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特許7487890分子末端に含窒素複素環を有する3置換ベンゼン化合物および有機エレクトロルミネッセンス素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】分子末端に含窒素複素環を有する3置換ベンゼン化合物および有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/53 20060101AFI20240514BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20240514BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20240514BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20240514BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240514BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240514BHJP
【FI】
C07D213/53 CSP
C07D401/14
C07D405/14
H05B33/22 B
H05B33/22 D
H05B33/14 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021504992
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2020009437
(87)【国際公開番号】W WO2020184379
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2019042267
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】富樫 和法
(72)【発明者】
【氏名】北原 秀良
(72)【発明者】
【氏名】市川 結
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/105373(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/141097(WO,A1)
【文献】YE,H. et al.,Adv.Funct.Mater.,2014年,Vol.24,pp.3268-3275
【文献】JANG,S. et al.,Synthetic Metals,2018年,Vol.239,pp.43-50
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
H10K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)及び(2)で表される、3置換ベンゼン化合物。
【化1】
【化2】
(式中、Ar無置換のフェニル、無置換のピリジル、無置換のピリミジニル、または無置換のジベンゾフランである。
~R13は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基を示す。
Ar中のX及びYは、それぞれ炭素原子または窒素原子を示し、少なくとも1つのXは窒素原子を示す。
Ar中のnは1から3の整数を示す。
2つのArは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
上記一般式(1)中のArが下記一般式(3)~(6)のいずれかで表される置換基である、請求項1に記載の3置換ベンゼン化合物。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
(式中、R14~R60は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基を示す。)
【請求項3】
一対の電極とその間に挟まれた少なくとも一層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、少なくとも1層の有機層が請求項1または請求項2に記載の3置換ベンゼン化合物を構成材料として含む、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の3置換ベンゼン化合物を含む有機層の少なくとも1層が電子輸送層である、請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の3置換ベンゼン化合物を含む有機層の少なくとも1層が正孔阻止層である、請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の3置換ベンゼン化合物を含む有機層の少なくとも1層が電子注入層である、請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の3置換ベンゼン化合物を含む有機層の少なくとも1層が正孔注入層である、請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の3置換ベンゼン化合物を含む有機層の少なくとも1層が発光層である、請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の表示装置に好適な自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子に適した化合物と素子に関するものであリ、詳しくは末端に含窒素複素環を有する2つの芳香族置換基と異なる1つの芳香族置換基を有する3置換ベンゼン化合物と、該化合物を用いた有機EL素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子は自己発光性素子であるため、液晶素子にくらべて明るく視認性に優れ、鮮明な表示が可能であるため、活発な研究がなされてきた。
【0003】
1987年にイーストマン・コダック社のC.W.Tangらは各種の役割を各材料に分担した積層構造素子を開発することにより有機材料を用いた有機EL素子を実用的なものにした。彼らは電子を輸送することのできる蛍光体と正孔を輸送することのできる有機物とを積層し、両方の電荷を蛍光体の層の中に注入して発光させることにより、10V以下の電圧で1000cd/m以上の高輝度が得られるようになった(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
現在まで、有機エレクトロルミネッセンス素子の実用化のために多くの改良がなされ、各種の役割をさらに細分化して、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、および陰極を設けた電界発光素子によって高効率と耐久性が達成されるようになってきた(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
また発光効率の更なる向上を目的として三重項励起子の利用が試みられ、燐光発光体の利用が検討されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
そして、熱活性化遅延蛍光(TADF)による発光を利用する素子も開発されている。2011年に九州大学の安達らは、熱活性化遅延蛍光材料を用いた素子によって5.3%の外部量子効率を実現させており(例えば、非特許文献3参照)、2012年には19%を超える外部量子効率を実現させた(例えば、非特許文献4参照)。
【0007】
発光層は、一般的にホスト材料と称される電荷輸送性の化合物に、蛍光体や燐光発光体をドープして作製することもできる。有機エレクトロルミネッセンス素子における有機材料の選択は、その素子の効率や耐久性など諸特性に大きな影響を与える。
【0008】
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、発光層中での効率的な電荷再結合を実現するため、電子注入・輸送性が良い電子輸送材料が求められているが、近年、特に性能向上が期待されている青色素子の発光効率向上を図るため、よりバンドギャップが広い(電子親和力が小さく、仕事関数が大きい)電子輸送材料が求められている。
【0009】
電子親和力が小さいと、特に青色素子で用いられる発光層への電子注入障壁が小さくなり、発光層への電子注入効率が良くなることで、素子の発光効率向上が期待できる。
【0010】
仕事関数が大きいと、一部の正孔が発光層を通り抜けてしまうことを防ぐことが可能となり、その結果、発光層内での電荷再結合の確率が向上し、素子の発光効率向上が期待できる。
【0011】
代表的な発光材料であるトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(以後、Alqと略称する)は電子輸送材料としても一般的に用いられるが、仕事関数が5.7eVと小さく正孔阻止性能があるとは言えない。
【0012】
正孔の一部が発光層を通り抜けてしまうことを防ぎ、発光層での電荷再結合の確率を向上させる方策には、正孔阻止層を挿入する方法がある。正孔阻止材料としてはこれまでに、トリアゾール(以後、TAZと略称する)誘導体(例えば、特許文献3参照)やバソクプロイン(以後、BCPと略称する)などが提案されている。
【0013】
TAZは仕事関数が6.3eVと大きく正孔阻止能力が高いものの、電子親和力が2.7eVと大きいため、発光層への電子注入障壁が大きく、素子の効率向上のためには十分とは言えない。
【0014】
さらに、電子輸送性が低いことがTAZにおける大きな課題であり、より電子輸送性の高い電子輸送材料と組み合わせて、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製することが必要であった(例えば、非特許文献5参照)。
【0015】
また、BCPもTAZと同様、仕事関数が6.7eVと大きく正孔阻止能力が高いものの、電子親和力が2.8eVと大きいため、発光層への電子注入障壁が大きく、素子の効率向上のためには十分とは言えない。
【0016】
また、BCPはガラス転移点(Tg)が83℃と低いことから、薄膜の安定性に乏しく、正孔阻止層として十分に機能しているとは言えない。
【0017】
薄膜の安定性が高く、電子注入・輸送性及び正孔阻止能力が高い電子輸送材料として、2,2’,2’’-(1,3,5-フェニレン)-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール)(以後、TPBiと略称する)が提案されている。(特許文献4)
【0018】
TPBiは仕事関数が6.2eVと大きく正孔阻止能力が高いものの、電子親和力が2.7eVと大きいため、発光層への電子注入障壁が大きく、素子の効率向上のためには十分とは言えない。
【0019】
いずれの材料も正孔阻止能力が高いものの、バンドギャップが狭いため、発光層への電子注入障壁が大きく、特に青色素子の効率向上のためには十分とは言えない。有機エレクトロルミネッセンス素子の素子特性を改善させるために、電子注入・輸送性能と正孔阻止能力に優れ、よりバンドギャップの広い有機化合物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】日本国特開平8-48656号公報
【文献】日本国特許第3194657号公報
【文献】日本国特許第2734341号公報
【文献】日本国特許第3992794号公報
【非特許文献】
【0021】
【文献】応用物理学会第9回講習会予稿集55~61ページ(2001)
【文献】応用物理学会第9回講習会予稿集23~31ページ(2001)
【文献】Appl.Phys.Let.,98,083302(2011)
【文献】Nature,492,234(2012)
【文献】応用物理学会有機分子・バイオエレクトロニクス分科会会誌11巻1号13~19ページ(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、低消費電力の有機エレクトロルミネッセンス素子用の材料として、電子の注入・輸送性能に優れた特性を有する有機化合物を提供し、さらにこの化合物を用いて、低消費電力の有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。本発明に適した有機化合物の物理的な特性としては、(1)電子の注入・輸送特性が良いこと、(2)正孔阻止性が高いこと、(3)バンドギャップが広いことをあげることができる。また、本発明に適した素子の物理的な特性としては、駆動電圧が低いこと、発光効率が高いことをあげることができる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
そこで本発明者らは上記の目的を達成するために、電子吸引性の大きい含窒素複素環が末端に配置され、且つメタ位に連結した芳香族置換基を2つ有し、さらに分子のアモルファス性向上のため、その芳香族置換基とは異なる芳香族置換基1つを有する3置換ベンゼン化合物を設計し、該化合物を用いて種々の有機エレクトロルミネッセンス素子を試作し、素子の特性評価を鋭意行なった結果、本発明を完成するに至った。
【0024】
上記課題を解決することのできる本発明の3置換ベンゼン化合物は、下記一般式(1)及び(2)で表される。
【化1】
【化2】
(式中、ArはArとは異なり、置換されていてもよい1価の芳香族炭化水素基もしくは芳香族複素環基である。
~R13は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基を示す。
Ar中のX及びYは、それぞれ炭素原子または窒素原子を示し、少なくとも1つのXは窒素原子を示す。
Ar中のnは1から3の整数を示す。
2つのArは同一でも異なっていてもよい。)
【0025】
また、上記課題を解決することのできる本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、一対の電極とその間に挟まれた少なくとも1層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、少なくとも1層の有機層が上記一般式(1)及び(2)で表される3置換ベンゼン化合物を構成材料として含む。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一般式(1)及び(2)で表される化合物は、バンドギャップが広く、電子親和力が小さいため、特に青色素子の発光層への電子注入障壁が小さい。また、仕事関数も大きく、正孔阻止性が高いため、有機EL素子の正孔阻止層、電子輸送層、あるいは発光層の構成材料として有用である。本発明の化合物を用いて作製した有機EL素子は駆動電圧が低下し、発光効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例1の化合物(化合物1)の1H-NMRチャート図である。
図2】実施例2の化合物(化合物4)の1H-NMRチャート図である。
図3】実施例3の化合物(化合物7)の1H-NMRチャート図である。
図4】実施例4の化合物(化合物19)の1H-NMRチャート図である。
図5】実施例5の化合物(化合物6)の1H-NMRチャート図である。
図6】実施例6の化合物(化合物194)の1H-NMRチャート図である。
図7】実施例10~20、比較例1のEL素子構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。まず、本実施形態について、その態様を列挙して説明する。
[1]
下記一般式(1)及び(2)で表される、3置換ベンゼン化合物。
【化3】
【化4】
(式中、ArはArとは異なり、置換されていてもよい1価の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基である。
~R13は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基を示す。
Ar中のX及びYは、それぞれ炭素原子または窒素原子を示し、少なくとも1つのXは窒素原子を示す。
Ar中のnは1から3の整数を示す。
2つのArは同一でも異なっていてもよい。)
[2]
上記一般式(1)中のArが下記一般式(3)~(6)のいずれかで表される置換基である、[1]に記載の3置換ベンゼン化合物。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
(式中、R14~R60は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基を示す。)
[3]
一対の電極とその間に挟まれた少なくとも一層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、少なくとも1層の有機層が[1]または[2]に記載の3置換ベンゼン化合物を構成材料として含む、有機エレクトロルミネッセンス素子。
[4]
[1]または[2]に記載の3置換ベンゼン化合物を含む有機層の少なくとも1層が電子輸送層である、[3]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[5]
[1]または[2]に記載の3置換ベンゼン化合物を含む有機層の少なくとも1層が正孔阻止層である、[3]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[6]
[1]または[2]に記載の3置換ベンゼン化合物を含む有機層の少なくとも1層が電子注入層である、[3]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[7]
[1]または[2]に記載の3置換ベンゼン化合物を含む有機層の少なくとも1層が正孔注入層である、[3]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[8]
[1]または[2]に記載の3置換ベンゼン化合物を含む有機層の少なくとも1層が発光層である、[3]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0029】
一般式(1)中のArで表される芳香族炭化水素基または芳香族複素環基としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、およびカルボリニル基などをあげることができる。
【0030】
一般式(1)中のArで表される芳香族炭化水素基または芳香族複素環基における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソへキシル基、ネオへキシル基、n-ヘプチル基、イソへプチル基、ネオへプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、ネオオクチル基などの炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基;スチリル基、ナフチルビニル基などのアリールビニル基;アセチル基、ベンゾイル基などのアシル基等をあげることができる。これらの置換基は、さらに前記例示した置換基が置換していても良い。また、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0031】
一般式(1)中のArの「芳香族炭化水素基」の炭素原子数としては、例えば6~30が挙げられる。一般式(1)中のArの「芳香族複素環基」の炭素原子数としては、例えば2~20が挙げられる。一般式(1)中のArは、フェニル基、フェナントレニル基、置換または無置換のフルオレニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、置換または無置換のピリミジニル基、置換または無置換のトリアジニル基、置換インドリル基、置換または無置換のカルバゾリル基、またはジベンゾフラニル基でもよい。一般式(1)中のArは、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基またはジベンゾフラニル基でもよい。
【0032】
一般式(2)~(6)中のR~R60で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」、または「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」、または「炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基などをあげることができる。
【0033】
一般式(2)~(6)中のR~R60で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」、または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基等をあげることができる。これらの置換基はさらに、前記例示した置換基が置換していても良い。また、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0034】
一般式(2)~(6)中のR~R60で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」としては、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基などをあげることができる。これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0035】
一般式(2)~(6)中のR~R60で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「置換基」としては、上記で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」、または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0036】
ここで、上記一般式(1)中のArは一般式(4)または(6)で表される置換基であってもよい。この場合においても、2つのArは同一でも異なっていてもよい。この場合において、一般式(4)のR26~R37は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、無置換の炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、無置換の炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、無置換の炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、無置換の炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、または無置換の炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基でもよい。この場合において一般式(4)のR26~R37は、水素原子であってもよい。この場合において、一般式(6)のR50~R60は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、無置換の炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、無置換の炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、無置換の炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、無置換の炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、または無置換の炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基でもよい。この場合において一般式(6)のR50~R60は、水素原子でもよい。
【0037】
本実施形態の一般式(1)から(6)で表される化合物は新規な化合物であり、従来の電子輸送材料よりバンドギャップが広く、電子親和力が小さいため、特に青色素子の発光層への電子注入障壁が小さい。さらに、仕事関数も大きいため、正孔阻止性が高い。よって、本実施形態の化合物を用いた素子では、駆動電圧が低下し、発光効率が向上するという作用を有する。
【0038】
本実施形態の一般式(1)から(6)で表される化合物は、有機EL素子の正孔阻止層および/または電子輸送層の構成材料として使用できる。従来の材料に比べてバンドギャップが広く、電子親和力が小さい材料を用いることにより、正孔阻止層または電子輸送層から発光層への電子注入・輸送効率が向上して、駆動電圧及び発光効率が改善された有機EL素子を実現できるという作用を有する。
【0039】
本実施形態の一般式(1)から(6)で表される化合物は、有機EL素子の発光層の構成材料としても使用できる。従来の材料に比べて電子輸送性に優れ、かつバンドギャップの広い本実施形態の材料を発光層のホスト材料として用い、ドーパントと呼ばれている蛍光体や燐光発光体を担持させて、発光層として用いることにより、駆動電圧が低下し、発光効率が改善された有機EL素子を実現できるという作用を有する。
【0040】
本実施形態の一般式(1)から(6)で表される化合物は、新規な化合物であり、これらの化合物は例えば、以下のように合成できる。1、3、5位をハロゲン化されたベンゼンと種々の芳香族置換基のボロン酸またはホウ酸エステル体とを鈴木・宮浦カップリング反応させ、さらに、合成されたハロゲン体と含窒素複素環が末端に配置され、且つメタ位に連結した芳香族置換基のボロン酸またはホウ酸エステル体とを鈴木・宮浦カップリング反応させることによって合成することができる。
【0041】
一般式(1)から(6)で表される化合物の中で、好ましい化合物の具体例を以下に示すが、本発明は、これらの化合物に限定されるものではない。
【0042】
【化9】
【0043】
【化10】
【0044】
【化11】
【0045】
【化12】
【0046】
【化13】
【0047】
【化14】
【0048】
【化15】
【0049】
【化16】
【0050】
【化17】
【0051】
【化18】
【0052】
【化19】
【0053】
【化20】
【0054】
【化21】
【0055】
【化22】
【0056】
【化23】
【0057】
【化24】
【0058】
【化25】
【0059】
【化26】
【0060】
これらの化合物の精製はカラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法などによって行う。化合物の同定は、NMR分析によって行う。物性値として、融点、ガラス転移点(Tg)、バンドギャップ、仕事関数の測定を行う。融点は蒸着性の指標となるものであり、ガラス転移点(Tg)は薄膜状態の安定性の指標となるものであり、仕事関数は正孔阻止能力の指標となるものであり、バンドギャップは電子親和力を算出するためのパラメータである。
【0061】
融点とガラス転移点は、粉体を用いて、セイコーインスツルメンツ社製の高感度示差走査熱量計DSC6200を用いて測定する。一般式(1)~(6)で表される化合物のガラス転移点は、特に限定されるものではないが、形成された薄膜の安定性の観点から80℃以上であると好ましい。ガラス転移点の上限は特に限定されるものではないが、例えば250℃以下の化合物を採用できる。
【0062】
また仕事関数は、ITO基板の上に100nmの薄膜を作製して、理研計器製の大気中光電子分光装置AC-3型を用いて測定する。一般式(1)~(6)で表される化合物を用いてITO基板の上に作成した、膜厚100nmの蒸着膜における仕事関数は、特に限定されるものではないが、6.3eVよりも大きいと好ましい。この蒸着膜の仕事関数の上限は特に限定されるものではないが、例えば7.0eV以下の蒸着膜とすることができる。
【0063】
バンドギャップは、市販の分光光度計により測定した紫外可視吸収スペクトルより算出できる。長波長側の吸収端の波長を読み取り、下記の式に従って光のエネルギー値に換算することによって算出できる。

Eg(eV)=hc/λ

ここで、Egは光エネルギーに換算したバンドギャップの値を、hはプランク定数(6.63×10-34Js)を、cは光速(3.00×10m/s)を、λは紫外可視吸収スペクトルの長波長側吸収端の波長(nm)を表す。そして、1eVは1.60×10-19Jとなる。
【0064】
一般的に、仕事関数(Ip)とバンドギャップ(Eg)から、下記の式に従って電子親和力(Ea)を算出できる。

Ea(eV)=Ip-Eg

一般式(1)~(6)で表される化合物を用いてITO基板の上に作成した、膜厚100nmの蒸着膜における仕事関数と、上記式から算出されるバンドギャップ(Eg)と、から算出される一般式(1)~(6)で表される化合物の電子親和力(Ea)は、特に限定されるものではないが、2.80eVよりも小さいと好ましい。この当該電子親和力(Ea)の下限は特に限定されるものではないが、例えば2.0eV以上の蒸着膜とすることができる。
【0065】
本実施形態の有機EL素子の構造としては、基板上に順次に、陽極、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、陰極からなるもの、また、陽極と正孔輸送層の間に正孔注入層を有するもの、電子輸送層と陰極の間に電子注入層を有するもの、発光層と正孔輸送層の間に電子阻止層を有するものがあげられる。これらの多層構造においては有機層を何層か省略することが可能であり、例えば基板上に順次に、陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極を有する構成とすることもできる。
【0066】
前記発光層、前記正孔輸送層、前記電子輸送層においては、それぞれが2層以上積層された構造であっても良い。
【0067】
本実施形態の有機EL素子の陽極としては、ITOや金のような仕事関数の大きな電極材料が用いられる。本実施形態の有機EL素子の正孔注入層としては、銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物のほか、スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体、分子中にトリフェニルアミン構造を3個以上、単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物などのトリフェニルアミン3量体および4量体、ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物や塗布型の高分子材料を用いることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0068】
本実施形態の有機EL素子の正孔輸送層としては、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)-ベンジジン(以後、TPDと略称する)やN,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(α-ナフチル)-ベンジジン(以後、NPDと略称する)、N,N,N’,N’-テトラビフェニリルベンジジンなどのベンジジン誘導体、1,1-ビス[(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(以後、TAPCと略称する)、種々のトリフェニルアミン3量体および4量体などを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。また、正孔の注入・輸送層として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(以後、PEDOTと略称する)/ポリ(スチレンスルフォネート)(以後、PSSと略称する)などの塗布型の高分子材料を用いることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0069】
また、正孔注入層あるいは正孔輸送層において、該層に通常使用される材料に対し、さらにトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモンなどをPドーピングしたものや、TPDの構造をその部分構造に有する高分子化合物などを用いることができる。
【0070】
本実施形態の有機EL素子の電子阻止層として、4,4’,4’’-トリ(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(以後、TCTAと略称する)、9,9-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]フルオレン、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン(以後、mCPと略称する)、2,2-ビス(4-カルバゾール-9-イルフェニル)アダマンタン(以後、Ad-Czと略称する)などのカルバゾール誘導体、9-[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-9-[4-(トリフェニルシリル)フェニル]-9H-フルオレンに代表されるトリフェニルシリル基とトリアリールアミン構造を有する化合物などの電子阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0071】
本実施形態の有機EL素子の発光層として、本実施形態の前記一般式(1)~(6)で表される化合物のほか、Alqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体、各種の金属錯体、アントラセン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体などを用いることができる。また、発光層をホスト材料とドーパント材料とで構成しても良く、ホスト材料として前記発光材料に加え、チアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体などを用いることができる。またドーパント材料としては、キナクリドン、クマリン、ルブレン、ペリレンおよびそれらの誘導体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、アミノスチリル誘導体などを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。
【0072】
また、発光材料として燐光性の発光材料を使用することも可能である。燐光性の発光体としては、イリジウムや白金などの金属錯体の燐光発光体を使用することができる。Ir(ppy)などの緑色の燐光発光体、FIrpic、FIr6などの青色の燐光発光体、BtpIr(acac)などの赤色の燐光発光体などが用いられ、このときのホスト材料としては正孔注入・輸送性のホスト材料として、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(以後、CBPと略称する)やTCTA、mCPなどのカルバゾール誘導体などを用いることができる。電子輸送性のホスト材料として、p-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(以後、UGH2と略称する)や2,2’,2’’-(1,3,5-フェニレン)-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール)(TPBi)などを用いることができる。
【0073】
燐光性の発光材料のホスト材料へのドープは濃度消光を避けるため、発光層全体に対して1~30重量パーセントの範囲で、共蒸着によってドープすることが好ましい。
【0074】
また、発光材料としてPIC-TRZ、CC2TA、PXZ-TRZ、4CzIPNなどの遅延蛍光を放射する材料を使用することも可能である。(例えば、非特許文献3、4参照)
【0075】
これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0076】
本実施形態の有機EL素子の正孔阻止層として、本実施形態の前記一般式(1)~(6)で表される化合物のほか、バソクプロイン(以後、BCPと略称する)などのフェナントロリン誘導体や、BAlqなどのキノリノール誘導体の金属錯体のほか、各種の希土類錯体、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体など、正孔阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらの材料は電子輸送層の材料を兼ねてもよい。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる
【0077】
本実施形態の有機EL素子の電子輸送層として、本実施形態の前記一般式(1)~(6)で表される化合物のほか、Alq、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体のほか、各種金属錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、カルボジイミド誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体などを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0078】
本実施形態の有機EL素子の電子注入層として、本実施形態の前記一般式(1)~(6)で表される化合物のほか、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩、フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、酸化アルミニウムなどの金属酸化物などを用いることができるが、電子輸送層と陰極の好ましい選択においては、これを省略することができる。
【0079】
さらに、電子注入層あるいは電子輸送層において、該層に通常使用される材料に対し、さらにセシウムなどの金属やリチウムキノリンなどの金属錯体をNドーピングしたものを用いることができる。
【0080】
本実施形態の有機EL素子の陰極として、アルミニウムのような仕事関数の小さい電極材料や、マグネシウム銀合金、マグネシウムインジウム合金、アルミニウムマグネシウム合金のような、より仕事関数の小さい合金が電極材料として用いられる。
【0081】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0082】
<3-{m-[m-(5-フェニル-3-{m-[m-(3-ピリジル)フェニル]フェニル}フェニル)フェニル]フェニル}ピリジン(化合物1)の合成>
窒素置換した反応容器に、1-ブロモ-3-ヨードベンゼン28.4g、3-(3-ピリジル)フェニルボロン酸20.0g、トルエン160ml、エタノール40ml、2M炭酸カリウム水溶液75ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)2.3gを加え、撹拌しながら8時間加熱還流した。室温まで冷却して分液し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:酢酸エチル/n-ヘキサン=1/2)によって精製し、3-(3’-ブロモ-3-ビフェニリル)ピリジン34.8g(収率89%)の白色粉末を得た。
【0083】
窒素置換した反応容器に、3-(3’-ブロモ-3-ビフェニリル)ピリジン30.5g、ビス(ピナコラト)ジボロン30.0g、酢酸カリウム14.5g、1,4-ジオキサン305ml、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン付加物1.6gを加え、撹拌しながら100℃で4時間加熱した。室温まで冷却し、トルエン500ml、飽和食塩水を加えて分液し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:酢酸エチル/n-ヘキサン=1/1)によって精製し、3-[3’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ビフェニル-3-イル]ピリジン30.1g(収率75%)の白色粉末を得た。
【0084】
窒素置換した反応容器に、3,5-ジブロモビフェニル2.1g、3-[3’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ビフェニル-3-イル]ピリジン5.1g、トルエン40ml、エタノール10ml、2M炭酸カリウム水溶液10ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.16gを加え、撹拌しながら16時間加熱還流した。室温まで冷却して分液し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:酢酸エチル/n-ヘキサン=2/1)によって精製し、3-{m-[m-(5-フェニル-3-{m-[m-(3-ピリジル)フェニル]フェニル}フェニル)フェニル]フェニル}ピリジン(化合物1)3.5g(収率85%)の白色粉末を得た。
【0085】
得られた白色粉末についてNMRを使用して構造を同定した。1H-NMR測定結果を図1に示した。
【0086】
1H-NMR(DMSO-d6)で以下の32個の水素シグナルを検出した。δ(ppm)=9.02(2H)、8.58-8.59(2H)、8.24(2H)、8.19-8.21(2H)、8.11(3H)、8.02(2H)、7.90-7.93(4H)、7.86-7.88(2H)、7.81-7.83(2H)、7.73-7.65(2H)、7.60-7.65(4H)、7.47-7.53(4H)、7.39-7.43(1H)。
【実施例2】
【0087】
<3-(3,5-ビス{m-[m-(3-ピリジル)フェニル]フェニル}フェニル)ピリジン(化合物4)の合成>
窒素置換した反応容器に、1,3-ジブロモ-5-ヨードベンゼン5.1g、3-ピリジンボロン酸1.7g、トルエン40ml、エタノール10ml、2M炭酸カリウム水溶液11ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.33gを加え、撹拌しながら19時間加熱還流した。室温まで冷却して分液し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:クロロホルム)によって精製し、3-(3,5-ジブロモフェニル)ピリジン2.3g(収率53%)の淡黄色粉末を得た。
【0088】
窒素置換した反応容器に、3-(3,5-ジブロモフェニル)ピリジン2.0g、3-[3’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ビフェニル-3-イル]ピリジン4.8g、トルエン40ml、エタノール10ml、2M炭酸カリウム水溶液10ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.17gを加え、撹拌しながら14時間加熱還流した。室温まで冷却して分液し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:酢酸エチル)によって精製し、3-(3,5-ビス{m-[m-(3-ピリジル)フェニル]フェニル}フェニル)ピリジン(化合物4)3.7g(収率94%)の白色粉末を得た。
【0089】
得られた白色粉末についてNMRを使用して構造を同定した。1H-NMR測定結果を図2に示した。
【0090】
1H-NMR(DMSO-d6)で以下の31個の水素シグナルを検出した。δ(ppm)=9.18(1H)、9.03(2H)、8.62-8.63(1H)、8.58-8.60(2H)、8.34-8.36(1H)、8.27(2H)、8.18-8.21(3H)、8.12(4H)、7.93-7.95(2H)、7.87-7.88(2H)、7.82-7.84(2H)、7.73-7.75(2H)、7.60-7.65(4H)、7.47-7.54(3H)。
【実施例3】
【0091】
<5-(3,5-ビス{m-[m-(3-ピリジル)フェニル]フェニル}フェニル)ピリミジン(化合物7)の合成>
窒素置換した反応容器に、1,3-ジブロモ-5-ヨードベンゼン5.1g、5-ピリミジンボロン酸1.8g、トルエン40ml、エタノール10ml、2M炭酸カリウム水溶液11ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.33gを加え、撹拌しながら23時間加熱還流した。室温まで冷却して分液し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:クロロホルム)によって精製し、5-(3,5-ジブロモフェニル)ピリミジン0.7g(収率16%)の白色粉末を得た。
【0092】
窒素置換した反応容器に、5-(3,5-ジブロモフェニル)ピリミジン0.6g、3-[3’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ビフェニル-3-イル]ピリジン1.4g、トルエン20ml、エタノール5ml、2M炭酸カリウム水溶液3ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)50mgを加え、撹拌しながら20時間加熱還流した。室温まで冷却して分液し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:酢酸エチル)によって精製し、5-(3,5-ビス{m-[m-(3-ピリジル)フェニル]フェニル}フェニル)ピリミジン(化合物7)0.7g(収率61%)の白色粉末を得た。
【0093】
得られた白色粉末についてNMRを使用して構造を同定した。1H-NMR測定結果を図3に示した。
【0094】
1H-NMR(DMSO-d6)で以下の30個の水素シグナルを検出した。δ(ppm)=9.43(2H)、9.25(1H)、9.03(2H)、8.60(2H)、8.28(2H)、8.20-8.23(5H)、8.11(2H)、7.95-7.97(2H)、7.88-7.90(2H)、7.84-7.86(2H)、7.75-7.77(2H)、7.62-7.67(4H)、7.49-7.52(2H)。
【実施例4】
【0095】
<3-(m-{m-[5-(ジベンゾフラン-4-イル)-3-{m-[m-(3-ピリジル)フェニル]フェニル}フェニル]フェニル}フェニル)ピリジン(化合物19)の合成>
窒素置換した反応容器に、1,3-ジブロモ-5-ヨードベンゼン5.0g、ジベンゾフラン-4-ボロン酸2.9g、トルエン40ml、エタノール10ml、2M炭酸カリウム水溶液11ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.32gを加え、撹拌しながら7時間加熱還流した。室温まで冷却して分液し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をクロロホルム/n-ヘキサン晶析によって精製し、4-(3,5-ジブロモフェニル)ジベンゾフラン2.3g(収率41%)の白色粉末を得た。
【0096】
窒素置換した反応容器に、4-(3,5-ジブロモフェニル)ジベンゾフラン2.1g、3-[3’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ビフェニル-3-イル]ピリジン3.9g、トルエン40ml、エタノール10ml、2M炭酸カリウム水溶液8ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.13gを加え、撹拌しながら10時間加熱還流した。室温まで冷却して分液し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:酢酸エチル/n-ヘキサン=2/1)によって精製し、3-(m-{m-[5-(ジベンゾフラン-4-イル)-3-{m-[m-(3-ピリジル)フェニル]フェニル}フェニル]フェニル}フェニル)ピリジン(化合物19)2.3g(収率63%)の白色粉末を得た。
【0097】
得られた白色粉末についてNMRを使用して構造を同定した。1H-NMR測定結果を図4に示した。
【0098】
1H-NMR(DMSO-d6)で以下の34個の水素シグナルを検出した。δ(ppm)=9.02(2H)、8.58-8.59(2H)、8.26(4H)、8.19-8.22(5H)、8.12(2H)、7.93-7.96(3H)、7.84-7.89(4H)、7.74-7.76(2H)、7.54-7.69(6H)、7.40-7.49(4H)。
【実施例5】
【0099】
<5-(m-{m-[3-(3-ピリジル)-5-{m-[m-(5-ピリミジ二ル)フェニル]フェニル}フェニル]フェニル}フェニル)ピリミジン(化合物6)の合成>
窒素置換した反応容器に、3,3’-ジブロモビフェニル20.9g、5-ピリミジンボロン酸6.4g、1,4-ジオキサン160ml、2M炭酸カリウム水溶液38ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)1.2gを加え、撹拌しながら4時間加熱還流した。室温まで冷却して分液し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:酢酸エチル/n-ヘキサン=1/2)によって精製し、5-(3’-ブロモビフェニルー3-イル)ピリミジン7.3g(収率46%)の白色粉末を得た。
【0100】
窒素置換した反応容器に、5-(3’-ブロモビフェニルー3-イル)ピリミジン11.0g、ビス(ピナコラト)ジボロン9.9g、酢酸カリウム5.2g、1,4-ジオキサン100ml、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン付加物0.3gを加え、撹拌しながら90℃で5.5時間加熱した。室温まで冷却して分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:酢酸エチル/n-ヘキサン=1/3)によって精製し、5-[3’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ビフェニル-3-イル]ピリミジン8.3g(収率66%)の白色粉末を得た。
【0101】
窒素置換した反応容器に、3-(3,5-ジブロモフェニル)ピリジン1.5g、5-[3’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ビフェニル-3-イル]ピリミジン3.6g、1,4-ジオキサン100ml、2M炭酸カリウム水溶液10ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.12gを加え、撹拌しながら15.5時間加熱還流した。室温まで冷却して分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:酢酸エチル)によって精製し、5-(m-{m-[3-(3-ピリジル)-5-{m-[m-(5-ピリミジ二ル)フェニル]フェニル}フェニル]フェニル}フェニル)ピリミジン(化合物6)1.9g(収率63%)の白色粉末を得た。
【0102】
得られた白色粉末についてNMRを使用して構造を同定した。1H-NMR測定結果を図5に示した。
【0103】
1H-NMR(CDCl)で以下の29個の水素シグナルを検出した。δ(ppm)=9.24(2H)、9.02(4H)、8.99(1H)、8.65-8.67(1H)、8.00-8.03(1H)、7.92-7.95(3H)、7.84-7.86(4H)、7.73-7.80(4H)、7.58-7.72(8H)、7.42-7.45(1H)。
【実施例6】
【0104】
<5-(m-{m-[3-(3-ピリジル)-5-{m-[m-(3-ピリジル)フェニル]フェニル}フェニル]フェニル}フェニル)ピリミジン(化合物194)の合成>
窒素置換した反応容器に、3-(3,5-ジブロモフェニル)ピリジン3.1g、5-[3’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ビフェニル-3-イル]ピリミジン2.7g、1,4-ジオキサン80ml、2M炭酸カリウム水溶液6ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.17gを加え、撹拌しながら13時間加熱還流した。室温まで冷却して分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:酢酸エチル)によって精製し、5-(m-{m-[5-ブロモ-3-(3-ピリジル)フェニル]フェニル}フェニル)ピリミジン1.9g(収率55%)の白色粉末を得た。
【0105】
窒素置換した反応容器に、5-(m-{m-[5-ブロモ-3-(3-ピリジル)フェニル]フェニル}フェニル)ピリミジン1.8g、3-[3’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ビフェニル-3-イル]ピリジン1.7g、1,4-ジオキサン50ml、2M炭酸カリウム水溶液3ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.10gを加え、撹拌しながら18時間加熱還流した。室温まで冷却して分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:酢酸エチル)によって精製し、5-(m-{m-[3-(3-ピリジル)-5-{m-[m-(3-ピリジル)フェニル]フェニル}フェニル]フェニル}フェニル)ピリミジン(化合物194)2.1g(収率88%)の白色粉末を得た。
【0106】
得られた白色粉末についてNMRを使用して構造を同定した。1H-NMR測定結果を図6に示した。
【0107】
1H-NMR(CDCl)で以下の30個の水素シグナルを検出した。δ(ppm)=9.23(1H)、9.02(2H)、8.98(1H)、8.91(1H)、8.64-8.68(1H)、8.60-8.64(1H)、7.98-8.03(1H)、7.90-7.96(4H)、7.81-7.87(4H)、7.55-7.80(12H)、7.36-7.45(2H)。
【実施例7】
【0108】
上記実施例の化合物について、高感度示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製、DSC6200)によって融点とガラス転移点を求めた。
融点 ガラス転移点
実施例1の化合物 N.O. 83℃
実施例2の化合物 N.O. 85℃
実施例3の化合物 N.O. 96℃
実施例4の化合物 N.O. 99℃
実施例5の化合物 N.O. 106℃
実施例6の化合物 N.O. 96℃
【0109】
このように上記実施例の化合物は一般的な正孔阻止層であるBCPがもつガラス転移点(83℃)と比較して、同等以上の値を示しており、良好な薄膜安定性を有していることがわかる。
【実施例8】
【0110】
上記実施例の化合物を用いて、ITO基板の上に膜厚100nmの蒸着膜を作製して、大気中光電子分光装置(理研計器製、AC-3型)で仕事関数を測定した。
仕事関数
実施例1の化合物 6.50eV
実施例2の化合物 6.47eV
実施例3の化合物 6.59eV
実施例4の化合物 6.39eV
実施例5の化合物 6.59eV
実施例6の化合物 6.57eV
【0111】
このように上記実施例の化合物はTAZやBCPなどの一般的な正孔阻止層がもつ仕事関数と比較して、同等のエネルギー準位を示しており、良好な正孔阻止能力を有していることがわかる。
【実施例9】
【0112】
上記実施例の化合物を用いて、石英基板の上に膜厚50nmの蒸着膜を作製して、市販の分光光度計で紫外可視吸収スペクトルを測定し、長波長側の吸収端の波長からバンドギャップを算出した。また、仕事関数とバンドギャップの値から電子親和力を算出した。
バンドギャップ 電子親和力
実施例1の化合物 4.10eV 2.40eV
実施例2の化合物 4.07eV 2.40eV
実施例3の化合物 4.02eV 2.57eV
実施例4の化合物 3.69eV 2.70eV
実施例5の化合物 3.98eV 2.61eV
実施例6の化合物 4.06eV 2.51eV
Alq 2.70eV 3.00eV
TPBi 3.50eV 2.70eV
【0113】
このように上記実施例の化合物はAlqやTPBiなどの一般的な電子輸送材料がもつバンドギャップと比較して広い値を示しており、電子親和力は小さく、特に青色発光層に対して良好な電子注入性を有していることがわかる。
【実施例10】
【0114】
本実施例における有機EL素子は図7に示すように、ガラス基板1上に透明陽極2としてITO電極をあらかじめ形成したものを用意し、その上に、正孔輸送層3、発光層4、正孔阻止層5、電子輸送層6、電子注入層7、および陰極(アルミニウム電極)8をこの順に蒸着して作製した。
【0115】
具体的には、以下の手順により有機EL素子を作製した。膜厚150nmのITOを成膜したガラス基板1を有機溶媒で洗浄した後に、UVオゾン処理にて表面を洗浄した。その後、このITO電極付きガラス基板を真空蒸着機内に取り付け0.001Pa以下まで減圧した。続いて、TAPCを蒸着速度1.0Å/sで透明陽極2に蒸着して、透明陽極2を覆う正孔輸送層3を膜厚40nmとなるように形成した。この正孔輸送層3の上に、mCPと青色燐光発光体FIrpicを、蒸着速度比がmCP:FIrpic=94:6となる蒸着速度で二元蒸着して、発光層4を膜厚30nmとなるように形成した。この発光層4の上に、実施例1の化合物(化合物1)を蒸着速度1.0Å/sで蒸着して、正孔阻止層5を膜厚5nmとなるように形成した。この正孔阻止層5の上に、TPBiを蒸着速度1.0Å/sで蒸着して、電子輸送層6を膜厚40nmとなるように形成した。この電子輸送層6の上に、フッ化リチウムを蒸着速度0.1Å/sで蒸着して、電子注入層7を膜厚0.5nmとなるように形成した。最後に、アルミニウムを膜厚150nmとなるように蒸着して陰極8を形成した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。
【0116】
実施例1の化合物(化合物1)を使用して作製した有機EL素子に電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光特性の測定結果を表1に示した。
【実施例11】
【0117】
実施例10における正孔阻止層5の材料を実施例2の化合物(化合物4)に代え、実施例10と同様の方法で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子に電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光特性の測定結果を表1に示した。
【実施例12】
【0118】
実施例10における正孔阻止層5の材料を実施例3の化合物(化合物7)に代え、実施例10と同様の方法で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子に電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光特性の測定結果を表1に示した。
【実施例13】
【0119】
実施例10における正孔阻止層5の材料を実施例4の化合物(化合物19)に代え、実施例10と同様の方法で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子に電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光特性の測定結果を表1に示した。
【実施例14】
【0120】
実施例10における正孔阻止層5の材料を実施例5の化合物(化合物6)に代え、実施例10と同様の方法で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子に電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光特性の測定結果を表1に示した。
【実施例15】
【0121】
実施例10における正孔阻止層5の材料を実施例6の化合物(化合物194)に代え、実施例10と同様の方法で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子に電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光特性の測定結果を表1に示した。
【実施例16】
【0122】
実施例10における正孔阻止層5及び電子輸送層6の材料を実施例1の化合物(化合物1)に代え、実施例10と同様の方法で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子に電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光特性の測定結果を表1に示した。
【実施例17】
【0123】
実施例10における正孔阻止層5及び電子輸送層6の材料を実施例2の化合物(化合物4)に代え、実施例10と同様の方法で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子に電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光特性の測定結果を表1に示した。
【実施例18】
【0124】
実施例10における正孔阻止層5及び電子輸送層6の材料を実施例3の化合物(化合物7)に代え、実施例10と同様の方法で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子に電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光特性の測定結果を表1に示した。
【実施例19】
【0125】
実施例10における正孔阻止層5及び電子輸送層6の材料を実施例5の化合物(化合物6)に代え、実施例10と同様の方法で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子に電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光特性の測定結果を表1に示した。
【実施例20】
【0126】
実施例10における正孔阻止層5及び電子輸送層6の材料を実施例6の化合物(化合物194)に代え、実施例10と同様の方法で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子に電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光特性の測定結果を表1に示した。
【0127】
[比較例1]
比較のために、実施例10における正孔阻止層5の材料をTPBiに代え、実施例10と同様の方法で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子に電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光特性の測定結果を表1に示した。
【0128】
【表1】
【0129】
表1に示す様に、電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光効率は、比較例1の12.4cd/Aに対して、実施例10(化合物1を正孔阻止層として使用)では12.5cd/A、実施例11(化合物4を正孔阻止層として使用)では16.3cd/A、実施例12(化合物7を正孔阻止層として使用)では19.2cd/A、実施例13(化合物19を正孔阻止層として使用)では12.9cd/A、実施例14(化合物6を正孔阻止層として使用)では23.3cd/A、実施例15(化合物194を正孔阻止層として使用)では22.5cd/A、実施例16(化合物1を正孔阻止層兼電子輸送層として使用)では20.1cd/A、実施例17(化合物4を正孔阻止層兼電子輸送層として使用)では20.5cd/A、実施例18(化合物7を正孔阻止層兼電子輸送層として使用)では16.5cd/A、実施例19(化合物6を正孔阻止層兼電子輸送層として使用)では19.2cd/A、実施例20(化合物194を正孔阻止層兼電子輸送層として使用)では26.9cd/A、と高効率化した。
【0130】
表1に示す様に、電流密度10mA/cmの電流を流したときの電力効率は、比較例1の4.3lm/Wに対して、実施例10では4.6lm/W、実施例11では6.7lm/W、実施例12では9.9lm/W、実施例13では5.3lm/W、実施例14では10.8lm/W、実施例15では10.7lm/W、実施例16では5.5lm/W、実施例17では6.5lm/W、実施例18では7.1lm/W、実施例19では6.8lm/W、実施例20では9.8lm/W、と高効率化した。
【0131】
これらの結果から明らかなように、本実施形態の化合物を用いた有機EL素子は、一般的な電子輸送材料として用いられているTPBiを用いた素子と比較して、発光効率や電力効率の向上を達成できることがわかった。
【0132】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本願は、2019年3月8日付で出願された日本国特許出願(特願2019-42267)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の末端に含窒素複素環を有する2つの芳香族置換基と異なる1つの芳香族置換基を有する3置換ベンゼン化合物は、電子の注入・輸送性能が良く、バンドギャップが広いため、有機EL素子用の化合物として優れている。該化合物を用いて有機EL素子を作製することにより、高い効率を得ることができると共に、耐久性を改善させることができる。例えば、家庭電化製品や照明の用途への展開が可能となった。
【符号の説明】
【0134】
1 ガラス基板
2 透明陽極
3 正孔輸送層
4 発光層
5 正孔阻止層
6 電子輸送層
7 電子注入層
8 陰極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7