(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】離水抑制剤および離水抑制方法、ならびに離水抑制剤を含有する食品および冷凍食品
(51)【国際特許分類】
A23L 29/244 20160101AFI20240514BHJP
A23L 3/365 20060101ALI20240514BHJP
A23G 3/34 20060101ALN20240514BHJP
A23L 17/00 20160101ALN20240514BHJP
A23L 9/00 20160101ALN20240514BHJP
A23L 35/00 20160101ALN20240514BHJP
【FI】
A23L29/244
A23L3/365 Z
A23G3/34 107
A23L17/00 A
A23L9/00
A23L35/00
(21)【出願番号】P 2022080284
(22)【出願日】2022-05-16
【審査請求日】2023-03-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000118615
【氏名又は名称】伊那食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】根橋 怜美
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 芙希
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-322477(JP,A)
【文献】特開2014-023475(JP,A)
【文献】特開2014-076041(JP,A)
【文献】国際公開第2011/033807(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/051146(WO,A1)
【文献】特開2009-297024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 29/244
A23L 3/365
A23G 3/34
A23L 17/00
A23L 9/00
A23L 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品の離水抑制剤であって、
25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にあり、アルカリ条件下で加熱されることでゲル化する性質を有
し、レーザー回折型粒度分布測定法により測定される粒度分布における体積平均粒子径が10μm~160μmの範囲にある低粘性グルコマンナンを含有すること
を特徴とする離水抑制剤。
【請求項2】
前記食品が、製造、流通、保存または飲食に際して冷凍される冷凍食品であること
を特徴とする請求項1記載の離水抑制剤。
【請求項3】
前記食品が、糖度30以上の食品であること
を特徴とする請求項1記載の離水抑制剤。
【請求項4】
食品の離水抑制方法であって、
前記食品に、25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にあり、アルカリ条件下で加熱されることでゲル化する性質を有
し、レーザー回折型粒度分布測定法により測定される粒度分布における体積平均粒子径が10μm~160μmの範囲にある低粘性グルコマンナンを配合すること
を特徴とする離水抑制方法。
【請求項5】
前記食品が、製造、流通、保存または飲食に際して冷凍される冷凍食品であること
を特徴とする請求項
4記載の離水抑制方法。
【請求項6】
前記食品が、糖度30以上の食品であること
を特徴とする請求項4記載の離水抑制方法。
【請求項7】
前記食品に、前記低粘性グルコマンナンを0.15質量%以上配合すること
を特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の離水抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離水抑制剤および離水抑制方法、ならびに離水抑制剤を含有する食品および冷凍食品に関する。
【背景技術】
【0002】
こんにゃく芋等の主成分として知られるグルコマンナンは、こんにゃくの原料として知られている。また、それ以外にも、グルコマンナンは、特許文献1(特開2021-170967号公報)に例示されるように食品のゲル化剤としても知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のグルコマンナンのようなゲル化剤が配合されたゲル状食品は広く知られているが、このようなゲル状食品に例示される水分を含有する食品においては、経時的に離水が生じてしまうという課題がある。特に、冷凍食品においては解凍時に離水することにより冷凍前後で食感が変化したり、食品中に空隙である所謂「ス」が入ったりしてしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これに対して、本発明者は、グルコマンナンを改質することによって食品の離水抑制性および耐冷凍性が得られることを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、水分を含有する食品の離水を抑制することができ、特に解凍時の離水を抑制して冷凍前後の食感の変化や「ス」が入ることを防止できる離水抑制剤、ならびにこれを含有する食品および冷凍食品、さらに食品の離水抑制方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
本発明に係る離水抑制剤は、食品の離水抑制剤であって、25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にあり、アルカリ条件下で加熱されることでゲル化する性質を有し、レーザー回折型粒度分布測定法により測定される粒度分布における体積平均粒子径が10μm~160μmの範囲にある低粘性グルコマンナンを含有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る離水抑制方法は、食品の離水抑制方法であって、前記食品に、25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にあり、アルカリ条件下で加熱されることでゲル化する性質を有し、レーザー回折型粒度分布測定法により測定される粒度分布における体積平均粒子径が10μm~160μmの範囲にある低粘性グルコマンナンを配合することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にある低粘性グルコマンナンは、こんにゃく粉やそこから抽出、精製されたグルコマンナン等の通常のグルコマンナンよりも、分子量が小さく、粘性が低い。したがって、ハイドロゾルである膨潤体の分子量が適度に小さくなり、適度な緻密さと強度とを有する網目構造が形成されることで、その中に水分を抱え込んで保水し、食品からの離水を抑制できる。また、当該網目構造に捕捉された水分は、食品の凍結時に氷結晶が大きくなり難く、また、解凍時に一定の離水が生じてもこれを網目構造の中に吸収して(抱え込んで)離水を抑制できる。したがって、冷凍食品においては、冷凍前後の食感の変化や「ス」が入ることを防止できる。さらに、膨潤体を構成するグルコマンナン分子の分子鎖が短くなることから、分子間の相互作用が起こり難く、網目構造は安定する。したがって、離水抑制効果を長期間に亘って維持することができる。
【0011】
また、本発明に係る食品は、本発明に係る離水抑制剤を含有する食品である。また、本発明に係る冷凍食品は、前記食品に、製造、流通、保存または飲食に際して冷凍される冷凍食品が適用された冷凍食品である。本発明に係る離水抑制剤および離水抑制方法によれば、ゼリー、プリン、水羊羹等のゲル状製品は勿論、ジャム、ゼリー飲料製品、サラダ、炒めもの、佃煮等の調理品、さらに、アイスクリーム、凍結ゼリー飲料製品等の冷凍食品に対して、離水抑制性および耐冷凍性が得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水分を含有する食品の離水を抑制することができ、特に解凍時の離水を抑制して冷凍前後の食感の変化や「ス」が入ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、試験1の条件および結果を示す表である。
【
図2】
図2は、試験3の条件および結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
先ず、本実施形態に係る離水抑制剤は、食品の離水抑制剤である。ここでいう「食品」は、水分を含有し、離水が生じる可能性のある食品であれば特に限定されず、喫食または喫飲される製品または調理品を含む。一例として、ゼリー、プリン、水羊羹等のゲル状製品、ジャム、喫食または喫飲されるゼリー飲料製品、サラダ、炒めもの、佃煮等の調理品等が挙げられる。また、ここでいう「離水」は解凍時の離水を含むことから、当該「食品」は、製造、流通、保存、または飲食に際して冷凍される冷凍食品を含む。一例として、アイスクリームや、例えば需要者等により喫食または喫飲に際して冷凍される凍結ゼリー飲料製品等を含む。
【0016】
なお、本願でいう「耐冷凍性」とは、解凍時の離水を抑制し、冷凍前後の食感の変化や「ス」が入ることを防止する性質をいう。耐冷凍性は、食品の離水を抑制する性質である離水抑制性に包含されるが、本実施形態に係る食品の解凍時の離水抑制効果を強調する目的で、「離水抑制性および耐冷凍性」と併記する場合がある。
【0017】
次に、本実施形態に係る離水抑制剤は、25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にある低粘性グルコマンナンを含有することを特徴とする。以下、本実施形態に係る低粘性グルコマンナンについて説明する。
【0018】
本実施形態に係る低粘性グルコマンナンは、こんにゃく粉やそこから抽出、精製されたグルコマンナン等の通常のグルコマンナンを改質した改質グルコマンナンであって、25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にある低粘性グルコマンナンである。ここで、「25℃における1%水溶液の粘度」は、グルコマンナン3.0gを310gの精製水に分散した後、95℃で3分間加熱して最終重量を300gに調整して取得したゾルの25℃における粘度(溶液温度25℃±1℃で1時間静置後に測定した粘度)をいう。粘度の測定には、B型回転粘度計を使用する。ローターの回転数を60rpmとし、回転し始めてから40秒後の測定値とする。使用ローターは、試料の粘度に応じて、粘度が1000mPa・s以上の試料にはNo.3、粘度が500mPa・s以上1000mPa・s未満の試料にはNo.2、粘度が500mPa・s未満の試料にはNo.1のローターを使用した。
【0019】
本実施形態に係る低粘性グルコマンナンは、グルコマンナンを低分子化することによって製造することができる。グルコマンナンは、グルコースとマンノースとが所定の割合でβ-1,4-グリコシド結合した水溶性多糖類である。グルコマンナンは、一例として、こんにゃく芋に主成分として含有されており、このような原料から抽出、精製される。原料としてのグルコマンナンには、一例として、こんにゃく芋等のグルコマンナンを主成分とする原料を細かくした粉末や、さらにそれをアルコール洗浄や精製によって不純物を除去したりグルコマンナンの純度を高めたりした粉末等の、いずれの形態(段階)のものを用いてもよい。市販製品を用いてもよく、当該市販製品でいえば、一例として、「こんにゃく粉(荒粉、製粉等)」として流通する製品や、こんにゃく粉を原料とする「グルコマンナン」として流通する製品等、いずれを用いてもよい。原料のグルコマンナンを低分子化する方法は限定されない。例えば、酸加水分解、熱加水分解、粉砕処理、酵素処理等の方法を用いればよい。
【0020】
酸加水分解による方法では、グルコマンナンを酸性溶液中で加熱することにより加水分解し、アルカリにより中和した後に乾燥することによって、低分子化された低粘性グルコマンナンを得ることができる。使用する酸は、クエン酸、リンゴ酸、次亜塩素酸、リン酸、酢酸、塩酸、硫酸等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、これらのうちから複数種類を使用してもよい。また、使用するアルカリは、クエン酸ナトリウム、重曹、水酸化ナトリウム等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、これらのうちから複数種類を使用してもよい。さらに、乾燥方法は、熱風乾燥、ドラム乾燥、スプレー乾燥、フラッシュ乾燥、真空凍結乾燥等が挙げられるが、特に限定されるものではなく、スラリーから水分を蒸発させて乾燥物を分離できればよい。得られた乾燥物を、必要に応じて粉砕等により粉末化してもよい。また、乾燥方法は複数種類を使用してもよい。また、スラリーのpH、加熱温度、加熱時間を調整することによって粘度を調整できる。
【0021】
熱加水分解による方法では、乾燥状態のグルコマンナン粉末の状態、水もしくはアルコール水溶液にグルコマンナンを分散したスラリーの状態、または、水にグルコマンナンを溶解した水溶液の状態等で加熱することにより加水分解した後に乾燥することによって、低分子化された低粘性グルコマンナンを得ることができる。乾燥方法は、上記列挙した各方法により行うことができる。
【0022】
粉砕処理による方法では、グルコマンナンを粉砕することによって低分子化された低粘性グルコマンナンを得ることができる。粉砕方法は、ターボミル、カッターミル、ハンマーミル、スタンプミル、ロールミル、ボールミル、ピンミル、ジェットミル、石臼等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、これらのうちから複数種類を使用してもよい。粉砕処理は加水状態で行うこともでき、粉砕後は、通常の乾燥方法(例えば、スラリーの乾燥方法として上記列挙した各方法)により乾燥させることができる。
【0023】
酵素処理による方法では、グルコマンナンを酵素により分解することによって低分子化された低粘性グルコマンナンを得ることができる。使用する酵素は、マンナナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ペクチナーゼ、セルラーゼ、リパーゼ等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、これらのうちから複数種類を使用してもよい。酵素は、使用する酵素の至適条件で作用させることが好ましい。また、必要に応じて処理後のスラリーを前述の酸加水分解法と同様にして乾燥させ、得られた乾燥物を粉砕等により粉末化してもよい。
【0024】
なお、グルコマンナンを低分子化する前後において、グルコマンナン粒子(粉末等)を適宜所定のメッシュサイズの篩や風力によって分級してもよい。分級によればグルコマンナン粒子(粉末等)はその粒子サイズ(粒子径)によって分離されるが、当該分級は分子篩としての効果を所定程度発揮することから、例えば、所定のメッシュサイズの篩を使用して分級することで、グルコマンナンの粘度を微調整できる。したがって、グルコマンナンの低分子化における一工程として分級を実施してもよい。
【0025】
このように、本実施形態に係る低粘性グルコマンナンは、通常のグルコマンナンよりも分子量が小さく、粘性が低い。低粘性グルコマンナンを水和させると通常のグルコマンナンと同様に膨潤し、網目構造(マトリックス構造)が形成される。低粘性グルコマンナンによれば、膨潤体の分子量が適度に小さくなり、適度な緻密さと強度とを有する網目構造が形成されることで、その中に水分を抱え込んで保水し、食品からの離水を抑制できる。また、当該網目構造に捕捉された水分は、食品の凍結時に氷結晶が大きくなり難く、また、解凍時に一定の離水が生じてもこれを網目構造中に吸収して(抱え込んで)離水を抑制できる。したがって、冷凍食品においては、冷凍前後の食感の変化や「ス」が入ることを防止できる。さらに、低粘性グルコマンナンによれば、膨潤体を構成するグルコマンナン分子の分子鎖が通常のグルコマンナンよりも短くなることから、分子間の相互作用が起こり難く、網目構造は安定する。したがって、離水抑制効果を長期間に亘って維持することができる。したがって、本実施形態に係る低粘性グルコマンナンを含有する離水抑制剤によれば、当該低粘性グルコマンナンを有効成分として、これが配合される食品の離水を長期間に亘って抑制できる。
【0026】
このような作用効果は、25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にある低粘性グルコマンナンにあって、発揮され得る。当該粘度が20mPa・sよりも低いと、網目構造が弱く不安定で、保水性に劣ることから、十分な離水抑制効果が発揮され難くなる。また、当該粘度が800mPa・sよりも高いと、グルコマンナン分子の分子鎖が長くなることから分子間の相互作用が強く、経時的に分子鎖が凝集して網目構造が収縮し、その結果離水が生じてしまう。また、粘性が高くなると曵糸性および糊状感が生じて作業性が著しく劣るため、通常のグルコマンナンおよび800mPa・sを超えて相対的に高粘性に近いグルコマンナンでは、配合量が比較的少量に制限されてしまう。その結果、食品中の網目構造の密度が小さくなり、離水が生じ易くなる。さらに、網目構造の密度が小さいと、凍結時に氷結晶が大きくなって水分とグルコマンナン分子との分離が進み、解凍時に離水して冷凍前後で食感が変化したり、「ス」が入ったりしてしまう。
【0027】
これに対して、25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にある低粘性グルコマンナンは、曵糸性および糊状感がなく作業性にも優れると共に、ヌル付き等の食感の変化が生じ難く配合量を比較的広範囲に調整できる。また、添加対象の温度に関わらず、また添加後に加熱、冷却または冷凍しても、当該低粘性グルコマンナンによって安定した網目構造が形成され、十分な離水抑制効果が得られる。さらに、後述の実施例によれば、ジャム、水羊羹のような高糖度食品や、佃煮のような高塩度食品に対しても十分な離水抑制効果が得られた(表4、表5、表6)。このように、本実施形態に係る低粘性グルコマンナンは、取扱性においても汎用的で優れている。
【0028】
また、本実施形態に係る低粘性グルコマンナンは、上記のように、25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にあるが、後述の実施例によれば、当該範囲が25mPa・s~800mPa・sであるとより好ましく、当該範囲が40mPa・s~800mPa・sであるとさらに好ましい(
図1)。粘度が800mPa・sよりも高くなると、グルコマンナン分子鎖が凝集して網目構造が収縮し、離水が生じてしまう。また、作業性が著しく劣って配合量が比較的少量に制限されてしまい、網目構造の密度が小さくなることによっても離水が生じ易くなる。一方、当該粘度が20mPa・sよりも低くなると、網目構造が弱く不安定で、保水性に劣ることから、十分な離水抑制効果が発揮され難くなる。
【0029】
また、本実施形態に係る低粘性グルコマンナンにおいて、適度な緻密さと強度とを有する網目構造が形成可能な物性の有無を示す(粘性の下限値を評価する)一つの基準としては、低粘性グルコマンナンが単独でアルカリによるゲル形成能を有することである。25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にある低粘性グルコマンナンにあっては、アルカリ条件下で加熱されることでゲル化する(表2)。このことから、一例として、本実施形態に係る低粘性グルコマンナンをゲル化剤として所定の条件で添加することで、添加対象をゲル化させることができ、且つ、その離水を抑制することができる。一方、当該粘度が20mPa・sを下回る過度に低粘性のグルコマンナンでは、形成される網目構造の強度が弱すぎて単独でアルカリによるゲル形成能を有せず、例えば高分子の(高粘性の)通常のグルコマンナン等を所定量混合したりしなければゲル化しない。このような過度に低粘性のグルコマンナンは、離水抑制効果を殆ど発揮しない。
【0030】
また、本実施形態に係る低粘性グルコマンナンの製造にあたって、前述のように、粒子の分級を実施してよいが、後述の実施例によれば、粒子径は大き過ぎないことが好ましい(
図1)。粒子径が細かいと、添加対象全体にグルコマンナン分子(すなわち網目構造)がより広がり易くなるため、離水抑制効果がより発揮され易くなる。具体的には、本実施形態に係る低粘性グルコマンナンは、レーザー回折型粒度分布測定法により測定される粒度分布における体積平均粒子径(MV:Mean Volume Diameter)が10μm~160μmの範囲にあるとより好ましい。ここでいう体積平均粒子径(MV)は、レーザー回折型粒度分布測定法により測定される体積基準の粒度分布における算術平均径である。ここで粒子径の下限を10μmとしているのは、これより微細な粒子の製造が比較的困難であることや、2次凝集等により取扱性が悪くなることによる。
【0031】
当該粒子径を10μm~160μmの範囲に調整するには、一例として、グルコマンナンを低分子化して得られた低粘性グルコマンナンを、メッシュサイズ100~500程度の篩により分級すればよい。なお、本願では、メッシュサイズ100を目開き154μm、メッシュサイズ500を目開き26μmとする。
【0032】
本実施形態に係る離水抑制剤は、本実施形態に係る低粘性グルコマンナンの粉末としているが、この形態に限定されない。例えば、当該低粘性グルコマンナンの粉末を、デキストリン等の賦形剤その他糖類等の結着剤と混合して造粒し、顆粒やペレット等に成形してもよい。また、当該低粘性グルコマンナンの粉末や成形物を、カプセル等に内包してもよい。また、当該低粘性グルコマンナンの粉末や成形物を、水等に溶解させてペーストにしてもよい。また、当該低粘性グルコマンナンの粉末を貧溶媒に分散させて、良溶媒の添加対象に対してダマになり難くしてもよい。また、本実施形態に係る離水抑制剤は、本発明の目的を達し得る範囲で、当該低粘性グルコマンナンの他に、上記の造粒に係る賦形剤や結着剤、その他、甘味料、着色料、香料等を含有していてよい。
【0033】
本実施形態に係る食品の離水抑制方法としては、食品に本実施形態に係る離水抑制剤(すなわち本実施形態に係る低粘性グルコマンナン)を配合すればよい。より詳しくは、食品またはその配合成分に離水抑制剤を添加すればよい。食品の配合成分に添加してもよいとするのは、当該食品のいずれの製造段階(製造工程)においても、または、製造された当該食品においても、離水抑制剤を添加してもよい趣旨である。添加方法も限定されず、添加対象に離水抑制剤を直接添加しても勿論よいが、例えば粉末や成形物の離水抑制剤を予め水等に溶解させてもよく、または予め貧溶媒に分散させたりしてもよい。固形または流動性の離水抑制剤を食品の配合成分に混合してもよく、流動性の離水抑制剤を食品の上からかけてもよい。また、添加後、固形の離水抑制剤であれば、適宜溶解させるが、固形物が完全に消失せずにダマが残ってもよい。撹拌を行う場合も、手撹拌等による比較的弱い攪拌、ホモミキサー等の乳化機等による比較的強い攪拌等、適宜選択して行えばよい。添加対象の温度も限定されず(温度調整を行っても無調整でもよく)、添加後に加熱、冷却または冷凍してもよい。
【0034】
続いて、本実施形態に係る食品(例えば、冷凍食品)は、本実施形態に係る離水抑制剤(すなわち本実施形態に係る低粘性グルコマンナン)が、上記のようにして、食品(例えば、冷凍食品)に配合されたもので、本実施形態に係る食品(例えば、冷凍食品)は、本実施形態に係る離水抑制剤(すなわち本実施形態に係る低粘性グルコマンナン)を含有する。なお、本実施形態に係る食品(例えば、冷凍食品)における離水抑制剤(低粘性グルコマンナン)の配合量(割合)は含有量(割合)にほぼ一致する。本実施形態に係る食品としては、例えば、ゼリー、プリン、水羊羹等のゲル状製品、ジャム、ゼリー飲料製品、サラダ、炒めもの、佃煮等の調理品、アイスクリーム、凍結ゼリー飲料製品等の冷凍食品等が挙げられる。本実施形態に係る離水抑制剤(すなわち本実施形態に係る低粘性グルコマンナン)を含有することで、長期間に亘って離水が抑制され、特に冷凍食品においては解凍時の離水が抑制されて冷凍前後の食感の変化や「ス」が入ることが防止される。
【実施例】
【0035】
精製こんにゃく粉である通常のグルコマンナン(伊那食品工業(株)製、「イナゲル マンナン100A」(イナゲルは、登録商標。以下、同じ))(マンナン1)、および当該グルコマンナンをそれぞれ所定程度に低粘性化(低分子化)した改質グルコマンナンである低粘性グルコマンナン(マンナン2-18:粘度が比較的高いものも含まれているが、ここでは通常のグルコマンナンよりも低粘性化したという趣旨で、便宜的に「低粘性グルコマンナン」と総称する)を、水分を含有する食品に添加して、離水性を評価した。
【0036】
(グルコマンナンの低粘性化(低分子化))
マンナン2-11は、マンナン1を酸加水分解により低分子化したものを分級して得た。すなわち、50%アルコール水溶液にマンナン1を分散させてスラリーを取得し、これにクエン酸を添加して酸性に調整し、加熱した後、クエン酸ナトリウムを添加して中和した。その後、スラリーを熱風乾燥させたものを、200メッシュ(目開き77μm)の篩により分級して、マンナン2-11を得た。
マンナン2-11は、酸加水分解処理におけるpH条件(スラリーを酸性に調整する際のpH)および加熱条件(加熱温度および加熱時間)を変更することにより、それぞれ粘度の異なる低粘性グルコマンナンに製造した。
それぞれに設定した具体的条件は、以下の通りである。
マンナン2 pH:4.5 加熱条件:90℃で2時間
マンナン3 pH:5.5 加熱条件:80℃で2時間
マンナン4 pH:5.0 加熱条件:75℃で3時間
マンナン5 pH:5.0 加熱条件:80℃で3時間
マンナン6 pH:4.5 加熱条件:85℃で2時間
マンナン7 pH:4.0 加熱条件:80℃で2時間
マンナン8 pH:4.0 加熱条件:70℃で4時間
マンナン9 pH:3.5 加熱条件:65℃で1時間
マンナン10 pH:2.5 加熱条件:55℃で1時間
マンナン11 pH:2.5 加熱条件:55℃で2時間
【0037】
マンナン12は、マンナン1を石臼により粉砕し、200メッシュの篩により分級して得た。
【0038】
マンナン13は、マンナン1を酵素処理により低分子化したものを分級して得た。すなわち、50%アルコール水溶液にマンナン1を分散させてスラリーを取得し、これにマンナナーゼを添加して40℃で1時間加熱した。スラリーを熱風乾燥させたものを、200メッシュの篩により分級して、マンナン13を得た。
【0039】
マンナン14-18は、マンナン1を酸加水分解により低分子化したものを分級して得た。すなわち、50%アルコール水溶液にマンナン1を分散させてスラリーを取得し、これにクエン酸を添加してpH4.5に調整し、90℃で2時間加熱した後、クエン酸ナトリウムを添加して中和した。その後、スラリーを熱風乾燥させたものを、ジェットミルにより粉砕した後、篩により分級して、マンナン14-18を得た。
マンナン14-18は、酸加水分解処理におけるpH条件および加熱条件については上記の設定に合わせ、一方、篩のメッシュサイズを変更することにより、それぞれ粘度の異なる低粘性グルコマンナンに製造した。
それぞれに使用した篩は、以下の通りである。
マンナン14 メッシュサイズ 80(目開き178μm)
マンナン15 メッシュサイズ100(目開き154μm)
マンナン16 メッシュサイズ180(目開き 91μm)
マンナン17 メッシュサイズ300(目開き 45μm)
マンナン18 メッシュサイズ400(目開き 34μm)
【0040】
(グルコマンナンおよび低粘性グルコマンナンの粘度および粒子径)
表1に、マンナン1およびマンナン2-18の粘度を、粒子径と共に示す。表中の「1%粘度」は、本実施形態の説明において説明した「25℃における1%水溶液の粘度」を表す。また、表中の「粒子径」は、本実施形態の説明において説明した「体積平均粒子径(MV)」を表す。
【0041】
【0042】
(低粘性グルコマンナンのゲル化能)
表1に示す低粘性グルコマンナンのうち、最も粘度の低いマンナン8-11について、アルカリ条件下でのゲル化能の有無を確認した。確認方法は、先ず、マンナンを水に分散させた後、水に溶かした水酸化カルシウムを混合して、最終的に、マンナン:5質量%、水酸化カルシウム:0.25質量%、水:残部(合計:100質量%)に調整した。当該調整液を容器に流し込み、容器ごと90℃で1時間加熱を行い、冷却後にゲル化したか否か確認した。
【0043】
なお、参考として、マンナン8-11について、25℃における2%水溶液の粘度(グルコマンナン6.0gを310gの精製水に分散した後、95℃で3分間加熱して最終重量を300gに調整して取得したゾルの25℃における粘度)、および25℃における3%水溶液の粘度(グルコマンナン9.0gを310gの精製水に分散した後、95℃で3分間加熱して最終重量を300gに調整して取得したゾルの25℃における粘度)も測定した。測定方法は、本実施形態の説明において説明した「25℃における1%水溶液の粘度」の測定方法と同じ方法で行った。表2に、結果を1%水溶液の粘度と共に示す。
【0044】
【0045】
表2に示すように、25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s以上のマンナン8、9はゲル化したが、当該粘度が15mPa・sのマンナン10および当該粘度が4mPa・sのマンナン11はゲル化しなかった。なお、マンナン8、9よりも粘性の高い(分子量の大きい)マンナン1-7、12-18は当然にアルカリ条件下でのゲル化能を有すると考えられる。
【0046】
(食品の離水性の評価方法)
マンナン1-18を添加した食品の離水性を、以下の方法で評価した。
【0047】
離水状態:ゼリー(試験1、試験2、試験3)および水羊羹(試験5)については、原料液を円筒型容器(内径50mm、高さ30mm)に満量充填しトップシールを行い、85℃で30分ボイル殺菌を行った。蒸しプリン(試験7)については、原料液を円筒型容器(内径60mm、高さ70mm)に満量充填しトップシールを行い、後述のように40分程度蒸し上げた。
その後、4℃で1か月保存した後、容器から食品を取り出し、食品の表面およびトップシールの裏側に付着した水分を脱脂綿で拭き取り、当該脱脂綿の重量変化を測定した。当該重量変化を以下の基準で評価した。
◎:重量変化が0.60g未満である。
○:重量変化が0.60g以上1.20g未満である。
△:重量変化が1.20g以上2.00g未満である。
×:重量変化が2.00g以上である。
【0048】
また、ジャム(試験4)および佃煮(試験6)については、製造した食品を円筒型容器(内径45mm、高さ15mm)に隙間なく充填し、円形の濾紙(定性濾紙No.2:直径125mm)の中央部に、容器の開口部が濾紙に接するように載せ、室温で30分静置した後、濾紙の重量変化を測定した。当該重量変化を以下の基準で評価した。
また、野菜炒め(試験8)については、野菜炒め50gを金属バットに入れ、金属バットを傾けて流出した離水を脱脂綿で拭き取り、当該脱脂綿の重量変化を測定した。当該重量変化を以下の基準で評価した。
◎:重量変化が1.20g未満である。
○:重量変化が1.20g以上2.00g未満である。
△:重量変化が2.00g以上2.80g未満である。
×:重量変化が2.80g以上である。
【0049】
解凍状態:食品または固化する前の原料液を-20℃で1週間冷凍保存した後、4℃で24時間静置することにより解凍した食品を、目視および喫食して以下の基準で評価した。なお、評価に当たって、冷凍保存前の食感と比較するため、製造後の食品も目視および喫食した。評価は10名のパネラーが独立して行った。最も多かった評価を評価結果とした。
◎:食品に「ス」は無く、冷凍保存前と全く変わらない食感を有している。
○:食品に「ス」は無く、冷凍保存前とほぼ変わらない食感を有している。
△:食品に「ス」は無いが、冷凍保存前と比べて少し食感が変化している。
×:食品に「ス」が入って、冷凍保存前と比べて食感が変化している。
【0050】
(食品の他の物性の測定方法)
ゼリー(試験1、試験2、試験3)については、ゼリー強度および破断距離を、以下の方法で測定した。原料液を円筒型容器(内径50mm、高さ30mm)に満量充填し、冷却してゲル化させた。容器に蓋をして水分の蒸発を防止した状態で、10℃で24時間保存して測定検体とした。当該測定検体に対して、テクスチャーアナライザ(英弘精機製)を用いて、断面積1cm2、長さ3cmの合成樹脂製の円柱状プランジャを20mm/分の速度でゲルが破断するまで進入させ、その際の最大応力をゼリー強度[g/cm2]、破断時のプランジャの進入距離を破断距離[mm]として測定した。
【0051】
(試験1)
図1に示す配合にて、マンナン1-18を添加したゼリーを製造した。グラニュー糖とマンナンとカラギナンとを粉体混合したものを水に混ぜ合わせ、さらにかき混ぜながら沸騰させて溶解した。加熱を止めて、5倍濃縮ぶどう果汁と無水結晶クエン酸とクエン酸ナトリウムとを混ぜ合わせてpH3.8の原料液を調整した。当該原料液を円筒型容器(内径50mm、高さ30mm)に満量充填しトップシールを行い、85℃で30分ボイル殺菌を行った。その後、離水状態評価用検体および解凍状態評価用検体として、それぞれの条件で保存した後、評価した。また、ゼリー強度および破断距離を前述の方法で測定した。
図1に、ゼリーの配合および結果を示す。
【0052】
図1に示すように、25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にある低粘性グルコマンナン(マンナン2、4-9、12-18)を添加したゼリーでは、離水状態および解凍状態共に良好で(評価:○以上)、離水が抑制されて、冷凍前後で食感が全くもしくはほぼ変化せず、「ス」が入ることもなく、十分な離水抑制効果が見られた(実施例1-14)。このうち、マンナン9を除く当該粘度が25mPa・s~800mPa・sの範囲、且つマンナン14を除く粒子径が160μm以下の低粘性グルコマンナン(マンナン2、4-8、12、13、15-18)によると、より離水抑制効果が高く、さらにマンナン7、8を除く当該粒度が40mPa・s~800mPa・sの範囲(マンナン2、4-6、12、13、15-18)によると、さらに離水抑制効果が高かった。一方、精製こんにゃく粉である通常のグルコマンナン(マンナン1)および1%粘度が2150mPa・sと800mPa・sを上回るグルコマンナン(マンナン3)、ならびに1%粘度が20mPa・sを下回るグルコマンナン(マンナン10、11)によると、離水が生じたり、冷凍前後の食感が変化したりして、さらに「ス」が入ってしまったゼリーもあった。
【0053】
(試験2)
試験1では、グルコマンナンの配合量(割合)を同じにして食品の離水性を比較したが、
図1に示すように、粘性の異なるグルコマンナンにより食品であるゼリーの物性(ゼリー強度および破断距離)も異なっていた。そこで、本試験2では、グルコマンナンの配合量(割合)を調整することによりゼリー強度を同程度に合わせて食品の離水性を比較した。なお、ゼリー強度を同程度に合わせることで、マンナン11を除いて破断距離も同程度に合った。表3に、ゼリーの配合および結果を示す。
【0054】
【0055】
表3に示すように、試験1の結果と同様に、25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にある低粘性グルコマンナン(マンナン6、8)によると、十分な離水抑制効果が見られた。一方、精製こんにゃく粉である通常のグルコマンナン(マンナン1)および1%粘度が20mPa・sを下回るグルコマンナン(マンナン10、11)によると、離水が生じたり、冷凍前後の食感が変化したりして、さらに「ス」が入ってしまったゼリーもあった。このことから、食品の離水抑制効果は、ほぼグルコマンナンの物性だけに起因するものであり、食品の離水性に対する食品自体の物性(例えば、ゼリー強度、破断距離)その他グルコマンナン以外の配合成分の物性の影響は、殆どないか無視できる程度であると考えられる。
【0056】
(試験3)
本試験3では、25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にある低粘性グルコマンナン(マンナン4、6、9)を、様々な配合量(割合)で添加したゼリーを製造し、離水性を評価した。
図2に、ゼリーの配合および結果を示す(試験1の結果を一部再掲する)。
【0057】
図2に示すように、いずれの配合量(割合)においても十分な離水抑制効果が見られた。本試験3の結果から、1%粘度が20mPa・s~300mPa・s程度の範囲にある低粘性グルコマンナンでは、食品に少なくとも0.1質量%以上または0.15質量%以上添加すること、また、1%粘度が500mPa・s~800mPa・s程度の範囲にある低粘性グルコマンナンでは、食品に少なくとも0.01質量%以上添加することで、所定の離水抑制効果が得られると考えられる。
【0058】
(試験4)
試験4および試験5では、比較的高糖度の食品を対象にして離水性を評価した。先ず、試験4では、表4に示す配合にて、マンナン6またはマンナン11を添加したジャムを製造した。鍋にイチゴおよび水を入れ15分煮た。これに砂糖400gを混ぜ合わせてさらに15分煮た。これに砂糖100gとペクチンとマンナンとを粉体混合したものを混ぜ合わせて再度沸騰した後にレモン果汁を加えて煮詰め、最終重量:約1.1kg、最終糖度:約65のジャムを製造した。なお、ここでの糖度は、屈折計で測定したブリックス値(Brix値)である(以下、同じ)。
製造したジャムの離水状態を前述の方法および基準で評価した。また、マンナン6を添加したジャムについては、室温で1か月保存した後に、再度同じ方法および基準で離水状態を評価した。表4に、ジャムの配合および結果を示す。
【0059】
【0060】
表4に示すように、25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にある低粘性グルコマンナン(マンナン6:283mPa・s)によると、ジャムのような高糖度の食品に対しても十分な離水抑制効果を発揮した(実施例26)。さらに、ジャムを1か月保存した後でも十分な離水抑制効果を発揮した(実施例27)。
【0061】
(試験5)
次に、表5に示す配合にて、マンナン5またはマンナン11を添加した水羊羹を製造した。水に寒天およびマンナンを加えて沸騰させた。これに白双糖を混ぜ合わせて溶かし、さらに並餡(配糖率70%、糖度55)を混ぜ合わせて加熱した。糖度30になったところで加熱を止め、食塩を加えて、最終重量:約1kg、最終糖度:約30の原料液を調整した。当該原料液を40℃程度まで冷却し、円筒型容器(内径50mm、高さ30mm)に満量充填しトップシールを行い、85℃で30分ボイル殺菌を行った。その後、離水状態評価用検体および解凍状態評価用検体として、それぞれの条件で保存した後、評価した。表5に、水羊羹の配合および結果を示す。
【0062】
【0063】
表5に示すように、25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にある低粘性グルコマンナン(マンナン5:496mPa・s)によると、水羊羹のような高糖度の食品に対しても十分な離水抑制効果を発揮した(実施例28)。
【0064】
(試験6)
試験6では、比較的高塩度の食品を対象にして離水性を評価した。表6に示す配合にて、マンナン5またはマンナン11を添加したイカナゴの佃煮を製造した。調味液の各材料を混ぜ合わせて沸騰させ、これに具材としての通常の処理を施したイカナゴを加え、焦げ付かないように撹拌しながら15分煮上げて佃煮を製造した。製造した佃煮を、解凍状態評価用検体として前述の条件で保存した後、評価した。表6に、佃煮の配合および結果を示す。
【0065】
【0066】
表6に示すように、25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にある低粘性グルコマンナン(マンナン5:496mPa・s)によると、佃煮のような高塩度の食品に対しても十分な離水抑制効果を発揮した(実施例29)。
【0067】
(試験7)
また、表7に示す配合にて、マンナン9またはマンナン11を添加した蒸しプリンを製造した。砂糖とマンナンとを粉体混合したものを割りほぐした卵に泡立たないように混ぜ合わせた。一方、牛乳を沸騰直前まで加熱しバニラエッセンスを加えた。当該牛乳に当該卵液を泡立たないように加え、濾してから円筒型容器(内径60mm、高さ70mm)に満量充填し、トップシールを行った後、これを容器ごと90℃のスチームコンベクションオーブンで40分程度蒸し上げて蒸しプリンを製造した。その後、離水状態評価用検体および解凍状態評価用検体として、それぞれの条件で保存した後、評価した。表7に、蒸しプリンの配合および結果を示す。
【0068】
【0069】
表7に示すように、25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にある低粘性グルコマンナン(マンナン9:21mPa・s)を添加した蒸しプリンでは、十分な離水抑制効果が見られた(実施例30)。
【0070】
(試験8)
また、表8に示す配合にて、マンナン8またはマンナン11を添加した野菜炒めを製造した。具材を炒め、粉末調味料およびマンナンを振り入れて、野菜炒めを調理した。調理した野菜炒めの離水状態を前述の方法および基準で評価した。また、マンナン8を添加した野菜炒めについては、室温で12時間静置した後に、再度同じ方法および基準で離水状態を評価した。表8に、野菜炒めの配合および結果を示す。
【0071】
【0072】
表8に示すように、25℃における1%水溶液の粘度が20mPa・s~800mPa・sの範囲にある低粘性グルコマンナン(マンナン8:28mPa・s)を添加した野菜炒めでは、十分な離水抑制効果が見られた(実施例31)。さらに、12時間後後も十分な離水抑制効果が見られた(実施例32)。