーブSL1を図2中左側の上記低速段ドッグクラッチCLを係合する位置に、かつ第2スリーブSL2を図2中左側の上記四輪駆動クラッチCAを係合する位置に、それぞれの位置を設定する。これにより、トランスファ装置1は、低速段かつ四輪駆動の状態に設定される。つまり、この状態では、エンジン10の駆動力を変速機11で変速し、さらにトランスファ装置1で低速段に変速しつつ後輪19L,19R及び前輪17L,17Rに伝達する。なお、詳しくは後述するモータ3の駆動回転も、低速段かつ四輪駆動の状態で後輪19L,19R及び前輪17L,17Rに伝達し、非駆動時(コースト時)には、低速段かつ四輪駆動の状態で後輪19L,19R及び前輪17L,17Rからの回転を回生する。
【0025】
[モータ及びモータ回転伝達部の構成]
ついで、本実施の形態におけるモータ3と、その回転をトランスファ機構2に伝達するモータ回転伝達部4との構成について図2及び図3を用いて説明する。モータ3は、トランスファ機構2にモータ回転伝達部4によって駆動連結されており、モータ回転伝達部4は、第4軸部材としてのモータ出力軸24、第1ギヤとしてのモータ出力ギヤG7、第5軸部材としてのモータカウンタ軸25、第2ギヤとしての大径ギヤG8、及び第3ギヤとしての小径ギヤG9を有して構成されている。
【0026】
詳細には、上記第1軸AX1乃至第3軸AX3と平行で、かつ第1軸AX1よりも下方で第2軸AXの側方に配置された第4軸AX4上には(図3参照)、モータ3と、その同軸上に、モータ3の図示を省略したロータに駆動連結され、モータ3により駆動されるモータ出力軸24と、モータ出力軸24に回転不能に固定されたモータ出力ギヤG7とが配置されている。該モータ出力ギヤG7は、後述のモータカウンタ軸25の大径ギヤG8に噛合して、ギヤ列34を構成している。
【0027】
上記第1軸AX1乃至第4軸AX4と平行で、かつ第2軸AX2及び第4軸AX4よりも下方に配置された第5軸AX5上には(図3参照)、上記ギヤ列34を介してモータ3の回転により回転されるモータカウンタ軸25が回転自在に配置されている。モータカウンタ軸25には、上記モータ出力ギヤG7よりも歯数が多い大径ギヤG8が回転不能に固定されており、さらに、小径ギヤG9も回転不能に固定されている。大径ギヤG8は、上記モータ出力ギヤG7に噛合してギヤ列34を構成しており、小径ギヤG9は、上記カウンタ軸22に固定され、小径ギヤG9よりも歯数が多い第4ギヤとしてのドリブンギヤG2に噛合してギヤ列35を構成している。
【0028】
即ち、本実施の形態に係るトランスファ装置1では、モータ出力ギヤG7と大径ギヤG8とで構成されるギヤ列34は、モータ3の回転(モータ出力軸24の回転)を減速してモータカウンタ軸25に伝達し、さらに、小径ギヤG9とドリブンギヤG2とで構成されるギヤ列35は、モータカウンタ軸25の回転を減速してカウンタ軸22に伝達する。従って、モータ3の回転は、ギヤ列34とギヤ列35との2段で減速されて、カウンタ軸22に伝達される。
【0029】
なお、図2においては、入力軸21に固定されたドライブギヤG1と、モータカウンタ軸25に固定された小径ギヤG9とが軸方向に異なる位置に配置された形で示されているが、図3に示すように、ドライブギヤG1と小径ギヤG9とは軸方向から視て重ならない大きさであるため、ドライブギヤG1と小径ギヤG9とは、ドリブンギヤG2に対してそれぞれ異なる位相で噛合し、かつ径方向から視て軸方向に少なくとも一部が重なる位置に配置されている。これにより、トランスファ装置1の軸方向の短縮化が図られている。
【0030】
また、トランスファ装置1が車両100に搭載された状態において、モータ3、モータ出力ギヤG7、及び大径ギヤG8は、入力軸21に対してエンジン10とは軸方向の反対側に配置されていることになる。これにより、モータ3及びモータ回転伝達部4が、入力軸21と径方向に干渉することなく、軸方向に並べて配置することができ、コンパクト化が図られている。
【0031】
以上説明したように、モータ回転伝達部4にモータカウンタ軸25を設けることで、モータ3の回転を大きく減速してカウンタ軸22に伝達できるので、モータ3の駆動力によるアシスト走行やEV走行の走行性能を向上しようとし、モータ3による大きな駆動トルクが必要となっても、モータ3を大型化する必要がなく、つまり走行性能を向上できるものでありながら、トランスファ装置1全体として小型化ができて車両搭載性の低下を防ぐことができる。
【0032】
また、入力軸21に固定されるドライブギヤG1と、モータカウンタ軸25に固定される小径ギヤG9とを、カウンタ軸22に固定されたドリブンギヤG2に共通化して噛合させるので、例えば特開2015-196413号公報のように、カウンタ軸と入力軸とを駆動連結するギヤ列と、カウンタ軸とモータ出力軸とを駆動連結するギヤ列とを別々に設ける場合に比して、軸方向のコンパクト化を図ることができ、トランスファ装置1の車両搭載性の低下を防ぐことができる。特に、上述したようにギヤ列31とギヤ列35とは、少なくとも一部を軸方向の同じ位置に重ねて配置することができるので、さらに軸方向のコンパクト化を図ることができる。これにより、トランスファ装置1の後方側(入力軸21の入力側とは軸方向反対側)にモータ3を配置する空間を確保することも可能となっている。なお、入力軸21は、既存のトランスファ装置と同じ形状であるため、部品として流用することができ、コストダウンも可能としている。
【0033】
また、図3に示すように、モータカウンタ軸25をモータ出力軸24よりも下方に配置されているため、換言すると、モータ3が、上下方向において、入力軸21(第1軸AX1)とモータカウンタ軸25(第5軸AX5)との間の第4軸AX4上に配置されているため、最低地上高Lhよりも下方に突出することなく、例えばモータ3を第5軸AX5のように下方に配置する場合よりも、モータ3の外径を大きくすることができる。
【0034】
<他の実施の形態の可能性>
なお、以上説明した本実施の形態においては、入力軸21がカウンタ軸22及び変速機構28を介して後輪側出力軸23Rに駆動連結された所謂FRタイプをベースとするためのトランスファ装置1を説明したが、これに限らず、入力軸21がカウンタ軸22及び変速機構28を介して前輪側出力軸23Fに駆動連結された所謂FFタイプをベースとするためのトランスファ装置であってもよい。
【0035】
また、本実施の形態においては、モータ出力軸24からカウンタ軸22までにおいて、モータ3の回転をギヤ列34とギヤ列35との両方で減速するものを説明したが、どちらか一方のギヤ列だけで減速するものでもよく、その場合、少なくとも一方のギヤ列で減速できる分、モータ3の大型化を防ぐことができる。
【0036】
また、本実施の形態において説明した第1軸AX1~第5軸AX5の上下方向の配置は、これに限らず、最低地上高Lhよりも下方に突出しない範囲内で、適宜に配置換えしても構わない。
【0037】
また、本実施の形態において説明した最低地上高Lhは、水平方向に直線状に設定されたものを説明したが、これに限らず、例えば車両100のロール等を考慮して、正面視で円弧状となる最低地上高が設定されたものでもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…駆動装置(トランスファ装置)/3…回転電機(モータ)/10…駆動源(エンジン)/11…変速機/12…第2伝達軸(前輪側プロペラシャフト)/13…第1伝達軸(後輪側プロペラシャフト)/21…第1軸部材(入力軸)/22…第2軸部材(カウンタ軸)/23R…第3軸部材(後輪側出力軸)/23F…第6軸部材(前輪側出力軸)/24…第4軸部材(モータ出力軸)/25…第5軸部材(モータカウンタ軸)/28…変速機構/G1…第5ギヤ(ドライブギヤ)/G2…第4ギヤ(ドリブンギヤ)/G7…第1ギヤ(モータ出力ギヤ)/G8…第2ギヤ(大径ギヤ)/G9…第3ギヤ(小径ギヤ)
図1
図2
図3