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  • 特許-廃炉方法及び固化材 図1
  • 特許-廃炉方法及び固化材 図2
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  • 特許-廃炉方法及び固化材 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】廃炉方法及び固化材
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20240514BHJP
   G21F 1/04 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G21F9/30 515
G21F1/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024039185
(22)【出願日】2024-03-13
【審査請求日】2024-03-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593012963
【氏名又は名称】村上 博
(74)【代理人】
【識別番号】100205626
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博
(72)【発明者】
【氏名】村上 博
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-200535(JP,A)
【文献】特開2017-009568(JP,A)
【文献】特開2019-052911(JP,A)
【文献】「燃料デブリ取り出し工法評価小委員会」報告書,日本,原子力損害賠償・廃炉等支援機構,2024年03月07日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/30
G21F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む廃炉方法。
(1)ジェットコンクリートと放射線吸収剤とを混合させ、固化時間が、調製直後から封止箇所への投入完了までにかかる時間T1よりも長く、廃棄水に混ざり合うまでの時間T2より短い時間TS1に設定される第1の固化剤によって漏水孔を封止する封止工程
(2)前記ジェットコンクリートと前記放射線吸収剤とを混合させ、固化時間が、デブリを粉砕する粉砕装置との原子炉格納容器への投入完了までの時間T3と、時間T3の経過後から粉砕混合工程の完了までの時間T4と、を加算した時間T5よりも長く、粉砕されたデブリが下方に沈降するまでにかかる時間T6よりも短い時間TS2に設定される第2の固化剤及び前記粉砕装置の原子炉格納容器への投入を行う固化剤投入工程
(3)前記粉砕装置によって、前記デブリの粉砕と、粉砕された前記デブリと前記第2の固化材との混合を行う粉砕混合工程
(4)前記第2の固化材の固化までの静置を行う静置工程
【請求項2】
請求項1に記載の第1の固化剤。
【請求項3】
請求項1に記載の第2の固化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃炉方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等に事故が起きた場合、核燃料が溶融して落下し、さらに冷えて固化したデブリが生じることがある。従来は、このデブリの除去に多大な時間と費用と労力が費やされてきた(例えば、非特許文献1。)。加えて、デブリの除去作業にはオペレータの被爆の危険がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】「燃料デブリ取り出しの状況」、https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/retrieval/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、デブリの処理を迅速化する廃炉方法を提供することである。
【0005】
なお、上記の「背景技術」、および「発明が解決しようとする課題」に記載した内容は、本発明をするに至った契機(きっかけ)を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、また、本発明の技術的範囲の限定解釈を許容するものでもない(平成17年(行ケ)第10042号、及び出願日における特許庁審査基準第II部第2章 第2節3.2.1参照。)。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の工程を含む廃炉方法:
(1)ジェットコンクリートと放射線吸収剤とを混合させ、固化時間が、第1の固化材JC1の調製直後から封止箇所への投入完了までにかかる時間T1よりも長く、第1の固化剤JC1が廃棄水DWに混ざり合うまでの時間T2より短い時間TS1に設定される第1の固化剤JC1によって漏水孔を封止する封止工程
(2)ジェットコンクリートと放射線吸収剤とを混合させ、固化時間が、第2の固化剤JC2及び粉砕装置Eの原子炉格納容器10への投入完了までの時間T3と、時間T3の経過後から粉砕混合工程の完了までの時間T4と、を加算した時間T5よりも長く、粉砕されたデブリDが下方に沈降するまでにかかる時間T6よりも短い時間TS2に設定される第2の固化剤JC2及び粉砕装置Eの原子炉格納容器10への投入を行う固化剤投入工程
(3)粉砕装置Eによって、デブリDの粉砕と粉砕されたデブリD第2の固化材JC2との混合を行う粉砕混合工程
(4)第2の固化材JC2の固化までの静置を行う静置工程
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、デブリの処理を迅速化する廃炉方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】核燃料の溶融事故が起きた原子炉1を模式的に示した断面図である。
図2】封止工程を示す図である。
図3】固化剤投入工程を示す図である。
図4】粉砕混合工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る廃炉方法を、図面を参照しながら詳細に説明する。
(基本的な考え方)
従来、デブリを原子炉から取り出し、処理して廃棄することが行われてきた。加えて、核燃料が溶融するような事故が起きた原子炉は再利用ができず、解体処理して廃棄されていた。また、このデブリ取り出し作業の間には大量の廃棄水が生じ、この核物質を含む廃棄水の処理もまた問題となってきた。
上述のように、事故が起きた原子炉は全体が廃棄され、再利用される物はほとんどない。そうすると、わざわざ分離処理し、それぞれを廃棄しても、結局管理施設に搬入されて放射線量が低下するまで放置されるのであるから、デブリやその他の部材を分離する必要はあまりないと言える。
本発明においては、事故が合起きた原子炉をデブリごと固化し、そのまま放射線量が低下するまで静置する方法を提供する。
【0010】
(廃炉方法)
(原子炉とデブリの構造)
図1は、核燃料の溶融事故が起きた原子炉1を模式的に示した断面図である。図1に示すように、原子炉1は、原子炉格納容器10と、原子炉格納容器10の内部に収容され、核燃料12を内部に有する圧力容器11と、原子炉格納容器10の内部と連通する圧力抑制室13と、を備える。
核燃料溶融事故が起きた場合、核燃料12の冷却が阻害され、高温になった核燃料12は核燃料の容器等とともに溶融して自重により落下し、冷えてデブリDが生成される。デブリDは、原子炉格納容器10の底部にも溶け落ちて固化することもある。
この場合、原子炉格納容器10の一部も溶融され、穴が開いて圧力抑制室13の外部にまで冷却水Wが漏れ出て廃棄水DWを生じさせる。また、圧力容器11を支える底部の材質Cを劣化させ、劣化材質RCが生成させる。
【0011】
(廃炉方法)
本実施形態の廃炉方法は、次の工程を含む。
(1)第1の固化剤JC1によって漏水孔を封止する封止工程
(2)第2の固化剤JC2及び粉砕装置Eの原子炉格納容器10への投入を行う固化剤投入工程
(3)粉砕装置Eによって、デブリDの粉砕と粉砕されたデブリD第2の固化材JC2との混合を行う粉砕混合工程
(4)第2の固化材JC2の固化までの静置を行う静置工程
【0012】
図2は、封止工程を示す図である。図2に示しように、圧力抑制室13を収容する収容室内に第1の固化剤JC1を流し込み、固化させて漏水孔を封止する。
【0013】
図3は、固化剤投入工程を示す図である。図3に示すように、先ず粉砕装置EをデブリDの近くに配置する。次に、第2の固化剤JC2をデブリDが隠れるまで投入する。
【0014】
図4は、粉砕混合工程を示す図である。図4に示すように、原子炉格納容器10の内部にデブリDが隠れる程度に第2の固化剤JC2を投入した後に、粉砕装置Eを起動させて第2の固化剤JC2と粉砕されたデブリDとを混合する。
【0015】
その後、静置工程としてそのまま静置する。
【0016】
デブリDが粉砕され、第2の固化剤JC2によって固化された原子炉1は、そのまま放射線量が低下するまで静置したまま管理される。
【0017】
(固化剤)
第1の固化剤JC1及び第2の固化剤JC2は、ともにジェットコンクリートと放射線吸収剤とを混合させて得られる混合物である。ジェットコンクリートと放射線吸収剤との混合比率は、混合物が固化できる上限まで放射線吸収剤を混合することが望ましいが、でブリDの量が少ない場合には放射線吸収剤を減量することも可能である。混合物が固化できる上限は、ジェットコンクリートの製品によって異なる。
【0018】
ジェットコンクリートは、通常のコンクリートより短時間により固化するコンクリートであり、例えば以下の製品が上梓されている。
・スーパージェットコンクリート(小野田ケミコ株式会社 製)
・デンカスーパーコンクリート(デンカ株式会社 製)
・ジェットコンクリート(住友大阪セメント株式会社 製)
【0019】
第1の固化剤JC1及び第2の固化剤JC2は、これらのジェットコンクリートの中から1種類以上選ばれるジェットコンクリートを用いることができる。第1の固化剤JC1及び第2の固化剤JC2は、固化の時間を調整する薬剤であるセッターの投入量を増減することにより、固化時間を調整できる。
【0020】
第1の固化剤JC1は、固化時間が、第1の固化材JC1の調製直後から封止箇所への投入完了までにかかる時間T1よりも長く、第1の固化剤JC1が廃棄水DWに混ざり合うまでの時間T2より短い時間TS1に設定される。
【0021】
第2の固化剤JC2は、固化時間が、第2の固化剤JC2及び粉砕装置Eの原子炉格納容器10への投入完了までの時間T3と、時間T3の経過後から粉砕混合工程の完了までの時間T4と、を加算した時間T5よりも長く、粉砕されたデブリDが下方に沈降するまでにかかる時間T6よりも短い時間TS2に設定される。
【0022】
放射線吸収剤は、いわゆる制御棒の材料や、いわゆる減速材の材料を粉砕した混合紛体を用いることができる。これらの材質としては、例えば炭化ホウ素、カドミウム合金、インジウム、銀、ハフニウムなどが挙げられ、これらのうち1種類以上の材質を用いることができる。廃棄される制御棒を粉砕して用いてもよい。また、これらに加えて鉛の化合物などの放射線の投下を抑制する物質の紛体を加えてもよい。
【0023】
粉砕装置)
粉砕装置Eは、化学式のものと機械式のものが挙げられる。
【0024】
化学式の粉砕装置Eは、TNT火薬などの火薬と、時間T3よりも長く時間T4よりも短い時間TEに設定される時限式起爆装置と、これらを固化材JC2に対して封止する容器と、を備える。時間TEは、複数の粉砕装置Eを使用する場合には少しずつずらして起爆させるようにそれぞれ設定する。
【0025】
機械式の粉砕装置Eは、デブリDを砕くブレードと、ブレードを駆動させえるモータと、を備える。
【0026】
(廃炉方法の効果)
以上述べたように、本字実施形態の廃炉方法は以下の工程を含む。
(1)ジェットコンクリートと放射線吸収剤とを混合させ、固化時間が、第1の固化材JC1の調製直後から封止箇所への投入完了までにかかる時間T1よりも長く、第1の固化剤JC1が廃棄水DWに混ざり合うまでの時間T2より短い時間TS1に設定される第1の固化剤JC1によって漏水孔を封止する封止工程
(2)ジェットコンクリートと放射線吸収剤とを混合させ、固化時間が、第2の固化剤JC2及び粉砕装置Eの原子炉格納容器10への投入完了までの時間T3と、時間T3の経過後から粉砕混合工程の完了までの時間T4と、を加算した時間T5よりも長く、粉砕されたデブリDが下方に沈降するまでにかかる時間T6よりも短い時間TS2に設定される第2の固化剤JC2及び粉砕装置Eの原子炉格納容器10への投入を行う固化剤投入工程
(3)粉砕装置Eによって、デブリDの粉砕と粉砕されたデブリD第2の固化材JC2との混合を行う粉砕混合工程
(4)第2の固化材JC2の固化までの静置を行う静置工程
【0027】
従って、デブリの処理を迅速化する廃炉方法を提供することができるという効果がある。
【0028】
また、第1の固化剤JC1及び第2の固化剤JC2は、ジェットコンクリートと放射線吸収剤との混合物であるため、固化後に核分裂反応が起こることを防止できるという効果がある。
【符号の説明】
【0029】
1 原子炉
10 原子炉格納容器
11 圧力容器
12 核燃料
13 圧力抑制室
D デブリ
DW 廃棄水
E 粉砕装置
JC1 第1の固化剤
JC2 第2の固化剤
RC 劣化材質
W 冷却水
【要約】
【課題】デブリの処理を迅速化する廃炉方法を提供する。
【解決手段】廃炉方法は以下の工程を含む。
(1)ジェットコンクリートと放射線吸収剤とを混合させた第1の固化剤JC1によって漏水孔を封止する封止工程
(2)ジェットコンクリートと放射線吸収剤とを混合させた第2の固化剤JC2及び粉砕装置Eの原子炉格納容器10への投入を行う固化剤投入工程
(3)粉砕装置Eによって、デブリDの粉砕と、粉砕されたデブリDと第2の固化材JC2との混合を行う粉砕混合工程
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4