(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】多発性硬化症を予防及び治療する方法並びに薬剤
(51)【国際特許分類】
A61K 38/48 20060101AFI20240514BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240514BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240514BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240514BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240514BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20240514BHJP
A61K 38/36 20060101ALN20240514BHJP
A61K 38/43 20060101ALN20240514BHJP
A61K 38/55 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
A61K38/48 100
A61P25/00
A61P25/22
A61P25/24
A61P43/00 105
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K35/12
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 P
A61K38/36
A61K38/43
A61K38/55
(21)【出願番号】P 2022545965
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(86)【国際出願番号】 CN2021075921
(87)【国際公開番号】W WO2021155867
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】202010081324.8
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518217305
【氏名又は名称】タレンゲン インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TALENGEN INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李季男
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-500424(JP,A)
【文献】PLOS ONE,2015年04月27日,Vol. 10, No. 4, e0124510,p. 1-17,https://doi.org/10.1371/journal.pone.0124510
【文献】PNAS,Vol. 101, No. 17,2004年04月27日,p. 6698-6703,www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.0303859101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61P 25/00
A61K 38/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスミノーゲンを含む、多発性硬化症を予防及び治療する医薬組成物。
【請求項2】
前記
プラスミノーゲンが、神経ミエリンの再生を促進する活性、ミエリンタンパク質の発現を促進する活性、神経組織NFPの発現を促進する活性、神経線維の再生を促進する活性、神経組織NFPの発現を促進する活性、神経組織のMBPレベルを上昇させる活性、神経組織のミクログリア数を増加させる活性、神経組織の炎症修復を促進する活性、神経組織のアストロサイトの活動を促進する活性、神経組織のBDNFのレベルを高める活性、神経組織のGFAPの発現を促進する活性、被験者の社会的行動能力を改善する活性、被験者の社会的記憶能力を改善する活性、被験者の抑うつ行動を緩和する活性、及び被験者の不安行動を緩和する活性から選択される1つまたは複数の活性を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記プラスミノーゲンが、配列2と
少なくとも90%の配列同一性を有し、且つプラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を有する、請求項
1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記プラスミノーゲンが、配列2のプラスミノーゲンの保存的置換変異体である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記
プラスミノーゲンが、1つまたは複数の他の治療方法または薬剤と組み合わせて使用する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記他の治療方法が、外科的治療、細胞療
法、及び物理的療法から選択される1つまたは複数である、請求項
5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記細胞療法が、幹細胞療法である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記他の薬剤が、ホルモン、免疫抑制剤、神経栄養薬、抗生物質、及び抗ウイルス薬から選択される1つまたは複数である、請求項
5に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記
プラスミノーゲンが、鼻吸入、エアロゾル吸入、点鼻薬、点眼薬、点耳薬、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、髄腔内、動脈内、及び筋肉内から選択される1つまたは複数の方法もしくは経路によって投与される、請求項1~
8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷した神経を修復し、臨床症状及び徴候を改善するために、被験者に有効量のプラスミノーゲン活性化経路の成分またはプラスミノーゲンなどの関連化合物を投与することを含む、多発性硬化症を予防または治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性硬化症(multiple sclerosis,MS)は、中枢神経系の最も一般的な脱髄疾患であり、磁気共鳴画像法(MRI)では、脳と脊髄に複数のプラーク様病変が見られる。この疾患の病因はまだ不明であり、遺伝的要因、ウイルス感染、及び自己免疫反応に関連している。この疾患の急性活動期では、中枢神経系の白質に複数の炎症性脱髄斑があり、古い病変はグリオーシスによる石灰化斑を形成し、複数の病巣、寛解、再発を特徴とし、視神経、脊髄、脳幹によく発生する。ホルモン療法、ベータインターフェロン、免疫抑制療法などの現在の治療法は理想的ではなく、他の治療法を見つける必要がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明は研究によって、プラスミノーゲンが明らかに神経ミエリンの再生及び修復を促進し、多発性硬化症を予防及び治療できることを発見した。
【0004】
具体的には、本発明は下記のことに係る。
【0005】
1、一態様では、本願は、プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲンを直接活性化し得るか、またはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによって間接的にプラスミノーゲンを活性化し得る化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミンの活性を模倣する化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化剤の発現をアップレギュレートすることができる化合物、プラスミノーゲン類縁体、プラスミン類縁体、tPAまたはuPA類縁体及び線維素溶解阻害剤の拮抗剤から選択される1つ以上の治療有効量の化合物を被験者に投与することを含む、多発性硬化症を予防及び治療する方法に関する。
【0006】
一態様では、本願は、プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲンを直接活性化し得るか、またはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによって間接的にプラスミノーゲンを活性化し得る化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミンの活性を模倣する化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化剤の発現をアップレギュレートすることができる化合物、プラスミノーゲン類縁体、プラスミン類縁体、tPAまたはuPA類縁体及び線維素溶解阻害剤の拮抗剤から選択される1つ以上の化合物の、多発性硬化症を予防及び治療する薬剤の調製における使用に関する。
【0007】
一態様では、本願は、プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲンを直接活性化し得るか、またはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによって間接的にプラスミノーゲンを活性化し得る化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミンの活性を模倣する化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化剤の発現をアップレギュレートすることができる化合物、プラスミノーゲン類縁体、プラスミン類縁体、tPAまたはuPA類縁体及び線維素溶解阻害剤の拮抗剤から選択される1つ以上の化合物を含む、多発性硬化症を予防及び治療する薬剤に関する。
【0008】
一態様では、本願は、プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲンを直接活性化し得るか、またはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによって間接的にプラスミノーゲンを活性化し得る化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミンの活性を模倣する化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化剤の発現をアップレギュレートすることができる化合物、プラスミノーゲン類縁体、プラスミン類縁体、tPAまたはuPA類縁体及び線維素溶解阻害剤の拮抗剤から選択される1つ以上の化合物の、多発性硬化症の予防及び治療における使用に関する。
【0009】
2、前記プラスミノーゲン活性化経路の成分が、プラスミノーゲン、組換えヒトプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンとプラスミンの1つ以上のkringleドメイン及びプロテアーゼドメインを含むプラスミノーゲン及びプラスミン変異体並びに類縁体、ミニプラスミノーゲン(mini-plasminogen)、ミニプラスミン(mini-plasmin)、マイクロプラスミノーゲン(micro-plasminogen)、マイクロプラスミン(micro-plasmin)、delta-プラスミノーゲン、delta-プラスミン(delta-plasmin)、プラスミノーゲン活性化剤、tPA、及びuPAから選択されるものである、項1に記載の方法、使用、または薬剤。
【0010】
3、前記線維素溶解阻害剤の拮抗剤が、PAI-1、補体C1阻害剤、α2抗プラスミンまたはα2マクログロブリンの阻害剤、例えば、抗体である、項1に記載の方法、使用、または薬剤。
【0011】
4、前記化合物が、神経ミエリンの再生を促進する活性、ミエリンタンパク質の発現を促進する(例えば、PLPまたはMBPタンパク質の発現を促進する)活性、神経組織NFPの発現を促進する活性、神経線維の再生を促進する活性、神経組織NFPの発現を促進する活性、神経組織のMBPレベルを上昇させる活性、神経組織のミクログリア数を増加させる活性、神経組織の炎症修復を促進する活性、神経組織のアストロサイトの活動を促進する活性、神経組織のBDNFのレベルを高める活性、神経組織のGFAPの発現を促進する活性、被験者の社会的行動能力を改善する活性、被験者の社会的記憶能力を改善する活性、被験者の抑うつ行動を緩和する活性、及び被験者の不安行動を緩和する活性から選択される1つまたは複数の活性を有する、項1~3のいずれか一項に記載の方法、使用、または薬剤。
【0012】
5、前記プラスミノーゲンが、被験者の抑うつ症状または不安症状などの精神症状を軽減する、項1~4のいずれか一項に記載の方法、使用、または薬剤。
【0013】
6、前記化合物がプラスミノーゲン(フィブリノゲンとも呼ばれる)である、項1~5のいずれか一項に記載の方法、使用、または薬剤。
【0014】
7、前記プラスミノーゲンが、配列2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、タンパク質加水分解活性、またはリジン結合活性、またはタンパク質加水分解活性及びリジン結合活性を有する、項1~6のいずれか一項に記載の方法、使用、または薬剤。
【0015】
8、前記プラスミノーゲンが、配列14に示されるプラスミノーゲン活性フラグメントと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ依然としてプラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を有する、項1~6のいずれか一項に記載の方法、使用、または薬剤。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記プラスミノーゲンは、配列2に記載のプラスミノーゲンの保存的置換変異体である。
【0017】
9、前記プラスミノーゲンがGlu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、delta-プラスミノーゲンまたはそれらの、プラスミノーゲン活性を保持した変異体から選択されるものである、項1~6のいずれか一項に記載の方法、使用、または薬剤。
【0018】
10、前記プラスミノーゲンが、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、または依然としてプラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである、項1~6のいずれか一項に記載の方法、使用、または薬剤。
【0019】
11、前記化合物が、1つまたは複数の他の治療方法または薬剤と組み合わせて使用する、項1~10のいずれか一項に記載の方法、使用、または薬剤。
【0020】
12、前記他の治療方法が、外科的治療、細胞療法(幹細胞療法を含む)、及び物理的療法(例えば、ヒューマンマシンインターフェース技術などの医療機器支援療法などの身体支援療法)を含む、項11に記載の方法、使用、または薬剤。
【0021】
13、前記他の薬剤が、ホルモン、免疫抑制剤、神経栄養薬、抗生物質、及び抗ウイルス薬を含む、項11に記載の方法、使用、または薬剤。
【0022】
14、前記化合物が、鼻吸入、エアロゾル吸入、点鼻薬、点眼薬、点耳薬、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、髄腔内、動脈内、及び筋肉内から選択される1つまたは複数の方法もしくは経路によって投与される、項1~13のいずれか一項に記載の方法、使用、または薬剤。
【0023】
本願の上記いずれか1つの実施形態において、前記プラスミノゲンが配列2、6、8、10または12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、タンパク質加水分解活性、またはリジン結合活性、またはタンパク質加水分解活性及びリジン結合活性を有し得る。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、配列2、6、8、10または12に基づいて、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個のアミノ酸を追加、削除、及び/または置換され、かつ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、タンパク質加水分解活性、またはリジン結合活性、またはタンパク質加水分解活性及びリジン結合活性を有するタンパク質である。
【0024】
一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはプラスミノーゲン活性フラグメントを含み、且つ依然としてプラスミノーゲン活性を有するタンパク質である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、δ-プラスミノーゲンまたはそれらのプラスミノーゲン活性を保持した変異体である。上記実施形態において、前記プラスミノーゲンは、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、または依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、または依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンのアミノ酸は配列2、6、8、10または12に示される。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはヒト天然プラスミノーゲンである。
【0025】
一部の実施形態において、前記被験者はヒトである。一部の実施形態において、前記被験者はプラスミノーゲンが不足、または欠乏している。一部の実施形態において、前記不足または欠乏は、先天的、継発的及び/または局所的である。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、薬学的に許容される担体と、前述の方法で使用するプラスミノーゲンとを含む。いくつかの実施形態では、前記キットは、(i)前述の方法で使用するプラスミノーゲン、及び(ii)前記プラスミノーゲンを前記被験者に送達するための部材(means)を含む、予防または治療キットであり得る。いくつかの実施形態では、前記部材は注射器またはバイアルである。いくつかの実施形態では、前記キットは、前述の方法のいずれかを実施するために前記プラスミノーゲンを前記被験者に投与することを指示するためのラベルまたはプロトコルをさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記製品は、ラベルを含む容器と、(i)前述の方法で使用するためのプラスミノーゲンまたはプラスミノーゲンを含む医薬組成物とを含み、前記ラベルは、前述の方法のいずれかを実施するために前記プラスミノーゲンまたは組成物を前記被験者に投与することを指示する。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記キットまたは製品は、他の薬剤を含む1つまたは複数の追加の部材または容器をさらに含む。
【0029】
前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは全身または局所にて投与され、好ましくは、静脈内、筋肉内、皮下投与によってプラスミノーゲンを投与することで治療する。前記方法のいくつかの実施形態では、前記プラスミノーゲンは、適切なポリペプチド担体または安定剤と組み合わせて投与される。前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノゲンは毎日0.0001~2000mg/kg、0.001~800mg/kg、0.01~600mg/kg、0.1~400mg/kg、1~200mg/kg、1~100mg/kg、10~100mg/kg(体重1キロあたりで計算)または0.0001~2000mg/cm2、0.001~800mg/cm2、0.01~600mg/cm2、0.1~400mg/cm2、1~200mg/cm2、1~100mg/cm2、10~100mg/cm2(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量で投与し、好ましくは一回以上繰り返し、好ましくは少なくとも毎日投与する。
【0030】
本発明は、本発明の実施形態に属する技術的特徴のすべての組み合わせを明確にカバーし、これらの組み合わせ後の技術構成は、上記の技術構成が別個に明確に開示されたのと同様に、本出願において明確に開示された。さらに、本発明はまた、各実施形態とそれらの要素との間の組み合わせを明確にカバーし、組み合わせ後の技術構成は、本明細書に明確に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1A~Dは、ヘキサノンオキサリルジヒドラゾン誘発脱髄モデルマウスにプラスミノーゲンを14日間投与した後の脳梁のLFB染色結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒PBS投与対照群、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは定量分析結果である。その結果、ブランク対照群の脳梁のミエリンは基本的に正常であり、プラスミノーゲン投与群の脳梁のミエリン鞘の陽性染色(矢印でマーク)は、溶媒PBS投与対照群より有意に多く、しかもその差は統計的に有意であった(*はP<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが脳梁の脱髄を減少させ、ヘキサノオキサリルジヒドラゾン誘発脱髄モデルマウスにおけるミエリン損傷の修復を促進できることを示している。
【
図2】
図2A~Cは、ヘキサノンオキサリルジヒドラゾン誘発脱髄モデルマウスにプラスミノーゲンを3日間投与した後の脳梁タンパク質リポタンパク質(PLP)免疫染色の代表的な図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒PBS投与対照群、Cはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群における脳梁PLPの発現(矢印でマーク)は、溶媒PBS投与対照群より有意に高く、発現は、後者と比較してブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンが脳梁におけるPLPの発現を促進し、ヘキサノオキサリルジヒドラゾン誘発脱髄モデルマウスにおけるミエリン再生を促進できることを示している。
【
図3】
図3A~Dは、ヘキサノンオキサリルジヒドラゾン誘発脱髄モデルマウスにプラスミノーゲンを14日間投与した後の脳ニューロフィラメントタンパク質(NFP)の免疫染色観察結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒PBS投与対照群、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは定量分析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群のマウスの脳梁におけるNFPの発現(矢印でマーク)は、溶媒PBS投与対照群よりも有意に高く、その差は統計的に有意であり(*はP<0.05を表す)、溶媒PBS投与対照群(本文中では単に溶媒群とも呼ばれる)と比較して、プラスミノーゲン投与群のNFPの発現はブランク対照群のそれにより近かった。これは、プラスミノーゲンがNFPの発現を促進し、それによって神経線維の再生を促進できることを示している。
【
図4】
図4は、多発性硬化症モデルマウスに35日間プラスミノーゲンを投与した後の脳梁におけるNFPの免疫組織化学染色結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒PBS投与対照群、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは平均光学密度の定量分析結果である。その結果、ブランク対照群の脳梁は一定レベルのNFPを発現し(矢印でマーク)、溶媒群マウスの脳梁におけるNFPの発明は有意に減少し、プラスミノーゲン投与群(本文中では単に投与群ともいう)のマウスの脳梁におけるNFPの発現レベルは溶媒群マウスよりも有意に高く、しかもその差は統計的に有意であった(*はP<0.05を表す)。この結果は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの脳梁におけるNFPの発現を促進できることを示している。
【
図5】
図5A~Cは、多発性硬化症モデルマウスにプラスミノーゲンを35日間投与した後の脳梁におけるPLPの免疫組織化学染色の結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒PBS投与対照群、Cはプラスミノーゲン投与群である。その結果、ブランク対照群の脳梁は一定レベルのPLPを発現し(矢印でマーク)、溶媒群のマウスの脳梁におけるPLPの発現は有意に減少し、投与群のマウスの脳梁におけるPLPの発現レベルは溶媒群マウスのそれより有意に高かった。この結果は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの脳梁におけるPLPの発現を促進できることを示している。
【
図6】
図6A~Dは、多発性硬化症モデルマウスにプラスミノーゲンを35日間投与した後の脳梁におけるMBPの免疫組織化学染色の結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒PBS投与対照群、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは平均光学密度の定量分析結果である。その結果、ブランク対照群の脳梁は一定レベルのMBPを発現し(矢印でマーク)、投与群のマウスの脳梁のMBPは溶媒群のマウスよりも有意に高く、しかも統計学的な差は有意に近かった(P=0.063)。この結果は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの脳梁におけるMBPレベルの上昇を促進できることを示している。
【
図7】
図7A~Dは、多発性硬化症モデルマウスにプラスミノーゲンを35日間投与した後の海馬におけるIba-1の免疫組織化学染色の結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒PBS投与対照群、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは平均光学密度の定量分析結果である。その結果、ブランク対照群のマウスの海馬には一定量のミクログリアが存在し(矢印でマーク)、溶媒群のマウスの海馬のミクログリア量は有意に増加し、投与群のマウスの海馬におけるミクログリアの数は溶媒群よりも有意に高く、しかもその差は統計学的に有意であった(*はP<0.05、***はP<0.001を表す)。これは、プラスミノーゲンが、多発性硬化症モデルマウスの海馬損傷の炎症修復を促進できることを示している。
【
図8】
図8A~Dは、多発性硬化症モデルマウスにプラスミノーゲンを35日間投与した後の海馬におけるBDNFの免疫組織化学染色の結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒PBS投与対照群、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは平均光学密度の定量分析結果である。その結果、ブランク対照群のマウスの海馬には一定レベルのBDNFがあり(矢印でマーク)、溶媒群のマウスの海馬のBDNFレベルは増加し、投与群のマウスの海馬におけるBDNFレベルは溶媒群よりも有意に高く、しかもその統計的な差は有意差に近かった(P=0.095)。これは、プラスミノーゲンが、多発性硬化症モデルマウスの海馬におけるBDNFレベルの増加を促進できることを示している。
【
図9】
図9A~Dは、多発性硬化症モデルマウスにプラスミノーゲンを35日間投与した後の海馬におけるGFAPの免疫組織化学染色の結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒PBS投与対照群、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは平均光学密度の定量分析結果である。その結果、ブランク対照群のマウスの海馬には一定レベルのGFAP(矢印でマーク)を発現し、溶媒群のマウスの海馬のGFAPの発現は減少し、投与群のマウスの海馬におけるGFAP発現レベルは溶媒群よりも有意に高く、しかもその統計的な差は有意差に近かった(P=0.051)。これは、プラスミノーゲンが、多発性硬化症モデルマウスの海馬におけるGFAPの発現の増加を促進し、アストロサイト活性の上昇を促進できることを示している。
【
図10】
図10は、プラスミノーゲン投与28日後の、多発性硬化症モデルマウスのオープンフィールド試験における総移動距離の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスには一定の総移動距離があり、溶媒群のマウスの総移動距離は有意に増加し、投与群のマウスの総移動距離は溶媒群のマウスよりも有意に小さく、その差は統計的に有意であり(*はP<0.05を示す)、しかもブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの抑うつ行動を緩和できることを示している。
【
図11】
図11は、境界ゾーンでの休憩時間の割合(パーセンテージ)=境界ゾーンでの休憩時間/総観察時間を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスが境界ゾーンで一定の休憩時間の割合(約57.8%)を持っており、溶媒群のマウスの境界ゾーンでの休憩時間の割合は大幅に減少し、約49.3%であり、投与群のマウスは境界ゾーンでの休憩時間の割合は約58.4%であり、溶媒群よりも有意に大きく、その差は統計的に有意であり(*はP<0.05を表す)、しかもブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの抑うつ行動をある程度緩和できることを示している。
【
図12】
図12は、プラスミノーゲン投与34日後の多発性硬化症モデルマウスの3ボックス実験第2段階におけるストレンジャーマウス2の接触範囲内での休憩時間の割合の統計結果を示す図である。休憩時間の割合=休憩時間/総観察時間である。3ボックス社会的試験実験の第2段階の結果により明らかに、ブランク対照群のマウスは、ストレンジャーマウス2の接触範囲内で一定の割合の休憩時間を持っており、約13.7%であり、溶媒群では、約10.6%と有意に減少し、投与群は約16.1%であり、溶媒群よりも有意に高く、しかもその統計学的な差は有意に近かった(P=0.075)。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの社会的記憶を改善できることを示している。
【
図13】
図13は、プラスミノーゲンを6日間投与した後の多発性硬化症モデルラットのオープンフィールド試験の境界ゾーンにおける移動距離の割合(パーセンテージ)の統計結果を示す図である。境界ゾーンの移動距離は、オープンフィールド実験の試験時間内における境界ゾーンの移動軌跡の長さである。その結果、ブランク対照群は境界ゾーンで一定の割合の移動距離を持っており、約91.1%であり、溶媒群は約93.6%と有意に増加し、投与群は約88.1%であり、溶媒群よりも有意に低く、しかもその差は統計的に有意であった(*はP<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの抑うつ行動を緩和できることを示している。
【
図14】プラスミノーゲンを6日間投与した後の多発性硬化症モデルラットのオープンフィールド試験における中心ゾーンの移動距離のパーセンテージの統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群は中心ゾーンで一定の割合の距離を持っており、約8.9%であり、溶媒群は約6.4%と有意に低下し、投与群は約11.9%であり、溶媒群よりも有意に高く、しかもその差は統計的に有意であった(*はP<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルラットの不安行動を緩和できることを示している。
【
図15】
図15は、プラスミノーゲンを20日間投与した後の多発性硬化症モデルマウスの高架式十字迷路試験におけるオープンアームエントリ率の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスは一定のオープンアームエントリ率を有し、約14.9%であり、溶媒群のマウスのオープンアームエントリ率は、約23.0%と有意に増加し、投与群のマウスのオープンアームエントリ率は約14.5%であり、溶媒群よりも有意に少なく、その差は統計学的に有意であり(P=0.015)、しかもブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの不安行動をある程度緩和できることを示している。
【
図16】
図16は、プラスミノーゲンを20日間投与した後の多発性硬化症モデルマウスの高架式十字迷路試験におけるクローズアームエントリ率の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスは一定のクローズアームエントリ率を有し、約34.4%であり、溶媒群のマウスのクローズアームエントリ率は、約28.1%と有意に低下し、投与群のマウスのクローズアームエントリ率は約37.1%であり、溶媒群よりも有意に大きく、その差は統計学的に有意であり(P=0.007)、しかもブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの不安や抑うつ行動をある程度緩和できることを示している。
【
図17】
図17は、プラスミノーゲンを27日間投与した後の多発性硬化症モデルマウスの高架式十字迷路試験におけるクローズアーム移動距離の統計結果を示す図である。クローズアームの移動の合計距離は、高架式十字迷路実験の試験時間中にマウスのクローズアームの移動の合計距離である。その結果、ブランク対照群のマウスは一定のクローズアーム移動の合計距離を有し、溶媒群のマウスのクローズアーム移動の合計距離が有意に増加し、投与群のマウスのクローズアーム移動の合計距離は溶媒群よりも有意に少なく、その差は統計学的に有意であり(*はP<0.05を表す)、ブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの不安や抑うつ行動をある程度緩和できることを示している。
【
図18】
図18は、プラスミノーゲンを27日間投与した後の多発性硬化症モデルマウスの高架式十字迷路試験におけるクローズアーム休憩時間の割合の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスは一定のクローズアーム休憩時間の割合を有し、約51.8%であり、溶媒群のマウスのクローズアーム休憩時間の割合は36.8%と有意に低下し、投与群のマウスのクローズアーム休憩時間の割合は約50.1%であり、溶媒群よりも有意に大きく、その差は統計学的に有意であり(*はP<0.05を表す)、ブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの不安や抑うつ行動をある程度緩和できることを示している。
【発明の詳細な説明】
【0032】
線維素溶解系(Fibrinolytic system)は、線溶系とも呼ばれ、線維素溶解の過程に関与する一連の化学物質からなる系であり、主にプラスミノーゲン(PLG)、プラスミン、プラスミノーゲン活性化因子、及び線維素溶解阻害剤を含む。プラスミノーゲン活性化因子には、組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)、及びウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(u-PA)が含まれる。t-PAはセリンプロテアーゼであり、血管内皮細胞によって合成される。t-PAはプラスミノーゲンを活性化し、このプロセスは主にフィブリンで行われる。ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(u-PA)は、尿細管上皮細胞と血管内皮細胞によって産生され、補因子としてフィブリンを必要とすることなくプラスミノーゲンを直接活性化することができる。プラスミノーゲン(PLG)は肝臓で合成される。血液が凝固すると、PLGはフィブリンネットに大量に吸着され、t-PAまたはu-PAの作用によりプラスミンに活性化されて線維素溶解を促進する。プラスミナーゼ(PL)はセリンプロテアーゼであり、フィブリンとフィブリノーゲンを分解し、様々な凝固因子V、VIII、X、VII、XI、IIなどを加水分解し、プラスミノーゲンをプラスミンに変換し、補体を加水分解するなどの作用がある。線維素溶解阻害剤には、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤(PAI)、及びα2-抗チプラスミン(α2-AP)が含まれる。PAIには主にPAI-1とPAI-2の2つの形態があり、t-PAに1:1の比率で特異的に結合し、それによってそれを不活性化すると同時にPLGを活性化することができる。α2-APは肝臓で合成され、PLと1:1の比率で結合して複合体を形成し、それによってPL活性を阻害する。FXIIIはα2-APをフィブリンと共有結合させ、それによってPLに対するフィブリンの感受性を弱める。インビボでの線維素溶解系の活性を阻害する物質としては、PAI-1、補体C1阻害剤、α2抗プラスミン、及びα2-マクログロブリンが挙げられる。
【0033】
本明細書で使用される「プラスミノーゲン活性化経路の成分」という用語は、
1、プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン(micro-plasminogen)、delta-プラスミノーゲン、それらの変異体または類縁体;
2、プラスミン及びそれらの変異体または類縁体;及び
3、プラスミノーゲン活性化剤、例えば、tPA及びuPA、ならびにtPAまたはuPAの1つ以上のドメイン(1つ以上のkringleドメイン及びタンパク質加水分解ドメインなど)を含むtPAまたはuPA変異体及び類縁体をカバーする。
【0034】
上記プラスミノーゲン、プラスミン、tPA及びuPAの「変異体」は、すべての天然に存在するヒトの遺伝的変異体及びこれらのタンパク質の他の哺乳動物型、並びに、例えば、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個のアミノ酸を追加、削除、及び/または置換されてかつ依然としてプラスミノーゲン活性、プラスミン活性、tPAまたはuPA活性を有するタンパク質を含む。例えば、プラスミノーゲン活性、プラスミン活性、tPAまたはuPAの「変異体」は、例えば、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個の保存的アミノ酸によって置換されて得られるこれらのタンパク質の突然変異体を含む。
【0035】
本発明の「プラスミノゲン変異体」は、配列2、6、8、10または12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノーゲン活性を有するタンパク質をカバーする。例えば、本発明の「プラスミノーゲン変異体」は、配列2、6、8、10または12に基づいて、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個のアミノ酸を追加、削除、及び/または置換し、且つ依然としてプラスミノーゲン活性を有するタンパク質であり得る。具体的には、本発明のプラスミノーゲン変異体は、すべての天然に存在するヒトの遺伝的変異体及びこれらのタンパク質の他の哺乳動物型、並びに、例えば、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個のアミノ酸を保存的置換によって得られるこれらのタンパク質の突然変異体を含む。
【0036】
本発明のプラスミノーゲンは、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、または依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体、例えば、配列2、6、8、10または12に示されるプラスミノーゲン、例えば、配列2に示されるヒト天然プラスミノーゲンであり得る。
【0037】
上記プラスミノーゲン、プラスミン、tPA及びuPAの「類縁体」はそれぞれ、プラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAと実質的に同様の効果を与える化合物を含む。
【0038】
上記プラスミノーゲン、プラスミン、tPA及びuPAの「変異体」及び「類縁体」は、1つ以上のドメイン(例えば、1つ以上のkringleドメイン及びタンパク質加水分解ドメイン)を含むプラスミノーゲン、プラスミン、tPA及びuPAの「変異体」及び「類縁体」をカバーする。例えば、プラスミノーゲンの「変異体」及び「類縁体」は、1つ以上のプラスミノーゲンドメイン(例えば、1つ以上のkringleドメイン及びタンパク質加水分解ドメイン)を含むプラスミノーゲン変異体及び類縁体、例えば、ミニプラスミノーゲン(mini-plasminogen)をカバーする。プラスミンの「変異体」及び「類縁体」は、1つ以上のプラスミンドメイン(例えば、1つまたは複数のkringleドメイン及びタンパク質加水分解ドメイン)を含むミニプラスミン(mini-plasmin)やδ-プラスミン(delta-plasmin)などのプラスミンの「変異体」及び「類縁体」をカバーする。
【0039】
上記プラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAの「変異体」または「類縁体」がそれぞれプラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAの活性を有するかどうか、またはそれらがプラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAと実質的に同様の効果をそれぞれ与えるかどうかは、当技術分野で知られている方法、例えば、酵素記録法(enzymography)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)及びFACS(蛍光活性化細胞ソーティング法)を使用して、活性化されたプラスミン活性のレベルによって測定できる。例えば、次の文献に記載されている方法を参照して測定することができる。Ny,A.,Leonardsson,G.,Hagglund,A.C,Hagglof,P.,Ploplis,V.A.,Carmeliet,P. and Ny,T. (1999). Ovulation inplasminogen-deficient mice. Endocrinology 140,5030-5035;Silverstein RL, Leung LL, Harpel PC, Nachman RL (November 1984). “Complex formation of platelet thrombospondin with plasminogen. Modulation of activation by tissue activator”. J. Clin. Invest. 74 (5): 1625-33;Gravanis I, Tsirka SE (February 2008). “Tissue-type plasminogen activator as a therapeutic target in stroke”. Expert Opinion on Therapeutic Targets. 12 (2): 159-70;Geiger M, Huber K, Wojta J, Stingl L, Espana F, Griffin JH, Binder BR (Aug 1989). “Complex formation between urokinase and plasma protein C inhibitor in vitro and in vivo”. Blood. 74 (2): 722-8。
【0040】
本発明の一部の実施形態において、本発明の「プラスミノーゲン活性化経路の成分」はプラスミノーゲンであり、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、δ-プラスミノーゲンまたはそれらのプラスミノーゲン活性を保持した変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、または依然プラスミノーゲン活性を保持した保存的突然変異体若しくはそのフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、または依然プラスミノーゲン活性を保持した保存的突然変異体若しくはそのフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンのアミノ酸は配列2、6、8、10または12に示される。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはヒト天然プラスミノーゲンである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは配列2に示されるヒト天然プラスミノーゲンである。
【0041】
「プラスミノーゲンを直接活性化できる、若しくはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによってプラスミノーゲンを間接に活性化できる化合物」とは、プラスミノーゲンを直接活性化できる、若しくはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによってプラスミノーゲンを間接に活性化できる任意の化合物を指し、例えば、tPA、uPA、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、及びスタフィロキナーゼが挙げられる。
【0042】
本発明の「線維素溶解阻害剤の拮抗薬」は、線維素溶解阻害剤の作用に拮抗し、その作用を弱め、遮断し、阻止する化合物である。前記線維素溶解阻害剤は、例えば、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミン、及びα2-マクログロブリンである。前記拮抗剤は、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンもしくはα2-マクログロブリンの抗体、または、例えばPAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンもしくはα2-マクログロブリンの発現を遮断またはダウンレギュレートするアンチセンスRNAもしくはミニRNA、または、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンまたはα2-マクログロブリンの結合部位を占めるが、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンまたはα2-マクログロブリンの機能を持たない化合物、または、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンもしくはα2-マクログロブリンの結合ドメイン及び/または活性ドメインをブロックする化合物である。
【0043】
プラスミンはプラスミノゲン活性化系(PA系)の重要な成分である。それは広スペクトルのプロテアーゼであり、細胞外マトリックス(ECM)の幾つかの成分を加水分解することができ、これらの成分はフィブリン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン及びプロテオグリカンを含む。また、プラスミンは一部のプロマトリックスメタロプロテアーゼ(pro-MMP)を活性化させて活性のあるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)にすることができる。そのためプラスミンは細胞外タンパク加水分解作用の一つの重要な上流調節因子である。プラスミンはプラスミノゲンが二種類の生理性のPA:組織型プラスミノゲン活性化剤(tPA)またはウロキナーゼプラスミノゲン活性化剤(uPA)のタンパク質加水分解により形成されるものである。プラスミノゲンは血漿及び他の体液中において、相対的レベルが比較的高く、従来的にはPA系の調節は主にPAsの合成及び活性レベルよって実現されると考えられている。PA系成分の合成は異なる要素によって厳格な調節を受け、例えばホルモン、成長因子及びサイトカインである。また、この他に、プラスミンとPAsの特定の生理的阻害剤が存在する。プラスミンの主な阻害剤はα2-抗プラスミン(α2-antiplasmin)である。PAsの活性は、uPAとtPAのプラスミノーゲン活性化剤阻害剤-1(PAI-1)に同時に阻害され、uPAを主に阻害するプラスミノーゲン活性化剤阻害剤-2(PAI-2)によって調節される。一部の細胞表面には直接加水分解する活性のあるuPA特異性細胞表面受容体(uPAR)がある。
【0044】
ヒトプラスミノゲンは単一鎖の糖タンパクであり、791個のアミノ酸からなり、分子量は約92kDaである。プラスミノゲンは主に肝臓で合成され、大量に細胞外液に存在している。血漿中に含まれるプラスミノゲンの含有量は約2μMである。そのためプラスミノゲンは組織及び体液中のタンパク質加水分解活性の大きな潜在的な由来である。プラスミノゲンには二種類の分子の形が存在する:グルタミン酸-プラスミノゲン(Glu-plasminogen)及びリジン-プラスミノゲン(Lys-plasminogen)である。天然的に分泌され及び分解していない形のプラスミノゲンは一つのアミノ基末端(N-末端)グルタミン酸を有し、そのためグルタミン酸-プラスミノゲンと称される。しかし、プラスミンが存在する場合、グルタミン酸-プラスミノゲンはLys76-Lys77においてリジン-プラスミノゲンに加水分解される。グルタミン酸-プラスミノゲンと比較して、リジン-プラスミノゲンはフィブリンとより高い親和力を有し、さらにより高い速度でPAsによって活性化されることができる。この二種類の形のプラスミノゲンのArg560-Val561ペプチド結合はuPAまたはtPAによって切断され、これによりジスルフィド結合によって連結された二重鎖プロテアーゼプラスミンの形成をもたらす。プラスミノゲンのアミノ基末端部分は五つの相同三環を含み、即ちいわゆるkringlesであり、カルボキシル基末端部分はプロテアーゼドメインを含む。一部のKringlesはプラスミノゲンとフィブリン及びその阻害剤α2-APの特異的相互作用を介在するリジン結合部位を含む。最も新しく発見されたのは38kDaのフィブリンプラスミノゲンフラグメントであり、kringlel-4を含み、血管生成の有効的な阻害剤である。このフラグメントはアンギオスタチン(Angiostatin)と命名され、幾つかのプロテアーゼ加水分解プラスミノゲンから生成される。
【0045】
プラスミンの主な基質はフィブリンであり、フィブリンの溶解は病理性血栓の形成を予防するキーポイントである。プラスミンはさらにECMの幾つかの成分に対する基質特異性を有し、これらはラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカン及びゼラチンを含み、これはプラスミンがECM再建において重要な作用を有することを示している。間接的に、プラスミンはさらにMMP-1、MMP-2、MMP-3及びMMP-9を含むいくつかのプロテアーゼ前駆体を活性プロテアーゼに変換することによりECMのその他の成分を分解する。そのため、以下のように提唱する人がいる。プラスミンは細胞外タンパク加水分解の重要な上流調節因子である。また、プラスミンはいくつかの潜在的な形の成長因子を活性化させる能力を有する。体外において、プラスミンはさらに補体系の成分を加水分解させて走化性の補体フラグメントを放出することができる。
【0046】
「プラスミン」は血液中に存在する非常に重要な酵素であり、フィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD-二量体に加水分解する。
【0047】
「プラスミノーゲン」はプラスミンの酵素前駆体の形であり、swiss prot中の配列に基づいて、シグナルペプチドを含む天然ヒト由来プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列4)としての計算によれば810個のアミノ酸からなり、分子量は約90kDであり、主に肝臓において合成され且つ血液中で循環できる糖タンパク質であり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列3に示される通りである。フルサイズのプラスミノーゲンは七つのドメインを含む:C末端に位置するセリンプロテアーゼドメイン、N末端に位置するPan Apple(PAp)ドメイン及び5つのKringleドメイン(Kringle1-5)を含む。swiss prot中の配列を参照すれば、そのシグナルペプチドは残基Met1-Gly19を含み、PApは残基Glu20-Val98を含み、Kringle1は残基Cys103-Cys181を含み、Kringle2は残基Glu184-Cys262を含み、Kringle3は残基Cys275-Cys352を含み、Kringle4は残基Cys377-Cys454を含み、Kringle5は残基Cys481-Cys560を含む。NCBIデータによれば、セリンプロテアーゼドメインは残基Val581-Arg804を含む。
【0048】
Glu-プラスミノーゲンは人の天然のフルサイズのプラスミノーゲンであり、791個のアミノ酸からなる(19個のアミノ酸からなるシグナルペプチドを含まない)。該配列をコードするcDNA配列は配列1に示される通りであり、そのアミノ酸配列は配列2に示される通りである。体内において、さらにGlu-プラスミノーゲンの第76-77位のアミノ酸の位置で加水分解することにより形成されたLys-プラスミノーゲンが存在し、例えば配列6に示されるものであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列5が示す通りである。Delta-プラスミノーゲン(δ-plasminogen)はフルサイズのプラスミノーゲンにKringle2-Kringle5構造の欠損が生じているフラグメントであり、Kringle1及びセリンプロテアーゼドメインしか含有せず(プロテアーゼドメイン(protease domain、PD)とも呼ばれる)、δ-プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列8)を報告している文献があり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は例えば配列7である。ミニプラスミノーゲン(Mini-plasminogen)はKringle5及びセリンプロテアーゼドメインからなり、残基Val443-Asn791(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列Glu残基を開始アミノ酸とする)について文献が報告しており、そのアミノ酸配列は配列10に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列9が示す通りである。しかしマイクロプラスミノーゲン(Micro-plasminogen)はセリンプロテアーゼドメインのみ含有し、そのアミノ酸配列は残基Ala543-Asn791(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基は開始アミノ酸である)と文献が報告し、特許文献CN102154253Aはそれが残基Lys531-Asn791を含むと開示し(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基を開始アミノ酸とする)、本特許出願において、マイクロプラスミノーゲンの配列は特許文献CN102154253Aを参照でき、そのアミノ酸配列は配列12に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列11に示される通りである。
【0049】
全長プラスミノーゲンの構造は、Aisinaらの論文にも記載されている(Aisina R B,Mukhametova L I.Structure and function of plasminogen/plasmin system[J].Russian Journal of Bioorganic Chemistry,2014,40(6):590-605)。Aisinaらの前記文章によれば、プラスミノーゲンにはKringle 1、2、3、4、5ドメインとセリンプロテアーゼドメイン(プロテアーゼドメイン(protease domain、PD)とも呼ばれる)が含まれ、Kringlesは、プラスミノーゲンが低分子量及び高分子量のリガンドに結合する役割(すなわち、リジン結合活性)を担っており、その結果、プラスミノーゲンがよりオープンな構成に変換され、より活性化しやすくなり、プロテアーゼドメイン(PD)は、残基Val562-Asn791であり、tPAとUPAはプラスミノーゲンのArg561-Val562位活性化結合を特異的に切断し、それによってプラスミノーゲンがプラスミンを形成できる。したがって、プロテアーゼドメイン(PD)は、プラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を付与する領域である。
【0050】
本発明の「プラスミン」と「フィブリンプラスミン」、「繊維タンパクプラスミン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。「プラスミノーゲン」と「フィブリンプラスミノーゲン」、「繊維タンパクプラスミノーゲン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。
【0051】
本願において、前記プラスミノーゲンの「欠乏」とは、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より低く、被験者の正常な生理学的機能に影響を及ぼすのに十分に低いことをいう。前記プラスミノーゲンの「欠乏」の意味は、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より明らかに低く、活性または発現が極微量であり、外部供給によってのみ正常な生理学的機能を維持できることである。
【0052】
当業者は以下のように理解できる。本発明のプラスミノーゲンのすべての技術構成はプラスミンに適用でき、そのため、本発明に記載の技術構成はプラスミノーゲン及びプラスミンをカバーするものである。循環プロセスにおいて、プラスミノーゲンは閉鎖した非活性コンフォメーションであるが、血栓または細胞表面に結合した際、プラスミノーゲン活性化剤(plasminogen activator,PA)の介在下において、開放性のコンフォメーションを有する活性プラスミンとなる。活性を有するプラスミンはさらにフィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD-二量体に加水分解させ、これにより血栓を溶解させる。そのうちプラスミノーゲンのPApドメインはプラスミノーゲンを非活性閉鎖コンフォメーションにする重要なエピトープであり、しかしKRドメインは受容体及び基質上のリジン残基と結合できるものである。プラスミノーゲン活性化剤としての酵素は、既に複数種類知られ、組織プラスミノーゲン活性化剤(tPA)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化剤(uPA)、カリクレイン及び凝結因子XII(ハーゲマン因子)などを含む。
【0053】
「プラスミノーゲン活性フラグメント」とは、基質のターゲット配列中のリジンに結合する活性(リジン結合活性)フラグメント、またはタンパク質加水分解機能を発揮する活性(タンパク質加水分解活性)フラグメント、またはタンパク質加水分解活性とリジン結合活性との両方を有するフラグメントを指す。本発明のプラスミノーゲンに関する技術構成は、プラスミノーゲンをプラスミノーゲンの活性フラグメントに置き換えた技術構成を包含する。いくつかの実施形態では、本発明のプラスミノーゲン活性フラグメントは、プラスミノーゲンのセリンプロテアーゼドメインを含むか、またはプラスミノーゲンのセリンプロテアーゼドメインからなり、好ましくは、本発明のプラスミノーゲン活性フラグメントは、配列14を含むか、または配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。一部の実施形態において、本発明のプラスミノーゲン活性フラグメントは、Kringle 1、Kringle 2、Kringle 3、Kringle 4、及びKringle 5から選択される1つ以上のドメインを含むか、またはKringle 1、Kringle 2、Kringle 3、Kringle 4、及びKringle 5から選択される1つ以上のドメインからなる。いくつかの実施形態では、本発明のプラスミノーゲンは、上記のプラスミノーゲンの活性フラグメントを含むタンパク質を含む。
【0054】
現在、血液中のプラスミノーゲン及びその活性測定方法は組織プラスミノーゲン活性化剤の活性に対する測定(t-PAA)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤抗原に対する測定(t-PAAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性に対する測定(plgA)、血漿組織プラスミノーゲン抗原に対する測定(plgAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物活性に対する測定、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物抗原に対する測定、血漿プラスミン-抗プラスミン複合物に対する測定(PAP)を含む。最もよく見られる測定方法は発色基質法である:測定対象(被験者)の血漿中にストレプトキナーゼ(SK)と発光基質を添加し、測定対象の血漿中のPLGはSKの作用下においてPLMとなり、後者は発光基質に作用し、それから分光光度計で測定し、吸光度の増加はプラスミノーゲンの活性と正比例の関係となる。この他にも免疫化学法、ゲル電気泳動法、免疫比濁法、放射免疫拡散法などを用いて血液中のプラスミノーゲン活性に対して測定を行うことができる。
【0055】
「オルソログ(ortholog)」とは異なる種どうしのホモログであり、タンパク質の相同物もDNAの相同物も含む。それは具体的に異なる種どうしの同じ祖先の遺伝子から進化して得られるタンパク質または遺伝子を言う。本発明のプラスミノーゲンはヒト天然プラスミノーゲンを含み、さらには異なる種に由来する、プラスミノーゲン活性を有するプラスミノーゲンオルソログを含む。
【0056】
「保存的置換バリアント」とはそのうちの一つの指定されたアミノ酸残基が改変されたがタンパク質または酵素の全体のコンフォメーション及び機能を変えないものであり、これは類似の特性(例えば酸性、アルカリ性、疎水性など)のアミノ酸で親タンパク質中のアミノ酸配列中のアミノ酸を置換するものを含むがこれらに限られない。類似の性質を有するアミノ酸は知られている通りである。例えば、アルギニン、ヒスチジン及びリジンは親水性のアルカリ性アミノ酸であり且つ互いに置き換えることができる。同じように、イソロイシンは疎水アミノ酸であり、ロイシン、メチオニンまたはバリンによって置換されることができる。そのため、機能の類似する二つのタンパク質またはアミノ酸配列の類似性は異なる可能性もある。例えば、MEGALIGNアルゴリズムに基づいて70%~99%の類似性(同一性)を有する。「保存的置換バリアント」はさらにBLASTまたはFASTAアルゴリズムに基づいて60%以上のアミノ酸同一性を有するポリペプチドまたは酵素を含み、75%以上に達すればさらによく、最も好ましくは85%以上に達し、さらには90%以上に達するのが最も好ましく、さらに天然または親タンパク質または酵素と比較して同じまたは基本的に類似する性質または機能を有する。
【0057】
「分離された」プラスミノーゲンとは天然環境から分離及び/または回収されたプラスミノーゲンタンパク質である。いくつかの実施形態において、前記プラスミノーゲンは(1)90%を超える、95%を超える、または98%を超える純度(重量で計算した場合)になるまで精製し、例えばLowry法によって決まるもので、例えば99%(重量で計算した場合)を超えるまで精製する、(2)少なくともスピニングカップ配列分析装置によりN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基が得られる程度になるまで精製する、または(3)同質性になるまで精製する。該同質性はクマシーブリリアントブルーまたは銀染色により還元性または非還元性条件下のドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミノゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって決まるものである。分離されたプラスミノーゲンはバイオエンジニアリング技術により組み換え細胞から製造され、さらに少なくとも一つの精製ステップで分離されたプラスミノーゲンを含む。
【0058】
用語の「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は本明細書において互いに置き換えて使用でき、いかなる長さのアミノ酸の重合体を指し、遺伝的にコードされた及び非遺伝的にコードされたアミノ酸、化学的または生化学的に修飾されまたは派生したアミノ酸、及び修飾されたペプチド主鎖を有するポリペプチドを含む。該用語は融合タンパク質を含み、異種性アミノ酸配列を有する融合タンパク質を含むがこれに限られず、異種性と同種性由来のリーダー配列(N端メチオニン残基を有するあるいは有しない)を含む融合物;等々である。
【0059】
参照ペプチド配列の「アミノ酸配列同一性パーセンテージ(%)」の定義は、必要に応じてギャップを導入することで最大のパーセンテージ配列の同一性を実現した後、如何なる保存的な置換も配列同一性の一部として見なさない場合、候補配列中における参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基のパーセンテージである。パーセンテージのアミノ酸配列の同一性を測定することを目的とした比較は本分野の技術範囲における複数種類の方式によって実現でき、例えば公衆が入手できるコンピュータソフトウエア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアによって実現できる。当業者は配列をアライメントするための適切なパラメータを決めることができ、該パラメータが比較対象の配列のフルサイズに対して最大比較の要求を実現するための如何なるアルゴリズムも含む。しかし、本発明の目的のために、アミノ酸配列の同一性パーセンテージは配列比較コンピュータソフトウエアALIGN-2により得られるものである。
【0060】
ALIGN-2を用いることによりアミノ酸配列を比較する場合、所定のアミノ酸配列Aの所定のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一性%(または所定のアミノ酸配列Bに対して、と、またはについてのあるアミノ酸配列と同一性を有する又は含む所定のアミノ酸配列Aともいう)は以下のように計算される:
分数X/Y×100
【0061】
ここで、Xは配列アライメントプログラムALIGN-2において該プログラムのA及びBのアライメントにおいて同一でマッチングすると評価したアミノ酸残基の数であり、且つYはBにおけるアミノ酸残基の総数である。以下のように理解するべきである:アミノ酸配列Aの長さとアミノ酸配列Bの長さが等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列の同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは異なる。特に断りのない限り、本文中において使用するすべてのアミノ酸配列同一性値%は前記の段落に記載の通りであり、ALIGN-2コンピュータプログラムによって得られるものである。
【0062】
本文において使用されているように、用語の「治療」は期待される薬理及び/または生理的効果が得られることを言う。前記効果は疾患またはその症状の発生、発症を完全または一部予防すること、あるいは疾患及び/またはその症状を一部または完全軽減すること、及び/または疾患及び/またはその症状を一部または完全に治癒するものとすることができる。さらに以下を含む:(a)疾患が被験者の体内で発生することを予防し、前記被験者は疾患の要因を持っているが、該疾患を有すると診断されていない状況であること;(b)疾患を抑制し、その形成を阻害すること;及び(c)疾患及び/またはその症状を減軽し、即ち疾患及び/またはその症状を減退させること。
【0063】
用語の「個体」、「被験者」及び「患者」は本明細書中において互いに置き換えて使用でき、哺乳動物を指し、ネズミ(ラット、マウス)、ヒト以外の霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含むがこれらに限られない。
【0064】
「治療上有効量」または「有効量」とは、哺乳動物またはその他の被験者に投与して疾患の治療に用いられる際に疾患の前記予防及び/または治療を実現できるプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)の量である。「治療上有効量」は使用するプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)、治療しようとする被験者の疾患及び/または症状の重症度及び年齢、体重などに従って変化するものである。
【0065】
本発明のプラスミノーゲンの調製
プラスミノーゲンは治療の用途に用いられるために、自然界から分離及び精製されるものでもよく、標準的な化学ペプチド合成技術によって合成することでもよい。化学的手法によりポリペプチドを合成する際、液相または固相で合成を行うことができる。固相ポリペプチド合成(SPPS)(配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に附着させ、順番に配列中の残りのアミノ酸を添加する)はプラスミノーゲンの化学的合成に適したものである。各種形式のSPPS、例えばFmoc及びBocは、プラスミノーゲンの合成に用いることができる。固相合成に用いられる技術は以下に記載されている:Barany及びSolid-Phase Peptide Synthesis;3-284ページ、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology.第二巻:Special Methods in Peptide Synthesis,Part A.,Merrifield,tら J.Am.Chem.Soc.,85:2149-2156(1963);Stewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.Pierce Chem.Co.,Rockford,Ill.(1984);及びGanesan A.2006Mini Rev.Med Chem.6:3-10及びCamarero JAら 2005Protein Pept Lett.12:723-8。簡単に言えば、その上にペプチド鎖が構築されている機能性ユニットにより小さい不溶性の多孔ビーズを処理する。カップリング/脱保護の繰り返し循環後に、附着した固相の遊離N末端アミンとN保護を受けている単一のアミノ酸ユニットをカップリングさせる。それから、該ユニットを脱保護し、他のアミノ酸と連結する新しいN末端アミンを露出させる。ペプチドを固相上に固定したままにし、それからそれを切除する。
【0066】
標準的な組み換え方法により本発明のプラスミノーゲンを生産する。例えば、プラスミノーゲンをコードする核酸を発現ベクター中に挿入し、それと発現ベクター中の制御配列を操作可能に接続させる。発現制御配列はプロモーター(例えば天然に関連されているプロモーター、または異種由来のプロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメント及び転写終了配列を含むが、これらに限られない。発現の制御はベクター中の真核プロモーターシステムとすることができ、前記ベクターは真核宿主細胞(例えばCOSまたはCHO細胞)を形質転換またはトランスフェクションさせる。一旦ベクターを適切な宿主に導入すれば、ヌクレオチド配列の高レベル発現及びプラスミノーゲンの収集及び精製に適した条件下において宿主を維持する。
【0067】
適切な発現ベクターは通常宿主体内において附加体または宿主染色体DNAの整合部分として複製される。通常、発現ベクターは選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性またはネオマイシン耐性)を含み、インビトロで所望のDNA配列によって形質転換されたそれらの細胞に対して測定を行うことに有用である。
【0068】
大腸菌(Escherichia coli)は目的抗体をコードするポリヌクレオチドをクローンする原核宿主細胞の例である。その他の使用に適した微生物宿主は桿菌を含み、例えばバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びその他の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えばサルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、及び各種シュードモナス属(Pseudomonas)種である。これらの原核宿主において、発現ベクターを生成でき、通常は宿主細胞と相容する発現制御配列(例えば複製開始点)を含むものである。また、多くの公知のプロモーターが存在し、例えば乳糖プロモーターシステム、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、β-ラクタマーゼプロモーターシステム、またはファージλ由来のプロモーターシステムである。プロモーターは一般的に発現を制御し、必要に応じて遺伝子配列を制御する場合に、転写及び翻訳を起動するために、さらにリボソームの結合位置配列などを有してもよい。
【0069】
その他の微生物、例えば酵母も発現に用いることができる。酵母(例えばサッカロミセス(S.cerevisiae))及びピキア(Pichia)が適した酵母宿主細胞の例であり、そのうちの適切な担体は必要に応じて発現制御配列(例えばプロモーター)、複製開始点、終止配列など含む。典型的なプロモーターは3-ホスホグリセリン酸キナーゼ及びその他の糖分解酵素を含む。誘導型酵母プロモーターには特にアルコール脱水素酵素、イソチトクロムC、及びマルトースとガラクトースの利用のための酵素のプロモーターを含む。
【0070】
微生物以外に、哺乳動物細胞(例えばインビトロ細胞培養物中において培養された哺乳動物細胞)も本発明の抗-Tau抗体(例えば目的抗-Tau抗体をコードするポリヌクレオチド)の発現及び生成に用いることができる。例えばWinnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,N.Y.,N.Y.(1987)参照。適した哺乳動物宿主細胞はCHO細胞系、各種Cos細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、及び形質転換されたB細胞またはハイブリドーマを含む。これらの細胞に用いられる発現ベクターは発現制御配列、例えば複製開始点、プロモーター、及びエンハンサー(Queenら,Immunol.Rev.89:49(1986))、及び必要とされる加工情報サイト、例えばリボソームの結合サイト、RNAの切断サイト、ポリアデノシン酸化サイト、及び転写ターミネーター配列を含むことができる。適切な発現制御配列の例はウサギ免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウィルス、サイトメガロウイルスなど由来のプロモーターである。Coら、J.Immunol.148:1149(1992)を参照すること。
【0071】
一旦(化学または組み換え的に)合成されれば、本分野の標準的な手順、例えば硫酸アンモニウム沈殿、アフィニテイカラム、カラムクロマトグラフィー、高速液相クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動などにより本発明に記載のプラスミノーゲンを精製することができる。該プラスミノーゲンは基本的に純粋なものであり、例えば少なくとも約80%から85%の純度で、少なくとも約85%~90%の純度で、少なくとも約90%~95%の純度で、または98%~99%の純度またはさらに純度が高いものであり、例えば汚染物を含まず、前記汚染物は例えば細胞砕片、目的抗体以外の大分子などである。
【0072】
薬物配合剤
所望の純度のプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)と必要に応じた薬用担体、賦形剤、または安定化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.ed.(1980))を混合して凍結乾燥製剤または水溶液を形成して治療用の配合剤を得る。許容可能な担体、賦形剤、安定化剤は所要の用量及び濃度下において被験者に対して毒性がなく、さらに例えばリン酸塩、クエン酸塩及びその他の有機酸などの緩衝剤を含む。抗酸化剤はアスコルビン酸和メチオニンを含む;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメチレンジアミン;塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブタノールまたはベンジルアルコール;アルキルパラヒドロキシ安息香酸エステル、例えばメチルまたはプロピルパラヒドロキシ安息香酸エステル;ピロカテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;m-クレゾール);低分子量ポリペプチド(約10個より少ない残基を有するもの);タンパク質例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンである;単糖、二糖及びその他の炭水化物はグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む;キレート剤は例えばEDTAである;糖類は例えばショ糖、マンニトール、フコースまたはソルビトールである;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えば亜鉛-タンパク複合体);及び/または非イオン界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)である。好ましい凍結乾燥された抗VEGF抗体製剤は、WO97/04801に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
本発明の配合剤は治療を必要とする具体的な症状の必要とする一種類以上の活性化合物を含有してもよく、好ましくは活性が相補的で互いに副作用を有しないものである。
【0074】
本発明のプラスミノーゲンは例えば凝集技術または界面重合によって作られるマイクロカプセル中に内包ことができ、例えば、膠質薬物輸送系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン剤、ナノ粒子及びナノカプセル)中に入れまたは粗エマルジョン状液中のヒドロキシメチルセルロースまたはゲルーマイクロカプセル及びポリ―(メタアクリル酸メチル)マイクロカプセル中に入れることができる。これらの技術はRemington′s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0075】
体内に投与することに用いられる本発明のプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)は必ず無菌である必要がある。これは凍結乾燥及び再度配合する前または後に除菌濾過膜で濾過することで容易に実現できる。
【0076】
本発明のプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)は徐放製剤を調製できる。徐放製剤の適切な実例は一定の形状を有し且つ糖タンパクを含む固体の疎水性重合体の半透過マトリックスを含み、例えば膜またはマイクロカプセルである。徐放性マトリックスの実例はポリエステル、水性ゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタアクリル酸エステル)(Langerら,J.Biomed.Mater.Res.,15:167-277(1981);Langer,Chem.Tech.,12:98-105(1982))またはポリ(ビニールアルコール)、ポリラクチド(米国特許3773919,EP 58,481)、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタミン酸の共重合体(Sidman,ら,Biopolymers 22:547(1983)),分解できないエチレン-ビニルアセテート(ethylene-vinyl acetate)(Langer,ら,出所は前記と同じ)、または分解可能な乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体、例えばLupron DepotTM(乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体及びリュープロレリン(leuprolide)酢酸エステルからなる注射可能なミクロスフェア体)、及びポリD-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。重合体、例えばエチレン-酢酸エチル及び乳酸-ヒドロキシ酢酸は、持続的に分子を100日間以上放出することができ、しかしいくつかの水性ゲルがタンパク質を放出する時間は比較的短い。関連のメカニズムに応じてタンパク質を安定化させる合理的なストラテジーにより設計できる。例えば、凝集のメカニズムが硫化ジスルフィド結合の交換によって分子間S-S結合を形成するであれば、メルカプト基残基を修飾することにより、酸性溶液中から凍結乾燥させ、湿度を制御し、適切な添加剤を用いて、及び特定の重合体基質組成物を開発することで安定化を実現できる。
【0077】
投与及び使用量
異なる方式、例えば鼻吸入、エアロゾル吸入、点鼻薬、点眼薬、点耳薬、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、髄腔内、動脈内(例えば、頸動脈を介して)、筋肉内、及び直腸内投与により本発明の薬物組成物の投与を実現できる。
【0078】
胃腸外での投与に用いられる製造物は無菌水性または非水性溶液、懸濁液及び乳剤を含む。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、例えばオリーブオイルのような植物油、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は水、アルコール性/水性溶液、乳剤または懸濁液を含み、食塩水及び緩衝媒介を含む。胃腸外媒介物は塩化ナトリウム溶液、リンガ―デキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、または固定油である。静脈内媒介物は液体及び栄養補充物、電気分解補充物などを含む。されには防腐剤及びその他の添加剤、例えば抗微生物製剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなども存在してもよい。
【0079】
医療関係者は各種臨床的要素により用量案を決めることができる。例えば医学分野で公知のように、任意の患者の用量は複数の要素によって決められ、これらの要素は患者の体型、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与回数及び経路、全体の健康度、及び同時に投与するその他の薬物を含む。本発明のプラスミノーゲンを含有する薬物組成物の用量の範囲は例えば被験者体重に対して毎日約0.0001~2000mg/kgであり、または約0.001~500mg/kg(例えば0.02mg/kg,0.25mg/kg,0.5mg/kg,0.75mg/kg,10mg/kg,50mg/kgなど)とすることができる。例えば、用量は1mg/kg体重または50mg/kg体重または1-50mg/kgの範囲とすることができ、または少なくとも1mg/kgである。この例示性の範囲より高いまたは低い用量もカバーされ、特に前記の要素を考慮した場合である。前記範囲中の中間用量も本発明の範囲内に含まれるものである。被験者は毎日、隔日、毎週または経験分析によって決められた任意のスケジュール表に従ってこのような用量を投与できる。例示的な用量のスケジュール表は連続数日0.01~100mg/kg投与することである。本発明の薬物の投与過程において治療効果及び安全性をリアルタイムに評価する必要がある。
【0080】
製品または薬物キット
本発明の一つの実施形態は、プラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)を含む製品または薬物キットに係るものである。前記製品は好ましく容器、ラベルまたはプロトールを含む。適切な容器はボトル、小瓶、注射器などである。容器は各種材料例えばガラスまたはプラスチックから作られることができる。前記容器は組成物を含有し、前記組成物は本発明の疾患または症状を有効に治療し且つ無菌の入口を有する(例えば前記容器は静脈輸液用パックまたはバイアルであり、皮下注射針によって貫通される栓を含む)。前記組成物中の少なくとも一種類の活性化剤がプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)である。前記容器上にあるまたは添付されているラベルは前記組成物を本発明の病症の治療に用いられると説明するものである。前記製品はさらに薬用緩衝液を含有する第二容器を含み、前記薬用緩衝液は例えばリン酸塩緩衝の食塩水、リンガー溶液及びグルコース溶液を含む。さらには商業及び使用者の角度から見ると必要とされるその他の物質、即ちその他の緩衝液、希釈剤、濾過物、針及び注射器を含むことができる。また、前記製品は使用説明を有するプロトコルを含み、これは例えば前記組成物の使用者にプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)の組成物及び疾患の治療に伴うその他の薬物を患者に投与することを指示するものである。
【実施例】
【0081】
以下の実施例で使用されるヒトプラスミノーゲンは、ヒトドナーの血漿に由来し、以下の文書:KennethC Robbins,Louis Summaria,David Elwyn et al.Further Studies on the Purification and Characterization of Human Plasminogen and Plasmin.Journal of Biological Chemistry,1965,240(1):541-550;Summaria L,Spitz F,Arzadon L et al.Isolation and characterization of the affinity chromatography forms of human Glu- and Lys-plasminogens and plasmins.J Biol Chem.1976 Jun 25;251(12):3693-9;HAGAN JJ,ABLONDI FB,DE RENZO EC.Purification and biochemical properties of human plasminogen.J Biol Chem.1960 Apr;235:1005-10に記載された方法に基づき、プロセスを最適化し、ヒトドナー血漿から精製して得られた。ここでヒトプラスミノーゲン単体は98%を上回った。
【実施例1】
【0082】
実施例1は、プラスミノーゲンがヘキサノキオキサリルジヒドラゾン誘発脱髄モデルマウスにおける脳梁ミエリンの再生を促進することに関するものである。
8週齢のC57オスマウス20匹を取り、ランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で6匹、モデル群で14匹とした。ブランク対照群のマウスに通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与え、モデル群のマウスに0.2%ジシクロヘキサノンオキサリルジヒドラゾン(クプリゾン、cuprizone)モデル飼料(南通トロフィー飼料科技有限公司)を6週間与え、脱髄モデルマウスを誘発した
[1]。6週間後、モデル群のマウスを体重に応じて再びランダムにプラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群の2つの群に分け、各群で7匹とした。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS対照群マウスに同量のPBSを同様に投与し、14日間連続投与し、ブランク対照群のマウスには注射しなかった。投与期間中、すべてのマウスに通常の維持食を与えた。投与し始めた日を1日目とし、15日目に、マウスを解剖し、脳を4%パラホルムアルデヒドで固定し、脱水させて包埋した。固定後の組織サンプルをアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。脳組織の冠状切片の厚みは3μmであり、脱パラフィンさせてさらに再水和し、ミエリン染色液を用いてLFB染色を行った。アルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後に中性ゴムに封入させた。光学顕微鏡で観察し、写真を撮った。
その結果、ブランク対照群(
図1A)の脳梁のミエリンは基本的に正常であり、プラスミノーゲン投与群(
図1C)の脳梁のミエリン鞘の陽性染色(矢印でマーク)は、溶媒PBS投与対照群(
図1B)より有意に多く、しかもその差は統計的に有意であった(
図1D)(*はP<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンがヘキサノオキサリルジヒドラゾン誘発脱髄モデルマウスにおけるミエリンの再生を促進できることを示している。
【実施例2】
【0083】
実施例2は、プラスミノーゲンがヘキサノキオキサリルジヒドラゾン誘発脱髄モデルマウスにおける脳梁PLPの発現を促進することに関するものである。
8週齢のC57オスマウス20匹を取り、ランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で6匹、モデル群で14匹とした。ブランク対照群のマウスに通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与え、モデル群のマウスに0.2%ヘキサノンオキサリルジヒドラゾンモデル飼料(南通トロフィー飼料科技有限公司)を6週間与え、脱髄モデルマウスを誘発した
[1]。6週間後、モデル群のマウスを体重に応じて再びランダムにプラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群の2つの群に分け、各群で7匹とした。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS対照群マウスに同量のPBSを同様に投与し、3日間連続投与し、ブランク対照群のマウスには注射しなかった。投与期間中、すべてのマウスに通常の維持食を与えた。投与し始めた日を1日目とし、4日目に、マウスを解剖し、脳を4%パラホルムアルデヒドで固定し、脱水させて包埋した。固定後の組織サンプルをアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。脳組織の冠状切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。クエン酸で30分間修復し、室温で10分間冷却した後、水でやさしくすすいだ。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、PAPマーカーで組織を丸で囲んだ。10%のヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間ブロッキングした。時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄した。ウサギ抗プロテオリピドタンパク質(proteolipid protein,PLP)抗体(Abcam)を加えて4℃で一晩インキュベーションした後、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)の二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間ブルーイングさせ、PBSで1回洗浄した。勾配で脱水させて透徹にして封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
プロテオリピドタンパク質(proteolipid protein,PLP)は疎水性の高い膜タンパク質であり、中枢神経系で最も豊富なミエリンである
[2]。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図2C)における脳梁PLPの発現(矢印でマーク)は、溶媒PBS投与対照群(
図2B)より有意に高く、発現は、後者と比較してブランク対照群マウス(
図2A)に近かった。これは、プラスミノーゲンが脳梁におけるPLPの発現を促進し、ヘキサノオキサリルジヒドラゾン誘発脱髄モデルマウスにおけるミエリン再生を促進できることを示している。
【実施例3】
【0084】
実施例3は、プラスミノーゲンがヘキサノキオキサリルジヒドラゾン誘発脱髄モデルマウスの脳梁におけるニューロフィラメントタンパク質(NFP)の発現を促進することに関するものである。
8週齢のC57オスマウス20匹を取り、ランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で6匹、モデル群で14匹とした。ブランク対照群のマウスに通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与え、モデル群のマウスに0.2%ヘキサノンオキサリルジヒドラゾンモデル飼料(南通トロフィー飼料科技有限公司)を6週間与え、脱髄モデルマウスを誘発した
[1]。6週間後、モデル群のマウスを体重に応じて再びランダムにプラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群の2つの群に分け、各群で7匹とした。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS対照群マウスに同量のPBSを同様に投与し、14日間連続投与し、ブランク対照群のマウスには注射しなかった。投与期間中、すべてのマウスに通常の維持食を与えた。投与し始めた日を1日目とし、15日目に、マウスを解剖し、脳を4%パラホルムアルデヒドで固定し、脱水させて包埋した。固定後の組織サンプルをアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。脳組織の冠状切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。クエン酸で30分間修復し、室温で10分間冷却した後、水でやさしくすすいだ。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、PAPマーカーで組織を丸で囲んだ。10%のヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間ブロッキングした。時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄した。ウサギ抗NF抗体(Abcam、ab207176)を加えて4℃で一晩インキュベーションした後、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)の二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間ブルーイングさせ、PBSで1回洗浄した。勾配で脱水させて透徹にして封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
ニューロフィラメントタンパク質(Neurofilament protein,NFP)は、神経細胞軸索の中間フィラメントを構成するタンパク質である。その機能は、神経線維を容易に伸ばして破損を防ぐ弾力性を提供することであり、細胞骨格の維持、細胞形態の安定化、及び軸索輸送において非常に重要である
[3]。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図3C)のマウスの脳梁におけるNFPの発現(矢印でマーク)は、溶媒PBS投与対照群(
図3B)よりも有意に高く、その差は統計的に有意であり(*はP<0.05を表す)(
図3D)、溶媒PBS投与対照群と比較して、プラスミノーゲン投与群のNFPの発現はブランク対照群(
図3A)のそれにより近かった。これは、プラスミノーゲンがNFPの発現を促進し、それによって神経線維の再生を促進できることを示している。
【実施例4】
【0085】
実施例4は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの脳梁におけるニューロフィラメントタンパク質(NFP)発現の増加を促進することに関するものである。
C57メスマウス30匹を取り、モデリング前に体重を測定し、体重に応じて異常なマウスを除外した後、すべてのマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で22匹とした。群分けが完了した後、ブランク対照群に通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与え、モデル群のマウスに0.6%ジシクロヘキサノンオキサリルジヒドラゾン(CPZ)(製造元:上海源葉生物科技有限公司;カタログ番号:S30349)のモデリング飼料を42日間連続して与え、多発性硬化症モデルを誘発した
[1]。モデリングが完了した後、すべてのマウスをオープンフィールドテストでテストし、モデル群のマウスをテスト結果に従って群分けし、溶媒群で11匹、投与群で11匹とした。群分けが完了した後、すべてのマウスに投与を開始し、これを投与の1日目として記録し、ブランク対照群マウス及び溶媒群マウスに0.1ml/匹/日で溶媒を尾静脈注射により投与し、投与群マウスに1mg/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、35日間連続投与した。投与期間中、すべてのマウスに通常の維持食を与えた。36日目に、マウスを殺処分し、脳組織を採取して10%ホルムアルデヒド溶液で固定し、脱水させて包埋した。固定後の組織サンプルをアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。脳組織の冠状切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。クエン酸で30分間修復し、室温で10分間冷却した後、水でやさしくすすいだ。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、PAPマーカーで組織を丸で囲んだ。10%のヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間ブロッキングした。時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄した。ウサギ抗NFP抗体(Abcam、ab207176)を加えて4℃で一晩インキュベーションした後、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)の二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間ブルーイングさせ、PBSで1回洗浄した。勾配で脱水させて透徹にして封入させ、切片を光学顕微鏡下で100倍にて観察した。
その結果、ブランク対照群(
図4A)の脳梁は一定レベルのNFPを発現し(矢印でマーク)、溶媒群(
図4B)マウスの脳梁におけるNFPの発明は有意に減少し、投与群(
図4C)のマウスの脳梁におけるNFPの発現レベルは溶媒群マウスよりも有意に高く、しかもその差は統計的に有意であった(*はP<0.05を表す)(
図4D)。この結果は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの脳梁におけるNFPの発現を促進できることを示している。
【実施例5】
【0086】
実施例5は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの脳梁におけるリポタンパク質レベルの上昇を促進することに関するものである。
C57メスマウス30匹を取り、モデリング前に体重を測定し、体重に応じて異常なマウスを除外した後、すべてのマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で22匹とした。群分けが完了した後、ブランク対照群に通常の維持食を与え、モデル群のマウスに0.6%ジシクロヘキサノンオキサリルジヒドラゾン(CPZ)(製造元:上海源葉生物科技有限公司;カタログ番号:S30349)のモデリング飼料を42日間連続して与え、多発性硬化症モデルを誘発した
[1]。モデリングが完了した後、すべてのマウスをオープンフィールドテストでテストし、モデル群のマウスをテスト結果に従って群分けし、溶媒群で11匹、投与群で11匹とした。群分けが完了した後、すべてのマウスに投与を開始し、これを投与の1日目として記録し、ブランク対照群マウス及び溶媒群マウスに0.1ml/匹/日で溶媒を尾静脈注射により投与し、投与群マウスに1mg/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、35日間連続投与した。投与期間中、すべてのマウスに通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与えた。36日目に、マウスを殺処分し、脳組織を採取して10%ホルムアルデヒド溶液で固定し、脱水させて包埋した。固定後の組織サンプルをアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。脳組織の冠状切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和てから1回水で洗った。クエン酸で30分間修復し、室温で10分間冷却した後、水でやさしくすすいだ。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、PAPマーカーで組織を丸で囲んだ。10%のヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間ブロッキングした。時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄した。ウサギ抗PLP抗体(Abcam)を加えて4℃で一晩インキュベーションした後、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)の二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間ブルーイングさせ、PBSで1回洗浄した。勾配で脱水させて透徹にして封入させ、切片を光学顕微鏡下で100倍にて観察した。
その結果、ブランク対照群(
図5A)の脳梁は一定レベルのPLPを発現し(矢印でマーク)、溶媒群(
図5B)のマウスの脳梁におけるPLPの発現は有意に減少し、投与群(
図5C)のマウスの脳梁におけるPLPの発現レベルは溶媒群マウスのそれより有意に高かった。この結果は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの脳梁におけるPLPの発現を促進できることを示している。
【実施例6】
【0087】
実施例6は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの脳梁におけるMBPレベルの上昇を促進することに関するものである。
C57メスマウス30匹を取り、モデリング前に体重を測定し、体重に応じて異常なマウスを除外した後、すべてのマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で22匹とした。群分けが完了した後、ブランク対照群に通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与え、モデル群のマウスに0.6%ジシクロヘキサノンオキサリルジヒドラゾン(CPZ)(製造元:上海源葉生物科技有限公司;カタログ番号:S30349)のモデリング飼料を42日間連続して与え、多発性硬化症モデルを誘発した
[1]。モデリングが完了した後、すべてのマウスをオープンフィールドテストでテストし、モデル群のマウスをテスト結果に従って群分けし、溶媒群で11匹、投与群で11匹とした。群分けが完了した後、すべてのマウスに投与を開始し、これを投与の1日目として記録し、ブランク対照群マウス及び溶媒群マウスに0.1ml/匹/日で溶媒を尾静脈注射により投与し、投与群マウスに1mg/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、35日間連続投与した。投与期間中、すべてのマウスに通常の維持食を与えた。36日目に、マウスを殺処分し、脳組織を採取して10%ホルムアルデヒド溶液で固定し、脱水させて包埋した。固定後の組織サンプルをアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。脳組織の冠状切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。クエン酸で30分間修復し、室温で10分間冷却した後、水でやさしくすすいだ。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、PAPマーカーで組織を丸で囲んだ。10%のヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間ブロッキングした。時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄した。ウサギ抗ミエリン塩基性タンパク質(myelin basic protein,MBP)抗体(Abcam)を加えて4℃で一晩インキュベーションした後、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)の二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間ブルーイングさせ、PBSで1回洗浄した。勾配で脱水させて透徹にして封入させ、切片を光学顕微鏡下で100倍にて観察した。
ミエリン塩基性タンパク質(MBP)は、脊椎動物の中枢神経系のオリゴデンドロサイトと末梢神経系のシュワン細胞によって合成される強力な塩基性膜タンパク質であり、さまざまな塩基性アミノ酸を含んでいる。
その結果、ブランク対照群(
図6A)の脳梁は一定レベルのMBPを発現し(矢印でマーク)、投与群(
図6C)のマウスの脳梁のMBPは溶媒群(
図6B)のマウスよりも有意に高く、しかも統計学的な差は有意に近かった(P=0.063)(
図6D)。この結果は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの脳梁におけるMBPレベルの上昇を促進できることを示している。
【実施例7】
【0088】
実施例7は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの海馬損傷の炎症修復を促進することに関するものである。
C57メスマウス30匹を取り、モデリング前に体重を測定し、体重に応じて異常なマウスを除外した後、すべてのマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で22匹とした。群分けが完了した後、ブランク対照群に通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与え、モデル群のマウスに0.6%ジシクロヘキサノンオキサリルジヒドラゾン(CPZ)(製造元:上海源葉生物科技有限公司;カタログ番号:S30349)のモデリング飼料を42日間連続して与え、多発性硬化症モデルを誘発した
[1]。モデリングが完了した後、すべてのマウスをオープンフィールドテストでテストし、モデル群のマウスをテスト結果に従って群分けし、溶媒群で11匹、投与群で11匹とした。群分けが完了した後、すべてのマウスに投与を開始し、これを投与の1日目として記録し、ブランク対照群マウス及び溶媒群マウスに0.1ml/匹/日で溶媒を尾静脈注射により投与し、投与群マウスに1mg/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、35日間連続投与した。投与期間中、すべてのマウスに通常の維持食を与えた。36日目に、マウスを殺処分し、脳組織を採取して10%ホルムアルデヒド溶液で固定し、脱水させて包埋した。固定後の組織サンプルをアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。脳組織の冠状切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和てから1回水で洗った。クエン酸で30分間修復し、室温で10分間冷却した後、水でやさしくすすいだ。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、PAPマーカーで組織を丸で囲んだ。10%のヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間ブロッキングした。時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄した。ウサギ抗イオン化カルシウム結合アダプタータンパク質-1(Ionized calcium binding adaptor molecule-1,Iba-1)抗体(Abcam、ab178847)を加えて4℃で一晩インキュベーションした後、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)の二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間ブルーイングさせ、PBSで1回洗浄した。勾配で脱水させて透徹にして封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察して写真を撮った。撮った写真に対してImaging-Proソフトウェアを使用して陽性染色デンシトメトリー分析をした。
イオン化カルシウム結合アダプタータンパク質-1(Ionized calcium binding adaptor molecule-1,Iba-1)は、中枢神経系のミクログリア表面マーカーである。中枢神経系の免疫細胞として、ミクログリアは、その病変または損傷時に神経障害を素早く感知して活性化される。活性化されたミクログリアは、数と形状が大幅に変化し、損傷部位に移動し、死細胞の食作用や炎症誘発性サイトカインの産生増加など、さまざまな機能を果たす
[4]。
その結果、ブランク対照群(
図7A)のマウスの海馬には一定量のミクログリアが存在し(矢印でマーク)、溶媒群(
図7B)のマウスの海馬のミクログリア量は有意に増加し、投与群のマウスの海馬におけるミクログリアの数は溶媒群(
図7C)よりも有意に高く、しかもその差は統計学的に有意(
図7D)であった(*はP<0.05、***はP<0.001を表す)。これは、プラスミノーゲンが、多発性硬化症モデルマウスの海馬損傷の炎症修復を促進できることを示している。
【実施例8】
【0089】
実施例8は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの海馬におけるBDNFレベルの上昇を促進することに関するものである。
C57メスマウス30匹を取り、モデリング前に体重を測定し、体重に応じて異常なマウスを除外した後、すべてのマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で22匹とした。群分けが完了した後、ブランク対照群に通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与え、モデル群のマウスに0.6%ジシクロヘキサノンオキサリルジヒドラゾン(CPZ)(製造元:上海源葉生物科技有限公司;カタログ番号:S30349)のモデリング飼料を42日間連続して与え、多発性硬化症モデルを誘発した
[1]。モデリングが完了した後、すべてのマウスをオープンフィールドテストでテストし、モデル群のマウスをテスト結果に従って群分けし、溶媒群で11匹、投与群で11匹とした。群分けが完了した後、すべてのマウスに投与を開始し、これを投与の1日目として記録し、ブランク対照群マウス及び溶媒群マウスに0.1ml/匹/日で溶媒を尾静脈注射により投与し、投与群マウスに1mg/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、35日間連続投与した。投与期間中、すべてのマウスに通常の維持食を与えた。36日目に、マウスを殺処分し、脳組織を採取して10%ホルムアルデヒド溶液で固定し、脱水させて包埋した。固定後の組織サンプルをアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。脳組織の冠状切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。クエン酸で30分間修復し、室温で10分間冷却した後、水でやさしくすすいだ。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、PAPマーカーで組織を丸で囲んだ。10%のヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間ブロッキングした。時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄した。ウサギ抗脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor,BDNF)抗体(BosterBio,PB9075)を加えて4℃で一晩インキュベーションした後、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)の二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間ブルーイングさせ、PBSで1回洗浄した。勾配で脱水させて透徹にして封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察して写真を撮った。撮った写真に対してImaging-Proソフトウェアを使用して陽性染色デンシトメトリー分析をした。
成熟した脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor,BDNF)及びその受容体は、中枢神経系に広く分布しており、中枢神経系の発達中のニューロンの生存、分化、成長、発達に重要な役割を果たし、ニューロンが損傷を受けて死滅することを防ぎ、ニューロンの病理学的状態を改善し、損傷したニューロンの再生や分化などの生物学的効果を促進することができ、成熟した中枢神経系および末梢神経系におけるニューロンの生存と正常な生理学的機能に必要である
[5]。
その結果、ブランク対照群(
図8A)のマウスの海馬には一定レベルのBDNFがあり(矢印でマーク)、溶媒群(
図8B)のマウスの海馬のBDNFレベルは増加し、投与群のマウスの海馬におけるBDNFレベルは溶媒群(
図8C)よりも有意に高く、しかもその統計的な差は有意差に近かった(
図8D)(P=0.095)。これは、プラスミノーゲンが、多発性硬化症モデルマウスの海馬におけるBDNFレベルの上昇を促進できることを示している。
【実施例9】
【0090】
実施例9は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスにおける海馬アストロサイトの活性増加を促進することに関するものである。
C57メスマウス30匹を取り、モデリング前に体重を測定し、体重に応じて異常なマウスを除外した後、すべてのマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で22匹とした。群分けが完了した後、ブランク対照群に通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与え、モデル群のマウスに0.6%ジシクロヘキサノンオキサリルジヒドラゾン(CPZ)(製造元:上海源葉生物科技有限公司;カタログ番号:S30349)のモデリング飼料を42日間連続して与え、多発性硬化症モデルを誘発した
[1]。モデリングが完了した後、すべてのマウスをオープンフィールドテストでテストし、モデル群のマウスをテスト結果に従って群分けし、溶媒群で11匹、投与群で11匹とした。群分けが完了した後、すべてのマウスに投与を開始し、これを投与の1日目として記録し、ブランク対照群マウス及び溶媒群マウスに0.1ml/匹/日で溶媒を尾静脈注射により投与し、投与群マウスに1mg/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、35日間連続投与した。投与期間中、すべてのマウスに通常の維持食を与えた。36日目に、マウスを殺処分し、脳組織を採取して10%ホルムアルデヒド溶液で固定し、脱水させて包埋した。固定後の組織サンプルをアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。脳組織の冠状切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和てから1回水で洗った。クエン酸で30分間修復し、室温で10分間冷却した後、水でやさしくすすいだ。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、PAPマーカーで組織を丸で囲んだ。10%のヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間ブロッキングした。時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄した。ウサギ抗グリア線維性酸性タンパク質(Glial fibrillary acidic protein,GFAP)抗体(Abcam、ab4648)を加えて4℃で一晩インキュベーションした後、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)の二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間ブルーイングさせ、PBSで1回洗浄した。勾配で脱水させて透徹にして封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察して写真を撮った。撮った写真に対してImaging-Proソフトウェアを使用して陽性染色デンシトメトリー分析をした。
グリア線維性酸性タンパク質(Glial fibrillary acidic protein,GFAP)は、細胞骨格に関与し、その引張強度を維持するアストロサイトの特徴的な中間径フィラメントタンパク質である
[6]。
その結果、ブランク対照群(
図9A)のマウスの海馬には一定レベルのGFAPがあり(矢印でマーク)、溶媒群(
図9B)のマウスの海馬のGFAPの発現は減少し、投与群のマウスの海馬におけるGFAPレベルは溶媒群(
図9C)よりも有意に高く、しかもその統計的な差は有意差に近かった(
図9D)(P=0.051)。これは、プラスミノーゲンが、多発性硬化症モデルマウスの海馬におけるGFAPの発現の増加を促進し、アストロサイト活性の上昇を促進できることを示している。
【実施例10】
【0091】
実施例10は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの抑うつ行動を緩和することに関するものである。
C57メスマウス30匹を取り、モデリング前に体重を測定し、体重に応じて異常なマウスを除外した後、すべてのマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で22匹とした。群分けが完了した後、ブランク対照群に通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与え、モデル群のマウスに0.6%ジシクロヘキサノンオキサリルジヒドラゾン(CPZ)(製造元:上海源葉生物科技有限公司;カタログ番号:S30349)のモデリング飼料を42日間連続して与え、多発性硬化症モデルを誘発した
[1]。モデリングが完了した後、すべてのマウスをオープンフィールドテストでテストし、モデル群のマウスをテスト結果に従って群分けし、溶媒群で11匹、投与群で11匹とした。群分けが完了した後、すべてのマウスに投与を開始し、これを投与の1日目として記録し、ブランク対照群マウス及び溶媒群マウスに0.1ml/匹/日で溶媒を尾静脈注射により投与し、投与群マウスに1mg/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、28日間連続投与した。投与期間中、すべてのマウスに通常の維持食を与えた。29日目にオープンフィールド実験を行った。
多発性硬化症の患者には、精神医学的症状はよく見られ、主にうつ病、イライラ、癇癪として現れ、一部の患者は、多幸感や興奮のように見えるが、無関心、無気力、強い泣き笑い、無反応、知能の低下、言語の繰り返し、疑い、及び迫害の妄想などとして現れることもある。また、記憶喪失や注意力障害などの認知機能障害も発生する可能性がある
[7]。
オープンフィールド実験
実験時、オープンフィールド(40×40×40cm)の底面中央にマウスを置き、撮影と計時を同時に行い、持続して5分間観察し、各マウスは3回の実験を行った。Smart Systemは、実験動物の行動を評価するための完全な使いやすいビデオ追跡システムである。軌跡、アクティビティ、特定の動作(回転、ストレッチ、摂食など)およびイベントを記録し、さまざまな分析パラメーターの計算を実行できる。この実験では、Smart3.0システムを使用して、マウスの動きを記録および分析した。パラメーターは、総移動距離、境界休憩時間率、中央ゾーンの平均移動速度、および境界の平均移動速度を含む。各実験では、匂いの好みを防ぐために70%のアルコールを使用してボックスを拭いた
[8]。
オープンフィールド実験の設計原理は、マウスの回避に基づいている。これは、マウスが開けた場所、未知の場所、潜在的に危険な場所を恐れているため、「壁に張り付く」性質を持っていることを指す。回避は、フィールドの周辺領域(4つのコーナーと4つの側面)でのマウスの活動によって評価された。回避を反映した周囲での活動時間から判断すると、時間が短縮することは、マウスがより「冒険的」な傾向にあることを示し、中央ゾーンでの活動時間が大幅に長くなることは、回避と不安(うつ病)のレベルが低いことを示す。
総移動距離は、オープンフィールド実験中の各領域でのマウスの総移動距離である。その結果、ブランク対照群のマウスには一定の総移動距離があり、溶媒群のマウスの総移動距離は有意に増加し、投与群のマウスの総移動距離は溶媒群のマウスよりも有意に小さく、その差は統計的に有意であり(*はP<0.05を示す)(
図10)、しかもブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの抑うつ行動を緩和できることを示している。
【実施例11】
【0092】
実施例11は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの抑うつ行動を緩和することに関するものである。
C57メスマウス30匹を取り、モデリング前に体重を測定し、体重に応じて異常なマウスを除外した後、すべてのマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で22匹とした。群分けが完了した後、ブランク対照群に通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与え、モデル群のマウスに0.6%ジシクロヘキサノンオキサリルジヒドラゾン(CPZ)(製造元:上海源葉生物科技有限公司;カタログ番号:S30349)のモデリング飼料を42日間連続して与え、多発性硬化症モデルを誘発した
[1]。モデリングが完了した後、すべてのマウスをオープンフィールドテストでテストし、モデル群のマウスをテスト結果に従って群分けし、溶媒群で11匹、投与群で11匹とした。群分けが完了した後、すべてのマウスに投与を開始し、これを投与の1日目として記録し、ブランク対照群マウス及び溶媒群マウスに0.1ml/匹/日で溶媒を尾静脈注射により投与し、投与群マウスに1mg/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、28日間連続投与した。投与期間中、すべてのマウスに通常の維持食を与えた。29日目にオープンフィールド実験を行った。
境界ゾーンでの休憩時間の割合=境界ゾーンでの休憩時間/総観察時間である。その結果、ブランク対照群のマウスが境界ゾーンで一定の休憩時間の割合(約57.8%)を持っており、溶媒群のマウスの境界ゾーンでの休憩時間の割合は大幅に減少し、約49.3%であり、投与群のマウスは境界ゾーンでの休憩時間の割合は約58.4%であり、溶媒群よりも有意に大きく、その差は統計的に有意であり(*はP<0.05を表す)(
図11)、しかもブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの抑うつ行動をある程度緩和できることを示している。
【実施例12】
【0093】
実施例12は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの社会的記憶を改善することに関するものである。
C57メスマウス30匹を取り、モデリング前に体重を測定し、体重に応じて異常なマウスを除外した後、すべてのマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で22匹とした。群分けが完了した後、ブランク対照群に通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与え、モデル群のマウスに0.6%ジシクロヘキサノンオキサリルジヒドラゾン(CPZ)(製造元:上海源葉生物科技有限公司;カタログ番号:S30349)のモデリング飼料を42日間連続して与え、多発性硬化症モデルを誘発した
[1]。モデリングが完了した後、すべてのマウスをオープンフィールドテストでテストし、モデル群のマウスをテスト結果に従って群分けし、溶媒群で11匹、投与群で11匹とした。群分けが完了した後、すべてのマウスに投与を開始し、これを投与の1日目として記録し、ブランク対照群マウス及び溶媒群マウスに0.1ml/匹/日で溶媒を尾静脈注射により投与し、投与群マウスに1mg/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、34日間連続投与した。投与期間中、すべてのマウスに通常の維持食を与えた。35日目に3ボックスの社会的テスト実験を行った。
3ボックス実験の開始前に、環境に適応させるようにマウスを行動試験室に30分間入れた。3つのボックスを透明なガラス樹脂板で隔て、試験マウスを中央のボックスに5分間入れて適応させ、ストレンジャーマウス1を左または右のボックスの金属製ケージにランダムに入れ、もう一方のボックスの金属ケージは空にした。ボックスを隔てるガラス樹脂板を取り外して、試験マウスが3つのボックス内で10分間自由に移動できるようにした。すぐに撮影を開始し、関連するパラメーターを記録した。第1段階:1)実験マウスとストレンジャーマウス1または空の金属製ケージとの直接接触の回数及び持続時間を記録した。金属製ケージの周囲3~5cmを接触範囲と定義する。2)実験マウスが各ボックスに入った回数及び持続期間を記録した。マウスは、頭と足がボックスに入ったときにそのボックスの中にいると見なされる。第2段階:第2段階の実験では、2番目のストレンジャーマウス(ストレンジャーマウス2)を空の金属ケージに入れ、10分間記録し、実験マウスとストレンジャーマウス1及びストレンジャーマウス2との接触時間及び回数を記録した。正常なマウスは社会的行動を示し、1段階の実験では、正常なマウスは通常、ストレンジャーマウス1との接触の時間及び回数が、空の金属ケージとの接触の時間及び回数よりもはるかに多い。同時に、マウスは記憶力と「新しいものを喜び、古いものを嫌う」という特徴も持っているため、第2段階では、マウスは、10分間交流したことのあるストレンジャーマウス1よりも、一度もあったことのないストレンジャーマウス1と交流することを好む。
休憩時間の割合=休憩時間/総観察時間である。3ボックス社会的試験実験の第2段階の結果により明らかに、ブランク対照群のマウスは、ストレンジャーマウス2の接触範囲内で一定の割合の休憩時間を持っており、約13.7%であり、溶媒群では、約10.6%と有意に減少し、投与群は約16.1%であり、溶媒群よりも有意に高く、しかもその統計学的な差は有意に近かった(P=0.075)(
図12)。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの社会的記憶を改善できることを示している。
【実施例13】
【0094】
実施例13は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルラットの抑うつ行動を緩和することに関するものである。
3週齢のオスラット26匹を取り、モデリング前に体重を測定し、体重に応じて異常なラットを除外した後、すべてのラットをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で18匹とした。群分けが完了した後、ブランク対照群に通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与え、モデル群に0.6%CPZのモデリング飼料を与え、14日間モデリングして多発性硬化症モデルを確立した
[9]。同時に、すべてのラットに通常の維持食を与え始めた。モデリングが完了した後、すべてのラットをオープンフィールドテストでテストし、モデル群のラットをテスト結果に従って群分けし、溶媒群で7匹、投与群で8匹とした。群分けが完了した後、溶媒群及び投与群のラットに投与を開始し、これを投与の1日目として記録し、投与群のラットに35mg/kgでプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒群のラットに3.5ml/kgで溶媒を尾静脈注射により投与し、6日間連続投与し、ブランク対照群のラットには投与しなかった。投与の7日目にオープンフィールド実験を行った。
境界ゾーンの移動距離は、オープンフィールド実験の試験時間内における境界ゾーンの移動軌跡の長さである。境界ゾーンの移動距離の割合=境界ゾーンの移動距離/境界ゾーンと中央ゾーンの移動距離の合計である。その結果、ブランク対照群は境界ゾーンで一定の割合の移動距離を持っており、約91.1%であり、溶媒群は約93.6%と有意に増加し、投与群は約88.1%であり、溶媒群よりも有意に低く、しかもその差は統計的に有意であった(*はP<0.05を表す)(
図13)。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルラットの抑うつ行動を緩和できることを示している。
【実施例14】
【0095】
実施例14は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルラットの不安行動を緩和することに関するものである。
3週齢のオスラット26匹を取り、モデリング前に体重を測定し、体重に応じて異常なラットを除外した後、すべてのラットをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で18匹とした。群分けが完了した後、ブランク対照群に通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与え、モデル群に0.6%CPZのモデリング飼料を与え、14日間モデリングして多発性硬化症モデルを確立した
[9]。同時に、すべてのラットに通常の維持食を与え始めた。モデリングが完了した後、すべてのラットをオープンフィールドテストでテストし、モデル群のラットをテスト結果に従って群分けし、溶媒群で7匹、投与群で8匹とした。群分けが完了した後、溶媒群及び投与群のラットに投与を開始し、これを投与の1日目として記録し、投与群のラットに35mg/kgでプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒群のラットに3.5ml/kgで溶媒を尾静脈注射により投与し、6日間連続投与し、ブランク対照群のラットには投与しなかった。投与の7日目にオープンフィールド実験を行った。
中心ゾーンの移動距離は、オープンフィールド実験の試験時間内における中心ゾーンの移動軌跡の長さである。中心ゾーンの移動距離の割合=中心ゾーンの移動距離/境界ゾーンと中央ゾーンの移動距離の合計である。その結果、ブランク対照群は中心ゾーンで一定の割合の距離を持っており、約8.9%であり、溶媒群は約6.4%と有意に低下し、投与群は約11.9%であり、溶媒群よりも有意に高く、しかもその差は統計的に有意であった(*はP<0.05を表す)(
図14)。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルラットの不安行動を緩和できることを示している。
【実施例15】
【0096】
実施例15は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの不安や抑うつ行動を緩和することに関するものである。
C57メスマウス30匹を取り、モデリング前に体重を測定し、体重に応じて異常なマウスを除外した後、すべてのマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で22匹とした。群分けが完了した後、ブランク対照群に通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与え、モデル群に0.6%ジシクロヘキサノンオキサリルジヒドラゾン(CPZ)(製造元:上海源葉生物科技有限公司;カタログ番号:S30349)のモデリング飼料を42日間連続して与え、多発性硬化症モデルを誘発した
[1]。モデリングが完了した後、すべてのマウスをオープンフィールドテストでテストし、モデル群のマウスをテスト結果に従って群分けし、溶媒群で11匹、投与群で11匹とした。群分けが完了した後、すべてのマウスに投与を開始し、これを投与の1日目として記録し、ブランク対照群マウス及び溶媒群マウスに0.1ml/匹/日で溶媒を尾静脈注射により投与し、投与群マウスに1mg/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、20日間連続投与した。投与期間中、すべてのマウスに通常の維持食を与えた。21日目に高架式十字迷路実験を行った。
高架式十字迷路は、動物の新しい異なる環境の探索特性及び高くぶら下げるオープンアームへの恐怖を利用して相反する行動を形成し、動物の不安状態を調べる。高架十字迷路には1対のオープンアームと1対のクローズアームがある。齧歯類は暗所嗜好のためクローズアームで移動する傾向があるが、好奇心と探索のためにオープンアームで移動し、新しい刺激に直面すると、動物は探索する衝動と恐怖を同時に感じる。これは、探索と回避の相反する行動を引き起こし、結果として不安が生じる。抗不安薬は、オープンアームに入る回数と時間を大幅に増やすことができる。十字迷路は地面から高く、崖の上に立っているのと同じであるため、被験者に恐怖と不安を感じさせる。高架式十字迷路は、新薬の開発/スクリーニング/評価、薬理学、毒物学、予防医学、神経生物学、動物心理学、行動生物学などの複数の分野における科学研究およびコンピューター支援教育などの分野で広く使用されており、医学部や科学研究機関での行動研究、特に不安やうつ病の研究における古典的な実験である。
実験の開始時に、マウスをクローズアームに向かって中央のグリッドから迷路に入れ、5分間の活動を記録した。観察指標は、オープンアームエントリの回数(2つの前足がアームに入る必要がある)、オープンアームの滞留時間、クローズアームエントリの回数、およびクローズアームの滞留時間を含む。オープンアームの滞留時間の割合、オープンアームエントリ時間の割合、および高架式十字迷路のエントリの総数を計算した。実験が終わった後、マウスを取り出し、両腕をきれいにし、アルコールをスプレーして臭いを取り除いた。最後に、動物行動学ソフトウェアを使用してデータ分析を行った。
オープンアームエントリの割合=オープンアームエントリの総数/オープンアームエントリとクローズアームエントリの合計である。その結果、ブランク対照群のマウスは一定のオープンアームエントリ率を有し、約14.9%であり、溶媒群のマウスのオープンアームエントリ率は、約23.0%と有意に増加し、投与群のマウスのオープンアームエントリ率は約14.5%であり、溶媒群よりも有意に少なく、その差は統計学的に有意であり(P=0.015)(
図15)、しかもブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの不安行動をある程度緩和できることを示している。
【実施例16】
【0097】
実施例16は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの不安行動を緩和することに関するものである。
C57メスマウス30匹を取り、モデリング前に体重を測定し、体重に応じて異常なマウスを除外した後、すべてのマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で22匹とした。群分けが完了した後、ブランク対照群に通常の維持食を与え、モデル群に0.6%ジシクロヘキサノンオキサリルジヒドラゾン(CPZ)(製造元:上海源葉生物科技有限公司;カタログ番号:S30349)のモデリング飼料を42日間連続して与え、多発性硬化症モデルを誘発した
[1]。モデリングが完了した後、すべてのマウスをオープンフィールドテストでテストし、モデル群のマウスをテスト結果に従って群分けし、溶媒群で11匹、投与群で11匹とした。群分けが完了した後、すべてのマウスに投与を開始し、これを投与の1日目として記録し、ブランク対照群マウス及び溶媒群マウスに0.1ml/匹/日で溶媒を尾静脈注射により投与し、投与群マウスに1mg/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、20日間連続投与した。投与期間中、すべてのマウスに通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与えた。21日目に高架式十字迷路実験を行った。
クローズアームエントリの割合=クローズアームエントリの総数/オープンアームエントリとクローズアームエントリの合計である。その結果、ブランク対照群のマウスは一定のクローズアームエントリ率を有し、約34.4%であり、溶媒群のマウスのクローズアームエントリ率は、約28.1%と有意に低下し、投与群のマウスのクローズアームエントリ率は約37.1%であり、溶媒群よりも有意に大きく、その差は統計学的に有意であり(P=0.007)(
図16)、しかもブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの不安や抑うつ行動をある程度緩和できることを示している。
【実施例17】
【0098】
実施例17は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの不安や抑うつ行動を緩和することに関するものである。
C57メスマウス30匹を取り、モデリング前に体重を測定し、体重に応じて異常なマウスを除外した後、すべてのマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で22匹とした。群分けが完了した後、ブランク対照群に通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与え、モデル群に0.6%ジシクロヘキサノンオキサリルジヒドラゾン(CPZ)(製造元:上海源葉生物科技有限公司;カタログ番号:S30349)のモデリング飼料を42日間連続して与え、多発性硬化症モデルを誘発した
[1]。モデリングが完了した後、すべてのマウスをオープンフィールドテストでテストし、モデル群のマウスをテスト結果に従って群分けし、溶媒群で11匹、投与群で11匹とした。群分けが完了した後、すべてのマウスに投与を開始し、これを投与の1日目として記録し、ブランク対照群マウス及び溶媒群マウスに0.1ml/匹/日で溶媒を尾静脈注射により投与し、投与群マウスに1mg/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、27日間連続投与した。投与期間中、すべてのマウスに通常の維持食を与えた。28日目に高架式十字迷路実験を行った。
クローズアームの移動の合計距離は、高架式十字迷路実験の試験時間中にマウスのクローズアームの移動の合計距離である。その結果、ブランク対照群のマウスは一定のクローズアーム移動の合計距離を有し、溶媒群のマウスのクローズアーム移動の合計距離が有意に増加し、投与群のマウスのクローズアーム移動の合計距離は溶媒群よりも有意に少なく、その差は統計学的に有意であり(*はP<0.05を表す)(
図17)、ブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの不安や抑うつ行動をある程度緩和できることを示している。
【実施例18】
【0099】
実施例18は、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの不安や抑うつ行動を緩和することに関するものである。
C57メスマウス30匹を取り、モデリング前に体重を測定し、体重に応じて異常なマウスを除外した後、すべてのマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で22匹とした。群分けが完了した後、ブランク対照群に通常の維持食(北京科澳協力有限公司から購入)を与え、モデル群に0.6%ジシクロヘキサノンオキサリルジヒドラゾン(CPZ)(製造元:上海源葉生物科技有限公司;カタログ番号:S30349)のモデリング飼料を42日間連続して与え、多発性硬化症モデルを誘発した
[1]。モデリングが完了した後、すべてのマウスをオープンフィールドテストでテストし、モデル群のマウスをテスト結果に従って群分けし、溶媒群で11匹、投与群で11匹とした。群分けが完了した後、すべてのマウスに投与を開始し、これを投与の1日目として記録し、ブランク対照群マウス及び溶媒群マウスに0.1ml/匹/日で溶媒を尾静脈注射により投与し、投与群マウスに1mg/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、27日間連続投与した。投与期間中、すべてのマウスに通常の維持食を与えた。28日目に高架式十字迷路実験を行った。
クローズアーム休憩時間の割合=クローズアーム休憩時間/クローズアーム移動時間とクローズアーム休憩時間の合計である。その結果、ブランク対照群のマウスは一定のクローズアーム休憩時間の割合を有し、約51.8%であり、溶媒群のマウスのクローズアーム休憩時間の割合は36.8%と有意に低下し、投与群のマウスのクローズアーム休憩時間の割合は約50.1%であり、溶媒群よりも有意に大きく、その差は統計学的に有意であり(*はP<0.05を表す)(
図18)、ブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンが多発性硬化症モデルマウスの不安や抑うつ行動をある程度緩和できることを示している。
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58(1-2):40.
配列表
配列1:
gagcctctggatgactatgtgaatacccagggggcttcactgttcagtgtcactaagaagcagctgggagcaggaagtatagaagaatgtgcagcaaaatgtgaggaggacgaagaattcacctgcagggcattccaatatcacagtaaagagcaacaatgtgtgataatggctgaaaacaggaagtcctccataatcattaggatgagagatgtagttttatttgaaaagaaagtgtatctctcagagtgcaagactgggaatggaaagaactacagagggacgatgtccaaaacaaaaaatggcatcacctgtcaaaaatggagttccacttctccccacagacctagattctcacctgctacacacccctcagagggactggaggagaactactgcaggaatccagacaacgatccgcaggggccctggtgctatactactgatccagaaaagagatatgactactgcgacattcttgagtgtgaagaggaatgtatgcattgcagtggagaaaactatgacggcaaaatttccaagaccatgtctggactggaatgccaggcctgggactctcagagcccacacgctcatggatacattccttccaaatttccaaacaagaacctgaagaagaattactgtcgtaaccccgatagggagctgcggccttggtgtttcaccaccgaccccaacaagcgctgggaactttgtgacatcccccgctgcacaacacctccaccatcttctggtcccacctaccagtgtctgaagggaacaggtgaaaactatcgcgggaatgtggctgttaccgtgtccgggcacacctgtcagcactggagtgcacagacccctcacacacataacaggacaccagaaaacttcccctgcaaaaatttggatgaaaactactgccgcaatcctgacggaaaaagggccccatggtgccatacaaccaacagccaagtgcggtgggagtactgtaagataccgtcctgtgactcctccccagtatccacggaacaattggctcccacagcaccacctgagctaacccctgtggtccaggactgctaccatggtgatggacagagctaccgaggcacatcctccaccaccaccacaggaaagaagtgtcagtcttggtcatctatgacaccacaccggcaccagaagaccccagaaaactacccaaatgctggcctgacaatgaactactgcaggaatccagatgccgataaaggcccctggtgttttaccacagaccccagcgtcaggtgggagtactgcaacctgaaaaaatgctcaggaacagaagcgagtgttgtagcacctccgcctgttgtcctgcttccagatgtagagactccttccgaagaagactgtatgtttgggaatgggaaaggataccgaggcaagagggcgaccactgttactgggacgccatgccaggactgggctgcccaggagccccatagacacagcattttcactccagagacaaatccacgggcgggtctggaaaaaaattactgccgtaaccctgatggtgatgtaggtggtccctggtgctacacgacaaatccaagaaaactttacgactactgtgatgtccctcagtgtgcggccccttcatttgattgtgggaagcctcaagtggagccgaagaaatgtcctggaagggttgtaggggggtgtgtggcccacccacattcctggccctggcaagtcagtcttagaacaaggtttggaatgcacttctgtggaggcaccttgatatccccagagtgggtgttgactgctgcccactgcttggagaagtccccaaggccttcatcctacaaggtcatcctgggtgcacaccaagaagtgaatctcgaaccgcatgttcaggaaatagaagtgtctaggctgttcttggagcccacacgaaaagatattgccttgctaaagctaagcagtcctgccgtcatcactgacaaagtaatcccagcttgtctgccatccccaaattatgtggtcgctgaccggaccgaatgtttcatcactggctggggagaaacccaaggtacttttggagctggccttctcaaggaagcccagctccctgtgattgagaataaagtgtgcaatcgctatgagtttctgaatggaagagtccaatccaccgaactctgtgctgggcatttggccggaggcactgacagttgccagggtgacagtggaggtcctctggtttgcttcgagaaggacaaatacattttacaaggagtcacttcttggggtcttggctgtgcacgccccaataagcctggtgtctatgttcgtgtttcaaggtttgttacttggattgagggagtgatgagaaataattaa
配列2:
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配列3:
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配列4:
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配列5:
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