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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】電磁接触器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/02 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
H01H50/02 A
H01H50/02 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023573905
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2022045155
(87)【国際公開番号】W WO2023135992
(87)【国際公開日】2023-07-20
【審査請求日】2023-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2022002928
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 充哉
(72)【発明者】
【氏名】高谷 幸悦
(72)【発明者】
【氏名】菊地 翔太
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/181927(WO,A1)
【文献】特開2011-44287(JP,A)
【文献】特開2008-47419(JP,A)
【文献】特開昭62-226522(JP,A)
【文献】実開昭59-144734(JP,U)
【文献】中国実用新案第204348624(CN,U)
【文献】中国実用新案第203573915(CN,U)
【文献】韓国公開実用新案第20-2010-0005998(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動接点と固定接点とを有する接点部を消弧室に収納したケースと、前記消弧室を覆って前記ケースに装着される消弧カバーと、を備えた電磁接触器において、
前記消弧カバーは、前記ケースに対する装着方向に離間して第1係合部及び第2係合部が形成され、
前記ケースは、第3係合部及び第4係合部が形成されており、
前記第1係合部及び前記第3係合部が係合した第1係合状態で、前記消弧カバーが前記消弧室を密閉して前記ケースに装着され、
前記第2係合部及び前記第4係合部が係合した第2係合状態で、前記消弧カバーと前記ケースの間に隙間を設けた状態で前記ケースに前記消弧カバーが保持されることを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記第1係合状態は前記第2係合状態よりも係合部同士の係合力が弱いことを特徴とする請求項1記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記消弧カバーは、板状のカバー本体と、前記カバー本体から互いに対向して前記装着方向に延在する少なくとも一対のカバー壁部とを備え、
前記一対のカバー壁部の前記カバー本体から離間した位置に前記第2係合部が形成され、前記一対のカバー壁部の前記カバー本体に近接する位置に前記第1係合部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁接触器。
【請求項4】
前記ケースの前記第3係合部及び前記第4係合部は、前記消弧カバーの装着方向に直交する係合面を有し、
前記消弧カバーの前記第1係合部は、前記ケースの前記第3係合部の前記係合面に対して摺動する斜面を有し、
前記消弧カバーの前記第2係合部は、前記装着方向に直交して前記第4係合部の前記係合面に当接する第2係合面を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁接触器。
【請求項5】
前記第1係合状態から前記第2係合状態に移行する際に、前記消弧カバーに形成されている前記第2係合部の過度の変形を抑制して前記第2係合状態を安定させる係合安定部を前記ケースに設けていることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁接触器に係わり、特に消弧カバーを保持する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁接触器は、絶縁性を有する合成樹脂材で形成した下ケース及び上ケースを備えており、上ケースには、接点をそれぞれ有する端子部が固定されているとともに、上ケース内の消弧室に可動接点及び固定接点を備えた接点部が収納されている。下ケース内には、接点部を駆動させる電磁石が収納されている。そして、上ケースには消弧室内の接点部を覆う消弧カバーが装着されている。
【0003】
短絡事故などで電磁接触器の接点部に異常な大電流が流れると、発生したアークガスによる消弧室の内圧上昇によって消弧カバーが吹き飛ぶおそれがある。そのため、例えば特許文献1の電磁接触器は、上ケースと消弧カバーの一方に第1係合部及び第2係合部を形成し、他方に第1係合部及び第2係合部に係合する第3係合部を形成し、第1係合部と第3係合部とを係合させる第1係合状態とすることで消弧カバーを上ケースに装着し、第2係合部と第3係合部を係合させる第2係合状態とすることで消弧カバーと上ケースとの間に隙間を形成し、発生したアークガスを外部に放出させて消弧室の内圧を減少させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-11450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の電磁接触器は、第1係合状態から第2係合状態に移行する際に、第3係合部が損傷してしまうと、損傷した第3係合部と第2係合部との係合力が低くなり、第2係合状態を保持できない消弧カバーが上ケースから吹き飛ぶおそれがある。
そこで、本発明は、第1係合状態から第2係合状態に移行する際のケースに対する消弧カバーの係合力の低下を防止することで、消弧室に発生したアークガスを外部に放出しつつ消弧カバーの吹き飛びを確実に防止することができる電磁接触器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電磁接触器は、可動接点と固定接点とを有する接点部を消弧室に収納したケースと、消弧室を覆ってケースに装着される消弧カバーと、を備えた電磁接触器において、消弧カバーは、ケースに対する装着方向に離間して第1係合部及び第2係合部が形成され、ケースは、第3係合部及び第4係合部が形成されており、第1係合部及び第3係合部が係合した第1係合状態で、消弧カバーが消弧室を密閉して前記ケースに装着され、第2係合部及び第4係合部が係合した第2係合状態で、消弧カバーとケースの間に隙間を設けた状態でケースに消弧カバーが保持されるようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る一態様の電磁接触器によれば、消弧カバーがケースに装着されている第1係合状態から消弧カバーとケースの間に隙間を設けた第2係合状態に移行する際に、ケースに対する消弧カバーの係合力の低下を確実に防止することで、消弧室に発生したアークガスを外部に放出しつつ消弧カバーの吹き飛びを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る1実施形態の電磁接触器を示す斜視図である。
図2】電磁接触器を消弧カバー側から示した図である。
図3】電磁接触器の上ケースから消弧カバーを外した状態を示す図である。
図4図2におけるIV-IV線矢視の要部断面図である。
図5】消弧カバーを前側から示した図である。
図6】消弧カバーを後側から示した図である。
図7】消弧カバーを外した上ケース側の形状を示す斜視図である。
図8】消弧カバーを外した上ケース側の形状を前側から示した図である。
図9図2におけるX-X線矢視の要部断面図であり、消弧カバーが上ケースに装着されている第1係合状態を示す図である。
図10】消弧カバーが上ケースに隙間を設けて装着されている第2係合状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0010】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
なお、以下の説明で記載されている「左」、「右」、「前」、「後」、「上」及び「下」の用語は、図1で示す方向を参照して用いられている。
【0011】
図1及び図2に示すように、本発明に係る1実施形態を示す電磁接触器1は、上下に分割され、絶縁性を有する合成樹脂材で形成された下ケース2及び上ケース3を備えている。上ケース3には、主回路の電源側端子部4a1~4c1、主回路の負荷側端子部4a2~4c2、補助電源側端子部4d1,補助負荷側端子部4d2が配置されているともに、後述する消弧室12を密閉する消弧カバー7が装着されている。下ケース2内には、後述する接点部6を駆動させる電磁石(不図示)が収納されているともに、下ケース2に電磁石用の一対のコイル端子4eが固定されている。
【0012】
図3は、電磁接触器1の上ケース3から消弧カバー7を取り外した状態を示すものである。上ケース3には、左右方向に離間して前後方向に連続して延在する一対の主回路用ケース壁10a,10bが形成され、主回路用ケース壁10a,10bの間を平行に仕切り、互いに前後方向に離間して2対のケース隔壁11a1,11a2及び11b1,11b2が形成されている。また、主回路用ケース壁10aの外側に平行に補助回路用ケース壁11cが形成されている。そして、一対の主回路用ケース壁10a,10bとケース隔壁11a1,11a1及び11b1,11b2の間に主回路の電源側端子部4a1~4c1、主回路の負荷側端子部4a2~4c2が配置され、主回路用ケース壁10aと補助回路用ケース壁11cとの間に補助電源側端子部4d1及び補助負荷側端子部4d2が配置されている。
そして、上ケース3の一対の主回路用ケース壁10a,10b及びケース隔壁11a,11bで囲まれた中央部に接点部6が配置されており、上ケース3に消弧カバー7を装着することで、図4に示すように、密閉された消弧室12が設けられている。
【0013】
接点部6は、図4に示すように、主回路の電源側端子部4a1~4c1の固定接点13a(図4では主回路の電源側端子部4b1の固定接点13aのみを示す)と、主回路の負荷側端子部4a2~4c2の固定接点13b(図4では、負荷側端子部4b2の固定接点13bのみを示す)と、接点支え14に支持されて固定接点13a,13bに可動接点15a,15bが接離する可動接触子15と、を備えている。そして、接点支え14に、電磁石を構成する可動鉄心16が連結しており、電磁石を構成する励磁コイル(不図示)が励磁状態になると、可動鉄心16とともに接点支え14が図4の下方に移動して可動接点15a,15bが固定接点13a、13bに接触した閉極状態となる。
【0014】
消弧カバー7は、図3に示すように、板形状のカバー本体20と、このカバー本体20の前後方向の縁部から互いに対向して形成されている第1カバー壁部21及び第2カバー壁部22と、を備えている。ここで、図5は、図3に示した上ケース3に装着する前の消弧カバー7を前方から見た図を示し、図6は、図3に示した消弧カバー7を後方から見た図を示している。
【0015】
第1カバー壁部21は、図5に示すように、互いに左右方向に離れて補助側仕切り壁23及び電源側仕切り壁24a~24cが形成され、電源側仕切り壁24a~24cの左右方向の両縁部に、電源側仕切り壁24a~24cの外面より内側の位置から左右方向の外方に突出して上下方向に延在するカバー側係合部25a~25fが形成されている。カバー側係合部25a~25fの各々のカバー本体20から離間している下方位置に、第2フック部26が形成されている。そして、電源側仕切り壁24aの左側縁部に形成されているカバー側係合部25bには、第2フック部26よりカバー本体20に近い上方位置に、第1フック部27が形成されている。また、電源側仕切り壁24cの右側縁部に形成されているカバー側係合部25eにも、第2フック部26よりカバー本体20に近い上方位置に、第1フック部27が形成されている。
【0016】
また、第2カバー壁部22は、図6に示すように、互いに左右方向に離れて補助側仕切り壁28及び負荷側仕切り壁29a~29cが形成され、負荷側仕切り壁29a~29cの左右方向の両縁部に、負荷側仕切り壁29a~29cの外面より内側の位置から左右方向の外方に突出して上下方向に延在するカバー側係合部30a~30fが形成されている。カバー側係合部30a~30fの各々のカバー本体20から離間している下方位置には、第2フック部31が形成されている。そして、負荷側仕切り壁29aの左側縁部に形成されているカバー側係合部30bには、第2フック部31よりカバー本体20に近い上方位置に、第1フック部32が形成されている。また、負荷側仕切り壁29cの右側縁部に形成されているカバー側係合部30eにも、第2フック部31よりカバー本体20に近い上方位置に、第1フック部32が形成されている。
【0017】
一方、図7に示すように、上ケース3の一対の主回路用ケース壁10a,10b及びケース隔壁11a1,11a2の内側(接点部6に近い側)に、カバー側係合部33a~33dが形成されている。カバー側係合部33aは主回路用ケース壁10aの一部から連続して左右方向に延在する板状部位であり、カバー側係合部33dも、主回路用ケース壁10bの一部から連続して左右方向に延在する板状部位である。カバー側係合部33b,33cは、ケース隔壁11a1,11a2の一部から連続して左右方向に延在するC字形状部材である。これらカバー側係合部33a~33dに対して後方に離間した位置に、係合安定板34a~34fが平行に形成されている。
【0018】
そして、図8に示すように、カバー側係合部33a~33dの最も下方向を向く面が、前述した消弧カバー7の第1カバー壁部21のカバー側係合部25a~25fの各々に設けた第2フック部26に係合する第2フック係合部35とされている。また、カバー側係合部33b,33cのC字形状切り欠き部の下方向を向く面が、第1カバー壁部21のカバー側係合部25b、25eに設けた第1フック部27に係合する第1フック係合部36とされている。
【0019】
また、図示しないが、上ケース3の一対の主回路用ケース壁10a,10b及びケース隔壁11b1,11b2の内側(接点部6に近い側)にも、同一形状のカバー側係合部33a~33dが形成されている。また、カバー側係合部33a~33dには、消弧カバー7の第2カバー壁部22のカバー側係合部30a~30fの各々に設けた第2フック部31に係合する第2フック係合部35が形成されている。また、第2カバー壁部22のカバー側係合部30b、30eに設けた第1フック部32に係合する第1フック係合部36が形成されている。そして、カバー側係合部33a~33dに対して前方に離間した位置に、係合安定板34a~34fが平行に形成されている。
【0020】
次に、図9は、図2のX-X線矢視要部断面図であり、消弧カバー7を上ケース3に装着した電磁接触器1を示す図である。なお、図9における上下方向を、消弧カバー7の装着方向と称する。
図9に示すように、上ケース3の前側及び後側に設けている第2フック係合部35及び第1フック係合部36は、消弧カバー7の装着方向に対して直交する係合面として形成されている。
【0021】
図9では、前側に配置した第1カバー壁部21のカバー側係合部25b、後側に配置した第2カバー壁部22のカバー側係合部30bが消弧カバー7の装着方向に沿って配置されているが、第1カバー壁部21のカバー側係合部25a、25c~25f、第2カバー壁部22のカバー側係合部30a、30c~30も消弧カバー7の装着方向に沿って配置されている。そして、第1カバー壁部21のカバー側係合部25a~25fに設けた第2フック部26と、第2カバー壁部22のカバー側係合部30a~30fに設けた第2フック部31の上面には、消弧カバー7の装着方向に対して直交するフック係合面26a、31aが形成されている。
【0022】
また、第1カバー壁部21のカバー側係合部25bに設けた第1フック部27と、カバー側係合部25eに設けた第1フック部27(図5参照)と、第2カバー壁部22のカバー側係合部30bに設けた第1フック部32と、カバー側係合部30eに設けた第1フック部32(図6参照)は、断面三角形状に突出して形成されている。
そして、第1カバー壁部21の第1フック部27が上ケース3の前側の第1フック係合部36に係合し、第2カバー壁部22の第1フック部32が上ケース3の後側の第1フック係合部36に係合する。
【0023】
そして、上ケース3に装着した消弧カバー7は、第1カバー壁部21の補助側仕切り壁23及び電源側仕切り壁24a~24cが、補助電源側端子部4d1及び電源側端子部4a1~4c1と接点部6の間を仕切り、第2カバー壁部22の補助側仕切り壁29及び負荷側仕切り壁29a~29cが、補助負荷側端子部4d2及び負荷側端子部4a2~4c2と接点部6の間を仕切り、カバー本体20が接点部6の上部を覆うことで消弧室12を密閉する。また、図7で示したように、上ケース3に係合安定板34a~34fが形成されているが、これら係合安定板34a~34fは、第1カバー壁部21のカバー側係合部25a~25fの後側近傍に沿って配置され、第2カバー壁部22のカバー側係合部30a~30fの前側近傍にも沿って配置される。
【0024】
そして、電磁接触器1は、短絡事故などで接点部6に異常な大電流が流れ、発生したアークガスにより消弧室12の内圧が過大に上昇することで、消弧カバー7が上ケース3から離脱して浮き上がろうとする。
ここで、消弧室12の内圧が過大に上昇すると、第1カバー壁部21のカバー側係合部25b、25eが後側に弾性変形し、第2カバー壁部22のカバー側係合部30b、30eが前側に弾性変形することで、上ケース3の前側の第1フック係合部36と第1フック部27との係合状態が外れ、上ケース3の後側の第1フック係合部36と第1フック部32との係合状態が外れる。
【0025】
そして、上ケース3に対して消弧カバー7が浮き上がることで、図10に示すように、第1カバー壁部21の6箇所の第2フック部26のフック係合面26aが、上ケース3の6箇所の前側の第2フック係合部35に当接し、第2カバー壁部22の6箇所の第2フック部31のフック係合面31aが、上ケース3の6箇所の後側の第2フック係合部35に当接し、第2フック部26,31及び第2フック係合部35の係合が維持される。これにより、消弧カバー7のカバー本体20と上ケース3の上部との間に隙間が形成され、この隙間がガス抜き穴となって消弧室12内のアークガスが外部に放出され、消弧室12の内圧が減少して消弧カバー7の吹き飛びが防止される。
【0026】
ここで、上ケース3の第1フック係合部36に消弧カバー7の第1フック部27,32が係合し、消弧カバー7が消弧室12を密閉して上ケース3に装着されている状態を、第1係合状態と称する。また、上ケース3の第2フック係合部35に消弧カバー7の第2フック部26,31が係合し、上ケース3と消弧カバー7の間に隙間を設けた状態で消弧カバー7が上ケース3に装着されている状態を、第2係合状態と称する。
【0027】
次に、本実施形態の電磁接触器1の作用効果について説明する。
本実施形態は、消弧カバー7が消弧室12を密閉して上ケース3に装着されている第1係合状態では、上ケース3に設けた第1フック係合部36に消弧カバー7に設けた第1フック部27,32が係合している。そして、アークガスにより消弧室12の内圧が過大に上昇した際には、係合力が弱い第1フック係合部36及び第1フック部27,32の係合が外れ、上ケース3に設けた第2フック係合部35と消弧カバー7に設けた第2フック部26,31とが強い係合力で係合し、消弧カバー7と上ケース3の間に隙間を設けた第2係合状態とするので、消弧室12内のアークガスを外部に放出し、上ケース3から消弧カバー7が吹き飛ぶのを確実に防止することができる。
【0028】
また、第1係合状態では、上ケース3の第1フック係合部36と消弧カバー7の第1フック部27,32とが係合し、第2係合状態では、上ケース3の第2フック係合部35と消弧カバー7の第2フック部26,31とが係合し、第1係合状態と第2係合状態では、消弧カバー7異なる部位が係合している。このため、従来技術のような課題、消弧カバー7、或いは上ケース3に、第1係合状態及び第2係合状態において同一の係合部を使用することで、第1係合状態から第2係合状態に移行する際に係合部が損傷し、第2係合状態を保持できない、という課題が発生しない。したがって、例えば消弧室12の内圧の急上昇により第1係合状態の係合部(第1フック係合部36、第1フック部27,32)の一部が損傷しても、第2係合状態の係合力が低下することがない。
【0029】
また、第1係合状態から第2係合状態に移行する際に、消弧カバー7の第1カバー壁部21に形成したカバー側係合部25a~25fが後側に大きく変位し、第2カバー壁部22に形成したカバー側係合部30a~30fが後側に大きく変位しようとすると、上ケース3に設けた係合安定板34a~34fが、カバー側係合部25a~25f、30a~30fに接触することで大きな変位を規制する。このため、第1係合状態から第2係合状態に移行する際の第2フック係合部35及び第2フック部26,31の係合を常に安定して行うことができる。
【符号の説明】
【0030】
1 電磁接触器1
2 下ケース
3 上ケース(ケース)
4a1,4b1,4c1 主回路の電源側端子部
4a2,4b2,4c2 主回路の負荷側端子部
4d1 補助電源側端子部
4d2 補助負荷側端子部
4e コイル端子
6 接点部
7 消弧カバー
8 端子カバー
10a,10b 主回路用ケース壁
11a1,11a2,11b1,11b2 ケース隔壁
11c 補助回路用ケース壁
12 消弧室
13a 固定接点
13b 固定接点
14 接点支え
15 可動接触子
15a,15b 可動接点
16 可動鉄心
20 カバー本体
21 第1カバー壁部
22 第2カバー壁部
23 補助側仕切り壁
24a,24b,24c 電源側仕切り壁
25a~25f カバー側係合部
26 第2フック部(第2係合部)
26a フック係合面(第2係合面)
27 第1フック部(第1係合部)
28 補助側仕切り壁
29a,29b,29c 負荷側仕切り壁
30a~30f カバー側係合部
31 第2フック部(第2係合部)
31a フック係合面(第2係合面)
32 第1フック部(第1係合部)
33a~33d カバー側係合部
34a~34f 係合安定板(係合安定部)
35 第2フック係合部(第4係合部)
36 第1フック係合部(第3係合部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10