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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】電磁接触器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/54 20060101AFI20240514BHJP
   H01H 50/20 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H01H50/54 G
H01H50/20 Y
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023575089
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 JP2022043018
(87)【国際公開番号】W WO2023139912
(87)【国際公開日】2023-07-27
【審査請求日】2023-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2022007695
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】和賀井 大史
(72)【発明者】
【氏名】高谷 幸悦
(72)【発明者】
【氏名】関谷 優志
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/177962(WO,A1)
【文献】特開2012-15088(JP,A)
【文献】実開平1-137044(JP,U)
【文献】特開2015-79741(JP,A)
【文献】国際公開第2016/046946(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/54
H01H 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定めた奥行方向の手前側に設けられ、連結ばね用溝部が形成された接点支えと、
前記奥行方向の奥側に設けられ、電磁石部によって駆動される可動プランジャと、
板ばねであり、中央が前記可動プランジャに固定され、長手方向の先端側が短手方向に沿って前記連結ばね用溝部に差し込まれる連結ばねと、を備え、
前記連結ばね用溝部には、凹部及び凸部の一方が形成され、
前記連結ばねの先端側には、前記凹部及び前記凸部の他方が形成され、
前記連結ばね用溝部に前記連結ばねの先端側が差し込まれるときに、前記凹部及び前記凸部が互いに嵌り合うことを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記連結ばね用溝部には、前記奥行方向の手前側を向いた面に前記凸部が形成され、
前記連結ばねは、先端側が前記短手方向に隙間を開けて二片に分かれており、前記隙間によって前記凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記凸部は、前記長手方向の内側から見て、前記奥行方向における奥側の底辺より手前側の底辺が短い台形であり、前記隙間が嵌り合うことを特徴とする請求項2に記載の電磁接触器。
【請求項4】
前記連結ばね用溝部には、前記連結ばねの先端に対向する面に前記凹部が形成され、
前記連結ばねには、先端に前記凸部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項5】
前記連結ばね用溝部には、前記奥行方向の手前側を向いた面に前記凹部が形成され、
前記連結ばねの先端側には、前記奥行方向における奥側を向いた面に前記凸部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項6】
前記連結ばね用溝部の入口側には、差し込み方向に沿って奥側に向かうほど前記奥行方向の手前側に向かって傾斜した案内面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項7】
予め定めた奥行方向の手前側に設けられ、連結ばね用溝部が形成された接点支えと、
前記奥行方向の奥側に設けられ、電磁石部によって駆動される可動プランジャと、
板ばねであり、中央が前記可動プランジャに固定され、長手方向の先端側が短手方向に沿って前記連結ばね用溝部に差し込まれる連結ばねと、を備え、
前記接点支えには、前記連結ばね用溝部の入口側に設けられ、前記連結ばね用溝部に差し込まれた前記連結ばねが入口側に変位するときに、前記連結ばねに干渉して脱落を阻止する連結ばね用干渉部が形成されていることを特徴とする電磁接触器。
【請求項8】
前記連結ばね用干渉部は、前記奥行方向の奥側に向かって突出し、
前記連結ばねの先端側は、前記連結ばね用溝部に差し込まれるとき、前記連結ばね用干渉部をくぐれるように変形し、前記連結ばね用干渉部を超えると自らの弾性力によって復元することを特徴とする請求項7に記載の電磁接触器。
【請求項9】
前記接点支えには、前記連結ばね用溝部よりも前記奥行方向の奥側にアーマチュア用溝部が形成され、
板状の磁性体であり、前記連結ばねと共に前記可動プランジャに固定され、面方向に沿って前記アーマチュア用溝部に差し込まれるアーマチュアを備えることを特徴とする請求項1又は7に記載の電磁接触器。
【請求項10】
予め定めた奥行方向の手前側に設けられ、連結ばね用溝部が形成された接点支えと、
前記奥行方向の奥側に設けられ、電磁石部によって駆動される可動プランジャと、
板ばねであり、中央が前記可動プランジャに固定され、長手方向の先端側が短手方向に沿って前記連結ばね用溝部に差し込まれる連結ばねと、を備え、
前記接点支えには、前記連結ばね用溝部よりも前記奥行方向の奥側にアーマチュア用溝部が形成され、
板状の磁性体であり、前記連結ばねと共に前記可動プランジャに固定され、面方向に沿って前記アーマチュア用溝部に差し込まれるアーマチュアを備え、
前記接点支えには、前記アーマチュア用溝部の入口側に設けられ、前記アーマチュア用溝部に差し込まれた前記アーマチュアが入口側に変位するときに、前記アーマチュアに干渉して脱落を阻止するアーマチュア用干渉部が形成されていることを特徴とする電磁接触器。
【請求項11】
前記アーマチュア用干渉部は、前記奥行方向の奥側に向かって突出し、
前記アーマチュアは、前記アーマチュア用溝部に差し込まれるとき、前記アーマチュア用干渉部を超えると前記連結ばねの弾性力によって前記奥行方向の手前側に変位することを特徴とする請求項10に記載の電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁接触器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁接触器は、例えば特許文献1に示されるように、接点支えに可動プランジャが連結ばねを介して連結される。連結ばねは、長手方向及び短手方向を有する板ばねであり、長手方向の中央に可動プランジャが固定され、長手方向の両端側が短手方向に沿って接点支えの溝部に差し込まれることで連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6075508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
連結ばねは、接点支えの溝部に差し込まれるだけの構造なので、振動や組み立て不良によって位置ずれが生じ、電磁接触器の動作に影響を与える可能性があった。
本発明の目的は、電磁接触器において、連結ばねの位置ずれを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る電磁接触器は、接点支えと、可動プランジャと、連結ばねと、を備えている。接点支えは、予め定めた奥行方向の手前側に設けられ、連結ばね用溝部が形成されている。可動プランジャは、奥行方向の奥側に設けられ、電磁石部によって駆動される。連結ばねは、板ばねであり、中央が可動プランジャに固定され、長手方向の先端側が短手方向に沿って連結ばね用溝部に差し込まれる。連結ばね用溝部には、凹部及び凸部の一方が形成され、連結ばねの先端側には、凹部及び凸部の他方が形成されている。連結ばね用溝部に連結ばねの先端側が差し込まれるときに、凹部及び凸部が互いに嵌り合う。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、連結ばね用溝部に連結ばねの先端側が差し込まれるときに、凹部及び凸部が互いに嵌り合うことで、連結ばねにおける短手方向の差し込み位置が規制される。したがって、連結ばねの位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電磁接触器の一部を示す図である。
図2】接点支え及び可動プランジャを示す図である。
図3】接点支えを示す図である。
図4】溝部及び溝部を示す図である。
図5】アーマチュア及び連結ばねを示す図である。
図6】接点支えと可動プランジャとの連結状態を示す図である。
図7】比較例を示す図である。
図8】第二実施形態の溝部及び溝部を示す図である。
図9】第二実施形態のアーマチュア及び連結ばねを示す図である。
図10】第二実施形態の連結状態を示す図である。
図11】第三実施形態の溝部及び溝部を示す図である。
図12】第三実施形態のアーマチュア及び連結ばねを示す図である。
図13】第三実施形態の連結状態を示す図である。
図14】第四実施形態の接点支えを示す図である。
図15】第四実施形態の連結状態を示す図である。
図16】第五実施形態の接点支えを示す図である。
図17】第五実施形態の連結状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《第一実施形態》
《構成》
以下の説明では、互いに直交する三方向を、便宜的に、縦方向、幅方向、及び奥行方向とする。
図1は、電磁接触器11の一部を示す図である。
ここでは、電磁接触器11を、縦方向の一方、幅方向の他方、及び奥行方向の手前側から見た状態を示している。電磁接触器11は、接点支え12と、電磁石部13と、を備えている。接点支え12は、奥行方向の手前側に設けられ、電磁石部13は、奥行方向の奥側に設けられている。
【0010】
図2は、接点支え12及び可動プランジャ14を示す図である。
ここでは、接点支え12及び可動プランジャ14を、縦方向の一方、幅方向の他方、及び奥行方向の手前側から見た状態を示している。
接点支え12は、樹脂製であり、幅寸法及び奥行寸法に比べて縦寸法が小さい略直方体状に形成され、図示しない可動接触子を支持する。
電磁石部13は、奥行方向に進退可能な可動プランジャ14を備えている。可動プランジャ14は、奥行方向に延びる円柱状の鉄心であり、電磁石部13のオン/オフに応じて奥行方向に進退する。可動プランジャ14には、奥行方向における手前側の端部に、アーマチュア15及び連結ばね16に固定されている。
【0011】
アーマチュア15は、厚さが均一で幅方向及び縦方向に沿った板状の磁性体であり、奥行方向から見て略矩形状に形成され、図示しないヨークや可動プランジャ14と共に磁路を形成する。連結ばね16は、厚さが略均一で幅方向及び縦方向に沿った金属製の板ばねであり、幅方向を長手方向とし、縦方向を短手方向としている。アーマチュア15における奥行方向の手前側に連結ばね16が重ねられて共に可動プランジャ14に固定されている。アーマチュア15及び連結ばね16は、縦方向に沿って接点支え12における奥行方向の奥側に差し込まれることで、接点支え12に可動プランジャ14が連結される。
【0012】
図3は、接点支え12を示す図である。
図中の(a)は、接点支え12を、縦方向の一方、幅方向の他方、及び奥行方向の手前側から見た状態を示している。図中の(b)は、接点支え12を、縦方向の一方から見た状態を示している。接点支え12には、奥行方向の奥側に、アーマチュア15が差し込まれる一対の溝部21(アーマチュア用溝部)と、連結ばね16が差し込まれる一対の溝部22(連結ばね用溝部)と、が形成されている。アーマチュア15が差し込まれる一対の溝部21は、連結ばね16が差し込まれる一対の溝部22よりも、幅方向の間隔が広く、且つ奥行方向の奥側に設けられている。
【0013】
図4は、溝部21及び溝部22を示す図である。
図中の(a)は、幅方向における一方側の溝部21及び溝部22を、縦方向の一方、幅方向の他方、及び奥行方向の手前側から見た状態を示している。図中の(b)は、幅方向における一方側の溝部22を通り、幅方向及び縦方向に沿った断面を、奥行方向の手前側から見た状態である。
アーマチュア15が差し込まれる溝部21は、幅方向の内側を向いた側面25と、奥行方向の手前側を向いた底面26と、奥行方向の奥側を向いた天井面27と、縦方向の一方側を向いた終端面28と、を備えている。したがって、溝部21は、縦方向の一方側、及び幅方向の内側が開放されている。底面26から天井面27までの距離は、アーマチュア15の厚さよりも大きい。底面26と天井面27で挟まれた領域のうち、縦方向の一端から終端面28に至るまでが、アーマチュア15の差し込み代となる。
【0014】
連結ばね16が差し込まれる溝部22は、幅方向の内側を向いた側面31と、奥行方向の手前側を向いた底面32と、奥行方向の奥側を向いた天井面33と、縦方向の一方側を向いた終端面34と、を備えている。したがって、溝部22は、縦方向の一方側、及び幅方向の内側が開放されている。底面32から天井面33までの距離は、連結ばね16における奥行方向の高さよりも大きい。底面32と天井面33で挟まれた領域のうち、縦方向の一端から終端面34に至るまでの範囲が、連結ばね16の差し込み代となる。溝部22の入口側には、縦方向の他方側に向かうほど奥行方向の手前側に向かって傾斜した案内面35が形成されている。底面32には、幅方向の外側に、奥行方向の手前側に向かって凸となる凸部36が形成されている。凸部36は、幅方向の内側から見て、奥行方向における奥側の下底より手前側の上底が短い台形であり、より具体的には、下底における両端の内角が互いに等しくなる等脚台形である。凸部36の高さは、連結ばね16の厚さ程度である。
【0015】
図5は、アーマチュア15及び連結ばね16を示す図である。
図中の(a)は、アーマチュア15及び連結ばね16を、奥行方向の手前側から見た状態を示している。図中の(b)は、アーマチュア15及び連結ばね16を、縦方向の一方側から見た状態を示している。アーマチュア15には、幅方向の両端側で縦方向の中央となる位置に、幅方向の外側に突出して溝部21に差し込み可能な差し込み片41が形成されている。連結ばね16は、幅方向の中央が可動プランジャ14に固定され、幅方向の先端側が中央よりも段差を介して奥行方向の手前側になるように、縦方向から見てクランク状に曲げ加工されている。外部からの荷重がない場合、連結ばね16の先端側とアーマチュア15との離隔距離Dは、溝部21の天井面27から溝部22の底面32までの奥行寸法Lよりも小さい(図6の(a))。連結ばね16の先端側は、縦方向に隙間42(凹部)を開けて二片に分かれている。隙間42は、連結ばね16における縦方向の中心位置にあり、奥行方向から見て幅方向の外側に開いたU字状に形成されている。隙間42の縦寸法は、凸部36における上底の縦寸法よりも大きい。
【0016】
図6は、接点支え12と可動プランジャ14との連結状態を示す図である。
図中の(a)は、幅方向における一方側の溝部21及び溝部22を、縦方向の一方側から見た状態を示している。溝部21にアーマチュア15の差し込み片41を差し込み、且つ溝部22に連結ばね16の先端側を差し込むと、連結ばね16の先端側が案内面35及び底面32によって奥行方向の手前側に押し上げられて撓む。そのため、連結ばね16の弾性力により、アーマチュア15が奥行方向の手前側へと引き付けられ、溝部21の底面26から離間する。このとき、アーマチュア15と連結ばね16とで、接点支え12における天井面27と底面32との間を挟み込む。このように、アーマチュア15が溝部21の天井面27を押圧すると共に、連結ばね16の先端側が溝部22の底面32を押圧することで、接点支え12に可動プランジャ14が連結される。
【0017】
図中の(b)は、幅方向における一方側の溝部22を通り、幅方向及び縦方向に沿った断面を、奥行方向の手前側から見た状態である。溝部22に連結ばね16の先端側を差し込むとき、連結ばね16は、隙間42を開けて分かれた二片のうち縦方向の他方側が、凸部36における斜面(台形の脚)及び上面(上底)によって奥行方向の手前側に押し上げられて撓む。そして、二片のうち縦方向の他方側が、凸部36の上面を乗り越え、凸部36における縦方向の中心位置と隙間42における縦方向の中心位置とが一致すると、形状が回復する。こうして、連結ばね16における先端側の隙間42が、溝部22の凸部36に嵌り合うことで、連結ばね16は縦方向の位置が規制されている。
【0018】
《作用効果》
次に、第一実施形態の主要な作用効果について説明する。
電磁接触器11は、接点支え12と、可動プランジャ14と、連結ばね16と、を備えている。接点支え12は、予め定めた奥行方向の手前側に設けられ、溝部22が形成されている。可動プランジャ14は、奥行方向の奥側に設けられ、電磁石部13によって駆動される。連結ばね16は、板ばねであり、中央が可動プランジャ14に固定され、長手方向の先端側が短手方向に沿って溝部22に差し込まれる。溝部22には、凸部36が形成され、連結ばね16の先端側には、凹部となる隙間42が形成され、溝部22に連結ばね16の先端側が差し込まれるときに、隙間42及び凸部36が互いに嵌り合う。このように、溝部22に連結ばね16の先端側が差し込まれるときに、隙間42及び凸部36が互いに嵌り合うことで、連結ばね16における短手方向の差し込み位置が規制される。したがって、連結ばね16の位置ずれを抑制することができる。
【0019】
溝部22には、奥行方向の手前側を向いた底面32に凸部36が形成され、連結ばね16は、先端側が短手方向に隙間42を開けて二片に分かれており、隙間42によって凹部が形成されている。これにより、隙間42及び凸部36が確実に嵌り合い、連結ばね16の位置ずれを抑制することができる。また、組み立ての際には、隙間42及び凸部36が嵌り合うときの手応え(節度感)が得られることで、差し込みが完了したことを容易に認識することができる。
凸部36は、長手方向の内側から見て、奥行方向における奥側の底辺(下底)より手前側の底辺(上底)が短い台形であり、隙間42が嵌り合う。これにより、溝部22に連結ばね16の先端側を差し込むときに、連結ばね16は、隙間42を開けて分かれた二片のうち差し込み方向の奥側が、凸部36を容易に乗り越えることができる。
【0020】
溝部22の入口側には、差し込み方向に沿って奥側に向かうほど奥行方向の手前側に向かって傾斜した案内面35が形成されている。これにより、溝部22に連結ばね16の先端側を差し込むときに、連結ばね16の先端側が案内面35によって奥行方向の手前側へと徐々に持ち上げられてゆき、連結ばね16の先端側を溝部22へと誘導することができる。
接点支え12には、溝部22よりも奥行方向の奥側に溝部21が形成されている。電磁接触器11は、アーマチュア15を備えている。アーマチュア15は、板状の磁性体であり、連結ばね16と共に可動プランジャ14に固定され、面方向に沿って溝部21に差し込まれる。このように、アーマチュア15が溝部21に差し込まれ、且つ連結ばね16が溝部22に差し込まれることで、接点支え12に対して可動プランジャ14を堅固に連結することができる。
【0021】
次に、比較例について説明する。
比較例では、溝部22の凸部36を省略し、且つ連結ばね16における先端側の隙間42を省略しており、それ以外は第一実施形態と同様の構成であるため、共通する部分については同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
図7は、比較例を示す図である。
図中の(a)は、幅方向における一方側の溝部21及び溝部22を、縦方向の一方側から見た状態を示している。図中の(b)は、幅方向における一方側の溝部22を通り、幅方向及び縦方向に沿った断面を、奥行方向の手前側から見た状態である。溝部22に連結ばね16を差し込むだけの構造では、振動や組み立て不良によって位置ずれが生じ、電磁接触器の動作に影響を与える可能性があった。
【0022】
《変形例》
第一実施形態では、連結ばね16の先端側が隙間42を開けて二片に分かれている構成について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、先端側が二片に分かれていなくても、凸部36に嵌り合う形状であれば、奥行方向に貫通した穴や奥行方向の奥側に向かって凹となる有底の凹部を形成してもよい。
第一実施形態では、幅方向から見て台形となる凸部36を設ける構成について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、連結ばね16の凹部に嵌り合う形状であれば、錐台や半球状となる凸部を設けてもよい。
【0023】
《第二実施形態》
《構成》
第二実施形態は、溝部22及び連結ばね16の他の態様を示すものであり、それ以外については前述した第一実施形態と同様の構成であるため、共通する部分については同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
図8は、第二実施形態の溝部21及び溝部22を示す図である。
図中の(a)は、幅方向における一方側の溝部21及び溝部22を、縦方向の一方、幅方向の他方、及び奥行方向の手前側から見た状態を示している。図中の(b)は、幅方向における一方側の溝部22を通り、幅方向及び縦方向に沿った断面を、奥行方向の手前側から見た状態である。溝部22の入口側には、縦方向の他方側に向かうほど幅方向の内側に向かって傾斜した案内面51が形成されている。溝部22の側面31には、幅方向の外側に向かって凹となり、幅方向から見て略矩形状の凹部52が形成されている。
【0024】
図9は、第二実施形態のアーマチュア15及び連結ばね16を示す図である。
図中の(a)は、アーマチュア15及び連結ばね16を、縦方向の一方側、幅方向の他方側、及び奥行方向の手前側から見た状態を示している。図中の(b)は、アーマチュア15及び連結ばね16を、奥行方向の手前側から見た状態を示している。連結ばね16の先端には、幅方向の外側に向かって凸となる凸部53が形成されている。凸部53は、連結ばね16における縦方向の中心位置にあり、凸部53の先端は、縦方向における両側の角部が面取りされている。
【0025】
図10は、第二実施形態の連結状態を示す図である。
図中の(a)は、幅方向における一方側の溝部21及び溝部22を、縦方向の一方側から見た状態を示している。図中の(b)は、凹部52及び凸部53を通り、幅方向及び奥行方向に沿った断面を、縦方向の一方側から見た状態である。溝部22に連結ばね16の先端側を差し込むと、連結ばね16の凸部53が案内面51に接触すると共に、連結ばね16の先端側が案内面35に接触する。これにより、連結ばね16の先端側が案内面51及び案内面35によって奥行方向の手前側に押し上げられて撓む。凸部53の先端が側面31に接触しているときには、連結ばね16の先端側が底面32に接触することはない。凸部53の先端が凹部52に到達すると、連結ばね16における先端側の撓みが軽減され、底面32に接触する。こうして、連結ばね16における先端の凸部53が、溝部22の凹部52に嵌り合うことで、連結ばね16は縦方向の位置が規制されている。
他の構成については、前述した第一実施形態と同様である。
【0026】
《作用効果》
次に第二実施形態の主要な作用効果について説明する。
溝部22には、連結ばね16の先端に対向する側面31に凹部52が形成され、連結ばね16には、先端に凸部53が形成されている。これにより、溝部22に連結ばね16の先端側が差し込まれるときに、凹部52及び凸部53が嵌り合い、連結ばね16の位置ずれを抑制することができる。また、組み立ての際には、凹部52及び凸部53が嵌り合うときの手応え(節度感)が得られることで、差し込みが完了したことを容易に認識することができる。
他の作用効果については、前述した第一実施形態と同様である。
【0027】
《第三実施形態》
《構成》
第三実施形態は、溝部22及び連結ばね16の他の態様を示すものであり、それ以外については前述した第一実施形態と同様の構成であるため、共通する部分については同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
図11は、第三実施形態の溝部21及び溝部22を示す図である。
図中の(a)は、幅方向における一方側の溝部21及び溝部22を、縦方向の一方、幅方向の他方、及び奥行方向の手前側から見た状態を示している。図中の(b)は、幅方向における一方側の溝部22を通り、幅方向及び縦方向に沿った断面を、奥行方向の手前側から見た状態である。溝部22の底面32には、奥行方向の奥側に向かって凹となり、奥行方向から見て略矩形状の凹部55が形成されている。
【0028】
図12は、第三実施形態のアーマチュア15及び連結ばね16を示す図である。
図中の(a)は、アーマチュア15及び連結ばね16を、縦方向の一方側、幅方向の他方側、及び奥行方向の手前側から見た状態を示している。図中の(b)は、連結ばね16を、縦方向の一方側、幅方向の他方側、及び奥行方向の奥側から見た状態を示している。連結ばね16の先端側には、奥行方向の奥側を向いた面のうち、最も奥行方向の奥側に出っ張った位置に、さらに奥行方向の奥側に向かって凸となる凸部56が形成されている。凸部56は、連結ばね16における縦方向の中心位置にある。凸部56は、絞り加工によって形成されており、奥行方向の手前側を向いた面では、奥行方向の奥側に向かって凹んでいる。
【0029】
図13は、第三実施形態の連結状態を示す図である。
図中の(a)は、幅方向における一方側の溝部21及び溝部22を、縦方向の一方側から見た状態を示している。図中の(b)は、凹部55及び凸部56を通り、幅方向及び奥行方向に沿った断面を、縦方向の一方側から見た状態である。溝部22に連結ばね16の先端側を差し込むと、連結ばね16の凸部56が案内面35に接触し、連結ばね16の先端側が案内面35によって奥行方向の手前側に押し上げられて撓む。凸部56の先端が凹部55に到達すると、連結ばね16における先端側の撓みが軽減され、底面32に接触する。こうして、連結ばね16における先端側の凸部56が、溝部22の凹部55に嵌り合うことで、連結ばね16は縦方向の位置が規制されている。
他の構成については、前述した第一実施形態と同様である。
【0030】
《作用効果》
次に第三実施形態の主要な作用効果について説明する。
溝部22には、奥行方向の手前側を向いた底面32に凹部55が形成され、連結ばね16の先端側には、奥行方向における奥側を向いた面に凸部56が形成されている。これにより、溝部22に連結ばね16の先端側が差し込まれるときに、凹部55及び凸部56が嵌り合い、連結ばね16の位置ずれを抑制することができる。また、組み立ての際には、凹部55及び凸部56が嵌り合うときの手応え(節度感)が得られることで、差し込みが完了したことを容易に認識することができる。
他の作用効果については、前述した第一実施形態と同様である。
【0031】
《第四実施形態》
《構成》
第四実施形態は、接点支え12の他の態様を示すものであり、それ以外については前述した第一実施形態と同様の構成であるため、共通する部分については同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
図14は、第四実施形態の接点支え12を示す図である。
図中の(a)は、接点支え12を、縦方向の一方側、幅方向の他方側、及び奥行方向の奥側から見た状態を示している。図中の(b)は、接点支え12を、縦方向の他方側、幅方向の他方側、及び奥行方向の奥側から見た状態を示している。接点支え12には、溝部22の入口側に、奥行方向の奥側に向かって突出した干渉部61(連結ばね用干渉部)が形成されている。干渉部61は、幅方向における一方側の溝部22から他方側の溝部22まで延びている。
【0032】
図15は、第四実施形態の連結状態を示す図である。
図中の(a)は、幅方向における一方側の溝部21及び溝部22を、縦方向の一方側から見た状態を示している。図中の(b)は、接点支え12において、干渉部61を通り縦方向及び奥行方向に沿ったA-A断面を、幅方向の内側から見た状態である。溝部22に連結ばね16の先端側を差し込むと、連結ばね16の先端側が案内面35及び底面32によって奥行方向の手前側に押し上げられて撓む。このとき、連結ばね16の先端側が干渉部61によって押さえつけられるため、先端側を幅方向の外側へ伸ばして干渉部61をくぐれるように変形する。そして、連結ばね16の先端側が干渉部61を超えると、自らの弾性力によって先端側を幅方向の内側へ戻すように復元する。このとき、図中の(b)に示すように、連結ばね16の先端側は、最も奥行方向の手前側に出っ張った部位が、干渉部61の下端よりも奥行方向の手前側に位置することになる。
他の構成については、前述した第一実施形態と同様である。
【0033】
《作用効果》
次に第四実施形態の主要な作用効果について説明する。
電磁接触器11は、接点支え12と、可動プランジャ14と、連結ばね16と、を備えている。接点支え12は、予め定めた奥行方向の手前側に設けられ、溝部22が形成されている。可動プランジャ14は、奥行方向の奥側に設けられ、電磁石部13によって駆動される。連結ばね16は、板ばねであり、中央が可動プランジャ14に固定され、長手方向の先端側が短手方向に沿って溝部22に差し込まれる。接点支え12には、溝部22の入口側に設けられ、溝部22に差し込まれた連結ばね16が入口側に変位するときに、連結ばね16に干渉して脱落を阻止する干渉部61が形成されている。これにより、連結ばね16が溝部22の入口側に変位しても、連結ばね16の先端側が干渉部61に引っ掛かり、溝部22からの脱落を阻止することができる。すなわち、連結ばね16の位置ずれを抑制することができる。
【0034】
干渉部61は、奥行方向の奥側に向かって突出している。連結ばね16の先端側は、溝部22に差し込まれるとき、干渉部61をくぐれるように変形し、干渉部61を超えると自らの弾性力によって復元する。これにより、連結ばね16を溝部22に差し込むときには、干渉部61を通過することを許容でき、溝部22に差し込まれた後に連結ばね16が入口側へ変位しようとするときには、溝部22からの脱落を阻止することができる。
他の作用効果については、前述した第一実施形態と同様である。
【0035】
《変形例》
第四実施形態では、第一実施形態をベースにして干渉部61を追加する構成について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、第二実施形態や第三実施形態をベースにして干渉部61を追加する構成としてもよい。さらには、第一実施形態の比較例をベースにして干渉部61を追加する構成としてもよい。すなわち、連結ばね16の位置ずれは、干渉部61によって抑制されるため、溝部22の凸部36や連結ばね16の隙間42は省略してもよい。
【0036】
《第五実施形態》
《構成》
第五実施形態は、接点支え12の他の態様を示すものであり、それ以外については前述した第一実施形態と同様の構成であるため、共通する部分については同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
図16は、第五実施形態の接点支え12を示す図である。
図中の(a)は、接点支え12を、縦方向の一方側、幅方向の他方側、及び奥行方向の奥側から見た状態を示している。図中の(b)は、接点支え12を、縦方向の他方側、幅方向の他方側、及び奥行方向の奥側から見た状態を示している。接点支え12には、溝部21の入口側に、奥行方向の奥側に向かって突出した干渉部62(アーマチュア用干渉部)が形成されている。干渉部62は、幅方向における一方側及び他方側の双方に設けられている。
【0037】
図17は、第五実施形態の連結状態を示す図である。
図中の(a)は、幅方向における一方側の溝部21及び溝部22を、縦方向の一方側から見た状態を示している。図中の(b)は、接点支え12において、縦方向及び奥行方向に沿ったB-B断面を、幅方向の内側から見た状態である。溝部21にアーマチュア15の差し込み片41を差し込み、且つ溝部22に連結ばね16の先端側を差し込むと、連結ばね16の先端側が案内面35及び底面32によって奥行方向の手前側に押し上げられて撓む。そのため、連結ばね16の弾性力により、アーマチュア15が奥行方向の手前側へと引き付けられ、溝部21の底面26から離間する。このとき、図中の(b)に示すように、アーマチュア15は、奥行方向の手前側を向いた上面が、干渉部62の下端よりも奥行方向の手前側に位置することになる。
他の構成については、前述した第一実施形態と同様である。
【0038】
《作用効果》
次に第五実施形態の主要な作用効果について説明する。
電磁接触器11は、接点支え12と、可動プランジャ14と、連結ばね16と、を備えている。接点支え12は、予め定めた奥行方向の手前側に設けられ、溝部22が形成されている。可動プランジャ14は、奥行方向の奥側に設けられ、電磁石部13によって駆動される。連結ばね16は、板ばねであり、中央が可動プランジャ14に固定され、長手方向の先端側が短手方向に沿って溝部22に差し込まれる。接点支え12には、溝部22よりも奥行方向の奥側に溝部21が形成されている。電磁接触器11は、アーマチュア15を備えている。アーマチュア15は、板状の磁性体であり、連結ばね16と共に可動プランジャ14に固定され、面方向に沿って溝部21に差し込まれる。接点支え12には、溝部21の入口側に設けられ、溝部21に差し込まれたアーマチュア15が入口側に変位するときに、アーマチュア15に干渉して脱落を阻止する干渉部62が形成されている。これにより、アーマチュア15が溝部21の入口側に変位しても、アーマチュア15が干渉部62に引っ掛かり、溝部21からの脱落を阻止することができる。すなわち、アーマチュア15を介して間接的に連結ばね16の位置ずれを抑制することができる。
【0039】
干渉部62は、奥行方向の奥側に向かって突出している。アーマチュア15は、溝部21に差し込まれるとき、干渉部62を超えると連結ばね16の弾性力によって奥行方向の手前側に変位する。これにより、アーマチュア15を溝部21に差し込むときには、干渉部62を通過することを許容でき、溝部21に差し込まれた後にアーマチュア15が入口側へ変位しようとするときには、溝部21からの脱落を阻止することができる。
他の作用効果については、前述した第一実施形態と同様である。
【0040】
《変形例》
第五実施形態では、第一実施形態をベースにして干渉部62を追加する構成について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、第二実施形態や第三実施形態をベースにして干渉部62を追加する構成としてもよい。さらには、第一実施形態の比較例をベースにして干渉部62を追加する構成としてもよい。すなわち、連結ばね16の位置ずれは、干渉部62によって間接的に抑制されるため、溝部22の凸部36や連結ばね16の隙間42は省略してもよい。
【0041】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0042】
11…電磁接触器、12…接点支え、13…電磁石部、14…可動プランジャ、15…アーマチュア、16…連結ばね、21…溝部、22…溝部、25…側面、26…底面、27…天井面、28…終端面、31…側面、32…底面、33…天井面、34…終端面、35…案内面、36…凸部、41…差し込み片、42…隙間、51…案内面、52…凹部、53…凸部、55…凹部、56…凸部、61…干渉部、62…干渉部
図1
図2
図3
図4
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図10
図11
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図17