(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】物品搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 49/07 20060101AFI20240514BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20240514BHJP
B61B 3/02 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B65G49/07 F
B61B13/00 U
B61B3/02 B
(21)【出願番号】P 2021182136
(22)【出願日】2021-11-08
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】安部 健史
(72)【発明者】
【氏名】岸 遼司
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/172155(WO,A1)
【文献】特開2015-93345(JP,A)
【文献】特開2018-49943(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0086237(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 49/07
B61B 1/00-15/00
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する物品搬送装置であって、
前記物品の搬送のために移動する移動体と、
前記移動体に支持され、搬送中の前記物品が収容される収容領域の側周囲の少なくとも一部を覆うカバー部と、
前記物品の保持と、移載対象箇所との間での前記物品の移載とを行う移載機構と、
前記移動体及び前記移載機構を制御する制御部と、を備え、
前記移載機構は、前記移動体に支持され、前記物品を保持する保持状態と前記物品の保持を解除する解除状態とに状態変更可能である保持部と、前記保持部を上下方向に沿う旋回軸心回りに旋回させる旋回部と、前記保持部を前記収容領域の中の内部位置と前記収容領域の外の外部位置との間で移動させる移動部とを備え、
前記カバー部は、前記収容領域に面する内面構造を備え、
前記移載機構は、前記旋回部による前記保持部の旋回角度が規定の非干渉角度範囲内である場合には、前記移動部により前記保持部を移動させても前記内面構造と干渉せず、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲外の角度である場合には、前記移動部による前記保持部の移動経路によっては前記内面構造と干渉する場合があり、
前記制御部は、作業者により操作される操作端末からの指令に従って前記移載機構を動作させる保守モードが実行可能であり、
前記制御部は、前記保守モードにおいて、前記操作端末から前記移載機構の動作指令を受け付けた場合に、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲内であるか否かを判定し、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲内である場合は、前記動作指令に従って前記移載機構の動作を実行し、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲外の角度である場合又は前記旋回角度が不明である場合は、前記操作端末にエラー情報を発報させる、物品搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記保守モードにおいて、前記操作端末から前記移載機構の動作指令を受け付けた場合に注意喚起情報を報知させ、前記注意喚起情報の報知を行った後、再度、前記移載機構の動作指令を受け付けた場合であって、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲内である場合に、当該動作指令に従って前記移載機構の動作を実行する、請求項1に記載の物品搬送装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記保守モードにおいて、前記操作端末から前記移載機構の動作指令を受け付けた場合であって、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲外の角度であった場合に、前記エラー情報の発報を行った後、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲内となるように前記旋回部により前記保持部を旋回させ、前記動作指令に従って前記移載機構の動作を実行する、請求項1に記載の物品搬送装置。
【請求項4】
前記動作指令は、前記移動部及び前記旋回部の姿勢を規定の基準姿勢とするための基準姿勢復帰動作の指令である、請求項1から3のいずれか一項に記載の物品搬送装置。
【請求項5】
前記移動部は、前記保持部を昇降移動させる昇降部と、前記保持部を水平方向に沿ってスライド移動させるスライド部とを含み、
前記制御部は、前記基準姿勢復帰動作の指令を受け付けた場合、まず前記昇降部を基準姿勢とし、次に前記スライド部を基準姿勢とし、その後前記旋回部を基準姿勢とする、請求項4に記載の物品搬送装置。
【請求項6】
前記内面構造は、前記物品の下方への落下を規制するための落下規制部を含み、
前記落下規制部は、前記収容領域に収容された前記物品よりも下側において、前記カバー部の内壁面から前記収容領域側へ突出するように配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の物品搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送する物品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、搬送システムについて開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における名称及び符号を括弧内に引用する。
【0003】
この搬送システム(SYS)は、移動体(走行部11)とカバー部(本体部12)と移載機構(移載部13)と制御部(14)とを備える物品搬送装置(天井搬送車10)を有している。移動体(走行部11)は軌道に沿って走行し、カバー部(本体部12)は移動体(走行部11)に取り付けられ、物品(M)を収容可能に構成されている。移載機構(移載部13)は、物品(M)を保持する保持部(15)と、保持部(15)を回転軸(AX)の軸周りに回転させる旋回部(回転機構19)と、保持部(15)及び旋回部(回転機構19)をカバー部(本体部12)に対して移動させる移動部(移動機構16)とを有し、制御部(14)は移動体(走行部11)及び移載機構(移載部13)の各部の動作を制御する。物品搬送装置(天井搬送車10)は、保持部(15)により保持された物品(M)がカバー部(本体部12)から抜け出す脱出位置にあるときに旋回部(回転機構19)による回転が許容され、物品(M)がカバー部(本体部12)の内壁(23a)に接触することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/035286号(〔0012〕段落、〔0021〕段落、〔0022〕段落、〔0024〕段落、〔0038〕段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、物品搬送装置の保守点検を行う場合や物品搬送装置の故障が生じた場合等に、作業者が操作する操作端末からの動作指令によって物品搬送装置を動作させる場合がある。このような場合において、例えば保持部が、カバー部で覆われた収容領域に収容されている状態において、移載機構を所定の姿勢に移行させる動作指令に応じて動作させると、当該動作指令があった時点の保持部の旋回角度によっては、移載機構がカバー部の内壁に干渉(接触)する可能性がある。
【0006】
そこで、上述した収容領域に面するカバー部における内面構造への移載機構の干渉を回避することが可能な物品搬送装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、物品搬送装置の特徴構成は、
物品を搬送する物品搬送装置であって、
前記物品の搬送のために移動する移動体と、
前記移動体に支持され、搬送中の前記物品が収容される収容領域の側周囲の少なくとも一部を覆うカバー部と、
前記物品の保持と、移載対象箇所との間での前記物品の移載とを行う移載機構と、
前記移動体及び前記移載機構を制御する制御部と、を備え、
前記移載機構は、前記移動体に支持され、前記物品を保持する保持状態と前記物品の保持を解除する解除状態とに状態変更可能である保持部と、前記保持部を上下方向に沿う旋回軸心回りに旋回させる旋回部と、前記保持部を前記収容領域の中の内部位置と前記収容領域の外の外部位置との間で移動させる移動部とを備え、
前記カバー部は、前記収容領域に面する内面構造を備え、
前記移載機構は、前記旋回部による前記保持部の旋回角度が規定の非干渉角度範囲内である場合には、前記移動部により前記保持部を移動させても前記内面構造と干渉せず、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲外の角度である場合には、前記移動部による前記保持部の移動経路によっては前記内面構造と干渉する場合があり、
前記制御部は、作業者により操作される操作端末からの指令に従って前記移載機構を動作させる保守モードが実行可能であり、
前記制御部は、前記保守モードにおいて、前記操作端末から前記移載機構の動作指令を受け付けた場合に、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲内であるか否かを判定し、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲内である場合は、前記動作指令に従って前記移載機構の動作を実行し、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲外の角度である場合又は前記旋回角度が不明である場合は、前記操作端末にエラー情報を発報させる点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、保守モードにおいて作業者が誤った移載機構の動作指令を出した場合であっても、移載機構を動作させた場合に当該移載機構がカバー部の内面構造に干渉する可能性がある場合には、操作端末にエラー情報を発報させることができる。従って、作業者が誤った移載機構の動作指令を出した場合であっても、作業者に確認の機会を与えることができるので、カバー部の内面構造に移載機構が干渉することを回避できる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】制御部による移載機構の制御に係る制御ブロック図
【
図7】制御部による移載機構の制御の手順を示すフローチャート
【
図8】制御部による移載機構の制御の手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.物品搬送装置の実施形態
物品搬送装置の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、物品搬送装置1は、例えば工場やプラント内の複数の搬送対象場所90の間に設けられる、移動経路Rに沿って移動して物品Wを搬送するように構成され、物品Wを搬送する際に当該物品Wの姿勢を変更することができるようになっている。
【0012】
以下では、物品搬送装置1が移動経路Rに沿って走行する方向を「進行方向X」とし、平面視で進行方向Xに直交する方向を「幅方向Y」として説明する。また、進行方向X及び幅方向Yの双方に直交する方向を「鉛直方向Z」として説明する。ここで、進行方向Xにおける前方側を「前側X1」とし、後方側を「後側X2」として説明する。また、進行方向Xの前側X1を向いた状態を基準として左右を定義するものとし、具体的には、進行方向Xの前側X1に向かって、幅方向Yにおける左側を「左側Y1」とし、右側を「右側Y2」として説明する。
【0013】
物品Wは、物品搬送装置1によって搬送される搬送対象物にあたる。本実施形態では、物品Wは、半導体基板が収納される容器であって、直方体状に形成されており、複数枚の半導体基板を複数段に分けて収納可能に構成されている。物品Wの上面及び底面は、塞がった状態であり、特に上面には物品Wの搬送時に物品搬送装置1により把持されるフランジ部W1(
図2参照)が設けられる。また、物品Wの4つの側面のうちの一面には、半導体基板を出し入れするための開口部が設けられる。物品Wの残りの3つの側面は塞がった状態とされている。
【0014】
搬送対象場所90は、物品Wの搬送元や、物品Wの搬送先となる場所である。
図1に示すように、搬送対象場所90は、移動経路Rに沿って複数箇所に設けられている。搬送対象場所90では、例えば物品Wの処理が行われる。搬送対象場所90は、半導体基板に対する処理を行う処理装置90aと、物品搬送装置1と物品Wを授受するための授受部90bとが含まれる。授受部90bは、いわゆるロードポートである。授受部90bで受け取った物品Wに収納された半導体基板が、処理装置90aが備える取出装置等によって取り出されると、処理装置90aにおいて、例えば基板洗浄や、ベーキングや、レジストの塗布や剥離等の処理が行われる。
【0015】
移動経路Rとは、物品搬送装置1が移動する経路である。本実施形態では、移動経路Rは物品搬送装置1が利用される建屋の天井から吊り下げ支持されたレール99(
図2参照)により規定される。したがって、本実施形態では、物品搬送装置1は、所謂天井搬送車として構成される。
【0016】
図2は、物品搬送装置1が物品Wを搬送する状態の側面図である。
図2に示されるように、物品搬送装置1は、移動体2、カバー部3、移載機構4、制御部5を備えている。移動体2は、物品Wの搬送のために移動する。本実施形態では、移動体2は、レール99の上側に位置しており、車輪2Aを駆動する走行用モータ2Mを有する。この走行用モータ2Mによって車輪2Aが回転駆動することで、進行方向Xに対する推進力が移動体2に付与される。物品Wの搬送のための移動とは、物品Wの搬送元から物品Wの搬送先までの移動経路Rに沿っての走行を意味する。したがって、移動体2は、物品Wの搬送元から物品Wの搬送先までの移動経路Rに沿って走行する。
【0017】
カバー部3は、移動体2に支持され、搬送中の物品Wが収容される収容領域Sの側周囲の少なくとも一部を覆う。「移動体2に支持され、」とは、移動体2に連結固定され、移動体2の移動に合わせてカバー部3が一体的に移動することを意味する。本実施形態では、カバー部3は、レール99よりも下側に位置する状態で、移動体2に吊り下げ支持されている。搬送中の物品Wが収容される収容領域Sとは、移動経路Rに沿って物品Wの搬送元から物品Wの搬送先までの搬送中において物品Wが配置される物品搬送装置1の領域であって、カバー部3により覆われた領域をいう。このような物品Wが配置される領域は、カバー部3により側方から覆われることから、収容領域Sと称せられる。カバー部3による収容領域Sの覆い(カバー)は、物品Wの側方の全て(全周囲)であっても良いし、全側方のうちの一部であっても良い。
【0018】
本実施形態では、カバー部3は、物品Wを側方(水平方向)から覆う一対の側方カバー部3Bと、物品Wを上方から覆う上方カバー部3Cとを備えて構成される。
図2の例では、一対の側方カバー部3Bの夫々と上方カバー部3Cとが互いに連結され、カバー部3が構成されている。また、上方カバー部3Cにおける、移動経路Rに沿う方向(進行方向X)の両端部の夫々から、側方カバー部3Bが下方に延在している。これにより、一対の側方カバー部3Bの夫々が、保持部10に保持された物品Wを進行方向Xの両側から覆っている。また、カバー部3は、幅方向Yの両側及び下方が開放された形状で構成され、幅方向Yの外側から見た場合に角ばった逆U字状に形成されている。このため、収容領域Sは、幅方向Yの両側及び下側において、カバー部3の外側と連通した状態とされている。
【0019】
移載機構4は、物品Wの保持と、移載対象箇所との間での物品Wの移載とを行う。物品Wの保持とは、移動体2が移動経路Rに沿って移動する際に、物品Wが落下しないように保持することを意味する。例えば、このような保持としては、物品Wに設けられたフランジ部W1を把持するように行うと好適である。移載対象箇所とは、上述した物品Wの搬送元や物品Wの搬送先、すなわち搬送対象場所90が相当する。物品Wの移載とは、物品Wの授受にあたる。したがって、移載機構4は、移動体2が移動経路Rに沿って移動する際に、物品Wが落下しないように、物品Wに設けられたフランジ部W1を上方から把持し、物品Wの搬送元や物品Wの搬送先である搬送対象場所90との間で物品Wの授受を行う。
【0020】
本実施形態では、移載機構4は、保持部10と、旋回部20と、移動部30とを備える。保持部10は、移動体2に支持され、物品Wを保持する保持状態と物品Wの保持を解除する解除状態とに状態変更可能である。「移動体2に支持され、」とは、カバー部3と同様に、移動体2に連結され、移動体2の移動に応じて保持部10が移動することを意味する。物品Wを保持する保持状態とは、上述した物品Wに設けられたフランジ部W1を把持している状態をいう。物品Wの保持を解除する解除状態とは、物品Wに設けられたフランジ部W1を把持していない状態をいう。本実施形態では、保持部10は、把持用モータ10Mと、一対の把持爪10Cとを有している。一対の把持爪10Cは、把持用モータ10Mにより駆動されて把持姿勢と解除姿勢との間で姿勢変更可能である。一対の把持爪10Cは、互いに接近する方向に移動することで把持姿勢となり、互いに離間する方向に移動することで解除姿勢となる。一対の把持爪10Cが把持姿勢にて物品Wのフランジ部W1を把持することで、保持部10が物品Wを保持する保持状態となり、一対の把持爪10Cがフランジ部W1を把持した状態から解除姿勢となることで、保持部10が物品Wの保持を解除する解除状態となる。保持部10は、フランジ部W1を把持することから、チャックに相当する。
【0021】
旋回部20は、保持部10を上下方向に沿う旋回軸心回りに旋回させる。本実施形態では、旋回部20は、鉛直方向Zに沿う旋回軸4b周りに物品Wを旋回させて当該物品Wの姿勢を変更するように構成されている。本実施形態では、旋回部20は、鉛直方向Zに沿う旋回軸4bと、当該旋回軸4bを駆動する旋回用モータ20Mとが設けられている。旋回軸4bは、保持部10と連結されており、旋回用モータ20Mに駆動されて保持部10と共に旋回する。これにより、保持部10及び当該保持部10に把持された状態の物品Wを、鉛直方向Zに沿う旋回軸4b周りに旋回させることが可能となる。
【0022】
移動部30は、保持部10を収容領域Sの中の内部位置と収容領域Sの外の外部位置との間で移動させる。上述したように、本実施形態では、収容領域Sは、幅方向Yの両側及び下方が開放された状態でカバー部3により覆われている。この収容領域S内の位置(すなわち、収容領域Sに含まれる位置)が内部位置にあたる。したがって、
図2において実線で示した物品Wは内部位置において支持されている状態となる。一方、収容領域S外の位置(すなわち、収容領域Sに含まれない位置)が外部位置にあたる。
図2において破線で示されるように、物品Wが授受部90bに載置される状態となる場合には、物品Wは外部位置において支持されている状態となる。移動部30は、保持部10(保持部10で保持された物品W)をこのような内部位置と外部位置との間で移動可能に構成されている。
【0023】
本実施形態では、移動部30は、昇降部31とスライド部32とを含んでいる。昇降部31は保持部10を昇降移動させる。本実施形態では、昇降部31による保持部10の昇降移動に応じて、保持部10に保持された状態の物品Wが、収容領域Sの内部位置と、授受部90bが設けられる位置との間で、昇降移動される。本実施形態では、昇降部31は、保持部10に連結された昇降ベルト30Aと、昇降用プーリ(図示しない)を駆動させて当該昇降ベルト30Aを巻き取り又は繰り出す昇降用モータ31Mとを有している。これにより、昇降用モータ31Mを駆動することで、保持部10に保持された状態の物品Wを、収容領域Sの中の内部位置と授受部90bとの間において上昇したり下降したりすることが可能となる。この昇降部31により物品Wを昇降移動させることで、移動経路Rに対して上下方向の異なる位置(本例では下側)になる搬送対象場所90に対して物品Wを移載することができる。またこの際、昇降部31による保持部10の昇降高さを調整することにより、搬送対象場所90に対する保持部10の位置ずれを、鉛直方向Zにおいて調整することが可能である。
【0024】
スライド部32は、保持部10を水平方向に沿ってスライド移動させる。本実施形態では、スライド部32による保持部10のスライド移動に応じて、保持部10に保持された状態の物品Wがスライド移動される。本実施形態では、スライド部32は、カバー部3に取り付けられており、スライド用ベルト(図示しない)と、スライド用プーリ(図示しない)を駆動させてスライド用ベルトを巻き取り又は繰り出すスライド用モータ32Mとを有している。スライド部32は、スライド用モータ32Mの駆動に伴い、保持部10及び保持部10に保持された状態の物品Wを幅方向Yに沿ってスライド移動させる。このスライド部32により物品Wを幅方向Yにスライド移動させることで、物品Wの移載時に、搬送対象場所90に対する位置ずれを、幅方向Yにおいて調整することが可能である。
【0025】
制御部5は、移動体2及び移載機構4を制御する。移動体2を制御するとは、移動体2による移動経路Rに沿った走行や停止を制御することを意味する。また、移載機構4を制御するとは、移載機構4による物品Wの保持や物品Wの搬送元や物品Wの搬送先との間で行われる物品Wの授受を制御することを意味する。具体的には、制御部5は、保持部10による物品Wの保持及び保持解除に関する制御を行ったり、旋回部20、昇降部31、及びスライド部32による物品Wの移動や旋回に関する制御を行ったりして、搬送元や搬送先との間での物品Wの授受を行う。
図2には、制御部5がカバー部3に設けられているように示しているが、制御部5はカバー部3とは異なる他の箇所に設けられていても良い。
【0026】
ここで、上述したように、カバー部3により収容領域Sが構成されるが、カバー部3は収容領域Sに面する内面構造を備えている。「収容領域Sに面する内面構造」とは、収容領域Sの外縁を区画する面が相当する。この内面構造には、カバー部3の内壁面3A及び当該内壁面3Aよりも収容領域S側に配置された全ての構造物が含まれる。具体的には、内面構造には、カバー部3の内壁面3A、物品Wの下方への落下を規制するための落下規制部6、保持部10により保持された物品Wの揺動を規制する揺動規制機構7、収容領域Sに突出するように設けられたセンサ等が含まれる。
【0027】
落下規制部6は、収容領域Sに収容された物品Wよりも下側において、カバー部3の内壁面3Aから収容領域Sの側へ突出するように配置される。この落下規制部6は、カバー部3の内壁面3Aのうち、保持部10により保持された物品Wを挟んで互いに対向する一対の側面に設けられている。また、落下規制部6は、図示しないリンク機構を備えており、保持部10により保持された物品Wが収容領域Sに収容された状態で、一対の規制体駆動部6Mの夫々がリンク機構を動作させることで、収容領域Sの側に突出した突出姿勢となる。落下規制部6は、このような突出姿勢となった状態で、少なくとも一部が、鉛直方向Zに沿う鉛直方向視で、物品Wと重複するように配置される。これにより、仮に物品Wの搬送中に保持部10が解除状態になった場合であっても、落下規制部6が物品Wを下側から支えることになるため、例えば床への物品Wの落下を規制することが可能となる。また、落下規制部6は、物品Wを移載時等、移載機構4が物品Wを収容領域Sの外部位置へ移動させる場合には引退姿勢となる。落下規制部6は、引退姿勢となった状態では、全体が、鉛直方向Zに沿う鉛直方向視で、物品Wと重複しないように配置される。
【0028】
揺動規制機構7は、支持部7Aと当接部7Bと当接駆動部7Mとを備えている。支持部7Aは、当接部7Bを支持している。この揺動規制機構7は、カバー部3の内壁面3Aのうち、保持部10により保持された物品Wを挟んで互いに対向する一対の側面に設けられている。本例では、落下規制部6が設けられた一対の側面のそれぞれに揺動規制機構7が設けられている。また、本実施形態では、支持部7Aが当接駆動部7Mによって駆動されることにより、当接部7Bをカバー部3から収容領域Sの側に突出させる突出姿勢と、当該突出姿勢よりもカバー部3の側へ引退させた引退姿勢と、に姿勢変更されるように構成されている。保持部10により保持された物品Wが収容領域Sに収容された状態で、一対の当接部7Bが突出姿勢となることで、当該一対の当接部7Bが、物品Wの側面に対して両側から当接する。これにより、物品Wの搬送時や、移載機構4による移載時に物品Wが揺動することを規制する。一方、物品Wの移載時等、移載機構4が物品Wを収容領域Sの外部位置へ移動させる場合には、一対の当接部7Bが引退姿勢となることで、当該一対の当接部7Bが物品Wから離間する。これにより、物品Wの移動を適切に行うことができる。
【0029】
ここで、
図3は、収容領域Sに収容された物品Wの状態を示した図であり、
図4は、本実施形態における非干渉角度範囲の説明図である。移載機構4は、旋回部20による保持部10の旋回角度が規定の非干渉角度範囲内である場合には、移動部30により保持部10を移動させても内面構造と干渉しないが、旋回角度が非干渉角度範囲外の角度である場合には、移動部30による保持部10の移動経路によっては内面構造と干渉する場合がある。上述したように、保持部10は、旋回部20により鉛直方向Zに沿う旋回軸4b周りに旋回させられる。よって、旋回部20による保持部10の旋回角度とは、旋回部20により旋回させられた保持部10の角度が相当する。
図3では、このような旋回角度がθとして示されている。「移動部30により保持部10を移動させ」とは、本実施形態では昇降部31による物品Wの昇降移動や、スライド部32による物品Wのスライド移動が相当する。内面構造とは、収容領域Sを構成する面であって、本実施形態では、カバー部3の内壁面3A、落下規制部6、揺動規制機構7、収容領域Sに突出するように設けられたセンサ等が相当する。干渉とは本実施形態では接触を意味する。「保持部10の移動経路」とは、保持部10が、旋回移動をする場合や、昇降移動する場合や、スライド移動する場合に、保持部10が通る経路である。
【0030】
ここで、
図3に示されるように、移載機構4により保持された物品Wにおける幅方向Yの左側Y1の端縁に沿う位置であって、進行方向Xの中央部を点Qとし、物品Wが旋回移動を行われる際の旋回中心を点Oとした場合において、線分OQが幅方向Yと平行になる旋回角度を0度とする。そして、旋回角度が、0度を基準として旋回方向両側に規定の角度範囲(±α°)内である場合には、昇降部31による物品Wの昇降移動や、スライド部32による物品Wのスライド移動が行われても、移載機構4は、カバー部3の内面構造(内壁面3A、落下規制部6、揺動規制機構7、収容領域Sに突出するように設けられたセンサ等)に接触することはない。しかしながら、旋回角度が、0度を基準として旋回方向両側に規定の角度範囲(±α°)に含まれない場合には、
図3において二点鎖線で示されるように、昇降部31による物品Wの昇降移動や、スライド部32による物品Wのスライド移動が行われた場合に、移載機構4は、カバー部3の内面構造に接触することがある。
【0031】
このような移載機構4が内面構造と接触しない旋回角度の範囲が非干渉角度範囲内であり、移載機構4が内面構造と接触する場合がある旋回角度の範囲が非干渉角度範囲外である。このような非干渉角度範囲が
図4に示される。
図4に示されるように、非干渉角度範囲は4方向に設けられる。本実施形態では、4つの非干渉角度範囲を、それぞれ、第1非干渉角度範囲R1、第2非干渉角度範囲R2、第3非干渉角度範囲R3、第4非干渉角度範囲R4とする。上述した線分OQが、幅方向Yの左側Y1を向いた時の旋回角度を0度とすると、「0±α°」の範囲が第1非干渉角度範囲R1にあたる。また、上記線分OQが進行方向Xの前側X1を向いている場合にも移載機構4が内面構造と接触することがない。このため、「90±α°」の範囲が第2非干渉角度範囲R2となる。同様に、上記線分OQが幅方向Yの右側Y2を向いている場合にも移載機構4が内面構造と接触することがないので、「180±α°」の範囲が第3非干渉角度範囲R3となり、更には線分OQが進行方向Xの後側X2を向いている場合にも移載機構4が内面構造と接触することがないので、「270±α°」の範囲が第4非干渉角度範囲R4となる。したがって、物品Wにおいて設定された点Qが、4つの非干渉角度範囲のいずれかに含まれている状態であれば、昇降部31による物品Wの昇降移動や、スライド部32による物品Wのスライド移動が行われても、移載機構4は、カバー部3の内面構造に干渉しない。ここで、干渉角度範囲の広さを規定する、旋回方向両側に規定の角度範囲「α°」は、例えば8°である。
【0032】
図5に示されるように、物品搬送装置1に対して、制御部5は作業者により操作される操作端末100からの指令に従って移載機構4を動作させることができるように構成される。作業者とは、物品搬送装置1の管理や保守等を行う人である。操作端末100とは、移載機構4をはじめ、上述した物品搬送装置1の各機能部を遠隔操作することが可能な制御部5と有線又は無線により接続された端末である。物品搬送装置1の保守点検を行う場合や物品搬送装置1の故障が生じた場合等に、作業者が操作端末100を操作して動作指令を発信し、物品搬送装置1の移動体2と、保持部10、旋回部20、及び昇降部31とスライド部32とを有する移動部30を備えた移載機構4とを動作させることが可能である。特に、作業者により操作される操作端末100からの指令に従って移載機構4を動作させるモードは、保守モードと称される。
【0033】
制御部5は、このような保守モードにおいて、操作端末100から移載機構4の動作指令を受け付けた場合に、旋回角度が非干渉角度範囲内であるか否かを判定する。本例では、移載機構4の動作指令とは、移動部30及び旋回部20の姿勢を規定の基準姿勢とするための基準姿勢復帰動作の指令である。上記のとおり、移動部30は、昇降部31とスライド部32とを含むことから、移載機構4の動作指令には、昇降部31、スライド部32、旋回部20に対する指令が含まれる。制御部5は、上述した基準姿勢復帰動作の指令を受け付けた場合、まず昇降部31を基準姿勢とし、次にスライド部32を基準姿勢とし、その後旋回部20を基準姿勢とする。規定の基準姿勢とは、予め規定された基準となる姿勢である。例えば、昇降部31の基準姿勢は、保持部10が昇降移動範囲の上限付近に位置する姿勢である。例えば、スライド部32の基準姿勢とは、保持部10がスライド移動範囲の中央付近に位置する姿勢である。例えば、旋回部20の基準姿勢とは、上述した旋回角度が0度の姿勢である。従って、本例では、昇降部31、スライド部32、及び旋回部20が全て基準姿勢である場合には、保持部10に保持された物品Wの全体が収容領域Sの内部に収容される。このように、基準姿勢は、いわゆるホームポジションと称されるものである。移動部30及び旋回部20の姿勢を、このような基準姿勢に復帰させるための動作の指令が、基準姿勢復帰動作の指令に相当する。制御部5は、操作端末100から基準姿勢復帰動作の指令を受け付けると、保持部10の旋回角度が非干渉角度範囲内であるか否かを判定する。旋回角度の判定は、旋回部20から現在の旋回角度を示す情報を取得して行っても良いし、制御部5自体が旋回部20による旋回に応じて旋回角度を示す情報を取得しておいて、当該情報に基づき行っても良い。
【0034】
旋回角度が非干渉角度範囲内である場合は、移動部30が保持部10を収容領域Sの中の内部位置と収容領域Sの外の外部位置との間で移動させた場合であっても、移載機構4がカバー部3の内面構造に接触しない。そこで、制御部5は、上述した判定の結果、旋回角度が非干渉角度範囲内である場合は、操作端末100からの動作指令に従って移載機構4の動作を実行する。具体的には、制御部5は、把持用モータ10M、旋回用モータ20M、昇降用モータ31M、スライド用モータ32Mの夫々を駆動させる。これにより、操作端末100を操作する作業者の指令に従って移載機構4が動作する。
【0035】
一方、旋回角度が非干渉角度範囲外の角度である場合又は旋回角度が不明である場合は、移動部30が保持部10を収容領域Sの中の内部位置と収容領域Sの外の外部位置との間で移動させた場合に、移載機構4がカバー部3の内面構造に接触する可能性がある。そこで、制御部5は、旋回角度が非干渉角度範囲外の角度である場合又は旋回角度が不明である場合には、操作端末100にエラー情報を発報させる。ここで、旋回角度が非干渉角度範囲外の角度である場合とは、上述した判定を行った結果、旋回角度が非干渉角度範囲外の場合である。旋回角度が不明である場合とは、上述した判定において、旋回部20から現在の旋回角度を示す情報を取得することができず、その結果、旋回角度を算定できなかった場合や、例えば制御部5に対する電力供給が停止され、旋回角度を示す情報が消失された場合等のように、制御部5が旋回角度を認識できない状況である場合が相当する。エラー情報とは、操作端末100の操作画面に表示する、文字や図形の表示、或いは、操作端末100から発する音声や警告音等の出力であって、作業者に旋回角度が非干渉角度範囲外であることや旋回角度が不明であることを明示するための情報である。具体的には、例えば
図6に示されるように、操作端末100の表示画面100Aに「旋回角度が非干渉角度範囲外です」といったメッセージを表示したり、移載機構4がカバー部3の内面構造に接触する姿勢、或いは、接触する可能性がある姿勢であることを示す図形を表示したりすると良い。或いは、操作端末100のスピーカ100Bから「旋回角度が非干渉角度範囲外です」といった音声を出力したりすると良い。もちろん、他のメッセージの表示や音声の出力でも良い。
【0036】
このように、制御部5は、現在の移載機構4の姿勢が、移動部30が保持部10を収容領域Sの中の内部位置と収容領域Sの外の外部位置との間で移動させた場合に、移載機構4がカバー部3の内面構造に接触する可能性がある場合には、操作端末100にエラー情報を発報させる発報指令を行う。これにより、作業者の操作ミス等によってカバー部3の内面構造への移載機構4の接触を防止できる。
【0037】
また、制御部5は、保守モードにおいて、操作端末100から移載機構4の動作指令を受け付けた場合に注意喚起情報を報知させ、当該注意喚起情報の報知を行った後、再度、移載機構4の動作指令を受け付けた場合であって、旋回角度が非干渉角度範囲内である場合に、当該動作指令に従って移載機構4の動作を実行するように構成することが可能である。保守モードとは、作業者により操作される操作端末100からの指令に従って移載機構4を動作するモードである。制御部5は、操作端末100から移載機構4の動作指令を受け付けた場合に、注意喚起情報を報知させる。注意喚起情報は、操作端末100の操作画面に表示する、文字や図形の表示、或いは、操作端末100から発する音声や警告音等の出力であって、作業者に動作指令が、作業者が意図したものであるかの注意喚起を行うための情報である。制御部5は、操作端末100に注意喚起情報を報知させた後、改めて、操作端末100から動作指令を受け付けた場合であって、保持部10の旋回角度が非干渉角度範囲内である場合には、移載機構4を動作させた場合であっても、当該移載機構4がカバー部3の内面構造に接触することがないと判断し、操作端末100を介して改めて動作指令を行ったと推定できる。そこで、制御部5は、改めて受け付けた動作指令に従って、昇降部31、スライド部32、旋回部20を動作させる。これにより、作業者による操作端末100から動作指令に従って移載機構4を動作させることが可能となる。
【0038】
図7は、以上のような制御部5の処理を示すフローチャートである。まず、制御部5が操作端末100から動作指令を受け付けると(ステップ#10:Yes)、制御部5は操作端末100に注意喚起情報の報知を指示する(ステップ#11)。これにより、操作端末100において、注意喚起情報の報知が行われる。この報知は、操作端末100からの動作指令が、作業者が意図したものであるかを確認する内容であると良い。例えば「移載機構を動作させて良いですか?」というような作業者に対して確認を促すような内容のメッセージの表示や音声出力等であると好適である。制御部5が、この注意喚起情報の報知の指示を行った後、新たに操作端末100から移載機構4を動作させる動作指令を受け付けると(ステップ#12:Yes)、制御部5が保持部10の旋回角度を判定する。当該旋回角度が非干渉角度範囲内である場合には(ステップ#13:Yes)、制御部5は、受け付けた動作指令に従って移載機構4を動作させる(ステップ#14)。動作指令に従った動作が完了すると、制御部5が処理を終了する。なお、ステップ#14の制御部5による移載機構4の動作は、例えば移載機構4の周囲に人がいないことをセンサで検出した上で、行うことができるようにすることも可能である。
【0039】
ステップ#13において、制御部5により判定された保持部10の旋回角度が非干渉角度範囲内でない場合には(ステップ#13:No)、制御部5は操作端末100にエラー情報の発報を指示する(ステップ#15)。これにより、操作端末100において、エラー情報の発報として、保持部10の旋回角度が非干渉角度範囲内でないことを示す情報の報知が行われる。
【0040】
一方、ステップ#12において、制御部5が、注意喚起情報の報知の指示を行った後、新たに操作端末100から移載機構4を動作させる動作指令を受け付けない状態が(ステップ#12:No)、予め設定された設定時間(例えば30秒)が経過するまで継続すると(ステップ#16:Yes)、制御部5は処理を終了する。ステップ#16において、予め設定された設定時間(例えば30秒)が経過するまでに(ステップ#16:No)、制御部5が、新たに操作端末100から移載機構4を動作させる動作指令を受け付けると(ステップ#12:Yes)、制御部5はステップ#13から処理を継続する。
【0041】
操作端末100から動作指令を受け付けた場合に、制御部5が、操作端末100に注意喚起情報を報知させ、その後、操作端末100から再度の動作指令があった場合であって、旋回角度が非干渉角度範囲内の角度でない場合に、制御部5が、エラー情報を発報させることで、移載機構4がカバー部3の内面構造に接触することを防止することができる。また、上述した操作端末100から再度の動作指令があった場合であって、旋回角度が非干渉角度範囲内である場合には移載機構4を動作指令に従って動作させることが可能となる。
【0042】
或いは、別の実施形態として、制御部5は、保守モードにおいて、操作端末100から移載機構4の動作指令を受け付けた場合であって、旋回角度が非干渉角度範囲外の角度であった場合に、エラー情報の発報を行った後、旋回角度が非干渉角度範囲内となるように旋回部20により保持部10を旋回させ、動作指令に従って移載機構4の動作を実行するように構成することも可能である。この場合、制御部5は、操作端末100に対して注意喚起情報の報知を行った後、操作端末100から受け付けた動作指令に基づく動作を実行する前に、作業者による操作端末100の操作により保持部10を旋回させる。その後、制御部5は、動作指令に従って、当該動作指令における旋回動作を除く移載機構4の動作を実行すると良い。これにより、移載機構4によるカバー部3の内面構造への接触を回避することが可能となる。
【0043】
図8は、この場合の制御部5の処理を示すフローチャートである。まず、制御部5が操作端末100から動作指令を受け付けると(ステップ#20:Yes)、制御部5は操作端末100に注意喚起情報の報知を指示する(ステップ#21)。これにより、操作端末100において、注意喚起情報の報知が行われる。この報知は、操作端末100からの動作指令が、作業者が意図したものであるかを確認する内容であると良い。例えば「移載機構を動作させて良いですか?」というような作業者に対して確認を促すような内容のメッセージの表示や音声出力等であると好適である。制御部5が、この注意喚起情報の報知の指示を行った後、新たに操作端末100から移載機構4を動作させる動作指令を受け付けると(ステップ#22:Yes)、制御部5が保持部10の旋回角度を判定する。当該旋回角度が非干渉角度範囲内である場合には(ステップ#23:Yes)、制御部5は、受け付けた動作指令に従って移載機構4を動作させる(ステップ#24)。動作指令に従った動作が完了すると、制御部5が処理を終了する。なお、ステップ#24の制御部5による移載機構4の動作は、例えば移載機構4の周囲に人がいないことをセンサで検出した上で、行うことができるようにすることも可能である。
【0044】
ステップ#22において、制御部5が、注意喚起情報の報知の指示を行った後、新たに操作端末100から移載機構4を動作させる動作指令を受け付けない状態が(ステップ#22:No)、予め設定された設定時間間(例えば30秒)が経過するまで継続すると(ステップ#31:Yes)、制御部5は処理を終了する。ステップ#31において、予め設定された設定時間(例えば30秒)が経過するまでに(ステップ#31:No)、制御部5が、新たに操作端末100から移載機構4を動作させる動作指令を受け付けると(ステップ#22:Yes)、制御部5はステップ#23から処理を継続する。
【0045】
ステップ#23において、制御部5により判定された保持部10の旋回角度が非干渉角度範囲内でない場合には(ステップ#23:No)、制御部5は操作端末100にエラー情報の発報を指示する(ステップ#25)。これにより、操作端末100において、エラー情報の発報として、保持部10の旋回角度が非干渉角度範囲内でないことを示す情報の報知が行われる。
【0046】
操作端末100で報知された注意喚起情報(エラーの発報)を認識した作業者による操作端末100の操作に応じて、保持部10の旋回角度が非干渉角度範囲内に調整された後(ステップ#26:Yes)、制御部5が操作端末100から動作指令を受け付けると(ステップ#27:Yes)、制御部5は操作端末100に注意喚起情報の報知を指示する(ステップ#28)。これにより、操作端末100において、注意喚起情報の報知が行われる。この報知も、上記と同様に、操作端末100からの動作指令が、作業者が意図したものであるかを確認するものであれば良い。なお、ステップ#26の作業者の操作に応じた保持部10の旋回は、例えば保持部10の周囲に人がいないことをセンサで検出した上で、行うことができるようにすることも可能である。
【0047】
制御部5が、この注意喚起情報の報知の指示を行った後、新たに操作端末100から移載機構4を動作させる動作指令を受け付けると(ステップ#29:Yes)、制御部5は、受け付けた動作指令に従って移載機構4を動作させる(ステップ#24)。動作指令に従った動作が完了すると、制御部5が処理を終了する。
【0048】
ステップ#29において、制御部5が、注意喚起情報の報知の指示を行った後、新たに操作端末100から移載機構4を動作させる動作指令を受け付けない状態が(ステップ#29:No)、予め設定された設定時間が経過するまで継続すると(ステップ#30:Yes)、制御部5は処理を終了する。また、ステップ#26において、保持部10の旋回角度が非干渉角度範囲内に調整されない場合や(ステップ#26:No)、ステップ#27において、制御部5が操作端末100から動作指令を受け付けない場合も(ステップ#27:No)、制御部5は処理を終了する。なお、図示はしないが、ステップ#27における判定は、予め設定された時間が経過するまでの間に、動作指令を受け付けたか否かを判定すると良い。
【0049】
旋回角度を認識できている状況である場合には、作業者による操作端末100の操作に応じて旋回角度の調整を行った後、動作指令の受け付け、注意喚起情報の報知、動作指令の受け付けがあったときに、制御部5が、このように移載機構4を動作させることで、移載機構4がカバー部3の内面構造に接触することを防止しつつ、移載機構4を動作指令に従って動作させることが可能となる。
【0050】
なお、
図8のステップ#26における、作業者の操作による保持部10の旋回は、制御部5が自動で行っても良い。この場合には、制御部5が、保持部10の旋回角度が非干渉角度範囲内となるように旋回部20により保持部10を旋回させると良い。その後、制御部5は、動作指令に従って、当該動作指令における旋回動作を除く移載機構4の動作を実行すると良い。これにより、移載機構4によるカバー部3の内面構造への接触を回避することが可能となる。
【0051】
2.物品搬送装置のその他の実施形態
次に、物品搬送装置1のその他の実施形態について説明する。
【0052】
(1)上記の実施形態では、物品搬送装置1は、所謂天井搬送車として構成される例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、物品搬送装置1は無人搬送車や有軌道台車等の各種搬送車であっても良い。また、レール99に沿って移動しない搬送装置(例えばドローン等)であっても良い。
【0053】
(2)上記の実施形態では、移動部30が昇降部31とスライド部32とを含む場合の例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることはなく、移動部30は保持部10を昇降移動させる機能のみを有するように構成しても良いし、或いは、移動部30は保持部10を水平方向に沿ってスライド移動させる機能のみを有するように構成しても良い。
【0054】
(3)上記の実施形態では、内面構造は、収容領域Sを構成する面であって、カバー部3の内壁面3A、落下規制部6、揺動規制機構7、収容領域Sに突出するように設けられたセンサ等が相当するとして説明した。しかし、内面構造は、落下規制部6や揺動規制機構7や収容領域Sに突出するように設けられたセンサ等が設けられていない場合には、カバー部3の内壁面3Aのみが相当する。
【0055】
(4)上記の実施形態では、4つの非干渉角度範囲が、「0±α°」の範囲、「90±α°」の範囲、「180±α°」の範囲、「270±α°」の範囲であって、「α=8」である場合を例として説明した。しかし、これらの数値は単なる例示であって、カバー部3の内壁面3Aと内面構造との間隔に応じて適宜設定されると好適である。
【0056】
(5)上記の実施形態では、動作指令は、移動部30及び旋回部20の姿勢を規定の基準姿勢とするための基準姿勢復帰動作の指令であるとして説明した。しかし、そのような構成に限定されるものではなく、動作指令は、所定の基準姿勢とは異なる他の姿勢(例えばメンテナンスを行い易いようにする姿勢等)であっても良い。
【0057】
(6)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0058】
3.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した物品搬送装置の概要について説明する。
【0059】
物品搬送装置は、
物品を搬送する物品搬送装置であって、
前記物品の搬送のために移動する移動体と、
前記移動体に支持され、搬送中の前記物品が収容される収容領域の側周囲の少なくとも一部を覆うカバー部と、
前記物品の保持と、移載対象箇所との間での前記物品の移載とを行う移載機構と、
前記移動体及び前記移載機構を制御する制御部と、を備え、
前記移載機構は、前記移動体に支持され、前記物品を保持する保持状態と前記物品の保持を解除する解除状態とに状態変更可能である保持部と、前記保持部を上下方向に沿う旋回軸心回りに旋回させる旋回部と、前記保持部を前記収容領域の中の内部位置と前記収容領域の外の外部位置との間で移動させる移動部とを備え、
前記カバー部は、前記収容領域に面する内面構造を備え、
前記移載機構は、前記旋回部による前記保持部の旋回角度が規定の非干渉角度範囲内である場合には、前記移動部により前記保持部を移動させても前記内面構造と干渉せず、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲外の角度である場合には、前記移動部による前記保持部の移動経路によっては前記内面構造と干渉する場合があり、
前記制御部は、作業者により操作される操作端末からの指令に従って前記移載機構を動作させる保守モードが実行可能であり、
前記制御部は、前記保守モードにおいて、前記操作端末から前記移載機構の動作指令を受け付けた場合に、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲内であるか否かを判定し、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲内である場合は、前記動作指令に従って前記移載機構の動作を実行し、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲外の角度である場合又は前記旋回角度が不明である場合は、前記操作端末にエラー情報を発報させる。
【0060】
本構成によれば、保守モードにおいて作業者が誤った移載機構の動作指令を出した場合であっても、移載機構を動作させた場合に当該移載機構がカバー部の内面構造に干渉する可能性がある場合には、操作端末にエラー情報を発報させることができる。従って、作業者が誤った移載機構の動作指令を出した場合であっても、作業者に確認の機会を与えることができるので、カバー部の内面構造に移載機構が干渉することを回避できる。
【0061】
ここで、
前記制御部は、前記保守モードにおいて、前記操作端末から前記移載機構の動作指令を受け付けた場合に注意喚起情報を報知させ、前記注意喚起情報の報知を行った後、再度、前記移載機構の動作指令を受け付けた場合であって、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲内である場合に、当該動作指令に従って前記移載機構の動作を実行すると好適である。
【0062】
本構成によれば、作業者に確認の機会を与えた後に再度動作指令があった場合であって、旋回角度が非干渉角度範囲内である場合には、作業者の指示に従って移載機構の動作が実行される。従って、作業者による動作指令に従って移載機構を動作させることができる。例えば電力供給が行われていない状態の物品搬送装置に対して電力供給を開始した場合には、制御部が旋回角度を認識できない状態になることが多い。このように旋回角度が不明である場合に、本動作が実行されると好適である。
【0063】
また、
前記制御部は、前記保守モードにおいて、前記操作端末から前記移載機構の動作指令を受け付けた場合であって、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲外の角度であった場合に、前記エラー情報の発報を行った後、前記旋回角度が前記非干渉角度範囲内となるように前記旋回部により前記保持部を旋回させ、前記動作指令に従って前記移載機構の動作を実行すると好適である。
【0064】
本構成によれば、旋回角度を非干渉角度範囲内としてから動作指令に従って移載機構の動作を実行するため、カバー部の内面構造に移載機構が干渉することを回避しつつ、作業者による動作指令に従って移載機構を動作させることができる。
【0065】
また、
前記動作指令は、前記移動部及び前記旋回部の姿勢を規定の基準姿勢とするための基準姿勢復帰動作の指令であると好適である。
【0066】
物品搬送装置においては、基準姿勢復帰動作では移動部と旋回部との複合的な動作が実行されるため、作業者が移載機構の干渉に気づき難い。そこで、本構成によれば、このような場合に、適切に作業者に確認の機会を与えることができる。
【0067】
また、
前記移動部は、前記保持部を昇降移動させる昇降部と、前記保持部を水平方向に沿ってスライド移動させるスライド部とを含み、
前記制御部は、前記基準姿勢復帰動作の指令を受け付けた場合、まず前記昇降部を基準姿勢とし、次に前記スライド部を基準姿勢とし、その後前記旋回部を基準姿勢とすると好適である。
【0068】
基準姿勢復帰動作の指令を受け付けた場合に、先に旋回部による旋回を行うと、当該旋回によって保持部と内面構造とが干渉する場合がある。そこで、本構成によれば、先に昇降部を基準姿勢にすることで、旋回部による旋回を行っても干渉が生じないようにし易い。
【0069】
また、
前記内面構造は、前記物品の下方への落下を規制するための落下規制部を含み、
前記落下規制部は、前記収容領域に収容された前記物品よりも下側において、前記カバー部の内壁面から前記収容領域側へ突出するように配置されていても良い。
【0070】
本構成のように、落下規制部が設けられている場合、特に、移動部による保持部の移動中に移載機構と内面構造との干渉が生じやすい。そこで、上記のような制御を行うと特に好適である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示に係る技術は、物品を搬送する物品搬送装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 :物品搬送装置
2 :移動体
3 :カバー部
3A :内壁面
4 :移載機構
5 :制御部
6 :落下規制部
10 :保持部
20 :旋回部
30 :移動部
31 :昇降部
32 :スライド部
100 :操作端末
S :収容領域
W :物品