(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】モジュールロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 9/08 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
B25J9/08
(21)【出願番号】P 2022554156
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2021036512
(87)【国際公開番号】W WO2022071598
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2020167735
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 隼一
(72)【発明者】
【氏名】玄 相昊
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 靖
(72)【発明者】
【氏名】上倉 定幸
(72)【発明者】
【氏名】福沢 祐二
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-036566(JP,A)
【文献】実公昭58-038053(JP,Y2)
【文献】杉本隼一、上倉定幸、齊藤靖、玄相昊,単関節モジュールを用いた分解組立が容易な油圧ロボットの開発,第37回日本ロボット学会学術講演会,一般社団法人日本ロボット学会,2019年09月03日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュールロボットであって、
第1リンクと、
前記第1リンクに相対移動自在に連結された第2リンクと、
前記第1リンクと前記第2リンクを相対移動させる流体圧シリンダと、を備え、
前記第1リンクは、前記流体圧シリンダのシリンダ室が形成されたシリンダブロックを有し
、
前記モジュールロボットは、複数のモジュールが連結されて構成され、
前記モジュールのそれぞれは、前記第1リンク、前記第2リンク、及び前記流体圧シリンダを有し、
2つの前記モジュールは、一方の第1モジュールの前記第1リンク又は前記第2リンクと、他方の第2モジュールの前記第1リンク又は前記第2リンクとが結合されることによって連結され、
前記第1モジュールの前記シリンダブロックは、前記第2モジュールの前記第1リンク又は前記第2リンクと結合可能であるモジュールロボット。
【請求項2】
モジュールロボットであって、
第1リンクと、
前記第1リンクに相対移動自在に連結された第2リンクと、
前記第1リンクと前記第2リンクを相対移動させる流体圧シリンダと、を備え、
前記第1リンクは、前記流体圧シリンダのシリンダ室が形成されたシリンダブロックを有し、
前記モジュールロボットは、複数のモジュールにて構成され、前記モジュール同士の一部が一体に形成されるモジュールロボット。
【請求項3】
モジュールロボットであって、
第1リンクと、
前記第1リンクに相対移動自在に連結された第2リンクと、
前記第1リンクと前記第2リンクを相対移動させる流体圧シリンダと、を備え、
前記第1リンクは、前記流体圧シリンダのシリンダ室が形成されたシリンダブロックを有し、
前記流体圧シリンダは、液圧シリンダであって、
前記シリンダブロックの複数の外面のうち少なくとも二面には、液圧供給源に接続可能なポンプポートと、タンクに接続可能なタンクポートと、が形成されるモジュールロボット。
【請求項4】
請求項
3に記載のモジュールロボットであって、
前記シリンダブロックには、前記ポンプポート及び前記タンクポートと前記シリンダ室とを接続する通路が形成されるモジュールロボット。
【請求項5】
モジュールロボットであって、
第1リンクと、
前記第1リンクに相対移動自在に連結された第2リンクと、
前記第1リンクと前記第2リンクを相対移動させる流体圧シリンダと、を備え、
前記第1リンクは、前記流体圧シリンダのシリンダ室が形成されたシリンダブロックを有し、
前記モジュールロボットは、複数のモジュールが連結されて構成され、
前記モジュールのそれぞれは、前記第1リンク、前記第2リンク、及び前記流体圧シリンダを有し、
2つの前記モジュールは、一方の第1モジュールの前記第1リンク又は前記第2リンクと、他方の第2モジュールの前記第1リンク又は前記第2リンクとが結合されることによって連結され、
前記流体圧シリンダは、液圧シリンダであって、
前記シリンダブロックの複数の外面のうち少なくとも二面には、液圧供給源に接続可能なポンプポートと、タンクに接続可能なタンクポートと、が形成され、
前記モジュールは、
前記モジュールの状態量を検出する状態量検出器と、
前記ポンプポート及び前記タンクポートと前記シリンダ室との連通を制御する制御弁と、
前記状態量検出器の検出結果に基づいて前記制御弁の動作を制御して前記モジュールの運動を制御するコントローラと、
をさらに有するモジュールロボット。
【請求項6】
請求項1
から5のいずれか一つに記載のモジュールロボットであって、
前記流体圧シリンダは、液圧シリンダであって、
前記シリンダブロックの外面には、液圧供給源とタンクに選択的に接続可能な給排ポートが形成され、
前記シリンダブロックには、前記給排ポートと前記シリンダ室を接続する通路が形成されるモジュールロボット。
【請求項7】
請求項
1又は5に記載のモジュールロボットであって、
同一の前記モジュールが少なくとも2つ連結されて構成されるモジュールロボット。
【請求項8】
請求項
1に記載のモジュールロボットであって、
前記第1モジュールの前記シリンダブロックには、前記第2モジュールの前記第1リンク又は前記第2リンクと結合するための締結具が挿入される締結穴が形成されるモジュールロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュールロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
WO2007/034561号公報には、複数のアーム構成部材を有するロボットアームが開示されている。アーム構成部材はアーム駆動装置により駆動され、アーム駆動装置は、ロッド及びロッドを軸方向に移動させる本体部を備える。
【発明の概要】
【0003】
WO2007/034561号公報に記載のロボットアームは、リンクを構成するアーム構成部材と、アーム構成部材を駆動するアーム駆動装置と、を有する構成であり、部品点数が多く構造が複雑である。
【0004】
本発明は、シンプルな構造のモジュールロボットを提供することを目的とする。
【0005】
本発明のある態様によれば、モジュールロボットであって、第1リンクと、第1リンクに相対移動自在に連結された第2リンクと、第1リンクと第2リンクを相対移動させる流体圧シリンダと、を備え、第1リンクは、流体圧シリンダのシリンダ室が形成されたシリンダブロックを有し、モジュールロボットは、複数のモジュールが連結されて構成され、モジュールのそれぞれは、第1リンク、第2リンク、及び流体圧シリンダを有し、2つのモジュールは、一方の第1モジュールの第1リンク又は第2リンクと、他方の第2モジュールの第1リンク又は第2リンクとが結合されることによって連結され、第1モジュールのシリンダブロックは、第2モジュールの第1リンク又は第2リンクと結合可能である。
また、本発明の別の態様によれば、モジュールロボットであって、第1リンクと、第1リンクに相対移動自在に連結された第2リンクと、第1リンクと第2リンクを相対移動させる流体圧シリンダと、を備え、第1リンクは、流体圧シリンダのシリンダ室が形成されたシリンダブロックを有し、モジュールロボットは、複数のモジュールにて構成され、モジュール同士の一部が一体に形成される。
また、本発明の別の態様によれば、モジュールロボットであって、第1リンクと、第1リンクに相対移動自在に連結された第2リンクと、第1リンクと第2リンクを相対移動させる流体圧シリンダと、を備え、第1リンクは、流体圧シリンダのシリンダ室が形成されたシリンダブロックを有し、流体圧シリンダは、液圧シリンダであって、シリンダブロックの複数の外面のうち少なくとも二面には、液圧供給源に接続可能なポンプポートと、タンクに接続可能なタンクポートと、が形成される。
また、本発明の別の態様によれば、モジュールロボットであって、第1リンクと、第1リンクに相対移動自在に連結された第2リンクと、第1リンクと第2リンクを相対移動させる流体圧シリンダと、を備え、第1リンクは、流体圧シリンダのシリンダ室が形成されたシリンダブロックを有し、モジュールロボットは、複数のモジュールが連結されて構成され、モジュールのそれぞれは、第1リンク、第2リンク、及び流体圧シリンダを有し、2つのモジュールは、一方の第1モジュールの第1リンク又は第2リンクと、他方の第2モジュールの第1リンク又は第2リンクとが結合されることによって連結され、流体圧シリンダは、液圧シリンダであって、シリンダブロックの複数の外面のうち少なくとも二面には、液圧供給源に接続可能なポンプポートと、タンクに接続可能なタンクポートと、が形成され、モジュールは、モジュールの状態量を検出する状態量検出器と、ポンプポート及びタンクポートとシリンダ室との連通を制御する制御弁と、状態量検出器の検出結果に基づいて制御弁の動作を制御してモジュールの運動を制御するコントローラと、をさらに有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施形態に係るモジュールの側面模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るモジュールの正面側の斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るモジュールの背面側の斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るモジュールの正面側の斜視図であって、第1リンクの各プレートを取り除いた状態の図である。
【
図5】モジュールロボット及びモジュールのシステム構成図である。
【
図6】シリンダブロックに形成されたポートと油通路を模式的に示す図である。
【
図9】モジュールが連結されて脚部を構成するモジュールロボットの側面図である。
【
図10】本発明の実施形態の変形例に係るモジュールの側面模式図であって、
図1に対応する図である。
【
図11】本発明の実施形態の変形例に係るモジュールの模式図である。
【
図12A】本発明の実施形態の変形例に係るモジュールの平面模式図である。
【
図12B】本発明の実施形態の変形例に係るモジュールの側面模式図である。
【
図13】本発明の実施形態の変形例に係るモジュールロボットの平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るモジュールロボット100について説明する。
【0008】
モジュールロボット100(
図9参照)は、
図1~3に示すモジュール101が複数連結されて構成される。
【0009】
まず、
図1~5を参照して、モジュール101について説明する。
図1はモジュール101の側面模式図であり、
図2はモジュール101の正面側の斜視図であり、
図3はモジュール101の背面側の斜視図であり、
図4はモジュール101の正面側の斜視図であって第1リンク10の各プレートを取り除いた状態の図であり、
図5はモジュールロボット100及びモジュール101のシステム構成図である。
【0010】
モジュール101は、第1リンク10と、第1リンク10に相対移動自在に連結された第2リンク20と、第1リンク10と第2リンク20を相対移動させる油圧シリンダ30と、を有する。油圧シリンダ30は、請求項に記載の流体圧シリンダ及び液圧シリンダに相当する。
【0011】
第1リンク10と第2リンク20は、回転軸1を介して回転自在に連結される。油圧シリンダ30と第2リンク20には、第3リンク2が回転自在に連結される。
【0012】
油圧シリンダ30は、液圧供給源としてのポンプ3(
図5参照)から供給される作動油(作動流体)によって伸縮作動するアクチュエータである。油圧シリンダ30は、シリンダ室31が形成されたシリンダブロック32と、シリンダ室31内に摺動自在に挿入されシリンダ室31をロッド側室31aと反ロッド側室31bに区画するピストン33aと、一端がピストン33aに連結され他端がシリンダ室31から外部へと延在するピストンロッド33bと、を有する。
【0013】
シリンダブロック32は、第1リンク10のハウジング11内に収容され、ハウジング11に回転不能に固定される。つまり、油圧シリンダ30は、第1リンク10に回転不能に連結される。シリンダブロック32は、略直方体状のブロック状に形成され、内部にシリンダ室31と、シリンダ室31に連通する後述する油通路とが形成される。シリンダ室31は、シリンダブロック32の端面32aに開口する円柱状の穴として形成される。シリンダブロック32の端面32aには、シリンダ室31の開口を塞ぐと共に、ピストンロッド33bが挿通するシリンダヘッド34が設けられる。シリンダヘッド34には、ピストンロッド33bを摺動自在に支持する軸受35と、シリンダ室31からの作動油の漏れを防止するシール部材36とが設けられる。
【0014】
図1及び
図4に示すように、ピストンロッド33bの先端にはスライダ50が結合され、スライダ50には回転軸51を介して第3リンク2の一端が回転自在に連結される。スライダ50は、ハウジング11内にピストンロッド33bの軸方向に沿って設けられた一対のリニアガイド52の間に配置され、リニアガイド52にガイドされて移動する。第3リンク2の他端は回転軸53を介して第2リンク20に回転自在に連結される。
【0015】
油圧シリンダ30は、ポンプ3からロッド側室31aに作動油が供給されると共に、反ロッド側室31bの作動油がタンク4(
図5参照)へと排出されることにより収縮作動する。一方、油圧シリンダ30は、ポンプ3から反ロッド側室31bに作動油が供給されると共に、ロッド側室31aの作動油がタンク4へと排出されることにより伸長作動する。油圧シリンダ30が伸縮作動することによって、ピストンロッド33bの直線運動が第3リンク2を介して第2リンク20の回転運動に変換され、第1リンク10と第2リンク20は回転軸1を中心として相対回転する。このように、油圧シリンダ30を駆動することによって、第1リンク10と第2リンク20を相対回転させることができる。モジュール101は、回転軸1を中心とする1自由度の回転自由度を有しており、第1リンク10、第2リンク20、及び油圧シリンダ30は、単一の自由度を形成するように連結されている。
【0016】
次に、主に
図6を参照して、シリンダブロック32に形成されたポートと油通路について詳細に説明する。
図6は、シリンダブロック32に形成されたポートと油通路を模式的に示す図である。
【0017】
シリンダブロック32の外面には、ポンプ3に接続可能なポンプポートPと、タンク4に接続可能なタンクポートTとが開口して形成される。本実施形態では、ポンプポートPとタンクポートTは、シリンダブロック32の複数の外面のうち三面に形成される。三面に形成されたポンプポートPのうちの1つがホースや配管を介してポンプ3に接続され、使用されないポンプポートPはプラグにより封止される。同様に、三面に形成されたタンクポートTのうちの1つがホースや配管を介してタンク4に接続され、使用されないタンクポートTはプラグにより封止される。
【0018】
シリンダブロック32には、制御弁としてサーボバルブ5(
図4参照)が設けられる。サーボバルブ5は、ポンプポートP及びタンクポートTとシリンダ室31との連通を制御する。サーボバルブ5は、ポンプポートPに連通する供給ポート5aと、タンクポートTに連通する排出ポート5bと、ロッド側室31aに連通するロッド側ポート5cと、反ロッド側室31bに連通する反ロッド側ポート5dと、を有する。サーボバルブ5は、そのポジションによって、供給ポート5a及び排出ポート5bとロッド側ポート5c及び反ロッド側ポート5dとの連通を切り換える。
【0019】
シリンダブロック32には、ポンプポートP及びタンクポートTとシリンダ室31とを接続する油通路37が形成される。油通路37は、ポンプポートPとサーボバルブ5の供給ポート5aとを接続する供給通路37aと、タンクポートTとサーボバルブ5の排出ポート5bとを接続する排出通路37bと、サーボバルブ5のロッド側ポート5cとロッド側室31aとを接続するロッド側通路37cと、サーボバルブ5の反ロッド側ポート5dと反ロッド側室31bとを接続する反ロッド側通路37dと、を有する。
【0020】
サーボバルブ5によって供給ポート5aとロッド側ポート5cが連通すると共に、排出ポート5bと反ロッド側ポート5dが連通する場合には、ポンプポートPからロッド側室31aに作動油が供給されると共に、反ロッド側室31bの作動油がタンクポートTへと排出され、油圧シリンダ30は収縮作動する。一方、サーボバルブ5によって供給ポート5aと反ロッド側ポート5dが連通すると共に、排出ポート5bとロッド側ポート5cが連通する場合には、ポンプポートPから反ロッド側室31bに作動油が供給されると共に、ロッド側室31aの作動油がタンクポートTへと排出され、油圧シリンダ30は伸長作動する。
【0021】
シリンダブロック32の外面には、ポンプポートP及びタンクポートTに加えて、ポンプ3とタンク4に選択的に接続可能な給排ポート38が開口して形成される。給排ポート38は、ロッド側室31aに連通する第1給排ポート38Aと、反ロッド側ポート5dに連通する第2給排ポート38Bと、を有する。第1給排ポート38A及び第2給排ポート38Bは、ホースや配管を介してモジュール101の外部に設けられる制御弁(図示せず)に接続される。その制御弁の動作により、第1給排ポート38A及び第2給排ポート38Bの一方がポンプ3に接続され、他方がタンク4に接続される。本実施形態では、第1給排ポート38Aと第2給排ポート38Bは、シリンダブロック32の複数の外面のうち一面に形成される。
【0022】
シリンダブロック32には、油通路37に加えて、給排ポート38とシリンダ室31を接続する油通路39が形成される。油通路39は、第1給排ポート38Aとロッド側室31aとを接続する第1給排通路39aと、第2給排ポート38Bと反ロッド側室31bとを接続する第2給排通路39bと、を有する。第1給排通路39aの一部とロッド側通路37cの一部とは共有され、第2給排通路39bの一部と反ロッド側通路37dの一部とは共有される。
【0023】
第1給排ポート38Aがポンプ3に接続されると共に、第2給排ポート38Bがタンク4に接続される場合には、ロッド側室31aに作動油が供給されると共に、反ロッド側室31bの作動油が排出され、油圧シリンダ30は収縮作動する。一方、第2給排ポート38Bがポンプ3に接続されると共に、第1給排ポート38Aがタンク4に接続される場合には、反ロッド側室31bに作動油が供給されると共に、ロッド側室31aの作動油が排出され、油圧シリンダ30は伸長作動する。
【0024】
以上のように、シリンダブロック32には、ポンプポートP及びタンクポートTと、給排ポート38とが形成される。ポンプポートP及びタンクポートTが用いられる場合には、給排ポート38はプラグにより封止され、給排ポート38が用いられる場合には、ポンプポートP及びタンクポートTはプラグにより封止される。
【0025】
また、以上のように、ブロック状のシリンダブロック32の内部には、シリンダ室31が形成されると共に、シリンダ室31に接続された油通路37c,37d,39a,39b、サーボバルブ5とポンプ3を接続する油通路37a、及びサーボバルブ5とタンク4を接続する油通路37bが形成される。したがって、シリンダ室31とサーボバルブ5とを接続するためのホースや配管を設ける必要がないため、モジュール101をシンプルな構造とすることができる。
【0026】
シリンダブロック32は、モジュール101の用途として要求される剛性に応じて金属又は樹脂にて形成される。シリンダブロック32は、内部にシリンダ室31及び油通路37,39が形成される複雑な構造であるが、シリンダブロック32の成形に3Dプリンタを利用すれば、容易に製造することができる。
【0027】
図4に示すように、モジュール101は、サーボバルブ5と、モジュール101の状態量を検出する状態量検出器としてのセンサ6と、センサ6の検出結果に基づいてサーボバルブ5の動作を制御してモジュール101の運動を制御するコントローラ7と、をさらに有する。このように、サーボバルブ5、センサ6、及びコントローラ7はモジュール101毎に設けられ、油圧シリンダ30は個別に制御される。サーボバルブ5、センサ6、及びコントローラ7は、シリンダブロック32の外面に設けられて、ハウジング11内に収容される。
【0028】
本実施形態では、センサ6として、モジュール101の状態量として油圧シリンダ30のストローク量を検出するリニアエンコーダ6aと、モジュール101の状態量として油圧シリンダ30の圧力を検出する圧力センサ6bと、を有する。
【0029】
リニアエンコーダ6aは、ピストンロッド33bのストローク量を検出する。リニアエンコーダ6aの検出結果は、モジュール101の位置制御に使用される。コントローラ7は、リニアエンコーダ6aの検出結果に基づいて、第1リンク10と第2リンク20の相対回転角度を演算する。リニアエンコーダ6aに代えて、回転軸1にロータリーエンコーダを設け、第1リンク10と第2リンク20の相対回転角度を検出してもよい。
【0030】
圧力センサ6bとして、ロッド側室31aの圧力を検出する圧力センサと、反ロッド側室31bの圧力を検出する圧力センサの2つが設けられる。圧力センサ6bの検出結果は、モジュール101の荷重制御に使用される。圧力センサ6bに代えて、モジュール101の状態量として油圧シリンダ30に作用する荷重を検出する荷重センサを油圧シリンダ30に設けてもよい。
【0031】
センサ6によって検出するモジュール101の状態量としては、上述した油圧シリンダ30のストローク量、第1リンク10と第2リンク20の相対回転角度、油圧シリンダ30の圧力、油圧シリンダ30の荷重の他、油圧シリンダ30のストローク速度、油圧シリンダ30へ供給される作動油の流量等であってもよい。油圧シリンダ30のストローク速度は、リニアエンコーダ6aの検出結果から演算すればよいし、油圧シリンダ30へ供給される作動油の流量は、油圧シリンダ30に流量センサを設ければよい。センサ6によって検出するモジュール101の状態量は、モジュール101の運動制御に応じて適宜選択すればよい。
【0032】
次に、
図5を参照して、モジュールロボット100及びモジュール101のシステム構成について説明する。
【0033】
モジュール101は、第1リンク10、第2リンク20、油圧シリンダ30、サーボバルブ5、センサ6、及びコントローラ7の各部品がモジュール化して構成される。モジュールロボット100は、モジュール101に加えて、油圧シリンダ30に作動油を供給するポンプ3と、作動油を貯留するタンク4と、を備える。
【0034】
コントローラ7は、出力装置8から出力された指令信号とセンサ6からのフィードバック信号との偏差を演算し、その偏差がゼロとなるようにサーボバルブ5を制御する。このように、コントローラ7は、センサ6の検出結果に基づいてフィードバック制御を行う。出力装置8とコントローラ7は有線又は無線で接続され、コントローラ7とサーボバルブ5も有線又は無線で接続される。
【0035】
出力装置8から出力される指令信号は、モジュール101の運動を規定する情報である。出力装置8から出力される指令信号は、出力装置8に直接入力された情報や、通信回線を介して出力装置8に送信された情報、記憶媒体から読み出された情報等である。
【0036】
次に、主に
図1~
図4を参照して、第1リンク10及び第2リンク20の構成について詳しく説明する。
【0037】
シリンダブロック32は、略直方体状のブロック状に形成され、外面として、シリンダ室31の開口が形成される端面32aと、端面32aとは逆側の端面32bと、サーボバルブ5,センサ6,及びコントローラ7が設けられた表面32cと、表面32cとは逆側の背面32dと、一対の側面32e,32fと、の六面を有する。なお、
図4及び
図6では、側面32e,32fは段状に形成されているが、平坦面であってもよい。
【0038】
ポンプポートPとタンクポートTは、シリンダブロック32の外面のうち、端面32b及び一対の側面32e,32fに形成される。また、第1給排ポート38Aは、シリンダブロック32の外面のうち側面32eに形成され、第2給排ポート38Bは、シリンダブロック32の外面のうち側面32fに形成される。
【0039】
第1リンク10のハウジング11は、シリンダブロック32の一対の側面32e,32fのそれぞれに面接触して固定され互いに平行に設けられた一対の第1プレート12a,12bと、シリンダブロック32の端面32bに面接触して固定された第2プレート13と、シリンダブロック32の表面32cと所定の間隔を空けて設けられた第3プレート14と、を有する。第1プレート12a,12b、第2プレート13、及び第3プレート14は、ねじ等の締結具により互いに結合される。なお、
図1では、シリンダブロック32の側面32fに固定される第1プレート12bが取り外された状態を示している。
【0040】
一対の第1プレート12a,12bには、両者にわたって回転軸1が設けられる。第1プレート12aには、ポンプポートP,タンクポートT,及び第1給排ポート38Aを露出するための切り欠き70が形成され、第1プレート12bには、ポンプポートP,タンクポートT,及び第2給排ポート38Bを露出するための切り欠き71が形成され。また、第2プレート13にも、ポンプポートPとタンクポートTを露出するための切り欠き72が形成される。このように、ポンプポートPとタンクポートTは、第1リンク10の外面のうち三面に形成され、第1給排ポート38Aと第2給排ポート38Bは、第1リンク10の外面のうち一面に形成される。
【0041】
第1プレート12a,12b、第2プレート13、及び第3プレート14は、モジュール101の用途として要求される剛性に応じて金属又は樹脂にて形成される。なお、第1プレート12a,12b、第2プレート13、及び第3プレート14の一部を金属、残りを樹脂にて形成してもよい。
【0042】
第1プレート12a,12b、第2プレート13、及び第3プレート14には、モジュール101同士を連結するための締結具が挿入される複数の締結穴60が互いに等間隔で形成される。本実施形態では、締結穴60は、第1プレート12a,12bには6つ、第2プレート13には4つ、第3プレート14には8つ形成される。なお、複数の締結穴60は互いに等間隔でなくてもよい。
【0043】
図3に示すように、シリンダブロック32の背面32dにはプレートが固定されず、背面32dは露出して形成される。シリンダブロック32の背面32dは、プレート12a,12b,13,14と一緒に、第1リンク10のハウジング11の一部を構成する。プレート12a,12b,13,14と同様に、背面32dには、モジュール101同士を連結するための締結具が挿入される複数の締結穴60が互いに等間隔で形成される。本実施形態では、背面32dの締結穴は4つ形成される。第1プレート12a,12bの間には、シリンダブロック32の背面32dに並んで、プレート15が設けられる。プレート15は、第1リンク10の背面側の開口を封止するためのものである。プレート15は必須の構成ではなく、省略することが可能である。
【0044】
シリンダブロック32は、回転軸1が設けられる第1プレート12a,12bに固定されており、第1リンク10の一部を構成する。換言すれば、第1リンク10は、油圧シリンダ30の一部品であるシリンダブロック32を有する。シリンダブロック32は、内部にシリンダ室31及び油通路37,39が形成される機能と、リンクの機能との2つの機能を有する。したがって、モジュール101の部品点数を少なくすることができると共に、モジュール101をシンプルな構造とすることができる。
【0045】
本実施形態では、第1プレート12a,12b、第2プレート13、及び第3プレート14は、別体に形成されて互いに結合されるが、一体成形された一部品として形成してもよい。また、シリンダブロック32、第1プレート12a,12b、及び第2プレート13を一体成形された一部品として形成してもよい。つまり、本実施形態のシリンダブロック32、第1プレート12a,12b、及び第2プレート13によって構成される一つのシリンダブロックとしてもよい。この場合、第3プレート14はハウジング11の蓋として機能し、第3プレート14のみが別部品として形成される。
【0046】
第2リンク20は平板状に形成される。第2リンク20の表面20aには、回転軸53と回転軸1を回転自在に支持するブラケット21が設けられる。第2リンク20の裏面20bには、モジュール101同士を連結するための締結具が挿入される複数の締結穴60(
図1参照)が互いに等間隔で形成される。第1リンク10に形成される複数の締結穴60の間隔と、第2リンク20に形成される複数の締結穴60の間隔とは同じである。なお、第2リンク20に形成される複数の締結穴60は互いに等間隔でなくてもよい。また、第2リンク20の形状は平板状に限定されず、モジュール101の用途に応じた形状に形成すればよい。
【0047】
次に、主に
図7~
図9を参照して、モジュール101同士の連結について詳しく説明する。
【0048】
2つのモジュール101は、一方の第1モジュール101Aの第1リンク10又は第2リンク20と、他方の第2モジュール101Bの第1リンク10又は第2リンク20とが結合されることによって連結される。具体的には、第1モジュール101Aのプレート12a,12b,13,14,シリンダブロック32の背面32d,及び第2リンク20の裏面20bのうちのいずれか一つを連結板80Aとすると共に、第2モジュール101Bのプレート12a,12b,13,14,シリンダブロック32の背面32d,及び第2リンク20の裏面20bのうちのいずれか一つを連結板80Bとし、連結板80Aと連結板80Bを互いに面接触させた状態で、連結板80Aの締結穴60と連結板80Bの締結穴60とにわたって締結具を挿入して連結板80Aと連結板80Bを結合する。締結具は、例えば、連結板80Aの締結穴60と連結板80Bの締結穴60とにわたって圧入される円柱状のダボ材である。ここで、第1リンク10に形成される複数の締結穴60は互いに等間隔であり、第2リンク20に形成される複数の締結穴60は互いに等間隔であり、かつ、第1リンク10に形成される複数の締結穴60の間隔と、第2リンク20に形成される複数の締結穴60の間隔とは同じである。したがって、第1モジュール101Aの第1リンク10又は第2リンク20と、第2モジュール101Bの第1リンク10又は第2リンク20とを容易に結合することができる。なお、2つのモジュール101を直接連結せずに、アタッチメントを介して連結してもよい。その場合には、連結板80Aと連結板80Bの間にアタッチメントを介在させ、連結板80Aとアタッチメントを締結具によって結合すると共に、連結板80Bとアタッチメントを締結具によって結合するとよい。
【0049】
図7及び
図8を参照して、モジュールロボット100を構成する2つのモジュール101A,101Bの連結例について説明する。
図7及び
図8は、互いに同一の2つのモジュール101A,101Bを連結する場合について説明する。ここで、本明細書において、同一のモジュールとは、モジュールを構成する部品が互いに同一であり、かつ、それらの部品の形状及び寸法が互いに同一であることを意味する。つまり、同一のモジュールとは、同一規格品ということもできる。
【0050】
図7は、第1モジュール101Aの連結板80Aと第2モジュール101Bの連結板80Bとが共にシリンダブロック32の背面32dであり、第1モジュール101Aと第2モジュール101Bの背面同士を連結した背面連結の例である。シリンダブロック32は第1リンク10の一部を構成し、背面32dには締結穴60が形成されるため、第1モジュール101Aのシリンダブロック32に、第2モジュール101Bの第1リンク10又は第2リンク20を結合することができる。このように、第1リンク10の一部を構成するシリンダブロック32を利用して第1リンク10と第2リンク20を結合することができる。
【0051】
図8は、第1モジュール101Aの連結板80Aが第2リンク20の裏面20bであり、第2モジュール101Bの連結板80Bが第1リンク10の第3プレート14であり、第1モジュール101Aと第2モジュール101Bを直列に連結した直列連結の例である。直列連結の他の例として、第1モジュール101Aの連結板80Aを第2リンク20の裏面20bとし、第2モジュール101Bの連結板80Bを第1リンク10の第2プレート13として、第1モジュール101Aと第2モジュール101Bを連結してもよい。また、第1モジュール101Aの連結板80Aと第2モジュール101Bの連結板80Bを共に第2リンク20の裏面20bとして、第1モジュール101Aと第2モジュール101Bを連結してもよい。
【0052】
図7及び
図8に示す連結例では、第1モジュール101Aと第2モジュール101Bの運動は同一平面内であるため、モジュールロボット100は全体として2次元の運動をする。第1モジュール101Aの連結板80Aを第1リンク10の第1プレート12aとし、第2モジュール101Bの連結板80Bを第1リンク10のシリンダブロック32の背面32dとして第1モジュール101Aと第2モジュール101Bを連結すれば、モジュールロボット100は全体として3次元の運動をする。
【0053】
以上は2つのモジュール101A,101Bの連結方法の一例であって、2つのモジュール101A,101Bは、モジュールロボット100の所望の運動に応じて自由に連結される。例えば、第1モジュール101Aの第1リンク10の第1プレート12aと第2モジュール101Bの第1リンク10の第1プレート12bとを結合し、第1モジュール101Aと第2モジュール101Bを同じ向きに並列に連結してもよい。この場合、第1モジュール101Aと第2モジュール101Bの第2リンク20を駆動対象に連結し、第1モジュール101Aと第2モジュール101Bの油圧シリンダ30を同期制御することによって、モジュールロボット100の出力を増幅することができる。並列連結の場合には、回転軸1を共通化してもよい。
【0054】
次に、
図9を参照して、モジュールロボット100の一例について説明する。
図9に示すモジュールロボット100は、3つの同一のモジュール101A,101B,101Cがそれぞれ足首関節、膝関節、股関節に対応するように連結されて脚部ロボットを構成する例を示している。具体的には、モジュール101A,101B,101Cのそれぞれの回転軸1が足首関節、膝関節、股関節に対応する。モジュール101Aの第2リンク20は、足として機能する。モジュールロボット100は、各モジュール101が単関節モジュールを構成し、全体として3自由度を有する。
【0055】
モジュール101Aとモジュール101Bは、
図8に示す直列連結され、モジュール101Bとモジュール101Cは、
図7に示す背面連結される。
【0056】
モジュール101A,101B,101Cの各ポンプポートPは、ホースや配管により直列に接続されると共に、モジュール101A,101B,101CのいずれかのポンプポートPはポンプ3に接続される。これにより、ポンプ3から供給された作動油は、モジュール101A,101B,101Cの各ポンプポートPに供給される。また、モジュール101A,101B,101Cの各タンクポートTは、ホースや配管により直列に接続されると共に、モジュール101A,101B,101CのいずれかのタンクポートTはタンク4に接続される。これにより、モジュール101A,101B,101Cの各タンクポートTは、タンク4に接続される。
【0057】
ポンプポートPとタンクポートTは、第1リンク10の外面のうち三面に形成されるため、モジュール101同士の連結態様に応じて、ホースや配管の取り回しを考慮して、最適なポンプポートPとタンクポートTを使用することができる。
【0058】
また、サーボバルブ5を使用せずに、モジュール101の外部に設けられる制御弁を用いて油圧シリンダ30の伸縮を制御する場合には、ポンプポートPとタンクポートTはプラグにより封止され、第1給排ポート38A及び第2給排ポート38Bがホースや配管を介して制御弁に接続される。
【0059】
モジュール101A,101B,101Cの各コントローラ7は、リニアエンコーダ6aの検出結果に基づいて、各油圧シリンダ30を伸縮作動させて第1リンク10と第2リンク20の相対回転角度が所望の角度となるようにモジュール101A,101B,101Cの運動を制御する。各モジュール101A,101B,101Cの運動が個別に制御されることによって、モジュールロボット100の姿勢が制御される。
【0060】
また、モジュール101A,101B,101Cの各コントローラ7は、圧力センサ6bの検出結果に基づいて、各関節のトルクを制御する。例えば、モジュールロボット100の自重をキャンセルするように各油圧シリンダ30を制御する重力補償制御を行う。
【0061】
モジュールロボット100は、自律歩行ロボットや、人に装着して人の歩行や姿勢を支援するロボットとして用いられる。
【0062】
また、モジュールロボット100は、モジュール101Aの第2リンク20を地面や、壁面、基台に固定することによって使用してもよい。この場合には、モジュール101Aの第2リンク20は、ベースプレートを介して地面や、壁面、基台に固定すればよい。ベースプレートの表面には、モジュール101Aの第2リンク20が簡易的に脱着可能に固定され、ベースプレートの裏面はボルト等により地面や、壁面、基台に固定される。
【0063】
モジュールロボット100は、
図9に示す脚部ロボットに限定されない。例えば、モジュール101Aの第2リンク20を地面や土台に固定すると共に、モジュール101Cの第2リンク20にアタッチメントとしてバケットやロッド、ハンドを取り付けることによって、他の用途、機能を有するモジュールロボット100とすることができる。また、
図9に示す脚部ロボットに加えて、さらに複数のモジュール101を連結することによってヒューマノイドロボットやムカデロボットを構成することができる。このように、複数のモジュール101を連結するだけで、用途、機能に応じた様々なロボットを簡単に構成することができる。
【0064】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0065】
第1リンク10、第2リンク20、及び油圧シリンダ30を有するモジュール101を複数連結することによって多様な用途に対応するモジュールロボット100を簡単に構成することができる。また、モジュールロボット100は、複数のモジュール101を連結するだけで構成することができるため、組み立てが容易であり、搬送時には、各モジュール101に分割すればよいため、組み立て及び搬送が容易である。よって、多様な用途に対応でき、かつ組み立て及び搬送が容易なモジュールロボット100を構成することができる。
【0066】
また、油圧シリンダ30のシリンダ室31が形成されたシリンダブロック32は第1リンク10の一部を構成するため、部品点数が少なくシンプルな構造のモジュール101が得られる。よって、シンプルな構造のモジュールロボット100が得られる。
【0067】
また、モジュール101の駆動源は油圧であるため、駆動源が電動モータである場合と比較して、モジュール重量比の出力が大きい。よって、高出力を要する用途のモジュールロボット100であっても、大型化を防止することができる。また、油圧シリンダ30の伸縮作動はサーボバルブ5によって制御されるため、モジュール101の運動を高精度に制御することができる。
【0068】
以下に、上記実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。なお、以下の変形例に説明において、上記実施形態と同様の構成には、同一の符号を用いて説明する。
【0069】
(1)上記実施形態では、モジュール101が1自由度(単関節)を有する形態について説明した。これに代わり、モジュールは複数の自由度を有する形態であってもよい。複数の自由度とする場合には、リンクの数を増やすか、油圧シリンダを両ロッドタイプに変更すればよい。
【0070】
(2)上記実施形態では、モジュール101が回転自由度を有する形態について説明した。これに代わり、モジュールは、並進自由度を有する形態であってもよい。この場合には、互いに摺動自在に連結された第1リンクと第2リンクとの間に油圧シリンダが設けられる。このように、第1リンクと第2リンクは、相対回転自在に連結される形態には限定されず、相対移動自在に連結されればよい。
【0071】
(3)上記実施形態では、互いに同一のモジュール101を連結する形態について説明した。これに代わり、連結するモジュールは同一のもの(同一規格)でなくてもよい。例えば、第1リンクの形状や寸法が互いに異なるモジュール同士を連結したり、ストローク長が互いに異なる油圧シリンダを有するモジュール同士を連結したりしてもよい。つまり、規格の異なるモジュールをそれぞれ複数用意し、モジュールロボットの所望の運動やモジュールロボットの用途、機能に応じて自由にモジュールを連結すればよい。ただ、同一規格の複数のモジュールを連結してモジュールロボットを構成することによって、モジュールロボットを低コストで製造することができる。
【0072】
(4)第3リンク2は必須の構成ではなく、油圧シリンダ30のピストンロッド33bと第2リンク20とを回転自在に直接連結してもよい。
【0073】
(5)上記実施形態では、油圧シリンダ30と第2リンク20は、第3リンク2を介して回転自在に連結される形態について説明したが、油圧シリンダ30と第2リンク20の連結方法は、これに限定されない。例えば、
図10に示すように、第1リンク10と第2リンク20を、回転軸91を中心に回動するV字リンク90を介して回転自在に連結してもよい。この場合には、第3リンク2の一端はスライダ50に回転自在に連結され、第3リンク2の他端はV字リンク90の回転軸91に回転自在に連結される。この構成では、第1リンク10と第2リンク20の回転軸1がV字リンク90の内側に位置し、第1リンク10と第2リンク20の相対回転に伴ってV字リンク90の角度が変化するため、油圧シリンダ30のストローク長を短くすることができ、油圧シリンダ30をコンパクトにすることができる。
【0074】
(6)上記実施形態では、ポンプポートPとタンクポートTは、シリンダブロック32の複数の外面のうち三面に形成される。しかし、ポンプポートPとタンクポートTは、シリンダブロック32の複数の外面のうち少なくとも二面に形成されればよい。また、シリンダブロック32の背面32dに、ポンプポートPとタンクポートTを形成してもよい。
【0075】
(7)上記実施形態では、第1給排ポート38Aと第2給排ポート38Bは、シリンダブロック32の外面のうち一面に形成される。しかし、第1給排ポート38Aと第2給排ポート38Bは、シリンダブロック32の外面のうち二面以上に形成してもよい。また、上記実施形態では、第1給排ポート38Aと第2給排ポート38Bは、シリンダブロック32の互いに異なる面に形成される。これに代えて、第1給排ポート38Aと第2給排ポート38Bは、シリンダブロック32の同じ面に形成してもよい。
【0076】
(8)上記実施形態では、モジュール101Aの第1リンク10又は第2リンク20と、モジュール101Bの第1リンク10又は第2リンク20との結合は、連結板80Aの締結穴60と連結板80Bの締結穴60とにわたって圧入される円柱状のダボ材を用いる形態について説明した。しかし、モジュール101Aとモジュール101Bの両リンクの結合方法は、これに限定されない、例えば、ダボ材を用いずに、電磁石や油圧クランプを利用して両リンクを結合してもよい。
【0077】
(9)上記実施形態では、モジュール101Aの連結板80Aとモジュール101Bの連結板80Bとを互いに面接触させて結合する形態について説明した。これに代わり、モジュール101Aの連結板80Aとモジュール101Bの連結板80Bとの間にスペーサを介在させ、スペーサを介してモジュール101Aとモジュール101Bを連結するようにしてもよい。具体例としては、モジュール101Aのシリンダブロック32と、モジュール101Bの第1リンク10又は第2リンク20とをスペーサを介して結合してもよい。スペーサを介在させることによって、モジュール101Aとモジュール101Bの間に隙間を設けることができる。
【0078】
(10)上記実施形態では、モジュール101Aとモジュール101Bが相対移動不能に連結する形態について説明した。これに代わり、モジュール101Aとモジュール101Bを、相対移動可能に連結するようにしてもよい。例えば、モジュール101Aとモジュール101Bをピンを介して連結し、ピンを中心として互いに回転可能又は揺動可能に、或いは回転可能かつ揺動可能に構成してもよい。この形態の場合には、モジュール101Aとモジュール101Bを互いに回転又は揺動するための動力源を設けてもよい。
【0079】
(11)上記実施形態では、ポンプ3から油圧シリンダ30に対する作動油の給排を制御する制御弁がサーボバルブ5である形態について説明した。制御弁は、サーボバルブ5には限定されず、電磁パイロットタイプの制御弁であってもよい。
【0080】
(12)上記実施形態では、モジュールロボット100が複数のモジュール101が連結されて構成される形態について説明した。しかし、本発明のモジュールロボットは、複数のモジュールが連結される構成には限らず、1つのモジュールで構成するようにしてもよい。
【0081】
(13)
図11を参照して、本実施形態の変形例に係るモジュール201について説明する。
図11は、モジュール201の模式図である。モジュール201は、第1リンク10の一端に相対回転自在に連結された第2リンク20Aと、第1リンク10の他端に相対回転自在に連結された第2リンク20Bと、第1リンク10と第2リンク20Aを相対移動させる第1油圧シリンダ30A(流体圧シリンダ)と、第1リンク10と第2リンク20Bを相対移動させる第2油圧シリンダ30B(流体圧シリンダ)と、第2リンク20Aと第1油圧シリンダ30Aのピストンロッド205aとに回転自在に連結された第3リンク202aと、第2リンク20Bと第2油圧シリンダ30Bのピストンロッド205bとに回転自在に連結された第3リンク202bと、を備える。第1油圧シリンダ30A及び第2油圧シリンダ30Bのピストンロッド205a,205bの直線運動を案内するリニアガイド204a,204bが第1リンク10に沿って設けられる。第1油圧シリンダ30A及び第2油圧シリンダ30Bは、互いに逆向きに第1リンク10に連結され、かつ上記実施形態と同様に第1リンク10に回転不能に連結される。つまり、第1油圧シリンダ30A及び第2油圧シリンダ30Bのそれぞれのシリンダブロック203a,203bは、第1リンク10の一部を構成する。
【0082】
第1油圧シリンダ30Aが伸縮作動すると、第1リンク10と第2リンク20Aは回転軸1aを中心として相対回転し、第2油圧シリンダ30Bが伸縮作動すると、第1リンク10と第2リンク20Bは回転軸1bを中心として相対回転する。このように、モジュール201は、回転軸1a,1bを中心とする2自由度の回転自由度を有し、全体として2次元の運動をする。なお、複数のモジュール201を連結することによって、モジュールロボットを構成してもよい。
【0083】
第1油圧シリンダ30Aのシリンダブロック203aと第2油圧シリンダ30Bのシリンダブロック203bとを一体に形成してもよい。その場合には、その一体に形成されたシリンダブロックに、第1油圧シリンダ30Aのシリンダ室31Aと第2油圧シリンダ30Bのシリンダ室31Bとが、互いに逆向きに開口して形成される。
【0084】
(14)
図12を参照して、本実施形態の変形例に係るモジュール301について説明する。
図12Aは、モジュール301の平面模式図であり、
図12Bはモジュール301の側面模式図である。モジュール301は、相対回転自在に連結された第1リンク10及び第2リンク20と、第1リンク10と第2リンク20を相対移動させる第1油圧シリンダ30A(流体圧シリンダ)及び第2油圧シリンダ30B(流体圧シリンダ)と、を有する。第1油圧シリンダ30A及び第2油圧シリンダ30Bは、互いに同じ向きに第1リンク10に連結され、かつ上記実施形態と同様に第1リンク10に回転不能に連結される。つまり、第1油圧シリンダ30A及び第2油圧シリンダ30Bのそれぞれのシリンダブロック307a,307bは、第1リンク10の一部を構成する。
【0085】
第1リンク10と第2リンク20は、ボールジョイント308を介して任意の方向に回転自在に連結される。モジュール301は、一対の第3リンク302a,302bをさらに備える。第3リンク302a,302bの一端は、それぞれ第1油圧シリンダ30A及び第2油圧シリンダ30Bのピストンロッド309a,309bに回転自在に連結される。第3リンク302a,302bの他端は、それぞれ第2リンク20にボールジョイント306a,306bを介して任意の方向に回転自在に連結される。第1油圧シリンダ30A及び第2油圧シリンダ30Bのピストンロッド309a,309bの直線運動を案内するリニアガイド303が第1リンク10に沿って設けられる。
【0086】
第1油圧シリンダ30Aと第2油圧シリンダ30Bが互いに逆向きに伸縮作動すると、第2リンク20は、
図12Aに示す正面視で、ボールジョイント308を中心として回転する。具体的には、第1油圧シリンダ30Aが収縮作動すると共に、第2油圧シリンダ30Bが伸長作動すると、第2リンク20は、
図12Aに示す正面視で、ボールジョイント308を中心として時計回りに回転する。第1油圧シリンダ30Aが伸長作動すると共に、第2油圧シリンダ30Bが収縮作動すると、第2リンク20は、
図12Aに示す正面視で、ボールジョイント308を中心として反時計回りに回転する。一方、第1油圧シリンダ30Aと第2油圧シリンダ30Bが互いに同じ向きに伸縮作動すると、第2リンク20は、
図12Bに示す側面視で、ボールジョイント308を中心として回転する。具体的には、第1油圧シリンダ30Aと第2油圧シリンダ30Bが伸長作動すると、第2リンク20は、
図12Bに示す側面視で、ボールジョイント308を中心として時計回りに回転する。第1油圧シリンダ30Aと第2油圧シリンダ30Bが収縮作動すると、第2リンク20は、
図12Bに示す側面視で、ボールジョイント308を中心として反時計回りに回転する。このように、モジュール301は、直交する2軸を中心とする2自由度の回転自由度を有し、全体として3次元の運動をする。なお、複数のモジュール301を連結することによって、モジュールロボットを構成してもよい。
【0087】
(15)上記実施形態では、作動液が作動油である液圧シリンダとしての油圧シリンダ30である形態について説明したが、作動液として作動油に代わり、作動水等の他の流体を用いてもよい。また、油圧シリンダ30に代えて、圧縮空気により駆動する空気圧シリンダを用いてもよい。つまり、第1リンク10と第2リンク20を相対移動させるアクチュエータは、流体圧シリンダであればよい。
【0088】
(16)
図13を参照して、本実施形態の変形例に係るモジュールロボット200について説明する。上記実施形態では、モジュール101同士が締結具を介して連結される形態について説明した。これに代わり、モジュールロボット200は、モジュール101同士の一部が一体に形成される。モジュールロボット200は、4つのモジュール101A,101B,101C,101Dにて構成される。4つのモジュール101A,101B,101C,101Dの一部であるシリンダブロック32が一体に形成される。つまり、4つのモジュール101A,101B,101C,101Dのシリンダブロック32は、共通の一部品として形成される。さらに、
図13に示すように、4つのモジュール101A,101B,101C,101Dの第1リンク10もシリンダブロック32と一体に形成してもよい。モジュールロボット200は、4つのモジュール101A,101B,101C,101Dにて構成される4自由度を有する。モジュールロボット200に、
図13中の紙面垂直上下方向のそれぞれに2つのモジュールを一体に形成し、6自由度を有するモジュールロボットとしてもよい。また、締結具を介してモジュールロボット200を複数連結してもよい。
【0089】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0090】
モジュールロボット100は、第1リンク10と、第1リンク10に相対移動自在に連結された第2リンク20と、第1リンク10と第2リンク20を相対移動させる油圧シリンダ30(流体圧シリンダ、液圧シリンダ)と、を備え、第1リンク10は、油圧シリンダ30のシリンダ室31が形成されたシリンダブロック32を有する。
【0091】
この構成では、油圧シリンダ30のシリンダ室31が形成されたシリンダブロック32は第1リンク10の一部を構成するため、部品点数が少なくシンプルな構造のモジュール101が得られる。よって、シンプルな構造のモジュールロボット100が得られる。
【0092】
モジュールロボット100は、複数のモジュール101が連結されて構成され、モジュール101は、第1リンク10、第2リンク20、及び油圧シリンダ30を有し、2つのモジュール101A,101Bは、一方の第1モジュール101Aの第1リンク10又は第2リンク20と、他方の第2モジュール101Bの第1リンク10又は第2リンク20とが結合されることによって連結され、第1モジュール101Aのシリンダブロック32は、第2モジュール101Bの第1リンク10又は第2リンク20と結合可能である。
【0093】
この構成では、複数のモジュール101を連結してモジュールロボット100を構成する際、第1リンク10の一部を構成するシリンダブロック32を利用して第1リンク10と第2リンク20を結合することができる。
【0094】
また、モジュールロボット200は、複数のモジュール101にて構成され、モジュール101同士の一部が一体に形成される。
【0095】
この構成では、締結具を介してモジュール101同士を連結する手間を省くことができる。
【0096】
また、シリンダブロック32の複数の外面のうち少なくとも二面には、ポンプ3(液圧供給源)に接続可能なポンプポートPと、タンク4に接続可能なタンクポートTと、が形成される。
【0097】
この構成では、モジュール101同士の連結態様に応じて、最適なポンプポートPとタンクポートTを使用することができる。
【0098】
また、シリンダブロック32には、ポンプポートP及びタンクポートTとシリンダ室31とを接続する油通路37が形成される。
【0099】
この構成では、シリンダブロック32には、シリンダ室31に加えて、ポンプポートP及びタンクポートTとシリンダ室31とを接続する油通路37も形成されるため、シリンダ室31に接続される配管が不要となり、モジュール101をシンプルな構造とすることができる。
【0100】
また、シリンダブロック32の複数の外面のうち少なくとも二面には、ポンプ3(液圧供給源)に接続可能なポンプポートPと、タンク4に接続可能なタンクポートTと、が形成され、モジュール101は、モジュール101の状態量を検出するセンサ6(状態量検出器)と、ポンプポートP及びタンクポートTとシリンダ室31との連通を制御するサーボバルブ5(制御弁)と、センサ6の検出結果に基づいてサーボバルブ5の動作を制御してモジュール101の運動を制御するコントローラ7と、をさらに有する。
【0101】
この構成では、モジュール101の運動を個別に制御することができる。
【0102】
また、シリンダブロック32の外面には、ポンプ3とタンク4に選択的に接続可能な給排ポート38が形成され、シリンダブロック32には、給排ポート38とシリンダ室31を接続する油通路39が形成される。
【0103】
この構成では、モジュールロボット100の形態に応じて、ポンプポートP及びタンクポートTの使用と、給排ポート38の使用とを適宜選択することができる。
【0104】
また、モジュールロボット100は、同一のモジュール101が少なくとも2つ連結されて構成される。
【0105】
この構成では、モジュールロボット100を低コストで製造することができる。
【0106】
また、第1モジュール101Aのシリンダブロック32には、第2モジュール101Bの第1リンク10又は第2リンク20と結合するための締結具が挿入される締結穴60が形成される。
【0107】
この構成では、シリンダブロック32は第1リンク10の一部を構成するため、部品点数が少なくシンプルな構造のモジュール101が得られる。
【0108】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0109】
本願は2020年10月2日に日本国特許庁に出願された特願2020-167735に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。