(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】融資管理システム、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/02 20230101AFI20240514BHJP
【FI】
G06Q40/02
(21)【出願番号】P 2020038488
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】511108138
【氏名又は名称】テンソル・コンサルティング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520079175
【氏名又は名称】平松 輝哉
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 浩司
(72)【発明者】
【氏名】柴原 一友
(72)【発明者】
【氏名】平松 輝哉
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-054087(JP,A)
【文献】特開2018-160258(JP,A)
【文献】特開2013-218504(JP,A)
【文献】特開2014-026322(JP,A)
【文献】特開2002-083133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザそれぞれについて、当該ユーザの属性および行動を記録したユーザ情報と、現在利用中の融資サービスである利用中融資サービスについての利率と返済時期と返済額とを含むサービス内容と、を管理する融資管理部と、
前記複数のユーザのうち対象ユーザについて前記利用中融資サービスから他の融資サービスへ変更する変更要求を取得する入出力部と、
前記対象ユーザについて、前記変更要求と、前記ユーザ情報と、前記利用中融資サービスのサービス内容と、に基づき、所定の収益が得られると推定される1つ以上の融資サービスを推奨可能融資サービスとし、前記推奨可能融資サービスについて前記対象ユーザによる採用され易さの度合いである採用期待度を算出し、前記採用期待度に基づいて、前記推奨可能融資サービスの1つ以上を、前記対象ユーザへ推奨する推奨融資サービスとする推奨融資サービス決定部と、
複数のユーザの少なくとも一部の属性および行動のデータと前記複数のユーザに推奨した融資サービスが採用されたか否かに関する情報とを含む学習データを機械学習し、ユーザに推奨した融資サービスが採用される確率を前記採用期待度として予測するためのフィット性判定モデルを構築する学習部と、
を有
し、
前記推奨融資サービス決定部は、前記対象ユーザのユーザ情報の少なくとも一部と前記推奨可能融資サービスのサービス内容とを入力として、前記フィット性判定モデルにより、前記推奨可能融資サービスの前記採用期待度を予測する、
融資管理システム。
【請求項2】
前記推奨融資サービス決定部は、前記利用中融資サービスから変更した後に計画通りの返済がされた場合に得られる収入額に制約条件を与えて、利率と返済時期と返済額とを含む返済プランを変化させた複数の融資サービスを抽出し、抽出された複数の融資サービスについて、前記ユーザ情報に基づく前記対象ユーザのリスクを反映させた調整後収入額を算出し、前記抽出された複数の融資サービスのうち、前記調整後収入額が所定の収益条件を満たす融資サービスを前記推奨可能融資サービスとする、
請求項1に記載の融資管理システム。
【請求項3】
前記制約条件は、前記利用中融資サービスの利用を継続し計画通りの返済がされた場合に得られる収入額と、前記利用中融資サービスから変更した後に計画通りの返済がされた場合に得られる収入額との差額が所定の差額条件を満たすという条件を含む、
請求項2に記載の融資管理システム。
【請求項4】
前記調整後収入額は、前記対象ユーザのユーザ情報に基づく発生確率でデフォルトが発生するとした場合に、前記融資サービスから得られる収入額の期待値である、
請求項2に記載の融資管理システム。
【請求項5】
前記調整後収入額は、前記対象ユーザのユーザ情報に基づく発生確率でデフォルトが発生するとし、前記対象ユーザが融資サービスを変更した後に他のサービスを追加で利用することにより得られる収入額が発生するとした場合に、変更後の融資サービスと前記追加で利用するサービスから得られる合計の収入額の期待値である、
請求項2に記載の融資管理システム。
【請求項6】
前記推奨融資サービス決定部は、前記調整後収入額と前記採用期待度に基づいて、前記推奨融資サービスに推奨の順位を決定する、
請求項2に記載の融資管理システム。
【請求項7】
前記学習部は、更に、複数のユーザの少なくとも一部の属性および行動のデータと前記複数のユーザのデフォルトの有無とを含む学習データを機械学習し、デフォルトの発生確率を予測するためのデフォルトリスク判定モデルを構築し
、前記デフォルトリスク判定モデルおよび前記フィット性判定モデルを適宜更新
し、
前記推奨融資サービス決定部は、前記対象ユーザのユーザ情報の少なくとも一部を入力として、最新のデフォルトリスク判定モデルにより予測されるデフォルトの発生確率に基づいて前記収入額の期待値を算出して前記調整後収入額とし、前記対象ユーザのユーザ情報の少なくとも一部
と前記推奨可能融資サービスのサービス内容とを入力として、最新のフィット性判定モデルにより前記採用期待度を予測する、
請求項4に記載の融資管理システム。
【請求項8】
前記デフォルトリスク判定モデルは、前記複数のユーザの少なくとも一部の属性および行動のデータと前記複数のユーザのデフォルトの有無および発生時点とを含む学習データを機械学習することにより構築された、デフォルトの発生時点毎の発生確率を予測するための予測モデルであり、
前記推奨融資サービス決定部は、前記対象ユーザのユーザ情報の少なくとも一部を入力として、最新のデフォルトリスク判定モデルにより予測されるデフォルトの発生時点および発生確率に基づいて前記収入額の期待値を算出する、
請求項7に記載の融資管理システム。
【請求項9】
前記学習部は、更に、前記複数のユーザの少なくとも一部の属性および行動のデータと繰り上げ返済の有無および発生時点とを含む学習データを機械学習し、繰り上げ返済の発生時点毎の発生確率を予測するためのプリペイメントリスク判定モデルを構築し、適宜更新し、
前記推奨融資サービス決定部は、
前記対象ユーザのユーザ情報の少なくとも一部を入力として、最新のデフォルトリスク判定モデルにより予測されるデフォルトの発生時期および発生確率と、最新のプリペイメントリスク判定モデルにより予測される繰り上げ返済の発生確率および発生時点とに基づいて、前記収入額の期待値を算出する、
請求項8に記載の融資管理システム。
【請求項10】
前記学習部は、更に、複数ユーザの属性および行動のデータと前記複数のユーザが融資サービスの変更後に利用した他のサービスからの収入額とを含む学習データを機械学習し、融資サービスの変更後に他のサービスを追加で利用することによる収入額を予測するための未来収益性評価モデルを構築し、適宜更新し、
前記推奨融資サービス決定部は、前記対象ユーザのユーザ情報の少なくとも一部を入力とし、最新のデフォルトリスク判定モデルにより予測されるデフォルトの発生確率と、最新の未来収益性評価モデルにより予測される収入額とに基づいて、前記収入額の期待値を算出する、
請求項7に記載の融資管理システム。
【請求項11】
前記ユーザの行動は、融資サービスの変更に関する行動が含まれる、
請求項7に記載の融資管理システム。
【請求項12】
複数のユーザそれぞれについて、当該ユーザの属性および行動を記録したユーザ情報と、現在利用中の融資サービスである利用中融資サービスについての利率と返済時期と返済額とを含むサービス内容と、を管理しており、
前記複数のユーザのうち対象ユーザについて前記利用中融資サービスから他の融資サービスへ変更する変更要求を取得し、
前記対象ユーザについて、前記変更要求と、前記ユーザ情報と、前記利用中融資サービスのサービス内容と、に基づき、所定の収益が得られると推定される1つ以上の融資サービスを推奨可能融資サービスとし、前記推奨可能融資サービスについて前記対象ユーザによる採用され易さの度合いである採用期待度を算出し、前記採用期待度に基づいて、前記推奨可能融資サービスの1つ以上を、前記対象ユーザへ推奨する推奨融資サービスとする
ことであって、
複数のユーザの少なくとも一部の属性および行動のデータと前記複数のユーザに推奨した融資サービスが採用されたか否かに関する情報とを含む学習データを機械学習し、ユーザに推奨した融資サービスが採用される確率を前記採用期待度として予測するためのフィット性判定モデルを構築し、
前記対象ユーザのユーザ情報の少なくとも一部と前記推奨可能融資サービスのサービス内容とを入力として、前記フィット性判定モデルにより、前記推奨可能融資サービスの前記採用期待度を予測する、
ことをコンピュータが実行する融資管理方法。
【請求項13】
複数のユーザそれぞれについて、当該ユーザの属性および行動を記録したユーザ情報と、現在利用中の融資サービスである利用中融資サービスについての利率と返済時期と返済額とを含むサービス内容と、を管理しており、
前記複数のユーザのうち対象ユーザについて前記利用中融資サービスから他の融資サービスへ変更する変更要求を取得し、
前記対象ユーザについて、前記変更要求と、前記ユーザ情報と、前記利用中融資サービスのサービス内容と、に基づき、所定の収益が得られると推定される1つ以上の融資サービスを推奨可能融資サービスとし、前記推奨可能融資サービスについて前記対象ユーザによる採用され易さの度合いである採用期待度を算出し、前記採用期待度に基づいて、前記推奨可能融資サービスの1つ以上を、前記対象ユーザへ推奨する推奨融資サービスとする
ことであって、
複数のユーザの少なくとも一部の属性および行動のデータと前記複数のユーザに推奨した融資サービスが採用されたか否かに関する情報とを含む学習データを機械学習し、ユーザに推奨した融資サービスが採用される確率を前記採用期待度として予測するためのフィット性判定モデルを構築し、
前記対象ユーザのユーザ情報の少なくとも一部と前記推奨可能融資サービスのサービス内容とを入力として、前記フィット性判定モデルにより、前記推奨可能融資サービスの前記採用期待度を予測する、
ことをコンピュータに実行させるための融資管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟な融資サービスの提供を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関では、個人、個人事業主あるいは法人に向けた様々な融資サービスが提供されている。多くの融資サービスでは、利率、返済期間、月毎返済額などの返済プランが予め決められ、ユーザはその返済プランに従って返済をする。これらの融資サービスは利用を開始するときに返済プランが決定される。基本的にはその返済プランはそのユーザによるその融資サービスの利用が終了するまで固定される。
【0003】
しかしながら、ユーザの経済状況や返済能力は不変ではなく、日々変化する。そのため、融資サービスの返済期間や返済額などの返済方法を柔軟に選択し、変更できればユーザにとっての利便性が向上する。
【0004】
それに関して、追加融資や返済プランの変更などはある程度可能であるが、手続きは煩雑である。例えば、ユーザが様々な返済プランを候補として検討し、場合によっては金融機関と密に相談し、決定した返済プランで金融機関に返済プランの変更の申請を行い、金融機関がユーザの信用リスクに基づく人による判断を経て変更を許可するか否か判定し、許可の判定がされて初めて変更が実行される。
【0005】
これに対して、特許文献1には、ユーザのスコアに基づいて、返済条件の変更を許可するか否かを判定する技術が開示されている。具体的には、特許文献1には、顧客に関する金融機関内部情報と顧客のデフォルト率を算出するのに用いる評点との関係を表す複数のモデルであって、それぞれが異なる関係を有する複数のモデルの中から、顧客に関する金融機関内部情報に基づき少なくとも1つのモデルを選択し、顧客に関する金融機関内部情報を基に、選択したモデルから顧客のデフォルト率を算出し、算出したデフォルト率に基づきランクを決定し、少なくともランクに基づき、金融機関により実行中の保証付融資をプロパー融資に変更可能かどうか判定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された技術によれば、ユーザが希望すれば、プロパー融資と保証付融資の間での変更の可否を判定することができる。しかし、ユーザにとっては、どのような融資サービスが候補になるか、またどのような融資サービスを選択したらよいかを判断することが難しい。
【0008】
本発明の目的は、ユーザに妥当な融資サービスを推奨することを可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のひとつの態様に従う融資管理システムは、複数のユーザそれぞれについて、当該ユーザの属性および行動を記録したユーザ情報と、現在利用中の融資サービスである利用中融資サービスについての利率と返済時期と返済額とを含むサービス内容と、を管理する融資管理部と、前記複数のユーザのうち対象ユーザについて前記利用中融資サービスから他の融資サービスへ変更する変更要求を取得する入出力部と、前記対象ユーザについて、前記変更要求と、前記ユーザ情報と、前記利用中融資サービスのサービス内容と、に基づき、所定の収益が得られると推定される1つ以上の融資サービスを推奨可能融資サービスとし、前記推奨可能融資サービスについて前記対象ユーザによる採用され易さの度合いである採用期待度を算出し、前記採用期待度に基づいて、前記推奨可能融資サービスの1つ以上を、前記対象ユーザへ推奨する推奨融資サービスとする推奨融資サービス決定部と、を有している。
【発明の効果】
【0010】
本開示のひとつの態様によれば、ユーザに妥当な融資サービスを推奨することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態による可変融資管理システムのブロック図である。
【
図2】学習装置11および管理装置14のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】管理装置14による融資サービス変更処理のフローチャートである。
【
図4】推奨融資サービス決定部を詳細に説明するための図である。
【
図5】推奨融資サービス選定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施形態による可変融資管理システムのブロック図である。
【0014】
図2は、学習装置11および管理装置14のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、可変融資管理システム10は、インターネット等の通信ネットワーク(不図示)を介してユーザ90が利用するユーザ端末18と接続可能である。ユーザ90は、例えば、パーソナルコンピュータあるいはスマートフォン等のユーザ端末18上のアプリケーションまたはブラウザにより管理装置14に接続し、管理装置14が管理している可変融資サービスを利用することができる。
【0016】
本実施形態では、可変融資管理システム10は、ユーザ端末18にインストールされた専用のアプリケーションを介して可変融資サービスを可変融資サービスを提供する。可変融資サービスでは、基本的な返済プランおよび/またはオプションが異なる多数の融資サービスを随時変更可能に提供するサービスである。
【0017】
基本的な返済プランとして、返済方法(期限一括返済、元利均等返済、元金均等返済、元金自由返済など)、利率、返済時期、返済額(一時金、各月返済額など)が様々に設定可能であり、更にオプションとして、返済方法によっては、保証人の有無、保険(生保)への加入の有無、などの異なる多数の融資サービスが用意されている。
【0018】
図1に示すように、可変融資管理システム10は、学習装置11と管理装置14とを有している。学習装置11はデータ収集部12と学習部13を有している。管理装置14は、入出力部15と推奨融資サービス決定部16と融資管理部17とを有している。
【0019】
図2に示すように、学習装置11と管理装置14は共に、ハードウェアとして、プロセッサ21、メインメモリ22、記憶装置23、通信装置24、入力装置25、および表示装置26を有し、それらがバス27に接続された構成のコンピュータで構成されている。
【0020】
図1に示されたデータ収集部12は、複数のユーザ90のそれぞれの属性および行動のデータ101を収集し、蓄積する。
【0021】
学習部13は、複数の各ユーザ90の属性および行動のデータ101を学習データとして、推奨融資サービス決定部16にて推奨融資サービスの決定に用いられる予測モデルを構築し、適宜更新している。
【0022】
入出力部15は、ユーザ端末18にインストールされたアプリケーションを介して、ユーザ90に可変融資サービスを提供する。
【0023】
ユーザ90がサービスの利用を開始するときには、入出力部15は、利用開始画面をユーザ端末18に表示し、ユーザ端末18からユーザ90の利用開始申請を受け付け、ユーザ90の属性のデータを取得する。属性情報は、例えばユーザ90の年齢、勤務先に関する情報を含む。また、入出力部15は、不図示の外部機関から提供されている当該ユーザ90の外部信用情報を取得する。外部信用情報は、例えば、個人信用情報機関が提供している信用情報および個人信用スコアを含む。入出力部15は、利用開始申請を、ユーザの属性情報および外部信用情報と共に融資管理部17に送り、審査を経て可変融資サービスをユーザ90に提供する。
【0024】
融資管理部17は、複数のユーザ90それぞれについて、各ユーザ90の属性および行動を記録したユーザ情報と、現在利用中の融資サービスである利用中融資サービスについての利率と返済時期と返済額とを含むサービス内容と、を管理する。
【0025】
また、ユーザ90が融資サービス利用中にも、入出力部15は、アプリケーションを介して、ユーザ90に様々な情報を提示し、また、ユーザ90に関する様々な行動のデータを継続的に取得する。例えば、入出力部15は、利用中融資サービスの返済履歴および返済予定の情報を提示する。また、入出力部15は、過去の取引について、利用回数、支払期間、延滞の有無などを含む過去取引情報、を取得する。更に、入出力部15は、ユーザ90によるアプリケーションの利用状況情報を取得する。更に、入出力部15は、ユーザ端末18が備えるセンサ(不図示)により取得されるデータを取得する。
【0026】
利用状況情報には、アプリケーション起動時間、融資サービスの変更を検討した回数、検討内容、融資サービス変更案内に対する反応が含まれる。融資サービスの変更を検討した回数は、アプリケーションにおける変更画面を表示させた回数により取得可能である。検討内容は、変更画面での操作履歴、例えば、希望する融資サービスを選択する操作の履歴から取得可能である。融資サービス変更案内に対する反応は、様々な手段で取得可能であり、例えば、融資サービスの変更機能を案内するメールまたはショートメッセージにおけるリンク先のサイトの閲覧履歴から取得可能である。
【0027】
また、利用状況情報には、他のアプリケーションによるサービス利用に関する情報が含まれる。他のアプリケーションとして、例えば、家計簿アプリケーション、健康管理アプリケーションなどがある。
【0028】
また、ユーザ端末18が備えるセンサで取得される情報として、例えば、位置情報がある。
【0029】
また、入出力部15は、可変融資サービスの提供中に、ユーザ90から、利用中融資サービスから他の融資サービスへの変更を希望する変更要求を受け付ける。
【0030】
上述したように、本実施形態の可変融資サービスでは多数の融資サービスが用意されている。そのため、ユーザ90自身が妥当な融資サービスを選択するのは難しい。そこで、可変融資管理システム10は、ある対象ユーザについて融資サービスの変更を要求する変更要求があると、推奨融資サービス決定部16により、複数の推奨融資サービスを決定し、入出力部15により、アプリケーションを介して、その推奨融資サービスをユーザ90に提示する。
【0031】
推奨融資サービス決定部16は、対象ユーザについて、変更要求と、ユーザ情報と、利用中融資サービスのサービス内容と、に基づき、所定の収益が得られると推定される1つ以上の融資サービスを推奨可能融資サービスとし、その推奨可能融資サービスについて対象ユーザによる採用され易さの度合いである採用期待度を算出し、所定の採用期待度を有する推奨可能融資サービスを、対象ユーザへ推奨する推奨融資サービスとして決定する。その際、推奨融資サービス決定部16は、推奨可能融資サービスの決定と、採用期待度の算出とに、学習部13で構築された予測モデルを利用する。推奨融資サービス決定部16の詳細は後述する。
【0032】
図2において、記憶装置23は、書込みおよび読み出しが可能にデータを記憶するものであって、各種処理に利用されるデータが格納される。
【0033】
プロセッサ21は、記憶装置23に記憶されたデータをメインメモリ22に読み出し、メインメモリ22を利用してソフトウェアプログラムの処理を実行する。学習装置11であれば、プロセッサ21によって、
図1に示したデータ収集部12および学習部13が実現される。管理装置14であれば、プロセッサ21によって、
図1に示した推奨融資サービス決定部16および融資管理部17が実現される。
【0034】
通信装置24は、プロセッサ21にて処理された情報を有線または無線あるいはそれら両方を含む通信ネットワークを介して送信し、また通信ネットワークを介して受信した情報をプロセッサ21に伝達する。受信した情報はプロセッサ21にてソフトウェアの処理に利用される。
【0035】
入力装置25は、キーボードやマウスなどオペレータによる操作入力による情報を受け付ける装置であり、入力された情報はプロセッサ21にてソフトウェア処理に利用される。
【0036】
表示装置26は、プロセッサ21によるソフトウェア処理に伴って画像やテキストの情報をディスプレイ画面に表示する装置である。
【0037】
図3は、管理装置14による融資サービス変更処理のフローチャートである。
【0038】
管理装置14は、入出力部15により、ユーザ端末18から変更要求を受信すると(ステップS101)、推奨融資サービス決定部16により、推奨融資サービス選定処理を実行する。推奨融資サービス選定処理は、推奨融資サービスを選定する処理であり、その詳細は後述する。
【0039】
続いて、管理装置14は、入出力部15により、ユーザ端末18上のアプリケーションを介して、推奨融資サービスの情報をユーザ90に提示し(ステップS103)、そして、ユーザ90から、変更する融資サービスの確定を受け付ける(ステップS104)。
【0040】
そして、管理装置14は、入出力部15により、融資サービスの変更を実行する(ステップS105)。このとき、管理装置14は、融資管理部17により、利用中融資サービスの情報を更新する。
【0041】
図4は、推奨融資サービス決定部を詳細に説明するための図である。
【0042】
図4を参照すると、推奨融資サービス決定部16は、推奨可能融資サービス抽出部31と採用性判定部32を有している。推奨可能融資サービス抽出部31は、融資サービス列挙部33、収益性演算部34、および収益性判定部35を有している。
【0043】
推奨可能融資サービス抽出部31は、対象ユーザについて、変更要求と、ユーザ情報と、利用中融資サービスのサービス内容と、に基づき、所定の収益が得られると推定される1つ以上(例えば3つ)の融資サービスを推奨可能融資サービスとして抽出する。変更要求には、変更条件情報が含まれていてもよい。変更条件情報は、推奨融資サービスとする条件をユーザ90が指定した情報である。例えば、月々の返済金額を利用中融資サービスよりも圧縮するという条件、返済期間を利用中融資サービスよりも短縮するという条件などがあってよい。変更条件情報がある場合には、推奨可能融資サービス抽出部31は、その変更条件情報に示された条件を満たす中で、推奨可能融資サービスを抽出すればよい。また複数の変更条件情報がある場合、推奨可能融資サービス抽出部31は、その全ての変更条件情報の条件を満たす中で、推奨可能融資サービスを抽出してもよいし、その一部の変更条件情報の条件を満たす中で、推奨可能融資サービスを抽出してもよい。
【0044】
採用性判定部32は、推奨可能融資サービス抽出部31で抽出された推奨可能融資サービスについて、対象ユーザによる採用され易さの度合いである採用期待度を算出し、所定の採用期待度を有する推奨可能融資サービスを、対象ユーザへ推奨する推奨融資サービスとして決定する。
【0045】
図4に示すように、推奨可能融資サービス抽出部31は、融資サービス列挙部33、収益性演算部34、および収益性判定部35を有している。
【0046】
図5は、推奨融資サービス選定処理のフローチャートである。
【0047】
推奨融資サービス決定部16は、融資サービス列挙部33により、利用中融資サービスから変更した後に計画通りの返済がされた場合に得られる収入額に制約条件を与えて、利率と返済時期と返済額とを含む返済プランを変化させた複数の融資サービスを抽出する(ステップS201)。ここでいう、収入額は、デフォルトや繰り上げ返済のリスクを考慮せず、単純に計画通りの返済によって支払われる利子の総額である。制約条件は、一例として、利用中融資サービスの利用を継続し計画通りの返済がされた場合に得られる収入額と、利用中融資サービスから変更した後に計画通りの返済がされた場合に得られる収入額との差額が所定の差額条件を満たすという条件とする。利用中融資サービスの利用を継続し計画通りの返済がされた場合に得られる収入額を第1収入額とし、利用中融資サービスから変更した後に計画通りの返済がされた場合に得られる収入額を第2収入額とし、第2収入額から第1収入額を減算した差額は、対象ユーザが融資サービスを変更した場合の収入額の増加分である。この増加分が大きければ、事業主体の収入は増すが、対象ユーザは融資サービスを変更すると損をするように感じる可能性がある。したがって、第1収入額に適切な制約条件を課し、第2収入額と第1収入額の差額を適切な範囲に制限することが好ましい。
【0048】
次に、推奨融資サービス決定部16は、収益性演算部34により、ステップS201で抽出された各融資サービスについて、ユーザ情報に基づく対象ユーザのリスクを反映させた調整後収入額を算出する(ステップS202)。ここでいう調整後収入額は、デフォルトと繰り上げ返済のリスクを考慮した、得られる利子の総額の期待値である。具体的には、調整後収入額は、対象ユーザのユーザ情報に基づく発生確率でデフォルトまたは繰り上げ返済が発生するとした場合に、融資サービスから得られる収入額の期待値である。
【0049】
デフォルトあるいは繰り上げ返済が発生した場合の融資サービスから得られる収入額あるいは損失額(マイナス収入額)は、正確に計算してもよいし、何等かの近似を用いてもよい。
【0050】
例えば、デフォルトが発生した場合、発生時点での融資残高の元本部分から、融資開始時点からデフォルトの発生時点までに得られた利子の総額を減算した値を損失額としてもよい。あるいは、デフォルトの発生時点での融資残高の元本部分を損失額と近似してもよい。あるいは、デフォルトの発生時点によらずデフォルトが発生した融資の開始時の融資額を損失額と近似してもよい。
【0051】
また、例えば、全額繰り上げ返済を考慮することとし、繰り上げ返済が発生した場合、発生時点までに得られた利子の総額を収入額としてもよい。一部繰り上げ返済も考慮することととし、一部繰り上げ返済が発生した場合、返済完了までに得られる利子の総額を収入額としてもよい。
【0052】
収益性演算部34による本ステップS202の処理の詳細は後述する。
【0053】
次に、推奨融資サービス決定部16は、収益性判定部35により、ステップS201で抽出された複数の融資サービスのうち、調整後収入額が所定の収益条件を満たす融資サービスを推奨可能融資サービスとする(ステップS203)。収益条件は、一例として、調整後収益額が所定の閾値以上である条件である。閾値は、事業主体が事業方針等に基づいて任意に設定可能である。
【0054】
次に、推奨融資サービス決定部16は、採用性判定部32により、推奨可能融資サービスのそれぞれについて採用期待度を算出する(ステップS204)。採用期待度は、その推奨可能融資サービスについての対象ユーザによる採用され易さの度合いである。このとき、採用性判定部32は、学習部13により構築された最新のフィット性判定モデル102Aを用いて採用期待度を算出する。フィット性判定モデル102Aの詳細は後述する。
【0055】
次に、推奨融資サービス決定部16は、採用性判定部32により、採用性期待度に基づいて、推奨可能融資サービスの中から推奨融資サービスを選択する。例えば、採用性期待度が所定の閾値を超えている推奨可能融資サービスを推奨融資サービスとすることにしてもよい。あるいは、採用性期待度が上位の所定個の推奨可能融資サービスを推奨融資サービスとすることにしてもよい。
【0056】
あるいは、採用性判定部32は、調整後収入額と採用性期待度の両方に基づいて推奨の度合いを示す指標(推奨度合い)を算出し、その推奨度合いの値により、推奨可能融資サービスの中から推奨融資サービスを選択してもよい。また、複数の推奨融資サービスをユーザ端末18に表示して対象ユーザ90に推奨するときの推奨融資サービスの順位付けを推奨度合いに基づいて決定してもよい。ここでいう推奨度合いは、調整後収入額と採用性期待度との所定の兼ね合いで決まるものとする。どちらを重視し、どのような演算式で推奨度合いを算出するかは任意に決めることができる。例えば、調整後収入額を重視してもよい。また、マーケティング方針によって、推奨度合いの演算式を変更可能としてもよい。また、ユーザが大きく不利益を被っているように感じないようにするために、調整後収入額は利用中融資サービスのの収入額の期待値を大幅に上回らないようにしてもよい。また、事業主体の収益性を考えて、調整後収入額が利用中融資サービスの収入額の期待値を下回らないようにすることにしてもよい。
【0057】
以下に収益性演算部34によるステップS202の処理を詳細に説明する。
【0058】
図4に示すように、収益性演算部34は、デフォルトリスク算出部36、調整後収入算出部37、プリペイメントリスク算出部38、および未来収益算出部39を有している。
【0059】
収益性演算部34によるステップS202の処理において、デフォルトリスク算出部36は、対象ユーザが対象の融資サービスを利用した場合のデフォルトの発生確率を予測する。このとき、デフォルトリスク算出部36は、学習部13により構築された最新のデフォルトリスク判定モデルを用いてデフォルトの発生確率を算出する。デフォルトリスク判定モデルの詳細は後述する。
【0060】
また、プリペイメントリスク算出部38は、対象ユーザが対象の融資サービスを利用した場合の繰り上げ返済の発生確率を予測する。このとき、プリペイメントリスク算出部38は、学習部13によって構築された最新のプリペイメントリスク判定モデル102Cを用いて繰り上げ返済の発生確率を算出する。
【0061】
未来収益算出部39は、対象ユーザが対象の融資サービスを利用した場合に、対象ユーザが他のサービスを追加で利用することによる収入額(未来収益)を予測する。このとき、未来収益算出部39は、学習部13が構築した最新の未来収益性評価モデルを用いて、未来収益を算出する。
【0062】
調整後収入算出部37は、融資サービス列挙部33により列挙された各融資サービスについて調整後収入額を算出する。調整後収入額は、対象ユーザのユーザ情報に基づく発生確率でデフォルトまたは繰り上げ返済が発生し、対象ユーザが融資サービスを変更した場合に、他のサービスを追加で利用することにより得られる収入額が発生するとした場合に、変更後の融資サービスと追加で利用するサービスから得られる合計の収入額の期待値である。
【0063】
デフォルトリスク判定モデル102Bについて説明する。
【0064】
本実施形態によるデフォルトリスク判定モデル102Bは、未来のデフォルトの発生確率を推定するモデルである。本実施形態では、デフォルトリスク判定モデル102Bは、対象ユーザのユーザ情報を入力とし、未来の所定期間の各時点でのデフォルトの発生確率を出力する。デフォルト発生確率を算出する期間および間隔は特に限定されないが、例えば、期間は1年間や3年間といった共通的な期間であってもよいし、融資サービスの支払期間というように個別的な期間であってもよい。また、間隔は月毎であってもよいし年毎であってもよい。
【0065】
学習部13では、データ収集部12により過去に集積された各ユーザのユーザ情報とデフォルト発生の有無および発生時期とを学習データとして機械学習によりデフォルトリスク判定モデル102Bが構築される。
【0066】
プリペイメントリスク判定モデル102Cについて説明する。
【0067】
本実施形態によるプリペイメントリスク判定モデル102Cは、未来の繰り上げ返済の発生確率を推定するモデルである。本実施形態では、プリペイメントリスク判定モデル102Cは、対象ユーザのユーザ情報を入力とし、未来の所定期間の各時点での繰り上げ返済の発生確率を出力する。ここでは繰り上げ返済は全額繰り上げ返済をいうものとする。繰り上げ返済発生確率を算出する期間および間隔は特に限定されないが、例えば、デフォルトリスク判定モデル102Bがデフォルト発生確率を予測する期間と同じ期間としてもよい。
【0068】
なお、本実施形態の例では、簡単化のため、全額繰り上げ返済のみを考慮するものとしたが、これに限定されることはない。一部繰り上げ返済についても所定期間の各時点での繰り上げ返済の発生確率とそのときの返済額とを予測するモデルを構築すれば、調整後収入額を算出することが可能である。
【0069】
また、学習部13では、データ収集部12により過去に集積された各ユーザのユーザ情報と繰り上げ返済の発生の有無および発生時期とを学習データとして機械学習によりプリペイメントリスク判定モデル102Cが構築される。
【0070】
未来収益性評価モデル102Dについて説明する。
【0071】
本実施形態による未来収益性評価モデル102Dは、融資サービスの変更を実行したユーザがその後に利用した他のサービスで得られる収入額を推定するモデルである。本実施形態では、未来収益性評価モデル102Dは、対象ユーザのユーザ情報を入力とし、当該ユーザが融資サービスを変更した後に利用する他のサービスからの収入額を出力する。
【0072】
学習部13では、データ収集部12により過去に集積された各ユーザのユーザ情報と、当該ユーザが融資サービスの変更後に利用した他のサービスからの収入額とを学習データとして機械学習により未来収益性評価モデル102Dが構築される。ただし、十分なデータが集積されるまでは機械学習により十分な精度の未来収益性評価モデル102Dを構築できないので、他の方法で未来収益性評価モデル102Dを設定してもよい。例えば、事業主体の職員や外部の人の知見や経験に基づき、ユーザ情報から知りうるユーザのライフステージ毎に、未来における当該ユーザによる他のサービスの利用および/またはそこから得られる収入額を推定し、推定結果をモデルとして設定してもよい。
【0073】
フィット性判定モデル102Aの詳細について説明する。
【0074】
本実施形態によるフィット性判定モデル102Aは、推奨した融資サービスについての対象ユーザによる採用され易さの度合いである採用期待度を推定するモデルである。採用期待度は、一例として、ユーザに推奨した融資サービスが採用される確率である。フィット性判定モデル102Aは、対象ユーザのユーザ情報と対象の融資サービスのサービス内容とを入力とし、その対象の融資サービスおよび対象ユーザについて採用期待度を出力する。
【0075】
学習部13では、データ収集部12により過去に集積されたユーザ情報と、当該ユーザに推奨した融資サービスが採用されたか否かとを学習データとして機械学習により、ユーザに推奨した融資サービスが採用される確率を前記採用期待度として予測するフィット性判定モデル102Aが構築される。ただし、十分なデータが集積されるまでは機械学習により十分な精度のフィット性判定モデル102Aを構築できないので、他の方法でフィット性判定モデル102Aを設定してもよい。例えば、事業主体の職員が知見と経験に基づいてルールロジックを作成し、それをモデルとして設定してもよい。
【0076】
なお、本実施形態では、ユーザ90からの要求を契機として推奨融資サービスを提示する例を示したが、これに限定されることはない。他のいかなる契機で推奨融資サービスを提示してもよい。例えば、可変融資管理システム10内でユーザ情報等に基づいて生成された要求を契機としてもよいし、事業主体のオペレータが対象ユーザを指定して可変融資管理システム10に入力した要求を契機としてもよい。
【0077】
また、本実施形態では、調整後収入額を算出するときに、デフォルト、繰り上げ返済、および未来収益を考慮して調整後収入額を算出する例を示したが、これに限定されることはない。他の例として、未来収益を考慮せずデフォルトおよび繰り上げ返済を考慮して調整後収入額を算出してもよいし、繰り上げ返済および未来収益を考慮せずデフォルトを考慮して調整後収入額を算出してもよい。
【0078】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態のみに限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の範囲を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0079】
また、上述した実施形態の技術的範囲には、以下に示す事項が含まれている。ただし、本実施形態の技術的範囲に含まれる事項がこれらに限定されるものではない。
【0080】
(態様1)
複数のユーザそれぞれについて、当該ユーザの属性および行動を記録したユーザ情報と、現在利用中の融資サービスである利用中融資サービスについての利率と返済時期と返済額とを含むサービス内容と、を管理する融資管理部と、
前記複数のユーザのうち対象ユーザについて前記利用中融資サービスから他の融資サービスへ変更する変更要求を取得する入出力部と、
前記対象ユーザについて、前記変更要求と、前記ユーザ情報と、前記利用中融資サービスのサービス内容と、に基づき、所定の収益が得られると推定される1つ以上の融資サービスを推奨可能融資サービスとし、前記推奨可能融資サービスについて前記対象ユーザによる採用され易さの度合いである採用期待度を算出し、所定の採用期待度を有する推奨可能融資サービスを、前記対象ユーザへ推奨する推奨融資サービスとする推奨融資サービス決定部と、
を有する融資管理システム。
【0081】
ユーザが融資サービスを変更するとき、ユーザが検討する対象として妥当な個数の利用可能な融資サービスをユーザに推奨することが望ましい。例えば、基本的な返済プランとして、利率(期限一括返済の場合の利率、一般信用取引(無期限)の場合の利率、など)、返済額(一時金、元金、返済額における利息の割合、など)、返済時期、更にオプションとして、保証人の有無、保険(生命保険)への加入の有無、など選択できる要素が多く、サービス内容が多岐にわたる融資サービスが存在する場合であっても、あまりに多くの融資サービスをユーザに推奨するのは望ましくない。しかしながら、多岐にわたる無数の融資サービスが存在する中から、妥当な個数の妥当なサービス内容の推奨融資サービスを選択するのは容易でない。
【0082】
態様1によれば、多様な融資サービスの中から、所定の収益が得られると推定されるという条件で融資サービスを絞り込み、絞り込まれた融資サービスの中で対象ユーザによる採用され易さの度合いを評価して、対象ユーザに推奨する融資サービスを決定するので、検討しやすい程度の個数の妥当な推奨融資サービスをユーザに推奨することができる。
【0083】
(態様2)
態様1の融資管理システムにおいて、
前記推奨融資サービス決定部は、前記利用中融資サービスから変更した後に計画通りの返済がされた場合に得られる収入額に制約条件を与えて、利率と返済時期と返済額とを含む返済プランを変化させた複数の融資サービスを抽出し、抽出された複数の融資サービスについて、前記ユーザ情報に基づく前記対象ユーザのリスクを反映させた調整後収入額を算出し、前記抽出された複数の融資サービスのうち、前記調整後収入額が所定の収益条件を満たす融資サービスを前記推奨可能融資サービスとする。
【0084】
態様2によれば、容易に算出できる単純な収入額に制約条件を課して融資サービスを絞り込み、絞り込まれた融資サービスについて調整後収入額を評価するので、少ない計算量で妥当な個数の推奨融資サービスを決定することができる。
【0085】
(態様3)
態様2の融資管理システムにおいて、
前記制約条件は、前記利用中融資サービスの利用を継続し計画通りの返済がされた場合に得られる収入額と、前記利用中融資サービスから変更した後に計画通りの返済がされた場合に得られる収入額との差額が所定の差額条件を満たすという条件を含む、
【0086】
態様3によれば、利用中融資サービスでの収入額と変更後の融資サービスでの収入額との差額に制約を加えることにより、推奨する融資サービスを絞り込むときに、ユーザが大きな不利益を被ると感じるような融資サービスや、サービス提供者の収益が大きく減少する融資サービスを推奨融資サービスとしてしまうような不都合な状態が起こり難くくすることができる。
【0087】
(態様4)
態様2の融資管理システムにおいて、
前記調整後収入額は、前記対象ユーザのユーザ情報に基づく発生確率でデフォルトが発生するとした場合に、前記融資サービスから得られる収入額の期待値である。
【0088】
態様4によれば、計画通りに返済された場合に見込まれる単純な収入額に制約条件を課すことで、融資サービスの絞り込みを容易化するとともに、実際にユーザへの推奨融資サービスとする前に調整後収入額で評価を行うので、サービス提供者は収入に関して妥当な評価を経た融資サービスを推奨することができる。
【0089】
(態様5)
態様2の融資管理システムにおいて、
前記調整後収入額は、前記対象ユーザのユーザ情報に基づく発生確率でデフォルトが発生するとし、前記対象ユーザが融資サービスを変更した後に他のサービスを追加で利用することにより得られる収入額が発生するとした場合に、前記変更後の融資サービスと前記追加で利用するサービスから得られる合計の収入額の期待値である。
【0090】
態様5にれば、融資サービスを変更したユーザがその後に他のサービスを利用することで得られる収入も考慮した融資サービスの推奨が可能となる。
【0091】
(態様6)
態様2の融資管理システムにおいて、
前記推奨融資サービス決定部は、前記調整後収入額と前記採用期待度に基づいて、前記推奨融資サービスに推奨の順位を決定する。
【0092】
態様6において、調整後収入額と採用期待度に基づいて推奨融資サービスを順位付けするので、収益を得られかつユーザに適した融資サービスを推奨することができる。
【0093】
(態様7)
態様4の融資管理システムにおいて、
複数のユーザの属性および行動のデータを収集するデータ収集部と、
複数のユーザの少なくとも一部の属性および行動のデータと前記複数のユーザのデフォルトの有無とを含む学習データを機械学習し、デフォルトの発生確率を予測するためのデフォルトリスク判定モデルを構築し、前記複数のユーザの少なくとも一部の属性および行動のデータと前記複数のユーザに推奨した融資サービスが採用されたか否かとを含む学習データを機械学習し、ユーザに推奨した融資サービスが採用される確率を前記採用期待度として予測するためのフィット性判定モデルと、を構築し、適宜更新する学習部を更に有し、
前記推奨融資サービス決定部は、前記対象ユーザのユーザ情報の少なくとも一部を入力として、最新のデフォルトリスク判定モデルにより予測されるデフォルトの発生確率に基づいて前記収入額の期待値を算出して前記調整後収入額とし、前記対象ユーザのユーザ情報の少なくとも一部を入力として、最新のフィット性判定モデルにより前記採用期待度を予測する。
【0094】
態様7によれば、予測モデルを適宜更新しており、最新の予測モデルで融資サービスの推奨の可否の判定に用いる指標値を算出するので、柔軟な変更が可能な融資サービスの実現に貢献することができる。
【0095】
(態様8)
態様7の融資管理システムにおいて、
前記デフォルトリスク判定モデルは、前記複数のユーザの少なくとも一部の属性および行動のデータと前記複数のユーザのデフォルトの有無および発生時点とを含む学習データを機械学習することにより構築された、デフォルトの発生時点毎の発生確率を予測するための予測モデルであり、
前記推奨融資サービス決定部は、前記対象ユーザのユーザ情報の少なくとも一部を入力として、最新のデフォルトリスク判定モデルにより予測されるデフォルトの発生時点および発生確率に基づいて前記収入額の期待値を算出する。
【0096】
態様8によれば、デフォルトの発生時点毎の発生確率を考慮した調整後収入額を予測するので、融資サービスの推奨の可否について時間経過を考慮した妥当な判定が可能となる。
【0097】
(態様9)
態様8において、
前記学習部は、更に、前記複数のユーザの少なくとも一部の属性および行動のデータと繰り上げ返済の有無および発生時点とを含む学習データを機械学習し、繰り上げ返済の発生時点毎の発生確率を予測するためのプリペイメントリスク判定モデルを構築し、適宜更新し、
前記推奨融資サービス決定部は、最新のデフォルトリスク判定モデルにより予測されるデフォルトの発生時期および発生確率と、最新のプリペイメントリスク判定モデルにより予測される繰り上げ返済の発生確率および発生時点とに基づいて、前記収入額の期待値を算出する。
【0098】
態様9によれば、デフォルトに加えて繰り上げ返済の発生も考慮した調整後収入額を予測することができる。
【0099】
(態様10)
態様7の融資管理システムにおいて、
前記学習部は、更に、複数ユーザの属性および行動のデータと前記複数のユーザが融資サービスの変更後に利用した他のサービスからの収入額とを含む学習データを機械学習し、融資サービスの変更後に他のサービスを追加で利用することによる収入額を予測するための未来収益性評価モデルを構築し、適宜更新し、
前記推奨融資サービス決定部は、前記対象ユーザのユーザ情報の少なくとも一部を入力とし、最新のデフォルトリスク判定モデルにより予測されるデフォルトの発生確率と、最新の未来収益性評価モデルにより予測される収入額とに基づいて、前記収入額の期待値を算出する。
【0100】
態様10によれば、他のサービスを追加で利用することで得られる未来の収益をも考慮して調整後収入額を予測することができる。
【0101】
(態様11)
態様7の融資管理システムにおいて、
前記ユーザの行動は、融資サービスの変更に関する行動が含まれる。
【0102】
一般に、融資サービスの変更に関するユーザ行動は、その背景としてユーザの経済状況や返済能力等の状況変化が反映された行動であると考えられる。例えば、返済能力が低下したときに月々の返済額を下げたいという意識が働くことが考えられる。
【0103】
それだけでなく、本開示のように融資サービスの変更が容易化した場合には、特に、融資サービスの変更に関するユーザ行動には、利用中の融資サービスにおける今後の返済をユーザがどれだけ意識して生計を立てているかといった関心や関与の度合いといった、これまで想定に無かったことも反映されるようになることが考えられる。
【0104】
態様11によれば、ユーザによる変更に関するユーザ行動を学習データに含めることで、ユーザの状況変化および/または関心や関与の度合いを考慮したスコアを算出することができる。その結果、返済方法の変更を許可するか否かを適切に判断することが可能となる。
【符号の説明】
【0105】
10…可変融資管理システム、11…学習装置、12…データ収集部、13…学習部、14…管理装置、15…入出力部、16…推奨融資サービス決定部、17…融資管理部、18…ユーザ端末、21…プロセッサ、22…メインメモリ、23…記憶装置、24…通信装置、25…入力装置、26…表示装置、27…バス、31…推奨可能融資サービス抽出部、32…採用性判定部、33…融資サービス列挙部、34…収益性演算部、35…収益性判定部、36…デフォルトリスク算出部、37…調整後収入算出部、38…プリペイメントリスク算出部、39…未来収益算出部、90…ユーザ、101…データ、102A…フィット性判定モデル、102B…デフォルトリスク判定モデル、102C…プリペイメントリスク判定モデル、102D…未来収益性評価モデル