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特許7487844処理方法、処理システム、処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】処理方法、処理システム、処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20240514BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240514BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W40/04
G08G1/16 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023522587
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2022018843
(87)【国際公開番号】W WO2022244604
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2021086369
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】莫 世航
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-102893(JP,A)
【文献】特開2009-230377(JP,A)
【文献】特開2002-163771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストレーン(Lh)を走行するホスト移動体(2)と、ターゲットレーン(Lt)を走行するターゲット移動体(3)とが合流する合流シーンにおいて、前記ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行するために、プロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
前記ホストレーンにおける前記ホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道(TRh)と、前記ターゲットレーンにおける前記ターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道(TRt)との、合流ポイント(Pm)を推定することと、
前記合流ポイントに到達するまでの最小到達時間(th,tt)を、前記ホスト移動体と前記ターゲット移動体との各々に関して予測することと、
前記ホスト移動体と前記ターゲット移動体とのうち、前記最小到達時間が小側となる一方の移動体に対して、他方の移動体よりも前記合流ポイントでの走行が優先される優先権を、設定することとを、含み、
前記合流ポイントを推定することは、
本線としての前記ホストレーンにおける前記ホスト軌道と、合流車線としての前記ターゲットレーンにおける前記ターゲット軌道との、前記合流ポイントを推定することを、含む処理方法。
【請求項2】
ホストレーン(Lh)を走行するホスト移動体(2)と、ターゲットレーン(Lt)を走行するターゲット移動体(3)とが合流する合流シーンにおいて、前記ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行するために、プロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
前記ホストレーンにおける前記ホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道(TRh)と、前記ターゲットレーンにおける前記ターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道(TRt)との、合流ポイント(Pm)を推定することと、
前記合流ポイントに到達するまでの最小到達時間(th,tt)を、前記ホスト移動体と前記ターゲット移動体との各々に関して予測することと、
前記ホスト移動体と前記ターゲット移動体とのうち、前記最小到達時間が小側となる一方の移動体に対して、他方の移動体よりも前記合流ポイントでの走行が優先される優先権を、設定することとを、含み、
前記合流ポイントを推定することは、
本線としての前記ターゲットレーンにおける前記ターゲット軌道と、合流車線としての前記ホストレーンにおける前記ホスト軌道との、前記合流ポイントを推定することを、含む処理方法。
【請求項3】
前記優先権が前記ターゲット移動体に設定される場合に、前記合流ポイントへの到達前からの前記ターゲット移動体と前記ホスト移動体との間において運転ポリシに従って設定した安全エンベロープに基づく運転制御を、前記ホスト移動体に与えることを、さらに含む請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項4】
ホストレーン(Lh)を走行するホスト移動体(2)と、ターゲットレーン(Lt)を走行するターゲット移動体(3)とが合流する合流シーンにおいて、前記ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行するために、プロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
前記ホストレーンにおける前記ホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道(TRh)と、前記ターゲットレーンにおける前記ターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道(TRt)との、合流ポイント(Pm)を推定することと、
前記ホスト移動体と前記ターゲット移動体とのうち、前記合流ポイントでの優先権を設定することと、
前記優先権が前記ターゲット移動体に設定される場合に、前記合流ポイントへの到達前からの前記ターゲット移動体と前記ホスト移動体との間において運転ポリシに従って設定した安全エンベロープに基づく運転制御を、前記ホスト移動体に与えることとを、含み、
前記運転制御を前記ホスト移動体に与えることは、
前記ターゲットレーンの前記ターゲット移動体を前記ホストレーンに投影した投影像(3a)と、前記ホスト移動体との間の運転ポリシに従うモデルであって、意図された機能の安全性をモデリングした安全モデルにより、前記安全エンベロープを設定することを、含む処理方法。
【請求項5】
前記運転制御を前記ホスト移動体に与えることは、
前記安全エンベロープが正常に確保される場合に、前記安全モデルに基づく最大加速度での加速状態へ前記ホスト移動体を移行させることを、含む請求項4に記載の処理方法。
【請求項6】
前記運転制御を前記ホスト移動体に与えることは、
前記安全エンベロープの違反が想定される場合に、前記安全モデルに基づく最小リスクでの継続走行状態へ前記ホスト移動体を移行させることを、含む請求項又はに記載の処理方法。
【請求項7】
プロセッサ(12)を有し、ホストレーン(Lh)を走行するホスト移動体(2)と、ターゲットレーン(Lt)を走行するターゲット移動体(3)とが合流する合流シーンにおいて、前記ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行する処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記ホストレーンにおける前記ホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道(TRh)と、前記ターゲットレーンにおける前記ターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道(TRt)との、合流ポイント(Pm)を推定することと、
前記合流ポイントに到達するまでの最小到達時間(th,tt)を、前記ホスト移動体と前記ターゲット移動体との各々に関して予測することと、
前記ホスト移動体と前記ターゲット移動体とのうち、前記最小到達時間が小側となる一方の移動体に対して、他方の移動体よりも前記合流ポイントでの走行が優先される優先権を、設定することとを、実行するように構成され
前記合流ポイントを推定することは、
本線としての前記ホストレーンにおける前記ホスト軌道と、合流車線としての前記ターゲットレーンにおける前記ターゲット軌道との、前記合流ポイントを推定することを、含む処理システム。
【請求項8】
プロセッサ(12)を有し、ホストレーン(Lh)を走行するホスト移動体(2)と、ターゲットレーン(Lt)を走行するターゲット移動体(3)とが合流する合流シーンにおいて、前記ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行する処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記ホストレーンにおける前記ホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道(TRh)と、前記ターゲットレーンにおける前記ターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道(TRt)との、合流ポイント(Pm)を推定することと、
前記合流ポイントに到達するまでの最小到達時間(th,tt)を、前記ホスト移動体と前記ターゲット移動体との各々に関して予測することと、
前記ホスト移動体と前記ターゲット移動体とのうち、前記最小到達時間が小側となる一方の移動体に対して、他方の移動体よりも前記合流ポイントでの走行が優先される優先権を、設定することとを、実行するように構成され
前記合流ポイントを推定することは、
本線としての前記ターゲットレーンにおける前記ターゲット軌道と、合流車線としての前記ホストレーンにおける前記ホスト軌道との、前記合流ポイントを推定することを、含む処理システム。
【請求項9】
プロセッサ(12)を有し、ホストレーン(Lh)を走行するホスト移動体(2)と、ターゲットレーン(Lt)を走行するターゲット移動体(3)とが合流する合流シーンにおいて、前記ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行する処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記ホストレーンにおける前記ホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道(TRh)と、前記ターゲットレーンにおける前記ターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道(TRt)との、合流ポイント(Pm)を推定することと、
前記ホスト移動体と前記ターゲット移動体とのうち、前記合流ポイントでの優先権を設定することと、
前記優先権が前記ターゲット移動体に設定される場合に、前記合流ポイントへの到達前からの前記ターゲット移動体と前記ホスト移動体との間において運転ポリシに従って設定した安全エンベロープに基づく運転制御を、前記ホスト移動体に与えることとを、実行するように構成され
前記運転制御を前記ホスト移動体に与えることは、
前記ターゲットレーンの前記ターゲット移動体を前記ホストレーンに投影した投影像(3a)と、前記ホスト移動体との間の運転ポリシに従うモデルであって、意図された機能の安全性をモデリングした安全モデルにより、前記安全エンベロープを設定することを、含む処理システム。
【請求項10】
記憶媒体(10)に記憶され、ホストレーン(Lh)を走行するホスト移動体(2)と、ターゲットレーン(Lt)を走行するターゲット移動体(3)とが合流する合流シーンにおいて、前記ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行するために、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む処理プログラムであって、
前記命令は、
前記ホストレーンにおける前記ホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道(TRh)と、前記ターゲットレーンにおける前記ターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道(TRt)との、合流ポイント(Pm)を推定させることと、
前記合流ポイントに到達するまでの最小到達時間(th,tt)を、前記ホスト移動体と前記ターゲット移動体との各々に関して予測させることと、
前記ホスト移動体と前記ターゲット移動体とのうち、前記最小到達時間が小側となる一方の移動体に対して、他方の移動体よりも前記合流ポイントでの走行が優先される優先権を、設定させることとを、含み、
前記合流ポイントを推定することは、
本線としての前記ホストレーンにおける前記ホスト軌道と、合流車線としての前記ターゲットレーンにおける前記ターゲット軌道との、前記合流ポイントを推定することを、含む処理プログラム。
【請求項11】
記憶媒体(10)に記憶され、ホストレーン(Lh)を走行するホスト移動体(2)と、ターゲットレーン(Lt)を走行するターゲット移動体(3)とが合流する合流シーンにおいて、前記ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行するために、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む処理プログラムであって、
前記命令は、
前記ホストレーンにおける前記ホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道(TRh)と、前記ターゲットレーンにおける前記ターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道(TRt)との、合流ポイント(Pm)を推定させることと、
前記合流ポイントに到達するまでの最小到達時間(th,tt)を、前記ホスト移動体と前記ターゲット移動体との各々に関して予測させることと、
前記ホスト移動体と前記ターゲット移動体とのうち、前記最小到達時間が小側となる一方の移動体に対して、他方の移動体よりも前記合流ポイントでの走行が優先される優先権を、設定させることとを、含み、
前記合流ポイントを推定することは、
本線としての前記ターゲットレーンにおける前記ターゲット軌道と、合流車線としての前記ホストレーンにおける前記ホスト軌道との、前記合流ポイントを推定することを、含む処理プログラム。
【請求項12】
記憶媒体(10)に記憶され、ホストレーン(Lh)を走行するホスト移動体(2)と、ターゲットレーン(Lt)を走行するターゲット移動体(3)とが合流する合流シーンにおいて、前記ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行するために、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む処理プログラムであって、
前記命令は、
前記ホストレーンにおける前記ホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道(TRh)と、前記ターゲットレーンにおける前記ターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道(TRt)との、合流ポイント(Pm)を推定させることと、
前記ホスト移動体と前記ターゲット移動体とのうち、前記合流ポイントでの優先権を設定させることと、
前記優先権が前記ターゲット移動体に設定される場合に、前記合流ポイントへの到達前からの前記ターゲット移動体と前記ホスト移動体との間において運転ポリシに従って設定した安全エンベロープに基づく運転制御を、前記ホスト移動体に与えさせることとを、含み、
前記運転制御を前記ホスト移動体に与えることは、
前記ターゲットレーンの前記ターゲット移動体を前記ホストレーンに投影した投影像(3a)と、前記ホスト移動体との間の運転ポリシに従うモデルであって、意図された機能の安全性をモデリングした安全モデルにより、前記安全エンベロープを設定することを、含む処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2021年5月21日に日本に出願された特許出願第2021-86369号を基礎としており、基礎の出願の内容を、全体的に、参照により援用している。
【技術分野】
【0002】
本開示は、移動体の運転に関連する処理を遂行するための、処理技術に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1に開示される技術は、ホスト車両のナビゲーション動作に関する運転制御を、ホスト車両の内外環境に関する検知情報に応じて計画している。そこで、運転ポリシに従う安全モデルと検知情報とに基づき潜在的な事故責任があると判断される場合には、運転制御に対して制約が与えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6708793号公報
【発明の概要】
【0005】
しかし、特許文献1の開示技術では、ホストレーンを走行するホスト車両と、ターゲットレーンを走行するターゲット車両とが合流する合流シーンにおいて、優先権の判断と、それに基づく運転制御とに、両車両間で齟齬の生じるおそれがあった。
【0006】
本開示の課題は、合流シーンに適した対応を促進する処理方法を、提供することにある。本開示のさらに別の課題は、合流シーンに適した対応を促進する処理システムを、提供することにある。本開示のまたさらに別の課題は、合流シーンに適した対応を促進する処理プログラムを、提供することにある。
【0007】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。
【0008】
本開示の第一態様は、
ホストレーンを走行するホスト移動体と、ターゲットレーンを走行するターゲット移動体とが合流する合流シーンにおいて、ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行するために、プロセッサにより実行される処理方法であって、
ホストレーンにおけるホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道と、ターゲットレーンにおけるターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道との、合流ポイントを推定することと、
合流ポイントに到達するまでの最小到達時間を、ホスト移動体とターゲット移動体との各々に関して予測することと、
ホスト移動体とターゲット移動体とのうち、最小到達時間が小側となる一方の移動体に対して、他方の移動体よりも合流ポイントでの走行が優先される優先権を、設定することとを、含み、
合流ポイントを推定することは、
本線としてのホストレーンにおけるホスト軌道と、合流車線としてのターゲットレーンにおけるターゲット軌道との、合流ポイントを推定することを、含む。
本開示の第二態様は、
ホストレーンを走行するホスト移動体と、ターゲットレーンを走行するターゲット移動体とが合流する合流シーンにおいて、ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行するために、プロセッサにより実行される処理方法であって、
ホストレーンにおけるホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道と、ターゲットレーンにおけるターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道との、合流ポイントを推定することと、
合流ポイントに到達するまでの最小到達時間を、ホスト移動体とターゲット移動体との各々に関して予測することと、
ホスト移動体とターゲット移動体とのうち、最小到達時間が小側となる一方の移動体に対して、他方の移動体よりも合流ポイントでの走行が優先される優先権を、設定することとを、含み、
合流ポイントを推定することは、
本線としてのターゲットレーンにおけるターゲット軌道と、合流車線としてのホストレーンにおけるホスト軌道との、合流ポイントを推定することを、含む。
【0009】
本開示の第態様は、
プロセッサを有し、ホストレーンを走行するホスト移動体と、ターゲットレーンを走行するターゲット移動体とが合流する合流シーンにおいて、ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行する処理システムであって、
プロセッサは、
ホストレーンにおけるホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道と、ターゲットレーンにおけるターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道との、合流ポイントを推定することと、
合流ポイントに到達するまでの最小到達時間を、ホスト移動体とターゲット移動体との各々に関して予測することと、
ホスト移動体とターゲット移動体とのうち、最小到達時間が小側となる一方の移動体に対して、他方の移動体よりも合流ポイントでの走行が優先される優先権を、設定することとを、実行するように構成され
合流ポイントを推定することは、
本線としてのホストレーンにおけるホスト軌道と、合流車線としてのターゲットレーンにおけるターゲット軌道との、合流ポイントを推定することを、含む
本開示の第四態様は、
プロセッサを有し、ホストレーンを走行するホスト移動体と、ターゲットレーンを走行するターゲット移動体とが合流する合流シーンにおいて、ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行する処理システムであって、
プロセッサは、
ホストレーンにおけるホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道と、ターゲットレーンにおけるターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道との、合流ポイントを推定することと、
合流ポイントに到達するまでの最小到達時間を、ホスト移動体とターゲット移動体との各々に関して予測することと、
ホスト移動体とターゲット移動体とのうち、最小到達時間が小側となる一方の移動体に対して、他方の移動体よりも合流ポイントでの走行が優先される優先権を、設定することとを、実行するように構成され、
合流ポイントを推定することは、
本線としてのターゲットレーンにおけるターゲット軌道と、合流車線としてのホストレーンにおけるホスト軌道との、合流ポイントを推定することを、含む。
【0010】
本開示の第態様は、
記憶媒体に記憶され、ホストレーンを走行するホスト移動体と、ターゲットレーンを走行するターゲット移動体とが合流する合流シーンにおいて、ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行するために、プロセッサに実行させる命令を含む処理プログラムであって、
命令は、
ホストレーンにおけるホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道と、ターゲットレーンにおけるターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道との、合流ポイントを推定させることと、
合流ポイントに到達するまでの最小到達時間を、ホスト移動体とターゲット移動体との各々に関して予測させることと、
ホスト移動体とターゲット移動体とのうち、最小到達時間が小側となる一方の移動体に対して、他方の移動体よりも合流ポイントでの走行が優先される優先権を、設定させることとを、含み、
合流ポイントを推定することは、
本線としてのホストレーンにおけるホスト軌道と、合流車線としてのターゲットレーンにおけるターゲット軌道との、合流ポイントを推定することを、含む。
本開示の第六態様は、
記憶媒体に記憶され、ホストレーンを走行するホスト移動体と、ターゲットレーンを走行するターゲット移動体とが合流する合流シーンにおいて、ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行するために、プロセッサに実行させる命令を含む処理プログラムであって、
命令は、
ホストレーンにおけるホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道と、ターゲットレーンにおけるターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道との、合流ポイントを推定させることと、
合流ポイントに到達するまでの最小到達時間を、ホスト移動体とターゲット移動体との各々に関して予測させることと、
ホスト移動体とターゲット移動体とのうち、最小到達時間が小側となる一方の移動体に対して、他方の移動体よりも合流ポイントでの走行が優先される優先権を、設定させることとを、含み、
合流ポイントを推定することは、
本線としてのターゲットレーンにおけるターゲット軌道と、合流車線としてのホストレーンにおけるホスト軌道との、合流ポイントを推定することを、含む。
【0011】
これら第一~第態様によると、ホストレーンにおけるホスト移動体のホスト軌道と、ターゲットレーンにおけるターゲット移動体のターゲット軌道との、合流ポイントが推定される。そこで、ホスト移動体とターゲット移動体とのうち各々に関して予測される、合流ポイントへの到達までの最小到達時間が小側となる一方の移動体に対しては、他方の移動体よりも合流ポイントでの走行が優先されるように、優先権が設定される。これによれば、合流ポイントへの到達タイミングの早い移動体が明確に優先され得るので、合流シーンに適した対応を促進することが可能となる。
【0012】
本開示の第態様は、
ホストレーンを走行するホスト移動体と、ターゲットレーンを走行するターゲット移動体とが合流する合流シーンにおいて、ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行するために、プロセッサにより実行される処理方法であって、
ホストレーンにおけるホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道と、ターゲットレーンにおけるターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道との、合流ポイントを推定することと、
ホスト移動体とターゲット移動体とのうち、合流ポイントでの優先権を設定することと、
優先権がターゲット移動体に設定される場合に、合流ポイントへの到達前からのターゲット移動体とホスト移動体との間において運転ポリシに従って設定した安全エンベロープに基づく運転制御を、ホスト移動体に与えることとを、含み、
運転制御をホスト移動体に与えることは、
ターゲットレーンのターゲット移動体をホストレーンに投影した投影像と、ホスト移動体との間の運転ポリシに従うモデルであって、意図された機能の安全性をモデリングした安全モデルにより、安全エンベロープを設定することを、含む。
【0013】
本開示の第態様は、
プロセッサを有し、ホストレーンを走行するホスト移動体と、ターゲットレーンを走行するターゲット移動体とが合流する合流シーンにおいて、ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行する処理システムであって、
プロセッサは、
ホストレーンにおけるホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道と、ターゲットレーンにおけるターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道との、合流ポイントを推定することと、
ホスト移動体とターゲット移動体とのうち、合流ポイントでの優先権を設定することと、
優先権がターゲット移動体に設定される場合に、合流ポイントへの到達前からのターゲット移動体とホスト移動体との間において運転ポリシに従って設定した安全エンベロープに基づく運転制御を、ホスト移動体に与えることとを、実行するように構成され
運転制御をホスト移動体に与えることは、
ターゲットレーンのターゲット移動体をホストレーンに投影した投影像と、ホスト移動体との間の運転ポリシに従うモデルであって、意図された機能の安全性をモデリングした安全モデルにより、安全エンベロープを設定することを、含む
【0014】
本開示の第態様は、
記憶媒体に記憶され、ホストレーンを走行するホスト移動体と、ターゲットレーンを走行するターゲット移動体とが合流する合流シーンにおいて、ホスト移動体の運転に関連する処理を遂行するために、プロセッサに実行させる命令を含む処理プログラムであって、
命令は、
ホストレーンにおけるホスト移動体の将来走行軌道であるホスト軌道と、ターゲットレーンにおけるターゲット移動体の将来走行軌道であるターゲット軌道との、合流ポイントを推定させることと、
ホスト移動体とターゲット移動体とのうち、合流ポイントでの優先権を設定させることと、
優先権がターゲット移動体に設定される場合に、合流ポイントへの到達前からのターゲット移動体とホスト移動体との間において運転ポリシに従って設定した安全エンベロープに基づく運転制御を、ホスト移動体に与えさせることとを、含み、
運転制御をホスト移動体に与えることは、
ターゲットレーンのターゲット移動体をホストレーンに投影した投影像と、ホスト移動体との間の運転ポリシに従うモデルであって、意図された機能の安全性をモデリングした安全モデルにより、安全エンベロープを設定することを、含む。
【0015】
これら第~第態様によると、ホストレーンにおけるホスト移動体のホスト軌道と、ターゲットレーンにおけるターゲット移動体のターゲット軌道との、合流ポイントが推定される。そこで、合流ポイントでの優先権がターゲット移動体に設定される場合には、合流ポイントへの到達前からのターゲット移動体とホスト移動体との間において運転ポリシに従って設定した安全エンベロープに基づく運転制御が、ホスト移動体に与えられる。これによれば、ターゲット移動体の走行が合流ポイントにおいて優先されるよりも前から、ホスト移動体の運転が適正に制御され得るので、合流シーンに適した対応を促進することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第一実施形態による処理システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】第一実施形態の適用されるホスト車両の走行環境を示す模式図である。
図3】第一実施形態による処理システムの機能構成を示すブロック図である。
図4】第一実施形態の適用される合流シーンを示す模式図である。
図5】第一実施形態の適用される合流シーンを示す模式図である。
図6】第一実施形態の適用される合流シーンを示す模式図である。
図7】第一実施形態の適用される合流シーンを示す模式図である。
図8】第一実施形態の適用される合流シーンを示す模式図である。
図9】第一実施形態の適用される合流シーンを示す模式図である。
図10】第一実施形態の適用される合流シーンを示す模式図である。
図11】第一実施形態の適用される合流シーンを示す模式図である。
図12】第一実施形態による処理方法を示すフローチャートである。
図13】第二実施形態による処理システムの機能構成を示すブロック図である。
図14】第二実施形態による処理方法を説明するための対応表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態を図面に基づき複数説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する場合がある。また、各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。さらに、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0018】
(第一実施形態)
図1に示される第一実施形態の処理システム1は、ホスト移動体の運転に関連する処理(以下、運転関連処理と表記)を、遂行する。処理システム1が運転関連処理の対象とするホスト移動体及びターゲット移動体は、それぞれ図2に示されるホスト車両2及びターゲット車両3である。ホスト車両2を中心とする視点において、ホスト車両2は自車両(ego-vehicle)であるともいえる。ホスト車両2を中心とする視点において、ターゲット車両3は他道路ユーザであるともいえる。
【0019】
図1,2に示されるホスト車両2においては、自動運転が実行される。自動運転は、動的運転タスク(Dynamic Driving Task:以下、DDTと表記)における乗員の手動介入度に応じて、レベル分けされる。自動運転は、条件付運転自動化、高度運転自動化、又は完全運転自動化といった、作動時のシステムが全てのDDTを実行する自律走行制御により、実現されてもよい。自動運転は、運転支援、又は部分運転自動化といった、乗員としてのドライバが一部若しくは全てのDDTを実行する高度運転支援制御において、実現されてもよい。自動運転は、それら自律走行制御と高度運転支援制御とのいずれか一方、組み合わせ、又は切り替えにより実現されてもよい。
【0020】
図1に示されるようにホスト車両2には、センサ系5、通信系6、及地図DB(Data Base)7、及び情報提示系4が搭載される。センサ系5は、処理システム1により利用可能なセンサデータを、ホスト車両2における外界及び内界の検出により取得する。そのためにセンサ系5は、外界センサ50及び内界センサ52を含んで構成される。
【0021】
外界センサ50は、ホスト車両2の外界に存在する物標を、検出する。物標検出タイプの外界センサ50は、例えばカメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)、レーザレーダ、ミリ波レーダ、及び超音波ソナー等のうち、少なくとも一種類である。内界センサ52は、ホスト車両2の内界において車両運動に関する特定の物理量(以下、運動物理量と表記)、及び乗員の状態を、検出する。内界センサ52は、例えば速度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、アクチュエータセンサ、ドライバーステータスモニター(登録商標)、生体センサ、着座センサ、及び車内機器センサ等のうち、少なくとも一種類である。
【0022】
通信系6は、処理システム1により利用可能な通信データを、無線通信により取得する。通信系6は、ホスト車両2の外界に存在するGNSS(Global Navigation Satellite System)の人工衛星から、測位信号を受信してもよい。測位タイプの通信系6は、例えばGNSS受信機等である。通信系6は、ホスト車両2の外界に存在するV2Xシステムとの間において、通信信号を送受信してもよい。V2Xタイプの通信系6は、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)通信機、及びセルラV2X(C-V2X)通信機等のうち、少なくとも一種類である。通信系6は、ホスト車両2の内界に存在する端末との間において、通信信号を送受信してもよい。端末通信タイプの通信系6は、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)機器、Wi-Fi(登録商標)機器、及び赤外線通信機器等のうち、少なくとも一種類である。
【0023】
図DB7は、処理システム1により利用可能な地図データを、記憶する。地図DB7は、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)を含んで構成される。地図DB7は、自己位置を含んだホスト車両2の自己状態量を推定するロケータの、DBであってもよい。地図DBは、ホスト車両2の走行経路をナビゲートするナビゲーションユニットの、DBであってもよい。地図DB7は、複数種類のDBの組み合わせにより、構築されてもよい。
【0024】
図DB7は、例えばV2Xタイプの通信系6を介した外部センタとの通信等により、最新の地図データを取得して記憶する。地図データは、ホスト車両2の走行環境を表すデータとして、二次元又は三次元にデータ化されている。三次元の地図データとしては、高精度地図のデジタルデータが採用されてもよい。地図データは、例えば道路構造の位置座標、形状、及び路面状態等のうち、少なくとも一種類を表した道路データを含んでいてもよい。地図データは、例えば道路に付属する道路標識、道路表示、及び区画線の、位置座標並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した標示データを含んでいてもよい。地図データは、例えば道路に面する建造物及び信号機の、位置座標並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した構造物データを含んでいてもよい。
【0025】
情報提示系4は、ホスト車両2のドライバを含む乗員へ向けた報知情報を提示する。情報提示系4は、視覚提示ユニット、聴覚提示ユニット、及び皮膚感覚提示ユニットを含んで構成される。視覚提示ユニットは、乗員の視覚を刺激することより、報知情報を提示する。視覚提示ユニットは、例えばHUD(Head-up Display)、MFD(Multi Function Display)、コンビネーションメータ、ナビゲーションユニット、及び発光ユニット等のうち、少なくとも一種類である。聴覚提示ユニットは、乗員の聴覚を刺激することにより、報知情報を提示する。聴覚提示ユニットは、例えばスピーカ、ブザー、及びバイブレーションユニット等のうち、少なくとも一種類である。皮膚感覚提示ユニットは、乗員の皮膚感覚を刺激することにより、報知情報を提示する。皮膚感覚提示ユニットは、例えばステアリングホイールのバイブレーションユニット、運転席のバイブレーションユニット、ステアリングホイールの反力ユニット、アクセルペダルの反力ユニット、ブレーキペダルの反力ユニット、及び空調ユニット等のうち、少なくとも一種類である。
【0026】
図2に示されるように処理システム1では、車線の区切られた車線構造LSが、想定される。車線構造LSは、車線の延伸する方向を縦方向として、ホスト車両2及びターゲット車両3の運動を規制する。車線構造LSは、車線の幅方向又は並ぶ方向を横方向として、ホスト車両2及びターゲット車両3の運動を規制する。ここで本実施形態において想定される車線構造LSは、ホスト車両2の走行するホストレーンLhと、ターゲット車両3の走行するターゲットレーンLtとが、合流する合流構造LSmである。
【0027】
処理システム1では、運転ポリシ(driving policy)とその安全性に従って記述された安全モデルが、用いられる。ここで運転ポリシとは、意図された機能の安全性(Safety Of The Intended Functionality:以下、SOTIFと表記)を保証する車両レベル安全戦略を踏まえて、規定される。
【0028】
処理システム1では、車線構造LSにおけるホスト車両2及びターゲット車両3間の運転ポリシが、例えば次の(A)~(E)等に規定される。尚、ホスト車両2を基準とする前方とは、例えばホスト車両2の現在舵角における旋回円上の進行方向、ホスト車両2における車軸と直交する車両重心を通る直線の進行方向、又はホスト車両2におけるセンサ系5のうちフロントカメラモジュールから同カメラのFOE(Focus of Expansion)の軸線上における進行方向等を、意味する。
(A) 車両は、前方を走行している車両に、後方から追突しない。
(B) 車両は、他の車両間に強引な割り込みをしない。
(C) 車両は、自己が優先の場合でも、状況に応じて他の車両と譲り合う。
(D) 車両は、見通しの悪い場所では、慎重に運転する。
(E) 車両は、自責他責に関わらず、自己で事故を防止可能な状況であれば、そのために合理的行動を取る。
【0029】
処理システム1では、車両レベル安全戦略の実装となる運転ポリシに従うことにより、且つSOTIFをモデリングすることにより、安全モデルが記述される。安全モデルは、安全関連モデル(safety-related models)そのもの、及び安全関連モデルのうちの一部を構成するモデルのうち、少なくとも一種類であってもよい。安全モデルは、不合理な状況には至らない道路ユーザの行動、即ち適切な応答(proper response)として取るべき適正な合理的行動を、想定する。ここで、車線構造LSにおけるホスト車両2及びターゲット車両3間での不合理な状況とは、正面衝突、追突、及び側面衝突である。正面衝突における合理的行動は、逆走している車両がブレーキを掛けること等を、含む。追突における合理的行動は、前方を走行している車両が一定以上の急ブレーキを掛けないこと、及びそれを前提として後方を走行している車両が追突を回避すること等を、含む。側面衝突における合理的行動は、並走する車両同士が互いの離間方向へ操舵すること等を、含む。
【0030】
処理システム1では、運転制御による結果を安全モデルへ逆伝播させる機械学習アルゴリズムにより、安全モデルがトレーニングされてもよい。トレーニングされる安全モデルとしては、例えばDNN(Deep Neural Network)といったニュラーラルネットワークによるディープラーニング、及び強化学習等のうち、少なくとも一種類の学習モデルが用いられるとよい。
【0031】
処理システム1では、合理的行動を取らなかった移動体が事故責任を負うとする、事故責任規則に則って安全モデルが設計されてもよい。車線構造LSでの運転ポリシに従う事故責任規則下、ホスト車両2及びターゲット車両3間のリスクを監視するために用いられる安全モデルは、不合理なリスク又は道路ユーザの誤用に起因する潜在的な事故責任を、合理的行動によって回避するように、設計されるとよい。こうした安全モデルとしては、例えば特許文献1に開示されるような責任敏感型安全性モデル(RSS(Responsibility Sensitive Safety) model)等が、挙げられる。
【0032】
処理システム1では、ホスト車両2においてSOTIFを保証する、例えば車両レベル安全戦略等を踏まえた安全エンベロープ(safety envelope)が、運転ポリシに従って設定される。安全エンベロープの設定では、運転ポリシに従うと仮定したホスト車両2及びターゲット車両3間での安全モデルに基づくことにより、少なくとも一種類の運動物理量に関するプロファイルから、安全距離が想定される。ここで車線構造LSでの安全距離は、予測されるターゲット車両3の運動に対して、ホスト車両2の周囲に物理ベースのマージンを確保した境界を、画定する。そこで車線構造LSにおける安全エンベロープの設定では、ホスト車両2の縦方向において追突及び正面衝突のリスクを回避する安全距離と、ホスト車両2の横方向において側面衝突のリスクを回避する安全距離とが、想定されるとよい。
【0033】
ここで安全エンベロープの定義は、運転ポリシが準拠するであろうすべての原則に対処するために使用できる共通の概念であってよい。この概念によれば、自動車両は自車両の周囲に1つ以上の境界をもち、これらの境界の1つ以上の違反が自動車両による異なる応答を引き起こす。安全エンベロープは、自動車両の周囲の物理ベースのマージンを定義し得る。通常、合理的に予測可能な最悪ケースとなる他者の動作として定義された仮定と組み合わせて、安全関連モデルの基本的な構成要素となる。安全エンベロープは、自動車両が高リスクシナリオにあるかどうかを理解するための基本的な構成要素であってもよい。安全エンベロープは、自車両の周囲だけでなく、他車両の周囲、歩行者の周囲または静止物体の周囲について、境界、マージンまたは緩衝区域を画定するように、定義されてもよい。
【0034】
処理システム1では、ホスト車両2及びターゲット車両3間の現実距離に対して、安全モデルに基づく安全距離が走行シーン毎に照らし合わされることによって、安全エンベロープの違反の有無が判定される。その結果が安全エンベロープの違反ありとの判定となる場合には、合理的且つ予測可能な仮定(reasonably foreseeable assumptions)に基づき車両2,3間での状態遷移毎に取るべき合理的行動として、ホスト車両2の運転制御に対する制約が設定されるとよい。
【0035】
図1に示されるように処理システム1は、例えばLAN(Local Area Network)、ワイヤハーネス、内部バス、及び無線通信回線等のうち、少なくとも一種類を介してセンサ系5、通信系6、地図DB7、及び情報提示系4に接続される。処理システム1は、少なくとも一つの専用コンピュータを含んで構成される。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の運転制御を統合する、統合ECU(Electronic Control Unit)であってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の運転制御におけるDDTを判断する、判断ECUであってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の運転制御を監視する、監視ECUであってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の運転制御を評価する、評価ECUであってもよい。
【0036】
処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の走行経路をナビゲートする、ナビゲーションECUであってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の自己位置を含む自己状態量を推定する、ロケータECUであってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の運動アクチュエータを制御する、アクチュエータECUであってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2における情報提示を制御する、HCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、例えば通信系6を介して通信可能な外部センタ又はモバイル端末等を構築する、少なくとも一つの外部コンピュータであってもよい。
【0037】
処理システム1を構成する専用コンピュータは、メモリ10及びプロセッサ12を、少なくとも一つずつ有している。メモリ10は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。プロセッサ12は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含む。
【0038】
プロセッサ12は、ソフトウェアとしてメモリ10に記憶された処理プログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これにより処理システム1は、ホスト車両2の運転制御処理を遂行するための機能ブロックを、複数構築する。このように処理システム1では、ホスト車両2の運転制御処理を遂行するためにメモリ10に記憶された処理プログラムが複数の命令をプロセッサ12に実行させることによって、複数の機能ブロックが構築される。第一実施形態の処理システム1により構築される複数の機能ブロックには、図3に示されるように合流推定ブロック100、到達予測ブロック110、優先設定ブロック120、及び運転制御ブロック130が含まれる。
【0039】
合流推定ブロック100は、ホストレーンLhにおけるホスト車両2の走行中に、ターゲットレーンLtを走行するターゲット車両3の有無を、センサ系5、通信系6、及び地図DB7のうち少なくとも一種類による取得データに基づき監視する。即ち合流推定ブロック100は、合流構造LSmのホストレーンLhを走行するホスト車両2と、同構造LSmのターゲットレーンLtを走行するターゲット車両3とが、図2に示されるように合流する合流シーンへの遷移有無を監視する。さらにこの処理は、ホストレーンLhを走行するホスト車両2と、ターゲットレーンLtを走行するターゲット車両3とが、図2に示されるように合流する合流シナリオを、複数のシナリオの中から合流推定ブロック100が選択する処理ともいえる。
【0040】
合流推定ブロック100は、ターゲットレーンLtにおけるターゲット車両3の走行を検知(即ち、認識)すると、図4に示されるようなホスト車両2とターゲット車両3との合流ポイントPmを推定する。具体的に合流推定ブロック100は、ホストレーンLhにおけるホスト車両2の将来走行軌道であるホスト軌道TRhと、ターゲットレーンLtにおけるターゲット車両3の将来走行軌道であるターゲット軌道TRtとの、合流ポイントPmを推定する。尚、以下では、ターゲットレーンLtにおいてターゲット車両3の走行が検知されたポイントPtと、ホストレーンLhにおいて当該検知のタイミングにホスト車両2が走行していたポイントPhとを、それぞれ検知ポイントという。これら検知ポイントPt,Phとしては、合流シーン(合流シナリオ)の監視においてターゲット車両3が検知される初回又は二回目以降の所定タイミングに対応するポイントが、後段のブロック110,120,130において利用される。
【0041】
ここでホスト軌道TRhは、センサ系5、通信系6、及び地図DB7のうち少なくとも一種類による取得データに基づいた、ホストレーンLhの検知及びホスト車両2の将来走行計画により、設定される軌道(trajectory)である。ターゲット軌道TRtは、センサ系5、通信系6、及び地図DB7のうち少なくとも一種類による取得データに基づいた、ターゲット車両3及びターゲットレーンLtの検知により、推定される軌道である。合流ポイントPmは、本線としてのホストレーンLhにおけるホスト軌道TRhに対して、合流車線としてのターゲットレーンLtから当該ホストレーンLhへ延伸されるターゲット軌道TRtが、交差するポイントに推定的に定義される。尚、ターゲットレーンLtの横方向における推定誤差がターゲット軌道TRtに見込まれる場合、ホスト軌道TRhに対してターゲットレーンLtの投影が交差する範囲Rm(図4参照)の中から、当該推定誤差を考慮して合流ポイントPmが定義されてもよい。
【0042】
図3に示される到達予測ブロック110は、合流推定ブロック100により推定された合流ポイントPmに到達するまでの最小到達時間を、ホスト車両2とターゲット車両3との各々に関して予測する。このとき、図5に示されるように到達予測ブロック110は、ホスト車両2の最小到達時間であるホスト到達時間thと、ターゲット車両3の最小到達時間であるターゲット到達時間ttとを、それぞれ数1と数2とに基づく予測演算によって取得する。
【数1】
【数2】
【0043】
ここで数1は、ホスト車両2がターゲット車両3との衝突要因又は追突要因となるのを回避するように、ホスト車両2の合流ポイントPmまでの速度が、検知ポイントPhでの速度vhのまま実質一定に制御されることを、前提としている。この数1においてdhは、検知ポイントPhから合流ポイントPmまでの距離となる。これら速度vh及び距離dhは、センサ系5、通信系6、及び地図DB7のうち少なくとも一種類による取得データに基づく。
【0044】
一方で数2は、ターゲット車両3の合流ポイントPmまでの速度が、ターゲットレーンLtのうち検知ポイントPtにおける速度vtから、同ポイントPtにおける加減速度atにて加減速制御されることを、前提としている。この数2においてdtは、検知ポイントPtから合流ポイントPmまでの距離となる。これら速度vt及び距離dtは、センサ系5、通信系6、及び地図DB7のうち少なくとも一種類による取得データに基づく。
【0045】
図3に示される優先設定ブロック120は、到達予測ブロック110により最小到達時間として予測された、ホスト到達時間thとターゲット到達時間ttとの大小を比較する。その結果、ホスト到達時間thがターゲット到達時間tt以下となる場合に優先設定ブロック120は、最小到達時間が小側となる一方のホスト車両2に対して、図6に示されるように合流ポイントPmでの走行が他方のターゲット車両3よりも優先される優先権を、設定する。これに対して、ホスト到達時間thがターゲット到達時間tt超過となる場合に優先設定ブロック120は、最小到達時間が小側となる一方のターゲット車両3に対して、図7に示されるように合流ポイントPmでの走行が他方のホスト車両2よりも優先される優先権を、設定する。ここで優先権を設定することは、通行権を定義することともいえる。
【0046】
優先設定ブロック120は、設定した優先権に関する情報を、ホスト車両2の通信系6からターゲット車両3へ送信してもよい。このとき各車両2,3間での送信は、V2Vタイプ等の通信系同士により直接的に実現されてもよいし、クラウドサーバ等のリモートセンタを経由して間接的に実現されてもよいし、車両2,3を含む複数の車両間において構成されたメッシュネットワークを経由して実現されてもよい。
【0047】
優先設定ブロック120は、設定した優先権に関する情報を、エビデンス情報としてメモリ10に記憶させることによって、蓄積してもよい。このときエビデンス情報は、非暗号化状態で蓄積されてもよいし、暗号化又はハッシュ化されて蓄積されてもよい。ここでエビデンス情報の蓄積されるメモリ10は、処理システム1を構成する専用コンピュータの種類に応じて、ホスト車両2内に搭載されていてもよいし、例えばホスト車両2外の外部センタ等に設置されていてもよい。蓄積されたエビデンス情報は、自動運転システム、運転ポリシ及び安全モデルの検証に用いられてもよい。
【0048】
優先設定ブロック120は、設定した優先権に関する情報を、情報提示系4(図3参照)によりホスト車両2の乗員に対して報知してもよい。また、上述の如く優先権に関する情報をターゲット車両3へ送信可能な場合に優先設定ブロック120は、ターゲット車両3の乗員に対する当該優先権情報の報知を指示してもよい。
【0049】
図3に示される運転制御ブロック130は、優先設定ブロック120により設定された、合流ポイントPmでの優先権に応じて、ホスト車両2の運転を制御する。具体的には、合流ポイントPmにおいてターゲット車両3よりも優先される優先権がホスト車両2に設定される場合に運転制御ブロック130は、検知ポイントPhでの運転制御をホスト車両2に維持させる。これによりホスト車両2の速度は、検知ポイントPhにおける速度vhのまま、実質一定に維持制御される。こうした運転制御の維持は、ホスト車両2が合流ポイントPmに到達するまで、継続されてもよい。運転制御の維持は、合流ポイントPmの通過後にターゲット車両3が合流ポイントPmに到達するまで、継続されてもよい。
【0050】
一方、合流ポイントPmにおいてホスト車両2よりも優先される優先権がターゲット車両3に設定される場合に運転制御ブロック130は、合流ポイントPmへの到達前からのターゲット車両3とホスト車両2との間での安全エンベロープに基づく運転制御を、ホスト車両2に与える。このとき、まず運転制御ブロック130は、ターゲットレーンLtのうち、図8に示されるように合流ポイントPmへの到達前の検知ポイントPtからターゲット車両3をホストレーンLhへと投影した投影像3aを、想定する。ここで投影像3aは、検知ポイントPtのターゲット車両3を例えば中心点等の特定点まわりに回転させて同車両3の左右方向をホストレーンLhの横方向に合わせた回転像を、ホストレーンLhまで当該横方向に沿って投影することにより、想定されてもよい。あるいは投影像3aは、合流ポイントPmを中心した回転方向に検知ポイントPtのターゲット車両3をホストレーンLhまで回転投影することにより、想定されてもよい。こうした投影像3aの想定は、センサ系5、通信系6、及び地図DB7のうち少なくとも一種類による取得データに基づく。
【0051】
合流ポイントPmでの優先権がターゲット車両3に設定される場合に運転制御ブロック130は、当該車両3の投影像3aとホスト車両2との間の運転ポリシに従う安全モデルにより、当該ポリシに従う安全エンベロープを設定する。安全エンベロープの設定において運転制御ブロック130は、図9,10に示されるようにホストレーンLhにおいて前方に想定される投影像3aに対して、ホスト車両2の後方からの追突に関する安全距離dsを、仮想する。このとき安全距離dsは、ホスト車両2の合流ポイントPmまでの速度が検知ポイントPhでの速度vhのまま実質一定に制御されることを前提として、ホスト車両2がターゲット車両3への追突要因となるのを回避するように数3~6によって仮想される。
【0052】
ここで数3~6は、検知ポイントPtでのターゲット車両3に対応して速度vtで走行中の投影像3aが、最大減速度at_brmaxで急減速することを、仮定している。この仮定は、合理的且つ予測可能な仮定(reasonably foreseeable assumptions)であってもよい。こうした仮定の下で数3~6は、検知ポイントPhから零加速度且つ反応時間ρで発生可能な最大減速度ah_brmaxにより速度vhのホスト車両2が制動を掛ける場合を、想定している。これら数3~6において、dt_brは投影像3aの制動距離、dh_frは反応時間ρにおけるホスト車両2の空走距離、dh_brはホスト車両2の制動距離である。尚、最大減速度ah_brmaxに代えて、投影像3aの最小減速度が考慮されてもよい。あるいは、最大減速度ah_brmaxに代えて、ジャークを一定にする投影像3aの減速度が考慮されてもよい。
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【0053】
合流ポイントPmでの優先権がターゲット車両3に設定される場合に運転制御ブロック130は、検知ポイントPhにおけるホスト車両2から投影像3aまでの判定対象距離djと、投影像3aに対するホスト車両2の安全距離dsとの大小を、比較する。その結果、図9の如く判定対象距離djが安全距離ds超過となる場合に運転制御ブロック130は、安全エンベロープが正常に確保されるとの判定を下す。正常確保の判定により運転制御ブロック130は、図11に示されるように、安全モデルに基づく許容最大加速度ah_acmaxでの加速状態へホスト車両2を移行させるための運転制御を、同車両2に与える。このとき許容最大加速度ah_acmaxは、数7~9による制約(即ち、ガード)として設定される。こうした加速状態への運転制御は、ホスト車両2が合流ポイントPmに到達するまで、継続されてもよい。加速状態への運転制御は、合流ポイントPmの通過後でも正常な安全エンベロープが確保される限りにおいて、継続されてもよい。
【数7】
【数8】
【数9】
【0054】
合流ポイントPmでの優先権がターゲット車両3に設定される場合のうち、上述の正常確保判定の場合に対して、図10の如く判定対象距離djが安全距離ds以下となる場合に運転制御ブロック130は、安全エンベロープの違反が想定されるとの判定を下す。安全エンベロープ違反の判定により運転制御ブロック130は、安全モデルに基づく最小リスクでの継続走行状態へホスト車両2を移行させるために、運転制御の制約を同車両2に与える。このとき最小リスクでの継続走行状態とは、例えば減速、又は車線変更等により、不合理な追突リスクを回避する走行状態である。こうした運転制御の制約は、ホスト車両2が合流ポイントPmに到達するまで、継続されてもよい。運転制御の制約は、合流ポイントPmの通過後でも安全エンベロープの違反が解消されるまで、継続されてもよい。
【0055】
このような第一実施形態の処理システム1では、図12に示されるフローチャートに従って運転関連処理を遂行する処理方法のフローが、ブロック100,110,120,130の共同により実行される。本フローは、検知ポイントPt,Phと対応するタイミングに合流推定ブロック100によって合流シーン(合流シナリオ)が検知されるのに応じて、実行される。尚、本フローにおける各「S」は、メモリ10に記憶の処理プログラムに含まれた、複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味する。
【0056】
S101において合流推定ブロック100は、ホストレーンLhにおけるホスト車両2のホスト軌道TRhと、ターゲットレーンLtにおけるターゲット車両3のターゲット軌道TRtとの、合流ポイントPmを推定する。次のS102において到達予測ブロック110は、S101により推定された合流ポイントPmに到達するまでの最小到達時間として、ホスト車両2のホスト到達時間th及びターゲット車両3のターゲット到達時間ttを予測する。続いてS103における優先設定ブロック120は、S102より最小到達時間として予測された、ホスト到達時間th及びターゲット到達時間ttの大小を比較する。
【0057】
S103においてホスト到達時間thはターゲット到達時間tt以下との判定が下される場合には、本フローがS104へ移行する。S104において優先設定ブロック120は、最小到達時間が小側となるホスト車両2に対して、合流ポイントPmでの走行がターゲット車両3よりも優先される優先権を、設定する。続くS105において運転制御ブロック130は、検知ポイントPhでの運転制御をホスト車両2に維持させる。
【0058】
一方、S103においてホスト到達時間thはターゲット到達時間tt超過との判定が下される場合には、本フローがS106へ移行する。S106において優先設定ブロック120は、最小到達時間が小側となるターゲット車両3に対して、合流ポイントPmでの走行がホスト車両2よりも優先される優先権を、設定する。続くS107において運転制御ブロック130は、運転ポリシに従う安全エンベロープの設定として、合流ポイントPmへの到達前からのターゲット車両3をホストレーンLhに投影した投影像3aに対して、ホスト車両2の安全距離dsを仮想する。さらにS108において運転制御ブロック130は、検知ポイントPhでのホスト車両2から投影像3aまでの判定対象距離djと、投影像3aに対するホスト車両2の安全距離dsとの大小を、比較する。
【0059】
S108において判定対象距離djが安全距離ds超過であることにより、安全エンベロープの正常確保判定が下される場合には、本フローがS109へ移行する。S109において運転制御ブロック130は、安全モデルに基づく許容最大加速度ah_acmaxでの加速状態へホスト車両2を移行させる。一方、S108において判定対象距離djが安全距離ds以下であることにより、安全エンベロープ違反の想定判定が下される場合には、本フローがS110へ移行する。S110において運転制御ブロック130は、安全モデルに基づく最小リスクでの継続走行状態へホスト車両2を移行させる。これらS109,S110及び上述したS105のいずれの実行完了後にも、本フローが終了する。
【0060】
以上説明した第一実施形態によると、ホストレーンLhにおけるホスト車両2のホスト軌道TRhと、ターゲットレーンLtにおけるターゲット車両3のターゲット軌道TRtとの、合流ポイントPmが推定される。そこで、ホスト車両2とターゲット車両3とのうち各々に関して予測される、合流ポイントPmへの到達までの最小到達時間が小側となる一方の車両に対しては、他方の車両よりも合流ポイントPmでの走行が優先されるように、優先権が設定される。これによれば、合流ポイントPmへの到達タイミングの早い車両が明確に優先され得るので、合流シーン(合流シナリオ)に適した対応を促進することが可能となる。
【0061】
また別な視点の第一実施形態によると、ホストレーンLhにおけるホスト車両2のホスト軌道TRhと、ターゲットレーンLtにおけるターゲット車両3のターゲット軌道TRtとの、合流ポイントPmが推定される。そこで、合流ポイントPmでの優先権がターゲット車両3に設定される場合には、合流ポイントPmへの到達前からのターゲット車両3とホスト車両2との間において運転ポリシに従って設定した安全エンベロープに基づく運転制御が、ホスト車両2に与えられる。これによれば、ターゲット車両3の走行が合流ポイントPmにおいて優先されるよりも前から、ホスト車両2の運転が適正に制御され得るので、合流シーン(合流シナリオ)に適した対応を促進することが可能となる。
【0062】
(第二実施形態)
図13に示されるように第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0063】
第二実施形態の処理システム1により構築される複数の機能ブロックには、図13に示されるように検知ブロック200、計画ブロック220、リスク監視ブロック240、及び制御ブロック260が含まれる。
【0064】
検知ブロック200は、センサ系5、通信系6、及び地図DB7からの取得データを入力としてフュージョンすることにより、ホスト車両2の内外環境を検知する。計画ブロック220は、検知ブロック200から取得した検知情報に基づくことにより、ホスト車両2の運転制御を計画する。運転制御の計画において計画ブロック120は、運転制御によってホスト車両2に将来走行させる経路と、当該経路を辿るホスト車両2に対して検知情報に基づく適正な軌道とを、計画する。
【0065】
リスク監視ブロック240は、検知ブロック200から取得した検知情報に基づくことにより、ターゲット移動体3を含む他道路ユーザとホスト車両2との間におけるリスクを、シーン毎に監視する。そこでリスク監視ブロック240は、シーン毎の検知情報に基づき安全エンベロープを設定する。制御ブロック260は、計画ブロック220により計画されたホスト車両2の運転制御を実行する。このとき、監視ブロック240の設定した安全エンベロープの違反が発生している場合には、計画されたホスト車両2の運転制御に対して制御ブロック260が、運転ポリシに従う制約を与える。
【0066】
こうした第二実施形態のシステム1では、第一実施形態に準じて運転関連処理を遂行する処理方法のフローが、図14に示されるようなブロック200,220,240,260の共同によって実行される。
【0067】
本フローの実行パターンAとしては、S101~S104,S106が検知ブロック200又は計画ブロック220により実行され、S107,S108がリスク監視ブロック240により実行され、S105,S109,S110が制御ブロック260により実行される。
【0068】
本フローの実行パターンBとしては、S101~S103が検知ブロック200又は計画ブロック220により実行され、S104,S106~S108がリスク監視ブロック240により実行され、S105,S109,S110が制御ブロック260により実行される。
【0069】
本フローの実行パターンCとしては、S101,S102が検知ブロック200又は計画ブロック220により実行され、S103,S104,S106~S108がリスク監視ブロック240により実行され、S105,S109,S110が制御ブロック260により実行される。
【0070】
本フローの実行パターンDとしては、S101~S104,S106~S108がリスク監視ブロック240により実行され、S105,S109,S110が制御ブロック260により実行される。
【0071】
このような第二実施形態によると、第一実施形態と同様な作用効果を発揮することが可能である。尚、第二実施形態は、ホストレーンLhを走行するホスト車両2と、ターゲットレーンLtを走行するターゲット車両3とが合流する合流シーン(合流シナリオ)において、パターンA~Dのいずれかにおけるリスク監視ブロック260の機能を実行する、プロセッサ12を有した処理装置又は半導体装置として実施されてもよい。
(他の実施形態)
【0072】
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0073】
変形例において処理システム1を構成する専用コンピュータは、デジタル回路、及びアナログ回路のうち、少なくとも一方をプロセッサとして含んでいてもよい。ここでデジタル回路とは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを記憶したメモリを、有していてもよい。
【0074】
変形例では、ブロック100,200,220,240及びS101において、合流車線としてのホストレーンLhにおけるホスト軌道TRhと、本線としてのターゲットレーンLtにおけるターゲット軌道TRtとの、合流ポイントPmが推定されてもよい。変形例では、ブロック110,200,220,240及びS102において、ホスト車両2が検知ポイントPhから減速することを前提に、最小到達時間としてのホスト到達時間thが予測されてもよい。変形例では、ブロック130,240及びS107において、ホスト車両2が検知ポイントPhから減速することを前提に、安全距離dsが仮想されてもよい。
【0075】
変形例では、ブロック110,200,220,240及びS102において距離dh,dtが取得され、ブロック110,200,220,240及びS103において距離dh,dtの大小が比較されてもよい。この場合、ブロック120,200,220,240及びS104において、距離dh,dtのうち小側の距離dhに対応したホスト車両2に対して、ターゲット車両3よりも合流ポイントPmでの走行を優先される優先権が、設定されるとよい。また一方、設定ブロック120,200,220,240及びS106において、距離dh,dtのうち小側の距離dtに対応したターゲット車両3に対して、ホスト車両2よりも合流ポイントPmでの走行を優先される優先権が、設定されるとよい。
【0076】
変形例では、ブロック130,260によるS105が、省かれてもよい。変形例では、ブロック130,240によるS107,S108が、省かれてもよい。変形例では、ブロック130,260によるS109が、省かれてもよい。変形例では、ブロック130,260によるS109において、ブロック130,260によるS105に準じた処理が実行されてもよい。
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