(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】複合材料
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240514BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240514BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240514BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/139
(21)【出願番号】P 2021536361
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 GB2019053651
(87)【国際公開番号】W WO2020128505
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-11
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515189520
【氏名又は名称】イリカ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エドワード リー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ローマン
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ ヤコヴレフ
(72)【発明者】
【氏名】リーチュン チェン
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-045593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/62
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質
であるマトリックス粒子によって提供されるマトリックスと、
電子伝導性とイオン伝導性との両方である導電性フラクションと、を備え、前記導電性フラクションは、前記マトリックス粒子間に分布する導電性粒子によって提供され、前記導電性粒子は、
・イオン伝導性と電子伝導性との両方である材料、または
・イオン伝導性粒子と電子伝導性粒子との混合物であって、前記電子伝導性粒子は少なくとも0.6の球形度を有する、混合物、
のいずれかを備え、
前記導電性粒子は、前記マトリックス粒子のD50値の少なくとも5%であるD90値を有する、
複合材料。
【請求項2】
前記導電性粒子は、少なくとも10体積
%の量で存在する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記導電性粒子は、最大35体積
%の量で存在する、請求項1または請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記導電性粒子は、前記マトリックス粒子のD50値の少なくとも10%である、D90値を有する、
請求項
1~3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記導電性粒子は、前記マトリックス粒子のD50値の少なくとも15%である
、D90値を有する、
請求項
1~4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記導電性粒子は、少なくとも50n
mのD90値を有する、
請求項
1~5のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
電極活物質
であるマトリックス粒子によって提供されるマトリックスと;前記マトリックス粒子間に分布するイオン伝導性粒子によって提供されるイオン伝導性フラクションと;前記マトリックス粒子間に分布する電子伝導性フラクションと;を備え、
前記イオン伝導性粒子は、前記マトリックス粒子のD50値の少なくとも5%であるD90値を有する、
複合材料。
【請求項8】
前記イオン伝導性粒子は、前記マトリックス粒子のD50値の少なくとも10
%である、D90値を有する、請求項7に記載の複合材料。
【請求項9】
前記電子伝導性フラクションが、糸状体または針状体の形態で提供される、請求項7または請求項8に記載の複合材料。
【請求項10】
前記電子伝導性フラクションは、少なくとも0.6の球形度を有する粒子の形態で提供され、前記電子伝導性
フラクションの前記粒子のD50値は、前記イオン伝導
性フラクションの前記粒子のD50値の25%未満である、請求項7または請求項8に記載の複合材料。
【請求項11】
前記イオン伝導性粒子は、前記複合材料の少なくとも10体積%の体積分率で存在する、請求項7~10のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項12】
前記イオン伝導性粒子は、前記複合材料の最大28体積%の体積分率で存在する、請求項7~11のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項13】
電極活物質
であるマトリックス粒子によって提供されるマトリックスと;前記マトリックス粒子間に分布するイオン伝導性粒子によって提供されるイオン伝導性フラクションと;前記マトリックス粒子間に分布する電子伝導性粒子によって提供される電子伝導性フラクションと、を備え、
前記電子伝導性粒子は、前記マトリックス粒子のD50値の少なくとも5
%である、D90値を有する、
複合材料。
【請求項14】
前記マトリックス粒子は、少なくとも0.1μ
mのD50値を有する、
請求項
1~13のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項15】
前記マトリックス粒子の粒子サイズ分布が、前記マトリックス粒子の前記D90値がD50値の少なくと
も1.7倍であるようなものである、
請求項
1~14のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項16】
前記複合材料は、少なくとも300μ
mの厚さを有する平面構造を有する、
請求項
1~15のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項17】
請求項
1~16のいずれか一項に記載の複合材料を備える、電極。
【請求項18】
2つの電極とその間に配置されたバルク電解質とを備え、少なくとも1つの電極は、
請求項
1~16のいずれか一項に記載の複合材料を備える、電気化学セル。
【請求項19】
複合材料を製造する方法であって、
・多量のマトリックス粒子を準備し、前記マトリックス粒子は電極活物質
である、ステップと;
・多量の導電性粒子を準備し、前記導電性粒子は、
・イオン伝導性と電子伝導性との両方である材料;または、
・イオン伝導性粒子と電子伝導性粒子との混合物であって、前記電子伝導性粒子は少なくとも0.6の球形度を有する、混合物;
のいずれかを備える、ステップと;
・前記マトリックス粒子、前記導電性粒子、および流体担体媒体を備えるインク配合物を調製する、ステップと;
・前記インク配合物を基材上に堆積させ、印刷層を提供する、ステップと;
を含み、
前記導電性粒子は、前記マトリックス粒子のD50値の少なくとも5%であるD90値を有する、
方法。
【請求項20】
前記導電性粒子は、前記インク配合物の固形分に対して少なくとも10体積
%の量で存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記導電性粒子は、前記インク配合物の固形分に対して最大35体積
%の量で存在する、請求項19または請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記導電性粒子は、前記マトリックス粒子のD50値の少なくとも10%であるD90値を有する、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記導電性粒子は、前記マトリックス粒子のD50値の少なくとも15
%であるD90値を有する、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記導電性粒子は、少なくとも50n
mのD90値を有する、請求項19~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
複合材料を製造する方法であって、
・多量のイオン伝導性粒子、電子伝導性相の量、および多量のマトリックス粒子を準備し、前記マトリックス粒子は電極活物質
である、ステップと;
・前記マトリックス粒子、前記イオン伝導性粒子、前記電子伝導性相、および流体担体媒体を備えるインク配合物を調製するステップと;
・前記インク配合物を基材上に堆積させ、印刷層を提供するステップと;
を含み、
前記イオン伝導性粒子は、前記マトリックス粒子のD50値の少なくとも5%であるD90値を有する、
方法。
【請求項26】
前記電子伝導性相は、糸状体または針状体を備える、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
複合材料を製造する方法であって、
・多量のイオン伝導性粒子、多量の電子伝導性粒子、および多量のマトリックス粒子を準備し、前記マトリックス粒子は電極活物質
である、ステップと;
・前記マトリックス粒子、前記イオン伝導性粒子、前記電子伝導性粒子、および流体担体媒体を備えるインク配合物を調製するステップと;
・前記インク配合物を基材上に堆積させ、印刷層を提供する、ステップと;
を含み、
前記イオン伝導性粒子は、前記マトリックス粒子のD50値の少なくとも5%であるD90値を有する、
方法。
【請求項28】
前記電子伝導性粒子のD50値は、前記イオン伝導性粒子のD50値の25%未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記イオン伝導性粒子は、前記インク配合物の固形分に対して少なくとも10体積
%の量で存在する、請求項25~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記イオン伝導性粒子は、前記インク配合物の固形分に対して最大35体積%の量
で存在する、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記イオン伝導性粒子は、前記マトリックス粒子のD50値の少なくとも10%であるD90値を有する、請求項25~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記イオン伝導性粒子は、前記マトリックス粒子のD50値の少なくとも15
%である、D90値を有する、請求項25~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記イオン伝導性粒子は、少なくとも50n
mのD90値を有する、請求項25~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記マトリックス粒子は、少なくとも0.1μ
mのD50値を有する、請求項19~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
複合材料を製造する方法であって、
・多量のイオン伝導性粒子、多量の電子伝導性粒子、および多量のマトリックス粒子を準備し、前記マトリックス粒子は電極活物質
である、ステップと;
・前記マトリックス粒子、前記イオン伝導性粒子、前記電子伝導性粒子、および流体担体媒体を備えるインク配合物を調製するステップと;
・前記インク配合物を基材上に堆積させ、印刷層を提供するステップと;
を備え、
前記電子伝導性粒子は、前記マトリックス粒子のD50値の少なくとも5%であるD90値を有する、
方法。
【請求項36】
前記イオン伝導
性粒子のD50値は、前記電子伝導
性粒子のD50値の25%未満である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
・前記印刷層に存在する有機化合物の量を、例えば乾燥により、削減するステップ;
・前記印刷層を機械的プレスするステップ;または、
・前記印刷層を焼結するステップ、
のうちの1つ以上をさらに含む、請求項19~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記複合材料を電極に組み込むステップをさらに含む、請求項19~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記電極を電気化学セルに組み込むステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記電気化学セルは、全固体電気化学セルである、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料、特に電気化学セルの電極として使用するための複合材料、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体リチウムイオン電池は、リチウムイオン(Li+)が放電時に負極から正極に移動し、充電時に戻る充電式電池の一種である。電極はそれぞれリチウムイオンを可逆的に貯蔵可能であり、イオン輸送を可能にする固体バルク電解質によって分離されている。
【0003】
これらの各構成要素は、通常、薄膜として形成され、支持基材上に順番に堆積される。集電体、界面修飾体、封止体などの追加構成要素も提供され得る。製造において、構成要素は、例えば、カソード集電体、カソード、電解質、アノード、アノード集電体、および封止体の順序で堆積され得る。しかしながら、得られるデバイスが正極(カソード)、電解質セパレータ、および負極(アノード)を含有するという場合に限り、堆積の順序は変化し得る。
【0004】
全固体電池は、エネルギー密度の増加、電力密度の増加、リーク電流の低減、可燃性の低下など、液体電解質リチウムイオン電池に比べて複数の利点を提供し得る。したがって、全固体電池は、例えば、電気自動車および家庭用電化製品での使用が検討されてきた。そのような用途では、一般に、エネルギー密度をさらに増加させて、車両範囲(電気自動車の場合)、デバイス効率および/またはデバイス寿命を高めることが望ましい。
【0005】
エネルギー密度を高めるための1つのアプローチは、電極をより厚くして、集電体やバルク電解質層など、バッテリーの非活性構成要素の相対的な体積を減らすことである。しかしながら、これは、厚い電極におけるイオンおよび/または電子の輸送速度に起因する制約のために、電池によって達成され得る電力に悪影響を与え得る。
【0006】
液体電解質リチウムイオン電池の文脈では、例えば、電極の多孔性を増加させることによってイオン輸送速度を増加させることが知られている(例えば、Robertsら、Journal of the Electrochemical Society 2007、154、A921-A928を参照されたい)。これは、接触可能な表面積(これを介して液相と固相との間でイオン輸送が起こり得る)の量を増加させると考えられている。ただし、イオンおよび電子輸送の課題は、全固体電池の文脈で対処されなければならない。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、本発明は、
電極活物質を備えるマトリックス粒子によって提供されるマトリックスと、
電子伝導性とイオン伝導性との両方である導電性フラクションと、を備え、導電性フラクションは、マトリックス粒子間に分布する導電性粒子によって提供され、
ここで、導電性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも5%であるD90値を有する、
複合材料を提供し得る。
【0008】
導電性粒子は、イオン伝導性および電子伝導性の両方である材料を備え得る。しかしながら、他の場合において、導電性粒子は、
・イオン伝導性粒子と、
・電子伝導性粒子であって、少なくとも0.6の球形度を有する電子伝導性粒子と、
の混合物を備え得る。
【0009】
イオン伝導性粒子と電子伝導性粒子との混合物である導電性粒子を提供することにより、これらの粒子タイプのそれぞれで提供される材料は、複合材料の特性をより厳密に調整するために、より広い範囲から選択され得る。通常、導電性粒子がイオン伝導性粒子と電子伝導性粒子との混合物である場合、イオン伝導性粒子と電子伝導性粒子とのD50値は概ね類似している。例えば、2つのD50価のうちの最大の値は、2つのD50値のうちの最小値の2倍未満であり得る。
【0010】
指定されたD90値を有する導電性粒子を提供することにより、これらの粒子は、マトリックス粒子の最密充填を妨げるのに十分な大きさになると考えられる。結果として、隣接するマトリックス粒子は、マトリックス粒子間の経路および/またはネットワークを確立するために、導電性粒子を割り込ませて離間させ得、これらの経路および/またはネットワークは、複合材料全体にわたるイオンおよび/または電子の輸送を可能にする。
【0011】
これにより、複合材料は、電気化学デバイスで許容可能な性能を提供するために必要なイオン伝導性および電子伝導性のレベルを維持しながら、厚みが増した電極を提供することが可能であり得る。
【0012】
対照的に、導電性粒子がマトリックス粒子のD50値の5%未満であるD90値を有する場合、導電性粒子は、隣接するマトリックス粒子間の隙間に効果的にトラップされ得、その結果、導電性粒子は互いに隔離されており、イオンおよび/または電子の輸送経路の確立が妨げられると考えられる。
【0013】
特定の場合においては、導電性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも7%であるD90値を有する。特定の場合においては、導電性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも10%であるD90値を有する。特定の場合においては、導電性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも15%であるD90値を有する。特定の場合においては、導電性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも20%であるD90値を有する。
【0014】
特定の実施形態においては、導電性粒子は、マトリックス粒子のD90値の少なくとも5%であるD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、マトリックス粒子のD90値の少なくとも10%であるD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、マトリックス粒子のD90値の少なくとも15%であるD90値を有する。
【0015】
導電性粒子が電子伝導性粒子とイオン伝導性粒子との混合物を備える場合、2つの粒子タイプは、一般に、体積で測定されるように、ほぼ同様の量で複合材料内に提供される。こうして、例えば、電子伝導性粒子とイオン伝導性粒子との比(各粒子タイプの総体積の比として表される)は、5:1~1:5の範囲にあり得る。特定の実施形態では、この比は、3:1~1:3の範囲にあり得る。特定の実施形態では、この比は、2:1~1:2の範囲にあり得る。
【0016】
通常、導電性粒子は、複合材料の少なくとも5体積%、特定の場合においては複合材料の10体積%、好ましくは少なくとも15体積%、より好ましくは少なくとも20体積%の体積分率を提供する(本明細書では、用語「体積分率」は、複合材料の固体体積に対して測定された体積分率、すなわち、複合材料中に存在し得る任意のボイドを除く、を示すために使用される)。この体積の導電性粒子は、割り込ませて離間させられた隣接するマトリックス粒子の間に作成される経路を満たすために必要であると考えられる。
【0017】
導電性粒子が電子伝導性粒子とイオン伝導性粒子との混合物を備える場合、導電性粒子は、複合材料の少なくとも10体積%、特定の場合においては複合材料の少なくとも15体積%であることが好ましく、好ましくは少なくとも18体積%、より好ましくは少なくとも22体積%の、体積分率を提供することが好ましい。電子とイオンとの両方の輸送を可能にするために、別個の、しかし一般的に相互拡散したネットワークを確立するために、より多くの割合の混合粒子が必要であると考えられる。
【0018】
通常、導電性粒子は、複合材料の最大35体積%、好ましくは最大30体積%、より好ましくは最大28体積%を提供する。導電性粒子の体積分率のこれらの上限は、許容可能なレベルの重量比容量(重量比容量は、バッテリーの総充電容量であり、バッテリーの重量の関数として表される)を保持するのに十分な電極活物質を提供しながら、電子および/またはイオンに輸送経路を提供することを可能にし得ると考えられる。また、一旦導電性粒子の体積分率が特定の閾値を超えると、完全に形成された導電性ネットワークが存在し、さらに導電性粒子を追加することに大きな利点はないと考えられる。
【0019】
特定の場合においては、導電性粒子は複合材料の5~35体積%を提供する。特定の場合においては、導電性粒子は複合材料の10~30体積%を提供する。
【0020】
好ましくは、導電性粒子は、マトリックス粒子のD90値の最大30%、より好ましくは最大25%、最も好ましくは最大20%である、D90値を有するべきである。
【0021】
広い粒度分布を有するマトリックス粒子を提供することにより、これらの粒子のより高密度の充填が達成され得、こうして重量比容量が増加すると考えられる。こうして、マトリックス粒子の粒子サイズ分布は、マトリックス粒子のD90値が、D50値の少なくとも1.5倍、より好ましくはD50値の少なくとも1.7倍、最も好ましくは少なくともD50値の2倍であるようになることが好ましい。
【0022】
広い粒度分布を有する導電性粒子を提供することにより、これらの粒子のより高密度の充填が達成され得ると考えられる。こうして、導電性粒子の粒子サイズ分布は、導電性粒子のD90値が、D50値の少なくとも1.5倍であることが好ましく、より好ましくはD50値の少なくとも1.7倍、最も好ましくは少なくともD50値の2倍となることが好ましい。
【0023】
特定の場合においては、マトリックス粒子および/または導電性粒子の粒子サイズ分布は単峰性であり、すなわち、それは単一のピークを有する。
【0024】
通常、導電性粒子は、少なくとも5nmのD50値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、少なくとも10nmのD50値を有し得る。特定の実施形態においては、導電性粒子は、少なくとも20nmのD50値を有し得る。特定の実施形態においては、導電性粒子は、少なくとも100nmのD50値を有し得る。
【0025】
通常、導電性粒子は、最大5μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、最大2μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、最大500nmのD50値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、最大400nmのD50値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、最大300nmのD50値を有する。
【0026】
通常、導電性粒子は少なくとも50nmのD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、少なくとも100nmのD90値を有し得る。特定の実施形態においては、導電性粒子は、少なくとも200nmのD90値を有し得る。特定の実施形態においては、導電性粒子は、少なくとも500nmのD90値を有し得る。
【0027】
通常、導電性粒子は、最大25μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、最大20μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、最大15μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、最大10μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、最大5μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、最大2μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、最大1μmのD90値を有する。
【0028】
通常、マトリックス粒子は、少なくとも0.1μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも0.2μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも0.5μmのD50値を有する。
【0029】
通常、マトリックス粒子は、最大20μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大15μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大10μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大5μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大2μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大1μmのD50値を有する。
【0030】
通常、マトリックス粒子は、少なくとも0.5μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも1μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも2μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも5μmのD90値を有する。
【0031】
通常、マトリックス粒子は、最大40μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大30μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大20μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大15μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大12μmのD90値を有する。
【0032】
好ましくは、導電性粒子および/またはマトリックス粒子の粒子サイズ分布は、正の方向にずれている、すなわち、粒子サイズの中央値は、最頻値よりも大きい。
【0033】
「電極活物質」という用語は、リチウムイオンを可逆的に貯蔵可能な材料を指す。一般に、電極活物質は、リチウムインターカレーション材料またはリチウムイオンと合金化可能な材料のいずれかによって提供される。特定の場合において、電極活物質は、それが提供される電極が最初にリチウム化プロセスを経てマトリックス中に活性電極材料を形成した後(そのような電極は「変換電極」と呼ばれ得る)、リチウムイオンを貯蔵するその容量が(インターカレーションまたは合金化によるかどうかにかかわらず)増加するように構成され得る。
【0034】
典型的には、電極活物質は、100mAh/gを超える、好ましくは200mAh/gを超える、より好ましくは400mAh/gを超える重量比容量を有する。
【0035】
通常、複合材料が電気化学セルのアノードとして使用されることを意図している場合、電極活物質は、リチウム、シリコン、炭素、スズ、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ホウ素および鉄、ならびにそれらの組み合わせの元素からなる群から選択される。あるいは、電極活物質は、リチウム、シリコン、炭素、スズ、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ホウ素および鉄の、リン酸塩、窒化物および酸化物からなる群、ならびにそれらの組み合わせから選択され得る。アノードで使用される可能性のある化合物の具体例には、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)およびSnO2が含まれる。
【0036】
逆に、複合材料が電気化学セルのカソードとして使用されることを意図している場合、電極活物質は、通常、リチウムのカチオンおよび1つ以上の遷移金属、ならびに酸化物アニオン、硫化物アニオン、およびポリアニオンからなる群から選択されるアニオンを含有する化合物である。適切なポリアニオンの例には、リン酸塩、PO4F、およびSO4Fが含まれる。
【0037】
例えば、カソードとして使用することを目的とした複合材料の電極活物質は、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2);コバルト酸リチウム(LiCoO2);リン酸鉄リチウム(LiFePO4);リチウムマンガンニッケル酸化物(LiMn1.5Ni0.5O4);リン酸コバルトリチウム(LiCoPO4);リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNixCoyMnzO2)およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。複合材料がカソードとしての使用を意図している場合、TiS3、NbSe3、LiTiS2およびそれらの組み合わせなどの金属カルコゲン化物もまた、適切な電極活物質を提供し得る。
【0038】
アノードとカソードとの両方に適した電極活物質の説明は、Nittaら、Materials Today、2015、18、252-264に記載されており、これは参照により本明細書に援用される。
【0039】
特定の場合において、マトリックス粒子は、粒子コアに対して異なる組成および/または異なる特性を有するコーティング層を備え得る。そのようなコーティング層は、粒子コアの周囲に部分的または全体的に延在し得る。
【0040】
導電性粒子がイオン伝導性および電子伝導性の両方である材料(すなわち、混合イオン電子伝導体である材料)を備える場合、材料のイオン伝導性は、通常少なくとも10-8Scm-1であり、材料の電子伝導率は、通常、少なくとも10-8Scm-1である。特定の実施形態では、材料のイオン伝導率は、少なくとも10-6Scm-1であり得る。特定の実施形態では、材料のイオン伝導率は、少なくとも10-5Scm-1であり得る。特定の実施形態では、材料の電気伝導率は、少なくとも10-6Scm-1であり得る。特定の実施形態では、材料の電気伝導率は、少なくとも10-5Scm-1であり得る。
【0041】
適切な混合伝導体の例には、Ti(IV)からTi(III)への部分的な還元が起こったチタン酸リチウムセラミック、特にLi4/3Ti5/3O4(通常はスピネル構造を有する)が含まれる。さらに適切な混合伝導体は、リチウムイオン伝導体Li1+xAlxTi2-x(PO4)3(例えば、x=0.3)によって提供され得る。これは、Mg2+などのドーパントイオンの存在下で電子伝導性であると考えられており、Ti(IV)からTi(III)への部分的な還元を引き起こすと考えられている(例えば、Shimら、Applied Materials andInterfaces 2016 8 12205-12210を参照されたい)。
【0042】
導電性粒子が電子伝導性粒子とイオン伝導性粒子との混合物によって提供される場合、電子伝導性粒子は、通常、少なくとも10-8Scm-1の電子伝導性を有する電子伝導性材料を備える。特定の実施形態では、電子伝導性材料の電気伝導率は、少なくとも10-6Scm-1であり得る。特定の実施形態では、電子伝導性材料の電気伝導率は、少なくとも10-5Scm-1であり得る。
【0043】
一般に、電子伝導性粒子は、酸化インジウムスズ;酸化アンチモンスズ;五酸化バナジウム;炭素質材料(アモルファスカーボンなど);非化学量論的窒化モリブデン;アルミニウムドープ酸化亜鉛;およびそれらの混合物からなる群から選択される電子伝導性材料を備える。特定の実施形態では、電子伝導性粒子は、酸化インジウムスズを備え得る。
【0044】
導電性粒子が電子伝導性粒子とイオン伝導性粒子との混合物によって提供される場合、イオン伝導性粒子は、通常、少なくとも10-8Scm-1のイオン伝導性を有するイオン伝導性材料を備える。特定の実施形態では、イオン伝導性材料のイオン伝導率は、少なくとも10-6Scm-1であり得る。特定の実施形態では、イオン伝導性材料のイオン伝導率は、少なくとも10-5Scm-1であり得る。
【0045】
特定の場合において、イオン伝導性粒子は、リチウムランタンジルコニウム酸化物およびそのドープされた変種を備え、ドーパントとして、タンタル、ニオブ、アルミニウム、チタン、ガドリニウム、ゲルマニウム、シリコン、アンチモン、およびそれらの組み合わせを含む。例えば、イオン伝導性粒子は、Li6.75La3Zr1.75Ta0.25O12を備え得る。リチウムランタンジルコニウム酸化物系統の材料に含まれるその他の化学量論には、Li7La3Zr1.4Ta0.6O12、Li6.75La3Zr1.75Ta0.5O12;Li6La3ZrTaO12;Li7-xLa3Zr2-xTaxO12(例えば、0≦x≦2);Li7-xLa3-yMyZr2-xNxO12(例えば、M=カルシウム、セリウム、またはアンチモン;N=タンタル、ニオブ、マグネシウム、スカンジウム、アルミニウム、またはガリウム、0≦y≦1;および0≦x≦1)が含まれる。
【0046】
イオン伝導性粒子内に提供され得る他の適切なイオン伝導性材料には、リチウムアルミニウムゲルマニウムリン酸化物;リチウムアルミニウムチタンリン酸化物;リチウムランタンチタン酸化物;Li3OCl;LiBH4;3LiBH4・LiI;7LiBH4・LiI;3LiBH4・LiBr;3LiBH4・LiCl;およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0047】
特定の実施形態では、イオン伝導性粒子は、参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2017/0018781号(US2017/0018781)に記載されているようなイオン伝導性ポリマー材料を備え得る。
【0048】
複合材料の構成材料(電極活物質および電子伝導性および/またはイオン伝導性材料を含む)の選択は、一般に、複合材料または複合材料が組み込まれる後続のデバイスの製造に使用される処理温度の考慮によって少なくとも部分的に影響を受ける。複合材料が処理後に適切に機能することが望ましいためである。特定の場合においては、処理温度を450℃未満に保ち得、他の場合には、処理温度を450~850℃の範囲とし得、さらに別の場合には、処理温度を850℃より高くし得る。
【0049】
導電性粒子が電子伝導性粒子とイオン伝導性粒子との混合物によって提供される場合、電子伝導性粒子は、針状体、糸状、または他の高アスペクト比の形態の形状ではなく、少なくとも0.6の球形度によって示されるような、ブロック状の形状である。通常、電子伝導性粒子の球形度は、少なくとも0.7、最も好ましくは少なくとも0.8である。
【0050】
通常、マトリックス粒子および/またはイオン伝導性粒子の球形度は、少なくとも0.6、好ましくは少なくとも0.7、より好ましくは少なくとも0.8である。
【0051】
第2の態様では、本発明は、電極活物質を備えるマトリックス粒子によって提供されるマトリックス;マトリックス粒子間に分布するイオン伝導性粒子によって提供されるイオン伝導性フラクション;およびマトリックス粒子間に分布する電子伝導性フラクション、を備える複合材料を提供し得、
ここで、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも5%であるD90値を有する。
【0052】
本発明の第2の態様による複合材料において、電子伝導性相またはフラクションは、糸状体または針状体などの高アスペクト比の構成要素の形態で提供され得る。このような高アスペクト比の構成要素は、通常、直径の少なくとも4倍、特定の場合においては直径の少なくとも5倍の長さを有する。そのような高アスペクト比の材料には、窒化チタンウィスカーおよび炭素質の高アスペクト材料(例:カーボンナノチューブ)が含まれ得る。この形態で提供される電子伝導性相またはフラクションは、電極活物質の粒子を互いに著しく分離することなく、電子の輸送経路を提供し得る。
【0053】
他の場合において、電子伝導性フラクションは、少なくとも0.6の球形度を有するが、その粒子サイズがイオン伝導性粒子の粒子サイズよりも著しく小さい、ブロック状粒子の形態で提供され得る。例えば、電子伝導性フラクションの粒子のD50値は、イオン伝導性相の粒子のD50値の25%未満(いくつかの実施形態では15%未満)であり得る。そのような場合、電子伝導性フラクションの粒子は、本発明の第1の態様に関連して指定された電子伝導性材料のいずれか1つを備え得る。
【0054】
そのような場合、マトリックス粒子の十分な分離を確実なものにして、イオンの輸送経路の供給を可能にするために、マトリックス粒子のD50値の少なくとも5%であるD90値を有するイオン伝導性粒子が必要とされ得ると考えられる。すなわち、そのような場合、主にイオン伝導性粒子によって、マトリックス粒子に割り込ませて離間させる機能が提供される。
【0055】
特定の場合においては、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも7%のD90値を有する。特定の場合においては、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも10%のD90値を有する。特定の場合においては、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも15%のD90値を有する。特定の場合においては、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも20%のD90値を有する。
【0056】
通常、イオン伝導性粒子は、複合材料の少なくとも3体積%、ある場合には複合材料の少なくとも5体積%、さらにある場合には複合材料の少なくとも10体積%、好ましくは少なくとも15体積%、より好ましくは少なくとも20体積%、の体積分率で存在する。
【0057】
一般に、イオン伝導性粒子は、複合材料の最大35体積%、好ましくは最大30体積%、より好ましくは最大28体積%、の体積分率で存在する。
【0058】
場合によっては、イオン伝導性粒子は、複合材料の5~35体積%の体積分率で存在する。場合によっては、イオン伝導性粒子は、複合材料の10~30体積%の体積分率で存在する。
【0059】
特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD90値の少なくとも5%のD90値を有する。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD90値の少なくとも10%のD90値を有する。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD90値の少なくとも15%のD90値を有する。
【0060】
一般に、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD90値の最大30%、好ましくは最大25%、より好ましくは最大20%であるD90値を有する。
【0061】
好ましくは、イオン伝導性粒子の粒子サイズ分布は、イオン伝導性粒子のD90値がD50値の少なくとも1.5倍、より好ましくはD50値の少なくとも1.7倍、最も好ましくはD50値の少なくとも2倍となる。
【0062】
一般に、マトリックス粒子の粒子サイズ分布は、マトリックス粒子のD90値がD50値の少なくとも1.5倍、より好ましくはD50値の少なくとも1.7倍、最も好ましくはD50値の少なくとも2倍となる。
【0063】
場合によっては、マトリックス粒子および/またはイオン伝導性粒子の粒子サイズ分布は単峰性であり、すなわち、単一のピークを有する。
【0064】
特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、少なくとも5nmのD50値を有する。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、少なくとも10nmのD50値を有し得る。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、少なくとも20nmのD50値を有し得る。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、少なくとも100nmのD50値を有し得る。
【0065】
通常、イオン伝導性粒子は、最大5μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、伝導性粒子は、最大2μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、伝導性粒子は、最大500nmのD50値を有する。特定の実施形態においては、伝導性粒子は、最大400nmのD50値を有する。特定の実施形態においては、伝導性粒子は、最大300nmのD50値を有する。
【0066】
通常、イオン伝導性粒子は、少なくとも50nmのD90値を有する。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、少なくとも100nmのD90値を有し得る。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、少なくとも200nmのD90値を有し得る。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、少なくとも500nmのD90値を有し得る。
【0067】
通常、イオン伝導性粒子は、最大25μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、伝導性粒子は、最大20μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、伝導性粒子は、最大15μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、伝導性粒子は、最大10μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、伝導性粒子は、最大5μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、伝導性粒子は、最大2μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、最大1μmのD90値を有する。
【0068】
通常、マトリックス粒子は、少なくとも0.1μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも0.2μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも0.5μmのD50値を有する。
【0069】
通常、マトリックス粒子は、最大20μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大15μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大10μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大5μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大2μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大1μmのD50値を有する。
【0070】
通常、マトリックス粒子は、少なくとも0.5μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも1μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも2μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも5μmのD90値を有する。
【0071】
通常、マトリックス粒子は、最大40μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大30μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大20μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大15μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大12μmのD90値を有する。
【0072】
好ましくは、イオン伝導性材料の粒子および/または電極活物質の粒子サイズ分布は、正の方向にずれている、すなわち、粒子サイズの中央値は、最頻値よりも大きい。
【0073】
適切な電極活物質は、本発明の第1の態様に関連して記載された電極活物質のいずれかを備え得る。
【0074】
適切なイオン伝導性材料は、本発明の第1の態様に関連して記載されたイオン伝導性材料のいずれかを備え得る。
【0075】
通常、電極活物質の粒子および/またはイオン伝導性粒子の球形度は、少なくとも0.6、好ましくは少なくとも0.7、より好ましくは少なくとも0.8である。
【0076】
第3の態様では、本発明は、電極活物質を備えるマトリックス粒子によって提供されるマトリックスと;マトリックス粒子間に分布するイオン伝導性粒子によって提供されるイオン伝導性フラクションと;マトリックス粒子間に分布する電子伝導性粒子によって提供される電子伝導性フラクションと;を備える、複合材料を提供し得、
ここで、電子伝導性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも5%であるD90値を有する。
【0077】
本発明の第3の態様による複合材料では、イオン伝導性粒子の粒子サイズは、電子伝導性粒子の粒子サイズよりも著しく小さい場合があり得る。例えば、イオン伝導性フラクションの粒子のD50値は、電子伝導性フラクションの粒子のD50値の25%未満(いくつかの実施形態では15%未満)であり得る。
【0078】
このような場合、マトリックス粒子の十分な分離を確実にして、荷電種の輸送経路の提供を可能にするために、マトリックス粒子のD50値の少なくとも5%であるD90値を有する電子伝導性粒子が必要とされ得ると考えられる。すなわち、そのような場合、主に電子伝導性粒子によって、マトリックス粒子に割り込ませて離間させる機能が提供される。
【0079】
事実上、本発明の第3の態様による複合材料中の導電性粒子は、本発明の第2の態様による複合材料中のイオン伝導性粒子と同等の機能を発揮する。
【0080】
こうして、本発明の第3の態様による複合材料に存在する電子伝導性粒子の量および/または粒子サイズ分布は、それぞれ、本発明の第2の態様による複合材料中のイオン伝導性粒子に存在するイオン伝導性粒子の量および/または粒子サイズ分布に対応し得る。
【0081】
本発明の第3の態様による複合材料に存在するマトリックス粒子の量および/または粒子サイズ分布は、それぞれ、本発明の第2の態様による複合材料中に存在するマトリックス粒子の量および/または粒子サイズ分布に対応し得る。
【0082】
適切な電極活物質は、本発明の第1の態様に関連して記載された電極活物質のいずれかを備え得る。
【0083】
イオン伝導性粒子は、本発明の第1の態様に関連して記載されたイオン伝導性材料のいずれかを備え得る。
【0084】
電子伝導性粒子は、本発明の第1の態様に関連して記載された電子伝導性材料のいずれかを備え得る。
【0085】
通常、電極活物質の粒子、電子伝導性粒子および/またはイオン伝導性粒子の球形度は、少なくとも0.6、好ましくは少なくとも0.7、より好ましくは少なくとも0.8である。
【0086】
本発明の第1、第2、または第3の態様による複合材料の構成は、大量の電極活物質を含有し、したがって高い重量比容量を有する材料を提供することを可能にし得る。例えば、複合材料は、少なくとも50体積%、好ましくは少なくとも65体積%、最も好ましくは少なくとも75体積%の量の電極活物質を含有し得る。
【0087】
好ましくは、本発明の第1の、第2のまたは第3の態様による複合材料の多孔度は、複合材料のバルク体積の10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは3%未満である。これは、通常、電極の多孔度レベルが著しく高い液体電解質リチウムイオン電池とは対照的である。本発明の第1、第2または第3の態様による複合材料の低い多孔度レベルは、材料の機械的強度を改善するのに役立つと考えられる。
【0088】
通常、本発明の第1、第2または第3の態様による複合材料は、結合相をさらに備える。適切な結合相は、例えば、ホウ酸リチウムを備え得る。
【0089】
結合相は、一般に、複合材料の固体体積に対して少なくとも1体積%の体積分率で存在する。特定の実施形態では、結合相は、複合材料の固体体積に対して少なくとも2体積%の体積分率で存在する。特定の実施形態では、結合相は、複合材料の固体体積に対して少なくとも5体積%の体積分率で存在する。
【0090】
結合相は、一般に、複合材料の固体体積に対して最大20体積%の量で存在する。特定の実施形態では、結合相は、複合材料の固体体積に対して最大15体積%の量で存在する。特定の実施形態では、結合相は、複合材料の固体体積に対して最大10体積%の量で存在する。
【0091】
当業者に知られているように、「D50」という用語は、粒子のサンプルの中央粒子サイズ、すなわち、サンプル内の粒子の50%(数)のサイズよりも大きいおよびサンプル中の粒子の50%(数)のサイズよりも小さい粒子サイズを指す。
【0092】
当業者に知られているように、「D90」という用語は、サンプル内の粒子の90%(数)のサイズより大きく、サンプル中の粒子の10%(数)のサイズより小さい粒子サイズを指す。
【0093】
「粒子サイズ」という用語は、粒子の平均直径を示す。
【0094】
当業者によって理解されるように、D50およびD90値を含む、本明細書に記載の粒子サイズ分布は、3次元粒子に関連する。当業者は、当技術分野で知られている方法を使用して、本発明の第1、第2、または第3の態様に従って、複合材料の2次元断面からこれらの値を決定することが可能である。
【0095】
第4の態様では、本発明は、
・本発明の第1、第2、または第3の態様のいずれかによる複合材料、または
・本発明の第7、第8、または第9の態様の方法に従って作製された複合材料、
のいずれかを備える電極を提供し得る。
【0096】
通常、少なくとも1つの電極に含まれる複合材料は、平面構造を有する。好ましくは、少なくとも1つの電極に含まれる複合材料は、少なくとも300μm、好ましくは少なくとも400μm、より好ましくは少なくとも500μmの厚さを有する。
【0097】
第5の態様では、本発明は、電気化学セルに組み込むための下部構造を提供し得、下部構造は、本発明の第4の態様による電極を備え、電極は基材上に支持されている。
【0098】
通常、複合材料は基材上に層を形成する。
【0099】
特定の場合においては、下部構造は、複合材料と電気的に接触している集電材料をさらに含み得る。例えば、集電材料は、複合材料と基材との間に提供され得る。集電材料は、金属または導電性金属酸化物であり得る。例えば、集電材料は、白金、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、金、銀、ニッケル、モリブデン、酸化スズ、酸化インジウムスズ、およびステンレス鋼からなる群から選択され得る。
【0100】
特定の実施形態では、基材は、集電材料によって提供され得る。
【0101】
第6の態様では、本発明は、2つの電極とその間に配置されたバルク電解質とを備える電気化学セルを提供し得、少なくとも1つの電極は、
・本発明の第1、第2、または第3の態様による複合材料、
または
・本発明の第7、第8、または第9の態様の方法に従って作製された複合材料、
のいずれかを備える。
【0102】
好ましくは、少なくとも1つの電極に含まれる複合材料は、少なくとも300μm、好ましくは少なくとも400μm、より好ましくは少なくとも500μmの厚さを有する。これにより、電極活物質が占める電気化学セルの体積分率が増加し得、セルのエネルギー密度が増加し得る。
【0103】
電気化学セルは、通常、少なくとも1つの電極と電気的に接触している集電体を備える。
【0104】
特定の場合において、少なくとも1つの電極は、電気化学セルのカソードを提供し得る。他の場合においては、少なくとも1つの電極が電気化学セルのアノードを提供し得る。
【0105】
通常、電気化学セルは全固体電気化学セルである。
【0106】
第7の態様では、本発明は、複合材料を製造する方法を提供し得、この方法は、
・多量のマトリックス粒子を準備し、マトリックス粒子は電極活物質を備える、ステップと;
・多量の導電性粒子を準備し、導電性粒子は、
・イオン伝導性および電子伝導性材料;または、
・イオン伝導性粒子と電子伝導性粒子との混合物であって、電子伝導性粒子の球形度は少なくとも0.6である、混合物;
のいずれかを備える、ステップと、
・マトリックス粒子、導電性粒子、および流体担体媒体を備えるインク配合物を調製するステップと;
・インク配合物を基材上に堆積させ、印刷層を提供するステップと;
を含み、
ここで、導電性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも5%であるD90値を有する。
【0107】
マトリックス粒子および導電性粒子の組成、粒子サイズ分布および他の特性は、本発明の第1の態様の同等の要素に関して指定された通りであり得る。
【0108】
特定の場合においては、導電性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも7%であるD90値を有する。特定の場合においては、導電性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも10%であるD90値を有する。特定の場合においては、導電性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも15%であるD90値を有する。特定の場合においては、導電性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも20%であるD90値を有する。
【0109】
特定の実施形態においては、導電性粒子は、マトリックス粒子のD90値の少なくとも5%であるD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、マトリックス粒子のD90値の少なくとも10%であるD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、マトリックス粒子のD90値の少なくとも15%であるD90値を有する。
【0110】
導電性粒子が電子伝導性粒子とイオン伝導性粒子との混合物を備える場合、2つの粒子タイプは、一般に、体積で測定されるように、ほぼ同様の量でインク配合物内に提供される。したがって、例えば、電子伝導性粒子とイオン伝導性粒子との比(各粒子タイプの総体積の比として表される)は、5:1~1:5の範囲にあり得る。特定の実施形態においては、この比は、3:1~1:3の範囲にあり得る。特定の実施形態においては、この比は、2:1~1:2の範囲にあり得る。
【0111】
通常、導電性粒子は、インク配合物の固形分に対して少なくとも5体積%、特定の場合においてはインク配合物の固形分に対して10体積%、好ましくは少なくとも15体積%、より好ましくは少なくとも20体積%の量で存在する。
【0112】
導電性粒子が電子伝導性粒子とイオン伝導性粒子との混合物を備える場合、導電性粒子は、インク配合物の固形分に対して少なくとも10体積%、特定の場合において、インク配合物の固形分に対して少なくとも15体積%であることが好ましく、好ましくは少なくとも18体積%、より好ましくは少なくとも22体積%の量で存在する。
【0113】
通常、導電性粒子は、インク配合物の固形分に対して最大35体積%、好ましくは最大30体積%、より好ましくは最大28体積%の量で存在する。
【0114】
好ましくは、導電性粒子は、マトリックス粒子のD90値の最大30%、より好ましくは最大25%、最も好ましくは最大20%であるD90値を有するべきである。
【0115】
マトリックス粒子の粒子サイズ分布は、マトリックス粒子のD90値がD50値の少なくとも1.5倍であることが好ましく、より好ましくはD50値の少なくとも1.7倍、最も好ましくはD50値の少なくとも2倍となることが好ましい。
【0116】
導電性粒子の粒度分布は、導電性粒子のD90値がD50値の少なくとも1.5倍、より好ましくはD50値の少なくとも1.7倍、最も好ましくはD50値の少なくとも2倍であることが好ましい。
【0117】
通常、導電性粒子のD50値は少なくとも5nmである。特定の実施形態では、導電性粒子は、少なくとも10nmのD50値を有し得る。特定の実施形態では、導電性粒子は、少なくとも20nmのD50値を有し得る。特定の実施形態では、導電性粒子は、少なくとも100nmのD50値を有し得る。
【0118】
通常、導電性粒子は、最大5μmのD50値を有する。特定の実施形態では、導電性粒子は、最大2μmのD50値を有する。特定の実施形態では、導電性粒子は、最大500nmのD50値を有する。特定の実施形態では、導電性粒子は、最大400nmのD50値を有する。特定の実施形態では、導電性粒子は、最大300nmのD50値を有する。
【0119】
通常、導電性粒子は、少なくとも50nmのD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、少なくとも100nmのD90値を有し得る。特定の実施形態においては、導電性粒子は、少なくとも200nmのD90値を有し得る。特定の実施形態においては、導電性粒子は、少なくとも500nmのD90値を有し得る。
【0120】
通常、導電性粒子は、最大25μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、最大20μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、最大15μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、最大10μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、最大5μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、最大2μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、導電性粒子は、最大1μmのD90値を有する。
【0121】
通常、マトリックス粒子は、少なくとも0.1μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも0.2μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも0.5μmのD50値を有する。
【0122】
通常、マトリックス粒子は、最大20μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大15μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大10μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大5μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大2μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大1μmのD50値を有する。
【0123】
通常、マトリックス粒子は、少なくとも0.5μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも1μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも2μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも5μmのD90値を有する。
【0124】
通常、マトリックス粒子は、最大40μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大30μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大20μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大15μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大12μmのD90値を有する。
【0125】
好ましくは、導電性粒子および/またはマトリックス粒子の粒子サイズ分布は、正の方向にずれている、すなわち、粒子サイズの中央値は最頻値よりも大きい。
【0126】
導電性粒子が電子伝導性粒子とイオン伝導性粒子との混合物によって提供される場合、電子伝導性粒子は、針状体、糸状体、または他の高アスペクト比の形態ではなく、少なくとも0.6の球形度によって示されるような、ブロック形状である。通常は、電子伝導性粒子の球形度は、少なくとも0.7、最も好ましくは少なくとも0.8である。
【0127】
通常は、マトリックス粒子および/またはイオン伝導性粒子の球形度は、少なくとも0.6、好ましくは少なくとも0.7、より好ましくは少なくとも0.8である。
【0128】
本発明の第7の態様の方法に従って調製された複合材料は、単独でまたは組み合わせて、本発明の第1の態様による複合材料の特徴のいずれかを含み得る。
【0129】
第8の態様では、本発明は、複合材料を製造する方法を提供し得、この方法は、
・多量のイオン伝導性粒子、ある量の電子伝導性相、および多量のマトリックス粒子を準備し、マトリックス粒子は電極活物質を備える、ステップと、
・マトリックス粒子、イオン伝導性粒子、電子伝導性相、および流体担体媒体を備えるインク配合物を調製する、ステップと、
・インク配合物を基材上に堆積させて、印刷層を提供する、ステップと、
を含み、
ここで、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも5%であるD90値を有する。
【0130】
電子伝導性相は、糸状体または針状体などの高アスペクト比の構成要素の形で提供され得る。このような高アスペクト比の構成要素は、通常、直径の少なくとも4倍、特定の場合において直径の少なくとも5倍の長さを有する。そのような高アスペクト比の材料には、窒化チタンウィスカーおよび炭素質の高アスペクト材料(例:カーボンナノチューブ)が含まれ得る。
【0131】
他の場合において、電子伝導性相は、少なくとも0.6の球形度を有するが、その粒子サイズがイオン伝導性粒子の粒子サイズよりも著しく小さいブロック状粒子の形態で提供され得る。例えば、電子伝導性相の粒子のD50値は、イオン伝導性粒子のD50値の25%未満(いくつかの実施形態では15%未満)であり得る。そのような場合、電子伝導性相の粒子は、本発明の第1の態様に関連して指定された電子伝導材料のいずれか1つを備え得る。
【0132】
こうして、第8の態様による本発明は、複合材料を製造する方法を提供し得、この方法は、
・多量のイオン伝導性粒子、多量の電子伝導性粒子、および多量のマトリックス粒子を準備し、マトリックス粒子は電極活物質を備える、ステップと、
・マトリックス粒子、イオン伝導性粒子、電子伝導性粒子、および流体担体媒体を備えるインク配合物を調製する、ステップと、
・インク配合物を基材上に堆積させ、印刷層を提供する、ステップと、
を含み、
ここで、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも5%であるD90値を有する。
【0133】
マトリックス粒子およびイオン伝導性粒子の組成および特性は、本発明の第2の態様の同等の要素に関して指定された通りであり得る。
【0134】
特定の場合においては、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも7%のD90値を有する。特定の場合においては、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも10%のD90値を有する。特定の場合においては、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも15%のD90値を有する。特定の場合においては、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも20%のD90値を有する。
【0135】
通常、イオン伝導性粒子は、複合材料の少なくとも3体積%、ある場合には複合材料の少なくとも5体積%、さらにある場合にはインク配合物の固形分に対して少なくとも10体積%、好ましくは少なくとも15体積%、より好ましくは少なくとも20体積%、の体積分率で存在する。
【0136】
一般に、イオン伝導性粒子は、インク配合物の固形分に対して最大35体積%、好ましくは最大30体積%、より好ましくは最大28体積%の体積分率で存在する。
【0137】
特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD90値の少なくとも5%のD90値を有する。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD90値の少なくとも10%のD90値を有する。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD90値の少なくとも15%のD90値を有する。
【0138】
一般に、イオン伝導性粒子は、マトリックス粒子のD90値の最大30%、好ましくは最大25%、より好ましくは最大20%であるD90値を有する。
【0139】
好ましくは、イオン伝導性粒子の粒子サイズ分布は、イオン伝導性粒子のD90値がD50値の少なくとも1.5倍、より好ましくはD50値の少なくとも1.7倍、最も好ましくは少なくともD50値の2倍となる。
【0140】
一般に、マトリックス粒子の粒子サイズ分布は、マトリックス粒子のD90値がD50値の少なくとも1.5倍、より好ましくはD50値の少なくとも1.7倍、最も好ましくはD50値の少なくとも2倍となる。
【0141】
通常、イオン伝導性粒子は、少なくとも5nmのD50値を有する。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、少なくとも10nmのD50値を有し得る。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、少なくとも20nmのD50値を有し得る。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、少なくとも100nmのD50値を有し得る。
【0142】
通常、イオン伝導性粒子は、最大5μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、最大2μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、最大500nmのD50値を有する。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、最大400nmのD50値を有する。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、最大300nmのD50値を有する。
【0143】
通常、イオン伝導性粒子は、少なくとも50nmのD90値を有する。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、少なくとも100nmのD90値を有し得る。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、少なくとも200nmのD90値を有し得る。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、少なくとも500nmのD90値を有し得る。
【0144】
通常、イオン伝導性粒子は、最大25μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、伝導性粒子は、最大20μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、伝導性粒子は、最大15μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、伝導性粒子は、最大10μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、伝導性粒子は、最大5μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、伝導性粒子は、最大2μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、イオン伝導性粒子は、最大1μmのD90値を有する。
【0145】
通常、マトリックス粒子は、少なくとも0.1μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも0.2μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも0.5μmのD50値を有する。
【0146】
通常、マトリックス粒子は、最大20μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大15μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大10μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大5μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大2μmのD50値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大1μmのD50値を有する。
【0147】
通常、マトリックス粒子は、少なくとも0.5μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも1μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも2μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、少なくとも5μmのD90値を有する。
【0148】
通常、マトリックス粒子は、最大40μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大30μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大20μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大15μmのD90値を有する。特定の実施形態においては、マトリックス粒子は、最大12μmのD90値を有する。
【0149】
好ましくは、イオン伝導性材料および/または電極活物質の粒子の粒子サイズ分布は、正の方向にずれている、すなわち、粒子サイズの中央値は、最頻値よりも大きい。
【0150】
通常、電極活物質の粒子および/またはイオン伝導性粒子の球形度は、少なくとも0.6、好ましくは少なくとも0.7、より好ましくは少なくとも0.8である。
【0151】
本発明の第8の態様の方法に従って調製された複合材料は、単独でまたは組み合わせて、本発明の第2の態様による複合材料の特徴のいずれかを含み得る。
【0152】
第9の態様では、本発明は、複合材料を製造する方法を提供し得、この方法は、
・多量のイオン伝導性粒子、多量の電子伝導性粒子、および多量のマトリックス粒子を準備し、マトリックス粒子は電極活物質を備える、ステップと、
・マトリックス粒子、イオン伝導性粒子、電子伝導性粒子、および流体担体媒体を備えるインク配合物を調製する、ステップと、
・インク配合物を基材上に堆積させ、印刷層を提供する、ステップと、
を含み、
ここで、電子伝導性粒子は、マトリックス粒子のD50値の少なくとも5%であるD90値を有する。
本発明の第9の態様による方法では、イオン伝導性粒子の粒子サイズは、電子伝導性粒子の粒子サイズよりも著しく小さい場合があり得る。例えば、イオン伝導性粒子のD50値は、電子伝導性粒子のD50値の25%未満(いくつかの実施形態では15%未満)であり得る。
【0153】
マトリックス粒子、イオン伝導性粒子および電子伝導性粒子の組成、粒子サイズ分布、および他の特性は、本発明の第3の態様の同等の要素に関して指定された通りであり得る。こうして、本発明の第9の態様の方法に従って調製された複合材料は、単独でまたは組み合わせて、本発明の第3の態様による複合材料の任意の特徴を含み得る。
【0154】
通常、本発明の第7、第8、または第9の態様による方法は、
・印刷層に存在する有機化合物の量を削減(例えば、乾燥することによって)する、ステップ、
・印刷層を機械的プレスする、ステップまたは
・印刷層を焼結する、ステップ、
のうちの1つ以上をさらに備える。
【0155】
典型的には、本発明の第7、第8、または第9の態様による方法は、インク配合物に結合相を含めるステップをさらに含む。適切な結合相は、例えば、ホウ酸リチウムを備え得る。
【0156】
結合相は、一般に、インク配合物の固形分に対して少なくとも1体積%の体積分率で存在する。特定の実施形態では、結合相は、インク配合物の固形分に対して少なくとも2体積%の体積分率で存在する。特定の実施形態では、結合相は、インク配合物の固形分に対して少なくとも5体積%の体積分率で存在する。
【0157】
結合相は、一般に、インク配合物の固形分に対して最大20体積%の量で存在する。特定の実施形態では、結合相は、インク配合物の固形分に対して最大15体積%の量で存在する。特定の実施形態では、結合相は、インク配合物の固形分に対して最大10体積%の量で存在する。
【0158】
印刷層を提供するために基材上にインク配合物を堆積するステップは、単一の段階または複数の段階で実行され得る。
【0159】
第10の態様では、本発明は、電極の製造における本発明の第1、第2、または第3の態様のうちの1つによる複合材料の使用を提供し得る。
【0160】
電極は、アノードまたはカソードであり得る。
【0161】
第11の態様では、本発明は、電極の製造における本発明の第7、第8、または第9の態様のうちの1つの方法に従って作製された複合材料の使用を提供し得る。
【0162】
電極は、アノードまたはカソードであり得る。
【0163】
第12の態様では、本発明は、電気化学反応中にリチウムイオンを吸収および/または放出するために、本発明の第1、第2、または第3の態様の1つによる複合材料の使用を提供し得る。
【0164】
第13の態様では、本発明は、電気化学反応中にリチウムイオンを吸収および/または放出するために、本発明の第7、第8、または第9の態様のうちの1つの方法に従って作製された複合材料の使用を提供し得る。
【0165】
「イオン伝導性粒子」という用語は、電極活物質を備えるマトリックス粒子によって提供されるマトリックスを有する複合材料内に存在する粒子を指すために本明細書で使用され、イオン伝導性粒子は、それを通るリチウムイオンの輸送を可能にするように構成される。対照的に、「バルク電解質」という用語は、電気化学セルのアノードとカソードとの間に位置する電解質相(セパレータとしても知られている)を指すことを意図している。
【0166】
誤解を避けるために、「イオン伝導性粒子」という用語は、バルク電解質の電解質材料と同じ組成および/または特性を有する場合も有しない場合もあり得る、電解質材料の粒子を指すことに留意されたい。
【0167】
ここで、本発明は、以下の図を参照して、例としてのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【
図1】
図1は、本発明の第2の態様の実施形態による、複合材料のインピーダンスを測定するために使用される電気的AC応答のグラフである。
【
図2】
図2は、本発明の比較例による複合材料のインピーダンスを測定するために使用される電気的AC応答のグラフである。
【実施例】
【0169】
(実施例1)
カソードを使用するための複合材料を調製した。
第1のステップとして、表1に記載されている固相を含有するインクを調製した。
【0170】
【0171】
当技術分野で知られているように、インクはさらに結合剤、分散剤および溶媒を含有していた。インクの固形分は50重量%+-10%であった。
【0172】
複合材料を、スクリーン印刷プロセスを使用して支持体に印刷し、その後、
・150℃未満の温度で乾燥してインクから溶剤を除去するステップと、
・熱または触媒プロセスを使用して脱結合を行い、重質有機成分を除去するステップと、
・機械的プレスステップと、
・焼結ステップと、
を行った。
(実施例2)
【0173】
カソードを使用するために、さらなる複合材料を準備した。カソードの電極活性、イオン伝導性および電子伝導性成分の比および粒子サイズを表2に示す。
【0174】
複合材料のインピーダンスを、インピーダンスアナライザを使用して測定した。インピーダンスを、1MHzから、例えば0.1Hzの周波数範囲にわたって振幅10mVのAC励起信号を使用して測定した。各周波数での応答を、5秒の積分時間を使用して測定した。周波数の上限および下限の間に対数間隔を空け、10の乗数ごとに7つの周波数を測定した。
【0175】
インピーダンスの結果を、
図1に示すナイキスト線図に表す。この図では、Z’’(複素インピーダンスの虚数部)がZ’(複素インピーダンスの実数部)に対してプロットされている。この図は2つの部分を有する。グラフの原点に隣接する第1の弧状の部分と、より高いZ’の値での第2の弧状の部分である。
【0176】
第1の弧状部分の直径は、複合材料内のイオン電荷移動のインピーダンスの関数であり、第2の弧状部分の直径は、複合材料内の電荷移動のインピーダンスの関数である。プロットの2つの部分の明確に定義された形状は、電子伝導およびイオン伝導ネットワークが複合材料内に確立されていることを示している。したがって、有限のイオンおよび電子インピーダンスを有し、電極としての使用に適している。
【0177】
【0178】
(比較例3)
電極活物質(LiNiCoMnO2)とイオン伝導性材料(Ohara社のLICGC(商標)電解質)との粒子を含有する複合材料を調製した。
【0179】
2つの材料の粒子サイズを表3に示す。
【0180】
それぞれ16体積%、26体積%、50体積%のLICGC(商標)を含有する3つのサンプルを調整した。LICGC(商標)を含有しない別のサンプルを調整した。
【0181】
例2に関連して説明した方法を使用して、すべてのサンプルでインピーダンス測定を実行した。結果を
図2に示す。これらは、イオン伝導性材料の含有量が0体積%から16体積%に増加すると、複合材料を介してイオン伝導性ネットワークが形成され始めるにつれてインピーダンスが減少することを示している。イオン伝導性材料の含有量が16体積%から26体積%に増加すると、イオン伝導性ネットワークがさらに発達し、それに対応してインピーダンスがさらに低下する。
【0182】
ただし、イオン伝導性材料の含有量が26体積%から50体積%に増加しても、インピーダンスはそれ以上低下せず、これは、イオン伝導性材料が26体積%の量で存在する場合、完全に形成された導電性ネットワークが存在し、イオン伝導性材料の含有量をこれ以上増加させることには利点がないことを示している。
【0183】