(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】電子機器、及び部材の取り付け方法
(51)【国際特許分類】
H01H 21/00 20060101AFI20240514BHJP
H01H 3/12 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H01H21/00 330B
H01H3/12 E
(21)【出願番号】P 2022048056
(22)【出願日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】亀井 康一
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-130331(JP,A)
【文献】米国特許第07381919(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 21/00
H01H 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置筐体と、
前記装置筐体の内部空間に配置されたスイッチと、
前記スイッチに対するスイッチング操作を行うスイッチ操作部と、前記装置筐体に設けられた貫通穴内に位置するボタン部と、前記装置筐体に設けられた支持部に係合する回転軸と、前記装置筐体に当接可能な当接部と、を有し、前記装置筐体に対して前記回転軸回りで回転可能で、かつ前記回転軸の軸心方向と直交する方向に移動可能に前記支持部により支持された操作部材と、を含み、
前記装置筐体と前記操作部材とは、前記当接部が前記装置筐体に当接した状態
で前記操作部材
が前記回転軸を中心として回転した
ときの前記ボタン部の回転軌
道上に前記貫通穴が位置するように、構成されている、
電子機器。
【請求項2】
前記装置筐体は、前記操作部材の前記ボタン部が前記貫通穴内に位置する場合の前記当接部の前記軸心回りの回転軌道よりも前記軸心側に延在する規制部を有し、前記当接部が前記規制部に当接することにより、前記支持部における前記回転軸の位置が変更される、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記装置筐体と前記操作部材とは、前記ボタン部における前記軸心から最も遠い第1のボタン端部が前記貫通穴の外側であり、かつ前記貫通穴に近接する位置にある場合の前記軸心から前記第1のボタン端部までの第1の距離と、前記軸心から、前記貫通穴の筐体内部側の開口端における前記軸心から最も遠い第1の貫通穴端部までの第2の距離と、の差が、前記ボタン部が前記貫通穴内に位置する場合の前記第1の距離と前記第2の距離との差よりも小さくなるように、前記当接部が前記装置筐体に当接して前記支持部における前記回転軸の位置が変更されるように、構成されている、
請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記操作部材は、平板状の基部を有し、
前記回転軸は、前記基部における第1の位置に軸心方向が前記基部の主面の法線方向になる向きで設けられており、
前記ボタン部は、前記基部における前記回転軸の前記軸心を中心とする円の第1の径方向に延伸する面内にある第2の位置から円弧の接線方向に突出するように設けられており、
前記スイッチ操作部は、前記円の第2の径方向に延伸する面内にある第3の位置から円弧の接線方向に突出するように設けられており、
前記当接部は、前記基部の前記主面であって、前記回転軸の前記軸心からの距離が、前記円の前記第1の径方向における前記軸心から前記第2の位置までの距離よりも長い第4の位置に、前記主面の法線方向に突出するように設けられており、
前記装置筐体の前記規制部は、前記当接部を境として前記ボタン部とは反対側の位置で前記操作部材の前記基部の主面と対向して重なり、かつ前記回転軸の前記軸心からの距離が前記操作部材における前記軸心から前記第4の位置までの距離よりも短い部分を有する、
請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記装置筐体と前記操作部材とは、前記支持部の進入口に向かって移動するように前記支持部における前記回転軸の位置が変更される、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
装置筐体内に配置されるスイッチに対するスイッチング操作を行うスイッチ操作部と、ボタン部と、回転軸と、前記装置筐体に当接可能な当接部と、を有する操作部材を、前記装置筐体に対して前記回転軸回りで回転可能で、かつ前記回転軸の軸心方向と直交する方向に移動可能に支持する支持部により前記回転軸が支持されるように、前記装置筐体に取り付けた後、
前記当接部が前記装置筐体に当接した状態
で前記操作部材
が前記回転軸を中心として回転した
ときの前記ボタン部の回転軌
道上に前記装置筐体に形成された貫通穴が位置するように、前記操作部材を前記回転軸回りで回転させて前記操作部材の前記ボタン部を前記貫通穴内に挿入する、
部材の取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、及び部材の取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の多くは、筐体内に配置されたタクトスイッチ等のスイッチに対するスイッチング操作を行う操作部材として用いる押しボタンが筐体の表面に設けられている。押しボタンの典型例は、電子機器の電源のオン・オフを切り替えるスイッチと関連付けられているボタンである。
【0003】
筐体内のスイッチと、そのスイッチに対するスイッチング操作を行う押しボタンとは、一般的に、押しボタンの押下方向(操作方向)の延長上にスイッチが配置されていることが多い(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
押しボタンにより筐体内のスイッチに対するスイッチング操作を行う電子機器では、例えば、筐体内におけるプリント回路板等の各種部品の配置に対する制約により、押しボタンの押下方向の延長上にスイッチを配置することが困難な場合がある。そして、スイッチとそのスイッチに対する操作部材としての押しボタンとの位置関係によっては、操作部材を筐体に取り付ける作業を含む電子機器の組み立て作業を効率的に行うことが難しいことがある。
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、筐体内のスイッチを操作する操作部材を筐体に取り付ける作業を容易に行うことが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る電子機器は、装置筐体と、前記装置筐体の内部空間に配置されたスイッチと、前記スイッチに対するスイッチング操作を行うスイッチ操作部と、前記装置筐体に設けられた貫通穴内に位置するボタン部と、前記装置筐体に設けられた支持部に係合する回転軸と、前記装置筐体に当接可能な当接部と、を有し、前記装置筐体に対して前記回転軸回りで回転可能で、かつ前記回転軸の軸心方向と直交する方向に移動可能に前記支持部により支持された操作部材と、を含み、前記装置筐体と前記操作部材とは、前記当接部が前記装置筐体に当接した状態で前記操作部材が前記回転軸を中心として回転したときの前記ボタン部の回転軌道上に前記貫通穴が位置するように、構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記の態様によれば、筐体内のスイッチを操作する操作部材を筐体に取り付ける作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る印刷装置の外観構成の一例を示す上面図である。
【
図2】
図1に例示した印刷装置におけるスイッチと操作部材との関係を説明する模式図である。
【
図3】第1の装置筐体に操作部材を取り付ける作業の効率を低下させる要因の一例を説明する図である。
【
図5】一実施形態に係る第1の筐体部品における操作部材が取り付けられる部分の斜視図である。
【
図6】操作部材の各部と第1の筐体部品の各部との対応関係を説明する部分断面底面図である。
【
図7】一実施形態に係る操作部材の第1の筐体部品への取り付け方法を説明する側面断面図(その1)である。
【
図8】一実施形態に係る操作部材の第1の筐体部品への取り付け方法を説明する側面断面図(その2)である。
【
図9】一実施形態に係る操作部材の第1の筐体部品への取り付け方法を説明する側面断面図(その3)である。
【
図10】一実施形態に係る操作部材の第1の筐体部品への取り付け方法を説明する側面断面図(その4)である。
【
図11】一実施形態に係る操作部材の第1の筐体部品への取り付け方法を説明する側面断面図(その5)である。
【
図12】一実施形態に係る操作部材の第1の筐体部品への取り付け方法を説明する側面断面図(その6)である。
【
図13】一実施形態に係る操作部材の第1の筐体部品への取り付け方法を説明する側面断面図(その7)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、電子機器の例としてテープ状の被印刷媒体への印刷を行ってラベルを作成する印刷装置を挙げるが、本発明に係る電子機器は、そのような印刷装置に限定されない。
【0011】
また、参照する各図に示したX方向、Y方向、及びZ方向は、図面間での印刷装置の方向及び面の対応関係を明確にすることを目的としている。
【0012】
図1は、一実施形態に係る印刷装置の外観構成の一例を示す上面図である。
図2は、
図1に例示した印刷装置におけるスイッチと操作部材との関係を説明する模式図である。
図2には、
図1の印刷装置における筐体のみをA-A’線で切断して右側面側から見たときのスイッチ、操作部材、及び筐体の関係を模式的に示している。
【0013】
図1に例示した印刷装置1は、第1の筐体部品2、第2の筐体部品3、及び第3の筐体部品4を含む。第1の筐体部品2の一方の側に第2の筐体部品3が取り付けられ、第1の筐体部品2の他方の側に第3の筐体部品4が取り付けられる。プリント回路板等の電子部品、テープ状の被印刷媒体を搬送する搬送機構、被印刷媒体への印刷を行う印刷機構、及びテープ状の被印刷媒体のロールを収容したテープカートリッジ等を収容可能な内部空間を有する箱状の筐体が形成される。印刷装置1の筐体は、テープカートリッジを着脱可能なように構成されている。例えば、第2の筐体部品3が第1の筐体部品2に対して着脱自在であり、第2の筐体部品3を第1の筐体部品2から取り外すことによりテープカートリッジを着脱可能(交換可能)なように構成することができる。
【0014】
印刷装置1の筐体内には、電源のオン・オフを行うためのタクトスイッチ501を含む各種電子部品が実装されたプリント回路板5と、利用者がタクトスイッチ501をオン・オフするスイッチング操作を行うための操作部材6が設けられている。操作部材6は、第1の筐体部品2に対して回転可能に取り付けられており、操作部材6の一部分(ボタン部610)は、第1の筐体部品2に形成された貫通穴210に挿入されている。操作部材6は、利用者がボタン部610を押すことにより印加される押圧荷重の方向(-Z方向)と直交する方向(Y方向)を軸心方向とする回転軸回りで回転可能な態様で第1の筐体部品2に取り付けられている。操作部材6とタクトスイッチ501とは、印刷装置1の外部からボタン部610に押圧荷重を印加することにより回転する操作部材6における、ボタン部610とは別の部分(スイッチ操作部620)がタクトスイッチ501と当接してスイッチング操作が行われるように配置される。
【0015】
図1及び
図2に示した例では、操作部材6は、平面形状が頂角90度の扇形である平板状の基部600を有し、基部600の頂角部分に回転軸630が設けられている。操作部材6の回転軸630は、軸心方向(軸心Rxの延伸方向)が基部600における扇形の平面601(以下「第1の主面601」という)の法線方向となるように設けられている。操作部材6は、第1の筐体部品2における筐体内部となる部分に設けられた支持部230に回転軸630を係合させることにより、第1の筐体部品2に回転可能に支持される。
【0016】
操作部材6の基部600における、回転軸630から第1の径方向に延伸する第1の側面603には、ボタン部610と規制部604とが設けられている。ボタン部610は、例えば、第1の側面603から第1の径方向における軸心Rxを中心とする円弧の接線方向に突出するように設けられている。操作部材6は、例えば、図示しない捩じりバネ等の弾性部材により、ボタン部610を押下したときの回転方向とは逆の回転方向(
図2では反時計方向)に付勢されている。規制部604は、付勢されている操作部材6を第1の筐体部品2に当接させて付勢方向への操作部材6の回転を規制し、第1の筐体部品2の貫通穴210に挿入されたボタン部610の基準位置(印刷装置1の外部からの押圧荷重を受けていない状態であるときの位置)を定める部位である。規制部604は、例えば、第1の筐体部品2に当接したときに、第1の径方向における軸心Rxを中心とする円弧の接線方向がボタン部610の押下方向と略平行になるような寸法で形成される。
【0017】
操作部材6の基部600における、回転軸630から第2の径方向に延伸する第2の側面605には、スイッチ操作部620が設けられている。スイッチ操作部620は、例えば、第2の側面605から第2の径方向における軸心Rxを中心とする円弧の接線方向に突出するように設けられている。スイッチ操作部620の突出方向の延長上にはタクトスイッチ501が配置されている。印刷装置1の利用者がボタン部610を押して操作部材6が回転すると、スイッチ操作部620がタクトスイッチ501に当接し、ボタン部610を押すのをやめると、上述した付勢によりスイッチ操作部620がタクトスイッチ501から離間する。このスイッチ操作部620の当接及び離間が、タクトスイッチ501に対するスイッチング操作となる。
【0018】
このような操作部材6を用いてタクトスイッチ501に対するスイッチング操作を行うことにより、ボタン部610の直下とは異なる位置にタクトスイッチ501を配置することができる。このため、例えば、
図2に示したようなプリント回路板5の配線とタクトスイッチ501とを電気的に接続するために必要となる部品の数や作業工程の数を減らすことができる。
【0019】
第1の筐体部品2に操作部材6を取り付ける作業では、第1の筐体部品2の支持部230に操作部材6の回転軸630を支持させる(係合させる)ことと、ボタン部610を第1の筐体部品2の貫通穴210に挿入させることを行う。このような作業を効率よく行うため、第1の筐体部品2の支持部230は、操作部材6の回転軸630と対応した孔形状ではなく、回転軸630を軸心方向と直交する方向に移動させることで回転軸630を進入及び退出させることが可能な溝形状になっている。
【0020】
しかしながら、操作部材6の基部600における第1の径方向に延伸する第1の側面603に、第1の径方向における軸心Rxを中心とする円弧の接線方向に突出するボタン部610が設けられていると、ボタン部610を第1の筐体部品2の貫通穴210に挿入させるのに手間がかかり、作業効率が低下する可能性がある。
【0021】
図3は、第1の装置筐体に操作部材を取り付ける作業の効率を低下させる要因の一例を説明する図である。
図3に例示した第1の筐体部品2及び操作部材6の構成は、
図4~
図13を参照して後述する位置調整機構を有していない点を除き、本実施形態に係る第1の筐体部品2及び操作部材6の構成と同じである。
【0022】
第1の筐体部品2の支持部230は、例えば、
図3に例示したように、操作部材6の回転軸630の進入方向が第1の筐体部品2に沿って貫通穴210に近づく方向となるような溝形状になっており、溝の最奥部は、操作部材6のボタン部610が貫通穴210に挿入され、規制部604が第1の筐体部品2に当接した状態で、回転軸630と当接するような位置に設けられている。
【0023】
第1の筐体部品2に操作部材6を取り付ける作業は、例えば、溝形状の支持部230における進入口が上方を向くように第1の筐体部品2を作業台に置いた状態で行われる。この作業では、まず、操作部材6の回転軸630を第1の筐体部品2の支持部230に進入させ、その後、操作部材6を回転させて操作部材6のボタン部610を第1の筐体部品2の貫通穴210に挿入する。
【0024】
第1の筐体部品2及び操作部材6に後述する位置調整機構が設けられていない場合、
図3に例示したように、操作部材6の回転軸630が支持部230の底部(最奥部)に位置した状態では、軸心Rxとボタン部610における軸心Rxから最も遠い部分である第1のボタン端部610aとの距離LA1が、軸心Rxと貫通穴210における筐体内部側の開口端における軸心Rxから最も遠い部分である第1の貫通穴端部210aとの距離LB1よりも長くなる。このため、ボタン部610を貫通穴210に挿入するためには、操作部材6の回転軸630を支持部230の進入口の方向へ変位させる必要があり、変位量の調整等に手間がかかるため、作業効率が低下する。
【0025】
上述した軸心Rxとボタン部610の第1のボタン端部610aとの距離LA1に起因する操作部材6の取り付け作業の効率の低下を抑制するために、本実施形態の印刷装置1では、第1の筐体部品2及び操作部材6に、以下に説明するような位置調整機構を設けている。
【0026】
図4は、一実施形態に係る操作部材の斜視図である。
図5は、一実施形態に係る第1の筐体部品における操作部材が取り付けられる部分の斜視図である。
図6は、操作部材の各部と第1の筐体部品の各部との対応関係を説明する部分断面底面図である。
図4のX’方向、Y’方向、及びZ’方向は、図示された操作部材6と関連付けられる方向であり、操作部材6は、Y’方向と他の図面における印刷装置1と関連付けられたY方向とが略同一の方向となるように第1の筐体部品2に取り付けられる。
【0027】
本実施形態の操作部材6は、上述したように、基部600と、ボタン部610と、スイッチ操作部620と、回転軸630とを有する。また、基部600の第1の主面601、及び第1の主面601とは反対側を向いた第2の主面602のそれぞれには、位置調整機構の一部を含むリブ640が設けられている。リブ640は、第1の部位641と、第2の部位642と、第3の部位643とを含む。第1の部位641は、第1の主面601及び第2の主面におけるスイッチ操作部620の近傍に位置し、基部600の変形(例えば、ねじれ等)を抑制するとともに、スイッチ操作部620の軸心方向の位置のずれを抑制する部位である。第2の部位642は、第1の主面601及び第2の主面602におけるボタン部610の近傍に位置し、基部600の変形を抑制するとともに、位置調整機構の一部として機能する部位である。第3の部位643は、第1の部位641と第2の部位642との間にある部位であり、基部600の変形を抑制する部位である。
【0028】
本実施形態の第1の筐体部品2における操作部材6が取り付けられる部分には、支持部230を有する一対の壁部241及び242と、一対の壁部241及び242の間に位置し、位置調整機構の一部として機能する一対の規制部251及び252とが設けられている。一対の壁部241及び242、並びに一対の規制部251及び252は、それぞれ、上述した貫通穴210が形成された部分と一体形成された部分であってもよいし、別体として形成された部分であってもよい。
【0029】
図4及び
図6に例示した操作部材6のリブ640は、第1の部位641及び第2の部位642の第1の主面601(又は第2の主面602)からの高さが同一であり、かつ第3の部位643の高さよりも高くなっている。そして、操作部材6を取り付ける一対の壁部241及び242は、
図6に例示したように、壁部間の距離(間隙)が、操作部材6の第1の主面601における第2の部位642の上端から第2の主面602における第2の部位642の上端までの距離と略一致するように設けられている。このようにすることで、一対の壁部241及び242の間における操作部材6の軸心方向の位置のずれを抑制するとともに、一対の壁部241及び242と操作部材6のリブ640との接触面積の増大による操作部材6の回転不良の発生を抑制することができる。
【0030】
また、
図4及び
図6に例示した操作部材6のリブ640における第3の部位643は、軸心Rxを中心とする円弧に沿って延伸しており、第2の部位642は、第3の部位643の円弧の延長上と対応する位置よりも径外方向に変位させた部分を含む。第2の部位642は、回転軸630を支持部230に進入させた操作部材6のボタン部610を第1の筐体部品2の貫通穴210に挿入する過程で、第1の筐体部品2に設けた一対の規制部251及び252と当接する。操作部材6の第2の部位642と第1の筐体部品2の一対の規制部251及び252とは、ボタン部610の各部が第1の筐体部品2の貫通穴210における筐体内部側の開口端の位置を通過するときの貫通穴210の位置に対するボタン部610の位置を調整可能なように形成される。
図4~
図6に例示した一対の規制部251及び252は、規制部間の距離(間隙)が基部600の厚さと対応する距離(第1の主面601から第2の主面602までの距離)よりも長く、かつ各規制部における一部が取り付け後の操作部材6の基部600と重なるように形成される。操作部材6の第2の部位642と第1の筐体部品2の一対の規制部251及び252との関係については、
図8~
図11等を参照して後述する。
【0031】
図7は、一実施形態に係る操作部材の第1の筐体部品への取り付け方法を説明する側面断面図(その1)である。
図8は、一実施形態に係る操作部材の第1の筐体部品への取り付け方法を説明する側面断面図(その2)である。
図9は、一実施形態に係る操作部材の第1の筐体部品への取り付け方法を説明する側面断面図(その3)である。
図10は、一実施形態に係る操作部材の第1の筐体部品への取り付け方法を説明する側面断面図(その4)である。
図11は、一実施形態に係る操作部材の第1の筐体部品への取り付け方法を説明する側面断面図(その5)である。
図12は、一実施形態に係る操作部材の第1の筐体部品への取り付け方法を説明する側面断面図(その6)である。
図13は、一実施形態に係る操作部材の第1の筐体部品への取り付け方法を説明する側面断面図(その7)である。
図7~
図13において、「Rx」は操作部材6の回転軸630の軸心を表し、「Px」は支持部230の最奥部で回転軸630が支持されているときの操作部材6の回転軸の軸心を表す。
【0032】
第1の筐体部品2の支持部230は、例えば、
図7に例示したように、操作部材6の回転軸630の進入方向が第1の筐体部品2に沿って貫通穴210に近づく方向となるような溝形状になっており、溝の最奥部は、操作部材6のボタン部610が貫通穴210に挿入され、規制部604が第1の筐体部品2に当接した状態で、回転軸630と当接するような位置に設けられている(
図13を参照)。
【0033】
第1の筐体部品2に操作部材6を取り付ける作業は、例えば、溝形状の支持部230における進入口が上方を向くように第1の筐体部品2を作業台に置いた状態で行われる。この作業では、まず、
図7に例示したように、操作部材6の回転軸630を第1の筐体部品2の支持部230に進入させる。回転軸630を支持部230の最奥部まで進入させた時点では、
図7に例示したように、操作部材6のリブ640における第2の部位642が一対の規制部251及び252から離間した状態であり得る。
【0034】
回転軸630を支持部230の最奥部まで進入させた後、ボタン部610を第1の筐体部品2の貫通穴210に挿入させる方向(
図7では反時計方向)に操作部材6を回転させると、
図8に例示したように、操作部材6のリブ640における第2の部位642が、各規制部251及び252から回転軸630を支持部230の進入口に向けて変位させる方向の外力を受けるように、一対の規制部251及び252のそれぞれに当接する。操作部材6の回転軸630の軸心Rxが支持部230の最奥部における軸心位置Pxよりも距離Δxだけ支持部230の進入口側に移動することにより、軸心Rxを中心として操作部材6が回転したときの、ボタン部610における軸心Rxから最も遠い部分である第1のボタン端部610aの軌道は、軸心Rxが軸心位置Pxにあるときの軌道と比べて、第1の筐体部品2の貫通穴210の筐体内部側の開口端における軸心位置Pxから最も遠い第1の貫通穴端部210aとの距離が近くなる。リブ640の第2の部位642と第1の筐体部品2の一対の規制部251及び252とは、
図8に例示したような、ボタン部610が貫通穴210に進入する直前における軸心Rxと軸心位置Pxとの距離Δxが、貫通穴210に最初に進入するボタン部610の部分が貫通穴210に進入可能な範囲内となるように設ける。
【0035】
操作部材6を回転させてボタン部610の一部を貫通穴210に進入させると、
図9に例示したように、ボタン部610における第1のボタン端部610aが、貫通穴210の筐体内部側の開口端に接近する。このとき、ボタン部610の第1のボタン端部610aを貫通穴210内に進入させるためには、支持部230内で移動可能な回転軸630を、軸心Rxから貫通穴210における第1の貫通穴端部210aまでの距離LB1が、軸心Rxから第1のボタン端部610aまでの距離LA1よりも長くなる位置に変位させればよい。すなわち、リブ640の第2の部位642と第1の筐体部品2の一対の規制部251及び252とは、
図9に例示したような、ボタン部610の第1のボタン端部610aが貫通穴210に進入する直前における、軸心Rxからリブ640の第2の部位642と第1の筐体部品2の一対の規制部251及び252との当接位置までの距離LA2と、軸心Rxからボタン部610の第1のボタン端部610aまでの距離LA1との大小関係がLA2≧LA1となるように設ける。
【0036】
操作部材6を更に回転させてボタン部610の第1のボタン端部610aを貫通穴210に進入させると、
図10に例示したように、ボタン部610における軸心Rxから最も近い部分である第2のボタン端部610bが、貫通穴210の筐体内部側の開口端に接近する。このとき、ボタン部610の第2のボタン端部610bを貫通穴210内に進入させるためには、支持部230内で移動可能な回転軸630を、軸心Rxから貫通穴210における軸心Rxに最も近い部分である第2の貫通穴端部210bまでの距離LB3が、軸心Rxから第2のボタン端部610bまでの距離LA3よりも短くなる位置に変位させればよい。すなわち、リブ640の第2の部位642と第1の筐体部品2の一対の規制部251及び252とは、
図10に例示したような、ボタン部610の第2のボタン端部610bが貫通穴210に進入する直前における、軸心Rxから貫通穴210における第2の貫通穴端部210bまでの距離LB3と、軸心Rxからボタン部610の第2のボタン端部610bまでの距離LA3との大小関係がLA3≧LB3となるように設ける。このときの軸心Rxからリブ640の第2の部位642と第1の筐体部品2の一対の規制部251及び252との当接位置までの距離LA4は、一般的には、
図9を参照して上述した距離LA2以下(すなわち、LA4≦LA2)となる。
【0037】
操作部材6を更に回転させてボタン部610の第2のボタン端部610bを貫通穴210に進入させると、ボタン部610が貫通穴210の内壁と当接することにより、貫通穴210の開口端面と平行な方向(XY平面内)へのボタン部610の移動が規制される。ボタン部610の第2のボタン端部610bが貫通穴210に進入した後、
図11~
図13に例示したように、操作部材6は、規制部604が第1の筐体部品2に当接し、ボタン部610が貫通穴210における筐体外部側の開口端の位置に到達すると、第1の筐体部品2への操作部材6の取り付け作業が完了する。ボタン部610の第2のボタン端部610bが貫通穴210に進入した後、操作部材6は、貫通穴210の内壁によりボタン部610のXY平面内での移動が規制された状態で回転を続け、回転軸630が支持部230の最奥部に移動する。このため、リブ240の第2の部位242と第1の筐体部品2の一対の規制部251及び252とは、
図11~
図13に例示したように、ボタン部610の第2のボタン端部610bが貫通穴210に進入した後、回転軸630の支持部230の最奥部への移動を許容するように第2の部位242が各規制部251及び252から離間するように設ける。
【0038】
第1の筐体部品2への操作部材6の取り付けが行われた後、残りの所定の組み立て作業を経て、
図1及び
図2に例示したような、ボタン部610が貫通穴210内に位置する印刷装置1が完成する。完成した印刷装置1では、
図13に示したように、第1の筐体部品2の規制部251、252は、操作部材6のリブ640の第2の部位642の軸心Rx
回りの回転軌道よりも軸心Rx側に延在する部分を有する。言い換えると、完成した印刷装置1では、操作部材6のリブ640の第2の部位642を境としてボタン部610とは反対側の位置で操作部材6の基部600の主面と対向して重なり、かつ回転軸630の軸心Rxからの距離が操作部材6における軸心Rxから第2の部位642までの距離よりも短い部分を有する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の印刷装置1では、第1の筐体部品2の支持部230により回転軸630が支持されている操作部材6を回転させたときに、操作部材6のボタン部610を第1の筐体部品2の貫通穴210内に進入させやすい位置になるように、操作部材6のリブ640の第2の部位642が第1の筐体部品2の規制部251、252と当接し、支持部230内での回転軸630の位置が変更される。このため、操作部材6を第1の筐体部品2に取り付ける作業において、ボタン部610を第1の筐体部品2の貫通穴210に挿入させるための回転軸630の位置の調整を自動的に行うことが可能であり、作業効率の低下を抑制することができる。
【0040】
図7~
図13を参照して上述した第1の筐体部品2への操作部材6の取り付け作業を実現するための条件を満たす、第2の部位242と一対の規制部251及び252との形状(寸法)の組み合わせは、特定の組み合わせに限定されない。例えば、操作部材6のボタン部610と第1の筐体部品2の貫通穴210との寸法の関係、ボタン部610の形状、操作部材6の基部600の第1の主面601(及び第2の主面602)内での第2の部位642の位置と規制部251及び252との位置関係等により適宜変更される。上述した位置調整機構を最適化することにより、操作部材6を取り付けた後のボタン部610と第1の筐体部品2の貫通穴210の内壁との隙間を必要最小限にすることができ、例えば、筐体内部への塵埃等の進入を抑制することができる。
【0041】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎない。すなわち、本発明に係る操作部材の取り付け機構、及び電子機器は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、様々な変形、変更が可能である。
【0042】
例えば、上述した実施形態では、
図9に例示したように、操作部材6のボタン部610における回転軸630の軸心Rxから最も遠い第1のボタン端部610aが、貫通穴210の外側であり、かつ貫通穴210に近接する位置にある場合の軸心Rxから第1のボタン端部610aまでの距離LA1と、軸心Rxから貫通穴210の筐体内部側の開口端における軸心Rxから最も遠い第1の貫通穴端部210aまでの距離LB1とが、LA1≦LB1となるように、操作部材6の第2の部位642と第1の筐体部品2の規制部251、252を設けている。しかしながら、操作部材6の第2の部位642と第1の筐体部品2の規制部251、252とは、第1のボタン端部610aが貫通穴210の外側であり、かつ貫通穴210に近接する位置にある場合の軸心Rxから第1のボタン端部610aまでの距離LA1と、軸心Rxから第1の貫通穴端部210aまでの距離LB1との差の絶対値が、ボタン部610が貫通穴210内に位置する場合の軸心Rxから第1のボタン端部610aまでの距離と軸心Rxから第1の貫通穴端部210aまでの距離との差の絶対値よりも小さくなるように設けられていればよい。第1のボタン端部610aが貫通穴210の外側であり、かつ貫通穴210に近接する位置にある状態(貫通穴210に進入する直前の状態)における第1のボタン端部610aと第1の貫通穴端部210aとの距離が、例えば、位置調整機構を有していない
図3に例示したような場合の距離よりも短くなれば、第1のボタン端部610aが貫通穴210内に進入しやすくなる。
【0043】
例えば、本発明に係る電子機器における位置調整機構は、上述した操作部材6のリブ640の第2の部位642と、第1の筐体部品2の一対の規制部251及び252の組み合わせに限らず、適宜変更可能である。例えば、回転軸630の軸心Rxの位置を変更させるために第1の筐体部品2の規制部251、252と当接させる操作部材6の部分は、リブ640の一部として設けられる第2の部位642に限らず、リブ640とは別個に設けられた部分であってもよい。例えば、回転軸630の軸心Rxの位置を変更させるために第1の筐体部品2の規制部251、252と当接させる操作部材6の部分は、例えば、
図3に例示したような径外方向に変位する第2の部位642がないリブよりも径外方向となる位置に設けた柱状の部分であってもよい。また、操作部材6の基部600の一部を径外方向に拡張し、その拡張した部分が第1の筐体部品2の規制部251、252に相当する規制部と当接することで、回転軸630の軸心Rxの位置が変更されるような構成であってもよい。
【0044】
また、本発明に係る電子機器は、テープ状の被印刷媒体への印刷を行う印刷装置に限らず、タクトスイッチ等の筐体内部に配置されたスイッチに対するスイッチング操作を行うための操作部材を有するものであればよい。また、操作部材によるスイッチング操作は、電源のオン・オフ操作に限らず、他の操作であってもよい。従って、本発明に係る電子機器は、例えば、コンピュータ、通信機器、デジタルカメラ、電化製品、家電製品、カーナビゲーション装置などの多岐にわたる。
【0045】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
装置筐体と、
前記装置筐体の内部空間に配置されたスイッチと、
前記スイッチに対するスイッチング操作を行うスイッチ操作部と、前記装置筐体に設けられた貫通穴内に位置するボタン部と、回転軸とを有し、前記回転軸が、前記装置筐体に設けられた支持部により回転可能、かつ前記回転軸の軸心方向と直交する方向に移動可能に支持された操作部材と、を含み、
前記装置筐体と前記操作部材とは、前記ボタン部における前記軸心から最も遠い第1のボタン端部が前記貫通穴の外側であり、かつ前記貫通穴に近接する位置にある場合の前記軸心から前記第1のボタン端部までの第1の距離と、前記軸心から、前記貫通穴の筐体内部側の開口端における前記軸心から最も遠い第1の貫通穴端部までの第2の距離と、の差が、前記ボタン部が前記貫通穴内に位置する場合の前記第1の距離と前記第2の距離との差よりも小さくなるように、前記操作部材における前記スイッチ操作部、前記ボタン部、及び前記回転軸とは異なる部分が前記装置筐体に当接して前記支持部における前記回転軸の位置が変更されるように構成されている
ことを特徴とする電子機器。
[付記2]
前記装置筐体は、前記操作部材の前記ボタン部が前記貫通穴内に位置する場合の前記操作部材の前記部分の前記軸心周りの回転軌道よりも前記軸心側に延在する規制部を有し、前記操作部材の前記部分が前記規制部に当接することにより、前記支持部における前記回転軸の位置が変更される
ことを特徴とする付記1に記載の電子機器。
[付記3]
前記操作部材は、平板状の基部を有し、
前記回転軸は、前記基部における第1の位置に軸心方向が前記基部の主面の法線方向になる向きで設けられており、
前記ボタン部は、前記基部における前記回転軸の前記軸心を中心とする円の第1の径方向に延伸する面内にある第2の位置から円弧の接線方向に突出するように設けられており、
前記スイッチ操作部は、前記円の第2の径方向に延伸する面内にある第3の位置から円弧の接線方向に突出するように設けられており、
前記装置筐体に当接する前記部分は、前記基部の前記主面であって、前記回転軸の前記軸心からの距離が、前記円の前記第1の径方向における前記軸心から前記第2の位置までの距離よりも長い第4の位置に、前記主面の法線方向に突出するように設けられており、
前記装置筐体の前記規制部は、前記操作部材の前記部分を境として前記ボタン部とは反対側の位置で前記操作部材の前記基部の主面と対向して重なり、かつ前記回転軸の前記軸心からの距離が前記操作部材における前記軸心から前記第4の位置までの距離よりも短い部分を有する
ことを特徴とする付記2に記載の電子機器。
[付記4]
装置筐体内に配置されるスイッチに対するスイッチング操作を行うスイッチ操作部と、ボタン部と、回転軸とを有する操作部材を、前記装置筐体に設けられた、前記操作部材の前記回転軸を回転可能、かつ前記回転軸の軸心方向と直交する方向に移動可能に支持する支持部により前記回転軸が支持されるように、前記装置筐体に取り付けた後、
前記操作部材を前記回転軸周りで回転させて前記操作部材の前記ボタン部を前記装置筐体に形成された貫通穴内に挿入するときに、前記ボタン部における前記軸心から最も遠い第1のボタン端部が前記貫通穴の外側であり、かつ前記貫通穴に近接する位置にある場合の前記軸心から前記第1のボタン端部までの第1の距離と、前記軸心から、前記貫通穴の筐体内部側の開口端における前記軸心から最も遠い第1の貫通穴端部までの第2の距離と、の差が、前記ボタン部が前記貫通穴内に挿入された後の前記第1の距離と前記第2の距離との差よりも小さくなるように、前記操作部材における前記スイッチ操作部、前記ボタン部、及び前記回転軸とは異なる部分が前記装置筐体に当接して前記支持部における前記回転軸の位置が変更され、前記ボタン部が前記貫通穴内に挿入される
ことを特徴とする部材の取り付け方法。
【符号の説明】
【0046】
1 印刷装置
2、3、4 筐体部品
210 貫通穴
230 支持部
241、242 壁部
251、252 規制部
5 プリント回路板
501 タクトスイッチ
6 操作部材
600 基部
601、602 主面
603、605 側面
604 規制部
610 ボタン部
620 スイッチ操作部
630 回転軸
640 リブ
641、642、643 (リブ640の)部位