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特許7487896生体情報取得方法、生体情報取得モデル学習方法、装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】生体情報取得方法、生体情報取得モデル学習方法、装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20240514BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20240514BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G06N20/00 130
A61B5/0245 100C
A61B5/11 100
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022177523
(22)【出願日】2022-11-04
(62)【分割の表示】P 2018178768の分割
【原出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2023017923
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大西 克己
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光伸
【審査官】宮司 卓佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-077461(JP,A)
【文献】特開2003-079584(JP,A)
【文献】特開2016-122269(JP,A)
【文献】特開2015-16215(JP,A)
【文献】特開平5-95934(JP,A)
【文献】大保 武慶 ほか,超高感度振動センサを用いた浴槽内における生体情報計測システム,システム制御情報学会論文誌,日本,一般社団法人システム制御情報学会,2017年07月,第30巻 第7号,263-272頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 20/00
A61B 5/0245
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習用の被験者の計測情報と学習用の被験者の状態を表す生体情報との組み合わせを表す学習用データを生成する際に、学習用の生体情報の波高値が予め定められた閾値以上である場合には、学習用の生体情報の当該箇所にドリフト成分が含まれていると判定し、学習用の被験者の生体情報のうちのドリフト成分を補正し、学習用の前記計測情報と補正された学習用の前記生体情報との組み合わせを前記学習用データとして生成するステップと、
生成された前記学習用データを取得するステップと、
取得された前記学習用データに基づいて、前記計測情報から前記生体情報を取得するための学習済みモデルを取得するステップと、
を含む処理をコンピュータが実行する生体情報取得モデル学習方法。
【請求項2】
学習用の被験者の計測情報と学習用の被験者の状態を表す生体情報との組み合わせを表す学習用データを生成する際に、学習用の生体情報の波高値が予め定められた範囲内である時間が所定時間以上継続している場合には、学習用の生体情報の当該箇所に未計測の領域が含まれていると判定し、学習用の被験者の生体情報のうちの未計測の領域を除外し、学習用の前記計測情報と前記未計測の領域が除外された学習用の前記生体情報との組み合わせを前記学習用データとして生成するステップと、
生成された前記学習用データを取得するステップと、
取得された前記学習用データに基づいて、前記計測情報から前記生体情報を取得するための学習済みモデルを取得するステップと、
を含む処理をコンピュータが実行する生体情報取得モデル学習方法。
【請求項3】
被験者から得られる計測情報を取得するステップと、
取得された前記計測情報を、請求項1に記載の生体情報取得モデル学習方法によって予め学習された学習済みモデルへ入力して、前記被験者の前記生体情報を取得するステップと、
を含む処理をコンピュータが実行する生体情報取得方法。
【請求項4】
前記学習済みモデルは、学習用の前記計測情報と学習用の前記生体情報との組み合わせを表す学習用データに基づき予め学習されたニューラルネットワークである、
請求項3に記載の生体情報取得方法。
【請求項5】
前記計測情報は、前記被験者に接触している圧電素子から得られる電圧値を表す圧電情報であり、
前記生体情報は、前記被験者の心拍の状態を表す心拍情報である、
請求項3又は請求項4に記載の生体情報取得方法。
【請求項6】
前記圧電素子は、前記被験者が着座する椅子に設置される圧電素子である、
請求項5に記載の生体情報取得方法。
【請求項7】
被験者から得られる計測情報を取得するステップと、
取得された前記計測情報を、請求項2に記載の生体情報取得モデル学習方法によって予め学習された学習済みモデルへ入力して、前記被験者の前記生体情報を取得するステップと、
を含む処理をコンピュータが実行する生体情報取得方法。
【請求項8】
前記学習済みモデルは、学習用の前記計測情報と学習用の前記生体情報との組み合わせを表す学習用データに基づき予め学習されたニューラルネットワークである、
請求項7に記載の生体情報取得方法。
【請求項9】
前記計測情報は、前記被験者に接触している圧電素子から得られる電圧値を表す圧電情報であり、
前記生体情報は、前記被験者の心拍の状態を表す心拍情報である、
請求項7又は請求項8に記載の生体情報取得方法。
【請求項10】
前記圧電素子は、前記被験者が着座する椅子に設置される圧電素子である、
請求項9に記載の生体情報取得方法。
【請求項11】
学習用の被験者の計測情報と学習用の被験者の状態を表す生体情報との組み合わせを表す学習用データを生成する際に、学習用の生体情報の波高値が予め定められた閾値以上である場合には、学習用の生体情報の当該箇所にドリフト成分が含まれていると判定し、学習用の被験者の生体情報のうちのドリフト成分を補正し、学習用の前記計測情報と補正された学習用の前記生体情報との組み合わせを前記学習用データとして生成する学習用データ生成部と、
前記学習用データ生成部によって生成された前記学習用データを取得する学習用データ取得部と、
前記学習用データ取得部によって取得された前記学習用データに基づいて、前記計測情報から前記生体情報を取得するための学習済みモデルを取得する学習部と、
を含む生体情報取得モデル学習装置。
【請求項12】
学習用の被験者の計測情報と学習用の被験者の状態を表す生体情報との組み合わせを表す学習用データを生成する際に、学習用の生体情報の波高値が予め定められた範囲内である時間が所定時間以上継続している場合には、学習用の生体情報の当該箇所に未計測の領域が含まれていると判定し、学習用の被験者の生体情報のうちの未計測の領域を除外し、学習用の前記計測情報と前記未計測の領域が除外された学習用の前記生体情報との組み合わせを前記学習用データとして生成する学習用データ生成部と、
前記学習用データ生成部によって生成された前記学習用データを取得する学習用データ取得部と、
前記学習用データ取得部によって取得された前記学習用データに基づいて、前記計測情報から前記生体情報を取得するための学習済みモデルを取得する学習部と、
を含む生体情報取得モデル学習装置。
【請求項13】
被験者の計測情報を取得する計測情報取得部と、
前記計測情報取得部によって取得された前記計測情報を、請求項11に記載の生体情報取得モデル学習装置によって予め学習された学習済みモデルへ入力して、前記被験者の前記生体情報を取得する生体情報取得部と、
を含む生体情報取得装置。
【請求項14】
被験者の計測情報を取得する計測情報取得部と、
前記計測情報取得部によって取得された前記計測情報を、請求項12に記載の生体情報取得モデル学習装置によって予め学習された学習済みモデルへ入力して、前記被験者の前記生体情報を取得する生体情報取得部と、
を含む生体情報取得装置。
【請求項15】
コンピュータを
学習用の被験者の計測情報と学習用の被験者の状態を表す生体情報との組み合わせを表す学習用データを生成する際に、学習用の生体情報の波高値が予め定められた閾値以上である場合には、学習用の生体情報の当該箇所にドリフト成分が含まれていると判定し、学習用の被験者の生体情報のうちのドリフト成分を補正し、学習用の前記計測情報と補正された学習用の前記生体情報との組み合わせを前記学習用データとして生成する学習用データ生成部、
前記学習用データ生成部によって生成された前記学習用データを取得する学習用データ取得部、及び
前記学習用データ取得部によって取得された前記学習用データに基づいて、前記計測情報から前記生体情報を取得するための学習済みモデルを取得する学習部
として機能させるためのプログラム。
【請求項16】
コンピュータを
学習用の被験者の計測情報と学習用の被験者の状態を表す生体情報との組み合わせを表す学習用データを生成する際に、学習用の生体情報の波高値が予め定められた範囲内である時間が所定時間以上継続している場合には、学習用の生体情報の当該箇所に未計測の領域が含まれていると判定し、学習用の被験者の生体情報のうちの未計測の領域を除外し、学習用の前記計測情報と前記未計測の領域が除外された学習用の前記生体情報との組み合わせを前記学習用データとして生成する学習用データ生成部、
前記学習用データ生成部によって生成された前記学習用データを取得する学習用データ取得部、及び
前記学習用データ取得部によって取得された前記学習用データに基づいて、前記計測情報から前記生体情報を取得するための学習済みモデルを取得する学習部
として機能させるためのプログラム。
【請求項17】
コンピュータを
被験者の計測情報を取得する計測情報取得部、及び
前記計測情報取得部によって取得された前記計測情報を、請求項15に記載のプログラムによって予め学習された学習済みモデルへ入力して、前記被験者の前記生体情報を取得する生体情報取得部
として機能させるためのプログラム。
【請求項18】
コンピュータを
被験者の計測情報を取得する計測情報取得部、及び
前記計測情報取得部によって取得された前記計測情報を、請求項16に記載のプログラムによって予め学習された学習済みモデルへ入力して、前記被験者の前記生体情報を取得する生体情報取得部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体情報取得方法、生体情報取得モデル学習方法、装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘリカルキラル高分子を含む圧電体を、センサー、アクチュエータ等の圧電デバイスへ応用をすることが検討されている。このような圧電デバイスには、フィルム形状の圧電体が用いられている。
【0003】
上記圧電体におけるヘリカルキラル高分子として、ポリペプチド、ポリ乳酸系高分子等の光学活性を有する高分子を用いることが着目されている。中でも、ポリ乳酸系高分子は、機械的な延伸操作のみで圧電性を発現することが知られている。ポリ乳酸系高分子を用いた圧電体においては、ポーリング処理が不要であり、また、圧電性が数年にわたり減少しないことが知られている。
【0004】
例えば、ポリ乳酸系高分子を含む圧電体として、圧電定数d14が大きく、透明性に優れる圧電体が報告されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
また、最近、圧電性を有する材料を、導体に被覆して利用する試みもなされている。例えば、中心から外側に向って順に同軸状に配置された中心導体、圧電材料層、外側導体及び外被から構成される、ピエゾケーブルが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、圧電性高分子からなる繊維を導電性繊維に被覆してなる圧電単位が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4934235号公報
【文献】国際公開第2010/104196号
【文献】特開平10-132669号公報
【文献】国際公開第2014/058077号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、例えば、上記特許文献1~4に記載されているような圧電材料を用いて製造された圧電素子を被験者に取り付け、その圧電素子から得られる計測情報から被験者の生体情報を取得しようとする場合には、計測情報に対して適切な変換処理を施す必要がある。
【0009】
しかし、被験者に取り付けられた圧電素子から得られる計測情報に対してどのような変換処理を施せば被験者の生体情報を取得できるのかが分からない、という課題がある。
【0010】
本開示の課題は、被験者から得られる計測情報から生体情報を取得することができる生体情報取得方法、生体情報取得モデル学習方法、装置、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の生体情報取得方法は、被験者から得られる計測情報を取得するステップと、取得された前記計測情報を、前記計測情報から前記被験者の状態を表す生体情報を取得するための予め学習された学習済みモデルへ入力して、前記被験者の前記生体情報を取得するステップと、を含む処理をコンピュータが実行する生体情報取得方法である。
【0012】
また、本開示の生体情報取得方法の前記学習済みモデルは、学習用の前記計測情報と学習用の前記生体情報との組み合わせを表す学習用データに基づき予め学習されたニューラルネットワークとすることができる。
【0013】
また、本開示の生体情報取得方法の前記計測情報は、前記被験者に接触している圧電素子から得られる電圧値を表す圧電情報であり、前記生体情報は、前記被験者の心拍の状態を表す心拍情報であるようにすることができる。
【0014】
前記圧電素子は、前記被験者が着座する椅子に設置される圧電素子であるようにすることができる。
【0015】
本開示の生体情報取得モデル学習方法は、学習用の被験者の計測情報と学習用の被験者の状態を表す生体情報との組み合わせを表す学習用データを取得するステップと、取得された前記学習用データに基づいて、前記計測情報から前記生体情報を取得するための学習済みモデルを取得するステップと、を含む処理をコンピュータが実行する生体情報取得モデル学習方法である。
【0016】
本開示の生体情報取得モデル学習方法は、学習用の被験者の計測情報のうちのドリフト領域を補正し、補正された前記計測情報を前記生体情報とし、学習用の前記計測情報と学習用の前記生体情報との組み合わせを前記学習用データとして生成するステップを更に含むようにすることができる。
【0017】
本開示の生体情報取得モデル学習方法は、学習用の被験者の計測情報のうちの未計測の領域を除外し、前記未計測の領域が除外された前記計測情報を前記生体情報とし、学習用の前記計測情報と学習用の前記生体情報との組み合わせを前記学習用データとして生成するステップを更に含むようにすることができる。
【0018】
本開示の生体情報取得装置は、被験者の計測情報を取得する計測情報取得部と、前記計測情報取得部によって取得された前記計測情報を、前記計測情報から前記被験者の状態を表す生体情報を取得するための予め学習された学習済みモデルへ入力して、前記被験者の前記生体情報を取得する生体情報取得部と、を含む生体情報取得装置である。
【0019】
本開示の生体情報取得モデル学習装置は、学習用の被験者の計測情報と学習用の被験者の状態を表す生体情報との組み合わせを表す学習用データを取得する学習用データ取得部と、前記学習用データ取得部によって取得された前記学習用データに基づいて、前記計測情報から前記生体情報を取得するための学習済みモデルを取得する学習部と、を含む生体情報取得モデル学習装置である。
【0020】
本開示の第1のプログラムは、コンピュータを、被験者の計測情報を取得する計測情報取得部、及び前記計測情報取得部によって取得された前記計測情報を、前記計測情報から前記被験者の状態を表す生体情報を取得するための予め学習された学習済みモデルへ入力して、前記被験者の前記生体情報を取得する生体情報取得部として機能させるためのプログラムである。
【0021】
本開示の第2のプログラムは、コンピュータを、学習用の被験者の計測情報と学習用の被験者の状態を表す生体情報との組み合わせを表す学習用データを取得する学習用データ取得部、及び前記学習用データ取得部によって取得された前記学習用データに基づいて、前記計測情報から前記生体情報を取得するための学習済みモデルを取得する学習部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0022】
本開示の生体情報取得方法、生体情報取得モデル学習方法、装置、及びプログラムによれば、被験者から得られる計測情報から生体情報を取得することができる、という効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態の生体情報取得装置の構成の一例を示す概略図である。
図2】生体情報取得装置として機能するコンピュータの概略ブロック図である。
図3】本実施形態の計測情報を説明するための説明図である。
図4】本実施形態の学習用データを説明するための説明図である。
図5】本実施形態の学習用データを説明するための説明図である。
図6】本実施形態において用いるニューラルネットワークの一例であるU-Netを説明するための説明図である。
図7】学習済みニューラルネットワークへ入力される圧電情報の一例を示す図である。
図8】学習済みニューラルネットワークから出力される心拍情報の一例を示す図である。
図9】生体情報取得装置によって実行される学習用データ生成処理ルーチンの一例を示す図である。
図10】生体情報取得装置によって実行される学習処理ルーチンの一例を示す図である。
図11】生体情報取得装置によって実行される生体情報取得処理ルーチンの一例を示す図である。
図12】実施例の結果を示す図である。
図13】実施例の結果を示す図である。
図14】実施例の結果を示す図である。
図15】実施例の結果を示す図である。
図16】実施例の結果を示す図である。
図17】実施例の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本実施形態について詳細に説明する。
【0025】
<本実施形態に係る生体情報取得装置のシステム構成>
【0026】
図1は、本実施形態の生体情報取得装置10の構成の一例を示す概略図である。図1に示す構成の生体情報取得装置10は、CPUと、RAMと、後述する各処理ルーチンを実行するためのプログラムや各種データを記憶したROMと、を含むコンピュータで構成することが出来る。
【0027】
例えば、生体情報取得装置10は、図2に示すコンピュータ50で実現することができる。コンピュータ50はCPU51、一時記憶領域としてのメモリ52、及び不揮発性の記憶部53を備える。また、コンピュータ50は、入出力装置等(図示省略)が接続される入出力interface(I/F)54、及び記録媒体に対するデータの読み込み及び書き込みを制御するread/write(R/W)部55を備える。また、コンピュータ50は、インターネット等のネットワークに接続されるネットワークI/F56を備える。CPU51、メモリ52、記憶部53、入出力I/F54、R/W部55、及びネットワークI/F56は、バス57を介して互いに接続される。
【0028】
記憶部53は、Hard Disk Drive(HDD)、solid state drive(SSD)、フラッシュメモリ等によって実現できる。記憶媒体としての記憶部53には、コンピュータ50を機能させるためのプログラムが記憶されている。CPU51は、プログラムを記憶部53から読み出してメモリ52に展開し、プログラムが有するプロセスを順次実行する。
【0029】
この生体情報取得装置10は、機能的には、図1に示されるように、入力部12と、演算部14と、出力部16とを備えている。
【0030】
本実施形態の生体情報取得装置10は、被験者から得られる計測情報を被験者の生体情報へ変換する。図3に、本実施形態の計測情報を説明するための説明図を示す。図3に示されるように、椅子Cには圧電素子Sが設置されている。この圧電素子Sは、椅子Cに着座した被験者Uの太ももの裏側部分に位置する。
【0031】
本実施形態の生体情報取得装置10は、被験者Uに接触している圧電素子Sから得られる電圧を表す圧電情報を計測情報として用いる。そして、生体情報取得装置10は、圧電素子Sから得られる圧電情報を、被験者Uの心拍の状態を表す心拍情報へ変換する。心拍情報は、被験者の状態を表す生体情報の一例である。
【0032】
入力部12は、被験者から得られる計測情報としての圧電情報を受け付ける。また、入力部12は、学習用の圧電情報と学習用の心拍情報との組み合わせを受け付ける。
【0033】
学習用の圧電情報と学習用の心拍情報との組み合わせは、被験者から予め取得されたデータである。また、学習用の圧電情報と学習用の心拍情報との組み合わせにおける、学習用の圧電情報と学習用の心拍情報とは、計測された時刻が対応している。
【0034】
例えば、被験者が着座する椅子に設置された圧電素子から得られる学習用の圧電情報と、その被験者の胸部に設置された心電計から得られる心拍情報とが一組のデータとして予め取得される。これらのデータに基づき、後述する処理によって学習用データが生成される。
【0035】
演算部14は、入力部12により受け付けられた、学習用の圧電情報と学習用の心拍情報との組み合わせに基づいて、圧電情報から心拍情報を取得するための学習済みモデルを生成する。また、演算部14は、入力部12により受け付けられた圧電情報を心拍情報へ変換する。図1に示されるように、演算部14は、学習用データ生成部17と、学習用データ記憶部18と、学習用データ取得部20と、学習部22と、学習済みモデル記憶部24と、計測情報取得部25と、生体情報取得部26とを備える。
【0036】
学習用データ生成部17は、入力部12により受け付けられた、学習用の圧電情報と学習用の心拍情報との組み合わせの各々を取得する。そして、学習用データ生成部17は、学習用の心拍情報を加工して、学習用データを生成する。
【0037】
図4に、学習用データを説明するための説明図を示す。図4に示されるグラフD1の横軸は時刻を表し、縦軸は電圧値を表している。図4に示される実線(ECG)は、学習用の心拍情報である。また、図4に示される破線(ECG_fir)は、学習用の心拍情報を加工することにより得られたデータである。
【0038】
図4に示される実線(ECG)の学習用の心拍情報の時系列データは、全体が波打っており、ドリフト成分を含んでいる。このドリフト成分は、例えば、学習用の心拍情報を計測している際に、被験者が動くことにより発生する。
【0039】
そこで、学習用データ生成部17は、ドリフト成分を含む学習用の心拍情報に対して、既存のハイパスフィルタを適用することにより、学習用の心拍情報を加工する。なお、学習用の心拍情報にドリフト成分が含まれているか否かは、学習用の心拍情報の波高値に応じて判定される。例えば、学習用データ生成部17は、学習用の心拍情報の波高値が予め定められた閾値以上である場合には、その学習用の心拍情報にドリフト成分が含まれていると判定する。本実施形態では、ハイパスフィルタとしてFIR(Finite Impulse Response)フィルタを用いる。
【0040】
学習用データ生成部17によるハイパスフィルタの適用により、図4に示される実線(ECG)の学習用の心拍情報は、破線(ECG_fir)のような時系列データとなる。なお、図4に示される破線(ECG_fir)の時系列データは、FIRフィルタのパラメータであるタップ数を127タップ、カットオフ周波数を1.5Hzと設定した場合に得られたデータである。なお、タップ数は、フィルタリングが行われる際にどの程度の遅延まで計算するかを表すパラメータである。
【0041】
このため、本実施形態の学習用データ生成部17は、学習用の圧電情報と、ドリフト成分が補正された処理済みの学習用の心拍情報との組み合わせを学習用データとして生成する。
【0042】
図5に、学習用データを説明するための他の説明図を示す。図4のグラフD1と同様に、図5に示されるグラフD2の横軸は時刻を表し、縦軸は電圧値を表している。
【0043】
図5のD2に示されるように、学習用の心拍情報には未計測の領域(図中の楕円によって囲まれた箇所)が含まれる場合がある。そのため、学習用データ生成部17は、学習用の心拍情報のうちの未計測の領域を除外する。なお、学習用の心拍情報の未計測の領域の有無は、学習用の心拍情報の波高値に応じて判定される。例えば、学習用データ生成部17は、学習用の心拍情報の波高値が予め定められた範囲(例えば、-4から+4)の値未満である時間が所定時間以上継続した場合には、その箇所に未計測の領域が含まれていると判定する。そして、学習用データ生成部17は、学習用の圧電情報と、未計測の領域が除外された処理済みの学習用の心拍情報との組み合わせを学習用データとして生成する。
【0044】
なお、学習用データ生成部17は、ドリフト成分が含まれていない学習用の心拍情報及び未計測の領域が含まれていない学習用の心拍情報については、学習用の圧電情報と学習用の心拍情報との組み合わせを、そのまま学習用データとして生成する。
【0045】
そして、学習用データ生成部17は、学習用データの各々を学習用データ記憶部18へ格納する。これらの学習用データは、後述するニューラルネットワークの学習に用いられる。このように、学習用の心拍情報に含まれるドリフト成分の補正し、かつ学習用の心拍情報に含まれる未計測の領域を除外することにより、精度の良い学習済みモデルを得ることができる。
【0046】
学習用データ記憶部18には、学習用データ生成部17により生成された学習用データの各々が格納される。本実施形態の学習用データは、学習用の被験者の圧電情報と学習用の被験者の心拍情報との組み合わせを表すデータである。
【0047】
学習用データ取得部20は、学習用データ記憶部18に格納された学習用データ各々を取得する。
【0048】
学習部22は、学習用データ取得部20によって取得された学習用データに基づいて、計測情報から生体情報を取得するためのモデルの一例であるニューラルネットワークを学習させる。なお、学習アルゴリズムとしては、周知のディープラーニング等を用いてもよい。そして、学習部22は、学習済みモデルの一例としての学習済みニューラルネットワークを取得する。
【0049】
図6に、本実施形態の学習済みニューラルネットワークを説明するための説明図を示す。図6に示されるように、本実施形態では、ニューラルネットワークの一種であるCNN(Convolutional Neural Network)を利用したU-Net(例えば、参考文献(Olaf Ronneberger, Philipp Fischer, and Thomas Brox, "U-Net: Convolutional Networks for Biomedical Image Segmentation")を参照)を用いる。なお、図6に示されるチャネルはU-Netのパラメータであり、本実施形態では図6に示されるような値に設定される。
【0050】
図6に示されるような学習済みニューラルネットワークに、入力データ(INPUT)としての被験者の圧電情報が入力されると、出力データ(OUTPUT)としての被験者の心拍情報が出力される。
【0051】
例えば、図7に示されるような圧電情報が、学習済みニューラルネットワークへ入力された場合、図8に示されるような心拍情報が得られる。なお、図7及び図8におけるグラフの横軸は時刻を表し、縦軸は電圧値を表している。
【0052】
学習済みモデル記憶部24には、学習部22によって取得された学習済みニューラルネットワークが格納される。
【0053】
計測情報取得部25は、入力部12によって受け付けられた、被験者の変換対象の圧電情報を取得する。
【0054】
生体情報取得部26は、計測情報取得部25によって取得された被験者の変換対象の圧電情報を取得する。また、生体情報取得部26は、学習済みモデル記憶部24に格納された学習済みニューラルネットワークを読み出す。そして、生体情報取得部26は、被験者の変換対象の圧電情報を学習済みニューラルネットワークへ入力して、被験者の心拍情報を取得する。
【0055】
このように、学習用の圧電情報と学習用の心拍情報とを対応付けた学習用データを用意し、この学習用データを用いてニューラルネットワークを学習させることにより、圧電情報から心拍情報への変換処理が適切に行われる。このため、被験者に対して心電計を取り付けることなく、被験者の心拍情報を逐次取得ことができる。
【0056】
出力部16は、生体情報取得部26によって取得された、被験者の心拍情報を結果として出力する。
【0057】
<生体情報取得装置の作用>
【0058】
次に、図9図10、及び図11を参照して、生体情報取得装置10の作用を説明する。学習用の圧電情報と学習用の心拍情報との組み合わせの各々が生体情報取得装置10へ入力されると、入力部12が学習用の圧電情報と学習用の心拍情報との組み合わせの各々を受け付ける。そして、生体情報取得装置10は、図9に示される学習用データ生成処理ルーチンを実行する。
【0059】
<学習用データ生成処理ルーチン>
【0060】
ステップS100において、学習用データ生成部17は、入力部12により受け付けられた、学習用の圧電情報と学習用の心拍情報との組み合わせの各々を取得する。
【0061】
ステップS102において、学習用データ生成部17は、上記ステップS100で取得された学習用の心拍情報のうちの、ドリフト成分を含む学習用の心拍情報に対して既存のハイパスフィルタを適用する。そして、学習用データ生成部17は、学習用の圧電情報と、ドリフト成分が補正された処理済みの学習用の心拍情報との組み合わせを学習用データとして生成する。
【0062】
また、ステップS102において、学習用データ生成部17は、上記ステップS100で取得された学習用の心拍情報のうちの、未計測の領域を除外する。そして、学習用データ生成部17は、学習用の圧電情報と、未計測の領域が除外された処理済みの学習用の心拍情報との組み合わせを学習用データとして生成する。
【0063】
ステップS104において、学習用データ生成部17は、上記ステップS102で得られた学習用データの各々を学習用データ記憶部18に格納して、学習用データ生成処理ルーチンを終了する。
【0064】
次に、生体情報取得装置10は、学習処理の開始信号を受け付けると、図10に示される学習処理ルーチンを実行する。
【0065】
<学習処理ルーチン>
【0066】
ステップS200において、学習用データ取得部20は、学習用データ記憶部18に格納された学習用データ各々を取得する。
【0067】
ステップS202において、学習部22は、上記ステップS200で取得された学習用データの各々に基づいて、圧電情報から心拍情報を取得するためのニューラルネットワークを学習させる。そして、学習部22は、学習済みニューラルネットワークを取得する。
【0068】
ステップS204において、学習部22は、上記ステップS202で取得された学習済みニューラルネットワークを、学習済みモデル記憶部24に格納して学習処理ルーチンを終了する。
【0069】
次に、生体情報取得装置10は、変換対象の圧電情報の入力を受け付けると、図11に示される生体情報取得処理ルーチンを実行する。
【0070】
<生体情報取得処理ルーチン>
【0071】
ステップS300において、計測情報取得部25は、入力部12によって受け付けられた、被験者の変換対象の圧電情報を取得する。
【0072】
ステップS302において、生体情報取得部26は、学習済みモデル記憶部24に格納された学習済みニューラルネットワークを読み出す。
【0073】
ステップS304において、生体情報取得部26は、上記ステップS300で取得された、被験者の変換対象の圧電情報を、上記ステップS302で読み出された学習済みニューラルネットワークへ入力して、被験者の心拍情報を取得する。
【0074】
ステップS306において、出力部16は、上記ステップS304で取得された、被験者の心拍情報を結果として出力する。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係る生体情報取得装置10は、被験者から得られる圧電情報を、圧電情報から心拍情報を取得するための予め学習された学習済みのニューラルネットワークへ入力して、被験者の心拍情報を取得する。これにより、被験者から得られる圧電情報から心拍情報を取得することができる。また、被験者に対して心電計を取り付けることなく、被験者の心拍情報を逐次取得ことができる。
【0076】
また、本実施形態に係る生体情報取得装置10は、学習用の被験者の圧電情報と学習用の被験者の状態を表す心拍情報との組み合わせを表す学習用データに基づいて、圧電情報から心拍情報を取得するための学習済みモデルを取得する。これにより、被験者から得られる圧電情報から心拍情報を取得するための学習済みモデルを得ることができる。また、本実施形態に係る生体情報取得装置10は、学習用データを生成する際に、学習用の心拍情報に含まれる、ドリフト成分及び未計測の領域を除外することにより、精度の良い学習済みモデルを得ることができる。
【0077】
<実施例>
【0078】
次に、実施例を示す。本実施例では、上記図6に示されるU-Netを学習させた。なお、本実例では、被験者が静止していたときに取得されたデータを表す静止時データと、被験者が動いていたときに取得されたデータである移動時データとの各々について、U-Netモデルを学習させた。また、U-Netを学習させる際には、それぞれ300epochの学習処理を実行した。なお、U-Netの学習に用いた学習用データの数と、学習済みのU-Netモデルを評価に用いた評価用データの数は、以下に示すとおりである。
【0079】
【表1】

【0080】
図12に、静止時データを用いて学習処理を行った場合の学習済みのU-Netの精度の推移を示す。
【0081】
図12に示されるグラフの横軸は学習の繰り返し回数を表すepoch数であり、縦軸は学習済みのU-Netから出力された心拍情報と心電計(携帯型心電計 HCG-801 オムロン株式会社)によって得られた実際の心拍情報との差分(以下、単に「ロス値」と称する。)を表す。
【0082】
図12に示されるように、学習が進行しepoch数が増加するにつれてロス値が減少しており、問題なく学習が行われていることがわかる。なお、図12に示される点線(loss)は、学習用の圧電情報を、学習済みのU-Netへ入力した際に出力された心拍情報と実際の心拍情報との間のロス値を表している。また、図12に示される実線(val_loss)は、学習用の圧電情報とは異なる評価用の圧電情報を、学習済みのU-Netへ入力した際に出力された心拍情報と実際の心拍情報との間のロス値を表している。
【0083】
図13に、移動時データを用いて学習処理を行った場合の学習済みのU-Netの精度の推移を表す。図12と同様に、図13においても、学習が進行しepoch数が増加するにつれてロス値が減少しており、問題なく学習が行われていることがわかる。
【0084】
また、図14図15図16、及び図17に、学習用の圧電情報とは異なる評価用の圧電情報を学習済みのU-Netへ入力した際に出力された心拍情報の波形の様子を示す。なお、図14及び図15は静止時データを対象とした場合の結果であり、図16及び図17は移動時データを対象とした場合の結果である。
【0085】
図14図15図16、及び図17における、「X_test」は評価用の圧電情報の波形を表し、「Y_test」は実際に計測された正解の心拍情報の波形を表し、「Y_predict」は評価用の圧電情報が学習済みのU-Netに入力された際に出力された心拍情報の波形を表している。
【0086】
図14図15図16、及び図17に示されるように、学習済みのU-Netによって適切な変換処理がなされ、圧電情報から心拍情報を精度良く推定できていることがわかる。
【0087】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0088】
例えば、上記実施形態では、モデルとしてCNNを利用したU-Netを用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。計測情報の一例である圧電情報から生体情報の一例である心拍情報を得られるような学習済みモデルであれば、どのようなモデルであってもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、椅子に設置された圧電素子から計測情報の一例である圧電情報を得る場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。被験者から計測情報を取得できれば、どのような態様であってもよい。
【0090】
また、本願明細書中において、プログラムが予めインストールされている実施形態として説明したが、当該プログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0091】
10 生体情報取得装置
12 入力部
14 演算部
16 出力部
17 学習用データ生成部
18 学習用データ記憶部
20 学習用データ取得部
22 学習部
24 学習済みモデル記憶部
25 計測情報取得部
26 生体情報取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
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図17