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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240514BHJP
   H02M 7/08 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H02M3/28 W
H02M7/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020135278
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030940
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 英明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 紘基
(72)【発明者】
【氏名】千葉 雄斗
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-058250(JP,A)
【文献】特開平09-149642(JP,A)
【文献】米国特許第09479077(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H02M 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源から直流電力を生成する電力変換装置であって、
前記三相交流電源の3つの線間電圧をそれぞれ全波整流する3つの全波整流回路と、
各全波整流回路に対応して設けられ、対応する全波整流回路の出力端に接続される3つのDCDC変換回路と、
前記3つのDCDC変換回路の出力電流を合流する出力回路と、
前記3つのDCDC変換回路それぞれの出力電流のピーク値が電流指令値の三分の二となり、出力電流の平均値が電流指令値の三分の一となるように、前記3つのDCDC変換回路を制御する制御部と
を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記3つのDCDC変換回路それぞれを、入力電流が入力電圧に比例するように制御する
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
各全波整流回路の出力側の端子対の間を接続するコンデンサを備え、
前記コンデンサの容量は、対応する前記DCDC変換回路から発生するスイッチングリップルを平滑化可能な容量である
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記コンデンサの容量は、対応する前記全波整流回路の全波整流波形に係る脈動を平滑化せず、前記スイッチングリップルを選択的に吸収可能な容量である
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記3つの全波整流回路は、それぞれダイオードブリッジ整流回路である
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三相交流電源から直流電力を生成する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、三相交流電力を直流電力に変換する電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-222999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三相交流電源から直流電力を取り出すためには、通常、整流回路とDCDC変換回路とを備える電力変換装置(ACDCコンバータ)が用いられる。電力変換装置には、力率が高いこと、およびノイズが小さいことが求められる。一般的な三相交流電源には、整流回路としてダイオードブリッジ整流回路またはPWM(Pulse Width Moduration)回路によって整流を実現することが多い。しかしながら、ダイオードブリッジ整流回路は、ノイズが少ない一方で、高調波を生じ、力率が悪いことが知られている。
【0005】
本開示の目的は、高い力率を実現することができる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、電力変換装置は、三相交流電源から直流電力を生成する電力変換装置であって、前記三相交流電源の3つの線間電圧をそれぞれ全波整流する3つの全波整流回路と、各全波整流回路に対応して設けられ、対応する全波整流回路の出力端に接続される3つのDCDC変換回路と、前記3つのDCDC変換回路の出力電流を合流する出力回路と、前記3つのDCDC変換回路それぞれの出力電流のピーク値が電流指令値の三分の二となり、出力電流の平均値が電流指令値の三分の一となるように、前記3つのDCDC変換回路を制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様に係る電力変換装置は、高い力率を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
図2】第1の実施形態に係る全波整流回路の構成を示す回路図である。
図3】第1の実施形態に係るDCDC変換回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〈第1の実施形態〉
《電力変換装置の構成》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置1の構成を示す回路図である。第1の実施形態に係る電力変換装置1は、三相交流電源2が供給する交流電力に対して、交流直流変換および変圧を行う。電力変換装置1が出力する直流電力は、例えば作業機械のバッテリ3の充電に用いられる。
【0010】
電力変換装置1は、3つの全波整流回路11、3つのDCDC変換回路12、出力回路13、および制御部14を備える。
【0011】
全波整流回路11は、入力側端子対と出力側端子対を備えるダイオードブリッジ整流回路である。以下、便宜上、端子対の一方を正極端子、他方を負極端子ともよぶ。3つの全波整流回路11は、それぞれ三相交流電源2の各相(U相、V相、W相)の線間電圧を整流する。
全波整流回路11aは、三相交流電源2のU相とV相の線間電圧を整流する。全波整流回路11aの入力側端子対は、それぞれ三相交流電源2のU相と、三相交流電源2のV相とに接続される。これにより、全波整流回路11aの出力側端子対からは、全波整流されたU相とV相の線間電圧が出力される。
全波整流回路11bは、三相交流電源2のV相とW相の線間電圧を整流する。全波整流回路11bの入力側端子対は、それぞれ三相交流電源2のV相と、三相交流電源2のW相とに接続される。これにより、全波整流回路11bの出力側端子対からは、全波整流されたV相とW相の線間電圧が出力される。
全波整流回路11cは、三相交流電源2のW相とU相の線間電圧を整流する。全波整流回路11cの入力側端子対は、それぞれ三相交流電源2のW相と、三相交流電源2のU相とに接続される。これにより、全波整流回路11cの出力側端子対からは、全波整流されたW相とU相の線間電圧が出力される。
【0012】
図2は、第1の実施形態に係る全波整流回路11の構成を示す回路図である。
全波整流回路11は、4つの整流ダイオード111a-111dとコンデンサ112を備える。
整流ダイオード111aのアノードは、全波整流回路11の入力側の正極端子と、整流ダイオード111bのカソードとに接続される。
整流ダイオード111aのカソードは、全波整流回路11の出力側の正極端子と、整流ダイオード111cのカソードとに接続される。
整流ダイオード111bのアノードは、全波整流回路11の出力側の負極端子と、整流ダイオード111dのアノードとに接続される。
整流ダイオード111bのカソードは、全波整流回路11の入力側の正極端子と、整流ダイオード111aのアノードとに接続される。
整流ダイオード111cのアノードは、全波整流回路11の入力側の負極端子と、整流ダイオード111dのカソードとに接続される。
整流ダイオード111cのカソードは、全波整流回路11の出力側の正極端子と、整流ダイオード111aのカソードとに接続される。
整流ダイオード111dのアノードは、全波整流回路11の出力側の負極端子と、整流ダイオード111bのアノードとに接続される。
整流ダイオード111dのカソードは、全波整流回路11の入力側の負極端子と、整流ダイオード111cのアノードとに接続される。
【0013】
また、全波整流回路11は、それぞれ出力端子対の間をバイパスするコンデンサ112を備える。コンデンサ112の容量は、入力電力に応じて決定される。例えば、コンデンサ112の容量は、入力電力1kVAに対して1uF~10uFに設定される。コンデンサ112の容量を十分小さくしておくことで、全波整流回路11の出力電圧が平滑されることなく、入力電圧の全波整流波形となる。例えば、コンデンサ112は、小型のフィルタキャパシタによって実現される。
【0014】
DCDC変換回路12は、入力側端子対と出力側端子対を備えるDAB(Dual Active Bridge)回路である。3つのDCDC変換回路12は、制御部14による制御により、それぞれ対応する全波整流回路11の出力電圧を変圧する。
DCDC変換回路12aは、全波整流回路11aの出力電圧を変圧する。DCDC変換回路12aの入力側端子対は、全波整流回路11aの出力側端子対に接続される。
DCDC変換回路12bは、全波整流回路11bの出力電圧を変圧する。DCDC変換回路12bの入力側端子対は、全波整流回路11bの出力側端子対に接続される。
DCDC変換回路12cは、全波整流回路11cの出力電圧を変圧する。DCDC変換回路12cの入力側端子対は、全波整流回路11cの出力側端子対に接続される。
【0015】
図3は、第1の実施形態に係るDCDC変換回路12の構成を示す回路図である。
DCDC変換回路12は、第一ブリッジ回路121と、変圧器122と、第二ブリッジ回路123とを備える。
【0016】
第一ブリッジ回路121は、4つの素子1211a-1211dにより構成されるブリッジ回路である。各素子1211は、ダイオードとスイッチとを並列に接続した素子である。スイッチがオフ(OFF、開)のときは、素子1211は、ダイオードの向きにのみ電流を通す。一方、スイッチがオン(ON、閉)のときは、素子1211は、何れの向きにも電流を通す。以下、素子1211の端子のうちダイオードのアノード側の端子をアノードとよび、ダイオードのカソード側の端子をカソードとよぶ。
【0017】
素子1211aのアノードは、変圧器122の入力側の正極端子と、素子1211bのカソードとに接続される。
素子1211aのカソードは、DCDC変換回路12の入力側の正極端子と、素子1211cのカソードとに接続される。
素子1211bのアノードは、DCDC変換回路12の入力側の負極端子と、素子1211dのアノードとに接続される。
素子1211bのカソードは、変圧器122の入力側の正極端子と、素子1211aのアノードとに接続される。
素子1211cのアノードは、変圧器122の入力側の負極端子と、素子1211dのカソードとに接続される。
素子1211cのカソードは、DCDC変換回路12の入力側の正極端子と、素子1211aのカソードとに接続される。
素子1211dのアノードは、DCDC変換回路12の入力側の負極端子と、素子1211bのアノードとに接続される。
素子1211dのカソードは、変圧器122の入力側の負極端子と、素子1211cのアノードとに接続される。
【0018】
第二ブリッジ回路123は、4つの素子1213a-1231dにより構成されるブリッジ回路である。各素子1231は、第一ブリッジ回路121の素子1211と同様にダイオードとスイッチとを並列に接続した素子である。
【0019】
素子1231aのアノードは、変圧器122の出力側の正極端子と、素子1231bのカソードとに接続される。
素子1231aのカソードは、DCDC変換回路12の出力側の正極端子と、素子1231cのカソードとに接続される。
素子1231bのアノードは、DCDC変換回路12の出力側の負極端子と、素子1231dのアノードとに接続される。
素子1231bのカソードは、変圧器122の出力側の正極端子と、素子1231aのアノードとに接続される。
素子1231cのアノードは、変圧器122の出力側の負極端子と、素子1231dのカソードとに接続される。
素子1231cのカソードは、DCDC変換回路12の出力側の正極端子と、素子1231aのカソードとに接続される。
素子1231dのアノードは、DCDC変換回路12の出力側の負極端子と、素子1231bのアノードとに接続される。
素子1231dのカソードは、変圧器122の出力側の負極端子と、素子1231cのアノードとに接続される。
【0020】
出力回路13は、3つのDCDC変換回路12の出力を合成して出力する。出力回路13は、入力側端子対と出力側端子対を備える。出力回路13は、入力側端子対と出力側端子対とを結ぶ線路をバイパスするコンデンサ131を備える。出力回路13の入力側の正極端子には、各DCDC変換回路12の出力側の正極端子が接続され、出力回路13の入力側の負極端子には、各DCDC変換回路12の出力側の負極端子が接続される。コンデンサ131の容量は、入力電圧に応じて決定される。例えば、コンデンサ131は、小型のフィルタキャパシタによって実現される。
【0021】
《電力変換装置の制御》
制御部14は、マイクロコンピュータなどによって実現される。制御部14は、3つのDCDC変換回路12それぞれが、DCDC変換回路12の入力側におけるDCDC変換回路12が入力側からみて定抵抗として振る舞うように、各DCDC変換回路12のスイッチング素子を切り替える。すなわち、制御部14は、3つのDCDC変換回路12それぞれの入力電流の瞬時値が、入力電圧(コンデンサ112の電圧)の瞬時値に比例するように制御する。制御部14は、DCDC変換回路12の入力側におけるリアクタンスがゼロとなり、かつレジスタンスが固定値となるように、各DCDC変換回路12のスイッチング素子を切り替えるともいえる。具体的には、制御部14は、DCDC変換回路12の出力電流の電流値が、入力電圧の2乗に比例するようにDCDC変換回路12を制御する。これにより、DCDC変換回路12の出力電流は、相電流の2倍の周波数を有する正弦波様の脈流となる。制御部14は、DCDC変換回路12の出力電流のピーク値が電流指令値の三分の二となり、平均電流値が電流指令値の三分の一となるようにDCDC変換回路12を制御する。すなわち、DCDC変換回路12の出力電流は、電流指令値の三分の一の振幅のACリップルを有する。
【0022】
DCDC変換回路12が入力側からみて定抵抗として振る舞うことで、全波整流回路11の出力端における電圧と電流との位相を一致させることができる。すなわち、相電圧と相電流との位相を一致させることができる。これにより、制御部14は、電力変換装置1の力率を1に近づけることができ、また高調波の発生を抑えることができる。
【0023】
3つのDCDC変換回路12の出力電流は、それぞれDCDC変換回路12の入力電圧と同期して制御されることから、互いに120度ずつずれた位相を有する。そのため、3つのDCDC変換回路12の出力電流が出力回路13で合流することで、ACリップル成分が打ち消され、出力回路の入力端において、スイッチングリップル成分のみが残留する。DCDC変換回路12の出力側のスイッチングリップルは、コンデンサ131において吸収されるため、出力回路13の出力電流は定電流となる。3つのDCDC変換回路12の出力電流は、電流指令値の三分の一を中心に脈動する正弦波であることから、出力回路13の出力電流の電流値は、電流指令値と一致する。
【0024】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態に係る電力変換装置1は、三相交流電源2の3つの線間電圧をそれぞれ全波整流する3つの全波整流回路11と、各全波整流回路11に対応して設けられ、対応する全波整流回路11の出力端に接続される3つのDCDC変換回路12と、3つのDCDC変換回路12の出力電流を合流する出力回路13とを備え、3つのDCDC変換回路12は、それぞれの出力電流のピーク値が出力回路13の出力電流の電流値の三分の二となるように制御される。これにより、DCDC変換回路12の入力端が定抵抗のように振る舞うため、相電圧と相電流との位相を一致させ、高い力率を実現することができる。
【0025】
また、第1の実施形態に係る電力変換装置1が備える全波整流回路11の出力側の端子対の間を接続するコンデンサ112は、対応するDCDC変換回路12から発生するスイッチングリップルを吸収可能な容量を有する。一方で、コンデンサ112の容量は、全波整流波形に係る脈動を平滑化しない程度に小さい容量を有する。これにより、全波整流回路11は、全波整流波形に係る脈動を通過させつつ、DCDC変換回路12の入力側のスイッチングリップル成分を選択的に吸収することができる。
【0026】
また、第1の実施形態に係る3つの全波整流回路11は、それぞれダイオードブリッジ整流回路である。ダイオードブリッジ整流回路は、電源周波数でターンオンおよびターンオフするため、伝導性EMIに係るノイズをほとんど発生しない。したがって、電力変換装置1の全波整流回路11がダイオードブリッジ整流回路であることで、電力変換装置1のノイズを低減することができる。
【0027】
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。例えば、第1の実施形態に係る全波整流回路11はダイオードブリッジ整流回路であるが、他の全波整流回路であってもよい。また、第1の実施形態に係るDCDC変換回路12はDAB回路で構成されるが、入力側のみをアクティブブリッジで構成し、出力側をダイオードブリッジなどのパッシブブリッジで構成するものなど、他のDCDC変換回路であってもよい。
また、第1の実施形態に係る電力変換装置1は、出力回路13にコンデンサ131を備えるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る電力変換装置1の出力先がバッテリ3である場合、電力変換装置1はコンデンサ131を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…電力変換装置 11…全波整流回路 12…DCDC変換回路 13…出力回路 14…制御部 2…三相交流電源 3…バッテリ
図1
図2
図3