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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】コマ玩具
(51)【国際特許分類】
   A63H 1/00 20190101AFI20240514BHJP
   A63H 1/02 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A63H1/00 F
A63H1/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022161502
(22)【出願日】2022-10-06
(65)【公開番号】P2024054985
(43)【公開日】2024-04-18
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(73)【特許権者】
【識別番号】591056846
【氏名又は名称】株式会社東京ユニーク
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂東 陽平
(72)【発明者】
【氏名】堀越 研次
(72)【発明者】
【氏名】村木 誠
(72)【発明者】
【氏名】前田 竹明
【審査官】柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特許第5793631(JP,B1)
【文献】特許第5959711(JP,B1)
【文献】ベイブレードバースト改造の基本|仕組みで考えるバーストされにくいパーツとは,BLADERS,2019年08月11日,https://bladers.hatenablog.com/entry/protect-burst,[online], 2023年1月6日検索
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00
1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上胴部と、中心に挿通孔が形成された下胴部と、交換可能で前記挿通孔への挿脱により着脱される複数の棒状軸を備え、
前記上胴部と前記下胴部とを結合解除位置で互いの中心線を合致させて軸方向から突き合わせ、前記下胴部を前記上胴部に対してコマ玩具の回転方向に相対回転させることで、前記上胴部と前記下胴部とが互いに直接結合され、外力によって前記下胴部が前記上胴部に対してコマ玩具の回転方向とは反対の方向に相対回転して前記結合解除位置に至ったときに前記上胴部と前記下胴部との結合が解除されるように構成されたコマ玩具であって、
前記下胴部は、輪体状に形成されるとともに、前記棒状軸を中心に回転可能に支持体に支持され、
前記下胴部の内周には、第1係合部が形成され、
前記支持体は、前記上胴部と前記下胴部とが結合した際に、前記上胴部の一部に嵌合し前記上胴部と一体的に回転するように構成され、前記上胴部と一体的に回転する部分である前記支持体には、半径方向に移動可能で、半径方向外側に前記第1係合部と係合する第2係合部が形成された可動部材が設けられ、
前記第1係合部と前記第2係合部とは、常態で前記上胴部と前記下胴部とを一体的に回転させ、外力によって前記下胴部が前記上胴部に対して前記反対の方向に相対回転する際には互いが摺動するように構成され、
前記可動部材は、装着された棒状軸の所定部位の軸径に応じて半径方向の内方への移動が制限されるように構成され、
前記棒状軸は、前記所定部位の軸径が異なり前記第1係合部と前記第2係合部との係合状態を変化させ得る他の棒状軸と、交換可能となっており、交換によって、摺動の際に生じる回転抵抗を変化させる、
ことを特徴とするコマ玩具。
【請求項2】
前記第1係合部及び前記第2係合部のうちの一方は凸部であり、他方は凹部である、ことを特徴とする請求項1に記載のコマ玩具。
【請求項3】
前記第1係合部及び前記第2係合部の双方は凸部である、ことを特徴とする請求項1に記載のコマ玩具。
【請求項4】
上胴部と、中心に挿通孔が形成された下胴部と、交換可能で前記挿通孔への挿脱により着脱される複数の棒状軸を備え、
前記上胴部と前記下胴部とを結合解除位置で互いの中心線を合致させて軸方向から突き合わせ、前記下胴部を前記上胴部に対してコマ玩具の回転方向に相対回転させることで、前記上胴部と前記下胴部とが互いに直接結合され、外力によって前記下胴部が前記上胴部に対してコマ玩具の回転方向とは反対の方向に相対回転して前記結合解除位置に至ったときに前記上胴部と前記下胴部との結合が解除されるように構成されたコマ玩具であって、
前記下胴部には、第1係合部が形成され、
前記棒状軸は、装着状態で前記上胴部の一部と嵌合して一体的に回転するように構成され、
前記棒状軸には第2係合部が形成され、
前記第1係合部と前記第2係合部とは、常態で前記上胴部と前記下胴部とを一体的に回転させ、外力によって前記下胴部が前記上胴部に対して前記反対の方向に相対回転する際には互いが摺動するように構成され、
前記棒状軸は、軸の外形が異なり前記第1係合部と前記第2係合部との係合状態を変化させ得る他の棒状軸と、交換可能となっており、交換によって、摺動の際に生じる回転抵抗を変化させる、
ことを特徴とするコマ玩具。
【請求項5】
前記棒状軸と前記他の棒状軸とには、前記第2係合部として括れ部が形成され、前記下胴部には、前記第1係合部として、前記括れ部に弾性力により嵌合する爪が設けられている、ことを特徴とする請求項4に記載のコマ玩具。
【請求項6】
さらに、前記棒状軸と前記他の棒状軸とは、交換によって、コマ玩具の回転特性を変更させる、ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のコマ玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコマ玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1結合部を有する胴部と、第2結合部を有する軸部とを備え、互いの中心線を合致させた軸部と胴部とを上下方向から突き合わせ、胴部を軸部に対してコマ玩具の回転方向に相対回転させることにより、第1結合部の上面と第2結合部の下面とを当接させて、軸部と胴部とを結合させるように構成されたコマ玩具が知られている(例えば特許文献1参照)。
このコマ玩具は、例えば、回転する2つのコマ玩具同士を衝突させて、先にコマ玩具が分解された側を負けとするいわゆるコマバトルに使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5959773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記コマ玩具では、コマ玩具同士を衝突させることにより、胴部を軸部に対してコマ玩具の回転方向とは反対の方向に相対回転させることにより、第1結合部の上面と第2結合部の下面との当接を解除させることにより、コマ玩具が分解される。
この場合の分解のしにくさは、胴部と軸部との間に生じる回転抵抗に依存する。そのため、胴部と軸部との間に回転抵抗を設けて分解のしにくさを調整している。
しかしながら、設けられる回転抵抗は固定的であり、回転抵抗を変化させるためには、未だ公知となった技術ではないが、第1結合部を有する胴部、又は、第2結合部を有する軸部を変えて摺接部の組み合わせを変更するしかなかった。この場合、回転抵抗の変更は大がかりなものとなる。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたもので、棒状の軸の交換により、簡単に分解のしにくさの調整が行えるコマ玩具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の手段は、
上胴部と、中心に挿通孔が形成された下胴部と、交換可能で前記挿通孔への挿脱により着脱される複数の棒状軸を備え、
前記上胴部と前記下胴部とを結合解除位置で互いの中心線を合致させて軸方向から突き合わせ、前記下胴部を前記上胴部に対してコマ玩具の回転方向に相対回転させることで、前記上胴部と前記下胴部とが互いに直接結合され、外力によって前記下胴部が前記上胴部に対してコマ玩具の回転方向とは反対の方向に相対回転して前記結合解除位置に至ったときに前記上胴部と前記下胴部との結合が解除されるように構成されたコマ玩具であって、
前記下胴部は、輪体状に形成されるとともに、前記棒状軸を中心に回転可能に支持体に支持され、
前記下胴部の内周には、第1係合部が形成され、
前記支持体は、前記上胴部と前記下胴部とが結合した際に、前記上胴部の一部に嵌合し前記上胴部と一体的に回転するように構成され、前記上胴部と一体的に回転する部分である前記支持体には、半径方向に移動可能で、半径方向外側に前記第1係合部と係合する第2係合部が形成された可動部材が設けられ、
前記第1係合部と前記第2係合部とは、常態で前記上胴部と前記下胴部とを一体的に回転させ、外力によって前記下胴部が前記上胴部に対して前記反対の方向に相対回転する際には互いが摺動するように構成され、
前記可動部材は、装着された棒状軸の所定部位の軸径に応じて半径方向の内方への移動が制限されるように構成され、
前記棒状軸は、前記所定部位の軸径が異なり前記第1係合部と前記第2係合部との係合状態を変化させ得る他の棒状軸と、交換可能となっており、交換によって、摺動の際に生じる回転抵抗を変化させる、
ことを特徴とする。
【0007】
第2の手段は、第1の手段であって、前記第1係合部及び前記第2係合部のうちの一方は凸部であり、他方は凹部である、ことを特徴とする。
【0008】
第3の手段は、第1の手段であって、前記第1係合部及び前記第2係合部の双方は凸部である、ことを特徴とする。
【0009】
第4の手段は、
上胴部と、中心に挿通孔が形成された下胴部と、交換可能で前記挿通孔への挿脱により着脱される複数の棒状軸を備え、
前記上胴部と前記下胴部とを結合解除位置で互いの中心線を合致させて軸方向から突き合わせ、前記下胴部を前記上胴部に対してコマ玩具の回転方向に相対回転させることで、前記上胴部と前記下胴部とが互いに直接結合され、外力によって前記下胴部が前記上胴部に対してコマ玩具の回転方向とは反対の方向に相対回転して前記結合解除位置に至ったときに前記上胴部と前記下胴部との結合が解除されるように構成されたコマ玩具であって、
前記下胴部には、第1係合部が形成され、
前記棒状軸は、装着状態で前記上胴部の一部と嵌合して一体的に回転するように構成され、前記棒状軸には第2係合部が形成され、
前記第1係合部と前記第2係合部とは、常態で前記上胴部と前記下胴部とを一体的に回転させ、外力によって前記下胴部が前記上胴部に対して前記反対の方向に相対回転する際には互いが摺動するように構成され、
前記棒状軸は、軸の外形が異なり前記第1係合部と前記第2係合部との係合状態を変化させ得る他の棒状軸と、交換可能となっており、交換によって、摺動の際に生じる回転抵抗を変化させる、ことを特徴とする。
【0010】
第5の手段は、第4の手段であって、前記棒状軸と前記他の棒状軸とには、前記第2係合部として括れ部が形成され、前記下胴部には、前記第1係合部として、前記括れ部に弾性力により嵌合する爪が設けられている、ことを特徴とする。
【0011】
第6の手段は、第1~第5のいずれかの手段であって、さらに、前記棒状軸と前記他の棒状軸とは、交換によって、コマ玩具の回転特性を変更させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、棒状軸の交換によって、簡単に、分解のしにくさ(回転抵抗乃至は回転かたさ)を変化させることができる。
また、爪と括れ部を係合させるものでは、棒状軸の保持も同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係るコマ玩具の斜視図である。
図2】コマバトル時のコマ玩具の分解の様子を示した斜視図である。
図3】コマ玩具の分解斜視図である。
図4】上胴部を下方から見た斜視図である。
図5】下胴部組立体の分解斜視図である。
図6】上板の斜視図である。
図7】上胴部及び上板を取り除いた状態のコマ玩具の平面図である。
図8】軸及びその周辺を示す斜視図である。
図9】上胴部を取り除いた状態のコマ玩具の平面図である。
図10】上胴部を取り除いた状態のコマ玩具の平面図である。
図11】コマ発射装置を示す斜視図である。
図12】バトルスタジアムの外観を示す斜視図である。
図13】軸の種類を示した図である。
図14】可動部材の凸部と輪状体の凹部との嵌合の度合いを示した平面図である。
図15】下胴部組立体の変形例の正面図である。
図16図15の可動部に取り付けられる軸の例を示した正面図である。
図17】第2実施形態に係るコマ玩具の分解斜視図である。
図18】コマ玩具の上胴部を下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《第1実施形態》
図1は、実施形態のコマ玩具100の斜視図、図2は、コマバトル時のコマ玩具100の分解の様子を示した斜視図である。
このコマ玩具100は、コマ玩具100同士を衝突させて戦わせるコマバトルに使用される。このコマ玩具100は、上胴部11及び下胴部組立体12を含んで構成される胴部10と、棒状の軸(棒状軸)20とを備えている。そして、このコマ玩具100は、図2に示すように、コマバトルの結果として、上胴部11と、下胴部組立体12及び軸20との2つに分解可能となっている。また、軸20の交換により、コマバトル時のコマ玩具100の分解しにくさの程度(回転抵抗)を変更させることができる。
【0015】
《コマ玩具100》
図3は、コマ玩具100の分解斜視図である。
コマ玩具100は、胴部10及び軸20を備え、概ね、ブラスチックで構成されている。
〈上胴部11〉
図4は、上胴部11を下方から見た斜視図である。
上胴部11は、特に限定はされないが、複数の部品を組み立てて構成された複合体となっている。上胴部11は、例えば金属製のフライホイールを含んでいる。
上胴部11の上面は、特に限定はされないが、フラットとなっている。この上面の外周内側には、軸20と同心的に延在する孤状溝11aが円周方向に2個所定間隔で形成されている。ただし、個数は2個に限定されない。この孤状溝11aは、コマ玩具100を回転付勢する際に使用される。
上胴部11の下側中央には、軸20の軸頭21を嵌合するための例えば多角形の嵌合穴11bが形成されている。嵌合穴11bは多角形に限定されず、円形の穴であってもよい。この嵌合穴11bの形成部分(円筒部分)は、上胴部11に対して軸20を中心に回転可能となっている。さらに、上胴部11の下側には、嵌合穴11bを取り囲むように蝶形の嵌合壁11dが立設されている。嵌合壁11dは、上板14(図5参照)の少なくとも一部が嵌合される。この嵌合壁11dの外側には、上胴部11を下胴部組立体12と結合させる際に使用される結合片11eが形成されている。
この上胴部11は、時計回り回転用となっているが、結合片11eの形成位置を変えることにより、反時計回り回転用とすることができる。
【0016】
〈下胴部組立体12〉
図5は、下胴部組立体12の分解斜視図である。
下胴部組立体12は、下胴部を構成する輪状体13と、輪状体13を上下から挟持する上板14及び下板15を備えている。上板14及び下板15は、輪状体13の支持体を構成し、軸20を中心に当該輪状体13を回転可能に支持する。上板14及び下板15は、輪状体13の支持体を構成し、常態で上胴部11と一体回転する。
【0017】
輪状体13は平面視6角形となっている。なお、輪状体13の形状は、これに限定されず、
コマバトルの際に外部衝撃を受け得る形状であれば足り、外周には起伏が設けられていることが好ましい。
輪状体13の上面には、中心線を挟んで対峙する2つの箇所に、円周方向に沿って弧状に延在する起立壁13aが設けられ、各起立壁13aには庇状に内方に張り出す結合片13bL、13bRが形成されている。
結合片13bL、13bRの間には直立する仕切り13cが形成されている。この結合片13bL、13bRは、上胴部11の結合片11eに選択的に係合する。すなわち、結合片13bLは、コマ玩具100を反時計回りに回転させる際に使用される結合片であり、結合片13bRは、コマ玩具100を時計回りに回転させる際に使用される結合片である。この実施形態の下胴部組立体12は、両回転用〈時計回り回転用及び反時計回り回転用〉のものとなっている。すなわち、上胴部11を取り換えることで、コマ玩具100を時計回り回転用や反時計回り回転用に変更することができる。
また、輪状体13の内周には、後述の可動部材16の平面視半月状の凸部(第2係合部)16bが嵌まる半月状の凹部(第1係合部)13d、13eが隣設されている。凹部13d、13eの間には凸部13fが形成されている。ここで、凹部13dは、時計回り回転用のコマ玩具100を組み立てた状態で後述の凸部16bに嵌合され、凹部13eは、反時計回り回転用のコマ玩具100を組み立てた状態で後述の凸部16bに嵌合される。
【0018】
図6は、上板14の斜視図である。
上板14は、軸20が挿通される挿通孔14aが形成された平面視円形の芯体14bと、芯体14bから互いに離反する方向に張り出す平面視扇状の張出し部14c、14cと、を有している。
芯体14bの下側には、中心線を挟んで対峙する2つの箇所に、それぞれ、下方に向けて突出し先端に内向きの爪14dが形成された弾性片14eが設けられている。2つの弾性片14e、14eは、弾性によって、芯体14bの半径方向に窄んだり、膨らんだりする。
一方、張出し部14cには座繰り穴14fが形成されている。各張出し部14cは、輪状体13の2つの起立壁13a、13aの間に配置される。各張出し部14cは、軸20を中心として、2つの起立壁13a、13aの間で動くことができる。
【0019】
下板15の上面には、輪状体13の内側に嵌まり合い輪状体13の回転を摺接案内する案内壁15aが立設されている。案内壁15aの内側には軸20の挿通孔15bが形成されている。また、下板15の上面には、中心線を挟んで対峙する2つの箇所に、雌ねじ付きボス15c、15dが立設されている。
図7は、上胴部11及び上板14を取り除いた状態のコマ玩具100の平面図である。
一方のボス15cは平面視矩形の突起となっており、このボス15cには平面視矩形枠状で中空の可動部材16が外嵌されている。可動部材16は、特に限定はされないが、例えばPOM(Poly Oxy Methylene)によって構成されている。中空部分の半径方向の長さ寸法は、ボス15cの半径方向の長さ寸法よりも大きく、可動部材16は半径方向に所定範囲で動作可能となっている。可動部材16の内側には弧状部16aが形成されており、軸20の外周に当接可能となっている。一方、可動部材16の外側には平面視半月状の凸部16bが形成されている。凸部16bは、輪状体13の下板15に対する回転位置により、輪状体13の内周の凹部13d、13eのいずれか1つに嵌まる。凹部13d、13eの深さ寸法は、可動部材16が半径方向内側に動作したときでも、凸部16bが凹部13d、13eから抜けない程度に設定されている。ただし、輪状体13と支持体との間に所定の大きさの外力が作用したときには、互いの摺接によって輪状体13が弾性変形して凸部16bが凹部13d、13eから抜け出して(凸部13fを乗り越えて)輪状体13と支持体とが相対回転する。
なお、雌ねじ付きボス15c、15dには、輪状体13を上板14と下板15で挟持した状態で、上板14の座繰り穴14fを通した雄ねじ14gが螺合される。
【0020】
《軸20》
図8は、軸20及びその周辺を示す斜視図である。なお、同図においては輪状体13及び下板15が省略されている。
軸20は、棒状に構成されている。軸20の軸頭21(図3参照)は、上胴部11の嵌合穴11bと相補的形状、つまり多角形となっている。この軸頭21は、上胴部11の嵌合穴11bに嵌合し、これにより、軸20は嵌合穴11bの形成部分(嵌合部)と一体的に回転可能となる。
また、軸頭21の下は、可動部材16の弧状部16aが当接可能な被当接部22となっている。これにより、輪状体13と軸20との間に回転抵抗が形成される。
さらに、被当接部22の下には、括れ部23が形成され、この括れ部23には、上板14の爪14dが係合される。これにより、爪14dで軸20が摘み持たれ保持される。括れ部23には歯車26が形成され、この歯車26に爪14dが噛合する。
また、括れ部23の下には、全周に亘って半径方向外方に張り出す鍔部24が形成されている。
この鍔部24は、軸20を下胴部組立体12の挿通孔15b、14aに下方から挿入したとき、下板15の下面に当たる。この鍔部24の上に、上方に向けて窄まるテーパ部が設けられ、これによって、下板15の挿通孔15bに軸20を挿入したときに、確実に、軸20が中心に保持されるようにしてもよい。
また、鍔部24の下には、後述のバトルスタジアム90の歯93aと噛み合う歯車25が形成されている。
【0021】
《組立て方法》
図9及び図10は、上胴部11を取り除いた状態のコマ玩具100の平面図である。
先ず、上胴部11が時計回り回転用であるため、上板14と輪状体13とを相対回転させて上板14の「R」の文字側の三角マークRMを輪状体13の三角マークMに合わせる(図9)。このとき、可動部材16の凸部16bが輪状体13の内周の凹部13eに嵌まる。
【0022】
この状態で、上板14を上胴部11の嵌合壁11dに合致させるようにし、上胴部11と下胴部組立体12とを突き合わせる。これにより、上板14の一部が嵌合壁11dに嵌まる。
この状態で、上胴部11に対して輪状体13を時計回りに相対回転させる。このとき、上板14が上胴部11と共に輪状体13に対して反時計回りに相対回転し、上板14の三角マークLMが輪状体13の三角マークMと合致する(図10)。これにより、輪状体13の結合片13bRの下面が上胴部11の結合片11eの上面と当接して、下胴部組立体12と上胴部11とが結合される。また、可動部材16の凸部16bが凸部13fを乗り越えて凹部13dに嵌まる。
【0023】
その後、軸20を胴部12に下方から挿入し軸頭21を嵌合穴11bに嵌める。これにより、軸20が爪14bで摘まみ持たれるとともに、歯車26に爪14dが噛合する。ただし、軸20を下方に引くことにより、下胴部組立体12から簡単に取り外すことができる。
以上により、コマ玩具100が組み立てられる。
なお、コマ玩具100が反時計回りの回転用の場合には、最初に、上板14の「L」の文字側の三角マークLMを輪状体13の三角マークMに合わせて下胴部組立体12を上胴部11に結合させる。この場合の組立時の相対回転方向は、上述の場合とは反対となる。
【0024】
《コマ玩具100の分解》
コマバトルにおいて、相手方のコマ玩具が輪状体13に当たり輪状体13にコマ玩具100の回転方向とは反対の方向への外力が作用すると、輪状体13の回転が止まる一方で上胴部11及び支持体が慣性力によりそのまま回転し続ける。これにより、輪状体13が支持体に対して反時計回りに相対回転し、摺接によって凸部16bが輪状体13の内周の凹部13dから外れて(凸部13fを乗り越えて)凹部13eに嵌まる。
この位置で、輪状体13の結合片13bRが、上胴部11の結合片11bから外れて、上胴部11と、下胴部組立体12及び軸20との2つに分解される。
なお、コマ玩具100が反時計回りの回転用の場合には、分解時の相対回転方向は、上述の場合とは反対となる。
【0025】
《コマ発射装置80》
図11は、コマ発射装置80を示す斜視図である。
コマ発射装置80は、回転付勢するコマ玩具100を保持するコマホルダ81を備える。コマホルダ81には、コマ玩具100の弧状溝11aに対応して差込み片81aが同数設けられている。差込み片81aには、回転付勢方向に突出する係止部81bが形成されている。そして、コマ玩具100の弧状溝11aに差込み片81aを差し込んだ後、コマ玩具100をコマホルダ81に対してコマ玩具100の回転付勢方向とは反対の方向に相対回転させ、弧状溝11aの一端部の縁壁下に係止部81bを潜り込ませることにより、コマ玩具100はコマホルダ81に取り付けられる。
【0026】
コマ発射装置80には、ハンドル82が設けられており、このハンドル82には紐(図示せず)の一端が取り付けられている。紐は、ゼンマイの復元力によって入力回転体(図示せず)に巻回されており、ハンドル82を操作して紐を引き出すことにより、入力回転体に回転力が入力される。入力回転体は、コマホルダ81に連結されており、入力回転体の回転によって回転される。
【0027】
このコマ発射装置80によれば、コマホルダ81に取り付けられたコマ玩具100を、ハンドル82の操作によってコマホルダ81を回転させることで回転付勢する。そして、ハンドル82の操作を止めると、コマホルダ81の回転が停止する一方でコマ玩具100は慣性力によりそのまま回転し続けるので、弧状溝11aの一端部の縁壁下から係止部81bが外れるとともに、差込み片81aの背の傾斜面との摺接で押し出され、コマ玩具100が発射される。
【0028】
なお、ここではコマホルダ81に連結された入力回転体を紐により回転させることとしたが、コマホルダ81に連結された入力回転体を歯車とし、当該歯車をラックが形成されたベルト部を有するラックベルトによって回転させるようにしてもよい。
【0029】
《バトルスタジアム90》
図12はバトルスタジアム90の外観を示す斜視図である。
バトルスタジアム90のフィールド91の底面は凹曲面となっており、フィールド91は、中央が開口する透明カバー92によって覆われている。フィールド91には、フィールド91内を動き回るコマ玩具100の軸20の歯車25に噛合する歯93aが形成された案内部93が配設されている。
このバトルスタジアム90によれば、コマ玩具100の軸20の歯車25と歯93aとを噛合させることにより、コマ玩具100を案内部93に対して転動させて、コマ玩具100の動き周りの速度を増大させることができる。
【0030】
《軸20の種類》
軸20としては、例えば図13(A)~図13(D)に示す4種の軸20A~20Dが用意されている。
【0031】
1.軸20A
軸20Aは、軸20と同様のものである。この軸20Aでは、被当接部22Aの軸径が軸頭21Aと同径(大径)となっている。この軸20Aによれば、可動部材16の内側の弧状部16aが軸20Aの被当接部22Aに当接した状態では、図14(A)に示すように、凸部16bと凹部13dとが深く嵌合し回転抵抗が大きくなる。したがって、輪状体13が上胴部11や支持体に対して輪状体13が回転し難くなる。その結果、コマ玩具100が分解されにくい。
また、括れ部23A内に歯車26Aが形成されている。この歯車26Aは、爪14bと噛み合うので、軸20が上胴部11と一体的に回転し易くなる。その結果、歯車25Aが案内部93の歯93aと噛み合ったときに、上胴部11の回転力が案内部93に伝わり易く、歯93aを強く蹴るので動きが加速され易くなる。
また、軸20Aの先端はフラットとなっているため、大きく動き回り易い。
【0032】
2.軸20B
軸20Bは、被当接部22Bの軸径が中径となっている。この軸20Bによれば、可動部材16の内側の弧状部16aが軸20Bの被当接部22Bに当接した状態では、図14(B)に示すように、凸部16bと凹部13dとが中程度に嵌合することとなる。したがって、上胴部11や支持体に対して輪状体13が、軸20Aの場合に比べて、回転抵抗が小さくなり、少し回転し易くなる。
また、括れ部23B内に歯車が存在しない。したがって、括れ部23bと爪16bとの間で滑りが生じるので、上記軸20Aの場合に比べて、上胴部11の回転力が案内部93に伝わり難い一方で、案内部93によって弾かれ難く、案内部93に沿って移動し易くなる。
また、軸20Bの先端の径は軸20Aよりも小さく、テーパが形成されセミフラットとなっているため、コマ玩具100が軸20Aほどではないが動き回る。
【0033】
3.軸20C
軸20Cは、被当接部22Cの軸径が小径となっている。この軸20Cによれば、可動部材16の内側の弧状部16aが軸20Cの被当接部22Cに当接した状態では、凸部16bと凹部13dとが軸20Bに比べてさらに浅く嵌合することとなる。したがって、上胴部11や支持体に対して輪状体13が軸20Bの場合よりもさらに回転し易くなる。
また、括れ部23C内に歯車が存在しない。したがって、括れ部23bと爪16bとの間で滑りが生じるので、上記軸20Aの場合に比べて、上胴部11の回転が案内部93に伝わり難い一方で、案内部93によって弾かれ難く、案内部93に沿って移動し易くなる。
また、軸20Cの先端には小突起が形成されている。その結果、コマ玩具100が軸20Aのときより長く回る。また、軸20Cの小突起が形成された面がフラットになっているので、コマ玩具100が傾いても倒れにくい。
【0034】
4.軸20D
軸20Dは、被当接部22Dの軸径が小径となっている。この軸20Dによれば、可動部材16の内側の弧状部16aが軸20Dの被当接部22Dに当接した状態では、凸部16bと凹部13dとが軸20Bに比べてさらに浅く嵌合することとなる。したがって、上胴部11や支持体に対して輪状体13が軸20Bの場合よりもさらに回転し易くなる。
また、括れ部23D内に歯車が存在しない。したがって、括れ部23bと爪16bとの間で滑りが生じるので、上記軸20Aの場合に比べて、上胴部11の回転が案内部93に伝わり難い一方で、案内部93によって弾かれ難く、案内部93に沿って移動し易くなる。
また、軸20Dの先端は半球状となっている。その結果、コマ玩具100が軸20Aほどではないがほどよく動き回る。
【0035】
《下胴部組立体12及び軸20の変形例》
この下胴部組立体12Aは、上記下胴部組立体12よりも厚さが大きくなっている。その他の点で、下胴部組立体12Aは、上記下胴部組立体12と同じ構成となっている。
この下胴部組立体12Aに取り付けられる軸20Eが図16に示されている。この軸20Eは背丈が上記軸20A~20Dに比べて高くなっている。
軸20Eは、被当接部22Eが小径となっている。したがって、輪状体13と軸20Eとの間に可動部材16が緩く嵌り合う。その結果、軸20Bの場合よりもさらに、軸20Cに対して輪状体13が回転し易くなる。
また、括れ部23E内に歯車が存在しない。
さらに、軸20Eの軸先が錐状に尖っている。
その結果、コマ玩具100は、摩擦抵抗が少なく長時間回転が可能である。
なお、このコマ玩具100にあっても、所定部位の軸径や形が異なる軸が複数用意されていることが好ましい。
【0036】
《第2実施形態》
図17は、第2実施形態に係るコマ玩具200の分解斜視図、図18は、上胴部11を下方から見た斜視図である。
このコマ玩具200は、第1実施形態に係るコマ玩具100の輪状体13、上板14及び下板15が一体となって下胴部12Bそのものを構成し、下胴部12Bの内部には可動部材16を有しない構成となっている。また、このコマ玩具200は、第1実施形態に係るコマ玩具100の上胴部11の下側に嵌合壁11dが設けられていない構成となっている。さらに、このコマ玩具200は、上記第1実施形態に係るコマ玩具100の上胴部11に形成された嵌合穴11bの形成部分(嵌合部)が上胴部11に固定されている点でも、第1実施形態に係るコマ玩具100と異なっている。
なお、以上の点以外は、コマ玩具200は第1実施形態に係るコマ玩具100と同じであり、図示は適宜省略するものとする。そして、図示されていない要素については、第1実施形態に係るコマ玩具100の対応要素と同一の名称及び符号を用いて説明するものとする。
【0037】
このコマ玩具200によれば、常態で上胴部11と軸20とが一体的に回転し、コマ玩具同士の衝突により下胴部12Bに外力が作用し、下胴部12Bが上胴部11及び軸20に対してコマ玩具200の回転方向とは反対の方向に相対回転する。この際、上板14における弾性片14eの爪(第1係合部)14dが軸20の括れ部23の歯車26に噛合しているので、爪14dと歯車26の歯(第2係合部)とが摺動し回転抵抗を生じさせる。括れ部23に歯車26が形成されていない軸、例えば図13(B)~(D)の軸20B~20Dを使用する場合には、爪14dと歯車26の歯との摺動の場合に比べて、小さい回転抵抗を生じる。つまり、軸の交換によって、上胴部11と下胴部12Bとの分解のしにくさの調整が簡単に行えることになる。
【0038】
《変形例》
上記、実施形態では、軸20等を下胴部組立体12や下胴部12Bの下方から挿脱するようにしたが、上胴部11と下胴部組立体12や下胴部12Bとが結合していない状態で、下胴部組立体12や下胴部12Bの上方から挿脱するように構成し、上胴部11の結合によって軸20等が固定されるようにしてもよい。
【0039】
また、案内部93の歯93aに噛合する歯車25を形成したが、案内部93に歯93aを形成しない場合、摩擦抵抗の大きい材料で軸20等或いはその表層を形成したり、軸20等にローラを設けたりしてもよい。
【0040】
さらに、上記実施形態では、歯車25を軸20等に固定して設けたが、軸20等に対して空転可能に設けてもよい。
【0041】
また、上記第1実施形態では、可動部材16の弧状部16aが各被当接部22等に当接することとしたが、可動部材16の弧状部16aが当接しない程度に所定部分が小径の軸20等が含まれていてもよい。この場合、可動部材16の半径方向内方への移動がボス15cへの突き当たりによって規制され、それにより、輪状体13と支持体との相対回転のかたさ(回転抵抗)を変えることができるように構成してもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、軸20等を保持するのに爪14dを持つ弾性片14eを設けているが、先端が括れ部23等に係合する爪部材をコイルばねで半径方向内方に付勢する構造としてもよい。
【0043】
さらに、上記第1実施形態では、可動部材16に凸部16b、輪状体13に凹部13d、13eを設けたが、反対であってもよい。また、一度機に嵌合する凸部と凹部の数も問わない。さらには、凹部が連続して設けられ、輪状体13と支持体との相対回転の際に凸部が次々に隣り合う凹部に嵌合するような構造であってもよい。要は、可動部材16に輪状体13との間に回転抵抗が構成されることである。
【0044】
また、上記第1実施形態では、可動部材16に凸部16b、輪状体13に凹部13d、13eを設けたが、可動部材16及び輪状体13の当接面の少なくとも一方の面を、弾性材から構成される摩擦係数の大きいもので形成することとしてもよい。
【0045】
同様に、上記実施形態では、括れ部23及び爪14dの当接面の少なくとも一方の面を、摩擦係数の大きいもので形成することとしてもよい。
【0046】
また、上記第1実施形態では、両回転に適応するように、可動部材16に凸部16b、輪状体13に凹部13d、13eを設けたが、時計回り回転用又は反時計回り回転のいずれかのコマ玩具100の場合には、コマ玩具100の回転時に互いに係合する凸部が1つあれば足り、凸部同士の係合が解除されたときに、輪状体13と支持体との相対回転を許容するものであればよい。
【0047】
また、上記第1実施形態では、軸20等が上胴部11に対して相対回転可能に構成したが、軸20等の軸頭21が嵌合する嵌合穴11bの形成部分を上胴部11に固定し、軸20等が上胴部11に対して一体的に回転するように構成してもよい。この場合には、括れ部23等に歯車26等を設ける必要はない。
【0048】
また、上記第1実施形態では、軸20の軸頭21を、上胴部11の嵌合穴11bと相補的形状としたが、軸頭21と嵌合穴11bとは相補的形状となっていなくてもよい。つまり、軸頭21と嵌合穴11bとが嵌合し、軸20をコマ玩具100の中心に保持できるものであれば足りる。
【0049】
また、上記第1実施形態では、可動部材16がPOM(Poly Oxy Methylene)によって構成され、輪状体13が弾性変形して凸部16bが凹部13d、13eから抜け出す構造を説明したが、反対に、可動部材16を弾性材で構成して、可動部材16が弾性変形する構造や、双方が弾性変形して、凸部16bが凹部13d、13eから抜け出す構造としてもよい。
【0050】
さらに、上記実施形態では、軸20の括れ部23と爪14dとの間に回転抵抗を形成するようにしたが、軸20の他の箇所と下胴部組立体12や下胴部12Bとの間に、軸20の交換によって回転抵抗を変化させる部分が存在すればよい。
【0051】
以上、変形例について説明したが、これらは、互いに矛盾しない範囲で、適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
10 胴部
11 上胴部
11a 孤状溝
11b 嵌合穴
11d 嵌合壁
11e 結合片
12 下胴部組立体
12B 下胴部
13 輪状体
13a 起立壁
13bL、13bR 結合片
13d、13e 凹部
14b 爪
14e 弾性片
15 下板
16 可動部材
16b 凸部
20 軸
100 コマ玩具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図16
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図18