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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/16 20160101AFI20240514BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20240514BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20240514BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240514BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20240514BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240514BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20240514BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20240514BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240514BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240514BHJP
   B60W 20/20 20160101ALI20240514BHJP
   F16D 48/02 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B60W20/16
B60K6/442 ZHV
B60K6/54
B60L15/20 K
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/10
B60W10/02 900
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/20
F16D48/02 640Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023024797
(22)【出願日】2023-02-21
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】伊東 光
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178006(JP,A)
【文献】特開2016-175498(JP,A)
【文献】国際公開第2019/116589(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/16
B60K 6/442
B60K 6/54
B60W 10/02
B60W 10/06
B60W 10/08
B60W 20/20
B60L 15/20
B60L 50/16
B60L 50/60
B60L 58/10
F16D 48/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動輪を回転駆動させるための第1の駆動力を発生させる電動機と、
前記車両の駆動輪を回転駆動させるための第2の駆動力を発生させるエンジンと、
前記エンジンで発生した排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置と、
前記第2の駆動力を利用して電力を発生させる発電機と、
前記第2の駆動力が前記駆動輪に伝達するか否かを切り替えるクラッチと、
前記発電機が発生させた電力を蓄えるバッテリと、
前記排気ガス浄化装置を通過する前の前記排気ガスの第1圧力を測定する第1圧力センサと、
前記排気ガス浄化装置を通過した後の前記排気ガスの第2圧力を測定する第2圧力センサと、を備え、
前記第2の駆動力が前記駆動輪に伝達されない場合、前記第2の駆動力が前記駆動輪に伝達される場合よりも高い回転数で前記エンジンが動作し、かつ、前記発電機が前記第2の駆動力を利用して発生させた電力を用いて、前記電動機が前記第1の駆動力を発生させ
前記電動機は、前記第1圧力と前記第2圧力との圧力差が、煤の燃焼閾値よりも小さい予備閾値以上であって前記燃焼閾値未満である場合に、前記圧力差が当該予備閾値未満である場合に比べて、前記第2の駆動力と前記第1の駆動力とのうち、前記第1の駆動力により前記駆動輪を回転駆動させる割合を増加させ、
前記クラッチは、前記車両の走行中において前記第1圧力と前記第2圧力との圧力差が前記燃焼閾値以上である場合に、前記第2の駆動力が前記駆動輪に伝達されない状態へ切り替え、
前記エンジンは、前記車両の走行中において前記第1圧力と前記第2圧力との圧力差が前記燃焼閾値以上である場合に、前記第2の駆動力が前記駆動輪に伝達される状態よりもその回転数を増加させ、
前記発電機は、前記車両の走行中において前記第1圧力と前記第2圧力との圧力差が前記燃焼閾値以上である場合に、前記第2の駆動力を利用して発生させた当該電力を前記バッテリへ供給する、ことを特徴とする、
車両。
【請求項2】
前記クラッチは、前記発電機と前記電動機との間に設けられている、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記クラッチは、前記車両の停止中において前記第1圧力と前記第2圧力との圧力差が前記燃焼閾値以上である場合に、前記第2の駆動力が前記駆動輪に伝達されない状態へ切り替え、
前記エンジンは、前記車両の停止中において前記第1圧力と前記第2圧力との圧力差が前記燃焼閾値以上である場合に、前記第2の駆動力が前記駆動輪に伝達される状態よりもその回転数を増加させ、
前記発電機は、前記車両の停止中において前記第1圧力と前記第2圧力との圧力差が前記燃焼閾値以上である場合に、前記第2の駆動力を利用して発生させた当該電力を前記バッテリへ供給する、
請求項1又は2に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン及び電動機が発生させた駆動力により走行する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気ガスから煤(すす)を捕集する排気ガス浄化装置に煤が堆積したことを車両の走行中に検出した場合に、排気ガス浄化装置を再生する技術が知られている。例えば、特許文献1には、エンジンとモータージェネレーターとを接続するクラッチが断状態になることでエンジンとモータージェネレーターとが切断され、且つ車両がモータージェネレーターの駆動力で走行するモーター単独走行状態であるときに、エンジンを燃焼させるとともにリターダーを作動させることが記載されている。これにより、エンジンを燃焼させるとともにリターダーを作動させてエンジンに負荷をかけることにより、排気ガス浄化装置に流入する排気の温度を上昇させて排気ガス浄化装置を再生することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-178006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、排気ガス浄化装置を再生する間、エンジンが発生させた駆動力が車両の走行に利用されないため、車両の燃費が悪化するという問題があった。
【0005】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、車両の走行中に排気ガス浄化装置を再生する場合に、車両の燃費が悪化することを抑制することができる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の車両は、車両の駆動輪を回転駆動させるための第1の駆動力を発生させる電動機と、前記車両の駆動輪を回転駆動させるための第2の駆動力を発生させるエンジンと、前記エンジンで発生した排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置と、前記第2の駆動力を利用して電力を発生させる発電機と、前記第2の駆動力が前記駆動輪に伝達するか否かを切り替えるクラッチと、を有し、前記第2の駆動力が前記駆動輪に伝達されない場合、前記第2の駆動力が前記駆動輪に伝達される場合よりも高い回転数で前記エンジンが動作し、かつ、前記発電機が前記第2の駆動力を利用して発生させた電力を用いて、前記電動機が前記第1の駆動力を発生させることを特徴とする。
【0007】
前記車両は、前記排気ガス浄化装置を通過する前の前記排気ガスの第1圧力を測定する第1圧力センサと、前記排気ガス浄化装置を通過した後の前記排気ガスの第2圧力を測定する第2圧力センサと、をさらに備え、前記クラッチは、前記車両の走行中において前記第1圧力と前記第2圧力との圧力差が煤の燃焼閾値以上である場合に、前記第2の駆動力が前記駆動輪に伝達されない状態へ切り替えてもよい。
【0008】
前記電動機は、前記第1圧力と前記第2圧力との前記圧力差が、前記燃焼閾値よりも小さい予備閾値以上であって前記燃焼閾値未満である場合に、前記圧力差が当該予備閾値未満である場合に比べて、前記第2の駆動力と前記第1の駆動力とのうち、前記第1の駆動力により前記駆動輪を回転駆動させる割合を増加させてもよい。前記クラッチは、前記発電機と前記電動機との間に設けられていてもよい。
【0009】
前記車両は、前記発電機が発生させた電力を蓄えるバッテリをさらに備え、前記排気ガス浄化装置を通過する前の前記排気ガスの第1圧力を測定する第1圧力センサと、前記排気ガス浄化装置を通過した後の前記排気ガスの第2圧力を測定する第2圧力センサと、をさらに備え、前記クラッチは、前記車両の停止中において前記第1圧力と前記第2圧力との圧力差が燃焼閾値以上である場合に、前記第2の駆動力が前記駆動輪に伝達されない状態へ切り替え、前記エンジンは、前記車両の停止中において前記第1圧力と前記第2圧力との圧力差が燃焼閾値以上である場合に、前記第2の駆動力が前記駆動輪に伝達される状態よりもその回転数を増加させ、前記発電機は、前記車両の停止中において前記第1圧力と前記第2圧力との圧力差が燃焼閾値以上である場合に、前記第2の駆動力を利用して発生させた当該電力を前記バッテリへ供給してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両の走行中に排気ガス浄化装置を再生する場合に、車両の燃費が悪化することを抑制するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の車両の構成を示す。
図2】車両の要部の構成を示す。
図3】第1圧力と第2圧力との圧力差の時間変化を示す。
図4】バッテリの充電状態の時間変化を示す。
図5】車両制御装置による排気ガス浄化装置の再生の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[車両の概要]
図1は、本実施形態の車両100の構成を示す。車両100は、エンジン1、排気ガス浄化装置2、後処理装置3、発電機4、電動機5、トランスミッション6、差動装置7、複数の駆動輪8、第1クラッチ9、第2クラッチ10、第1圧力センサ11、第2圧力センサ12、バッテリ13及び車両制御装置14を備える。図1の例では、車両100は、エンジン1及び電動機5が駆動輪8を回転駆動させることにより走行する。車内へ吸入された外気は、エンジン1、排気ガス浄化装置2、後処理装置3の順に通過し、外部へ排出される。
【0013】
エンジン1は、車両100の駆動輪8を回転駆動させるためのエンジン駆動力(第2の駆動力に相当)を発生させる。排気ガス浄化装置2は、エンジン1で発生した排気ガスを浄化する。例えば、排気ガス浄化装置2は、例えば、排気ガス中の煤を捕集するDPF(Diesel particulate filter,ディーゼル微粒子捕集フィルタ)と、DPFの前段に設けられたDOC(Diesel Oxidation Catalyst, ディーゼル酸化触媒)とを備える。また、排気ガス浄化装置2は、SCR(Selective Catalytic Reduction, 選択触媒還元)触媒を備えるものであってもよい。
【0014】
後処理装置3は、例えば、SCR触媒を備える。後処理装置3は、排気ガス中の窒素酸化物を低減させる。
【0015】
発電機4は、エンジン1が発生させたエンジン駆動力を利用して電力を発生させる。発電機4は、例えば、エンジン1のフライホイール又はその周辺に設けられる。発電機4は、電動機としても動作してもよい。
【0016】
電動機5は、車両100の駆動輪8を回転駆動させるための電動駆動力(第1の駆動力に相当)を発生させる。電動機5は、エンジン1が発生させたエンジン駆動力をアシストする。電動機5は、発生させた電動駆動力のみによって車両100を走行させることも可能である。電動機5は、発電機としても動作してもよい。例えば、電動機5は、制動時に回生ブレーキとして動作し、電力を発生させてもよい。
【0017】
トランスミッション6は、ギヤの組み合わせを変更することにより、エンジン1が発生させたトルクを増大させて差動装置7及び駆動輪8に伝達させる。差動装置7は、車両100の旋回時に外側の駆動輪8を比較的早く回転させ、内側の駆動輪8を比較的ゆっくり回転させる。
【0018】
第1クラッチ9は、発電機4と電動機5との間に設けられている。第1クラッチ9は、エンジン1が発生させたエンジン駆動力が車両100の駆動輪8に伝達されるオン状態と、このエンジン駆動力が駆動輪8に伝達されないオフ状態とを切り替える。第2クラッチ10は、電動機5が発生させた電動駆動力及びエンジン駆動力が車両100の駆動輪8に伝達されるオン状態と、電動駆動力及びエンジン駆動力が駆動輪8に伝達されないオフ状態とを切り替える。
【0019】
第1圧力センサ11は、排気ガス浄化装置2を通過する前の排気ガスの第1圧力を測定する。第1圧力センサ11は、測定した第1圧力を車両制御装置14へ入力する。第2圧力センサ12は、排気ガス浄化装置2を通過した後の排気ガスの第2圧力を測定する。第2圧力センサ12は、測定した第2圧力を車両制御装置14へ入力する。
【0020】
バッテリ13は、発電機4が発生させた電力を蓄える。バッテリ13は、蓄えた電力を電動機5へ供給する。車両制御装置14は、プロセッサを有する。車両制御装置14は、例えば、HEV(Hybrid Electric Vehicle)コントローラを有する。車両制御装置14は、例えば、発電機4による発電処理と、電動機5によるエンジン1のアシスト処理と、を実行する。
【0021】
排気ガス浄化装置2は、煤が堆積することに起因して、排気ガスの浄化性能が徐々に低下する。車両制御装置14は、煤が堆積した排気ガス浄化装置2を車両100の走行中に再生することを目的として、まず、エンジン駆動力が駆動輪8に伝達されないオフ状態へ第1クラッチ9を切り替える。車両制御装置14は、第1クラッチ9のオフ状態において発電機4が発生させた電力を電動機5に供給し、電動機5が発生させた電動駆動力により車両100を走行させる。このとき、車両制御装置14は、エンジン駆動力が駆動輪8に伝達される第1クラッチ9のオン状態に比べてエンジン1の回転数を増加させることにより、排気ガスの温度を上昇させる。
【0022】
このようにして、車両制御装置14は、排気ガスの温度を上昇させることにより、排気ガス浄化装置2が捕集した煤を燃焼させることができる。このため、車両制御装置14は、排気ガス浄化装置2に起因する二酸化炭素又は窒素酸化物等の除去性能が低下することを抑制することができる。車両制御装置14は、排気ガスの温度を上昇させるために回転数を増加させたエンジン1のエンジン駆動力を利用して発電機4に電力を発生させ、この電力を電動機5により再利用するので、排気ガス浄化装置2が捕集した煤を燃焼させる際に車両100の燃費が悪化することを抑制することができる。
【0023】
[車両100の要部の構成]
図2は、車両100の要部の構成を示す。車両100は、第1圧力センサ11、第2圧力センサ12、燃料噴射装置21、第1クラッチ9、発電機4、電動機5及び車両制御装置14を備える。車両制御装置14は、記憶部141及び制御部142を備える。
【0024】
燃料噴射装置21は、エンジン1の筒内へ燃料を噴射する。燃料噴射装置21は、制御部142が指示した噴射量の燃料をエンジン1の筒内へ噴射する。記憶部141は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等により構成される。記憶部141は、制御部142を機能させるための各種プログラムや各種データを記憶する。
【0025】
制御部142は、例えば、車両制御装置14に搭載されたプロセッサである。制御部142は、記憶部141に記憶されたプログラムを実行することにより、各種の機能を実行する。制御部142は、第1圧力センサ11が測定した第1圧力を示す情報を取得する。制御部142は、第2圧力センサ12が測定した第2圧力を示す情報を取得する。制御部142は、取得した第1圧力と第2圧力との圧力差を算出する。この圧力差は、排気ガス浄化装置2のフィルタに煤が堆積すると排気ガスが排気ガス浄化装置2を通過しにくくなることに起因するものである。この圧力差は、煤の堆積量が大きくなるほど、大きくなる。
【0026】
詳細については後述するが、制御部142は、算出した圧力差に基づいて、排気ガス浄化装置2に堆積した煤を燃焼させる。例えば、制御部142は、圧力差が閾値以上である場合、燃料噴射装置21による燃料の噴射量を増加させることにより、エンジン回転数を増加させ、排気ガス浄化装置2に堆積した煤を燃焼させる。以下、排気ガス浄化装置2の再生処理を再生時の車両100の状況ごとにそれぞれ説明する。
【0027】
[排気ガス浄化装置2の再生を実施しない場合]
制御部142は、取得した第1圧力と第2圧力との圧力差が燃焼閾値未満又は準備閾値未満である場合、排気ガス浄化装置2に堆積した煤を燃焼させない。燃焼閾値は、例えば、排気ガス浄化装置2に捕集された煤を燃焼させることを要する期間に対応する値として定められる。準備閾値は、燃焼閾値より小さい値を示す。制御部142は、取得した第1圧力と第2圧力との圧力差が燃焼閾値未満又は準備閾値未満である場合、エンジン駆動力が駆動輪8に伝達されるオン状態に第1クラッチ9を切り替え、電動駆動力と、エンジン駆動力との両方により駆動輪8を回転駆動させる。制御部142は、電動機5が発生させた電動駆動力とエンジン駆動力とが車両100の駆動輪8に伝達されるオン状態で第2クラッチ10を動作させる。
【0028】
[排気ガス浄化装置2の再生を実施する場合]
制御部142は、第1圧力と第2圧力との圧力差が燃焼閾値以上であると車両100の走行中又は停止中に判定した場合、運転者の運転操作に応じて、車両100のアイドリング中に排気ガス浄化装置2に堆積した煤を燃焼させるか、車両100の走行中に排気ガス浄化装置2に堆積した煤を燃焼させる。まず、車両100のアイドリング中に排気ガス浄化装置2に堆積した煤を制御部142が燃焼させる場合の例について説明する。
【0029】
[アイドリング中に排気ガス浄化装置2の再生を実施する場合]
制御部142は、アイドリング中に排気ガス浄化装置2に堆積した煤を燃焼させる場合、エンジン駆動力が駆動輪8に伝達されないオフ状態へ第1クラッチ9を切り替え、エンジン駆動力が駆動輪8に伝達される第1クラッチ9のオン状態よりもエンジン1の回転数を増加させる。制御部142は、エンジン1の回転数の増加により、エンジン1からの排気ガスの温度を上昇させる。このとき、制御部142は、エンジン駆動力を利用して、発電機4により電力を発生させ、この電力をバッテリ13に供給する。制御部142は、変換器を介して家庭用電気設備又は蓄電設備等の外部装置に接続されている場合には、発電機4により電力を発生させた電力をバッテリ13に供給する代わりに、この電力を外部装置に供給してもよい。
【0030】
[走行中に排気ガス浄化装置2の再生を実施する場合]
制御部142は、車両100の走行中に排気ガス浄化装置2に堆積した煤を燃焼させる場合、エンジン駆動力が駆動輪8に伝達されないオフ状態へ第1クラッチ9を切り替え、電動駆動力により車両100を走行させる。制御部142は、車両100が電動駆動力により走行している間、エンジン駆動力が駆動輪8に伝達される第1クラッチ9のオン状態よりもエンジン1の回転数を増加させることにより、エンジン1からの排気ガスの温度を上昇させる。制御部142は、エンジン駆動力を利用して発電機4により電力を発生させ、この電力を電動機5へ供給する。このとき、制御部142は、電動機5が発生させた電動駆動力が駆動輪8に伝達されるオン状態で第2クラッチ10を動作させる。
【0031】
[バッテリ残量を低下させた後に排気ガス浄化装置2の再生を実施する場合]
制御部142は、排気ガス浄化装置2が捕集した煤を燃焼させる間、エンジン回転数を増加させるので、発電機4が発生させる電力の量も増加する。制御部142は、この電力をバッテリ13に蓄えるための空き容量を確保するため、排気ガス浄化装置2が捕集した煤を燃焼させる前にバッテリ13に蓄えられた電力を予め消費してもよい。
【0032】
制御部142は、車両100の走行中において第1圧力と第2圧力との圧力差が、予備閾値以上であって燃焼閾値未満であると判定した場合に、この圧力差が予備閾値未満である場合に比べて、エンジン駆動力と電動駆動力とのうち、電動駆動力の成分により駆動輪8を回転駆動させる割合を増加させる。予備閾値は、燃焼閾値よりも小さい。このとき、制御部142は、エンジン駆動力が駆動輪8へ伝達されるオン状態へ第1クラッチ9を切り替え、エンジン駆動力及び電動駆動力が駆動輪8へ伝達されるオン状態で第2クラッチ10を動作させる。このようにして、制御部142は、電動機5による電力消費量を増加させることができる。
【0033】
その後、排気ガス浄化装置2が煤を引き続き捕集することに起因して、第1圧力と第2圧力との圧力差は徐々に増大する。図3は、第1圧力と第2圧力との圧力差の時間変化を示す。図3の縦軸は、第1圧力と第2圧力との圧力差を示す。図3の横軸は、排気ガス浄化装置2の前回の再生処理時からの車両運転時間を示す。図3に示すように、車両運転時間が増加するにつれて、第1圧力と第2圧力との圧力差は単調に増加する。図3の例では、車両運転時間がT1であるとき、第1圧力と第2圧力との圧力差は、予備閾値と同じ値となる。車両運転時間がT2であるとき、第1圧力と第2圧力との圧力差は、燃焼閾値と同じ値となる。
【0034】
制御部142は、車両100の走行中において第1圧力と第2圧力との圧力差が燃焼閾値以上であると判定した場合に、エンジン駆動力が駆動輪8に伝達されないオフ状態へ第1クラッチ9を切り替える。制御部142は、第1クラッチ9のオフ状態において電動駆動力により車両100を走行させる。このとき、制御部142は、上述のとおり、エンジン1の回転数を増加させることにより、排気ガス浄化装置2が捕集した煤を燃焼させる。
【0035】
図4は、バッテリ13の残量の時間変化を示す。図4の縦軸は、バッテリ13の残量を示す。図4の横軸は、車両運転時間を示す。図4の例では、第1圧力と第2圧力との圧力差が予備閾値と同じになる車両運転時間T1(図3参照)のバッテリ残量はE1となる。このとき、制御部142は、駆動輪8を回転駆動させる駆動力の成分のうち、電動駆動力の成分をエンジン駆動力の成分よりも大きくすることにより、バッテリ残量を徐々に低下させる。
【0036】
第1圧力と第2圧力との圧力差が燃焼閾値と同じになる車両運転時間T2において、バッテリ残量は、E1より低いE2となる。このとき、制御部142は、第1クラッチ9のオン状態に比べてエンジン1の回転数を増加させることにより、発電機4による発電量を増加させる。図4の例では、増加後の発電量は、電動機5による電力の消費量よりも大きい。このため、制御部142がエンジン1の回転数を増加させている間、バッテリ残量は徐々に増加する。
【0037】
[車両制御装置14による排気ガス浄化装置2の再生の処理手順]
図5は、車両制御装置14による排気ガス浄化装置2の再生の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、例えば、車両100の走行中に開始される。まず、制御部142は、排気ガス浄化装置2を通過する前の排気ガスの第1圧力を示す情報を第1圧力センサ11から取得する。制御部142は、排気ガス浄化装置2を通過した後の排気ガスの第2圧力を示す情報を第2圧力センサ12から取得する(S101)。
【0038】
制御部142は、第1圧力と第2圧力との圧力差を算出する。制御部142は、算出した圧力差が予備閾値未満であるか否かを判定する(S102)。制御部142は、圧力差が予備閾値以上であると判定した場合に(S102のNO)、圧力差が燃焼閾値以上であるか否かを判定する(S103)。制御部142は、圧力差が燃焼閾値以上である場合に(S103のYES)、エンジン駆動力が駆動輪8に伝達されないオフ状態へ第1クラッチ9を切り替え(S104)、電動駆動力により車両100を走行させる(S105)。
【0039】
制御部142は、エンジン駆動力が駆動輪8に伝達される第1クラッチ9のオン状態と比較して、エンジンの回転数を増加させることにより(S106)、エンジン1からの排気ガスの温度を上昇させて排気ガス浄化装置2が捕集した煤を燃焼させる。制御部142は、エンジン1の回転を利用して発電機4により電力を発生させる(S107)。制御部142は、車両100の走行が終了したか否かを判定する(S108)。制御部142は、車両100の走行が終了したと判定した場合(S108のYES)、処理を終了する。
【0040】
制御部142は、S102の判定において圧力差が予備閾値未満であると判定した場合に(S102のYES)、S108の判定に移る。制御部142は、S103の判定において圧力差が燃焼閾値未満であると判定した場合に(S103のNO)、圧力差が予備閾値未満である場合に比べて、駆動輪8を回転駆動させるエンジン駆動力の成分と電動駆動力の成分とのうち、電動駆動力の成分により駆動輪8を回転駆動させる割合を増加させ(S109)、S108の判定に移る。制御部142は、S108の判定において車両100の走行が終了していないと判定した場合(S108のNO)、S101の処理に戻る。
【0041】
[本実施形態の車両制御装置14による効果]
制御部142は、排気ガスの温度を上昇させることにより、排気ガス浄化装置2が捕集した煤を燃焼させることができる。このため、制御部142は、排気ガス浄化装置2に起因する二酸化炭素又は窒素酸化物等の除去性能が低下することを抑制することができる。制御部142は、排気ガスの温度を上昇させるために回転数を増加させたエンジン1のエンジン駆動力を利用して発電機4に電力を発生させ、この電力を電動機5により再利用するので、排気ガス浄化装置2が捕集した煤を燃焼させる際に車両100の燃費が悪化することを抑制することができる。
【0042】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0043】
1 エンジン
2 排気ガス浄化装置
3 後処理装置
4 発電機
5 電動機
6 トランスミッション
7 差動装置
8 駆動輪
9 第1クラッチ
10 第2クラッチ
11 第1圧力センサ
12 第2圧力センサ
13 バッテリ
14 車両制御装置
21 燃料噴射装置
100 車両
141 記憶部
142 制御部
【要約】
【課題】車両100の走行中に排気ガス浄化装置を再生する場合に、車両100の燃費が悪化することを抑制する。
【解決手段】車両100の駆動輪を回転駆動させるための第1の駆動力を発生させる電動機5と、車両100の駆動輪を回転駆動させるための第2の駆動力を発生させるエンジンと、エンジンで発生した排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置と、第2の駆動力を利用して電力を発生させる発電機4と、第2の駆動力が駆動輪に伝達するか否かを切り替えるクラッチと、を有し、第2の駆動力が駆動輪に伝達されない場合、第2の駆動力が駆動輪に伝達される場合よりも高い回転数でエンジンが動作し、かつ、発電機4が第2の駆動力を利用して発生させた電力を用いて、電動機5が第1の駆動力を発生させることを特徴とする。
【選択図】図2

図1
図2
図3
図4
図5