IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エビデントの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】光学アダプタおよび内視鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/24 20060101AFI20240514BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240514BHJP
   G02B 7/18 20210101ALI20240514BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G02B23/24 B
A61B1/00 650
A61B1/00 715
A61B1/00 731
G02B7/18 100
G02B23/26 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018085745
(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2019191424
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-10
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松崎 直樹
【合議体】
【審判長】秋田 将行
【審判官】齋藤 卓司
【審判官】山村 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-222263(JP,A)
【文献】特開昭60-088920(JP,A)
【文献】特開2013-167818(JP,A)
【文献】特開2009-273642(JP,A)
【文献】特開2001-209091(JP,A)
【文献】特開2007-011149(JP,A)
【文献】特開平11-064715(JP,A)
【文献】特開2003-215468(JP,A)
【文献】特開2008-099746(JP,A)
【文献】特開平9-149883(JP,A)
【文献】特開2008-058807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G02B23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の挿入部の先端部に着脱自在な光学アダプタであって、
被検体からの光が入射する方向を反射して変更する反射面を有するプリズムと、
前記プリズムの前記反射面と前記反射面に交差する異なる面との角部以外を保持する保持凸部を有するプリズム保持部材と、
前記プリズム保持部材と前記プリズムを固着する接着部と、
を備え、
前記プリズム保持部材の前記保持凸部は、前記プリズムを保持し、前記角部の稜線を含まない前記異なる面の領域と対向する平面を備え、
前記平面は、前記プリズムの前記反射面と交差する前記異なる面と平行な方向に、前記角部から所定の距離を有して離間し、かつ、前記異なる面に対して前記平行な方向に直交する方向に離間して対向し、
前記接着部が前記異なる面と前記平面との対向面間の隙間に充填されて固化し、前記プリズムが前記プリズム保持部材の前記保持凸部の前記平面によって保持されることを特徴とする光学アダプタ。
【請求項2】
前記接着部は、弾性接着剤が固化した弾性接着部であることを特徴とする請求項1に記載の光学アダプタ。
【請求項3】
前記プリズムは、前記光が入射する入射面を有し、
前記保持凸部は、前記入射面と前記異なる面が交差し、前記角部とは異なる角部以外に接触して前記プリズムを保持することを特徴とする請求項1に記載の光学アダプタ。
【請求項4】
前記プリズム保持部材は、前記平面が対向する2つの前記保持凸部が前記プリズムの基端面が当接する先端面から先端側に突出し、
前記先端面と2つの前記平面が交差する部分に前記プリズムの前記基端面と前記異なる面とが交差する角部が接触しないようにする溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学アダプタ。
【請求項5】
前記溝部は、前記角部に所定の距離を有して対向する位置に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の光学アダプタ。
【請求項6】
前記溝部に充填されて固化する弾性接着部を設けたことを特徴とする請求項5に記載の光学アダプタ。
【請求項7】
2つの前記保持凸部を前記反射面よりも先端側で連結する補強部を有していることを特徴とする請求項4に記載の光学アダプタ。
【請求項8】
請求項1に記載の光学アダプタを備えたことを特徴とする内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入部の先端部に着脱自在な光学アダプタおよび、この光学アダプタを備えた内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内視鏡は、工業分野および医療分野において広く利用されている。内視鏡は、観察対象物内に挿入する挿入部と、対象物内を撮像して得られた観察画像である内視鏡画像を表示する表示部を有する本体部とを備えて構成されたものが一般的である。
【0003】
内視鏡は、医療分野および工業分野を問わず、湾曲部を備えて視野方向を可変して、所望の方向を正面視できるような構成が周知である。なお、特に、内視鏡は、工業分野においては、挿入部をボイラ、タービン、エンジンなどの被検体の内部に挿入して、内部の傷や腐食を観察、検査などするために使用される。
【0004】
このような内視鏡は、例えば、特許文献1に開示されるように、挿入部の先端部に撮像装置が設けられた構成があり、先端部にプリズムなどの光学部品を配置して撮像装置の撮像素子を横向きにして、撮影光の入射方向を変更することで挿入部を細径化する内視鏡の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-131383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特に、工業用の内視鏡は、挿入部を被検体へ挿入する過程において、先端部が管路壁、各種部品などにぶつかり衝撃が加えられる。
【0007】
そのため、特許文献1の内視鏡では、プリズムのホルダに対する位置決め精度及び接合強度を高めることができるが、先端部に設けられるプリズムが損傷する虞があるという問題があった。
【0008】
なお、プリズムを保持する固定枠の剛性を上げると、固定枠の体積、特に厚みを増やす必要があり、固定枠とプリズムの間にゴムなどの衝撃吸収部材を設けたりすると、そのためのスペースが必要になり、いずれも小径化が難しくなってしまい挿入部の先端部が大型化するという課題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、外部からの衝撃に対して内部の光学部品の損傷および挿入部の先端部分の大型化を防止する光学アダプタおよび内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における一態様の光学アダプタは、内視鏡の挿入部の先端部に着脱自在な光学アダプタであって、被検体からの光が入射する方向を反射して変更する反射面を有するプリズムと、前記プリズムの前記反射面と前記反射面に交差する異なる面との角部以外を保持する保持凸部を有するプリズム保持部材と、前記プリズム保持部材と前記プリズムを固着する接着部と、を備え、前記プリズム保持部材の前記保持凸部は、前記プリズムを保持し、前記角部の稜線を含まない前記異なる面の領域と対向する平面を備え、前記平面は、前記プリズムの前記反射面と交差する前記異なる面と平行な方向に、前記角部から所定の距離を有して離間し、かつ、前記異なる面に対して前記平行な方向に直交する方向に離間して対向し、前記接着部が前記異なる面と前記平面との対向面間の隙間に充填されて固化し、前記プリズムが前記プリズム保持部材の前記保持凸部の前記平面によって保持される。
【0011】
本発明における一態様の内視鏡は、挿入部の先端部に着脱自在であって、被検体からの光が入射する方向を反射して変更する反射面を有するプリズムと、前記プリズムの前記反射面と前記反射面に交差する異なる面との角部以外を保持する保持凸部を有するプリズム保持部材と、前記プリズム保持部材と前記プリズムを固着する接着部と、を備え、前記プリズム保持部材の前記保持凸部は、前記プリズムを保持し、前記角部の稜線を含まない前記異なる面の領域と対向する平面を備え、前記平面は、前記プリズムの前記反射面と交差する前記異なる面と平行な方向に、前記角部から所定の距離を有して離間し、かつ、前記異なる面に対して前記平行な方向に直交する方向に離間して対向し、前記接着部が前記異なる面と前記平面との対向面間の隙間に充填されて固化し、前記プリズムが前記プリズム保持部材の前記保持凸部の前記平面によって保持される光学アダプタを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外部からの衝撃に対して内部の光学部品の損傷および挿入部の先端部分の大型化を防止する光学アダプタおよび内視鏡を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態の内視鏡装置の外観構成図
図2】同、光学アダプタの構成を示す斜視図
図3】同、光学アダプタの部分的に断面を示した斜視図
図4】同、プリズムとプリズムホルダの構成を示す分解斜視図
図5】同、プリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す斜視図
図6】同、プリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す上面図
図7】同、プリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す側面図
図8】同、図6の円Aの拡大図
図9】同、変形例の図6の円Aの拡大図
図10】同、第1の変形例の一態様に係り、プリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す側面図
図11】同、第1の変形例の他の態様に係り、プリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す側面図
図12】同、第2の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す上面図
図13】同、第2の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す側面図
図14】同、第3の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す上面図
図15】同、第3の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す側面図
図16】同、第3の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す正面図
図17】同、第4の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す上面図
図18】同、第4の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す側面図
図19】同、第4の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す正面図
図20】同、第5の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す側面図
図21】同、第5の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す正面図
図22】同、第6の変形例に係る、一態様の2つのプリズムが接合された接合プリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す側面図
図23】同、第6の変形例に係る、他の態様の2つのプリズムが接合された接合プリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明である光学アダプタおよび内視鏡について説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0016】
(第1の実施形態)
まず、本発明の一実施形態の内視鏡装置の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態の内視鏡装置の外観構成図、図2は光学アダプタの構成を示す斜視図、図3は光学アダプタの部分的に断面を示した斜視図、図4はプリズムとプリズムホルダの構成を示す分解斜視図、図5はプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す斜視図、図6はプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す上面図、図7はプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す側面図、図8図6の円Aの拡大図、図9は変形例の図6の円Aの拡大図である。
【0017】
図1に示すように、内視鏡装置1は、メインユニットである本体部2と、本体部2に接続される内視鏡としてのスコープユニット3とを含んで構成される。本体部2は、内視鏡画像、操作メニューなどが表示される表示装置としての液晶パネル(以下、LCD(Liquid Crystal Display)と略す)4を有する。LCD4は、内視鏡画像を表示する表示部である。このLCD4には、タッチパネルが設けられていてもよい。
【0018】
スコープユニット3は、操作部5と、操作部5と本体部2とを接続するユニバーサルケーブル6と、可撓性の挿入チューブからなる挿入部7とを有する。スコープユニット3は、ユニバーサルケーブル6を介して本体部2に着脱可能となっている。
【0019】
挿入部7の先端部8には、図示しない撮像ユニットが内蔵されている。撮像ユニットは、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの撮像素子と、撮像素子の撮像面側に配置されたレンズなどの撮像光学系から構成される。先端部8の基端側には、湾曲部9が設けられている。
【0020】
また、先端部8には、内視鏡用光学アダプタである光学アダプタ10が取り付け可能になっている。操作部5には、フリーズボタン、記録指示ボタンなどの各種操作ボタンが設けられている。なお、スコープユニット3は、撮像素子を有していない、イメージガイドファイバーを備えた構成としてもよい。
【0021】
ユーザは、操作部5の各種操作ボタンを操作して、被写体の撮像、動画記録、静止画記録等を行うことができる。また、ユーザは、上下左右(U/D/L/R)方向の湾曲ボタン5aを操作して湾曲部9を所望の方向へ湾曲させることができる。
【0022】
さらに、LCD4にタッチパネルが設けられている構成の場合、ユーザは、タッチパネルを操作して、内視鏡装置1の種々の操作を指示することもできる。
【0023】
撮像して得られた内視鏡画像の画像データは、検査対象の検査データであり、記録媒体であるメモリカード11に記録される。メモリカード11は、本体部2に対して着脱可能となっている。なお、画像データは、メモリカード11に記録されるが、本体部2に内蔵された図示しないメモリに記録されるようにしてもよい。
【0024】
スコープユニット3の挿入部7の先端部8には、光学アダプタ10が着脱自在に装着される。図2および図3に示すように、この光学アダプタ10は、先端が閉塞する外形が略円柱状のカバー部材を構成する枠体12を備え、この枠体12の基端側に回動自在に設けられたトメワ13と、が設けられている。
【0025】
枠体12は、外周の一側部分に平面部14が形成され、この平面部14に照明窓を構成する照明光学部品としての照明レンズ15と一面が観察窓を構成する光路変換部材である観察光学部品としてのプリズム16が配設されている。
【0026】
なお、枠体12内には、プリズム16を保持する硬質樹脂、金属などから形成された光学部品保持部材であるプリズムホルダ17が嵌合されている。また、枠体12内には、照明光を伝送するライトガイド19が配設されている。
【0027】
このライトガイド19は、先端分部が湾曲形成され、照明光を出射する端面が照明レンズ15の背面に対向配置されている。なお、プリズムホルダ17は、孔部21を有し、この孔部21に対物光学系である複数の対物レンズ18が配設されている。
【0028】
このように、光学アダプタ10は、トメワ13を挿入部7の先端部8に螺着して装着することで、スコープユニット3の視野方向を側視方向または斜視方向に変換する光路変換アダプタを構成している。なお、トメワ13は、外周に軸方向に沿った複数の溝が形成されており、滑り止めとなる凹凸が形成されている。
【0029】
ここで、プリズム16と、このプリズム16を保持するプリズムホルダ17の構成について詳しく説明する。
ここでのプリズム16は、図4および図5に示すように、光学アダプタ10の先端側に向けて配置され、撮影光路を変換する、ここでは45°の斜面である反射面31と、被検対象からの戻り光である撮影光が入射する入射面の観察窓となる上面32と、反射面31により光路が変換された撮影光が通過する基端面34と、2つの側面33と、を有する透明なガラスなどから形成された三角プリズムである。
【0030】
なお、プリズム16は、三角プリズムに限定されることなく、ダハプリズム、ペンタプリズムなど種々のプリズム構成でもよい。
【0031】
プリズムホルダ17は、複数の対物レンズ18が配設された孔部21の開口が設けられた先端面22と、この先端面22の両側部分から先端側に突起形成され、プリズム16を保持する凸部状の保持部である2つの保持凸部23と、を有している。
【0032】
なお、各保持凸部23は、互いが対向する内側面である保持面である矩形状の平面24が形成されている。
【0033】
プリズム16は、プリズムホルダ17の先端面22に基端面34が対向して当接して、プリズムホルダ17の2つの保持凸部23に挟まれた状態で配設される。
【0034】
具体的には、図6から図8に示すように、プリズム16は、プリズムホルダ17の各保持凸部23のそれぞれの平面24がプリズム16の側面33に当接して面接触するようにプリズムホルダ17に装着される。このとき、プリズム16は、プリズム16の基端面34がプリズムホルダ17の先端面22に当接するようにプリズムホルダ17に固定される。
【0035】
この状態において、プリズムホルダ17の各保持凸部23は、それぞれがプリズム16の上面32から所定の距離d1を有して離間するようにプリズム16の側面33に接触して保持する。
【0036】
さらに、プリズムホルダ17の各保持凸部23は、それぞれがプリズム16の反射面31から所定の距離d2を有して離間するようにプリズム16の側面33に接触して保持する。
【0037】
即ち、各保持凸部23は、それぞれがプリズム16の上面32と側面33とが交差する角部(エッジ)の稜線C1を含まない側面33を保持すると共に、プリズム16の側面33と反射面31とが交差する角部(エッジ)の稜線C2を含まない側面33を保持する平面24を有する凸部形状が設定されている。
【0038】
換言すると、図8に示すように、各保持凸部23の平面24は、それぞれがプリズム16の上面32と側面33とが交差する角部(エッジ)の稜線C1およびプリズム16の側面33と反射面31とが交差する角部(エッジ)の稜線C2と重ならないプリズム16の側面33の領域に、接触して保持する。
【0039】
なお、保持の方法としては摩擦でもよいし、図9に示すように、プリズムホルダ17の各保持凸部23の平面24とプリズム16の側面33とが対向する平面間に若干の隙間を設け、この隙間に硬質な接着剤などの接着部によってプリズムホルダ17の各保持凸部23の平面24とプリズム16の側面33とを固着してもよい。また、プリズム16とプリズムホルダ17は、接着剤に限ることなく、半田付により互いを固定してもよい。
【0040】
さらに、上記隙間にエポキシ・変性シリコーン樹脂系弾性接着剤などのエンジニアリングプラスチック材料を用いた弾性接着部としての弾性接着剤38を充填して所定の厚さを有して固化させた構成としてもよい。
【0041】
ところで、光学アダプタ10は、プリズム16に用いられる素材が特に脆性材料のガラスである場合、プリズム16自体が脆性部材となるため、ある値以上の荷重を受けると塑性変形せずに一気に破壊に至ってしまう。
【0042】
また、ガラスなどの脆性材料の特徴としては、許容応力がガラス面内、即ちプリズム16の上面32、側面33および反射面31よりも角部(エッジ)である上記稜線C1,C2のほうが小さい。
【0043】
そのため、プリズム16の角部(エッジ)をプリズムホルダ17の各保持凸部23で覆うように接触して固定すると、光学アダプタ10が衝撃荷重を外部から受けると、プリズムホルダ17が変形し、各保持凸部23と接するプリズム16の角部(エッジ)に応力が集中して、プリズム16が損傷して割れ易くなってしまう。
【0044】
即ち、光学アダプタ10に衝撃などの瞬間的な強い力が加わると、衝撃が与えられた位置から衝撃力が伝播し、プリズムホルダ17からプリズム16へと衝撃力が伝わっていく。このプリズム16に伝わる力は、プリズムホルダ17の各保持凸部23が接触するプリズム16の角部(エッジ部)に応力が集中し易い。
【0045】
これに対して、本実施の形態の光学アダプタ10は、プリズムホルダ17の各保持凸部23がプリズム16の側面33に対する上面32および反射面31の角部(エッジ)に接触しない構成であり、プリズム16の角部(エッジ)に衝撃の応力が集中することを抑制できる。
【0046】
なお、光学アダプタ10は、特に被検対象からの戻り光である撮影光を反射するプリズム16の側面33と反射面31の稜線C2で示した角部(エッジ)が損傷すると、取得画像に影響を及ぼすため、この角部(エッジ)の損傷を抑制する必要がある。
【0047】
このように、特に、工業用の内視鏡であるスコープユニット3は、挿入部7を被検体への挿入する過程において、先端部8に取り付けられた光学アダプタ10が管路壁、各種部品などにぶつかり衝撃が加えられても、プリズム16が損傷することが防止される。
【0048】
さらに、光学アダプタ10は、固定枠であるプリズムホルダ17の各保持凸部23の剛性を上げなくとも、プリズム16の損傷を防止できるため、プリズムホルダ17の体積、特に厚みを増やす必要もなく、大型化することもない。以上の説明から、光学アダプタ10は、外部からの衝撃に対して内部の光学部品であるプリズム16の損傷を防止できる構成となる。
【0049】
なお、上述の説明では、光学アダプタ10に光学部品であるプリズム16が設けられた構成を例示したが、挿入部7の先端部8にプリズム16が内蔵される側視型または斜視型のスコープユニット3にも適用できる構成である。このスコープユニット3では、プリズム16の損傷を防止できると共に、挿入部7の先端部分の大型化も防止できる構成となる。
【0050】
(変形例)
なお、上記のプリズムホルダ17の構成は、一例であり、以下の種々の変形例に示す構成としてもよい。
【0051】
(第1の変形例)
図10は、第1の変形例の一態様に係り、プリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す側面図、図11は第1の変形例の他の態様に係り、プリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す側面図である。
【0052】
プリズムホルダ17の各保持凸部23は、プリズム16の側面33に接触または対向する上記平面24が矩形状として例示したが、これに限定されることなく、図10に示す、プリズム16の側面33に相似した表面積を小さくした三角形状、図11に示す、突出端が円弧状などとして、平面24の面積が大きくなるような形状としてもよい。これらの各保持凸部23とすることで、プリズム16を保持する保持力をより大きくすることができる。
【0053】
(第2の変形例)
図12は、第2の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す上面図、図13は第2の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す側面図である。
図12および図13に示すように、プリズムホルダ17は、先端面22と各保持凸部23の平面部24が交差する角部分に非接触部となる溝部25を形成して、プリズム16の側面33と基端面34が交差する角部(エッジ)の稜線C3と接触しないようにしてもよい。
【0054】
なお、ここでの溝部25は、断面が矩形状としているが、断面円形などでもよく、プリズム16の角部(エッジ)の上記稜線C3がプリズムホルダ17に接触しなければ如何なる断面形状であってもよい。
【0055】
このように、プリズム16の基端面34とプリズムホルダ17の先端面22が当接する当て付け面のプリズム16の角部(エッジ)もプリズムホルダ17と接触しなくなることで、プリズム16の基端側の角部(エッジ)への応力集中も抑制することができる。
【0056】
即ち、プリズムホルダ17は、プリズム16の全ての角部(エッジ)と接触しない構成であり、プリズム16が外部からの衝撃による損傷がより防止される。
【0057】
(第3の変形例)
図14は、第3の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す上面図、図15は第3の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す側面図、図16は第3の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す正面図である。
【0058】
図14から図16に示すように、第2の変形例の構成に加え、プリズムホルダ17の各保持凸部23は、上部の面がプリズム16の上面32と同じ面位置を有し、プリズム16の斜面31にオーバーラップする形状として、プリズム16の角部(エッジ)に接触しない非接触部となる溝部41,42が上記稜線C1,C2に沿って所定の距離を有して対向して形成された段部を有した構成としてもよい。なお、この段差の形状は、複数の平面を有した形状であってもよいし、連続して前記所定の距離が変化するテーパ形状であってもよい。
【0059】
このようにプリズムホルダ17は、第2の変形例の構成と同様に、プリズム16の全ての角部(エッジ)と接触することなく、プリズム16が外部からの衝撃による損傷がより防止されると共に、各保持凸部23の平面24の面積が大きくなり、各保持凸部23によるプリズム16の保持力を向上させることができる。
【0060】
なお、ここでの各保持凸部23は、上面23aを有しており、この上面23aとプリズム16の上面32とが同じ面内位置となるように設定してもよい。
【0061】
このように、各保持凸部23の上面23aとプリズム16の上面32とが同じ面内位置となるように設定することで、プリズム16をプリズムホルダ17に固定する上下方向の位置決めが容易に行え、プリズムホルダ17へのプリズム16の組み付性も向上させることができる。
【0062】
(第4の変形例)
図17は、第4の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す上面図、図18は第4の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す側面図、図19は第4の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す正面図である。
【0063】
図17から図19に示すように、第3の変形例の構成に加え、プリズム16の側面33に対してプリズムホルダ17の各保持凸部23の溝部41,42の段差部によって形成される凹部状の空間にエポキシ・変性シリコーン樹脂系弾性接着剤などのエンジニアリングプラスチック材料を用いた弾性接着部としての弾性接着剤43を充填してもよい。
【0064】
この弾性接着剤43は、プリズム16の側面33を保持するとともに、プリズム16の角部(エッジ)と接触するが、衝撃を受けたときには、その弾性により衝撃を吸収して角部(エッジ)に応力が集中することを抑制することができる。
【0065】
なお、プリズムホルダ17へプリズム16の組み付時、各保持凸部23と側面33の間には接着剤を使用せず、プリズム16をプリズムホルダ17に位置決めした後に、側面33と溝部41,42によって形成される凹部状の空間に弾性接着剤43を注入してプリズム16をプリズムホルダ17に固定することができる。
【0066】
また、プリズム16をプリズムホルダ17に位置決めして、各保持凸部23と側面33を硬質接着剤で固定した後に、側面33と溝部41,42によって形成される凹部状の空間に弾性接着剤43を注入してプリズム16とプリズムホルダ17との接着強度を高めた構成としてもよい。
【0067】
(第5の変形例)
図20は、第5の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す側面図、図21は第5の変形例のプリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す正面図である。
【0068】
図20および図21に示すように、第3の変形例の構成に加え、プリズム16の反射面31を超えて延出するプリズムホルダ17の各保持凸部23を連結する補強部材であるステー45を設けてもよい。なお、ステー45は、各保持凸部23に対して別体でも一体形成された構成としてもよい。
【0069】
プリズム16の反射面31よりも先端側でプリズムホルダ17の各保持凸部23を接続する補強部材であるステー45を架設することで、衝撃が加わった際の各保持凸部23の変形を抑制することができる。これにより、プリズムホルダ17の各保持凸部23の剛性が高くなり、プリズム16への衝撃の応力集中を緩和することができる。
【0070】
(第6の変形例)
図22は、第6の変形例に係る、一態様の2つのプリズムが接合された接合プリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す側面図、図23は第6の変形例に係る、他の態様の2つのプリズムが接合された接合プリズムを保持したプリズムホルダの構成を示す正面図である。
図22に示すように、プリズム16に加え、補強用として他のプリズム35をプリズム16の反射面31に接合した接合プリズムとしてもよい。
【0071】
なお、図23に示すように、プリズムホルダ17の各保持凸部23は、2つのプリズム16,35の接合面となる反射面31よりも先端側に延設して、プリズム35の側面36に平面24が接着される構成としてもよい。
【0072】
また、各保持凸部23は、2つのプリズム16,35の接合面となる反射面31に接触しないように、この反射面31に沿った平面24に凹部状の非接触部となる溝部27を形成して段差を設けて、接合部には接触させない形状としてもよい。このような構成とすることで、2つのプリズム16,35の接合部の剥離を防止できると共に、反射面31が位置する2つのプリズム16,35の接合面への衝撃の応力集中を抑制することができる。
【0073】
上述の実施の形態に記載した発明は、その実施の形態および変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0074】
例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0075】
1…内視鏡装置
2…本体部
3…スコープユニット
5…操作部
5a…湾曲ボタン
6…ユニバーサルケーブル
7…挿入部
8…先端部
9…湾曲部
10…光学アダプタ
11…メモリカード
12…枠体
13…トメワ
14…平面部
15…照明レンズ
16…プリズム
17…プリズムホルダ
18…対物レンズ
19…ライトガイド
21…孔部
22…先端面
23…保持凸部
24…平面
31…反射面
32…上面
33…側面
34…基端面
C1,C1,C2…角部(エッジ)の稜線
d1,d2…所定の距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23