(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】電気的駆動弁
(51)【国際特許分類】
F16K 27/02 20060101AFI20240514BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
F16K27/02
F16K31/06 305K
(21)【出願番号】P 2021214332
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【氏名又は名称】増子 尚道
(72)【発明者】
【氏名】渡利 大介
(72)【発明者】
【氏名】小島 正至
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-120583(JP,A)
【文献】特開2008-261601(JP,A)
【文献】特開2019-007572(JP,A)
【文献】特開2016-089969(JP,A)
【文献】特開2014-152850(JP,A)
【文献】国際公開第2014/067521(WO,A1)
【文献】特開2008-275198(JP,A)
【文献】特開平10-267470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00- 27/12
F16K 31/06- 31/11
B21C 23/00- 35/06
F25B 41/335
F25B 41/345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を内部に有する弁本体と、
前記弁本体に形成され前記弁室に連通する第1流路口と、
前記弁本体に形成され前記弁室に連通する第2流路口と、
弁座を有するとともに前記弁室に開口するように前記第1流路口または前記第2流路口と前記弁室との間に備えた弁口と、
中心軸線方向に移動する弁体と、
前記弁体を駆動するアクチュエータと
を備え、
前記弁本体を、軸線方向に延びる貫通孔を有する中空押出材で形成し
、
前記貫通孔の内周面部に前記弁座を形成した
ことを特徴とする電気的駆動弁。
【請求項2】
前記第1流路口または前記第2流路口の中心軸線と前記貫通孔の中心軸線が一致している
請求項1に記載の電気的駆動弁。
【請求項3】
弁室を内部に有する弁本体と、
前記弁本体に形成され前記弁室に連通する第1流路口と、
前記弁本体に形成され前記弁室に連通する第2流路口と、
弁座を有するとともに前記弁室に開口するように前記第1流路口または前記第2流路口と前記弁室との間に備えた弁口と、
中心軸線方向に移動する弁体と、
前記弁体を駆動するアクチュエータと
を備え、
前記弁本体を、軸線方向に延びる貫通孔を有する中空押出材で形成した
電気的駆動弁であって、
前記電気的駆動弁は、冷媒の流入路および冷媒の流出路を備えたハウジング部材に形成された弁装着穴に前記弁本体を挿入することにより当該ハウジング部材に装着されるカートリッジ式の電気的駆動弁であり、
前記弁本体の上端部外周面に、当該弁本体の中心軸線に平行で且つ互いに平行に広がる一対の平面部を備えた
ことを特徴とする電気的駆動弁。
【請求項4】
前記弁本体は、前記弁室に連通し前記第1流路口または前記第2流路口とすることが可能な2つの開孔を前記弁本体の側面部に備え、
当該2つの開孔のうちの一方は、前記一対の平面部のうちの一方の直下に配置され、
当該2つの開孔のうちの他方は、前記一対の平面部のうちの他方の直下に配置されている
請求項
3に記載の電気的駆動弁。
【請求項5】
前記弁本体の上端部外周面に、前記弁本体の中心軸線に平行で且つ互いに平行に広がり且つ前記一対の平面部に直交する別の一対の平面部をさらに備えた
請求項
3に記載の電気的駆動弁。
【請求項6】
前記弁本体は、前記弁室に連通し前記第1流路口または前記第2流路口とすることが可能な4つの開孔を前記弁本体の側面部に備え、
当該4つの開孔のうちの第1の開孔は、前記一対の平面部のうちの一方の直下に配置され、
当該4つの開孔のうちの第2の開孔は、前記一対の平面部のうちの他方の直下に配置され、
当該4つの開孔のうちの第3の開孔は、前記別の一対の平面部のうちの一方の直下に配置され、
当該4つの開孔のうちの第4の開孔は、前記別の一対の平面部のうちの他方の直下に配置されている
請求項
5に記載の電気的駆動弁。
【請求項7】
前記電気的駆動弁は、前記弁体と前記アクチュエータとの間に介在されるパイロット弁を備えたパイロット型電気的駆動弁であり、
前記アクチュエータは、当該パイロット弁を介して前記弁体を駆動する
請求項1から
6のいずれか一項に記載の電気的駆動弁。
【請求項8】
弁室を内部に有する弁本体と、
前記弁本体に形成され前記弁室に連通する第1流路口と、
前記弁本体に形成され前記弁室に連通する第2流路口と、
弁座を有するとともに前記弁室に開口するように前記第1流路口または前記第2流路口と前記弁室との間に備えた弁口と、
中心軸線方向に移動する弁体と、
前記弁体を駆動するアクチュエータと
を備え、
前記弁本体を、軸線方向に延びる貫通孔を有する中空押出材で形成した
電気的駆動弁であって、
前記電気的駆動弁は、前記弁体と前記アクチュエータとの間に介在されるパイロット弁を備えたパイロット型電気的駆動弁であり、
前記アクチュエータは、当該パイロット弁を介して前記弁体を駆動し、
前記電気的駆動弁は、冷媒の流入路および冷媒の流出路を備えたハウジング部材に形成された弁装着穴に前記弁本体を挿入することにより当該ハウジング部材に装着されるカートリッジ式の電気的駆動弁であり、
前記弁本体の上端部外周面に、当該弁本体の中心軸線に平行で且つ互いに平行に広がる一対の平面部を備え、
前記第1流路口は、前記弁本体の側面部で且つ前記一対の平面部のうちのいずれか一方の直下に形成され、前記弁室に冷媒を流入させる流入口であり、
前記第2流路口は、前記弁本体の底面部に形成され、前記弁室から冷媒を流出させる流出口であり、
前記第2流路口と前記弁室との間に前記弁口が形成された
ことを特徴とする電気的駆動弁。
【請求項9】
前記弁本体は、前記弁室に連通し前記第1流路口とすることが可能な少なくとも2つの開孔を前記弁本体の側面部に備え、
当該2つの開孔のうちの一方は、前記一対の平面部のうちの一方の直下に配置され、
当該2つの開孔のうちの他方は、前記一対の平面部のうちの他方の直下に配置されている
請求項
8に記載の電気的駆動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置に使用可能な電磁弁等の電気的駆動弁に係り、特に、弁本体を中空押出材により形成した電気的駆動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータを使用して弁の開閉を行う電磁弁等の電気的駆動弁が空気調和機や冷蔵装置、冷凍装置など冷媒回路を備えた冷凍サイクルシステムに従来から使用されている。
【0003】
またこのような電気的駆動弁として、冷媒の流路を開閉する主弁体を小型のパイロット弁で制御するパイロット型電磁弁が、特に大口径の弁が必要な場合に利用されている。
【0004】
さらに、中空押出し成形により弁本体を形成する発明を開示する文献として下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記特許文献1に記載の発明は、膨張弁に係るものであり、電気的駆動弁の製造に直ちに適用できるものではない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、弁本体を形成する材料の使用量を減らすことを可能とすることで、電気的駆動弁の製造コストを低減する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る電気的駆動弁は、弁室を内部に有する弁本体と、弁本体に形成され弁室に連通する第1流路口と、弁本体に形成され弁室に連通する第2流路口と、弁座を有するとともに弁室に開口するように第1流路口または第2流路口と弁室との間に備えた弁口と、中心軸線方向に移動する弁体と、弁体を駆動するアクチュエータとを備え、前記弁本体を、軸線方向に延びる貫通孔を有する中空押出材で形成した。また当該電気的駆動弁では、典型的には、第1流路口または第2流路口の中心軸線と上記貫通孔の中心軸線が一致している。
【0009】
本発明の電気的駆動弁では、弁本体を貫通孔を有する中空押出材で形成するから、素材ブロック(ブロック状の素材塊)から切削加工により弁本体を削り出していた従来の電気的駆動弁と比べて、上記貫通孔の部分が中空である分、材料の使用量を削減することができ、製造コストを低減することが出来る。また、後述する平面部を弁本体の外周面に備える場合にも弁本体を押出材により形成すれば、平面部を形成する加工工程を省くことが出来るとともに、円柱状の素材ブロックから平面部を切削加工により形成する場合と比べて材料使用量を削減することが可能となる。
【0010】
弁本体を構成する材料は、典型的にはアルミニウム合金である。但し、当該材料は必ずしもアルミニウム合金に限定されるものではなく、本発明では他の材料で弁本体を形成することも可能である。他の構成材料であっても同様に材料使用量の削減による製造コストの低減効果が得られるからである。
【0011】
また、本発明の電気的駆動弁では、上記貫通孔を利用して弁座を貫通孔の内周面部に形成することが好ましい。弁体との接離(当接及び離脱)を繰り返す弁座に高い耐久性を付与するためである。すなわち、中空押出材の外周面部と内周面部は、成形時に金型内を流動する素材金属と金型表面間の摩擦によるせん断応力を受けて金属結晶粒が微細化することから、一般に機械強度が大きくなる。したがって、内周面部に弁座を形成することで、弁座の耐久性を向上させることが出来る。
【0012】
さらに、本発明の一態様に係る電気的駆動弁は、冷媒の流入路および冷媒の流出路を備えたハウジング部材(単に「ハウジング」と言うこともある)に形成された弁装着穴に弁本体を挿入することにより当該ハウジング部材に装着されるカートリッジ式の電気的駆動弁であり、弁本体の上端部外周面に、弁本体の中心軸線に平行で且つ互いに平行に広がる一対の平面部を有する。
【0013】
このような態様によれば、ハウジング部材への電気的駆動弁の取り付けにあたって、上記一対の平面部を挟むように電気的駆動弁を把持することができ、ハウジング部材への電気的駆動弁の取付け作業を行いやすくすることが出来る。特に、上記弁装着穴の内周面に雌ねじを形成するとともに弁本体の外周面に当該雌ねじに螺合する雄ねじを形成し、ハウジング部材の弁装着穴に弁本体をねじ込んで電気的駆動弁を固定する構造を採る場合に、上記のような一対の平面部を備えておけば、レンチでボルトを締めるように当該一対の平面部を挟持してハウジング部材(弁装着穴)へ電気的駆動弁をねじ込み、締め付け作業を行うことが可能となる。
【0014】
また本発明では、第1流路口と第2流路口のうちのいずれか一方が弁室に冷媒を流入させる流入口(上記のようなカートリッジ式電気的駆動弁の場合にはハウジング部材の流入路に連通される)となり、他方が弁室から冷媒を流出させる流出口(上記のようなカートリッジ式電気的駆動弁の場合にはハウジング部材の流出路に連通される)となる。
【0015】
また、一対の平面部を備える上記態様では、弁本体が、弁室に連通し第1流路口または第2流路口とすることが可能な2つの開孔を弁本体の側面部に備え、当該2つの開孔のうちの一方が上記一対の平面部のうちの一方の直下に配置され、当該2つの開孔のうちの他方が上記一対の平面部のうちの他方の直下に配置されるようにすることがある。これは、ハウジング部材に電気的駆動弁を取り付ける作業時の利便性のためである。
【0016】
具体的には、カートリッジ式の電気的駆動弁では、ハウジング部材の弁装着穴に嵌入される弁本体(弁本体の下部や中間部)に、ハウジング部材の流入路(弁装着穴内に開口する流路開口)に連通させる流路口(第1流路口と第2流路口のうちの一方)と、ハウジング部材の流出路(弁装着穴内に開口する流路開口)に連通させる流路口(第1流路口と第2流路口のうちの他方)を備えるが、これらの流路口は弁本体を弁装着穴に差し込んだ後には、目視することが難しい。
【0017】
特に、当該流路口を弁本体の側面に備える場合(この場合、連通させるべきハウジング側の流路開口も弁装着穴の側面(内周面)に形成されている)には、電気的駆動弁を軸線周りに回転させると弁本体の側面に形成された流路口(側面流路口)は弁本体の外周面に沿って周方向に移動してしまうことから、当該流路口をハウジング側の流路開口に正対させて流路口と流路開口とを正確に連通させることは必ずしも容易ではない。
【0018】
そこで、本発明の上記態様では、弁本体の上端部に形成した平面部の直下に流路口(第1流路口または第2流路口として利用できる開孔)を形成すること、言い換えれば、弁本体の軸線方向から見たときの位置について平面部の形成位置と流路口の形成位置とを合わせる(一致させる)ことにより、弁本体を弁装着穴に嵌入させた後にも目視しやすい平面部を基準として流路口(開孔)の位置を知ることが出来るようにした。本構成は、カートリッジ式の電気的駆動弁とハウジング部材とを上述のような螺着以外の方法で固定する構成(例えば、
図9の固定板51を使う構成)で特に効果を発揮する。
【0019】
これにより、電気的駆動弁をハウジング部材に正確に取り付けること、すなわち電気的駆動弁の流路口とハウジング部材の流路同士が周方向に位置ずれすることなく正対し完全に連通するように電気的駆動弁をハウジング部材に取り付けることが可能となり、電気的駆動弁取付時の作業性も向上させることが出来る。なお、ハウジング部材の弁装着穴に嵌入させたときに、弁本体の上端部が弁装着穴から突出して平面部が弁装着穴から露出している場合もあるし、弁本体全体が弁装着穴に嵌入される場合(この場合、平面部も弁装着穴内に納まることとなるが、弁装着穴の上面から平面部を視認することは可能である)もある。
【0020】
また、弁本体の底面に流路口を備える場合、当該流路口(底面流路口)については、弁本体の中心軸線と弁装着穴の中心軸線が一致するようにし、且つ、当該流路口を弁本体の底面中心部に配置するとともにハウジング側の流路開口を弁装着穴の中心部に形成しておくことが好ましい。このような構造によれば、弁本体を中心軸線周りに回転させても電気的駆動弁側の流路口とハウジング側の流路開口とが相対的に位置ずれすることがなく、弁装着穴に弁本体を差し込むだけで両者(電気的駆動弁側の流路口とハウジング側の流路開口)を連通させることが可能となるからである。
【0021】
平面部は、1組に限らず、2組以上備えても良い。例えば、2組の平面部を備える場合には、弁本体の中心軸線に平行で且つ互いに平行に広がり且つ前記一対の平面部に直交する別の一対の平面部をさらに弁本体の上端部外周面に備えることが出来る。
【0022】
また、このように別の一対の平面部をさらに備える場合には、弁本体が、弁室に連通し第1流路口または第2流路口とすることが可能な4つの開孔を弁本体の側面部に備え、当該4つの開孔のうちの第1の開孔を一対の平面部のうちの一方の直下に配置し、当該4つの開孔のうちの第2の開孔を一対の平面部のうちの他方の直下に配置し、当該4つの開孔のうちの第3の開孔を別の一対の平面部のうちの一方の直下に配置し、当該4つの開孔のうちの第4の開孔を別の一対の平面部のうちの他方の直下に配置することが好ましい。
【0023】
前記1組(一対)の平面部を備えた場合と同様に、平面部の位置によって開孔の位置を知ることが出来るようにするためである。また、このように4つの開孔を備える態様によれば、後述する第2実施形態のようなねじ込み式の固定構造を採用する場合に、ハウジング側の流路開口に対して、弁本体の流路口(開孔)をより良好に正対させることが可能となる。すなわち、ねじ込み式の固定構造の場合、弁本体を回転させると開孔の位置は周方向についてだけでなく軸線方向にも移動する(弁本体を弁装着穴にねじ込めば弁装着穴の底面に向けて進行する)が、周方向に備えられる開孔の数が多いほど軸線方向に関する開孔と流路開口との相対位置をきめ細かく調整することが可能となり、弁本体の流路口(開孔)をハウジング側の流路開口に対して軸線方向に位置ずれ無く(又は少なく)配置することが出来る。
【0024】
上記本発明ないし各態様に係る電気的駆動弁は、弁体とアクチュエータとの間に介在するパイロット弁を備えたパイロット型電気的駆動弁の場合があり、この場合、前記弁体は当該パイロット弁を介して前記アクチュエータにより駆動される。
【0025】
また、当該パイロット型電気的駆動弁は、冷媒の流入路および冷媒の流出路を備えたハウジング部材に形成された弁装着穴に弁本体を挿入することにより当該ハウジング部材に装着されるカートリッジ式の電気的駆動弁の場合がある。この場合、弁本体の上端部外周面に、弁本体の中心軸線に平行で且つ互いに平行に広がる一対の平面部を備え、第1流路口が、弁本体の側面部で且つ一対の平面部のうちのいずれか一方の直下に形成され弁室に冷媒を流入させる流入口であり、第2流路口が、弁本体の底面部に形成され弁室から冷媒を流出させる流出口であり、第2流路口と弁室との間に弁口を形成する。
【0026】
さらに、上記パイロット型電気的駆動弁では、弁本体が、弁室に連通し第1流路口とすることが可能な少なくとも2つの開孔を弁本体の側面部に備え、当該2つの開孔のうちの一方を一対の平面部のうちの一方の直下に配置し、当該2つの開孔のうちの他方を一対の平面部のうちの他方の直下に配置することがある。なお、一対の平面部を備える意義や、弁本体側面部に備える開孔を平面部の直下に配置する意義については、既に述べたとおりである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、弁本体を形成する材料の使用量および加工工数を減らすことで電気的駆動弁の製造コストを低減することが出来る。
【0028】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基いて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る電気的駆動弁(電磁弁)で使用する弁本体の製造工程(弁本体を構成する中空押出材)を示す平面図である。
【
図2】
図2は、前記実施形態に係る電磁弁で使用する弁本体の製造工程(弁本体を構成する中空押出材)を示す縦断面図(
図1のX-X矢視断面)である。
【
図3】
図3は、前記実施形態に係る電磁弁で使用する弁本体の製造工程(前記中空押出材を切削加工する工程)を示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、前記実施形態に係る電磁弁で使用する弁本体の製造工程(前記中空押出材を切削加工した状態)を示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、前記実施形態に係る電磁弁で使用する弁本体の製造工程(前記中空押出材を切削加工した状態)を示す平面図である。
【
図6】
図6は、前記実施形態に係る電磁弁で使用する弁本体の製造工程(前記切削加工した中空押出材に対して開孔の穿設及びねじ切り加工を施した状態)を示す縦断面図である。
【
図7】
図7は、前記実施形態に係る電磁弁で使用する弁本体の製造工程(前記切削加工した中空押出材に対して開孔の穿設及びねじ切り加工を施した状態)を示す平面図である。
【
図8】
図8は、前記実施形態に係る電磁弁で使用する弁本体の別の構成例を示す平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第1の実施形態に係る電磁弁(開弁状態/非通電時)を示す縦断面図である。
【
図10】
図10は、前記第1実施形態に係る電磁弁(ハウジング部材に取り付ける前の状態でコイルを装着していない状態)を示す側面図である。
【
図11】
図11は、前記第1実施形態に係る電磁弁の弁本体を示す上部水平断面図(
図10のX1-X1矢視断面/連結部材や主弁体等は示していない)である。
【
図12】
図12は、本発明の第2の実施形態に係る電磁弁(閉弁状態/非通電時)を示す縦断面図である。
【
図13】
図13は、前記第2実施形態に係る電磁弁(閉弁状態/非通電時)を示す側面図(弁装着穴内にねじ込まれる弁本体が見えるようにハウジング部材を切り欠いて示している)である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る電気的駆動弁(電磁弁)について説明するが、まず当該電磁弁で使用する弁本体について製造工程に沿って説明し、その後、当該弁本体を使用した電磁弁について第1および第2実施形態として説明する。なお、下記の弁本体は、第2実施形態の電磁弁で使用するものであるが、第1実施形態の電磁弁で使用する弁本体も同様の工程を経ることにより作製することが可能である。
【0031】
〔弁本体の製造工程〕
図1から
図2に示すように弁本体を作製するため、略円筒状の中空押出材(以下単に「押出材」と言うことがある)1を押出成形により作製する。この押出材1は、アルミニウム合金からなり、垂直方向(軸線方向)に延びる貫通孔1aを中心部に有するとともに、中心軸線Aに平行で且つ互いに平行に広がる一対の平坦面2a,2bと、中心軸線Aに平行で且つ互いに平行に広がり且つ前記一対の平坦面2a,2bに直交する別の一対の平坦面2c,2dを外周面に備えている。
【0032】
本実施形態ではこのような形状を有する押出材1から弁本体を作製するから、従来のように円柱状の素材ブロックから弁本体を削り出す場合と比べ、貫通孔1aならびに平坦面2a,2b,2c,2dが形成されている分、弁本体の構成材料を削減することができ、電磁弁の製造コストを低減することが出来る。また、平坦面2a,2b,2c,2dの一部(上端部/
図5及び
図6の符号45a,45b,45c,45d参照)を本発明に言う平面部として利用することが出来るから、平面部を切削加工して形成する工程を省くことも可能となる。
【0033】
そして、上記押出材1を
図3に矢印C1で示すように上面側から切削加工することにより後述する弁室(主弁室)13や連結部材41を嵌入する穴(開口)を形成するとともに、同図に矢印C2で示すように側面側から切削加工することにより弁本体12の外周面を形成する。なお、
図3では、切削加工により削り取る部分にハッチングを施している。
【0034】
図4から
図5は切削加工が終了した状態を示すものである。これらの図に示すように前記貫通孔1a(
図2参照)の下部を弁室13から冷媒を流出させる弁口16として利用し、弁口16の上端部に弁座(主弁座)17を形成している。前述したように貫通孔1aの内周面部(内周面及び内周面に近い部分)は、成形時に金型内を流動する素材金属と金型表面間の摩擦によるせん断応力を受けて金属結晶が微細化し緻密になり機械強度が高くなることから、当該部分を利用して弁座17を形成することで弁座17の耐久性を向上させるためである。
【0035】
また、前記2組の平坦面(一対の平坦面2a,2bと別の一対の平坦面2c,2d)は、側面からの切削加工によって中間部から下部は削り取られ、弁本体12の上端部にのみに残されている(符号45a,45b,45c,45d参照)。これらの残された平坦面上端部45a,45b,45c,45dは、本発明に言う平面部であり、後述するように電磁弁11,71をハウジング部材61に取り付けるときに開孔4a,4b,4c,4d(流入口14)の位置の確認や、弁装着穴62内にねじ込んだ弁本体12の締め付け等に利用することが出来るものである。
【0036】
さらに、弁本体12の外周面には、シール部材(上部Oリング42及び下部Oリング43)を設置する溝3a,3bを形成してある。
【0037】
そして最後に、
図6から
図7に示すように流入口14とすることが可能な開孔4a,4b,4c,4d(
図6のハッチング部分)と、ハウジング部材61の弁装着穴62にねじ込むための雄ねじ5bと、アクチュエータとしての電磁アクチュエータ31を連結する連結部材41をねじ込むための雌ねじ5aをそれぞれ形成する。なお、後述の第1実施形態に係る電磁弁11は、ねじによらずに固定板51を使用してハウジング部材61に固定するため、第1実施形態で使用する弁本体12については外周面の雄ねじ5bは形成する必要はない。
【0038】
また、上記弁本体12では4つの開孔4a,4b,4c,4dを穿設するが、これらの開孔4a~4dは前記4つの平面部45a,45b,45c,45dの直下に(周方向に関する開孔4a~4dの位置と平面部45a~45dの位置が一致するように)形成する。弁本体12の下部をハウジング部材61の弁装着穴62に差し込んだ後にも平面部45a~45dの位置によって開孔4a~4dの位置を確認できるようにするためである。
【0039】
なお、平面部45a~45dと開孔4a~4dについて別の表現をすれば、本実施形態では、4つの平面部45a~45d(前記平坦面2a~2dも同様)は、隣り合う平面部同士の向き(平面部45a~45dの垂線)が互いに90°の角度をなす(直交する)ように(例えば前方、後方、左方および右方を向くように)4つの平面部45a~45dを形成する。4つの開孔4a~4dも平面部45a~45dと同様に、隣り合う開孔同士の向き(開孔4a~4dの軸線の向き)が互いに90°の角度をなす(直交する)ように(例えば前方、後方、左方および右方を向くように)4つの開孔4a~4dを弁本体12の周面に形成する。そして、各平面部45a~45dの向き(弁本体12の周方向に関する位置)と各開孔4a~4dの向き(弁本体12の周方向に関する位置)が一致するようにする。
【0040】
平面部45は、
図8に示すように1組だけ(一対の平面部45c,45dのみ)備えるようにしても良く、その場合、開孔4は平面部45(45c,45d)の直下に1つずつ(符号4c,4d参照)、合計例えば2つ形成すれば良い。
【0041】
上記弁本体12を使用した電磁弁について説明する。
【0042】
〔第1実施形態〕
図9から
図11に示すように本発明の第1の実施形態に係る電磁弁11は、冷媒の流路を開閉する弁部10と、弁部10を駆動する電磁アクチュエータ31とを備え、例えばヒートポンプ式冷暖房システムのような冷凍サイクル装置において冷媒の流れを制御する電磁弁で、冷媒流路の開閉を行う主弁体18をパイロット弁で制御するパイロット型電磁弁である。また、当該電磁弁11は、冷媒の流入路63と流出路64を備えたハウジング部材61に装着することにより冷凍サイクル装置に組み込むことが可能な所謂カートリッジ式の電磁弁で、非通電時は開弁状態となるノーマルオープンタイプ(常時開型)の弁である。
【0043】
なお、各図には前後方向、左右方向および上下方向を表す互いに直交する二次元座標を適宜表示してこれらの方向に基いて以下の説明を行うが、本発明並びに各実施形態の電磁弁は様々な向きで使用することが可能であり、各方向は説明の便宜上のものであって本発明の各部構成について何ら限定を加えるものではない。
【0044】
本実施形態に係る電磁弁11は、弁部10(主弁)として、冷媒を通過させる弁室(主弁室)13を内部に備えた弁本体12と、主弁室13に冷媒を流入させることが可能なように弁本体12の側面(周面)に穿設した流入口14と、下端に冷媒の流出口15を備え弁本体12の底面部を上下方向に貫通して主弁室13から冷媒を排出する排出路となる弁口16と、弁口16の上端に形成した弁座(主弁座)17と、主弁座17に対して進退動(上下動)することにより弁口16の開閉を行う弁体(主弁体)18と、主弁体18を上方へ付勢する下部コイルばね(圧縮コイルばね)21と、電磁アクチュエータ31を弁本体12に連結する連結部材41とを有する。
【0045】
弁本体12は、中空押出材からなり、当該押出材に対して前述した製造工程に従った加工を施すことにより作製する。したがって弁本体12は、複数(本実施形態及び後述の第2実施形態の場合は4つ)の平面部45a,45b,45c,45dを上部に備えるとともに、流入口14として使用可能な複数(本実施形態及び後述の第2実施形態の場合は合計4つ)の開孔4a,4b,4c,4dを各平面部45a,45b,45c,45dの直下の弁本体側面に備えている。
【0046】
前記流入口14は、上記4つの開孔4a,4b,4c,4dのうちの1つである。また、弁口16および流出口15は、前記中空押出材1の貫通孔1aを利用しており、主弁座17は当該貫通孔1aの内周面部に形成してある。
【0047】
連結部材41は、弁本体12の上面開口を塞ぐように弁本体12の上面部に配置され中心孔を有するリング状のフランジ部41aと、フランジ部41aの下面から垂直下方に延びる円筒状のシリンダ部41bとを有し、フランジ部41aの上面中心部に吸引子35(後述する)を一体に備えている。シリンダ部41bは、弁本体12の上面開口の内周面に形成した雌ねじ5aに螺合する雄ねじ41cを外周面に備えており、弁本体12の上面開口にシリンダ部41bをねじ込むことにより連結部材41を弁本体12に固定する。また、シリンダ部41bには主弁体18の上部が上下方向に摺動可能に嵌挿され、シリンダ部41bの内部上面は、開弁時に主弁体18の上面が当接して主弁体18を停止させるストッパ面となっている。
【0048】
また、主弁体18には、その中心部を上下方向に貫通して主弁室13とパイロット室25(後述する)とを連通させるパイロット通路19と、同じく主弁体18を上下方向に貫通して主弁室13とパイロット室25とを連通させるがパイロット通路19より径が小さい均圧路20とを形成してある。なお、本実施形態の主弁室13は、主弁体18と主弁座17の間の空間および流入口14に面した空間である。
【0049】
主弁体18の上面と電磁アクチュエータ31との間にはパイロット弁を備える。具体的には、連結部材41のフランジ部41aの中心孔内をパイロット室25とし、このパイロット室25に開口する前記パイロット通路19の上端(主弁体18の上面中心部)にパイロット弁座26を形成し、このパイロット弁座26に対して接離可能にパイロット弁体27を備える。パイロット弁体27は、プランジャ36(後述する)の下端に固定してあり、プランジャ36と一緒に上下動することによりパイロット通路19を開閉する。なお、本実施形態のパイロット室25は、主弁体18の上側に形成される空間である。
【0050】
一方、電磁アクチュエータ31は、ボビン32に巻線を施したコイル33と、コイル33の内側に配置した吸引子35と、コイル33により発生される磁力によって吸引子35に引き付けられるプランジャ36とを有する。ボビン32は、中心部に筒状部を備え、この筒状部内に、吸引子35とプランジャ36をスリーブ37に収容された状態で配置してある。スリーブ37は、無底有蓋の(上面が閉塞され下面が開放された)筒状部材で、吸引子35の外周面に下端部が固定され、連結部材41とともに弁本体12の上面部に密閉空間を形成する。プランジャ36は上下方向へ摺動可能にスリーブ37内に収容され、プランジャ36と吸引子35との間にプランジャ36を上方へ付勢する上部コイルばね(圧縮コイルばね)22を備えてパイロット弁体27を開弁方向へ付勢している。
【0051】
他方、ハウジング部材61は、電磁弁11を装着可能な弁装着穴62と、弁装着穴62の内周面に開口する流入路63と、弁装着穴62の底面に開口する流出路64とを備えている。ハウジング部材61への電磁弁11の取り付けは、弁本体12の側面(周面)に形成してある流入口14(前述した4つの開孔4a,4b,4c,4dのうちのいずれか)が流入路63の弁装着穴62内への開口部に正対するように弁装着穴62内に弁本体12の下部を差し込んだ後、弁本体12の上部外周面に形成されたフランジ部12aを、固定ねじ52によってハウジング部材61の上面に固定される固定板51によりハウジング部材61の上面に押さえ付けるように固定することにより行う。
【0052】
なお、固定板51には、弁本体12のフランジ部12aに噛み合う段部53を形成してあり、当該段部53によって弁本体12の上方への移動が規制され、弁本体12がハウジング部材61に固定される。また、上記固定板51による固定にあたっては、コイル33の固定も同時に行う。すなわち、ボビン32の筒状部内にスリーブ37を嵌挿させつつコイル33を装着した後、コイル33を覆うコイルカバー34の下部周縁を上記固定ねじ52によって固定板51の上面に固定する。
【0053】
弁本体底面の流出口15は、弁本体12を弁装着穴62の底面まで差し込めばハウジング部材61の流出路64の弁装着穴62内への開口部に対向し、当該流出路64と連通することとなる。また、上下方向について流入口14(各開孔4a,4b,4c,4d)を挟むように弁本体12の外周面にシール部材42,43を備えることにより、弁本体12の外周面と弁装着穴62の内周面との間の密封を行う。すなわち、流入口14(各開孔4a~4d)より上部位置に形成されている溝3a内に上部Oリング42を設置するとともに、流入口14(各開孔4a~4d)より下部位置に形成されている溝3b内に下部Oリング43を設置する。これにより、流入口14として利用しない開孔4a,4b,4dから弁本体12の外部へ(弁装着穴62内へ)冷媒が流出しても、当該冷媒が弁装着穴62の上面から漏れ出し、あるいは、流出路64へ流れ出すことを防ぐことが出来る。
【0054】
本実施形態に係る電磁弁の動作を説明すれば次のとおりである。
【0055】
図9に示す開弁状態では、パイロット通路19が開放されており、流入路63から主弁室13内に流入し均圧路20を通ってパイロット室25内に流れ込む高圧冷媒がパイロット室25内に溜まらずにパイロット通路19を通って流出路64に排出される。このため、パイロット室25内の圧力が高まらず、主弁体18を上方(開弁方向)へ付勢する下部コイルばね21の付勢力によって主弁体18が連結部材41(フランジ部41a)の下面に押し付けられて開弁状態が維持され、流入路63から流入口14を通じて主弁室13に流れ込んだ冷媒は、弁口16を通って流出口15から流出路64へと流れ出す(矢印F1,F2参照)。
【0056】
ここで、電磁アクチュエータ31内のコイル33に通電するとプランジャ36が吸引子35に吸引されることにより上部コイルばね22の付勢力に抗して下降し、パイロット弁体27をパイロット弁座26に着座させる。これによりパイロット通路19は閉鎖され、均圧路20を通じてパイロット室25に導入される冷媒圧力がパイロット通路19を通じて放出されることなく蓄積されてパイロット室25内の圧力が上昇する。そして、パイロット室25内の冷媒圧力(正確には、パイロット室25と主弁室13との差圧)と、吸引子35の吸引力(プランジャ36を吸引する下方への力)とによる、主弁体18を下方に押し下げる力が、下部コイルばね21の上方への付勢力を超えると、主弁体18は下降して主弁座17に着座する。これにより弁口16が閉鎖された閉弁状態となる。
【0057】
一方、この閉弁状態からコイル33への通電を停止すると、吸引子35の吸引力が消失してプランジャ36が吸引子35から解放されるため、プランジャ36は上部コイルばね22によって上方に押し戻され、パイロット弁体27がパイロット弁座26から離れてパイロット通路19が開放される。すると、パイロット室25内に蓄積された冷媒がパイロット通路19を通じて流出路64に排出され、パイロット室25内の圧力が低下する。さらに、均圧路20よりもパイロット通路19の断面積が大きいため、主弁体18を上方へ引き上げる差圧が主弁体18の上下面に生じる。加えて、下部コイルばね21は主弁体18を上方へ引き上げる付勢力を有する。これらにより、主弁体18が押し上げられ、主弁体18が主弁座17から離れて弁口16が開放され、流入路63から主弁室13を経て流出路64に至る冷媒流路が開放された開弁状態(
図1参照)となる。
【0058】
〔第2実施形態〕
図12から
図13に示すように本発明の第2実施形態に係る電磁弁71は、前記第1実施形態と同様に冷媒の流入路63と流出路64を備えたハウジング部材61に取り付ける所謂カートリッジ式のパイロット型電磁弁であるが、前記第1実施形態と異なり、非通電時は閉弁状態となるノーマルクローズタイプ(常時閉型)の電磁弁である。なお、本実施形態の説明では、前記第1実施形態と同一または相当する構成には同一の符号を付して重複した説明を省略し、相違点を中心に述べる。
【0059】
本実施形態の電磁弁71は、ハウジング部材61への固定方法としてねじ込み式の固定構造を採る。具体的には、ハウジング部材61の弁装着穴62の内周面には雌ねじ65を形成し、この雌ねじ65に螺合する雄ねじ5bを弁本体12の外周面に備え、弁本体12を弁装着穴62にねじ込むことにより電磁弁71をハウジング部材61に固定できるようにした。
【0060】
弁本体12は、前述した中空押出材1からなり、前記
図1から
図7を参照して述べた工程により加工したもので、2組の平面部45a,45b,45c,45dと、各平面部45a~45dの直下に穿設した開孔4a,4b,4c,4dを備え、開孔4a~4dのうちの1つ(本実施形態の場合には開孔4d)を流入口14としている。なお、平面部45a~45dは、既に述べたように弁本体12を弁装着穴62にねじ込むときに開孔4a~4dの周方向の位置を確認するために使用することが出来るとともに、締め付け作業を行うときに利用することが出来る。
【0061】
弁本体12の底面部には、前記貫通孔1aを利用して形成した弁口16および主弁座17を備え、主弁座17に対して進退動(上下動)する主弁体18を主弁室13内に備える。主弁体18はその上部を、弁本体12の上端部に形成したシリンダ部12bによって上下方向に摺動可能に支持されている。また、主弁室13の底面と主弁体18との間には、主弁体18を上方に付勢する下部コイルばね21を備える。
【0062】
弁本体12の上面開口(シリンダ部12bの上面)には、中心孔を有する連結部材41を設置する。連結部材41は、弁本体12の上面開口の内周面に形成した前記雌ねじ5aに螺合する雌ねじ41cを外周面に備えており、弁本体12の上面開口にねじ込むことにより弁本体12に固定される。また、連結部材41の中心孔にはスリーブ37の下端部が嵌入され固定される。
【0063】
主弁体18の上面にはパイロット室25を形成し、パイロット室25内にパイロット弁体27を配置する。パイロット弁体27は、スリーブ37の下部に摺動可能に収容されたプランジャ36の下端部に固定してあり、プランジャ36と一緒に上下動して主弁体18の上面中心部に形成したパイロット弁座26に対して接離(当接及び離脱)することによりパイロット通路19を開閉する。
【0064】
また、主弁体18の上面は、その周縁部を上方へ突出させ、主弁体18が下部コイルばね21によって押し上げられて上昇したときに当該周縁部が連結部材41の下面に当接することにより主弁体18が停止するようにしてある。なお、この停止状態(主弁体18が連結部材41の下面に当接した状態)となる開弁(全開)状態では、プランジャ36は吸引子35に吸い付けられた最上位置にあり、プランジャ下端のパイロット弁体27と、主弁体上面中心部のパイロット弁座26との間には一定の隙間が形成され、パイロット通路19は開放されている。
【0065】
電磁アクチュエータ31は、前記第1実施形態と同様に、ボビン32に巻線を施したコイル33と、ボビン中心部の筒状部内にスリーブ37に収容した状態で配置したプランジャ36および吸引子35とを備えている。一方、本実施形態では、スリーブ37は無底無蓋(上面及び下面が共に開放された)筒状部材でスリーブ37の上面を塞ぐように吸引子35を備え、スリーブ37の下部に収容されたプランジャ36と吸引子35との間にはプランジャ36を下方へ付勢する上部コイルばね22を備えてある。さらに前記第1実施形態と同様に、流入口14(各開孔4a~4d)より上方の弁本体外周面には上部Oリング42を備え、流入口14(各開孔4a~4d)より下方の弁本体外周面には下部Oリング43を備える。
【0066】
本実施形態に係る電磁弁の動作を説明すれば次のとおりである。
【0067】
図12に示す閉弁状態では、パイロット弁体27がパイロット弁座26に着座してパイロット通路19が閉鎖されているため、均圧路20を介して主弁室13と連通しているパイロット室25の内部圧力が主弁室13内の圧力と等しくなる一方、主弁室13よりも弁口16内の圧力が低くなっており、この圧力(正確には、パイロット室25と弁口16内の空間との差圧)によって主弁体18が主弁座17に着座し、閉弁状態が維持されている。
【0068】
ここで、電磁アクチュエータ31内のコイル33に通電するとプランジャ36が吸引子35に吸引されることにより上部コイルばね22の付勢力に抗して上昇し、パイロット弁体27がパイロット弁座26から離れてパイロット通路19が開放される。これにより、均圧路20を通じてパイロット室25に導入される冷媒がパイロット通路19を通じて流出路64へ放出されることとなり、パイロット室25内の圧力が低下する。さらに、均圧路20よりもパイロット通路19の断面積が大きいため、主弁体18を上方へ引き上げる差圧が主弁体18の上下面に生じる。加えて、下部コイルばね21は主弁体18を上方へ引き上げる付勢力を有する。すると、主弁体18が押し上げられ、弁口16が開放された開弁状態となる。なお、押し上げられた主弁体18は、連結部材41の下面に突き当たって停止されるため、主弁体上面中心部のパイロット弁座26がパイロット弁体27の下面に当接してパイロット弁が閉じられることはなく、パイロット通路19は開放されたままである。
【0069】
一方、この開弁状態からコイル33への通電を停止すると、吸引子35の吸引力が消失してプランジャ36が吸引子35から解放されるから、プランジャ36は上部コイルばね22によって下方に押し戻され、パイロット弁体27がパイロット弁座26に着座してパイロット通路19が閉鎖される。すると、均圧路20を通じてパイロット室25内に流入する冷媒がパイロット室25内に蓄積されてパイロット室25内の圧力が高まり、この圧力(正確には、パイロット室25と流入口14に面した主弁室13との差圧)によって下部コイルばね21の付勢力に抗して主弁体18が押し下げられ、主弁座17に着座して弁口16が閉鎖された閉弁状態(
図12参照)となる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0071】
例えば、前記実施形態に係る電磁弁はいずれもパイロット型の弁であるが、本発明はパイロット型の弁に限定されるものではなく、直動型の弁にも適用することが可能である。また、前記実施形態に係る電磁弁はいずれもカートリッジ式の弁であるが、本発明は必ずしもカートリッジ式の弁に限られるものではない。
【0072】
さらに、本発明に係る電磁弁は、典型的にはエアコン(空気調和機)や冷凍庫・冷蔵庫など冷媒回路を備えた冷凍サイクル装置に好ましく使用することが出来るが、これらに限らず、他にも様々な用途に本発明に係る電磁弁を用いることが可能である。また、本発明は電磁弁に限定されるものではなく、例えばモータを用いて弁体を移動させるアクチュエータを備えた電動弁等の電気的駆動弁にも適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
A 中空押出材、弁本体および電磁弁の中心軸線
F1,F2 冷媒の流れ
1 中空押出材
1a 貫通孔
2a,2b,2c,2d 平坦面
3a,3b シール部材(Oリング)を設置する溝
4,4a,4b,4c,4d 開孔
5a,65 雌ねじ
5b,41c 雄ねじ
10 弁部
11,71 電磁弁
12 弁本体
13 主弁室
14 流入口
15 流出口
16 弁口
17 主弁座
18 主弁体
19 パイロット通路
20 均圧路
21 下部コイルばね
22 上部コイルばね
25 パイロット弁室
26 パイロット弁座
27 パイロット弁体
31 電磁アクチュエータ
32 ボビン
33 コイル
34 コイルカバー
35 吸引子
36 プランジャ
37 スリーブ
41 連結部材
41a 連結部材のフランジ部
41b 連結部材のシリンダ部
42 シール部材(上部Oリング)
43 シール部材(下部Oリング)
45,45a,45b,45c,45d 平面部
51 固定板
52 固定ねじ
53 段部
61 ハウジング部材
62 弁装着穴
63 流入路
64 流出路