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特許7487720非接触給電設備、非接触給電設備のインピーダンス調整方法、及び非接触給電設備のインピーダンス調整プログラム
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  • 特許-非接触給電設備、非接触給電設備のインピーダンス調整方法、及び非接触給電設備のインピーダンス調整プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】非接触給電設備、非接触給電設備のインピーダンス調整方法、及び非接触給電設備のインピーダンス調整プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/40 20160101AFI20240514BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20240514BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20240514BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240514BHJP
【FI】
H02J50/40
B60L5/00 B
B60M7/00 X
H02J50/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021181420
(22)【出願日】2021-11-05
(65)【公開番号】P2023069517
(43)【公開日】2023-05-18
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】布谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】山本 正明
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-072011(JP,A)
【文献】特開平11-155245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L5/00-5/42
B60M1/00-7/00
H02J50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、
複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、
前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備であって、
複数の前記電源装置のそれぞれは、
前記給電線に前記交流電流を出力する電源回路と、
前記電源回路を制御する電源制御部と、
前記給電線及び前記電源装置を含む給電回路のインダクタンス及びキャパシタンスの少なくとも一方である回路特性を調整する調整部と、を備え、
複数の前記電源装置に係る前記調整部の調整を行う調整システムを更に備え、
複数の前記電源装置のうち、調整対象とする1つの前記電源装置を対象電源装置とし、前記対象電源装置に接続された前記給電線を対象給電線とし、前記対象給電線に隣接して配置された他の前記給電線を隣接給電線とし、前記隣接給電線に接続された前記電源装置を隣接電源装置とし、前記移動体に電力を供給する場合の前記電源装置の動作を通常給電動作として、
前記調整システムは、少なくとも1つの前記隣接電源装置に前記通常給電動作を行わせた状態で、前記対象電源装置に第1処理と第2処理とを実行させ、
前記第1処理は、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力しない状態で前記対象給電線の電圧である第1電圧値を測定する処理であり、
前記第2処理は、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力している状態で前記対象給電線の電圧である第2電圧値を測定する処理であり、
前記調整システムは、前記第1処理及び前記第2処理の実行後、前記第1電圧値と前記第2電圧値との差分に基づいて前記対象電源装置の前記給電回路のリアクタンスである給電回路リアクタンスを求め、当該給電回路リアクタンスに応じて、前記対象電源装置の前記給電回路のインピーダンスである給電回路インピーダンスが予め定められた規定インピーダンスとなるように、前記調整部により前記回路特性を調整する調整処理を実行する、非接触給電設備。
【請求項2】
前記電源装置は、当該電源装置が接続された前記給電線に予め規定された規定値の電流が流れるように前記電源制御部により前記電源回路の出力電圧が制御され、
前記調整システムは、前記調整処理の実行後、前記給電線の電圧と前記給電線に流れる電流とに基づいて前記給電線に供給している電力である供給電力を取得し、当該供給電力に対して前記電源回路の出力電圧が適正範囲内であるか否かを判断する確認処理を実行し、前記確認処理により前記適正範囲内でないと判定した場合には、前記第1処理、前記第2処理、及び、前記調整処理を再度実行する、請求項1に記載の非接触給電設備。
【請求項3】
前記調整システムは、全ての前記給電線及び前記電源装置の組についての前記第1処理、前記第2処理及び前記調整処理が完了した後、それぞれの前記給電線及び前記電源装置の組についての前記確認処理を実行する、請求項2に記載の非接触給電設備。
【請求項4】
前記調整システムは、前記調整処理を予め規定された規定回数行っても前記確認処理で適正範囲内とならない場合、前記第1処理により前記第1電圧値を測定する期間である第1サンプリング期間と、前記第2処理により前記第2電圧値を測定する期間である第2サンプリング期間と、の少なくとも一方を長くするように変更する、請求項2又は3に記載の非接触給電設備。
【請求項5】
複数の前記電源装置のそれぞれは、当該電源装置における前記給電回路インピーダンスの調整指令を受け付ける調整指令受付部を備え、
前記調整システムは、前記調整指令受付部により前記調整指令を受け付けた場合には、当該調整指令を受け付けた前記調整指令受付部を備える前記電源装置を前記対象電源装置として、前記第1処理、前記第2処理、及び、前記調整処理を実行する、請求項1から4の何れか一項に記載の非接触給電設備。
【請求項6】
受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、
複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備において、前記給電線及び前記電源装置を含む給電回路のインピーダンスである給電回路インピーダンスを調整する、非接触給電設備のインピーダンス調整方法であって、
複数の前記電源装置のそれぞれは、
前記給電線に前記交流電流を出力する電源回路と、
前記電源回路を制御する電源制御部と、
前記給電回路のインダクタンス及びキャパシタンスの少なくとも一方である回路特性を調整する調整部と、を備え、
複数の前記電源装置のうち、調整対象とする1つの前記電源装置を対象電源装置とし、前記対象電源装置に接続された前記給電線を対象給電線とし、前記対象給電線に隣接して配置された他の前記給電線を隣接給電線とし、前記隣接給電線に接続された前記電源装置を隣接電源装置とし、前記移動体に電力を供給する場合の前記電源装置の動作を通常給電動作として、
少なくとも1つの前記隣接電源装置に前記通常給電動作を行わせた状態、且つ、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力しない状態で前記対象給電線の電圧である第1電圧値を測定する第1処理と、
少なくとも1つの前記隣接電源装置に前記通常給電動作を行わせた状態、且つ、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力している状態で前記対象給電線の電圧である第2電圧値を測定する第2処理と、
前記第1処理及び前記第2処理の実行後、前記第1電圧値と前記第2電圧値との差分に基づいて前記対象電源装置の前記給電回路のリアクタンスである給電回路リアクタンスを求め、当該給電回路リアクタンスに応じて、前記対象電源装置の前記給電回路の前記給電回路インピーダンスが予め定められた規定インピーダンスとなるように、前記調整部により前記回路特性を調整する調整処理と、を備える、非接触給電設備のインピーダンス調整方法。
【請求項7】
受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、
複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備において、前記給電線及び前記電源装置を含む給電回路のインピーダンスである給電回路インピーダンスを調整する機能をコンピュータに実現させる、非接触給電設備のインピーダンス調整プログラムであって、
複数の前記電源装置のそれぞれは、
前記給電線に前記交流電流を出力する電源回路と、
前記電源回路を制御する電源制御部と、
前記給電線及び前記電源装置を含む前記給電回路のインダクタンス及びキャパシタンスの少なくとも一方である回路特性を調整する調整部と、を備え、
複数の前記電源装置のうち、調整対象とする1つの前記電源装置を対象電源装置とし、前記対象電源装置に接続された前記給電線を対象給電線とし、前記対象給電線に隣接して配置された他の前記給電線を隣接給電線とし、前記隣接給電線に接続された前記電源装置を隣接電源装置とし、前記移動体に電力を供給する場合の前記電源装置の動作を通常給電動作として、
少なくとも1つの前記隣接電源装置に前記通常給電動作を行わせた状態、且つ、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力しない状態で前記対象給電線の電圧である第1電圧値を測定する第1機能と、
少なくとも1つの前記隣接電源装置に前記通常給電動作を行わせた状態、且つ、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力している状態で前記対象給電線の電圧である第2電圧値を測定する第2機能と、
前記第1機能及び前記第2機能を実現させた後、前記第1電圧値と前記第2電圧値との差分に基づいて前記対象電源装置の前記給電回路のリアクタンスである給電回路リアクタンスを求め、当該給電回路リアクタンスに応じて、前記対象電源装置の前記給電回路の前記給電回路インピーダンスが予め定められた規定インピーダンスとなるように、前記調整部により前記回路特性を調整する調整機能と、をコンピュータに実現させる、非接触給電設備のインピーダンス調整プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、複数の給電線のそれぞれに接続され、給電線に交流電流を供給する電源装置とを備えて、受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備において、給電線及び電源装置を含む給電回路のインピーダンスである給電回路インピーダンスを調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平11-155245号公報(特許文献1)には、上記のような非接触給電設備の給電回路インピーダンスを調整する技術が開示されている。当該文献では、受電装置に設けられた共振回路における共振周波数と、電源装置における発振周波数との差分が予め規定された設定範囲内であるか否かが判定される。そして、差分が設定範囲内でない場合には、インダクタンス調整回路を制御して給電回路におけるインダクタンスの値が調整される。また、別の方法では、差分が設定範囲内でない場合には、キャパシタンス調整回路を制御して給電回路におけるキャパシタンスの値が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-155245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、このような非接触給電設備を備えた走行設備(例えば物流設備など)の大規模化が進んでおり、非接触給電設備が複数の系統の給電回路を備えていることも多い。移動体は、当該走行設備内を広範囲に移動するため、複数の給電回路を経由して走行する。従って、移動体が常時少なくとも1つの給電回路を介して受電することが可能なように、複数の系統の給電線は隣接して配置されることになる。このため、1つの給電回路における給電回路インピーダンスを調整する場合に、他の給電回路の影響を受けて、調整精度が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、複数の系統の給電回路を備えた非接触給電設備において、他の給電回路による影響を低減して給電回路インピーダンスを適切に調整することができる技術の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた、非接触給電設備は、受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備であって、複数の前記電源装置のそれぞれは、前記給電線に前記交流電流を出力する電源回路と、前記電源回路を制御する電源制御部と、前記給電線及び前記電源装置を含む給電回路のインダクタンス及びキャパシタンスの少なくとも一方である回路特性を調整する調整部と、を備え、複数の前記電源装置に係る前記調整部の調整を行う調整システムを更に備え、複数の前記電源装置のうち、調整対象とする1つの前記電源装置を対象電源装置とし、前記対象電源装置に接続された前記給電線を対象給電線とし、前記対象給電線に隣接して配置された他の前記給電線を隣接給電線とし、前記隣接給電線に接続された前記電源装置を隣接電源装置とし、前記移動体に電力を供給する場合の前記電源装置の動作を通常給電動作として、前記調整システムは、少なくとも1つの前記隣接電源装置に前記通常給電動作を行わせた状態で、前記対象電源装置に第1処理と第2処理とを実行させ、前記第1処理は、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力しない状態で前記対象給電線の電圧である第1電圧値を測定する処理であり、前記第2処理は、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力している状態で前記対象給電線の電圧である第2電圧値を測定する処理であり、前記調整システムは、前記第1処理及び前記第2処理の実行後、前記第1電圧値と前記第2電圧値との差分に基づいて前記対象電源装置の前記給電回路のリアクタンスである給電回路リアクタンスを求め、当該給電回路リアクタンスに応じて、前記対象電源装置の前記給電回路のインピーダンスである給電回路インピーダンスが予め定められた規定インピーダンスとなるように、前記調整部により前記回路特性を調整する調整処理を実行する。
【0007】
この構成によれば、複数の給電線が移動体の移動経路に沿って並ぶように配置されている場合において、各給電線に隣接する給電線による影響を考慮して、各給電線及びそれに接続された電源装置により構成された給電回路の電気的特性を適切に調整することができる。また、調整システムによる制御によって、調整部により自動的に回路特性の調整を行うことができる。このため、非接触給電設備の設置時のみならず、非接触給電設備の運用開始後における電源回路の調整作業の工数低減を図ることができる。このように、本構成によれば、複数の系統の給電回路を備えた非接触給電設備において、他の給電回路による影響を低減して給電回路インピーダンスを適切に調整することができる。
【0008】
上述した非接触給電設備の技術的特徴は、非接触給電設備のインピーダンス調整方法や非接触給電設備のインピーダンス調整プログラムにも適用可能である。以下にその代表的な態様を例示する。例えば、当該調整方法は、上述した非接触給電設備の特徴を備えた各種の処理を有することができる。また、当該調整プログラムは、上述した非接触給電設備の特徴を備えた各種の機能をコンピュータに実現させることが可能である。当然ながらこれらの調整方法及び調整プログラムも、上述した非接触給電設備の作用効果を奏することができる。さらに、非接触給電設備の好適な態様として、下記の実施形態の説明において例示する種々の付加的特徴も、これら調整方法や調整プログラムに組み込むことが可能であり、当該方法及び当該プログラムはそれぞれの付加的特徴に対応する作用効果も奏することができる。
【0009】
1つの好適な態様として、非接触給電設備のインピーダンス調整方法は、受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備において、前記給電線及び前記電源装置を含む給電回路のインピーダンスである給電回路インピーダンスを調整する、非接触給電設備のインピーダンス調整方法であって、複数の前記電源装置のそれぞれは、前記給電線に前記交流電流を出力する電源回路と、前記電源回路を制御する電源制御部と、前記給電回路のインダクタンス及びキャパシタンスの少なくとも一方である回路特性を調整する調整部と、を備え、複数の前記電源装置のうち、調整対象とする1つの前記電源装置を対象電源装置とし、前記対象電源装置に接続された前記給電線を対象給電線とし、前記対象給電線に隣接して配置された他の前記給電線を隣接給電線とし、前記隣接給電線に接続された前記電源装置を隣接電源装置とし、前記移動体に電力を供給する場合の前記電源装置の動作を通常給電動作として、少なくとも1つの前記隣接電源装置に前記通常給電動作を行わせた状態、且つ、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力しない状態で前記対象給電線の電圧である第1電圧値を測定する第1処理と、少なくとも1つの前記隣接電源装置に前記通常給電動作を行わせた状態、且つ、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力している状態で前記対象給電線の電圧である第2電圧値を測定する第2処理と、前記第1処理及び前記第2処理の実行後、前記第1電圧値と前記第2電圧値との差分に基づいて前記対象電源装置の前記給電回路のリアクタンスである給電回路リアクタンスを求め、当該給電回路リアクタンスに応じて、前記対象電源装置の前記給電回路の前記給電回路インピーダンスが予め定められた規定インピーダンスとなるように、前記調整部により前記回路特性を調整する調整処理と、を備える。
【0010】
また、1つの好適な態様として、非接触給電設備のインピーダンス調整プログラムは、受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備において、前記給電線及び前記電源装置を含む給電回路のインピーダンスである給電回路インピーダンスを調整する機能をコンピュータに実現させる、非接触給電設備のインピーダンス調整プログラムであって、複数の前記電源装置のそれぞれは、前記給電線に前記交流電流を出力する電源回路と、前記電源回路を制御する電源制御部と、前記給電線及び前記電源装置を含む前記給電回路のインダクタンス及びキャパシタンスの少なくとも一方である回路特性を調整する調整部と、を備え、複数の前記電源装置のうち、調整対象とする1つの前記電源装置を対象電源装置とし、前記対象電源装置に接続された前記給電線を対象給電線とし、前記対象給電線に隣接して配置された他の前記給電線を隣接給電線とし、前記隣接給電線に接続された前記電源装置を隣接電源装置とし、前記移動体に電力を供給する場合の前記電源装置の動作を通常給電動作として、少なくとも1つの前記隣接電源装置に前記通常給電動作を行わせた状態、且つ、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力しない状態で前記対象給電線の電圧である第1電圧値を測定する第1機能と、少なくとも1つの前記隣接電源装置に前記通常給電動作を行わせた状態、且つ、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力している状態で前記対象給電線の電圧である第2電圧値を測定する第2機能と、前記第1機能及び前記第2機能を実現させた後、前記第1電圧値と前記第2電圧値との差分に基づいて前記対象電源装置の前記給電回路のリアクタンスである給電回路リアクタンスを求め、当該給電回路リアクタンスに応じて、前記対象電源装置の前記給電回路の前記給電回路インピーダンスが予め定められた規定インピーダンスとなるように、前記調整部により前記回路特性を調整する調整機能と、をコンピュータに実現させる。
【0011】
非接触給電設備、非接触給電設備のインピーダンス調整方法、及び非接触給電設備のインピーダンス調整プログラムのさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】非接触給電設備を備えた物品搬送設備の平面図
図2】物品搬送車の正面図
図3】非接触給電設備のシステム構成を示す模式的なブロック図
図4】非接触給電設備における1つの給電装置と当該給電装置から電力の供給を受ける給電線との組の構成を示す模式的なブロック図
図5】キャパシタアレイの構成例を示す模式的回路ブロック図
図6】給電回路インピーダンスを調整する手順の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、物品搬送設備において利用される形態を例として、非接触給電設備の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態に係る物品搬送設備200は、物品搬送車3(移動体)の走行経路である移動経路1に沿って配置された走行レール2と、走行レール2に案内されて移動経路1に沿って走行する物品搬送車3とを備えている。例えば、移動経路1は、1つの環状の主経路1aと複数の物品処理部Pを経由する環状の副経路1bと、これら主経路1aと副経路1bとを接続する接続経路1cとを備えている。本実施形態では、物品搬送車3は、矢印で示す方向に一方通行で移動経路1を走行する。また、本実施形態では、物品搬送車3による搬送対象の物品は、例えば、半導体基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)や、ディスプレイの材料となるガラス基板等である。
【0014】
図2に示すように、本実施形態では、物品搬送車3は、移動経路1に沿って天井から吊り下げ支持されて配置された一対の走行レール2に案内されて移動経路1に沿って走行する走行部9と、走行レール2の下方に位置して走行部9に吊り下げ支持された搬送車本体10と、移動経路1に沿って配設された給電線11から非接触で駆動用電力を受電する受電装置4とを備えている。搬送車本体10には、搬送車本体10に昇降自在に備えられて物品を吊り下げ状態で支持する物品支持部(不図示)が備えられている。
【0015】
走行部9には、図2に示すように、電動式の駆動モータ14にて回転駆動される一対の走行輪15が備えられている。走行輪15は、走行レール2のそれぞれの上面にて形成される走行面を転動する。また、走行部9には、上下方向Zに沿う軸心周り(上下軸心周り)で自由回転する一対の案内輪16が、一対の走行レール2における内側面に当接する状態で備えられている。また、走行部9は、走行用の駆動モータ14やその駆動回路等を備えて構成されており、物品搬送車3を走行レール2に沿って走行させる。搬送車本体10には、物品支持部を昇降させるアクチュエータ、物品を把持する把持部を駆動するアクチュエータ等、及び、それらの駆動回路等が備えられている。
【0016】
これらの駆動モータ14や、種々のアクチュエータ、これらを駆動する駆動回路等への電力は、給電線11から非接触で受電装置4に供給される。上述したように、受電装置4を介して物品搬送車3に駆動用電力を供給する給電線11は、移動経路1に沿って配設されている。本実施形態では、給電線11は、受電装置4に対して経路幅方向Hの両側に配置されている。
【0017】
受電装置4は、本実施形態では、HID(High Efficiency Inductive Power Distribution Technology)と称されるワイヤレス給電技術を用いて、物品搬送車3に駆動用電力を供給する。具体的には、誘導線である給電線11に高周波電流を流し、給電線11の周囲に磁界を発生させる。受電装置4は、ピックアップコイル40や磁性体コアを備えて構成されており、ピックアップコイル40は磁界からの電磁誘導によって誘起される。誘起された交流の電力は、全波整流回路などの整流回路や、平滑コンデンサ等を備えた受電回路により直流に変換され、アクチュエータや駆動回路に供給される。
【0018】
本実施形態の非接触給電設備100は、このようなワイヤレス給電技術を用いて、移動体としての物品搬送車3に非接触で電力を供給する設備である。図3及び図4に示すように、非接触給電設備100は、受電装置4を備えた物品搬送車3(移動体)の移動経路1に沿って並ぶように配置された複数の給電線11と、複数の給電線11のそれぞれに接続され、給電線11に交流電流を供給する電源装置50とを備え、受電装置4に非接触で電力を供給する。図1を参照して例示したように、物品搬送設備200は、1つの大きな環状の主経路1aと、主経路1aよりも小さな環状の複数の副経路1bとを備えている。このように、比較的大きな規模の物品搬送設備200では、送電の効率が低下することや、故障時に設備の全体が停止することなどを抑制するために、給電線11と電源装置50との組が1系統だけではなく、複数組設けられる(図3参照)。
【0019】
給電線11は、電気的に十分長い閉回路を形成しており、分布定数回路となっている。このため、給電線11のインピーダンスを構成する抵抗、インダクタンス、キャパシタンスは、回路上に分布している。給電線11と電源装置50とを含む給電回路5のインピーダンスである給電回路インピーダンスは、給電線11と、物品搬送車3の受電装置4が備えるピックアップコイル40と結合することによる相互インダクタンスの影響もあり、インダクタンスにより影響を受けることが多い。そして、本実施形態の非接触給電設備100は、給電回路インピーダンスを適切に調整することに特徴を有する。このため、図4では、受電装置4のピックアップコイル40に対応する位置に、集中定数としてのインダクタンス(L1,L2,・・・,Ln)が存在している状態の等価回路図を示している。
【0020】
それぞれの電源装置50は、当該電源装置50に接続された給電線11を介して、適切に(電気的な効率が良いように)物品搬送車3の受電装置4に給電できるように構成されていることが望ましい。上述したように、導線である給電線11に高周波電流が流れ、ピックアップコイル40と電磁的に結合することによって非接触で電力が供給される。受電装置4は、給電線11を流れる高周波電流の周波数と共振するように構成された共振回路を備えている。ここで、給電線11を含む給電回路5のインピーダンス(給電回路インピーダンス)が、効率の良い給電を実現するインピーダンス(規定インピーダンス)からずれていると、給電効率が低下し、損失が増大することになる。このため、それぞれの給電回路5における給電回路インピーダンスが適切に調整されていることが好ましい。
【0021】
但し、上述したように、給電回路5は、非接触給電設備100に複数設けられている。大きな物品搬送設備200に備えられる非接触給電設備100では、100~300系統以上に及ぶ場合もある。これらを作業者が手動により調整すると膨大な調整時間を要し、調整に要するコストも膨大となる。このため、本実施形態では、後述する調整システム70により給電回路インピーダンスの調整が自動化されている。また、例えば図1に示すように、物品搬送車3は、物品搬送設備200内を広範囲に移動する。このように複数の系統の給電回路5を有する場合、物品搬送車3は複数の給電回路5を経由して走行することになる。従って、物品搬送車3が少なくとも1つの給電回路5を介して受電することが可能なように、異なる給電回路5に属する給電線11が隣接して配置されることになる。このため、1つの給電回路5における給電回路インピーダンスを調整する場合に、他の給電回路5の影響を受けて、調整精度が低下するおそれがある。本実施形態の非接触給電設備100は、他の給電回路5による影響を低減して給電回路インピーダンスを適切に調整する点に特徴を有する。
【0022】
図4に示すように、複数の電源装置50のそれぞれは、給電線11に交流電流を出力する電源回路22と、電源回路22を制御する電源制御部21と、給電線11及び電源装置50を含む給電回路5のインダクタンス及びキャパシタンスの少なくとも一方である回路特性を調整するキャパシタアレイ30(調整部)とを備えている。また、電源装置50のそれぞれは、後述する調整システム70を構成するインピーダンス演算部25と、キャパシタンス調整部26と、給電線11の電圧を検出する電圧検出部24とを備えている。
【0023】
図3に示すように、非接触給電設備100は、複数の電源装置50に係るキャパシタアレイ30(調整部)の調整を行う調整システム70におけるコントローラである調整システムコントローラ80も備えている。調整システムコントローラ80は、マイクロコンピュータなど、プログラムを実行可能なプロセッサを中核として構成されており、それぞれの電源装置50に対して調整指令を与える。それぞれの電源装置50は、調整指令受付部29を備えており、調整指令に基づいて給電回路インピーダンスの調整を行う。例えば、調整システムコントローラ80は、複数の電源装置50が同時に給電回路インピーダンスの調整を実施せず、順次実施するように、それぞれの電源装置50に対して調整指令を与えて、それぞれの電源装置50を制御する。
【0024】
尚、例えば、それぞれの電源装置50に作業者が操作可能な操作スイッチ等が設けられており、作業者が当該操作スイッチを操作することによって、調整指令が与えられるように構成されていてもよい。つまり、調整システムコントローラ80からの調整指令だけではなく、作業者によるマニュアル操作によっても給電回路インピーダンスが調整可能であってもよい。また、作業者が操作可能な操作スイッチへの操作により、当該操作スイッチが備えられた電源装置50からの調整要求が調整システムコントローラ80へ送られ、調整システムコントローラ80が当該電源装置50に対して調整指令を送信してもよい。
【0025】
当然ながら、そのような操作スイッチが別途設けられていなくてもよい。例えば、作業者が、調整システムコントローラ80を介して電源装置50を指定して、給電回路インピーダンスを調整させてもよい。
【0026】
上述したように、非接触給電設備100は、給電線11と電源装置50との組である給電回路5を複数備えているが、給電回路インピーダンスの調整は、給電回路5を1つずつ選択して順次実施される。ここで、図3に示すように、複数の電源装置50のうち、調整対象とする1つの電源装置50を対象電源装置50Tとし、対象電源装置50Tに接続された給電線11を対象給電線11Tとし、対象給電線11Tに隣接して配置された他の給電線11を隣接給電線11Nとし、隣接給電線11Nに接続された電源装置50を隣接電源装置50Nとする。また、必要に応じて、複数の給電回路5のうち、対象電源装置50Tと対象給電線11Tとの組を対象給電回路5T、隣接電源装置50Nと隣接給電線11Nとの組を隣接給電回路5Nと称する。また、物品搬送車3に電力を供給する場合の電源装置50の動作を通常給電動作とする。
【0027】
調整システム70は、少なくとも1つの隣接電源装置50Nに通常給電動作を行わせた状態で、対象電源装置50Tに後述する第1処理#10と第2処理#20とを実行させる(図6参照)。第1処理#10は、対象電源装置50Tの電源回路22が交流電流を出力しない状態で対象給電線11Tの電圧である第1電圧値V1を測定する処理である。第2処理#20は、対象電源装置50Tの電源回路22が交流電流を出力している状態で対象給電線11Tの電圧である第2電圧値V2を測定する処理である。尚、第2処理#20において、電源回路22が出力する交流電流は、通常給電動作と同じ交流電流(数十A)でも良いが、好ましくは小電流(数mA~数A程度)の交流電流である。調整システム70は、第1処理#10及び第2処理#20の実行後、第1電圧値V1と第2電圧値V2との差分に基づいて対象電源装置50Tの給電回路5(対象給電回路5T)のリアクタンスである給電回路リアクタンス(給電回路インダクタンスLt)を求める。そして、調整システム70は、当該給電回路リアクタンスに応じて、対象給電回路5Tのインピーダンスである給電回路インピーダンスが予め定められた規定インピーダンスとなるように、キャパシタアレイ30(調整部)により回路特性(給電回路インピーダンス)を調整する調整処理#30を実行する(図6参照)。尚、第1処理#10と第2処理#20は、何れの処理が先に実行されてもよい。
【0028】
上述したように、複数の電源装置50のそれぞれは、当該電源装置50における給電回路インピーダンスの調整指令を受け付ける調整指令受付部29を備えている。そして、調整システム70は、調整指令受付部29により調整指令を受け付けた場合に、当該調整指令を受け付けた調整指令受付部29を備える電源装置50を対象電源装置50Tとして、第1処理#10、第2処理#20、及び、調整処理#30を実行する。
【0029】
ここで、電源装置50の詳細について説明する。電源回路22は、例えばインバータ回路を備えたスイッチング電源回路を中核として構成されている。電源制御部21は、指令値に基づいて、インバータ回路を構成するスイッチング素子をスイッチングするスイッチング制御信号のデューティーを制御する。つまり、例えば、電源制御部21は、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)により電源回路22交流電流を出力させる。ここで、指令値は、例えば、電流値(実効値でも波高値(ピーク・トゥ・ピーク値)でもよい)や、PWM制御におけるデューティーである。電源装置50には、電源回路22から出力される交流電流を検出する電流検出部23も備えられている。指令値が電流値の場合には、指令値と電流検出部23において検出された電流値との差分に基づいて、電源回路22から指令値に対応した交流電流が出力されるように、電源制御部21においてフィードバック制御が行われる。
【0030】
このようにフィードバック制御が実施されることにより、例えば、電源回路22から出力される交流電流の電流値は指令値に沿ったものとなる。ここで、指令値が電流値であった場合でも、給電回路5の仕様に応じて、PWM制御におけるデューティーも一定の規定範囲に収まる。従って、電源制御部21におけるデューティーにも指令値が存在することと等価と言える。電源制御部21によるフィードバック制御が、上述したように電流検出部23により検出される電流値に基づいて実行されている場合、例えば、給電回路インピーダンスが規定インピーダンスからずれていても、電源回路22から出力される交流電流の電流値は、指令値に応じたものとなる。但し、電源制御部21によるPWM制御のデューティーが規定範囲から外れる可能性が高くなる。そして、PWM制御のデューティーが規定範囲から外れるということは、給電における効率の低下を意味し、非接触給電設備100の効率の低下を意味する。このため、本実施形態の非接触給電設備100では、給電回路インピーダンスが規定インピーダンスとなるように、給電回路インピーダンスが調整される。
【0031】
尚、電源制御部21又はインピーダンス演算部25は、電源制御部21によるPWM制御のデューティーが規定範囲から外れているか否かを判定することが可能である。従って、電源制御部21又はインピーダンス演算部25は、PWM制御のデューティーに基づいて、給電回路インピーダンスが適切に調整されたか否かを判定する確認処理(後述する)を実行することも可能である。
【0032】
電圧検出部24は、給電線11の両端電圧を検出する。この電圧値も、電流値と同様に実効値でも良いし、波高値でもよい。電圧検出部24は、所定のサンプリング周期で電圧(瞬時値)を検出し、インピーダンス演算部25に提供する。尚、実効値の場合は勿論のこと、波高値の場合であっても、複数回のサンプリング値に基づいて電圧値が検出される。波高値の場合には、複数回のピーク値の平均値と、複数回のボトム値の平均値に基づいて波高値が演算されてもよい。複数回のサンプリング結果(瞬時値)に基づく電圧値の演算は、インピーダンス演算部25において実施されても良いし、電圧検出部24において実施されてもよい。
【0033】
第1処理#10において検出される第1電圧値V1は、対象電源装置50Tの電源回路22が交流電流を出力していない状態における対象給電線11Tの電圧値である。一方、第2処理#20において検出される第2電圧値V2は、対象電源装置50Tの電源回路22が交流電流を出力している状態における対象給電線11Tの電圧値である。また、第1処理#10及び第2処理#20に共通して、隣接電源装置50Nが通常給電動作を行っており、隣接給電線11Nに対して交流電流を出力している状態である。第1処理#10と第2処理#20とにおける条件を一致させるため、隣接電源装置50Nにおける通常給電動作は、同じであると好ましい。また、対象給電線11Tに対応する隣接する隣接給電線11Nが複数存在する場合には、全ての隣接給電線11Nが通常給電動作により交流電流を供給されていることが望ましい。しかし、第1処理#10の実行時と第2処理#20の実行時とで条件が揃っていれば、少なくとも1つの隣接電源装置50Nが通常給電動作を行い、隣接給電線11Nに交流電流が供給されていてもよい。
【0034】
インピーダンス演算部25は、第1処理#10及び第2処理#20の実行後、第1電圧値V1と第2電圧値V2との差分である差分電圧V3(=V2-V1)を演算する。第1電圧値V1及び第2電圧値V2は、共に隣接給電線11Nを流れる電流によって誘導された誘導電流が対象給電線11Tを流れることによって生じる電圧を含んでいる。この電圧は、上述したような隣接給電線11Nの動作条件が同じであれば、ほぼ同じ電圧である。従って、差分電圧V3からは誘導電流による電圧が相殺され、対象電源装置50Tの電源回路22が出力する交流電流に基づく電圧のみが残る。この電圧は、給電回路インピーダンスをZt、その抵抗成分及びリアクタンス成分をそれぞれRt及びXt、第2処理#20において電源回路22が出力する電流値をItとして下記式(1)で示される(jは虚数単位)。
【0035】
V3 = Zt・It = (Rt+jXt)It ・・・(1)
【0036】
リアクタンス成分(給電回路リアクタンスXt)は、インダクタンスに由来する誘導性リアクタンスXと、キャパシタンスに由来する容量性リアクタンスXとを含み、電源回路22が出力する交流電流の周波数をfaとして、下記式(2)で示される。式(2)において、給電回路5のインダクタンス(給電回路インダクタンス)をLt、給電回路5のキャパシタンス(給電回路キャパシタンス)をCtと表す。
【0037】
jXt=jX-jX=j2πfaLt+(1/j2πfaCt)・・・(2)
【0038】
ここで、給電回路インピーダンスZtに含まれる抵抗成分Rtは、周波数faには依存せず、一定値である。本実施形態のように、周波数faが高周波数の場合には、周波数faに依存するリアクタンス成分(Xt)が大きくなるため、抵抗成分Rtを無視して考えることができる場合がある。また、抵抗成分Rtは、事前に測定等によって既知の定数とすることができる。つまり、式(1)は、抵抗成分Rtを無視する、或いは抵抗成分Rtによる電圧を差分電圧V3から減算することによって、リアクタンス成分(Xt)と差分電圧V3との等式とすることができる。本実施形態では、説明を容易にするために、上記式(1)における抵抗成分Rtを無視して考える(下記式(3)参照)。
【0039】
V3 = jXt・It = (jX-jX)It ・・・(3)
【0040】
式(3)より、給電回路リアクタンスXtは、下記式(4)で表される。
【0041】
jXt = V3/It ・・・(4)
【0042】
ここで、給電回路5に対して予め規定された規定インピーダンスをZrとする。抵抗成分Rtは上述したように、既知である、或いは無視することができる。そして、上述したように、本実施形態では、調整処理#30において、キャパシタアレイ30(調整部)により回路特性(給電回路インピーダンスZt)が調整される。つまり、キャパシタアレイ30による容量性リアクタンスXによって給電回路インピーダンスZtが調整される(下記式(5)参照)。下記式(5)では、この容量性リアクタンスXを調整リアクタンスXCA、キャパシタアレイ30のキャパシタンスをCAで示す。
【0043】
Zr=Rt+jXt-jXCA=Rt+jXt-j(1/(2πfa・CA))
=Rt+j(Xt-(1/(2πfa・CA))) ・・・(5)
【0044】
式(5)を満足するように、キャパシタアレイ30のキャパシタンス(給電回路キャパシタンスCA)を設定することによって、給電回路インピーダンスZtが規定インピーダンスZrとなるように調整することができる。
【0045】
尚、差分電圧V3に基づいて求められる給電回路リアクタンスXtにおいて、誘導性リアクタンスXの方が支配的な場合、容量性リアクタンスXを無視し、給電回路5のインダクタンス(給電回路インダクタンス)をLtとして、式(3)、式(4)、式(5)を下記の式(6)、式(7)、式(8)のように表すことができる。
【0046】
V3 = jLt・It ・・・(6)
jLt = V3/(2πfa・It) ・・・(7)
Zr=Rt+j2πfa・Lt-j(1/2πfa・CA)
=Rt+j(2πfa・Lt-(1/2πfa・CA))・・・(8)
【0047】
上述したように、調整システムコントローラ80は、マイクロコンピュータなど、プログラムを実行可能なプロセッサを中核として構成されている。また、電源装置50を構成する電源制御部21、インピーダンス演算部25、キャパシタンス調整部26等も、マイクロコンピュータなどのプロセッサを中核として構成されている。従って、上述した第1処理#10、第2処理#20、調整処理#30は、不図示のメモリなどの周辺素子と協働し、プロセッサ(コンピュータ)によって実行されるプログラムによって実現されていると好適である。
【0048】
例えば、そのようなプロセッサ(コンピュータ)は、受電装置4を備えた物品搬送車3(移動体)の移動経路1に沿って並ぶように配置された複数の給電線11と、複数の給電線11のそれぞれに接続され、給電線11に交流電流を供給する電源装置50とを備え、受電装置4に非接触で電力を供給する非接触給電設備100において、給電線11及び電源装置50を含む給電回路5のインピーダンスである給電回路インピーダンスZtを調整する機能をコンピュータに実現させるプログラム(非接触給電設備のインピーダンス調整プログラム)を実行する。当該プロセッサ(コンピュータ)は、当該プログラムの実行により、第1機能(第1処理#10)と、第2機能(第2処理#20)と、調整機能(調整処理#30)とを実現させる。
【0049】
第1機能(第1処理#10)は、少なくとも1つの隣接電源装置50Nに通常給電動作を行わせた状態、且つ、対象電源装置50Tの電源回路22が交流電流を出力しない状態で対象給電線11Tの電圧である第1電圧値V1を測定する機能(処理)である。例えば、図6に示すように、まず、対象電源装置50Tの電源制御部21により電源回路22がオフ状態に制御され、対象電源装置50Tの電源回路22が交流電流を出力しない状態とされる(#1)。次に、この状態でインピーダンス演算部25により第1電圧値V1が取得される(#2)。第1電圧値V1は、プロセッサ(コンピュータ)と協働するメモリやレジスタ等に一時記憶される。
【0050】
第2機能(第2処理#20)は、少なくとも1つの隣接電源装置50Nに通常給電動作を行わせた状態、且つ、対象電源装置50Tの電源回路22が交流電流を出力している状態で対象給電線11Tの電圧である第2電圧値V2を測定する機能(処理)である。例えば、対象電源装置50Tの電源制御部21は、測定電流として上述したような微少電流を流すように、電源回路22を制御する(#3)。そして、この状態でインピーダンス演算部25により第2電圧値V2が取得される(#4)。第2電圧値V2も、プロセッサ(コンピュータ)と協働するメモリやレジスタ等に一時記憶される。
【0051】
第1機能(第1処理#10)及び第2機能(第2処理#20)は、この順に実行されても良いし、逆の順で実行されてもよい。第1機能(第1処理#10)及び第2機能(第2処理#20)の双方の実行が完了すると、第1電圧値V1と第2電圧値V2との差分である差分電圧V3に基づいて対象電源装置50Tの給電回路5のリアクタンス(インダクタンス)である給電回路リアクタンスXt(給電回路インダクタンスLt)を求め、当該給電回路リアクタンスXt(給電回路インダクタンスLt)に応じて、対象電源装置50Tの給電回路5の給電回路インピーダンスZtが予め定められた規定インピーダンスZrとなるように、キャパシタアレイ30(調整部)により回路特性を調整する調整機能(調整処理#30)が、下記のように実行される。
【0052】
上述したように、インピーダンス演算部25において、第1電圧値V1及び第2電圧値V2に基づいて差分電圧V3が演算され、差分電圧V3に基づいて給電回路リアクタンスXt(給電回路インダクタンスLt)が演算される(#5)。そして、給電回路リアクタンスXt(給電回路インダクタンスLt)に基づいて、調整値として給電回路キャパシタンスCAが演算される(#6)。給電回路キャパシタンスCAの値は、インピーダンス演算部25からキャパシタンス調整部26に伝達され、キャパシタンス調整部26はキャパシタアレイ30のキャパシタンスを給電回路キャパシタンスCAに設定する(#7)。
【0053】
キャパシタアレイ30は、例えば、図5に示すように、それぞれ複数のキャパシタCが並列接続された第1並列アレイCA1、第2並列アレイCA2、第3並列アレイCA3、第4並列アレイCA4、第5並列アレイCA5、第6並列アレイCA6が、直接接続されて構成されている。そして、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、第4スイッチSW4、第5スイッチSW5、第6スイッチSW6の何れか1つが排他的にオン状態となることによって、6つの並列アレイから1つ又は複数の並列アレイが選択される。例えば、第1スイッチSW1がオン状態となると、第1並列アレイCA1を構成するキャパシタCにより給電回路キャパシタンスCAが設定される。第2スイッチSW2がオン状態となると、第1並列アレイCA1と第2並列アレイCA2との直列回路を構成するキャパシタにより給電回路キャパシタンスCAが設定される。以下、第3スイッチSW3がオン状態となる場合から、第6スイッチSW6がオン状態となる場合については、これらと同様であり、図5より自明であるから詳細な説明は省略する。
【0054】
キャパシタンス調整部26は、これら第1スイッチSW1から第6スイッチSW6をそれぞれ独立して制御可能な制御信号S(S1~S6)により、キャパシタアレイ30を制御して給電回路キャパシタンスCAを設定する。制御信号S(S1~S6)は、何れか1つが排他的に有効状態(スイッチSWをオン状態とする状態)となる。尚、第1スイッチSW1~第6スイッチSW6のそれぞれスイッチSWは、図5に例示するように、スイッチング素子SD(トランジスタやFET(Field Effect Transistor))やアナログスイッチにより構成されている。
【0055】
ところで、電源装置50は、当該電源装置50が接続された給電線11に予め規定された規定値の電流が流れるように電源制御部21により電源回路22の出力電圧が制御されている(上述したようにフィードバック制御されている。)。調整システム70は、調整処理#30の実行後、給電線11の電圧と給電線11に流れる電流とに基づいて給電線11に供給している電力である供給電力を取得する。そして、調整システム70は、当該供給電力に対して電源回路22の出力電圧が適正範囲内であるか否かを判断する確認処理#40を実行する(図6参照)。例えば、給電回路インピーダンスZtが適正に調整されていない場合、給電効率が低下し、損失が増加して供給電力が増加する場合がある。電流が指令値に基づいてフィードバック制御されている場合、損失に対応して電流の出力を維持するために電圧が上昇し、供給電力が増加する。従って、供給電力に対して電源回路22の出力電圧が適正範囲内であるか否かを判断することによって給電回路インピーダンスZtが適正に調整されているか否かを判定することができる。
【0056】
上述したように、本実施形態では、電源制御部21がPWM制御により電源回路22を制御している。電源回路22が電圧型インバータを備えている場合、PWM制御におけるデューティーにより電源回路22の出力電圧が変化する。従って、デューティーが適正範囲内であるか否かによって、確認処理#40における判定を行うことができる。例えば、電源制御部21又はインピーダンス演算部25は、電源制御部21によるPWM制御のデューティーが規定範囲から外れているか否かを判定することが可能である。従って、電源制御部21又はインピーダンス演算部25は、PWM制御のデューティーに基づいて、給電回路インピーダンスが適切に調整されたか否かを判定することができる。当然ながら、電流検出部23において検出される電流値と、電圧検出部24により検出される電圧値とに基づいて、供給電力が演算され、当該供給電力に対して当該電圧値が適正範囲内であるか否かを判断してもよい。
【0057】
調整システム70は、上記のような確認処理#40により、電源回路22の出力電圧が適正範囲内でないと判定した場合には、当該対象給電線11Tを対象とした、第1処理#10、第2処理#20、及び、調整処理#30を再度実行する。
【0058】
尚、上述したように、非接触給電設備100には、給電回路5が複数設けられている。従って、1つの給電回路5(対象給電回路5T)に対する確認処理#40の結果により、当該給電回路5(対象給電回路5T)のインピーダンスの再調整を行うと、未調整の給電回路5(隣接給電回路5Nを含むその他の給電回路5)の調整が後回しとなり、全ての給電回路5の調整が完了するまでの時間が増大する。そこで、調整システム70は、全ての給電線11及び電源装置50の組(給電回路5)についての第1処理#10、第2処理#20及び調整処理#30が完了した後、それぞれの給電線11及び電源装置50の組についての確認処理#40を実行するようにしてもよい。
【0059】
また、調整システム70は、それぞれの給電線11及び電源装置50の組についての第1処理#10、第2処理#20及び調整処理#30が完了した後、続けて当該給電線11及び電源装置50の組についての確認処理#40を実行し、その結果を記憶しておいてもよい。そして、全ての給電線11及び電源装置50の組についての第1処理#10、第2処理#20、調整処理#30及び確認処理#40が完了した後、確認処理#40の結果が不合格であった給電線11及び電源装置50の組について、順次、再調整を行ってもよい。
【0060】
このようにして再調整を実施しても、確認処理#40における判定が不合格となる給電線11及び電源装置50の組が存在する場合がある。このような組では、第1電圧値V1及び第2電圧値V2の検出精度が低い可能性がある。調整システム70は、調整処理#30を予め規定された規定回数行っても確認処理#40で適正範囲内とならない場合、第1処理#10により第1電圧値V1を測定する期間である第1サンプリング期間と、第2処理#20により第2電圧値V2を測定する期間である第2サンプリング期間との少なくとも一方を長くするように変更してもよい。サンプリング期間を長くすることによって、ノイズ成分などの影響を低下させることができる。
【0061】
尚、このような組では、サンプリング期間を長くしても、確認処理#40で適正範囲内とならない可能性がある。この場合、給電線11や電源装置50の老朽化等の可能性も考えられる。従って、調整処理#30を予め規定された規定回数行っても確認処理#40で適正範囲内とならない場合に、サンプリング期間を長くしなくてもよい。この場合、そのような給電線11及び電源装置50の組については、作業員による点検や修理が実施されることが好ましい。
【0062】
〔その他の実施形態〕
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0063】
(1)上記においては、給電回路リアクタンスXtを求めた後、キャパシタアレイ30による容量性リアクタンスXによって給電回路インピーダンスZtが調整される形態を例示して説明した。しかし、給電回路インピーダンスZtは、誘導性リアクタンスXによって調整されてもよい。この場合には、キャパシタアレイ30に代わり、インダクタアレイ(不図示)によってインダクタンスが設定されると好適である。また、給電回路インピーダンスZtは、容量性リアクタンスX及び誘導性リアクタンスXの双方によって、調整されてもよい。
【0064】
(2)上記においては、給電回路インピーダンスZtが調整された後、確認処理#40が実行される形態を例示したが、確認処理#40は実施されて無くてもよい。例えば、給電回路インピーダンスZtが周期的に実施されるような場合には、調整処理#40により不合格となる組についても、早期に再調整が実施される。特に、全ての給電線11と電源装置50との組の調整が完了した後(調整が一巡した後)、直ちに、最初の組からの調整を開始するなど、常時、調整が実施されるように運用される場合には、確認処理#40が実行されなくてもよい。
【0065】
(3)上記においては、複数の電源装置50のそれぞれが、調整指令受付部29により調整指令を受け付けた場合に、第1処理#10、第2処理#20、及び調整処理#30を実行する形態を例示して説明した。しかし、電源装置50は、調整指令受付部29を備えていなくてもよい。例えば、複数の電源装置50のそれぞれが、自律して対象電源装置50Tとなって調整が可能であり、その場合には隣接電源装置50Nと通信等によって協調して調整が行われるような形態であってもよい。
【0066】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した非接触給電設備、非接触給電設備のインピーダンス調整方法、及び非接触給電設備のインピーダンス調整プログラムの概要について簡単に説明する。
【0067】
1つの態様として、非接触給電設備は、受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備であって、複数の前記電源装置のそれぞれは、前記給電線に前記交流電流を出力する電源回路と、前記電源回路を制御する電源制御部と、前記給電線及び前記電源装置を含む給電回路のインダクタンス及びキャパシタンスの少なくとも一方である回路特性を調整する調整部と、を備え、複数の前記電源装置に係る前記調整部の調整を行う調整システムを更に備え、複数の前記電源装置のうち、調整対象とする1つの前記電源装置を対象電源装置とし、前記対象電源装置に接続された前記給電線を対象給電線とし、前記対象給電線に隣接して配置された他の前記給電線を隣接給電線とし、前記隣接給電線に接続された前記電源装置を隣接電源装置とし、前記移動体に電力を供給する場合の前記電源装置の動作を通常給電動作として、前記調整システムは、少なくとも1つの前記隣接電源装置に前記通常給電動作を行わせた状態で、前記対象電源装置に第1処理と第2処理とを実行させ、前記第1処理は、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力しない状態で前記対象給電線の電圧である第1電圧値を測定する処理であり、前記第2処理は、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力している状態で前記対象給電線の電圧である第2電圧値を測定する処理であり、前記調整システムは、前記第1処理及び前記第2処理の実行後、前記第1電圧値と前記第2電圧値との差分に基づいて前記対象電源装置の前記給電回路のリアクタンスである給電回路リアクタンスを求め、当該給電回路リアクタンスに応じて、前記対象電源装置の前記給電回路のインピーダンスである給電回路インピーダンスが予め定められた規定インピーダンスとなるように、前記調整部により前記回路特性を調整する調整処理を実行する。
【0068】
この構成によれば、複数の給電線が移動体の移動経路に沿って並ぶように配置されている場合において、各給電線に隣接する給電線による影響を考慮して、各給電線及びそれに接続された電源装置により構成された給電回路の電気的特性を適切に調整することができる。また、調整システムによる制御によって、調整部により自動的に回路特性の調整を行うことができる。このため、非接触給電設備の設置時のみならず、非接触給電設備の運用開始後における電源回路の調整作業の工数低減を図ることができる。このように、本構成によれば、複数の系統の給電回路を備えた非接触給電設備において、他の給電回路による影響を低減して給電回路インピーダンスを適切に調整することができる。
【0069】
ここで、前記電源装置は、当該電源装置が接続された前記給電線に予め規定された規定値の電流が流れるように前記電源制御部により前記電源回路の出力電圧が制御され、
前記調整システムは、前記調整処理の実行後、前記給電線の電圧と前記給電線に流れる電流とに基づいて前記給電線に供給している電力である供給電力を取得し、当該供給電力に対して前記電源回路の出力電圧が適正範囲内であるか否かを判断する確認処理を実行し、前記確認処理により前記適正範囲内でないと判定した場合には、前記第1処理、前記第2処理、及び、前記調整処理を再度実行すると好適である。
【0070】
この構成によれば、調整システムは、給電回路の回路特性を適切に調整できているか否かを確認することができる。また、調整システムは、給電回路インピーダンスが適切に調整できていなかった場合には、適切に再調整することができる。
【0071】
また、前記調整システムは、全ての前記給電線及び前記電源装置の組についての前記第1処理、前記第2処理及び前記調整処理が完了した後、それぞれの前記給電線及び前記電源装置の組についての前記確認処理を実行すると好適である。
【0072】
対象電源装置の調整処理を実行した後、当該対象電源装置の隣接電源装置を対象として第1処理、第2処理、及び調整処理を実行した場合、当該隣接電源装置の回路特性の調整が、先に調整処理を実行した対象電源装置の回路特性に影響する場合がある。本構成によれば、全ての給電線及び電源装置の組についての調整処理が完了した後、それぞれの給電線及び電源装置の組についての確認処理を実行するため、各電源装置の調整処理の結果を反映して適切に確認処理を実行することができる。そして、確認処理の結果に基づき、必要に応じて再調整を行うことができる。
【0073】
前記調整システムは、前記調整処理を予め規定された規定回数行っても前記確認処理で適正範囲内とならない場合、前記第1処理により前記第1電圧値を測定する期間である第1サンプリング期間と、前記第2処理により前記第2電圧値を測定する期間である第2サンプリング期間と、の少なくとも一方を長くするように変更すると好適である。
【0074】
非接触給電設備の設置環境(隣接電源装置の台数や対象電源装置及び隣接電源装置に接続された給電線の長さや負荷電力状態)により、複数回測定しても確認処理における判定結果が不合格となる場合がある。このような場合に、サンプリング期間を長くすることで、第1電圧値や第2電圧値の検出精度が高くなり、調整が成功する確率を向上させることができる。
【0075】
また、複数の前記電源装置のそれぞれは、当該電源装置における前記給電回路インピーダンスの調整指令を受け付ける調整指令受付部を備え、前記調整システムは、前記調整指令受付部により前記調整指令を受け付けた場合には、当該調整指令を受け付けた前記調整指令受付部を備える前記電源装置を前記対象電源装置として、前記第1処理、前記第2処理、及び、前記調整処理を実行すると好適である。
【0076】
この構成によれば、全ての電源装置を順次調整するだけではなく、複数の電源装置の内の一部について個別に調整を行うことができる。
【0077】
上述した非接触給電設備の種々の技術的特徴は、非接触給電設備のインピーダンス調整方法や非接触給電設備のインピーダンス調整プログラムにも適用可能である。以下にその代表的な態様を例示する。例えば、当該調整方法は、上述した非接触給電設備の特徴を備えた各種の処理を有することができる。また、当該調整プログラムは、上述した非接触給電設備の特徴を備えた各種の機能をコンピュータに実現させることが可能である。当然ながらこれらの調整方法及び調整プログラムも、上述した非接触給電設備の作用効果を奏することができる。さらに、非接触給電設備の好適な態様として、上記において例示した種々の付加的特徴も、これら調整方法や調整プログラムに組み込むことが可能であり、当該調整方法及び当該調整プログラムはそれぞれの付加的特徴に対応する作用効果も奏することができる。
【0078】
1つの好適な態様として、非接触給電設備のインピーダンス調整方法は、受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備において、前記給電線及び前記電源装置を含む給電回路のインピーダンスである給電回路インピーダンスを調整する、非接触給電設備のインピーダンス調整方法であって、複数の前記電源装置のそれぞれは、前記給電線に前記交流電流を出力する電源回路と、前記電源回路を制御する電源制御部と、前記給電回路のインダクタンス及びキャパシタンスの少なくとも一方である回路特性を調整する調整部と、を備え、複数の前記電源装置のうち、調整対象とする1つの前記電源装置を対象電源装置とし、前記対象電源装置に接続された前記給電線を対象給電線とし、前記対象給電線に隣接して配置された他の前記給電線を隣接給電線とし、前記隣接給電線に接続された前記電源装置を隣接電源装置とし、前記移動体に電力を供給する場合の前記電源装置の動作を通常給電動作として、少なくとも1つの前記隣接電源装置に前記通常給電動作を行わせた状態、且つ、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力しない状態で前記対象給電線の電圧である第1電圧値を測定する第1処理と、少なくとも1つの前記隣接電源装置に前記通常給電動作を行わせた状態、且つ、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力している状態で前記対象給電線の電圧である第2電圧値を測定する第2処理と、前記第1処理及び前記第2処理の実行後、前記第1電圧値と前記第2電圧値との差分に基づいて前記対象電源装置の前記給電回路のリアクタンスである給電回路リアクタンスを求め、当該給電回路リアクタンスに応じて、前記対象電源装置の前記給電回路の前記給電回路インピーダンスが予め定められた規定インピーダンスとなるように、前記調整部により前記回路特性を調整する調整処理と、を備える。
【0079】
また、1つの好適な態様として、非接触給電設備のインピーダンス調整プログラムは、受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備において、前記給電線及び前記電源装置を含む給電回路のインピーダンスである給電回路インピーダンスを調整する機能をコンピュータに実現させる、非接触給電設備のインピーダンス調整プログラムであって、複数の前記電源装置のそれぞれは、記給電線に前記交流電流を出力する電源回路と、前記電源回路を制御する電源制御部と、前記給電線及び前記電源装置を含む前記給電回路のインダクタンス及びキャパシタンスの少なくとも一方である回路特性を調整する調整部と、を備え、複数の前記電源装置のうち、調整対象とする1つの前記電源装置を対象電源装置とし、前記対象電源装置に接続された前記給電線を対象給電線とし、前記対象給電線に隣接して配置された他の前記給電線を隣接給電線とし、前記隣接給電線に接続された前記電源装置を隣接電源装置とし、前記移動体に電力を供給する場合の前記電源装置の動作を通常給電動作として、少なくとも1つの前記隣接電源装置に前記通常給電動作を行わせた状態、且つ、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力しない状態で前記対象給電線の電圧である第1電圧値を測定する第1機能と、少なくとも1つの前記隣接電源装置に前記通常給電動作を行わせた状態、且つ、前記対象電源装置の前記電源回路が前記交流電流を出力している状態で前記対象給電線の電圧である第2電圧値を測定する第2機能と、前記第1機能及び前記第2機能を実現させた後、前記第1電圧値と前記第2電圧値との差分に基づいて前記対象電源装置の前記給電回路のリアクタンスである給電回路リアクタンスを求め、当該給電回路リアクタンスに応じて、前記対象電源装置の前記給電回路の前記給電回路インピーダンスが予め定められた規定インピーダンスとなるように、前記調整部により前記回路特性を調整する調整機能と、をコンピュータに実現させる。
【符号の説明】
【0080】
1 :移動経路
3 :物品搬送車(移動体)
4 :受電装置
5 :給電回路
11 :給電線
11N :隣接給電線
11T :対象給電線
21 :電源制御部
22 :電源回路
29 :調整指令受付部
30 :キャパシタアレイ(調整部)
50 :電源装置
50N :隣接電源装置
50T :対象電源装置
70 :調整システム
100 :非接触給電設備
V1 :第1電圧値
V2 :第2電圧値
V3 :差分電圧(第1電圧値と第2電圧値との差分)
Xt :給電回路リアクタンス
Zr :規定インピーダンス
Zt :給電回路インピーダンス
#10 :第1処理
#20 :第2処理
#30 :調整処理
#40 :確認処理
図1
図2
図3
図4
図5
図6