IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両構造 図1
  • 特許-車両構造 図2
  • 特許-車両構造 図3
  • 特許-車両構造 図4
  • 特許-車両構造 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/02 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
B62D21/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023506836
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2022003903
(87)【国際公開番号】W WO2022196146
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2021044630
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】秋本 康雄
(72)【発明者】
【氏名】末廣 渉
(72)【発明者】
【氏名】篠永 悠太
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-73153(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0018602(KR,A)
【文献】特開平8-268326(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0075028(KR,A)
【文献】特開平8-197970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる一対のサイドフレームと、
前記一対のサイドフレームの間に位置し、車両前後方向に延びるプロペラシャフトと、
前記プロペラシャフトの下方を通り、前記一対のサイドフレームを繋ぐように車幅方向に延びるクロスメンバと、を有し、
前記クロスメンバは、上面および下面を含み、
前記上面の中央部が車幅方向に延び、
前記上面の車幅方向両端部が車幅方向外側に向かうにつれて上方に変位するように傾斜し、
前記下面は車幅方向に直線状に延び前記一対のサイドフレームの下側稜線に接続されており、
前記プロペラシャフトは、前記クロスメンバに車幅方向に間隔をおいて設けられた一対のブラケット間で支持され、
前記クロスメンバの前記一対のブラケットの間に位置する箇所に前記クロスメンバの前記一対のブラケットの間に位置しない箇所よりも変形しやすい変形誘発部が設けられている、
ことを特徴とする車両構造。
【請求項3】
前記一対のサイドフレームの間に燃料タンクが設けられ、
前記燃料タンクは、前記プロペラシャフトの車幅方向一方側で前記プロペラシャフトに隣り合って設けられる、
ことを特徴とする請求項1記載の車両構造。
【請求項4】
前記燃料タンクは、前記クロスメンバの車両前後方向一方側に設けられ、
前記クロスメンバの車幅方向の両端部は、車両前後方向に拡幅されており、車両前後方向で前記燃料タンク側の方が反対側に比べ拡幅量が大きく設定される
ことを特徴とする請求項3記載の車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーム車両における車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
キャブボディや荷箱をシャシフレームで支持するフレーム車両において、シャシフレームは、車幅方向に間隔をおいて車両前後方向に延在する一対のサイドフレームと、車両の前後方向に間隔をおいた複数箇所で車幅方向に延在し一対のサイドフレームを連結するクロスメンバと、を含む。
【0003】
特許文献1には、このようなフレーム車両において、第5クロスメンバ15の中央部を上方に湾曲させ、湾曲させた中央部にブラケット68を設け、このブラケット68によりプロペラシャフト37を第5クロスメンバ15の下方に支持する車両構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第11/101906号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような車両構造において、車両の側面衝突時の衝突荷重が一方のサイドフレームから上記クロスメンバに入力すると、クロスメンバの中央部が上方に湾曲されているため、上記クロスメンバの中央部が上方に変形する。このとき、上記クロスメンバに支持されたプロペラシャフトは、上記クロスメンバの中央部の上方への変形に伴い上方へ移動する。このような場合、キャブボディや荷箱の底面にプロペラシャフトが干渉し、変形させる虞がある。
【0006】
また、上記クロスメンバは、その上面および下面の中央部が上下方向に変位した形状であることから、車体のねじれ剛性を確保し車両の操縦安定性を高める上で改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、なされたものであり、側面衝突時のキャブボディや荷箱などの車体構成部品の保護と、車両の操縦安定性の確保と、の双方を実現する上で有利な車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、車両前後方向に延びる一対のサイドフレームと、前記一対のサイドフレームの間に位置し、車両前後方向に延びるプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトの下方を通り、前記一対のサイドフレームを繋ぐように車幅方向に延びるクロスメンバと、を有し、前記クロスメンバは、上面および下面を含み、前記上面の中央部が車幅方向に延び、前記上面の車幅方向両端部が車幅方向外側に向かうにつれて上方に変位するように傾斜し、前記下面は車幅方向に直線状に延び前記一対のサイドフレームの下側稜線に接続されていることを特徴とする。
本発明の一実施の形態は、前記プロペラシャフトは、前記クロスメンバに車幅方向に間隔をおいて設けられた一対のブラケット間で支持され、前記クロスメンバの前記一対のブラケットの間に位置する箇所に前記クロスメンバの他の箇所よりも変形しやすい変形誘発部が設けられていることを特徴とする。
本発明の一実施の形態は、前記一対のサイドフレームの間に燃料タンクが設けられ、前記燃料タンクは、前記プロペラシャフトの車幅方向一方側で前記プロペラシャフトに隣り合って設けられることを特徴とする。
本発明の一実施の形態は、前記燃料タンクは、前記クロスメンバの車両前後方向一方側に設けられ、前記クロスメンバの車幅方向の両端部は、車両前後方向に拡幅されており、車両前後方向で前記燃料タンク側の方が反対側に比べ拡幅量が大きく設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施の形態によれば、車両の側面衝突時の衝突荷重が一方のサイドフレームからクロスメンバに入力すると、その衝突荷重が上面の傾斜に沿って上面の中央部に伝達されることにより、クロスメンバの車幅方向中央部が下方に変形しやすくなる。
これにより、クロスメンバの上方を通るプロペラシャフトが上方に変位することが抑制され、プロペラシャフトは、その上方に位置する車体構成部品であるキャブボディや荷箱の底面に干渉することが抑制されるため、車体構成部品の保護を図る上で有利となる。
また、クロスメンバの下面は、剛性の高い一対のサイドフレームの下側稜線に接続され車幅方向に直線状に延びていることから、クロスメンバの下面の剛性が確保され、車体のねじれ剛性を高める上で有利となり、車両の操縦安定性を高める上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、車両の側面衝突時の衝突荷重が一方のサイドフレームからクロスメンバに入力すると、その衝突荷重により変形誘発部が変形することにより、クロスメンバの一対のブラケットの間に位置する箇所が下方に変形しやすくなる。 そのため、一対のブラケットの車幅方向外側への移動が抑制され、プロペラシャフトの車幅方向外側への移動が抑制されることから、プロペラシャフトの車幅方向に隣り合って配置された車両搭載部品に対するプロペラシャフトの干渉が抑制され、車両搭載部品の保護を図る上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、プロペラシャフトが車幅方向に隣り合って設けられた燃料タンクに干渉することが抑制され、燃料タンクの保護を図る上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、燃料タンクが配置された側の拡幅部と一対のサイドフレームとが接合された箇所周辺の強度剛性は、反対側の拡幅部と一対のサイドフレームとが接合された箇所周辺の強度剛性に比較して低いものとなっているため、車両の側面衝突時に一方のサイドフレームのうち、車両前後方向においてクロスメンバを挟んで燃料タンクよりも前方または後方に位置する部分に衝突荷重が入力した際は、クロスメンバが車両前後方向に変形することが抑制され、車両前後方向においてクロスメンバよりも燃料タンク側に位置する部分に衝突荷重が入力した際には、一方のサイドフレームが車幅方向内側に変形することが抑制される。
したがって、車両の側面衝突時に一方のサイドフレームに衝突荷重が入力した際に、クロスメンバやサイドフレームが燃料タンクに干渉することが抑制され、燃料タンクの保護を図る上でより一層有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る車両構造が適用された車両の構成を示す斜視図である。
図2図1のA-A線矢視図である。
図3図2の車幅方向中央部の拡大図である。
図4】第3クロスメンバの周辺部分を上方から見た平面図である。
図5】第3クロスメンバの周辺部分を下方から見た下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る車両構造について図面を参照して説明する。
なお、以下の図面において、符号FRは車両前方、符号UPは車両上方、符号HLは車幅方向を示す。
図1に示すように、本発明の実施の形態では、車両10が、車体構成部品として乗員が搭乗する車室を含む不図示のキャブボディをシャシフレーム12で支持するフレーム車両10である場合について説明する。
なお、フレーム車両10は、車体構成部品として、キャブボディと、キャブボディの後部に配置された荷箱と、をシャシフレーム12で支持するピックアップトラック型の車両を含む。
本実施の形態では、フレーム車両10はピックアップトラックであり、車両前部に不図示のエンジンおよびトランスミッションと前輪14とが配置され、車両後部にディファレンシャルギア18と、駆動輪をなす後輪16とが配置されている。
【0012】
シャシフレーム12は、一対のサイドフレーム20と、複数のクロスメンバ22、24、26、28、30を含んで構成されている。
一対のサイドフレーム20は、車幅方向に間隔をおいて車両前後方向に延在している。一対のサイドフレーム20は、サイドフレーム20の前端から後方に延びる前側部20Aと、前側部20Aの後端から後方かつ下方に傾斜する前側傾斜部20Bと、前側傾斜部20Bの後端から後方に延びる中央部20Cと、中央部20Cの後端から後方かつ上方に延びる後側傾斜部20Dと、後側傾斜部20Dの後端から後方に延びる後側部20Eと、を備える。
一対のサイドフレーム20は、上記キャブボディ及び荷箱を複数のマウント32を介して下方から支持している。
【0013】
複数のクロスメンバは、車両前後方向に間隔をおいた複数箇所で車幅方向に延在し一対のサイドフレーム20を連結している。本実施の形態では、複数のクロスメンバは、第1、第2、第3、第4、第5クロスメンバ22、24、26、28、30の5つのクロスメンバを含んで構成され、それらの順番で前方から後方に並べられて配置されている。
本実施の形態では、第1クロスメンバ22が一対のサイドフレーム20の前側部20Aに接続され、第2、第3クロスメンバ24、26が一対のサイドフレーム20の中央部20Cに接続され、第4クロスメンバ28が一対のサイドフレーム20の後側傾斜部20Dに接続され、第5クロスメンバ30が一対のサイドフレーム20の後側部20Eに接続されている。
また、一対のサイドフレーム20の前端には車幅方向に延在するバンパビーム34が連結され、バンパビーム34には不図示のバンパフェイシャが取り付けられる。
【0014】
シャシフレーム12には、プロペラシャフト36、燃料タンク38、排気管40(図4参照)が取り付けられている。
プロペラシャフト36は、トランスミッションとディファレンシャルギア18とを連結し、エンジンの駆動力をディファレンシャルギア18を介して後輪16に伝達するものである。
本実施の形態では、トランスミッションが第2クロスメンバ24の上方に位置し、ディファレンシャルギア18が第4クロスメンバ28の後方に位置している。プロペラシャフト36は、第3クロスメンバ26の上方と第4クロスメンバ28の下方を通るように車両前後方向に延在している。すなわち、第3クロスメンバ26は、プロペラシャフト36の下方を通り車幅方向に延びており、特許請求の範囲の「クロスメンバ」にあたる。
本実施の形態では、プロペラシャフト36は、後述する第3クロスメンバ26の上面26Aの延在方向の中央部に、車幅方向に間隔をおいて設けられた一対のブラケット44によって第3クロスメンバ26の車幅方向の中央部の上方で支持されている。
【0015】
図2図4図5に示すように、燃料タンク38は車両搭載部品であって、合成樹脂製あるいは板金製であり、細長状を呈する。燃料タンク38は、長手方向を車両前後方向に合わせて一対のサイドフレーム20の間に設けられ、より詳細には、プロペラシャフト36とサイドフレーム20との間に設けられている。
言い換えると、燃料タンク38はプロペラシャフト36の車幅方向の一方側でプロペラシャフト36と隣り合っており、プロペラシャフト36に沿って車両前後方向に延在している。
本実施の形態では、燃料タンク38は、第3クロスメンバ26の後方側に設けられている。詳細には、燃料タンク38は、第3クロスメンバ26の後方から第4クロスメンバ28の後方まで延びている。
図1図2に示すように、燃料タンク38の前端部3802は、一方のサイドフレーム20から車幅方向内側に延在する片持ちの支持ブラケット46に、不図示のタンクバンドによって上下から挟まれて取り付けられている。
また、燃料タンク38の後端部3804は、第4クロスメンバ28に取り付けられている。
【0016】
排気管40は、エンジンからの排気が通る管であり、図4に示すように車両搭載部品であって、一対のサイドフレーム20の間で第3クロスメンバ26の上方を通り車両前後方向に延在している。
より詳細には、排気管40は、プロペラシャフト36を挟んで燃料タンク38と反対側のプロペラシャフト36の車幅方向外側でプロペラシャフト36とサイドフレーム20との間に設けられ、プロペラシャフト36と隣り合いプロペラシャフト36に沿って車両前後方向に延在している。
【0017】
次に第3クロスメンバ26について説明する。
図2図4図5に示すように、第3クロスメンバ26は、上方を向いた上面26Aと、上面26Aの前端部から下方に延在する前面26Bと、上面26Aの後端部から下方に延在する後面26Cと、前面26Bおよび後面26Cの下端を接続する下面26Dと、を有し、断面矩形の閉断面構造を呈する。それら上面26A、前面26B、後面26C、下面26Dは車幅方向に延在している。
図2に示すように、上面26Aは、中央上面部2602と、一対の傾斜面部2604とを有している。
中央上面部2602は、第3クロスメンバ26の車幅方向の両端部を除いた車幅方向中央部の上面26Aに設けられ、車幅方向に直線状に延在している。
一対の傾斜面部2604は、上面26Aの車幅方向の両端部に設けられ、中央上面部2602の延在方向の両端に接続されている。
一対の傾斜面部2604は、中央上面部2602の延在方向の両端から車幅方向外側に向かうにつれて次第に上方に変位するように傾斜して設けられ、一対のサイドフレーム20の車幅方向内側面の上部に接続されている。
図2図5に示すように、下面26Dは、中央上面部2602に平行して車幅方向に直線状に延在し、車幅方向の両端は一対のサイドフレーム20の下側稜線2002に接続されている。
【0018】
また、図4図5に示すように、平面視した状態で、第3クロスメンバ26の車幅方向の両端部に、それぞれ前方に拡幅された前部拡幅部2610と、後方に拡幅された後部拡幅部2612とが設けられている。
本実施の形態では、前部拡幅部2610と後部拡幅部2612は、一対の傾斜面部2604が設けられる範囲にわたって設けられている。
詳細には、前部拡幅部2610は、上面26A、前面26B、下面26Dで形成され、第3クロスメンバ26の車幅方向中央部の両端から車幅方向外側に向かうにつれて前方へ広がり、一対のサイドフレーム20の車幅方向内側面に接続される。また、後部拡幅部2612は、上面26A、後面26C、下面26Dで形成され、第3クロスメンバ26の車幅方向中央部の両端から車幅方向外側に向かうにつれて後方へ広がり、一対のサイドフレーム20の車幅方向内側面に接続される。
燃料タンク38側に位置する後部拡幅部2612は、前部拡幅部2610に比べ車両前後方向における拡幅量が大きく設定されている。すなわち、後部拡幅部2612は、前部拡幅部2610に比べ第3クロスメンバ26の車幅方向中央部に対する車両前後方向への傾斜が大きく設定されている。
【0019】
図3に示すように、第3クロスメンバ26の一対のブラケット44の間に位置する箇所に、第3クロスメンバ26の他の箇所よりも変形しやすい変形誘発部48が設けられている。変形誘発部48は、第3クロスメンバ26の他の箇所よりも剛性を小さくしたり、凹凸を設けたりすることで形成すればよい。
本実施の形態では、変形誘発部48は、中央上面部2602の一対のブラケット44の間に位置する箇所を下方に凹ませることで形成されている。すなわち、中央上面部2602の一対のブラケット44の間に位置する箇所は、中央上面部2602の一対のブラケット44の車幅方向外側に位置する箇所よりも高さが低くなっている。
なお、変形誘発部48は、第3クロスメンバ26の一対のブラケット44の間に位置する箇所に孔をあける等で形成してもよい。また、変形誘発部48は、第3クロスメンバ26に側面衝突により大荷重が入力された際に、第3クロスメンバ26が変形誘発部48を設けた個所で下方に変形するように形成するとよい。
【0020】
次に作用効果について説明する。
本実施の形態によれば、図2に示すように、第3クロスメンバ26は、上面26Aの中央部が車幅方向に延び、上面26Aの車幅方向両端部が車幅方向外側に向かうにつれて上方に変位する傾斜で設けられ、下面26Dは車幅方向に直線状に延び一対のサイドフレーム20の下側稜線2002に接続されている。
そのため、車両10の側面衝突時の衝突荷重が一方のサイドフレーム20から第3クロスメンバ26に入力すると、その衝突荷重が上面26Aの傾斜に沿って上面26Aの中央部に伝達されることにより、第3クロスメンバ26の車幅方向中央部が下方に変形しやすくなる。
これにより、第3クロスメンバ26の上方を通るプロペラシャフト36が上方に変位することが抑制され、プロペラシャフト36は、その上方に位置する車体構成部品であるキャブボディや荷箱の底面に干渉することが抑制されるため、車体構成部品の保護を図る上で有利となる。特に、第3クロスメンバ26の上方にキャブボディが位置する場合は、プロペラシャフト36がキャブボディの底面であるフロアパネルへ干渉することを抑制することができるため、乗員保護につながる。
また、第3クロスメンバ26の下面26Dは、剛性の高い一対のサイドフレーム20の下側稜線2002に接続され車幅方向に直線状に延びていることから、第3クロスメンバ26の下面26Dの剛性が確保され、車体のねじれ剛性を高める上で有利となり、車両10の操縦安定性を高める上で有利となる。
したがって、第3クロスメンバ26を上記の構造とすることで、側面衝突時の車体構成部品の保護と、車両10の操縦安定性の確保との双方を実現する上で有利となる。
【0021】
また、本実施の形態では、プロペラシャフト36は、第3クロスメンバ26に車幅方向に間隔をおいて設けられた一対のブラケット44間で支持され、第3クロスメンバ26の一対のブラケット44の間に位置する箇所に第3クロスメンバ26の他の箇所よりも変形しやすい変形誘発部48が設けられている。
したがって、車両10の側面衝突時の衝突荷重が一方のサイドフレーム20から第3クロスメンバ26に入力すると、その衝突荷重により変形誘発部48が変形することで、第3クロスメンバ26の一対のブラケット44の間に位置する箇所が下方に変形しやすくなる。
そのため、一対のブラケット44の車幅方向外側への移動が抑制され、プロペラシャフト36の車幅方向外側への移動が抑制されることから、プロペラシャフト36の車幅方向に隣り合って配置された車両搭載部品に対するプロペラシャフト36の干渉が抑制され、車両搭載部品の保護を図る上で有利となる。
なお、本実施の形態では、一対のブラケット44間で第3クロスメンバ26の上面26Aを下方に凹ませることで変形誘発部48を形成したため、変形誘発部48自体に第3クロスメンバ26を下方に折る作用を持たせているが、変形誘発部48自体がこのような作用を持たずとも、上面26Aの車幅方向両端部が傾斜していることにより第3クロスメンバ26を下方に変形させるように荷重が入力されるため、変形誘発部48で下方に変形しやすくなっている。
【0022】
また、本実施の形態では、一対のサイドフレーム20の間に燃料タンク38が設けられ、燃料タンク38は、プロペラシャフト36の車幅方向一方側でプロペラシャフト36に隣り合って設けられている。
本実施の形態によれば、プロペラシャフト36が車幅方向に隣り合って設けられた燃料タンク38に干渉することが抑制され、燃料タンク38の保護を図る上で有利となる。
したがって、プロペラシャフト36と燃料タンク38との間にプロテクタを設ける必要がなくなる、若しくはプロテクタの板厚を抑えることができる。また、プロペラシャフト36と燃料タンク38との間隔を近づけることができるので、燃料タンク38の容量を大きくすることができる。
なお、本実施の形態では、車両搭載部品が燃料タンク38である場合について説明したが、車両搭載部品は、排気管40やバッテリ等、従来公知の様々な部品が挙げられる。
【0023】
また、本実施の形態では、燃料タンク38は、第3クロスメンバ26の後方に設けられ、第3クロスメンバ26の車幅方向の両端部は、それぞれ車両前後方向に拡幅され、車両前後方向で燃料タンク38が配置された側の後拡幅部の方が反対側の前拡幅部に比べ拡幅量が大きく設定されている。
したがって、前部拡幅部2610と一対のサイドフレーム20とが接合された箇所周辺の強度剛性は、後部拡幅部2612と一対のサイドフレーム20とが接合された箇所周辺の強度剛性に比較して低いものとなっている。
そのため、車両10の側面衝突時に一方のサイドフレーム20の第3クロスメンバ26より前方に衝突荷重が入力した際は、一方のサイドフレーム20から第3クロスメンバ26に車両前後方向で大きな荷重が伝達されることを抑制し、第3クロスメンバ26が車両前後方向に変形することが抑制される。言い換えると、第3クロスメンバ26と、第4クロスメンバ28と、第3、第4クロスメンバ26、28を接続する一対のサイドフレーム20の部分とで構成される四角形の部分が平行四辺形につぶれて、第3クロスメンバ26やサイドフレーム20が燃料タンク38に干渉するような変形が抑制される。
また、一方のサイドフレーム20の第3クロスメンバ26より後方に衝突荷重が入力した際には、一方のサイドフレーム20から第3クロスメンバ26に積極的に荷重を伝達し、一方のサイドフレーム20が車幅方向内側に変形することが抑制される。したがって、サイドフレーム20が燃料タンク38に干渉するような変形が抑制される。
したがって、車両10の側面衝突時に一方のサイドフレーム20に衝突荷重が入力した際に、第3クロスメンバ26やサイドフレーム20が燃料タンク38に干渉することが抑制され、燃料タンク38の保護を図る上でより一層有利となる。
【0024】
なお、本実施の形態では、燃料タンク38が第3クロスメンバ26の車両後方側に設けられた場合について説明したが、燃料タンク38が第3クロスメンバ26の車両前方側に設けられた場合は、燃料タンク38が配置された側の前部拡幅部2610を、燃料タンク38が配置されていない側の後部拡幅部2612に比べ拡幅量を大きく設定すればよく、その場合も本実施の形態と同様の作用効果が奏される。
【0025】
また、本実施の形態では、シャシフレーム12が第1~第5クロスメンバ22、24、26、28、30の5つのクロスメンバを備えている場合について説明したが、クロスメンバの数は任意であり、また、プロペラシャフト36がその上方を通るクロスメンバは第3クロスメンバ26に限定されるものではない。
【0026】
本出願は、2021年3月18日出願の日本特許出願2021-044630に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0027】
10 車両
12 シャシフレーム
14 前輪
16 後輪
18 ディファレンシャルギア
20 サイドフレーム
2002 下側稜線
22 第1クロスメンバ
24 第2クロスメンバ
26 第3クロスメンバ
26A 上面
26B 前面
26C 後面
26D 下面
2602 中央上面部
2604 傾斜面部
2610 前部拡幅部
2612 後部拡幅部
28 第4クロスメンバ
30 第5クロスメンバ
32 マウント
34 バンパビーム
36 プロペラシャフト
38 燃料タンク
3802 前端部
3804 後端部
40 排気管
44 ブラケット
46 支持ブラケット
48 変形誘発部
図1
図2
図3
図4
図5