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  • 特許-塗膜剥離剤及び塗膜の剥離方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】塗膜剥離剤及び塗膜の剥離方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 9/00 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
C09D9/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019175793
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021050308
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000123491
【氏名又は名称】化研テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 薫夫
(72)【発明者】
【氏名】赤松 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】中塚 祥一
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-168363(JP,A)
【文献】特開2002-275394(JP,A)
【文献】特開2007-224165(JP,A)
【文献】特開平10-168364(JP,A)
【文献】国際公開第2009/051237(WO,A1)
【文献】特開2015-074682(JP,A)
【文献】特開平11-148032(JP,A)
【文献】特表2001-502376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0023047(US,A1)
【文献】特開平04-359257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の粗い表面に設けられた塗膜を剥離するための塗膜剥離剤であって、
ベンジルアルコールと、
塩基性化合物と、
水とを含み、
ジメチルスルホキシド及びN-メチルピロリドンを含まず、
前記塩基性化合物は、水酸化化合物を含む、又は前記水酸化化合物及びアミン化合物を含み、
前記水酸化化合物は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムを含み、
前記水は、その含有割合が前記塗膜剥離剤の全量に対して10~80質量%であり、
前記ベンジルアルコールは、その含有割合が前記塗膜剥離剤の全量に対して15~80質量%であり、
前記塩基性化合物の含有割合は、1質量%以上3質量%以下であり、
前記ベンジルアルコールの含有割合と、前記塩基性化合物の含有割合と、前記水の含有割合との合計は、前記塗膜剥離剤の全量に対して90質量%以上100質量%以下であり、
前記塗膜剥離剤のpHは、9以上12.5以下であり、
前記塗膜剥離剤は、
前記ベンジルアルコールを含む有機相と、前記水を含む水相とを含み、
前記塗膜を剥離する温度において静置時に、前記有機相からなる第一層と前記水相からなる第二層とを含む少なくとも2層以上に分離していて、乳化していなく、
前記塗膜は、塗料に由来する塗膜である、塗膜剥離剤。
【請求項2】
前記水酸化化合物は、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びテトラアルキルアンモニウム水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1に記載の塗膜剥離剤。
【請求項3】
前記アミン化合物は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-シクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン、N,N’-ジメチルデシルアミン、N,N’-ジメチルオクチルアミン、トリオクチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、ジブチルアミン、ベンジルアミン及びジメチルベンジルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1又は請求項2に記載の塗膜剥離剤。
【請求項4】
親水性グリコール化合物を含まない、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の塗膜剥離剤。
【請求項5】
基材の粗い表面に設けられた塗膜の剥離方法であって、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の塗膜剥離剤を前記塗膜に接触させることを含み、
前記塗膜は、塗料に由来する塗膜である、塗膜の剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜剥離剤及び塗膜の剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドア等の被塗装物への塗装は、通常塗装用の固定治具又は可動式治具(ストッパー治具等)に上記被塗装物を固定した状態で行われている。このような塗装用治具を用いた塗装では、複数回の塗装を行うと上記塗装用治具にも塗料が付着する傾向がある。上記塗装用治具に塗料が付着し硬化すると、例えば、静電塗装時において上記塗装用治具が導通不良を起こす場合がある。そのため、上記塗装用治具に付着した塗料(以下、「塗膜」という場合がある。)は定期的に、剥離する必要がある。
【0003】
特開2009-203403号公報(特許文献1)には、高温使用時でも鉄系素材に錆を発生させないように腐食抑制添加成分を添加した塗膜用水系剥離剤であって、1価または2価のアルコール系溶剤を5~90重量%、水を5重量%以上、腐食抑制添加成分としてグルコン酸塩を0.01~10重量%含有することを特徴とする塗膜用水系剥離剤が開示されている。
【0004】
特開平5-279607号公報(特許文献2)には、N-メチル-2-ピロリドンを70~100重量%、および水を0~30重量%含有する液から成る、金属表面に付着した熱硬化性樹脂の塗膜剥離剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-203403号公報
【文献】特開平5-279607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、塗装品質(艶、輝き、塗装不良の低減等)に要求される水準が高まっている。例えば、塗装用治具に付着した塗膜が脱落又は飛散し被塗装物に付着することがあり、このような異物混入による塗装不良を低減することが求められている。上記塗装不良を低減するために、塗装を1回行う毎に塗装用治具を清浄化することが求められており、これまで以上に短時間で塗膜を剥離できる塗膜剥離剤の開発が望まれている。特に、塗装用治具における粗い表面又は溶接部に付着している塗膜は、アンカー効果によって上記治具に対する密着力が増大していることから、このような部位に設けられた塗膜を効率よく剥離できる塗膜剥離剤の開発が望まれている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、剥離性に優れ、粗い表面に設けられた塗膜の剥離に適した塗膜剥離剤、及び塗膜の剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を進めた結果、特定の構造を有する芳香族アルコールと塩基性化合物と水とを含む塗膜剥離剤が、剥離性に優れ、更に粗い表面に設けられた塗膜の剥離に適していることを見いだし、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
[1]基材の表面に設けられた塗膜を剥離するための塗膜剥離剤であって、
下記式(1)で表される芳香族アルコールと、
塩基性化合物と、
水とを含み、
上記塩基性化合物は、水酸化化合物又はアミン化合物を含み、
上記水は、その含有割合が上記塗膜剥離剤の全量に対して10~94質量%であり、
上記塗膜剥離剤は、
上記芳香族アルコールを含む有機相と、上記水を含む水相とを含み、
上記塗膜を剥離する温度において静置時に、上記有機相からなる第一層と上記水相からなる第二層とを含む少なくとも2層以上に分離している、塗膜剥離剤。
【化1】

(式(1)中、
Lは炭素数1~6の2価の炭化水素基を示し、
Rは水素原子、又は炭素数1~3の炭化水素基を示し、上記2価の炭化水素基に含まれる-CH-は、-O-に置き換わっていてもよい。)
[2]上記水酸化化合物は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びテトラアルキルアンモニウム水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、[1]に記載の塗膜剥離剤。
[3]上記アミン化合物は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-シクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン、N,N’-ジメチルデシルアミン、N,N’-ジメチルオクチルアミン、トリオクチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、ジブチルアミン、ベンジルアミン及びジメチルベンジルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、[1]又は[2]に記載の塗膜剥離剤。
[4]上記芳香族アルコールの含有割合と、上記塩基性化合物の含有割合と、上記水の含有割合との合計は、上記塗膜剥離剤の全量に対して90質量%以上100質量%以下である、[1]から[3]のいずれかに記載の塗膜剥離剤。
[5]上記塩基性化合物の含有割合は、0.1質量%以上10質量%以下であり、
上記塗膜剥離剤のpHは、9以上12.5以下である、[1]から[4]のいずれかに記載の塗膜剥離剤。
[6]親水性グリコール化合物の含有割合は、上記塗膜剥離剤の全量に対して0質量%を超えて0.01質量%以下である、[1]から[5]のいずれかに記載の塗膜剥離剤。
[7]親水性グリコール化合物を含まない、[1]から[5]のいずれかに記載の塗膜剥離剤。
[8]上記Lは炭素数1~3のアルキレン基を示し、上記Rは水素原子を示す、[1]から[7]のいずれかに記載の塗膜剥離剤。
[9]上記芳香族アルコールは、ベンジルアルコール、4-イソプロピルベンジルアルコール、1-フェニルエタノール、フェネチルアルコール、γ-フェニルプロピルアルコール、α,α-ジメチルフェネチルアルコール、1-フェニル-1-プロパノール、シンナミルアルコール、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、及びベンジルグリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む、[1]から[7]のいずれかに記載の塗膜剥離剤。
[10]基材の表面に設けられた塗膜の剥離方法であって、[1]から[9]のいずれかに記載の塗膜剥離剤を上記塗膜に接触させることを含む、塗膜の剥離方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、剥離性に優れ、粗い表面に設けられた塗膜の剥離に適した塗膜剥離剤、及び塗膜の剥離方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例の試料No.1の塗膜剥離剤と比較例の試料No.101の塗膜剥離剤それぞれを用いて剥離処理を行ったときの経時変化を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態(以下「本実施形態」と記す。)について説明する。ただし、本実施形態はこれに限定されるものではない。本明細書において「A~Z」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上Z以下)を意味する。Aにおいて単位の記載がなく、Zにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とZの単位とは同じである。
【0013】
≪塗膜剥離剤≫
本実施形態に係る塗膜剥離剤は、基材の表面に設けられた塗膜を剥離するための塗膜剥離剤であって、
下記式(1)で表される芳香族アルコールと、
塩基性化合物と、
水とを含み、
上記塩基性化合物は、水酸化化合物又はアミン化合物を含み、
上記水は、その含有割合が上記塗膜剥離剤の全量に対して10~94質量%であり、
上記塗膜剥離剤は、
上記芳香族アルコールを含む有機相と、上記水を含む水相とを含み、
上記塗膜を剥離する温度において静置時に、上記有機相からなる第一層と上記水相からなる第二層とを含む少なくとも2層以上に分離している。式(1)中、Lは炭素数1~6の2価の炭化水素基を示し、Rは水素原子、又は炭素数1~3の炭化水素基を示し、上記2価の炭化水素基に含まれる-CH-は、-O-に置き換わっていてもよい。
【0014】
【化2】
【0015】
上記塗膜剥離剤は、基材の表面に設けられた塗膜を剥離するために用いられる。上記基材としては、通常用いられる材料であればどのような基材であってもよい。上記基材の材料としては、例えば、鉄、SUS、及びアルミニウム等の金属、並びに、ポリアミド(ナイロン)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン及びエポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0016】
上記基材の表面に設けられた塗膜は、通常用いられる塗料に由来する塗膜であればどのような塗膜であってもよい。上記塗料としては、例えば、ポリエステル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、アルキドメラミン樹脂塗料、及びニトロセルロース系塗料などが挙げられる。
上記塗膜は、上記基材の直上に設けられていてもよい。上記基材の表面が粗い場合、上記塗膜は、金属めっき(Ni、Sn、Cr等)及び、上記塗膜とは種類が異なる樹脂材料のコーティングなどのプレコートを介して基材の上に設けられていてもよい。
【0017】
<芳香族アルコール>
上記塗膜剥離剤は、芳香族アルコールを含む。上記芳香族アルコールは、上記式(1)で表される。上記芳香族アルコールは、公知の出発物質から公知の方法によって合成してもよい。上記芳香族アルコールは、市販品をそのまま用いてもよい。
【0018】
上記式(1)中、Lは炭素数1~6の2価の炭化水素基を示す。上記炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。上記2価の炭化水素基に含まれる-CH-は、-O-に置き換わっていてもよい。上記2価の炭化水素基に含まれる-CH-が-O-に置き換わっている場合、置き換わる前の炭素数を当該炭化水素基の炭素数とする。
Lは、-(CH-(nは1~6の整数、好ましくは1~3の整数)、-(O-C-(mは1又は2の整数)、-CH=CH-CH-、-CH-C(CH-、-CH(CH)-、及び-CH-O-C-からなる群より選ばれる2価の基であることが好ましい。Lは、-(CH-(nは1~3の整数)で示される2価の基であることがより好ましい。
【0019】
上記式(1)中、Rは水素原子、又は炭素数1~3の炭化水素基を示す。上記炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。Rは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、又はイソプロピル基であることが好ましい。Rは、水素原子であることがより好ましい。
【0020】
本実施形態の一側面において、上記式(1)中、上記Lは炭素数1~3のアルキレン基(すなわち、-(CH-(nは1~3の整数))を示し、上記Rは水素原子を示すことが好ましい。
【0021】
上記芳香族アルコールは、ベンジルアルコール、4-イソプロピルベンジルアルコール、1-フェニルエタノール、フェネチルアルコール、γ-フェニルプロピルアルコール、α,α-ジメチルフェネチルアルコール、1-フェニル-1-プロパノール、シンナミルアルコール、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、及びベンジルグリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。上記芳香族アルコールは、ベンジルアルコールを含むことがより好ましい。上述した芳香族アルコールの構造式を以下に示す。
【0022】
【化3】
【0023】
【化4】
【0024】
上記芳香族アルコールは、その含有割合が上記塗膜剥離剤の全量に対して6~90質量%であることが好ましく、10~87質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが更に好ましく、15~80質量%であることが更により好ましく、20~70質量%であることが特に好ましい。このようにすることで、剥離性が更に優れる塗膜剥離剤となる。上記芳香族アルコールの含有割合は、ガスクロマトグラフィーによる分析で求めることができる。ガスクロマトグラフィーによる分析の条件は以下の通りである。
装置:ガスクトマログラフ GC-14B(株式会社島津製作所製)
検出器:熱伝導度型検出器(TCD)
カラム:Thermon-3000(信和化工株式会社製)
気化室温度:160℃
検出器温度:160℃
【0025】
<塩基性化合物>
上記塗膜剥離剤は、塩基性化合物を含む。ここで、「塩基性化合物」とは、水に溶解したときに水酸化物イオンを生成する化合物を意味する。上記水酸化物イオンは、塩基性化合物自身が水中で解離することで生成されてもよい。上記水酸化物イオンは、塩基性化合物が水分子からプロトンを受け取ることで生成されてもよい。本実施形態において、上記塩基性化合物は、水酸化化合物又はアミン化合物を含む。以下、水酸化化合物及びアミン化合物について説明する。
【0026】
(水酸化化合物)
本実施形態において、「水酸化化合物」は水に溶解したときに水酸化物イオンを放出する化合物を意味する。上記水酸化化合物としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びテトラアルキルアンモニウム水酸化物等が挙げられる。すなわち、上記水酸化化合物は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びテトラアルキルアンモニウム水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。上記水酸化化合物は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムを含むことがより好ましい。
【0027】
(アミン化合物)
本実施形態において、「アミン化合物」はアンモニアの水素原子を炭化水素基で置換した化合物を意味する。このとき当該炭化水素基は、置換基(水酸基等)を有していてもよい。上記アミン化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン、並びに、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-シクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン、N,N’-ジメチルデシルアミン、N,N’-ジメチルオクチルアミン、トリオクチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、ジブチルアミン、ベンジルアミン及びジメチルベンジルアミンが挙げられる。すなわち、上記アミン化合物は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-シクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン、N,N’-ジメチルデシルアミン、N,N’-ジメチルオクチルアミン、トリオクチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、ジブチルアミン、ベンジルアミン及びジメチルベンジルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。上記アミン化合物は、モノエタノールアミン又はジエタノールアミンを含むことがより好ましい。
【0028】
上記塩基性化合物の含有割合は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。上記塩基性化合物の含有割合は、電位差滴定法(測定温度:20℃)で求めることが可能である。電位差滴定法に用いる装置としては、例えば、京都電子工業株式会社製の電位差自動滴定装置 Model AT-710Mが挙げられる。
【0029】
<水>
上記塗膜剥離剤は、水を含む。上記水は、各種工業製品の原料として用いられる水、水道水、井戸水等であれば特に制限はない。上記水は、蒸留水であってもよいし、イオン交換水であってもよい。本実施形態の一側面において、上記水は、その電気伝導率が1~300μS/cmであってもよいし、1~100μS/cmであってもよい。
【0030】
上記水は、その含有割合が上記塗膜剥離剤の全量に対して10~94質量%であり、13~90質量%であることが好ましく、15~90質量%であることがより好ましく、20~85質量%であることが更に好ましく、30~80質量%であることが更により好ましい。このようにすることで、剥離性が更に優れる塗膜剥離剤となる。上記水の含有割合は、カールフィッシャー水分計による分析で求めることができる。カールフィッシャー水分計による分析の条件は以下の通りである。
カールフィッシャー水分計の分析条件
装置:カールフィッシャー水分計 MKS-500(京都電子工業株式会社製)
測定方法:容量滴定法
測定温度:20℃
【0031】
本実施形態の一側面において、上記芳香族アルコールの含有割合と、上記塩基性化合物の含有割合と、上記水の含有割合との合計は、上記塗膜剥離剤の全量に対して90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、99.9質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。本実施形態において、上記塗膜剥離剤は、上記式(1)で表される芳香族アルコール、上記塩基性化合物及び水のみからなっていてもよい。
【0032】
<脂肪族炭化水素>
上記塗膜剥離剤は、炭素数4~12の脂肪族炭化水素を更に含むことが好ましく、炭素数4~8の脂肪族炭化水素を更に含むことがより好ましい。このようにすることで、剥離対象物によっては剥離性が更に優れる塗膜剥離剤となる。上記炭素数4~12の脂肪族炭化水素としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等が挙げられる。上記塗膜剥離剤は、ヘキサン、イソヘキサン、及びヘプタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましい。上記炭素数4~12の脂肪族炭化水素は、後述する芳香族アルコールを含む有機相(「第一の有機相」という場合がある。)に含まれるか、又は第二の有機相(芳香族アルコールを含む有機相とは異なる相)を形成する。
【0033】
上記炭素数4~12の脂肪族炭化水素は、その含有割合が、上記塗膜剥離剤の全量に対して1~10質量%であることが好ましく、3~6質量%であることがより好ましい。
【0034】
<セルロース誘導体及び過酸化物>
本実施形態の一側面において、上記塗膜剥離剤は、セルロース誘導体及び過酸化物それぞれの含有割合が上記塗膜剥離剤の全量に対して0質量%を超えて0.01質量%以下であることが好ましい。セルロース誘導体の含有割合を上述の範囲にすることによって、塗膜剥離剤の安定的な乳化が抑えられ、優れた剥離性を維持することが可能になる。過酸化物の含有割合を上述の範囲にすることによって、上記塗膜剥離剤は「毒物及び劇物取締法」における毒物及び劇物に該当しなくなる。すなわち、当該塗膜剥離剤は取り扱い上の安全性が向上する(例えば、人体への悪影響を抑える等)と把握できる。本実施形態の一側面において、上記塗膜剥離剤は、上記セルロース誘導体及び上記過酸化物を含まないことがより好ましい。
【0035】
(セルロース誘導体)
本実施形態において上記セルロース誘導体としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ブチルセルロース、プロピルセルロース等が挙げられる。すなわち、上記塗膜剥離剤は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ブチルセルロース、及びプロピルセルロースを含まないことが好ましい。
本実施形態の一側面において、上記塗膜剥離剤は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ブチルセルロース、及びプロピルセルロースからなる群より選ばれる少なくとも一種のセルロース誘導体を含まないことが好ましい。
【0036】
(過酸化物)
本実施形態において上記過酸化物としては、過酸化水素、尿素過酸化物、過酢酸等が挙げられる。すなわち、上記塗膜剥離剤は、過酸化水素、尿素過酸化物、及び過酢酸を含まないことが好ましい。
本実施形態の一側面において、上記塗膜剥離剤は、過酸化水素、尿素過酸化物、及び過酢酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の過酸化物を含まないことが好ましい。
【0037】
<親水性グリコール化合物>
本実施形態において、親水性グリコール化合物の含有割合は、上記塗膜剥離剤の全量に対して0質量%を超えて0.01質量%以下であることが好ましい。本実施形態において、「親水性」とは、水に対する溶解度が50質量%を超える性質を意味する。親水性グリコール化合物の含有割合を上述の範囲にすることによって、上記塗膜剥離剤は、上記塗膜を剥離する温度において静置時に、後述する有機相からなる第一層と水相からなる第二層とを含む少なくとも2層以上に分離することが可能になる。本実施形態の一側面において、上記塗膜剥離剤は、上記親水性グリコール化合物を含まないことがより好ましい。
【0038】
本実施形態において上記親水性グリコール化合物としては、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。すなわち、上記塗膜剥離剤は、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルを含まないことが好ましい。
本実施形態の一側面において、上記塗膜剥離剤は、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種の親水性グリコール化合物を含まないことが好ましい。
【0039】
<その他の成分>
本実施形態に係る塗膜剥離剤は、本発明の効果が奏される限りにおいて、その他の成分が更に含まれていてもよい。上記その他の成分としては、例えば、界面活性剤、防錆剤、pH調整剤、キレート剤、増粘剤、湿潤剤、蒸発遅延剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、香料及び防腐剤等が挙げられる。
【0040】
<塗膜剥離剤の特性>
本実施形態において、上記塗膜剥離剤は上記芳香族アルコールを含む有機相(第一の有機相)と、上記水を含む水相とを含む。上記塩基性化合物は、上記有機相に含まれていてもよいし、上記水相に含まれていてもよいし、両相共に含まれていてもよい。上記塗膜剥離剤は、上記塗膜を剥離する温度において静置時に、上記有機相からなる第一層と上記水相からなる第二層とを含む少なくとも2層以上に分離している。ここで「塗膜を剥離する温度」とは、剥離処理において上記塗膜が剥離しうる、塗膜剥離剤の温度を意味する。当該温度は、例えば、20~120℃であってもよいし、30~100℃であってもよいし、40~80℃であってもよい。「静置時」とは、上記塗膜剥離剤が、重力以外の外力を受けていない状態を4時間維持した時を意味する。より具体的には、上記「静置時」は上記塗膜剥離剤が、振動、回転及び撹拌されていない状態を4時間維持した時と把握することもできる。上記塗膜剥離剤は、上記塗膜を剥離する温度において静置すると上記有機相からなる第一層と上記水相からなる第二層とを含む少なくとも2層以上に分離する点において、乳化した塗膜剥離剤とは異なるものである。ここで、「乳化した塗膜剥離剤」とは、長期間(例えば、24時間)乳化した状態を維持している塗膜剥離剤のことを意味する。
【0041】
上記塗膜剥離剤が炭素数4~12の脂肪族炭化水素を更に含む場合、上記塗膜剥離剤は、上記塗膜を剥離する温度において静置時に、上記第一の有機相からなる第一層と、上記水相からなる第二層と、上記炭素数4~12の脂肪族炭化水素を含む第二の有機相からなる第三層とに3層分離してもよい。
本実施形態の一側面において、上記塗膜剥離剤は、上記塗膜を剥離する温度において静置時に、4層以上に分離してもよい。
【0042】
上記塗膜剥離剤が上記第一の有機相と、上記水相とからなる場合、上記塗膜剥離剤は、静置時に上記水相が上層となり、上記第一の有機相が下層となる。すなわち、上記塗膜剥離剤は、静置時に上記第一の有機相が大気に触れることがない。そのため、上記塗膜剥離剤は、引火性がほとんどないと本発明者らは考えている。
【0043】
上記塗膜剥離剤のpHは、9以上12.5以下であることが好ましく、9.5以上11.7以下であることがより好ましい。当該pHをこのようにすることで、優れた作業環境安全性及び剥離性が得られることが可能になる。
本実施形態の一側面において、上記塩基性化合物の含有割合は、0.1質量%以上10質量%以下であり、上記塗膜剥離剤のpHは、9以上12.5以下であることが好ましい。
【0044】
≪塗膜剥離剤の製造方法≫
本実施形態に係る塗膜剥離剤の製造方法は、上記芳香族アルコールと上記塩基性化合物と上記水とを準備する工程と、上記芳香族アルコール及び上記塩基性化合物を上記水に添加する工程を含む。当該添加する工程は、どのような手法を用いてもよい。添加する工程としては、例えば、フラスコ内で、上記芳香族アルコール及び上記塩基性化合物を上記水に加えること、及び化学プラント等において、工業的規模で上述した芳香族アルコール及び上記塩基性化合物を上記水に加えること等が挙げられる。
【0045】
≪塗膜の剥離方法≫
本実施形態に係る塗膜の剥離方法は、
基材の表面に設けられた塗膜の剥離方法であって、上記塗膜剥離剤を上記塗膜に接触させることを含む。
【0046】
上記塗膜剥離剤を上記塗膜に接触させる方法は特に制限されない。当該方法は、例えば、浸漬、塗布、及びスプレー又はシャワーによる噴霧などの方法によって、大気中、減圧下、または加圧下において常温下又は加熱下で接触させることが挙げられる。浸漬によって上記塗膜剥離剤を上記塗膜に接触させる場合、必要に応じて、超音波処理、バブリング処理、揺動等の操作を行ってもよい。当該方法は、加温した上記塗膜剥離剤が投入された剥離剤槽に、塗膜を有する基材を浸漬して、上記塗膜を剥離することが好ましい。このとき、上記塗膜剥離剤を撹拌して上記水相と上記有機相とが均一に分散した状態とすることが好ましい。浸漬する時間は、1分間~60分間であることが好ましい。
【0047】
本実施形態の塗膜の剥離方法は、上記塗膜剥離剤の温度を20~120℃とすることが好ましく、30~100℃とすることがより好ましく、40~80℃とすることが更に好ましい。
【0048】
その後、通常の洗浄、乾燥で塗膜剥離剤を、塗膜が剥離された上記基材から除去すればよい。例えば塗膜が剥離された上記基材を、水、アセトン、イソプロピルアルコールなどを用いて洗浄した後、室温で乾燥すればよい。
【0049】
本実施形態に係る塗膜剥離剤は、上述した塗装用治具の他にも、自動車用部品、自転車用部品、精密機器、及び電子部品の外装の塗装物に対する塗膜の剥離にも好適に用いることができる。
【実施例
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
≪原料≫
本実施例において使用した原料となる化合物の名称等を以下に示す。
ベンジルアルコール :東京応化工業株式会社製、商品名ベンジルアルコール
水酸化カリウム :東亜合成株式会社製、商品名フレーク苛性カリ
水酸化ナトリウム :株式会社AGC製、商品名苛性ソーダ
モノエタノールアミン :株式会社日本触媒製、商品名MEA
ジエタノールアミン :株式会社日本触媒製、商品名DEA
ジエチレングリコールモノメチルエーテル :三協化学株式会社製、商品名メチルカルビトール
【0052】
≪実験:各塗膜剥離剤の剥離性の比較≫
<塗膜剥離剤の作製>
まず、表1に示される配合組成に基づいて、各原料を水に添加することによって、試料No.1~10及び試料No.101~103の塗膜剥離剤を作製した。試料No.1~10及び試料No.101の塗膜剥離剤は、常温(25℃)及び上記塗膜を剥離する温度(50℃)において、静置した状態では、水相と有機相の2層に分離していた。
【0053】
<塗膜に対する剥離性の評価>
(テストピースの準備)
以下の手順によって、剥離性の評価に用いるためのテストピースを作製した。具体的には、まず、材質が鋳鉄である基材(形状:丸棒に平板を溶接した形状)を準備した。準備した基材の表面粗さRaは、平滑部において1~3μmであり、溶接部において5~7μmであった。次に準備した基材を脱脂した後、その表面に白色の塗料(日本ペイント株式会社製、商品名R-241MB、エポキシ系樹脂塗料)をカチオン電着塗装によって塗装した(塗膜厚:20~25μm)。その後、上記白色の塗料を乾燥させて、白色の塗膜が設けられたテストピースを得た。得られたテストピースにおける平滑部と溶接部(粗い表面の部分)とに着目して、以下の評価試験を行った。
【0054】
(剥離性の評価試験)
以下の手順で、試料No.1~10及び試料No.101~103の塗膜剥離剤の剥離性を評価した。まず、ビーカー(500ml)に上記塗膜剥離剤を400ml加えて、50℃になるまで加温した。次に加温された塗膜剥離剤を撹拌して水相と有機相とが分散するようにした。上述の分散した状態を維持しながら上記塗膜剥離剤にテストピースを浸漬した。テストピースを上記塗膜剥離剤に浸漬してから所定の時間が経過した後に、上記テストピースを取り出し、水洗後、目視によって塗膜の剥離状態を観察した(例えば、図1)。塗膜が完全に剥離するまでの浸漬時間に応じて以下の基準で評価を行った。なお、得られたテストピースにおける平滑部と溶接部とに着目して、評価試験を行った。評価結果を表1に示す。表1中、「-」で示されている箇所は、該当する成分を加えなかったことを示している。表1において、試料No.1~10は、実施例に相当する。試料No.101~103は、比較例に相当する。
【0055】
評価ランクの基準(平滑部)
Sランク :20分間以下
Aランク :20分間を超えて、25分間以下
Bランク :25分間を超えて、30分間以下
Cランク :30分間を超えて、40分間以下
Dランク :40分間を超えて、50分間以下
Eランク :50分間を超えて、60分間以下
Fランク :60分間超
【0056】
評価ランクの基準(溶接部)
Sランク :60分間以下
Aランク :60分間を超えて、90分間以下
Bランク :90分間を超えて、120分間以下
Cランク :120分間を超えて、180分間以下
Dランク :180分間を超えて、240分間以下
Eランク :240分間を超えて、300分間以下
Fランク :300分間超
【0057】
【表1】
【0058】
表1の結果から、芳香族アルコール(ベンジルアルコール)と、塩基性化合物(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジブチルアミン又はジメチルベンジルアミン)と、水とを含む塗膜剥離剤(試料No.1~10)は、平滑部及び溶接部共に、Sランク又はAランクを示していた。一方、芳香族アルコール及び水を含むが、塩基性化合物を含まない塗膜剥離剤(試料No.101)は、溶接部における剥離性がFランクであった。また、芳香族アルコール、塩基性化合物及び水に加えて、親水性グリコール化合物を含む塗膜剥離剤(試料No.102及び103)は、平滑部、溶接部共に剥離性がBランク以下であった。
以上の結果から、芳香族アルコールと、塩基性化合物と、水とを含む塗膜剥離剤は、剥離性に優れ、粗い表面に設けられた塗膜の剥離に適していることが分かった。
【0059】
以上のように本発明の実施形態及び実施例について説明を行なったが、上述の各実施形態及び各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0060】
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
図1