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特許7487867注意喚起部付フェンス構造体、同製造方法並びに注意喚起部付フェンス構造体を備えた道路、広場、河川及び港湾施設
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】注意喚起部付フェンス構造体、同製造方法並びに注意喚起部付フェンス構造体を備えた道路、広場、河川及び港湾施設
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/04 20060101AFI20240514BHJP
   E01F 9/615 20160101ALI20240514BHJP
   E01F 9/623 20160101ALI20240514BHJP
【FI】
E01F15/04 Z
E01F9/615
E01F9/623
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020103192
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021195791
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】517266779
【氏名又は名称】株式会社リンコー
(73)【特許権者】
【識別番号】520214503
【氏名又は名称】岡安 博文
(73)【特許権者】
【識別番号】516240592
【氏名又は名称】林 弘美
(73)【特許権者】
【識別番号】599012684
【氏名又は名称】唐沢 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 弘美
(72)【発明者】
【氏名】岡安 博文
(72)【発明者】
【氏名】唐沢 伸
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-137904(JP,A)
【文献】特開2014-074868(JP,A)
【文献】特開2016-014765(JP,A)
【文献】特開2014-141559(JP,A)
【文献】特開平10-273657(JP,A)
【文献】特開2020-172761(JP,A)
【文献】再公表特許第2010/128678(JP,A1)
【文献】特開2002-046206(JP,A)
【文献】特開平11-343612(JP,A)
【文献】特開2011-189558(JP,A)
【文献】実開平05-058771(JP,U)
【文献】特開2003-027438(JP,A)
【文献】特開2008-063851(JP,A)
【文献】実開平02-042911(JP,U)
【文献】実開昭63-086116(JP,U)
【文献】特開2018-066213(JP,A)
【文献】実開平03-093816(JP,U)
【文献】特開2009-109626(JP,A)
【文献】特開2015-049396(JP,A)
【文献】特開2013-189826(JP,A)
【文献】登録実用新案第3187993(JP,U)
【文献】特開2019-7259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 15/04
E01F 9/615
E01F 9/623
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のポール本体と、
前記ポール本体の最上部に備えられたドーム形状のドーム部であって、ドーム部の少なくとも一部に蓄光材料を含む注意喚起部と、
を有し、
前記注意喚起部は、
ベース基板と、
ベース基板上に配置される反射層と、
反射層上に配置されるゲル接着層と、
ゲル接着層上に配置される蓄光材を分散させたシリコーン体である蓄光シリコーン体と、
少なくとも蓄光シリコーン体に被覆されるガラスコーティング層と、
からなり、
前記蓄光シリコーン体は、外表面側蓄光材密度が、央部側蓄光材密度よりも大である注意喚起部付フェンス構造体。
【請求項2】
ガラスコーティング層は、蓄光シリコーン体とゲル接着層との外表面に露出する境界部をも被覆する請求項1に記載の注意喚起部付フェンス構造体。
【請求項3】
蓄光シリコーン体とゲル接着層との外表面に露出する境界部のガラス被覆層の下層にさらにゲル被覆部が設けられた請求項1又は2に記載の注意喚起部付フェンス構造体。
【請求項4】
ゲル接着層は、両面テープである請求項1から請求項3のいずれか一に記載の注意喚起部付フェンス構造体。
【請求項5】
蓄光シリコーン体の表面には文字、図形、記号、色彩、又はこれらの組合せであって人の視覚によって認識できるものが描かれている請求項1から請求項4のいずれか一に記載の注意喚起部付フェンス構造体。
【請求項6】
ベース基板を準備するベース基板準備ステップと、
ベース基板上に反射層を配置する反射層配置ステップと、
反射層上にゲル接着層を配置するゲル接着層配置ステップと、
蓄光材をシリコーンに分散させた外表面側蓄光材密度が央部側蓄光材密度よりも大である蓄光シリコーン体を準備する蓄光シリコーン体準備ステップと、
ゲル接着層上に準備した蓄光シリコーン体を配置する蓄光シリコーン体配置ステップと、
少なくとも蓄光シリコーン体にガラスコーティング層を被覆するガラスコーティング層被覆ステップと、
からなる注意喚起部の製造方法を含み、
さらに、注意喚起部を空洞ポールに内挿するための内挿取付部に接合する接合ステップと、
前記接合ステップにて内挿取付部を備えた内挿取付部付注意喚起部の内挿取付部をポールの空洞に圧接組込みする圧接組込みステップと、
を有する注意喚起部付フェンス構造体の製造方法。
【請求項7】
前記蓄光シリコーン体準備ステップは、
硬化前の蓄光材が分散されたシリコーンである蓄光シリコーンを型に流し込む硬化前蓄光シリーン型入サブステップと、
型に流し込まれた蓄光シリコーンを硬化させる硬化サブステップと、
硬化した蓄光シリコーンを型から外す型外サブステップと、
からなる請求項6に記載の注意喚起部の製造方法を含む注意喚起部付フェンス構造体の製造方法。
【請求項8】
さらに流し込まれた硬化前蓄光シリコーンを放置して硬化前のシリコーンに分散された蓄光材の自然沈降によって蓄光材の分散密度をシリコーン内で異ならせる放置サブステップを硬化サブステップの前に行う請求項7に記載の注意喚起部の製造方法を含む注意喚起部付フェンス構造体の製造方法。
【請求項9】
前記型は、くりぬかれた部分がドーム形状である請求項7又は請求項8に記載の注意喚起部の製造方法を含む注意喚起部付フェンス構造体の製造方法。
【請求項10】
前記放置サブステップは、硬化前の蓄光シリコーンを流し込んだ型を回転又は/及び揺動させながら行う請求項8又は請求項8に従属する請求項9に記載の注意喚起部の製造方法含む注意喚起部付フェンス構造体の製造方法。
【請求項11】
前記圧接組込みステップの前に、内挿取付部の外表面に接着剤を塗布する接着剤塗布ステップを有する請求項6に記載の注意喚起部付フェンス構造体の製造方法。
【請求項12】
前記圧接組込みステップは、内挿取付部が側面に有する板バネによって圧接されるように構成されている請求項6又は請求項11に記載の注意喚起部付フェンス構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路端等に設置され、避難誘導や事故防止のために夜間でも視認可能な注意喚起用の部材を備えたフェンス構造体及びその製造方法に関し、さらには、かかるフェンス構造体を備えた道路や広場などの施設に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、路端等に設置される防護柵などのフェンス構造体の先端に備えられる反射材を備えたキャップが知られている。このキャップは、反射材により、夜間に通行する車両のヘッドライトからの光を反射することで、その位置を運転者に認識させて転落防止などのための注意喚起を行うことを目的とするものである。例えば、特許文献1には、防護柵などの支柱の先端に取り付けられるキャップであって、周囲に反射テープを巻き付けて多方向からの自動車のヘッドライトからの光の入射に対応できるようにしたものが開示されている(特許文献1参照)。また、特許文献2にも、同様に全周に反射材を備えたキャップが開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平3-93816号公報
【文献】特開平11-343612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2などに開示されている従来の反射材付きのキャップは、あくまで自動車のヘッドライトなどの光源からの入射光に対する反射光によって注意喚起するものであって、光源を有しない通行者、例えば懐中電灯などの光源を何ら携行していない歩行者に対しては注意喚起を行うことができない。
【0005】
また、従来のキャップは、その反射機能に関しても、円柱状のキャップの側面をなす円周上に反射材を備えたものにすぎない。このため、たとえ水平方向からの光の入射であっても、反射光を光源方向に返して注意を喚起することは困難であると考えられる。ましてや、上方向や斜め上方向からの光の入射に対してはこれをその光源方向に光を反射することはできない。しかし、特に災害時などには、上方向や斜め上方向からの光の入射に対して光源方向に光を反射することのニーズが存在する。例えば、大量の積雪があった場合などにおいては、防護柵の大半が雪中に埋まってしまい、キャップが雪面上の数センチ程度の位置に現れるにすぎないという事態も考えらえる。この場合、例えば、夜間、雪面上を歩行する者は、キャップを上方向ないし斜め上方向から見下ろす位置にあるため、たとえ懐中電灯で雪面を照らしながら歩行したとしても、従来のキャップでは、通行者が反射光を視認することができないため、通行者への注意喚起を行うことができない。
【0006】
このように、従来の反射材付きのキャップでは、夜間に光源を有しない通行者への注意喚起を行うことができず、また、光源を有する通行者であっても上方向や斜め上方向からキャップを見下ろす位置にある通行者に対しては注意喚起を行うことができないといった課題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みたものである。即ち、本発明の解決すべき課題は、夜間において光源を携行しない通行者に対しても、防護柵に備えられた注意喚起部材からの光によって防護柵の位置を認識させることができるようにすることで、有効に注意喚起を行えるようにすることにあり、その際に、当該注意喚起部材を上方向や斜め上方向から視認する位置にある通行者に対しても有効に注意喚起を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、本発明にかかる注意喚起部付フェンス構造体は、第一に、キャップに蓄光材料を備えることで、夜間に光源を携行しない通行者も対しても発光による注意喚起をできるようにしたことを特徴とする。また、第二に、キャップをドーム形状とし、その頂部を含む全面からの光を視認できるようにしたことを特徴とする。具体的には、第一の発明は、複数のポール本体と、前記ポール本体の最上部に備えられたドーム形状のドーム部であって、ドーム部の少なくとも一部に蓄光材料を含む注意喚起部と、を有する注意喚起部付フェンス構造体を提供する。
【0009】
第二の発明は、前記注意喚起部付フェンス構造体を備えた道路を提供する。
【0010】
第三の発明は、前記注意喚起部付フェンス構造体を備えた広場を提供する。
【0011】
第四の発明は、前記注意喚起部付フェンス構造体を備えた河川を提供する。
【0012】
第五の発明は、前記注意喚起部付フェンス構造体を備えた港湾施設を提供する。
【0013】
第六の発明は、第一の発明を基礎として、前記注意喚起部は、ベース基板と、ベース基板上に配置される反射層と、反射層上に配置されるゲル接着層と、ゲル接着層上に配置される蓄光材を分散させたシリコーン体である蓄光シリコーン体と、少なくとも蓄光シリコーン体に被覆されるガラスコーティング層と、からなる注意喚起部付フェンス構造体を提供する。
【0014】
第七の発明は、第六の発明を基礎として、蓄光シリコーン体は、外表面側蓄光材密度が、央部側蓄光材密度よりも大である注意喚起部付フェンス構造体を提供する。
【0015】
第八の発明は、第六又は第七の発明を基礎として、ガラスコーティング層は、蓄光シリコーン体とゲル接着層との外表面に露出する境界部をも被覆する注意喚起部付フェンス構造体を提供する。
【0016】
第九の発明は、第六から第八のいずれか一の発明を基礎として、蓄光シリコーン体とゲル接着層との外表面に露出する境界部のガラス被覆層の下層にさらにゲル被覆部が設けられた注意喚起部付フェンス構造体を提供する。
【0017】
第十の発明は、第六から第九のいずれか一の発明を基礎として、ゲル接着層は、両面テープである注意喚起部付フェンス構造体を提供する。
【0018】
第十一の発明は、第九または第十の発明を基礎として、前記型は、くりぬかれた部分がドーム形状である注意喚起部付フェンス構造体の製造方法を提供する。
【0019】
第十二の発明は、ベース基板を準備するベース基板準備ステップと、ベース基板上に反射層を配置する反射層配置ステップと、反射層上にゲル接着層を配置するゲル接着層配置ステップと、蓄光材をシリコーンに分散させた蓄光シリコーン体を準備する蓄光シリコーン体準備ステップと、ゲル接着層上に準備した蓄光シリコーン体を配置する蓄光シリコーン体配置ステップと、少なくとも蓄光シリコーン体にガラスコーティング層を被覆するガラスコーティング層被覆ステップと、からなる注意喚起部の製造方法を含む注意喚起部付フェンス構造体の製造方法を提供する。
【0020】
第十三の発明は、第十二の発明を基礎として、前記蓄光シリコーン体準備ステップは、硬化前の蓄光材が分散されたシリコーンである蓄光シリコーンを型に流し込む硬化前蓄光シリーン型入サブステップと、型に流し込まれた蓄光シリコーンを硬化させる硬化サブステップと、硬化した蓄光シリコーンを型から外す型外サブステップと、からなる注意喚起部の製造方法を含む注意喚起部付フェンス構造体の製造方法を提供する。
【0021】
第十四の発明は、第十三の発明を基礎として、さらに流し込まれた硬化前蓄光シリコーンを放置して硬化前のシリコーンに分散された蓄光材の自然沈降によって蓄光材の分散密度をシリコーン内で異ならせる放置サブステップを硬化サブステップの前に行う注意喚起部の製造方法を含む注意喚起部付フェンス構造体の製造方法を提供する。
【0022】
第十五の発明は、第十三又は第十四の発明を基礎として、前記型は、くりぬかれた部分がドーム形状である注意喚起部の製造方法を含む注意喚起部付フェンス構造体の製造方法を提供する。
【0023】
第十六の発明は、第十四の発明又は第十四の発明を基礎とする第十五の発明を基礎として、前記放置サブステップは、硬化前の蓄光シリコーンを流し込んだ型を回転又は/及び揺動させながら行う注意喚起部の製造方法含む注意喚起部付フェンス構造体の製造方法を提供する。
【0024】
第十七の発明は、第十二から第十六のいずれか一の発明に係る注意喚起部を空洞ポールに内挿するための内挿取付部に接合する接合ステップと、前記接合ステップにて内挿取付部を備えた内挿取付部付注意喚起部の内挿取付部をポールの空洞に圧接組込みする圧接組込みステップと、を有する注意喚起部付フェンス構造体の製造方法を提供する。
【0025】
第十八の発明は、第十七の発明を基礎として、前記圧接組込みステップの前に、内挿取付部の外表面に接着剤を塗布する接着剤塗布ステップを有する注意喚起部付フェンス構造体の製造方法を提供する。
【0026】
第十九の発明は、第十七又は第十八の発明を基礎として、前記圧接組込みステップは、内挿取付部が側面に有する板バネによって圧接されるように構成されている注意喚起部付フェンス構造体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、注意喚起部に蓄光材料を用いることで、夜間において光源を携行しない通行者に対してもフェンスの位置を認識させることができるため、転落防止などの注意喚起を適切に行うことが可能となる。また、その際に、蓄光体をドーム形状とすることで、上方向や斜め上方向から注意喚起部を視認する位置にある通行者に対しても有効に注意喚起を行えるようにすることが可能となる。
【0028】
さらに、本発明の付随的効果として、注意喚起部をフェンス構造体に備えることで、災害時における誘導標識としてもこれを有効に利用することが期待できる。すなわち、誘導標識は、災害時において被災者を避難場所等に確実に誘導できることが望ましいところ、フェンス構造体を構成する複数のポール本体は、例えば2メートルおきといった比較的短い間隔で設置されることが多いことから、当該ポール本体の最上部に備えられた注意喚起部を文字、図形等を用いた誘導標識とすることで、災害時に視認しやすく、かつ、被災者を避難場所等に確実に誘導することができる誘導標識を備えたフェンス構造体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施例1の注意喚起部付フェンス構造体の外観の一例を示す図
図2】実施例1の注意喚起部の外観の一例を示す図
図3】実施例1の注意喚起部の形状の一例を示す断面図
図4】内挿取付部を用いた注意喚起部のポール本体への取付にかかる構成の一例について説明するための図
図5】内挿取付部を用いた注意喚起部のポール本体への取付にかかる構成の一例について説明するための図
図6】内挿取付部を用いた注意喚起部のポール本体への取付にかかる構成の一例について説明するための図
図7】内挿取付部を用いた注意喚起部のポール本体への取付にかかる構成の一例について説明するための図
図8】注意喚起部のポール本体への取付けをより確実なものとするための構成の一例を示す図
図9】実施例9の注意喚起部付フェンス構造体の注意喚起部の形状の一例を示す断面図
図10】ガラスコーティング層の形成のしかたの一例について説明するための図
図11】実施例4の注意喚起部付フェンス構造体における蓄光シリコーン体の構成の一例を示す図
図12】実施例5の注意喚起部付フェンス構造体における蓄光シリコーン体の構成の一例を示す図
図13】実施例6の注意喚起部付フェンス構造体における蓄光シリコーン体の構成の一例を示す図
図14】実施例7の注意喚起部付フェンス構造体の注意喚起部におけるゲル接着層の構成の一例を示す図
図15】実施例8の注意喚起部付フェンス構造体における注意喚起部の構成の一例を示す図
図16A】実施例9の注意喚起部付フェンス構造体の注意喚起部の構成の一例を示す図
図16B】実施例9の注意喚起部付フェンス構造体の注意喚起部の構成の一例を示す図
図17A】平凸レンズの具体的構成の一例について説明するための概念図
図17B】平凸レンズの具体的構成の一例について説明するための概念図
図18A】平凸レンズによって入射光が広角となることを説明するための概念図
図18B】平凸レンズによって入射光が広角となることを説明するための概念図
図19A】平行な入射光が反射層によって乱反射されるとともに、平凸レンズによって照射光が広角となることを説明するための概念図
図19B】平行な入射光が反射層によって乱反射されるとともに、平凸レンズによって照射光が広角となることを説明するための概念図
図20】シリコーンゲルフィルムとその下層の一例の断面図
図21】シリコーンゲルフィルムとその下層の平面蓄光部材とさらにその下層に反射層を有する一例の断面図
図22】ガラスコーティング層に覆われた平凸レンズと下層構造部を示す斜視図
図23】平凸レンズの端縁がベースの頂面の円周状壁部内壁に沿って配置された断面図
図24】平凸レンズの端縁がベースの頂面の円周状壁部内壁に沿って配置されることを示すベース頂面及び平凸レンズの平面図
図25】実施例10の注意喚起部付フェンス構造体の製造方法に係る処理の流れの一例を示す図
図26】実施例10の注意喚起部付フェンス構造体の製造方法に係る処理の流れの一例を示す図
図27】実施例12の注意喚起部付フェンス構造体の製造方法に係る処理の流れの一例を示す図
図28】薄いドーム状のキャップが被せられたポール本体そのものはいじらずにドーム部である注意喚起部を取り付ける構成を有する注意喚起部を備えた注意喚起部付フェンス構造体の構成の一例を示す図
図29】薄いドーム状のキャップが被せられたポール本体そのものはいじらずにドーム部である注意喚起部を取り付ける構成を有する注意喚起部を備えた注意喚起部付フェンス構造体の構成要素を示す分解斜視図
図30】固定板の形状の一例を示す図
図31】固定板に注意喚起部を配置する構成の一例を示す垂直断面図
図32】固定板に注意喚起部を配置する構成の一例を示す垂直断面図
図33】ネジ穴の形状の好適例について説明するための図
図34】ネジ穴の構成の一例を示す概念図
図35】挟持体の寸法の具体例について説明するための図
【符号の説明】
【0030】
0100 注意喚起部付フェンス構造体
0110 ポール本体(複数)
0120、0220、0320 注意喚起部
0221、0321 ベース基板
0222、0322 蓄光体
0223、0323 内挿取付部
2860 挟持体
2870 固定板
2880 ネジ
2990 両面テープ
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の実施例を説明する。実施例と請求項の相互の関係は以下のとおりである。実施例1は主に請求項1などに関し、実施例2は主に請求項2、請求項3、請求項4、請求項5などに関し、実施例3は主に請求項6などに関し、実施例4は主に請求項7などに関し、実施例5は主に請求項8などに関し、実施例6は主に請求項9などに関し、実施例7は主に請求項10などに関し、実施例8は主に請求項11などに関し、実施例9は主に請求項1などに関し、実施例10は主に請求項12、請求項13、請求項14、請求項15などに関し、実施例11は主に請求項16などに関し、実施例12は主に請求項17などに関し、実施例13は主に請求項18、請求項19などに関する。なお、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
【実施例1】
【0032】
<概要>
本実施例の発明は、複数のポール本体と、注意喚起部とを有するフェンス構造体である。
本発明の最大の特徴は、注意喚起部がドーム形状を有すること及び注意喚起部が蓄光材料を含むことである。
【0033】
<構成>
(全般)
図1に本実施例の注意喚起部付フェンス構造体の外観の一例を示す。同図に示すように、本実施例の注意喚起部付フェンス構造体0100は、複数のポール本体0110と、注意喚起部0120とを有する(煩雑を避けるため、それぞれ一個にのみ符号を付した)。
【0034】
フェンス構造体は、しばしば防護柵などの名称で呼ばれるものであり、例えば、河川や崖(以下「河川等」という)沿いにある歩道の河川等側の路端に設置して歩行者に河川等に転落しないように注意喚起を促したり、道路の車道と歩道の境界に設置して自動車の運転者が自車を歩道に侵入させたり歩行者が車道に侵入したりしないように注意喚起を促したりすることを目的とするものである。図1においても、注意喚起部付フェンス構造体が路端0101に設置されており、当該フェンス構造体のすぐ向こう側が河川などである状態を想定している。
【0035】
なお、本発明においてフェンスとは、ポール本体を地面に立てた状態で複数並べてなる金属、木、竹、プラステックなどの材料からなる構造物をいい、これらポール本体間の全面を塀で覆ったものや、ポール本体間に隙間を開けて横板や横棒を渡したもの(図1の例はこれである)のほか、単にポール本体を複数本並べただけものをすべて含むものである。
【0036】
(ポール本体)
ポール本体は、注意喚起部付フェンス構造体を構成する円柱形状などの柱状の部材である。その材料には、金属、木、竹、プラステックなどが多く用いられるが、特に限定はない。ポール本体は、注意喚起部付フェンス構造体に複数備えられ、これら複数のポール本体が、例えば2メートルおきに等間隔で並べられるなど、一定の間隔をおいて地面に立てた状態で並べられることで、注意喚起部付フェンス構造体が構成される。
【0037】
個々のポール本体の上端には、注意喚起部が取り付けられる。その取付方法には特に限定はないものの、好適な方法の一つとして、後述のように、注意喚起部をポール本体の上端の空洞(以下、「空洞ポール」ということがある。)に圧接組込みする方法が用いられる。したがって、この場合には、ポール本体の少なくとも上端部は、空洞を有する筒状であることが望ましい。
【0038】
ポール本体の寸法に特に限定はないが、景観等に配慮しつつも、洪水、豪雪などの災害時においてもその先端が埋没せず、通行者から視認可能であるような長さを有することが望ましい。その具体的寸法は、設置場所における災害予測などに基づいて適切に設計される。図1に示したものは、ポール本体の直径が10~15センチメートル程度、路面からの高さが1~1.5メートル程度のものを想定したものであるが、あくまで一例である。
【0039】
(注意喚起部:全般)
注意喚起部は、ポール本体の最上部に備えられたドーム形状のドーム部であって、ドーム部の少なくとも一部に蓄光材料を含むものである。注意喚起部をドーム形状のドーム部とする理由は、上方向や斜め上方向からでも発光を視認できるようにするためである。かかる観点から、ドーム形状とは、要するに盛り上がった形状であればよく、したがって、本発明におけるドーム形状には、文字通りのドーム形状(丸屋根形状)である半球状や半楕円体形状のほか、円錐形状、円柱上に半球などを重ねた形状なども広く含まれる。
【0040】
また、注意喚起部は、「少なくとも一部に蓄光材料を含む」ものであればよく、発光に少しでも蓄光材料を利用するもの(以下、「蓄光体」という。)であればすべて含まれる。その典型例は蓄光シリコーン体を用いたものである。蓄光シリコーン体は蓄光材を分散させたシリコーン体であり、表面全体が蓄光による発光を行うものである。したがって、これをドーム形状とすることで、上方向や斜め上方向からでも発光を視認することが可能となる。蓄光シリコーン体を備える注意喚起部の構成の詳細については実施例3で説明する。
【0041】
(注意喚起部:具体的構成の一例)
図2に、本実施例の注意喚起部の外観の一例を示す。同図の例では、注意喚起部0220は、円柱形状のベース基板0221上にドーム形状の蓄光体0222を載置してなるものである。また、同図に示す注意喚起部は、ポール本体上端の筒部に自身を嵌設するための内挿取付部0223を備えている。注意喚起部のポール本体への取付けに関する具体的な構成については、後述する。
【0042】
図3は、本実施例の注意喚起部の形状の一例を示す断面図であって、図2のX-X断面図である。同図に示すように、注意喚起部0320は、ベース基板0321(格子で示す)と、蓄光体0322(右上り斜線で示す)と、内挿取付部0323(左上がり斜線で示す)とを有する。なお、本明細書においては、内挿取付部を注意喚起部の構成部分として説明するが、内挿取付部が注意喚起部とは別の独立した部材であるとみることも差し支えなく、両者において技術的な意義の違いはない。
【0043】
(ベース基板)
ベース基板は、上面に盆状の凹みを有し、この凹みに蓄光体が嵌め込まれる形で載置される。この載置に当たっては、例えば同図に示すように、蓄光体の底部にネジ0322aを取り付け、これをベース基板に設けたネジ穴0321aに螺設するようにしてもよい。また、ベース基板周縁部に環状に下に張り出したスカート部0321bを有する形状を有することが望ましい。スカート部を設ける目的は、注意喚起部をポール本体に取り付けた際に、ポール本体の外壁がスカート部の内壁にぴったりと内接するようにすることで、ポール本体の空洞ポールに雨水や埃などが侵入しないようにするとともに、注意喚起部がポール本体から脱落しにくいようにするためである。したがって、ベース基板周縁部に環状に下に張り出したスカート部を設ける場合は、上述のようにその内径がポール本体の外径にほぼ一致する寸法となるように設計される(後出の図7(c)参照)。
【0044】
ベース基板の素材としては、ステンレス、アルミニウム、チタン、真鍮等の金属が好適であるが、セラミック(ファインセラミックス、陶器、ガラスなど)や硬性樹脂(アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂など)であってもよい。
【0045】
(内挿取付部)
内挿取付部は、注意喚起部をポール本体に取り付けるためのものである。この内挿取付部は、ベース基板と別部材であってネジ止めなどによりベース基板に取り付けられるものであってもよいが、ベース基板の構成部分としてベース基板と一体に成形されたものであってもよい。
【0046】
前出の図3には、内挿取付部がベース基板とは別部材であって、ベース基板に設けたネジ穴に対応する位置にネジ穴を有する例が示されている。この場合に、蓄光材、ベース基板及び内挿取付部を一体的に組み合わせて注意喚起部を形成するためには、例えば、ベース基板と内挿取付部の上記それぞれのネジ穴の位置を合わせて一本のネジで止めたうえで、ベース基板の上面に、ドーム形状の底面に接着剤を塗布した蓄光材を取り付けるといった構成が考えられる。なお、図3に示した形状とは異なるが、蓄光材、ベース基板及び内挿取付部を一体的に組み合わせて注意喚起部を形成するための別の構成として、ベース基板と内挿取付部のいずれにもネジ穴を設けないものとしたうえで、蓄光材、ベース基板及び内挿取付部をすべて接着剤で貼り付けるといった構成も考えられる。
【0047】
内挿取付部の目的は、注意喚起部をポール本体に取り付けることにある。そこで、次に内挿取付部を用いた注意喚起部のポール本体への取付にかかる構成について説明する。
【0048】
図4から図7までは、内挿取付部を用いた注意喚起部のポール本体への取付にかかる構成の一例について説明するための図である。この例は、内挿取付部の底面に板バネを取り付けた状態で注意喚起部をポール本体の筒状上部に挿入することで、板バネの付勢力を利用して内挿取付部をポール本体の筒内に係止するようにしたものである。
【0049】
まず、図4に示すように、例えば十字状の張出部分0431(煩雑を避けるため一箇所にのみ符号を付した。以下同様)を有する板バネ0430が準備される。この板バネは、例えばネジによって内挿取付部の底面に取り付けられる。このため、板バネの中央部にはネジ穴0432が設けられる。
【0050】
また、図5は、内挿取付部を斜め下方向から見た斜視図であるところ、同図に示すように、内挿取付部0523の底面0523aには、板バネの張出部分を係止するための十字状の切欠き部(概ね破線楕円0523bで示す範囲。煩雑を避けるため一箇所にのみ符号を付した)が形成される。なお、前出の図3にもこの切欠き部(概ね破線楕円0323bで示す範囲)を示した。切欠き部を設ける目的は、取り付けた板バネが水平方向に回転しないようにするためである。内挿取付部の底面の中央部にもネジ穴0523cが設けられる。なお、前出の図3にもこのネジ穴0323cを示した。以上の構成を用いて、板バネが内挿取付部の底面にネジ止めされる。なお、取り付けた板バネが水平方向に回転しないようにするための別の構成として、切欠き部を設けることなく単に板バネを内挿取付部の底面に複数個所でネジ止めする等により固定するという構成であってもよい。
【0051】
図6は、板バネが内挿取付部の底面にネジ止めされた状態を示す図であって、内挿取付部の底面方向から見た図である。同図に示されているように、板バネの張出部分0631は、内挿取付部0623の外周部よりも外側に張り出している。
【0052】
なお、板バネの張出部分(及びこれに対応する内挿取付部の切欠き部の形状)は、十字状に限られるものではなく、例えば、六角形状、八角形状などであってよい。ただし、位置決め作業を容易にするため、張出部分の各頂点が正多角形を形成するものであることが望ましい。
【0053】
次に、図7に示すように、この状態の内挿取付部がポール本体上部の筒状部分としてもう消えられている空洞ポールに挿入されることで、注意喚起部がポール本体に取り付けられる。
【0054】
このうち、図7(a)は、挿入される前の状態を示す。ここに示すように、ポール本体0710の空洞ポール0711の内径L1は、内挿取付部0723の外径L2よりは長く、板バネの張出部分0731が内接する円周の直径L3よりは短い。なお、煩雑を避けるため、板バネを内挿取付部の底面に取り付けるためのネジ(ネジ頭部分)の図示は省略した。
【0055】
図7(b)は、内挿取付部0723が空洞ポール0711に少し挿入された状態を示す。このとき、上記のような寸法関係から、板バネの張出部分0731がポール本体の内壁(空洞ポールの壁)0710aに当接し、上方に少したわむ形となる。同図には、左右及び正面方向に張り出している張出部分が上方にたわんでいる状態が示されており、同図には現れないが背面方向に張り出している張出部分も同様に上方にたわんだ状態となる(図7(c)においても同様である)。
【0056】
図7(c)は、内挿取付部0723が完全に挿入され、取付けが完了した状態を示す。このとき、板バネの張出部分0731は上方に大きくたわんだ状態となり、付勢力により空洞ポール0711の壁0710aを押圧することとなるため、注意喚起部がポール本体から抜けることなくしかっりと係止される。
【0057】
なお、同図の例では、注意喚起部のベース基板周縁部に環状に下に張り出したスカート部0721bが設けられており、その寸法は、図7(c)に現れているように、注意喚起部をポール本体に取り付けた際に、当該スカート部がポール本体の外周の壁にぴったりと外接するように設計されている。これにより、取付け後の注意喚起部のがたつきを防止することができる。
【0058】
さらに、この取付けをより確実なものとするため、以下のような構成を付加してもよい。
【0059】
図8は、かかる構成の一例を示すものであり、概ね図7(c)の破線円Bで囲んだ範囲において取付けをより確実なものとするための構成が施されている例を示したものである。このうち、図8(a)は、ポール本体0810側面の少なくとも一箇所(好適には複数箇所)並びに板バネの張出部分0831またはこれに加え内挿取付部0823の対応する位置にネジ穴0812を設けてネジ0850で止める例を示す。また、図8(b)は、空洞ポール0811の内壁に設けた段差0813に板バネの張出部分0831の先端を当接させる例を示す。このほか、図示は省略するが、内挿取付部を空洞ポールに挿入する前に、内挿取付部に取り付けた状態の板バネの下面(空洞ポールの壁に接する側の面)の外表面に接着剤を塗布するようにしてもよい。さらにこれらの構成を適宜組み合わせたものであってもよい。このように注意喚起部をポール本体に対してより確実に取り付けることにより、災害時などにおいても注意喚起部がポール本体から脱落しにくくすることで、注意喚起を適切に行うことに資することができる。また、注意喚起部をポール本体から取り外して持ち去るといったいたずらや盗難を予防することにも資することができる。
【0060】
(注意喚起部の取付け構造:具体的構成の別の一例)
注意喚起部のポール本体への取付け構造の好適な構成の別の一例として、薄いドーム状のキャップが被せられたポール本体そのものはいじらずにドーム部である注意喚起部を取り付ける具体的構成もある。かかる構成によれば、既設のポール本体を加工せずにそのまま利用して注意喚起部を簡単に取り付けることができるため、本発明にかかる注意喚起部付フェンス構造体を簡単な工事で安価に大量に提供することができるという利点がある。
【0061】
図28は、かかる構成を有する注意喚起部を備えた注意喚起部付フェンス構造体の構成の一例を示す図である。このうち、(a)は、当該構造体の上端部を斜視図で示したものである。同図において、既設のポール本体2810の上端に挟持体2860が取り付けられている。挟持体の具体的構成及び取付方法については後述する。この挟持体の上には、固定板2870が配置され、さらに固定板の上に注意喚起部2820が配置される。固定板は、挟持体を固定するとともに、その上に注意喚起部を接合して配置するためのものである。なお、挟持体を注意喚起部の構成要素として構成してもよいし、注意喚起部とは別の構成要素としてもよいことは、既述の内挿取付部の場合と同様である。以下では、挟持体を注意喚起部とは別の構成要素として説明する。
【0062】
図28(b)は、同図(a)を正面図で示したものである。図中、左上り斜線で示した部分が挟持体2870、右上り斜線で示した部分が固定板2870である。
【0063】
図28(c)は、同図(b)のA-A線断面図である。ここに示したように、既設のポール本体2810は、通例、円柱状の柱部2811と、その上端に被せられた蓋部2812とからなり、蓋部の外径は柱部の外径より一回り長い寸法となっている。例えば、歩車道境界用の防護柵の一般的な寸法は、柱部の直径が約114ミリメートル、蓋部の外径が約120ミリメートルである。蓋部の柱部への取付けは、通例、溶接やかしめによる圧接などによっている。
【0064】
既に述べたように、蓋部の上側には挟持体2860が配置され、さらに挟持体の上に固定板2870が配置されるところ、挟持体と固定板はネジ2880によって固定される。さらに挟持体の上側に注意喚起部2820が配置される。
【0065】
図29は、かかる構成の注意喚起部付フェンス構造体の各構成要素を分解斜視図で示したものである。以下、同図を参照して、その具体的構成についてさらに詳細に説明する。
【0066】
(挟持体)
図29に示すように、既設のポール本体2910の蓋部2912の上側には挟持体2960が被せられるところ、この挟持体は、2個に分割された部分2961、2962からなり、これら2個の部分で蓋部を挟んで包むようにして挟持体2960が取り付けられる。挟持体の各部分は、中空で底面を欠く円柱を分割した形状を有し、これらの部分をつなぎ合わせることにより全体として1個の中空で底面を欠く円柱を形成して蓋部を包むようにして保持する。なお、挟持体の分割個数は、2個に限らず、3個あるいはそれ以上であってもよい。
【0067】
また、挟持体の底部周縁には、全周にわたって内側にやや張り出した爪部2963が形成されている(図29には現れないが、左側の分割部分2961においても同様である)。挟持体は、この爪部と、上面2964、2965とで、蓋部を上下で挟む形でポール本体に固定される。また、挟持体には、ネジ穴が設けられる(図29では4個のネジ穴2960a~dが設けられる例を示したが、ネジ穴の個数は任意でよい)。これは、挟持体自身を次に述べる固定板とネジ止めにより固定するためのものである。このようにして挟持体は、固定板と固定された状態で蓋部を保持する形となるため、挟持体と蓋部とを溶接、ネジ止めその他の接合手段を用いて接合する必要はない。
【0068】
上述の挟持体による蓋部の保持を適切に行うため、挟持体の形状・寸法は、蓋部をぴったりと覆うように設計されることが望ましく、これにより、取り付けられた挟持部のがたつきを防止することができる。かかる寸法の具体例について、図35を用いて説明する。同図に示すように、挟持体が蓋部をぴったりと覆うようにするためには、つなぎ合わせた状態の挟持体3560の内径Nを蓋部3512の直径Mにほぼ一致させ、挟持体の内径Nから爪部3563の長さnの2倍を引いた寸法を柱部3511の直径mにほぼ一致させるとともに、挟持体の上面下端から爪部上面までの高さHを蓋部の高さhにほぼ一致させればよい。すなわち、つなぎ合わせた状態の挟持体の内径Nと、蓋部の直径Mと、挟持体の爪部の長さnと、柱部の直径mとの関係及び挟持体の上面下端から爪部上面までの高さHと、蓋部の高さhの関係が、N≒M、N-2n≒mであり、かつH≒hであるように構成すればよい。かかる寸法の一例として、蓋部の外径Nが約120ミリメートル、高さhが約6ミリメートルで、柱部の直径Mが約114ミリメートルである歩車道境界用防護柵のポール本体に取り付ける場合において、つなぎ合わせた状態の挟持体の内径Nが約120ミリメートル、高さHが約6ミリメートル、爪部の長さnが約3ミリメートルのものが挙げられる。
【0069】
挟持体の素材は、硬く変形しにくいものが望ましく、好適な素材として、例えば、金属(ステンレス、アルミニウム、チタン、真鍮など)、セラミック(ファインセラミックス、陶器、ガラスなど)、硬質樹脂(アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂など)が挙げられる。
【0070】
(固定板・両面テープ)
ポール上端を挟持する形で取り付けられた挟持体の上面には、固定板2970がネジ止めにより固定される。このため、固定板にも挟持体のネジ穴に対応する位置にネジ穴2970a~dが設けられる。固定板の素材も、上述の挟持体と同様、金属、セラミック、硬質樹脂などが好適である。
【0071】
固定板の上面には、両面テープ2990を介して注意喚起部2920が配置される。注意喚起部の具体的構成は、図2等を用いて既に説明したところと同様である(ただし、当然ながら、本実施例の注意喚起部は内挿取付部を備えないものである)。
【0072】
両面テープは、上面側の注意喚起部と、下面側の固定板を密着的に接合させるためのものであり、注意喚起部のベース板と固定板がどちらも金属である場合には、例えば、金属接合可能な両面テープである住友スリーエム社製のVHB(登録商標)アクリルフォーム構造用接合テープ(製品番号Y-4914-015)が用いられる。
【0073】
固定板の形状は、例えば図29に示したような上下面がともに平面からなる平板状のものが挙げられるが、これとは異なり、固定板の上面に盆状の凹みを設けて、ここに両面テープを埋め込んで配置できるようにしたものであってもよい。
【0074】
図30は、固定板の形状の別の一例を示す図であって、固定板3070の上面に盆状の凹み3071を設けて、ここに両面テープ3090をはめ込んで配置することができるようにしたものを示す。
【0075】
図31は、かかる形状の固定板に注意喚起部を配置する構成の一例を垂直断面図で示したものである。このうち、(a)は、固定板3170の凹み3171に両面テープ3190を配置した状態を示す。次に、(b)は、固定板の上面に注意喚起部のベース基板3121を配置した状態を示す。このような構成にした場合、平板状の固定板の上に両面テープ及びベース基板(底面が平面のもの)を配置する場合と異なり、固定板とベース基板の側面どうしがすき間なく接着し、両面テープの側面が外部に露出することがない。これにより、両面テープの損傷、汚損、劣化などのおそれを回避することができる。
【0076】
なお、図示は省略するが、盆状の凹みを固定板の上面ではなく注意喚起部のベース基板の下面に設けるようにしてもよい。
【0077】
さらに、上述のような固定板に盆状の凹みを設ける構成において、図32に示すように、ベース基板3221の下面の中央部3222をやや窪んだ形状にしてもよい。こうすることにより、固定板3270の上面の盆状の凹みに配置される両面テープ3290が固定板の上面よりも上にはみ出した状態で配置することが可能となり、両面テープをより広い面積で接着させることもできる。さらに、両面テープの素材が前述のアクリルフォームのように柔軟性に優れたものである場合には、両面テープをベース基板の下面の窪みの形状に合わせて変形させることができるので、両面テープとベース基板の密着状態をより好適に実現することが可能となる。また、固定板の凹みの深さと両面テープの厚みの関係について、より設計の自由度を増すこともでき、固定板を含む注意喚起部の設計・製造をより簡単にすることに資することができる。以上のことは、盆状の凹みを注意喚起部のベース基板の下面に設けるようにした場合においても同様にあてはまる。
【0078】
(ネジ穴)
さらに、ネジ止めに伴うがたつきを防ぐために、挟持体と固定板を合わせたネジ穴の寸法は、ネジをしっかりと止めることができるだけの長さを有するものであることが望ましい。図34は、かかる構成の一例を示す概念図であり、(a)に示すように、この例では、挟持体のネジ穴を形成する部分が下面側に突出した形状となっている。(b)は参考のための比較例として、ネジ穴の寸法が、ネジをしっかりと止めることができるだけの長さになっていない例である。
【0079】
図33は、ネジ穴の形状の好適例についてさらに説明するための図であり、図28(c)のうち概ね円Bで囲んだ部分を示す拡大図である。同図に示すように、本例では、ネジ穴のうち頭部を収める部分3370aが深く形成され、ネジの頭部が固定板上に突出しないように形成されている。これにより、ベース基板の底面が平面であってもこれをがたつきなくぴったりと水平に固定することが可能となる。
【0080】
また、ネジの頭部の上に現れる固定板のネジ穴の空間に、ゲルを充てんしてもよい。こうすることで、雨水や埃などがネジ穴を介して挟持体の内部に侵入して注意喚起部付フェンス構造体を劣化させることを防止することができる。
【0081】
<効果>
本実施例の発明によれば、注意喚起部に蓄光体を用いることで、夜間において光源を携行しない通行者に対してもフェンスの位置を認識させることができるため、転落防止などの注意喚起を適切に行うことが可能となる。また、その際に、蓄光体をドーム形状とすることで、上方向や斜め上方向からキャップを視認する位置にある通行者に対しても有効に注意喚起を行えるようにすることが可能となる。
【実施例2】
【0082】
<概要>
本実施例の発明は、実施例1で説明した注意喚起部付フェンス構造体を備えた道路、広場、河川または港湾施設である。
【0083】
<構成>
(注意喚起部付フェンス構造体を備えた道路)
【0084】
実施例1で見たように、本発明にかかる注意喚起部付フェンス構造体により、夜間に光源を携行しない通行者などに対してもフェンスの位置を認識させることができるため、転落防止などの注意喚起を適切に行うことが可能となる。そこで、かかる注意喚起を行うニーズのある施設に注意喚起部付フェンス構造体を備えることで、転落などの危険を防止可能な安全な施設を提供することができる。
【0085】
道路に関しては、例えば、路端が側溝、崖、田、河川などに接している場合、境界にかかる注意喚起部付フェンス構造体を設置することで、夜間においても転落を防止することが可能な道路を提供することができる。特に、豪雪や洪水などの大規模災害時には、注意喚起部付フェンス構造体の大部分が雪中や水中に埋没してしまい、注意喚起部が雪上、水上数センチメートル~数十センチメートル程度の高さに露出するという状況も考えられる。このような場合、雪上や水上を徒歩や舟艇などで通行する歩行者等の視線は、注意喚起部を上方向や斜め上方向から注意喚起部を見下ろす位置となるが、従来の水平方向への反射機能しか有しないものとは異なり、本発明にかかる注意喚起部付フェンス構造体であれば、ドーム型の蓄光体を備えることで、かかる場合にも有効に注意喚起を行うことが可能となる。
【0086】
このほかにも、例えば、車道と歩道の境界に設置されるフェンスをかかる注意喚起部付フェンス構造体とすることで、同様の効果を奏することが可能なフェンス構造体を備える道路を提供することができる。
【0087】
(注意喚起部付フェンス構造体を備えた広場)
広場に関しても、例えば、広場と外周の道路との境界にかかる注意喚起部付フェンス構造体を設置することで、上で述べたところと同様の効果を奏することが可能なフェンス構造体を備える広場を提供することができる。
【0088】
(注意喚起部付フェンス構造体を備えた河川)
河川に関しても、例えば、河川と河川敷の境界にかかる注意喚起部付フェンス構造体を設置することで、上で述べたところと同様の効果を奏することが可能なフェンス構造体を備える河川を提供することができる。
【0089】
(注意喚起部付フェンス構造体を備えた港湾施設)
港湾施設に関しても、例えば、岸壁や桟橋と港湾の境界にかかる注意喚起部付フェンス構造体を設置することで、上で述べたところと同様の効果を奏することが可能なフェンス構造体を備える港湾施設を提供することができる。
【0090】
(その他)
以上は、主な施設を例示したものであって、このほか、例えば、湖沼、ビルの屋上などにかかる注意喚起部付フェンス構造体を設置することで、上で述べたところと同様の効果を奏することが可能なフェンス構造体を備える施設を提供することができる。要するに、夜間における転落防止などの危険を防止する必要のある施設であれば、本発明にかかる注意喚起部付フェンス構造体を設置することで安全な施設を提供することができるという効果を奏することができるのであり、かかる注意喚起部付フェンス構造体を備えるこれら施設のすべてが本発明の技術的範囲に属する。
【0091】
<効果>
本実施例の発明によれば、実施例1で説明した構成、効果を有する注意喚起部付フェンス構造体を備えることで、転落等の危険を防止することができる安全な施設を提供することが可能となる。
【実施例3】
【0092】
<概要>
本実施例は、実施例1で説明した注意喚起部付フェンス構造体の注意喚起部を、ベース基板と、ベース基板上に配置される反射層と、反射層上に配置されるゲル接着層と、ゲル接着層上に配置される蓄光材を分散させたシリコーン体である蓄光シリコーン体と、少なくとも蓄光シリコーン体に被覆されるガラスコーティング層とからなるものとしたものである。
【0093】
<構成>
本実施例の注意喚起部付フェンス構造体の構成は、実施例1で説明した注意喚起部付フェンス構造体の構成と基本的に共通する。ただし、本実施例の注意喚起部付フェンス構造体は、注意喚起部が、ベース基板と、ベース基板上に配置される反射層と、反射層上に配置されるゲル接着層と、ゲル接着層上に配置される蓄光材を分散させたシリコーン体である蓄光シリコーン体と、少なくとも蓄光シリコーン体に被覆されるガラスコーティング層と、からなる点に特徴がある。
【0094】
図9は、本実施例の注意喚起部付フェンス構造体の注意喚起部の形状の一例を示す断面図である。同図に示す注意喚起部0920は、ベース基板0921、蓄光シリコーン体0922、ベース基板上に配置される反射層0926、反射層上に配置されるゲル接着層0927及び蓄光シリコーン体に被覆されるガラスコーティング層0928からなる。かかる構成を有する注意喚起部として、本発明に係る出願人と同一の出願人による蓄光シリコーンマーカーに係る特許出願(特願2019-073816)の明細書等に記載された構成を利用することができる。以下、その構成の概要について、構成要件ごとに説明する。なお、ベース基板に係る構成は上に述べたところと同様であるから説明を省略する。また、内挿取付部を注意喚起部の構成要素として備えていてもよいが、その場合の内挿取付部の構成は、実施例1で説明したところと同様であるから説明を省略する。さらに、蓄光シリコーン体をベース基板及び内挿取付部に取り付けるための構成及び内挿取付部をポール本体に取り付けるための構成についても、実施例1で説明した構成と同様であるから説明を省略するとともに、同図における図示を省略する。
【0095】
(蓄光シリコーン体)
蓄光シリコーン体は、蓄光材を分散させたシリコーン体である。蓄光材としては、例えば、アルミン酸ストロンチウム系蓄光粉末が用いられる。なお、アルミン酸ストロンチウム系蓄光粉末とは、アルミン酸ストロンチウム塩を母結晶として、少量のユーロピウム(Eu)、ディスプロシウム(Dy)、ホウ素(B)などを添加したものをいう。蓄光粉末を混入する液状シリコーンには、なるべく透明度の高いものを用いることが望ましい。蓄光シリコーン体を形成する方法としては、例えば、お椀状、蒲鉾の型状、フライパン状、鍋状などの型に流し込んだシリコーン液に粉末状の蓄光材を混合し、一定時間静置して蓄光粉末を沈殿させた後、例えばホットプレートに載置し摂氏120度で約10分加熱し、その後ホットオーブン(乾燥機能付)を用いて摂氏120度で約2時間程度加熱処理を行って硬化させ、硬化した蓄光シリコーン体を型から外すといった方法が用いられる。なお蓄光材に加えて顔料も同時に混合するように処理することも可能である。この顔料の色合い(複数の顔料を混ぜてもよい)によって昼間の時間帯の色彩を決定する。静置時間を変化させることでシリコーン体中における蓄光材の分布状態を様々に調整することができる。例えば、蓄光粉末が完全に沈殿する前に硬化させることで、シリコーン体に蓄光粉末や同時に混合する場合の顔料(場合により複数の顔料が独立に模様を描くようにすることも可能)がグラジュエーションをなして分布した状態のものを得ることができる。また、硬化前に型を回転させたり揺動させたりしてもよい。かかる具体例については別の実施例にて後述する。
【0096】
あるいは、蓄光シリコーン体は、発光色の異なる素材からなる複数の蓄光材を層状に重ねた構造のものとしてもよい。蓄光材の発光色としては、赤色、黄色、緑色、青緑色、青色など様々なものが知られている。例えば、特開2011-189558号公報には、硫化亜鉛の結晶に少量の銅を賦活剤として加えた蓄光材料(発光色は、その組成によって黄色~赤色)、硫化亜鉛に少量の銅を賦活剤として加えた蓄光材料(発光色は緑色)、アルミン酸塩に賦活剤としてユーロピウムを加えたり共賦活剤として希土類元素又は遷移金属を加えたりした蓄光材料(発光色は緑色又は青色)が開示されている。そこで、例えば、蓄光シリコーン体を下から順に発光色が赤色、黄色、青色の三層構造となるように、これら各色の液状の蓄光材料を流込みと硬化を繰り返しつつ形成したものが考えられる。その際、硬化過程で揺動や回転を加えることで、各層内や全体にグラジュエ―ションをかけたようにしてもよい。こうした構成により、各色やその組合せに独自の意味を持たせて多様な表示内容を有する注意喚起部付フェンス構造体を提供することができる。
【0097】
(反射層)
反射層は、ベース基板上に配置される反射材を含む層状の部材であって、蓄光シリコーン体からの光を蓄光シリコーン体側に反射させて蓄光シリコーン体の発光輝度を向上させるためのものである。反射材の材料としては、酸化チタン、シリカなどの白色顔料が好適であり、これらをベース基板に塗布することにより反射層を形成することができる。あるいは、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂(PMMA)、PETなどを基材として上例のような白色顔料を含む反射フィルムや反射シートなどを用いることもでき、例えば、3M社製の反射フィルム(商品名:ライトエンハンスメントフィルム 3635-100ホワイト)が用いられる。
【0098】
また、ベース基板の中心付近には反射層を設けないようにしてもよい。例えば、図3に示したような中央部で内挿取付部とネジ止めしたベース基板上に蓄光シリコーン体を配置する構成においては、ネジ穴がベース基板の上面側まで貫通している。この場合、ネジ頭がベース基板上に突出する形状の場合には、当該ネジ穴部分には、反射層が形成されないこととなる。この場合には、蓄光シリコーン体の底面に凹みが設けられるところ、蓄光シリコーン体の厚みが厚い場合には、例えば蓄光体の中心付近の厚みが1センチメートル以上となる部分の底面に当たる部分にゲル接着層及び反射層を配置しない領域を設けることが考えられる。かかる構成は、蓄光シリコーン体の中心付近の厚みが大きい(約1センチメートル以上)と、このベース基板の中央付近で接する部分に近い蓄光材はほとんど発光しないため、反射材を設ける意義が乏しいことに鑑みたものである。一方、ネジ穴がベース基板の上面側まで貫通している構成であっても、ネジ頭がベース基板上に突出せずベース基板と面一となる場合も考えられ、この場合には、ベース基板及びネジ頭の面上全体に反射層を設けることができる、この場合には、ベース基板の中心付近にも反射層が設けられることとなる。
【0099】
(ゲル接着層)
ゲル接着層は、反射層上に配置される透明ゲル材料からなる部材である。その目的は、ゲルの粘着性及び柔軟性という特性を利用して、接着剤を用いることなく、反射層と蓄光シリコーン体を圧着することにある。また、反射材と蓄光シリコーン体をすき間なく圧着することで、反射層と蓄光シリコーン体との間に空気が入らないようにすることができ、これらの間での光の減殺を防ぐことができる。また、接着剤という異なる素材の部材を介在させずに済むため、この点からも反射層・蓄光シリコーン体間における光の減殺を防ぐことができる。なお、本明細書において、「透明」には、無色透明及び有色透明の両方を含む(他の構成部材についても同様である)。
【0100】
透明ゲル材料の素材としては、透明シリコーン系ゲル、透明アクリル系ゲルが好適である。ゲル接着層の形状は、反射層と蓄光シリコーン体とをすき間に空気が入らない状態で密着させるという目的に照らし、反射層の平面形状及び蓄光シリコーン体の底面形状と略合同の形状をなし、また、その柔軟な特性に照らし、あまり厚みのないものであることが望ましい。使用前の厚みの一例としては0.1~0.3ミリメートル程度のものが考えられる。ゲル接着層は両面テープでもよい。かかる具体例については、別の実施例にて後述する。ゲル接着層を反射層上に配置したのち、蓄光シリコーン体を配置する場合には蓄光シリコーン体によってゲル接着層を押圧し、両者の間に気泡等が残らないように作業する。押圧力は、ゲル接着層の単位面積当たり平均して400グラム/平方センチメートルから1キログラム/平方センチメートル程度である。蓄光シリコーン体にあまり大きな力を加えると、破損する可能性があるので、蓄光シリコーン体を布などの比較的柔らかい部材で上方をくるんで押圧すると破損の危険性を減らすことができる。
【0101】
なお、ゲル接着層の素材は、蓄光シリコーン体と化学反応を起こしにくいものであることが望ましい。これは、蓄光シリコーン体のゲル接着層との接着部分の組成が蓄光シリコーン体のその他の部分の組成と同一でなくなることで発光性能を劣化させることを防止するためである。
【0102】
なお、ベース基板及び反射層の説明中で述べたベース基板の上側に露出するネジ頭を有する突起を設ける構成に関連して、当該ネジ頭の寸法、形状によっては、蓄光シリコーン体の底面中心付近にも凹みが設けられることとなる。かかる構成によれば、発光に寄与しない蓄光シリコーン体の厚みが大きい部分の底部付近の材料を節約できるというメリットがある。
【0103】
(ガラスコーティング層)
ガラスコーティング層は、蓄光シリコーン構造体を傷、水濡れや埃から守るために、その全部又は一部の表面に被覆されるガラスからなる層状の部材である。特に、蓄光シリコーン体は、これら損傷等に弱く、また損傷等が高輝度での発光の阻害に直結することから、ガラスコーティング層は少なくとも蓄光シリコーン体を被覆することを必須とする。
【0104】
図9に示した注意喚起部は、ベース基板の盆状の凹みの内壁0921aが外側に傾斜する角度に形成されるとともに、蓄光シリコーン体の周縁部形状0922aが内側に傾斜するように形成されている。このような形状の場合には、蓄光シリコーン体のみを被覆する場合においても、ゲル接着層及び反射層の端面が直接外気に触れることがないようにすることが望ましい。そこで、このような場合の構成の一例について図を用いて説明する。
【0105】
図10は、ガラスコーティング層の形成のしかたの一例について説明するための図である。同図に示した範囲は、図9の破線円0902で示した部分に相当する範囲である。同図に示すように、ガラスコーティング層は盆状の凹みの内壁と蓄光シリコーン層の内側に傾斜した表面によって形成される谷部に液溜まりを形成するようにして設けられる。この前提として、同図の例では、ガラスコーティング方法として、ある程度の粘度を有する液状ガラスを塗布する方法を用いるものとする(ガラスコーティング方法の詳細については後述する)。
【0106】
図10(a)の例では、ガラスコーティング層1028(薄墨で示す)は、谷部を谷底まで完全に埋め尽くすように配されている。この結果、ガラスコーティング層は、蓄光シリコーン体1022を完全に被覆するだけでなく、ゲル接着層1027の端面1027a及び反射層1026の端面1026aをも完全に被覆する。このため、ゲル接着層及び反射層の端面は傷、水濡れや埃から守られることとなる。
【0107】
一方、図10(b)の例では、ガラスコーティング層1028(薄墨で示す)は、谷部を谷底まで完全に埋め尽くさず、谷部の底部にガラスコーティング層が配されない空間が生じる。液状ガラスの粘性が大きい場合にはこのようになることが考えられる。この場合、ガラスコーティング層1028は蓄光シリコーン体1022を完全に被覆する一方、ゲル接着層1027の端面1027a及び反射層1026の端面1026aが被覆されない場合が生じる(同図の例はそのような例である)。しかし、この場合でも、ゲル接着層及び反射層の端面はいわばガラスコーティング層の下部に密封される形となり、外気に触れることがない。このため、やはりゲル接着層及び反射層の端面が傷、水濡れや埃から守られることとなる。
【0108】
このように図10(a)、(b)いずれの場合も、ガラスコーティング層によってゲル接着層及び反射層の端面が傷、水濡れや埃から守られることとなるのであるが、これは谷部の形状と、ガラスコーティング層、ゲル接着層の端面及び反射層の端面の位置関係が以下のような関係になるように構成しているためである。
【0109】
即ち、図10(a)に示したように、ベース基板の側壁の最頂部をA、ゲル接着層端面の上端をB、ゲル接着層端面の下端(反射層端面の上端)をC、反射層端面の下端をDとした場合、ガラスコーティング層の谷部の最も低い位置Hは、Aよりは低い位置であって、B、C及びDよりは高い位置となるように構成される。このように構成すると、ガラスコーティング層の形成過程で液状ガラスがベース基板の側壁から外に流出することなく谷部を充填することができ、この充填を続けて行けば、やがて谷底からBより高い位置Hまでの谷部を完全にガラスコーティング層で埋め尽くす液溜まりを形成することができる。図10(b)の場合も、同じ要領で、Bより高い位置で谷部を密閉する液溜まりを形成することができる
【0110】
一方、ゲル接着層又はこれに加えて反射層もベース基板上に露出するような構成の場合は、ガラスコーティング層はこれら露出するゲル接着層や反射層も被覆するように構成されることが望ましい。その具体例については別の実施例にて後述する。
【0111】
ガラスコーティングの方法としては、例えば、常温ガラスコーティングが用いられる。常温ガラスコーティングは、常温(概ね室温~200℃)でガラス被膜を形成し、従来のようなガラスの製造工程における高温での加熱処理工程を不要とする被膜方法であり、具体的には、例えば、コスモテクノロジー社の常温ガラスコーティングシステム(商品名:SL-600シリーズ)を用いることができる。常温ガラスコーティングは、耐候性、防汚性に優れているほか、耐水性、耐摩耗性にも優れており、一般に蓄光材が水濡れに弱いことや、注意喚起部付フェンス構造体が路面に設置されて歩行者等に踏まれやすいことなどに照らせば、本件発明に係るガラスコーティング方法として、極めて好適な方法である。
【0112】
常温ガラスコーティングの材料としては、例えば、アルコール可溶型の有機ケイ素化合物、その他の金属化合物(有機・無機)が考えられる。より具体的には、成分中含有ケイ素成分(SiO)が換算で60重量%以上であって必要に応じて顔料や骨材などを配合したものが挙げられる。成分は、液状で無溶剤のオルガノポリシロキサンと、官能性側鎖アルコキシシランと、イオン化された金属化合物(有機、無機)及び触媒などからなる。スプレーなどをも用いて複数回に分けてガラスコーティング層を形成してもよいし、液状ガラスの粘度を調整して1回で塗布できる厚さを厚くし、塗布回数を減らすこともできる。粘度を高くするためには、含まれるケイ素成分を高くすることが考えられる。例えば重量%換算で70%から80%程度とするとドーム状の蓄光シリコーン体に対しても十分に厚いガラス層を形成することができる。70%程度で厚みを0.3ミリメートルから0.7ミリメートル程度とすることができる。この程度の厚みがあれば上からの大きな力が加えられる場合は別として、耐候性は十分に確保することができる。また厚すぎないので紫外線をある程度透過し、蓄光材量へのエネルギー補給には支障をきたさない。
【実施例4】
【0113】
<概要>
本実施例の注意喚起部付フェンス構造体は、実施例3のそれと基本的に共通する。ただし、本実施例では、蓄光シリコーン体が、外表面側蓄光材密度が央部側蓄光材密度よりも大であるように構成されている点に特徴がある。
【0114】
<構成>
図11は、本実施例の注意喚起部付フェンス構造体における蓄光シリコーン体の構成の一例を示す図であり、央部付近の垂直断面図で示したものである。同図に示すように、本実施例では、蓄光シリコーン体1122における外表面側の蓄光材(ドットで示す)の分布密度が相対的に密であり、央部側の蓄光材の分布密度が相対的に疎である。即ち、外表面側蓄光材密度が、央部側蓄光材密度よりも大である。なお、蓄光シリコーン体の央部とは、蓄光シリコーン体の表面から最も遠い部分、図11の例に則すと、蓄光シリコーン体の下面のうちの中心部分(蓄光シリコーン体頂部の直下に位置する部分)をいう。外表面側とは、蓄光シリコーン体のうち相対的に央部よりも外表面に近い部分、央部側とは、相対的に外表面よりも央部に近い部分をいう。
【0115】
本実施例の構成は、蓄光材の量が同じであれば、外表面に近い方により多くの蓄光材を分布させた方が蓄光シリコーン体の発光輝度をより増すことができることに鑑みたものである。かかる構成の蓄光シリコーン体を形成するための手順については後述する。
【0116】
<効果>
本実施例によれば、蓄光材を蓄光シリコーン体の表面側に近い方により多くの蓄光材を分布させることができるため、蓄光シリコーン体の発光輝度を相対的に増すことができる。
【実施例5】
【0117】
<概要>
本実施例の注意喚起部付フェンス構造体は、実施例3又は4のそれと基本的に共通する。ただし、本実施例においては、ガラスコーティング層が蓄光シリコーン体とゲル接着層との外表面に露出する境界部をも被覆するように構成されている点に特徴がある。この構成は、特に、ベース基板の上面が側壁のない平面形状である場合に意義が認められる。
【0118】
<構成>
図12は、本実施例の注意喚起部付フェンス構造体の注意喚起部の形状の一例を示す断面図である。同図に示されているベース基板1221の上面は、図9などに示した例とは異なり、側壁のない平面形状をしている。そして、同図に示すように、本実施例においては、実施例3について図9で示したところと異なり、ガラスコーティング層1228が、蓄光シリコーン体1222だけではなく、蓄光シリコーン構造体の他の構成部分であるゲル接着層1227及び反射層1226をも被覆している。図9で示したようなベース基板が上面に側壁を有する形状であれば、図10を用いて説明したガラスコーティング層の液溜りを形成する方法でもゲル接着層や反射層を被覆することができる。しかし、同図の例のようにベース基板の上面が側壁のない平面形状である場合には、液溜りを形成する方法によることはできない。そこで、本実施例は、ベース基板が平面であってもガラスコーティング層が蓄光シリコーン体とゲル接着層との外表面に露出する境界部をも被覆することを可能にする構成を提供するものである。
【0119】
かかる構成を実現するための具体的構成、すなわち、液溜りがなくてもガラスコーティング層をゲル接着層や反射層の界面に形成するための構成としては、ゲル接着層と反射層の界面部分に微小に生じる段差(円環状のへこみ)に液状のガラスを毛細管現象によって滞留させて乾燥させることが考えられる。また、単にドームの頂上を上にして静置し、乾燥させるのでなく、この円環の軸を地面に平行な方向にして軸を中心にこれを回転させながら乾燥させることも考えられる。この円環状のへこみから液状のガラスが流出しにくくなるからである。このように構成することで、蓄光シリコーン構造体の表面に現れるゲル接着層及び反射層の端面も被覆することができ、蓄光シリコーン構造体の耐候性や防汚性を増すことができる。特に、ゲル接着層の端面には、ゲルの粘着力により塵埃が付着しやすいことから、このような被覆は極めて有効である。
【0120】
<効果>
本実施例の発明により、耐候性及び防汚性をさらに増すことができる。
【実施例6】
【0121】
<概要>
本実施例の注意喚起部付フェンス構造体は、実施例3から5のいずれか一のものと基本的に共通する。ただし、本実施例においては、蓄光シリコーン体とゲル接着層との外表面に露出する境界部のガラス被覆層の下層にさらにゲル被覆部が設けられるように構成されている点に特徴がある。
【0122】
<構成>
図13は、本実施例の注意喚起部付フェンス構造体における注意喚起部の構成の一例を示す図であり、概ね図9において破線円0902で示した部分に相当する部分を拡大して示したものである。ただし、同図においては、図9に示したところと異なり、蓄光シリコーン体1322とゲル接着層1327との外表面に露出する境界部のガラス被覆層1328の下層にさらにゲル被覆部1329が設けられている。
【0123】
かかる構成の目的は、蓄光シリコーン構造体とベース基板の接合部の角やすき間に塵埃が溜まったり、そこから水が浸入したりするおそれを回避することにある。ガラス被覆層の下層に配置するのは、粘着力のあるゲル被覆部に塵埃等が付着することがないようにするためである。ただし、ゲル被覆部とガラスとの接触界面は、ゲル表面に水分が多すぎるとその部分での液状ガラスの硬化が遅延する場合があるので、その界面の表層を、液状ガラスを塗布、噴霧する前に乾燥させることが考えられる。乾燥はドライヤなどで摂氏70度から摂氏120度程度の乾燥風を吹き付けて行う。乾燥はドーム半径が数cm程度の物ならば一瞬で可能なのでその時間は1秒から2秒程度、ゲル層が厚くても3秒程度で十分である。
【0124】
<効果>
本実施例の発明により、蓄光シリコーン体とベース基板の接合部の角やすき間に塵埃が溜まったり、そこから水が浸入したりするおそれを回避することが可能となる。
【実施例7】
【0125】
<概要>
本実施例の注意喚起部付フェンス構造体は、実施例3から6のいずれか一のものと基本的に共通する。ただし、本実施例においては、ゲル接着層が両面テープで構成されている点に特徴がある。
【0126】
<構成>
図14は、本実施例の注意喚起部付フェンス構造体の注意喚起部におけるゲル接着層の構成の一例を示す図であり、断面図で示したものである。同図に示すように、本実施例のゲル接着層1427は両面テープであり、二重構造になっている。より詳細には、中心部に透明シリコーンゴム1401を配置し、これに直接接する上下層に透明シリコーン粘着剤1402を配している。その上下層に配置されているものは剥離フィルム1403である。透明シリコーン粘着剤と透明シリコーンゴムは親和性が高いため、かかる両面テープを用いることで、反射材と蓄光シリコーン体の圧着をより確実に行うことができるとともに、当該圧着を簡単な作業で行うことが可能となる。
【0127】
両面テープの透明シリコーン粘着剤の素材は、耐熱性、耐久性及びクッション性に優れたシリコーン系のゲル材料のものが望ましく、また、中心部に配置される透明シリコーンゴムの素材も同様にクッション性等に優れたものであることが望ましい。かかる素材を用いた両面テープとして、例えば、スリオンテック社製の両面テープ(商品名:No.5710)を用いることができる。図14で示した構成も当該製品の例である。
【0128】
<効果>
本実施例の発明により、反射材と蓄光シリコーン体の圧着をより確実に行うことができるとともに、当該圧着を簡単な作業で行うことが可能となる。
【実施例8】
【0129】
<概要>
本実施例の注意喚起部付フェンス構造体は、実施例3から7のいずれか一のものと基本的に共通する。ただし、本実施例においては、蓄光シリコーン体の表面には文字、図形、記号、色彩、又はこれらの組合せであって人の視覚によって認識できるもの(以下「文字等」という。)が描かれている点に特徴がある。その目的は、第一に、注意喚起部の蓄光シリコーン体の表面に文字等を描くことで、注意喚起の内容をより明確かつ具体的に表示することにある。例えば、崖沿いの路端に設置されるフェンス構造体の注意喚起部に「転落注意」といった文字を表示するといったごときである。
【0130】
さらに、本実施例の第二の目的として、注意喚起部付フェンス構造体を災害時における誘導標識としても利用することができるようにするという目的を挙げることができる。すなわち、誘導標識は、災害時において被災者を避難場所等に確実に誘導できることが望ましいところ、フェンス構造体を構成する複数のポール本体は、例えば2メートルおきといった比較的短い間隔で設置されることが多いことから、当該ポール本体の最上部に備えられた注意喚起部を文字等を用いた誘導標識とすることで、災害時に視認しやすく、かつ、被災者を避難場所等に確実に誘導することができる誘導標識を備えたフェンス構造体を提供することが可能となる。
【0131】
<構成>
図15は、本実施例の注意喚起部付フェンス構造体における注意喚起部の構成の一例を示す図であり、蓄光シリコーン体0940の表面に文字0941が描かれている状態が示されている。このうち、図15(a)に示したものは、注意喚起部が転落防止などの警告用のものであることを想定したものであり、(b)に示したものは、注意喚起部が災害時における避難場所を示すなどの誘導用のものであることを想定したものである。これらの例に示されているように、文字、図形、記号、色彩などのうち一種類だけを用いて描かれたものであってもよいし((a)の例)、あるいは文字、図形、記号、色彩などを組み合わせて描かれたものであってもよい((b)の例)。要するに人の視覚によって認識できるものが描かれていればよい。これらの文字等を描くには、蓄光シリコーン体の表面に不透光性の塗料を塗布したり、不透光性のシートを張り付けたりする方法によればよい。この場合、ガラスコーティング層は、これら塗料やシートなどを被膜する(これらが配置されていない部分は蓄光シリコーン体を直接被膜する)ように形成される。
【0132】
本実施例の第一の目的は、上述のように、蓄光表示機能を備えた注意喚起部の存在自体に加え、そこに描かれた文字等の意味によって警告等の内容を具体的に伝えることを可能にすることにある。例えば崖や河川沿いの路端や、側溝と路肩の境界に注意喚起部付フェンス構造体を設置して転落の危険を警告する場合、蓄光表示機能を備えた注意喚起部の存在だけでも、これにより路端等の位置を知らせることができるため、十分な警告表示となるのではあるが、さらに危険を具体的に察知させるため、「止まれ」とか「転落注意」といった文字を付加することが考えられる。このため、図形、記号や色彩を描く場合も、予め意味の付与されたものを描くことが望ましい。例えば、正方形、「!」記号や赤色は「止まれ」の意味であることを予め付与した上でこれらを描くことなどが考えられる。
【0133】
第二の目的である避難誘導のための表示として利用するという点についても、同様にそこに描かれた文字等の意味によって誘導の内容を具体的に伝えることを可能にすることにある。例えば、広域避難場所に向かう道路沿いに設置されたフェンス構造体の注意喚起部に「広域避難場所 甲公園」といった文字を、同場所の方向を示す矢印やそこまでの距離とともに表示することで、被災者を広域避難場所まで確実に誘導することができる。この場合にも、図形、記号や色彩を描く場合には、予め意味の付与されたものを描くことが望ましいことは、注意喚起目的である第一の目的に使用する場合と同様である。
【0134】
文字等を描くための構成としては、例えば、蓄光シリコーン体の表面に文字等の形状を描くように反射テープ、反射シートなどの反射材を配置したり、非透光性のテープ、シート等を配置ひしたりすることが考えられる。
【0135】
<効果>
本実施例の発明により、蓄光表示機能を備えた注意喚起部の存在自体に加え、そこに描かれた文字等の意味によって警告等の内容を具体的に伝えることが可能となる。また、災害時における避難誘導のために利用することもでき、そこに描かれた文字等の意味によって誘導の内容を具体的に伝えることが可能となる。
【実施例9】
【0136】
<概要>
以上では、主に、フェンス構造体を構成する注意喚起部が、ベース基板、反射層、ゲル接着層、ドーム形状の蓄光シリコーン体及びガラスコーティング層を有する構成の例で説明した。初めに述べたように、注意喚起部にはドーム部の少なくとも一部に蓄光材料を含むものが広く含まれるので、これ以外の構成も考えられる。本実施例は、かかる一例であって、注意喚起部が平板状の蓄光シートの上面に透明なドーム形状の平凸レンズを配置したものである例である。
【0137】
<構成>
(全般)
図16Aは、本実施例の注意喚起部付フェンス構造体の注意喚起部の構成の一例を示す図であって、構成部品を分離した斜視図の状態で示したものである。同図に示すように、本実例における注意喚起部1600は、ベース1601と、反射材1602と、シリコーンゲルフィルム1603と、平凸レンズ1604とを有する。かかる構成を有する注意喚起部として、本発明に係る出願人と同一の出願人による標示具に係る特許出願(特願2019-177092)の明細書等に記載された構成を利用することができる。以下、その構成の概要について、構成要件ごとに説明する。なお、図示を省略したが、ベースの下面側には実施例1で説明したのと同様の構成を有する内挿取付部が取り付けられる。この内挿取付部が注意喚起部の構成要素であっても注意喚起部とは別の構成要素であってもよい点は、実施例1で説明したところと同様である。内挿取付部の具体的構成は実施例1で説明したところと同様であり、ベース及び空洞ポールとの取付けに係る構成も実施例1でベース基板及び空洞ポールとの取付けに係る構成について説明したところと同様である。しがたって、これらについては説明を省略する。
【0138】
(ベース)
ベースは、円錐台状の金属材料からなる。道路等に設置されるため、歩行者などの踏みつけによって容易に変形しない強固な素材であるだけでなく、季節や昼夜の温度差に耐えるとともに、雨水や排気ガスに含まれる酸性物質などによる腐食にも強くなければならない。また、人(子供)や犬や猫などのペットにも身近なものなので毒性の発生しないことが求められる。その他にも、コスト、メンテナンス性、加工性、装飾性、比強度、電磁波や熱の反射などの特性などを勘案して、例えば、ステンレス、アルミ、アルミ合金、銅、銅合金などが好適である。
【0139】
ベースの頂面(図16Aにおいて符号1605で示す)は、平凸レンズの台座となる面であることから、水平な平坦面である。また、平凸レンズをシリコーンゲルフィルムによって接着することから、その面はざらつきの無い滑らかな面でなければならない。
【0140】
また、円錐台状であることにより、底に近いほど広くなっていることから安定した固設が期待できるとともに、例えば、自動車のヘッドライトからの入射光が標示具のやや斜め上方から入射されることが予想され、入射光の入射角度はベースの側面と直角に近くなるのでドライバーの視覚に入る後述の反射材による再帰性反射による反射光の輝度を高める効果がある。また、側面において特定の方向への偏りがないことから、ベースの設置の方向に関する制約が無い。また、後述のようにベースの側面に反射材が備えられるところ、このベースの側面が円錐台形状であることから、斜め上方向から入射された光がその方向に反射されやすくなり、上方向ないし斜め上方向から注意喚起部を視認する者に対する注意喚起を容易にするという本発明の目的に適ったものとなる。
なお、本実施例とは異なるが、ベースの形状を円錐台状とせず、円柱状としてもよい。この場合、次に述べる反射材は、円柱の垂直な側面上に配置されるため、その反射自体の効果は従来のキャップに備えられた反射材のものと変わるところがない。しかしながら、本実施例の注意喚起部付フェンス構造体における注意喚起部の特徴は、後述の平面蓄光部材とその上に配置した平凸レンズの効果により、夜間光源を有さず当該注意喚起部を上又は斜め上方向から見下ろす位置にある通行者に対しても有効に注意喚起をすることができるようにした点にある。反射材からの反射光による注意喚起はこの蓄光による注意喚起の効果を相まって全体として光源の有無にかかわらず広範囲にわたって注意喚起を行うことができるようにした点にあるから、円柱形状のベース側面に反射材を配置する構成も十分な意義を有する。
図16Bは、本実施例の注意喚起部付フェンス構造体の注意喚起部の構成の一例を示す図であって、ベースの形状を円柱状とした例である(その余の構成は、図16Aに示したものと同様である)。
【0141】
(反射材)
ベースの円錐台の側面に配置される反射材による反射は、夜間における光源である自動車又は自転車のヘッドライトから照射された光を、光源方向に平行且つ逆方向に反射させる再帰性反射でなければならない。すなわち、斜め上方向からでも自動車又は自転車のドライバーや懐中電灯を携行する歩行者は、自分の発した光の反射光を無駄なく自らに戻してとらえることができる。再帰性反射は、非常に小さい(例えば、直径数十~100μm程度)高屈折率のガラスビーズ球を樹脂又は塗料の中に多数均一に混入配置させ、その下側近傍を反射層(例えば、アルミ蒸着層など)で囲むことによってできる。すなわち、入射光は高屈折率のガラスビーズ球のレンズ効果によって透明のガラスビーズ球の下半分の近傍に焦点を結ぶ焦点層ができる。ここで焦点層を囲む反射層によって、入射光は反射され、その反射光は再度焦点層を通過し、ガラスビーズ球に再入射して屈折進行した結果、最終的に光源からの入射光とほぼ平行且つ逆方向で光源方向に向かうことになる。このようなガラスビーズ型の反射材は、球状レンズが露出した露出レンズ型、球状レンズの上部に樹脂を被せる封入レンズ型、球状レンズと樹脂膜の間に空気の層を設けるカプセルレンズ型がある。なお、通常、入射光は車のヘッドライト等の白色光であるが、ガラスビーズ球の表面を覆うフィルムや焦点層に着色剤を配することによって、反射光はその着色剤の分光透過率特性に応じた色光となる。
【0142】
また、直角三角錐などの形状のプリズムを用い、さまざまな角度から光が入射しても高い反射性能を持つプリズムレンズ型の再帰性反射材(軟質又は硬質)もある。なお、現在主流となっているのは、高輝度でありながら高耐久性という優れた性質を持っているカプセルプリズム型の反射材である。これは、フルキューブコーナー反射素子を用い、反射に寄与する部分のみを集積して配置した反射材であり、標示具の反射材として用いることが好ましい。例えば、3M社製のガラスビーズ型の高輝度反射シートは、従来のカプセルレンズ型反射シートの約2倍の反射輝度を有し、大幅に表面強度を増して引っかきに強く、広角特性にも優れているため、斜め方向からでもはっきりと視認できるうえ、最初の反射性能を長期間維持する耐久性を有するとされる。またガラスは紫外線に対して劣化を起こさないものであるために本願発明が採用する再帰反射シートの材料としては適切である。あるいは耐候性がよい、透明エポキシ材料などを利用した再帰反射シートであってもよい。
【0143】
なお、このような再帰性反射材の耐久性に関するJIS規格(JIS Z9117:2011)は、屋外で南面に10年曝露しても輝度初期値の80%を維持し、色相は所定の色度座標枠内に収まるもの、としている。
【0144】
(シリコーンゲルフィルム)
シリコーンゲルフィルムは、シリコーン特有の耐候性、耐熱・耐寒性、耐腐食性、電気絶縁性、透明性などの性質に加え、硬化後はゲルになる特性として、粘着性、密着性に優れている。シリコーン材料からなる平凸レンズの底部とベースの円錐台の頂面の間に、シリコーンゲルフィルムを配置して貼着する。平凸レンズとシリコーンゲルフィルムが共通の素材であることから、親和性が高く、平凸レンズの熱膨張や熱収縮にもシリコーンゲルフィルムは柔軟に追随し、貼着部分の剥離を回避できる。
【0145】
(平凸レンズ)
「平凸レンズ」は、底面が平面の凸レンズを言う。底面が平面であると、円錐台状のベースの頂面を平面にすることによって安定的に平凸レンズを保持することが容易となる。形状としては平面以外の形状で凸レンズを保持することも考えられるが設計が難しく、また製造も難しいので平面を利用して平凸レンズを保持するのが最も効率的である。
【0146】
図17Aは、平凸レンズの具体的構成の一例について説明するための概念図である。同図に示すように、平凸レンズ1702は、凸レンズの底部が平面であり、その周辺部に平凸レンズの光軸1701に平行な円周面部1704を有するように構成してもよい。ベースの円錐台の頂面に配置されているシリコーンゲルフィルム1707上に、平凸レンズの円周面部をなす端縁1703がベースの円錐台の頂面の円周状壁部内壁1706にそって配置されるように構成することが好ましい。例えば円錐台の頂面に発光部材や蓄光部材が全面にわたって(壁面部は除いて)配置されている場合には、その全面から発せられる光がまんべんなく平凸レンズに収容されることが好ましい。その場合にこの端縁がない構造とした場合には発光部材や蓄光部材の最外周部の光がわずかしか平凸レンズに収容されず、効率があまり良くない。そこでその部分には端縁を設けることで厚みを持たせ、平凸レンズの最外周で光を取りこぼす量を少なくするように構成する。さらにこの平凸レンズが柔軟性のある例えばシリコーンゴムなどで構成されている場合には最外周が薄くなりすぎると強度が弱まり外力によって損傷を受けやすくなるので、一定の厚みを有している方が有利である。さらにこの平凸レンズの最外周の端縁をベースの上面最外周に設けられた壁面で保護する場合にはさらに保護効果が高まり好ましい。
なお、図17Bも平凸レンズの具体的構成の一例を示す図であるが、平凸レンズが配置されるベースの形状が円錐台状ではなく円柱状である例を示したものである。
【0147】
また、平凸レンズの素材をシリコーン材料とすることにより、前述のシリコーン特有の耐候性、耐熱・耐寒性、耐腐食性、電気絶縁性、透明性などのレンズとしての優れた性質を有することに加えて、紫外線などによる白濁などの劣化が少なく耐久性に優れる。
【0148】
図18Aは、平凸レンズによって入射光が広角となることを説明するための概念図である。同図に示すように、平凸レンズ1803を使う場合は、外部からの入射光1801の入射角:S1802が、平凸レンズを使わない場合の外部からの入射光1804の入射角:S1805)に比べて広角となることから、後述する入射光を蓄光する上で有利である。
【0149】
また、図19Aに示すように、平凸レンズ1903を使う場合は、外部への反射光1901の反射角:T1902が、平凸レンズを使わない場合の外部からの反射光1904の反射角:T1905に比べて広角となることから、外部への光の照射角が広角となり、注意喚起部に求められる死角範囲の縮小に効果がある。
なお、図18B図19Bは、上記の図18A図19Aにおける円錐台状のベースを円柱状のベースに代えたものであるが、この形状に違いにより図18A図19Aを用いて上述した平凸レンズの照射効果に何らの違いを生じるものではないことは明らかである。
【0150】
(シリコーンゲルフィルムが、円形をしたフィルムで最外周縁がベースの円錐台頂面の最外周近辺にそうように配置されている例)
本実施例の注意喚起部付フェンス構造体におけるシリコーンゲルフィルムは、円形をしたフィルムで最外周縁は、ベースの円錐台頂面の最外周近辺にそうように配置されているものであってもよい。
【0151】
本来、シリコーンゲルフィルムは、ベースとシリコーン材料からなる平凸レンズを貼着するためのものであり、その目的に適うだけであれば、ベースの円錐台頂面の一部に一又は二以上の区分にして配置するだけで十分である。しかしながら、シリコーンゲルフィルムを円形とし、その最外周縁は、ベースの円錐台頂面の最外周近辺にそうように配置することにより、平凸レンズの底辺にシリコーンゲルフィルムが均一に接する。それにより、平凸レンズの底辺とベースの円錐台頂面の間に、空気や水分などの介在する部分がなくなり、反射効果を高める効果に加えて、ベースの円錐台頂面及び平凸レンズの底辺の劣化を防止する。したがって、かかる構成により、劣化を防止する耐久性に優れた注意喚起部付フェンス構造体を提供することができる。
【0152】
(シリコーンゲルフィルムの下層に平面反射材、平面蓄光部材、平面自家発光部材のいずれか一以上を備える構成)
本実施例の注意喚起部付フェンス構造体は、上記の構成に加え、さらに、注意喚起部のベースのシリコーンゲルフィルムの下層に平面反射材、平面蓄光部材、平面自家発光部材のいずれか一以上を備えたものであってもよい。
【0153】
図20に示すように、本実施例の注意喚起部におけるベースのシリコーンゲルフィルム2001の下層2002には、平面反射材、平面蓄光部材、平面自家発光部材のいずれか一以上が備えられている。
【0154】
(平面反射材)
平面反射材は、シリコーンゲルフィルムの下層にあり、ベースの円錐台の頂面に、例えば、酸化チタンの吹き付けや酸化チタンフィルムの貼り付けによって、平面状に配置される。平面反射材も、それ自体は、前述のベースの円錐台の側面に配置される反射材と同様に、夜間における光源である自動車又は自転車のヘッドライトから照射された光を、光源方向に平行且つ逆方向に反射させる性質を有するものであるが、本実施例では、平面反射材の上層に配置されている平凸レンズによって、広角に光は拡散されて外部に照射される。これによって、自動車又は自転車のヘッドライトから照射された光の反射光は、その輝度を周辺部にももたらすことで、注意喚起部に求められる死角範囲の縮小の効果がある。なお、平面反射材の色は、高い反射効率から白色が好ましい。
【0155】
(平面蓄光部材)
平面蓄光部材は、シリコーンゲルフィルムの下層にあり、ベースの円錐台の頂面に平面状に配置される。蓄光部材は、外部から照射された光エネルギーを蓄えて、その内の一定量のエネルギーを発光として外部に放射する。差分のエネルギーは蓄光部材の内に蓄えられて、外部からの光照射を止めても発光する物性を有する。一般的に、蓄光部材はその輝度や残光時間に課題があるが、シリコーンゲルフィルムの上に貼着されている平凸レンズによって、広角に光は集光されることから、蓄光機能に有利である。また逆に、平凸レンズによって、広角に光は照射されることから、その輝度を周辺部にもたらすことで、標示具の存在を広く知らせる効果がある。
【0156】
(平面自家発光部材)
平面自家発光部材は、シリコーンゲルフィルムの下層にあり、ベースの円錐台の頂面に平面状にユニット埋め込み式に配置される。発光が片面のみである片面発光部材と発光が両面である両面発光部材があり、片面発光部材の方が両面発光部材より発光面の輝度は高い。平面自家発光部材は、例えば、夜間に自動点灯させるLED又は有機ELなどであり、外部からの電力が必要ではあるが、その必要電力は僅少であり、耐久性にも優れることから、長時間輝度を保持したい標示具において利用される。シリコーンゲルフィルムの上に貼着されている平凸レンズによって、広角に光は拡散されて外部に照射される。これによって、自動車又は自転車のヘッドライトから照射された光の反射光は、光源に平行且つ逆方向に戻るだけでなく、その輝度の一部を周辺部にもたらすことで、蓄光体に求められる死角範囲の縮小の効果がある。
【0157】
(平面自家発光部材と平面蓄光部材と平面反射材の組合せ)
上記平面反射材、半透明平面蓄光部材、不透明平面蓄光部材、透明平面自家発光部材、半透明自家発光部材のいずれか二以上を組合せることによって、種々の効果を得ることができる。ここにおいて、平面反射材は最下層にのみ使え、上層となる場合の平面蓄光部材又は/及び平面自家発光部材は光の透光性(透明、半透明)の性質を有するものとする。なお、上記の平面反射材を含む部材のいずれか二以上の組合せにおいて、相互の部材の間にはシリコーンゲルフィルムやシリコーンゲルを介して貼着し、貼着部分の剥離を回避するとともに、輝度劣化の原因となる空気を押し出してその混入を防止する。
【0158】
(上層が透明両面自家発光部材で下層が不透明蓄光部材さらにその下に平面反射材の組合せ)
昼間は上層が透明両面自家発光部材であり、太陽光を透過するので太陽光の光はその下層の不透明蓄光部材に効率よく吸収され、夜間に蓄光による発光がなされる。透明両面自家発光部材が夜間に発光すると、この層の上面からの光は平凸レンズを介して道路等に照射され、この層の下面からの光は不透明蓄光部材に吸収され、上層の透明両面自家発光部材の発光を中断した場合でも、それ以前に透明両面自家発光部材の発光によって蓄積された蓄光によって発光が行われる。従って、透明両面自家発光部材が夜間中発光していなくとも、間欠的に発光するのみで夜通し明るい道路標示具などとして利用可能である。
【0159】
(上層が透明両面自家発光部材で下層が半透明両面蓄光部材さらに下層が平面反射材の組合せ)
上層の透明両面自家発光部材は上方に向けた発光は平凸レンズから外部に放出され、下方に向けられた光は一部が蓄光部材に蓄積されるとともに、他の一部は蓄光部材を透過して平面反射材に反射して再び蓄光部材の蓄光に寄与するか、あるいは蓄光部材を透過し、さらに透明平面自家発光部材を透過して平凸レンズから放出される。つまり、光エネルギーの無駄が比較的少なく、また前述の例と同じように夜通し透明両面自家発光部材の電気供給が不要なので消費エネルギーも少なくできる。
【0160】
(上層が半透明平面蓄光部材で下層が透明両面平面自家発光部材でさらに下層が反射材の組合せ)
上層が半透明平面蓄光部材であるので昼間に太陽光のエネルギー、特に平凸レンズからの太陽エネルギーを効率的に受け取ることができ、さらに夜間においては下層の透明両面平面自家発光部材の光照射を受けて蓄光するとともに、その自家発光の一部を半透明な蓄光層を介して平凸レンズから外部に放射できるので単に蓄光部材で夜間に光照射している場合よりもその輝度を向上させることができる。
【0161】
(上層が半透明平面蓄光部材で下層が透明両面平面自家発光部材でさらに下層が不透明片面発光蓄光部材の組合せ)
上記の例にさらに下層の反射部材に代えて片面発光蓄光部材を配置したものである。上記の例の反射材は最下層にあってもよい。上記の例と異なる点は反射材のある位置に片面発光蓄光部材が配置された点である。単に反射すことに代えて蓄光部材に光エネルギーを蓄積するようにしたものである。最上層の半透明の蓄光部材のエネルギー蓄積効率に加えて下層にもエネルギーの蓄積をするようにしたので、単層でエネルギーの蓄積をする場合に比較してエネルギー蓄積効率を上げることができる。
【0162】
(平面蓄光部材が、シリコーン樹脂又は弾性を有するシリコーンゴムを母材とする蓄光材料からなる構成)
本実施例における注意喚起部は、上の構成に加え、さらに、ベースのシリコーンゲルフィルムの下層にシリコーン樹脂又は弾性を有するシリコーンゴムを母材とする蓄光材料からなる平面蓄光部材を備えるものであってもよい。これにより、シリコーンゲルフィルムと平面蓄光部材が共通の素材であることから、熱膨張や熱収縮による境界面での貼着部分の剥離を回避できる。
【0163】
シリコーン樹脂又は弾性を有するシリコーンゴムを母材とする蓄光部材は、透明シリコーン樹脂又は弾性を有するシリコーンゴム内に粒状の蓄光材料を混合して成る蓄光部材であり、シリコーンの優れた耐候性から劣化を予防できる。また、シリコーンゲルフィルムと共通のシリコーン素材であることから、熱膨張や熱収縮による境界面での貼着部分の剥離を回避できる。なお、蓄光材料として、例えば、アルミン酸塩などがある。
【0164】
その余の構成は、上述したるシリコーンゲルフィルムの下層に平面蓄光部材を備えた場合と同様である。
【0165】
(平面蓄光部材の下層に反射層を有し、平面蓄光部材を透過した光を反射する構成)
本実施例における注意喚起部は、上の構成に加え、さらに、平面蓄光部材の下層に反射層を有し、平面蓄光部材を透過した光を反射するように構成されていてもよい。かかる構成により、蓄光機能を向上させることが可能となる。
【0166】
図21に示すように本実施例における注意喚起部においては、ベースのシリコーンゲルフィルム2101の下層2102に平面蓄光部材を備え、さらにその下層2103に反射層を有している。
【0167】
反射層は、平面蓄光部材を透過した光(電磁波)を反射して、その反射光を再び平面蓄光部材に放射することで、蓄光機能を向上させるものであることから、かかる構成により、平面蓄光部材の蓄光機能を向上させることができる。
【0168】
(シリコーンゲルフィルムの下層に平面反射材を備える場合に、シリコーン樹脂のコーティング層を有する構成)
本実施例における注意喚起部は、上の構成に加え、さらに、ベースのシリコーンゲルフィルムの下層に平面反射材を備える場合において、シリコーン樹脂のコーティング層を有するものであってもよい。
【0169】
シリコーン樹脂コーティング層は、平面反射材の形状にあわせて薄く且つ均一なシリコーン層を形成できる。これにより、シリコーン樹脂コーティング層を有する平面反射材とシリコーンゲルフィルムとの密着性を良くすることができる。
【0170】
(少なくとも平凸レンズの全体と、平凸レンズとその下層構造部との境界をガラスコーティング層にておおう構成)
本実施例の注意喚起部付フェンス構造体を構成する注意喚起部は、上記の構成に加え、さらに、少なくとも平凸レンズの全体と、平凸レンズとその下層構造部(ベースと同義。以下同じ)との境界をガラスコーティング層にておおうように構成されていてもよい。
【0171】
図22は、本実施例の注意喚起部付フェンス構造体の注意喚起部における平凸レンズ2201の全体と、平凸レンズとその下層構造部2202との境界はガラス材料からなるガラスコーティング層2203にておおわれていることを示す斜視図である。
【0172】
ガラスコーティング層は、それが覆う表面を保護することにより、耐候性及び防汚性を向上させる効果がある。ガラスとシリコーンの素材の親和性もあって、その効果は長期間持続する。ガラスコーティングは、平凸レンズの全体と、平凸レンズとその下層構造部との境界を傷、水濡れや埃から守るために、その全部又は一部の表面をガラスからなる層状の部材で被覆する構成である。かかる構成により、注意喚起部の蓄光体の劣化を長期間抑制できる。
なお、図示は省略するが、図22における円錐台状のベース2202の形状を円柱状としてもよい点は、図16Aなどについて述べたところと同様である。
【0173】
(シリコーンゲルフィルムを両面ゲルフィルムとする構成)
本実施例の注意喚起部付フェンス構造体においても、シリコーンゲルフィルムが両面ゲルフィルムであってもよい。
【0174】
既述のように、シリコーンゲルフィルムは、シリコーンゲルを両面に備えた両面シリコーンフィルムであり、シリコーン特有の耐候性、耐熱・耐寒性、耐腐食性、電気絶縁性、透明性などの性質に加え、ゲルの特性として、粘着性、密着性に優れている。先ず、シリコーン材料からなる平凸レンズの底部に,片面のセパレータを剥がしてシリコーンゲルを露出させたシリコーンゲルフィルムを貼着させ、しっかりと空気を抜く。次に、反対側のセパレータを剥がしてシリコーンゲルを露出させて、空気が入らないようにして、ベースの円錐台の頂面に配置して貼着する。平凸レンズとシリコーンゲルフィルムが共通の素材であることから、親和性が高く、平凸レンズの熱膨張や熱収縮にもシリコーンゲルフィルムは柔軟に追随し、貼着部分の剥離を回避できる。
【0175】
なお、本実施例で用いられる両面ゲルフィルムの具体的構成は、実施例3で説明したものと同様のものとすればよい。
【0176】
(ベースの頂面はその周縁に円周状壁部を有し、平凸レンズはその端縁が円周状壁部の内壁側に沿って配置される構成)
さらに、本実施例の注意喚起部付フェンス構造体における注意喚起部は、上記構成に加え、さらに、ベースの頂面は、その周縁に円周状壁部を有し、平凸レンズはその端縁が、円周状壁部の内壁側に沿って配置されるように構成されたものであってもよい。
【0177】
図23に示すように、ベース2301の頂面2302は、その周縁2303に円周状壁部2304を有し、平凸レンズ2305の端縁2306が、円周状壁部の内壁側に沿って配置される。
なお、図示は省略するが、図23における円錐台状のベース2301の形状を円柱状としてもよい点は、図16Aなどについて述べたところと同様である。
【0178】
図24はベースと平凸レンズの平面図である。同図に示すように、ベース2401の頂面2402は、その周縁2403に円周状壁部2404を有し、平凸レンズ2405の端縁2406が、円周状壁部の内壁側に沿って配置できる。
なお、図示は省略するが、図24における円錐台状のベース2401の形状を円柱状としてもよい点は、図16Aなどについて述べたところと同様である。
【0179】
平凸レンズは、ベースの頂面にシリコーンゲルフィルムによって貼着して配置されるが、ベースの頂面の周縁に円周状壁部を構成し、平凸レンズの端縁がその円周状壁部の内壁側に沿って配置されることで、標示具に横からの強い力が加わっても、ベースの頂面の周縁の円周状壁部が平凸レンズの端縁を支えることから、平凸レンズがベースの円錐台頂面から剥離することを防止できる。
【0180】
(平凸レンズの端縁は平凸レンズの光軸に平行な円周面部を有し、円周面部の高さは円周状壁の内壁高さ以下である構成)
本実施例の注意喚起部付フェンス構造体における注意喚起部は、上記構成に加え、さらに、平凸レンズの端縁は平凸レンズの光軸に平行な円周面部を有し、円周面部の高さは円周状壁の内壁高さ以下であるように構成されたものであってもよい。
【0181】
前出の図17Aに示したように、ベース1705の頂面1707の周縁1708における円周状壁部内壁1706の高さをhとすると、平凸レンズ1702の端縁1703が、平凸レンズの光軸1701に平行な円周面部1704を有し、その円周面部の高さをhとする。ここにおいて、hはh以下であるように構成する。
【0182】
平凸レンズの光軸は、平凸レンズの凸部に垂直でその中心を通る直線であり、平凸レンズの凸部の回転対称軸と一致する。このことにより、光軸に平行な円周面部は同一の高さを有する。
【実施例10】
【0183】
<概要>
本実施例は、実施例3などで説明した注意喚起部付フェンス構造体の製造方法に関するものである。
【0184】
<処理の流れ>
図25は、本実施例の注意喚起部付フェンス構造体の製造方法に係る処理の流れの一例を示す図である。
【0185】
すなわち、同図に示すように、本実施例の注意喚起部の製造方法においては、まず、ベース基板準備ステップS2501において、ベース基板を準備する。
【0186】
次に、反射層配置ステップS2502において、ベース基板上に反射層を配置する。
【0187】
次に、ゲル接着層配置ステップS2503において、反射層上にゲル接着層を配置する。なお、図示は省略するが、本ステップS02503と後述のステップS2505の間に、配置したゲル接着層の表面を例えば円柱状の棒の側面などでこするステップを有していることが望ましい。これは、反射層・ゲル接着層間の気泡を排除して両層を完全に密着させるもので、いわゆる真空密着状態となるので接着剤を利用することなく強固な固定が実現する。又、ゲル接着層の表面をより平滑にして後述の蓄光シリコーン体の配置をより容易にするための工程であるとも言える。
【0188】
次に、蓄光シリコーン体準備ステップS2504において、蓄光材をシリコーンに分散させた蓄光シリコーン体を準備する。なお、本ステップS2504と、前記ステップS2501~S2503との順序は逆でもよい。
【0189】
次に、蓄光シリコーン体配置ステップS2505において、ゲル接着層上に準備した蓄光シリコーン体を配置する。なお、図示は省略するが、本ステップS02505と次のステップS2506の間に、配置したドーム形状の蓄光シリコーン体の表面を例えば布などで包むようにしてこするステップを有していることが望ましい。このステップの目的も、上述のゲル接着層の表面をこするステップの目的と同様である。
【0190】
次に、ガラスコーティング層被覆ステップS2506において、少なくとも蓄光シリコーン体にガラスコーティング層を被覆する。
【0191】
上記の蓄光シリコーン体準備ステップS2504は、さらに、図26に示すように、以下のサブステップを有していてもよい。まず、硬化前蓄光シリコーン型入サブステップS2601において、硬化前の蓄光材が分散されたシリコーンである蓄光シリコーンを型に流し込む。型の形状は蓄光シリコーン体の形状に応じて様々なものとすることができる。例えば、蓄光シリコーン体がドーム形状である場合には、型は、くりぬかれた部分がドーム形状であるものが用いられる。次に、硬化サブステップS2602において、型に流し込まれた蓄光シリコーンを硬化させる。さらに、型外(かたはずし)サブステップS2603において、硬化した蓄光シリコーンを型から外す。なお、これら蓄光シリコーン体準備ステップにおける処理は、ゲル接着層配置ステップの次ではなく、ベース基板準備ステップの前に行ってもよい。
【0192】
さらに、図示は省略したが、蓄光シリコーン体準備ステップにおいて、硬化サブステップの前に、さらに、流し込まれた硬化前蓄光シリコーンを放置して硬化前のシリコーンに分散された蓄光材の自然沈降によって蓄光材の分散密度をシリコーン内で異ならせる放置サブステップを有していてもよい。
【0193】
さらに、これも図示は省略したが、硬化サブステップの前に、流し込まれた硬化前蓄光シリコーンを放置して硬化前のシリコーンに分散された蓄光材の自然沈降によって蓄光材の分散密度をシリコーン内で異ならせる放置サブステップをさらに有していてもよい。
【0194】
<効果>
本実施例の発明によれば、注意喚起部付フェンス構造体の注意喚起部について、耐候性及び防汚性に優れたものを提供することが可能となる。
【実施例11】
【0195】
<概要>
本実施例は、実施例10で説明した注意喚起部付フェンス構造体の製造方法と基本的に共通するが、放置サブステップにおいて、硬化前の蓄光シリコーンを流し込んだ型を回転又は/及び揺動させながら行うようにしたものである。これは、実施例4で説明した外表面側蓄光材密度が央部側蓄光材密度よりも大である蓄光シリコーン体を有する注意喚起部付フェンス構造体の製造方法を提供するものである。
【0196】
<処理の流れ>
前述のように、蓄光シリコーン体を形成するためには、蓄光シリコーン体準備ステップにおける放置サブステップにおいて、硬化前の蓄光材が分散されたシリコーンである蓄光シリコーンを型に流し込み、放置して硬化させるのであるが、その際、外表面側蓄光材密度が央部側蓄光材密度よりも大であるようにするためには、当該放置サブステップにおいて、硬化前の蓄光シリコーンを流し込んだ型を、型の中心軸を回転軸として回転させるようにすればよい。この回転により、遠心力によって蓄光シリコーン体の左右の表面側により多く蓄光材を分布させることができる。また、蓄光シリコーン体の頂部側を下にして静置することで頂部表面側により多く蓄光材を分布させることができる。さらに回転速度や回転時間、静置時間を調整することで、分布のしかたを変えることができる。また、適宜揺動を加えることにより、蓄光シリコーン体内における蓄光材の分布のしかたを調整することができる。
【0197】
<効果>
本実施例によれば、蓄光材を蓄光シリコーン体の表面側に近い方により多くの蓄光材を分布させることができるため、蓄光シリコーン体の発光輝度を相対的に増すことができる。
【実施例12】
【0198】
<概要>
本実施例は、実施例10などで説明した注意喚起部付フェンス構造体の製造方法と基本的に共通するが、さらに、注意喚起部をポール本体に取り付けるためのステップとして、接合ステップと、圧接組込みステップとを有するものである。
【0199】
<処理の流れ>
図27は、本実施例の注意喚起部付フェンス構造体の製造方法に係る処理の流れの一例を示す図である。
【0200】
同図に示すように、本実施例の製造方法においては、図25で示したステップS2501~ステップS2506と同様のステップ(同図のステップS2701~ステップS2706)に加え、さらに、接合ステップS2707と、圧接組込みステップS2708とを有する。
【0201】
接合ステップは、注意喚起部(内挿取付部をその構成要素に含む場合には、内挿取付部を除く部分)を、空洞ポールに内挿するための内挿取付部に接合するステップである。接合方法の一例は、実施例1で説明したのと同様の方法であって、注意喚起部のベース基板に上下に貫通するネジ穴を設けるとともに、内挿取付部の対応する位置にもネジ穴を設け、蓄光体の底面に取り付けたネジを用いて、蓄光体をベース基板及び内挿取付部に一体的に螺設するというものである。
【0202】
次に、圧接組込みステップにおいて、接合ステップにて内挿取付部を備えた内挿取付部付注意喚起部の内挿取付部をポールの空洞に圧接組込みする。圧接組込みの一例は、これも実施例1で説明したように、内挿取付部の底面に張出部分を有する板バネを取り付けたうえで、これをポール本体の上部の筒状部分(空洞ポール)内に挿入するというものである。これにより、板バネの張出部分の付勢力により板バネが空洞ポールの内壁を押圧することで、内挿取付部が空洞ポール内に係止される。
【0203】
なお、この係止をより確実なものとするため、圧接組込みステップの前に、内挿取付部の外表面に接着剤を塗布する接着剤塗布ステップを有していてもよい。また、接着剤塗布ステップに代えて、あるいはこれに加えて、圧接組込みステップの前に、ポール本体側面並びに板バネ又はこれに加えて内挿取付部の対応する位置にネジ穴を設けるネジ穴設置ステップを有するとともに、圧接組込みステップの後に、これらをネジ止めするネジ止めステップを有するようにしてもよい。または、接着剤塗布ステップ及び/又はネジ穴設置ステップ・ネジ止めステップに代えて、あるいはこれらに加えて、圧接組込みステップの前に、空洞ポールの内壁に段差を設ける段差設置ステップを有するとともに、圧接組込みステップが、板バネの張出部分の先端を当該段差に当接させる段差当接サブステップを有するようにしてもよい。
【0204】
(その他)
なお、本実施例では、注意喚起部が実施例3で説明したようなベース基板、蓄光シリコーン体、反射層、ゲル接着層を備えるものであることを必須の前提としている。一方、本実施例とは異なるものとして、注意喚起部が実施例3で説明したものに限定されず、実施例1で説明したような、ドーム部の一部に蓄光材料を用いたものであればよいという前提のもと、かかる注意喚起部をポール本体に取り付ける工程として、上述のステップS2707、S2708と同様のステップを有するものであってもよい。
【0205】
かかる場合の全体工程の一例としては、(1)ドーム形状のドームの少なくとも一部に蓄光材料を含む注意喚起部を形成するステップ(ステップ01)、(2)前記ステップ01にて形成した注意喚起部を空洞ポールに内挿するための内挿取付部に接合するステップ(ステップ02)、(3)前記ステップ02にて内挿取付部を備えた内挿取付部付注意喚起部の内挿取付部をポールの空洞に圧接組込みするステップ(ステップ03)といった工程となる。
【0206】
また、上記ステップ01のサブステップとして、実施例9で説明したような(1)平凸レンズを含む構成を有する注意喚起部を形成するステップ、例えば、円錐台状の金属材料からなるベースを準備するステップ(ステップ011)と、(2)ステップ011にて準備したベースの円錐台の側面に反射材を配置するステップ(ステップ012)、(3)ステップ011にて準備したベースの円錐台の頂面にシリコーンゲルフィルムを配置するステップ(ステップ013)、(4)ステップ013にてベースの円錐台の頂面に配置されたシリコーンゲルフィルム上に、その端縁をベースの円錐台の頂面の端縁にそってシリコーン材料からなる平凸レンズを配置するステップ(ステップ014)を有していてもよい。
【0207】
<効果>
本実施例の発明によれば、注意喚起部をポール本体に対して確実に取り付けて災害時などにおいても注意喚起部がポール本体から脱落しにくくすることで、注意喚起を適切に行うことに資することができる。また、注意喚起部をポール本体から取り外して持ち去るとっいった盗難を予防することにも資する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35