(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】センサ感応性層を備えるダミー車両
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
G01M17/007 Z
(21)【出願番号】P 2021562935
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2020065209
(87)【国際公開番号】W WO2020245112
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】102019115016.7
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515345366
【氏名又は名称】4アクティブシステムズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハフェルナー、ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ウィマー、トーマス
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/007459(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3204691(JP,U)
【文献】特開2017-203770(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03306430(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0356674(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00 - 17/10
G01M 7/00 - 7/08
G09B 9/00 - 9/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転支援システム用の試験を実施するためのダミー車
両において、前記ダミー車
両は、
シミュレートされるべき車両の一部分を写し取る車両要
素を備え、
前記車両要
素は、カバー構
造を形成し、
前記カバー構造は、外
層と内
層とを含み、
前記外
層は、前記カバー構
造内で前記内
層よりもさらに外側に配置されていて、
前記外
層は、前記運転支援システム
の各温度センサまたはレーダーセンサのセンサ信号に対して透過性であり、
前記内
層は、前記運転支援システム
の前記各温度センサまたはレーダーセンサのセンサ信号に対してセンサ感応性で
あり、
前記外層の厚さと前記内層の厚さは、内部表面の面積が外部表面の少なくとも70%を有するように形成されている、
運転支援システム用の試験を実施するためのダミー車
両。
【請求項2】
前記カバー構
造は、内部容量を有する中空体を形成する、請求項1に記載のダミー車
両。
【請求項3】
前記カバー構造は、充填材料を有し、前記充填材料の周りに内
層が設けられている、請求項1に記載のダミー車
両。
【請求項4】
前記内
層は、熱反射性材料を有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載のダミー車
両。
【請求項5】
前記内
層は、加熱可能である、請求項1から4までのいずれか一項に記載のダミー車
両。
【請求項6】
前記内
層は、レーダー反射性材料を有する、請求項1から5までのいずれか一項に記載のダミー車
両。
【請求項7】
前記外
層は、レーダー透過性である、請求項1から6までのいずれか一項に記載のダミー車
両。
【請求項8】
前記外
層は、発泡材料からなる、請求項1から7までのいずれか一項に記載のダミー車
両。
【請求項9】
前記外
層は、電気伝導性でない、請求項1から8までのいずれか一項に記載のダミー車
両。
【請求項10】
前記外
層の厚さは、0.1cmまたは0.5cm~30cm、特に2cm~15cm、特に5cm~10cmである、請求項1か
ら9までのいずれか一項に記載のダミー車
両。
【請求項11】
前記内
層は、箔として形成されている、請求項1か
ら10までのいずれか一項に記載のダミー車
両。
【請求項12】
前記内
層は、電気伝導性である、請求項1か
ら11までのいずれか一項に記載のダミー車
両。
【請求項13】
前記内
層は、金属層を形成する、請求項1から6までのいずれか一項に記載のダミー車
両。
【請求項14】
前記外
層は、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン材料(ポリエチレン、ポリプロピレン)またはポリウレタンから形成されている、請求項1か
ら13までのいずれか一項に記載のダミー車
両。
【請求項15】
前記外
層上に、光学層、特に光学箔が被着されている、請求項1か
ら14までのいずれか一項に記載のダミー車
両。
【請求項16】
前記光学層は、ポリ塩化ビニルまたはポリウレタンからなる、請求
項15に記載のダミー車
両。
【請求項17】
地面上を走行可能なプラットフォームに連結するための連結要
素をさらに備える、請求項1か
ら16までのいずれか一項に記載のダミー車
両。
【請求項18】
レーダー反射性層を含まない別の車両要
素をさらに備える、
請求項2に記載のダミー車
両。
【請求項19】
前記別の車両要
素は、シミュレートされるべき車両の別の部分の窓領域を形成する、
請求
項18に記載のダミー車
両。
【請求項20】
前記車両要
素と前記別の車両要
素は、一体式に形成されている、
請求
項18また
は19に記載のダミー車
両。
【請求項21】
前記別の車両要
素は、別のカバー構造を有し、前記別のカバー構造は、前記車両要
素の前記カバー構造と一緒に、前記中空
体を形成する、
請求
項18から20までのいずれか一項に記載のダミー車
両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援システム用の試験を実施するためのダミー車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の運転支援システムの試験のために、頻繁に、例えばオートバイダミーまたは自動車ダミーのような車両ダミーが使用される。このような車両ダミーは、少なくとも一つの側面または特徴において、車両ダミーがシミュレートすべき車両に類似している。例えば、車両ダミーは、シミュレートされるべき対象に類似する幾何学形状または類似するサイズを有することができる。
【0003】
運転支援システムの多くの試験では、衝突または衝突に近い状況は避けることはできず、それどころかしばしば、極端な状況を調査するかまたは運転支援システムをトレーニングするために望ましい。車両ダミーは、衝突後でも、できる限り破壊がないままであるべきで、したがって、車両ダミーは、多くの試験進行のために使用可能であるべきである。さらに、車両ダミーは、製造が安価であるが、シミュレートされるべき車両を現実に近いように模倣するべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、簡単な構造であってもシミュレートされるべき車両を現実に近いように模倣する車両ダミーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、独立請求項による運転支援システム用の試験を実施するための車両ダミーにより解決される。
【0006】
本発明の第一の態様によると、運転支援システム用の試験を実施するためのダミー車両が提供される。ダミー車両は、シミュレートされるべき車両の一部分を写し取る車両要素を有する。車両要素は、カバー構造を形成し、このカバー構造は、外層と内層とを有する。外層は、カバー構造内で、内層よりも(車両要素の周囲環境の方向に向かって)さらに外側に配置されている。外層は、運転支援システムのセンサのセンサ信号に対して透過性であり、内層は、運転支援システムのセンサのセンサ信号に対してセンサ感応性であるように形成されている。
【0007】
相応して、本発明は、別の態様によると、先に記載されたダミー車両を用いた運転支援システム用の試験を実施する方法に関する。
【0008】
運転支援システムは、車両運転時に、車両、例えば自動車の運転者を支援するシステムを言う。運転支援システムは、車両運転を完全にまたはほぼ完全に自律システムが引き受ける自律型車両においても使用することができ、例えば人工知能により支援されるシステム、特に対応するコンピュータソフトウェアである。運転支援システムは、例えば、緊急ブレーキアシスタント、車線変更アシスタント、駐車アシスタント、間隔調節器、交通標識アシスタントまたは暗視アシスタントである。
【0009】
運転支援システムは、センサ、特にレーダーセンサまたは温度センサを備えていてよく、この運転支援システムによりセンサは周囲環境からセンサ信号を受信する。このような受信されたセンサ信号の評価によって、運転支援システムは、周囲環境の様相、特に周囲環境中の多様な対象、例えば他の車両の特性を認識することができる。この種の特性は、例えば他の車両の距離、幾何学的な大きさ、温度または速度であってよい。速度は、周囲環境に対して、例えば道路に対して、または運転支援システムを備えた車両に対して決定されてよい。対象は、全体速度または重心速度を有してよく、この対象の一部は、任意に相互にかつ重心運動に対して可動であってもよい。運転支援システムは、センサによって少なくとも部分的に受信されるために、周囲環境から特徴的に変化する信号の送信器、例えばレーダー波の送信器も備えていてよい。特に、外層を通過し、次いで内層によりもっぱら反射されるセンサ信号が放射されてよい。センサ信号は、この場合、レーダー波、ラジオ波またはマイクロ波、熱放射、光、X線または赤外線のような電磁放射線であってよい。
【0010】
運転支援システムの試験の際に、車両は、運転支援システムを装備していてよい。このように装備された車両を、試験コース上で所定の状況に直面させることができ、この場合、所定の状況に対する運転支援システムの反応を観察し、所定の基準に従って評価する。運転支援システムは、車両内に組み込まずに試験されてもよい。
【0011】
シミュレートされるべき車両は可動の車両を表す。車両として、例えば二輪車、特に自転車またはオートバイ、乗用車(Pkw)、トラック(Lkw)または運転支援システムによって検出されるべきその他の任意の車両であると解釈される。
【0012】
本発明によるダミー車両は、シミュレートされるべき車両を写し取る。特に、ダミー車両は、運転支援システムの、例えば温度センサまたはレーダーセンサのようなセンサにとって知覚可能または認識可能である。ダミー車両は、運転支援システムが組み込まれている車両の周囲環境内で動くことができる。
【0013】
本発明によるダミー車両は、少なくとも一つの車両要素または複数の多様な車両要素を有する。車両要素は、シミュレートされるべき車両の一部分を写し取る。車両要素は、例えばドアの部分、フレーム部分またはボディ部分を形成してよい。車両要素は、特にシミュレートされるべき車両の、例えば金属構造を有するかまたはレーダー波を反射する部分を写し取る。例えば、車両要素は、例えばドア、エンジンフードのような車体部分、または例えばエンジンブロックのような内部構造を形成する。
【0014】
車両要素は、特に外側構造または外層と、内側構造または内層とを有するカバー構造を有する。外層は、内層と比較して車両要素の周囲環境に向かって外側にある。内層および外層の他に、カバー構造は、さらに複数の別の層を有していてよい。例えば外層と内層との間にいくつかの層があってよい。したがって、内層は、外層から離間されて存在する。内層は、また外層の内側に直接固定されていてもよい。外層上のさらに外側に、別の層が取り付けられていてよく、相応して内側で内層に別の層が取り付けられていてよい。例示的な実施形態では、外層は、カバー構造の、車両要素の周囲環境と接触する層であってよい。内層は、カバー構造の、内側の内部空間と接触する層であってよい。
【0015】
外層は、特に、例えば弾性でかつ形状安定性である軽量の発泡材料から形成される。発泡材料は、特に、車両要素が自立性であるように形成されている。外層は、この場合、センサのセンサ信号に対して透過性である。換言すると、外層は、センサ信号に対してほぼ完全に透過性であるか、またはセンサ信号は、外層を通過する際に影響を受けない。特に、外層は、センサにより感知可能であるほどのセンサ信号の影響が生じないように形成されている。
【0016】
外層は、内層よりも頑丈であり、つまり剛性でかつ硬質に形成されている。したがって、外層は、一方で、車両要素の形状安定性に役立ち、他方で、特にダミー車両の衝突の際に、内層の保護に役立つ。
【0017】
車両要素がセンサに対して可視であるようにするために、外層に対して内側に、センサ感応性材料を有する内層が設けられる。内層は、特に、車両要素の形状安定性に寄与するのではなく、例えば柔軟性に形成することができる。内層は、例えば、センサ信号としての放射線、例えば温度放射線を放射することができる。よって、例えば、車両要素内に、センサ信号用の信号発生器、例えば熱源が配置されてよく、この場合、内層は、この熱放射線を外側に向かって放射する。よって、例えば、車両のエンジンブロックをシミュレートすることができる。あるいは、車両要素としての車体部分において、内層は、信号波に対して反射するように形成されていてよい。よって、内層は、例えばレーダー波反射性または別の電磁波に対して反射性に形成されてよい。したがって、センサ感応性とは、内層が放射線を発する層、放射線を吸収する層および/または放射線を反射する層を形成することを意味する。
【0018】
したがって、センサ透過性外層と、その内側にあるセンサ感応性内層との組合せにより、頑丈に形成されている、ダミー車両の軽量でかつ形状安定性の車両要素を提供することができるので、衝突時に敏感なセンサ感応性層は破壊されない。したがって、車両ダミーは、衝突試験に対して複数回使用することができる。
【0019】
例えば、従来の車両ダミーでは、レーダー反射性要素が、ダミー車両のアウターシェルの所定の位置に固定される。これは、他の車両との衝突時に、レーダー反射性要素の損傷を引き起こすことがあることにつながる。本発明によるカバー構造に基づき、内側にあるセンサ感応性またはレーダー反射性内層は、外層の衝突から保護される。とりわけ、関連相手、つまり試験されるべき車両またはその車両の搭乗者は保護される。それにより、敏感なまたは高価なセンサ感応性内層は、例えばより薄くまたは衝突安定性を低くすることができるので、より好ましいセンサ感応性材料を使用することができる。
【0020】
別の例示的な実施形態によると、カバー構造は、内部容量を有する中空体を形成する。
【0021】
別の例示的な実施形態によると、カバー構造は充填材料を有し、この充填材料の周囲に内層が設けられているかまたは延在する。内部容量は、例えば発泡材料または他の軽量の材料によって形成されていてよく、したがって安定性が高められてよい。センサ感応性内層は、この場合、充填材料に直接設けられていてよいか、または内層と充填材料との間に別の層が配置されてよい。
【0022】
別の例示的な実施形態によると、内層は、熱反射性材料を有する。
【0023】
別の例示的な実施形態によると、内層は加熱可能である。例えば、内層内にワイヤを延在させてよく、それにより抵抗加熱が行われる。さらに、内層は、温度調節媒体により加熱されてよい。
【0024】
別の例示的な実施形態によると、内層は、レーダー反射性材料を有する。内層は、例えば金属箔として形成されてよい。さらに、内層は、金属網目構造を有してよい。
【0025】
別の例示的な実施形態によると、外層は、レーダー透過性である。
【0026】
別の例示的な実施形態によると、外層は、発泡材料からなる。例えば、外層は、硬質発泡体または弾性発泡材料からなることができるので、形状安定性が僅かな重量で達成される。
【0027】
本発明の例示的な実施形態によると、外層は電気伝導性ではない。換言すると、材料は、電気絶縁性でありかつ相応して伝導性ではなくてよいので、レーダー波反射は、もっぱらレーダー反射性内層によって可能となる。
【0028】
別の例示的な実施形態によると、外層の厚さと内層の厚さは、内部表面の面積が、外部表面の少なくとも70%、特に外部表面の80%~90%を有するように形成されている。シミュレートされる車両の現実の部分と比較して、車両要素は、比較的僅かなレーダー反射性外部表面を有する、というのも、反射性内層が内側にあり、レーダー波透過性外層は放物線を反射しないためである。シミュレートされるべき車両の一部分が、本発明による車両要素と1:1のサイズ比で模倣される場合、シミュレートされるべき車両の部分のレーダー反射性外層の面積は、車両のレーダー反射性内層の面積よりも大きい。
【0029】
運転支援システム内のレーダーセンサの僅かな解像度に基づき、内層の内部表面の面積は、外層の外部表面の面積の70%であってよく、それにもかかわらず、レーダーセンサは、絶縁性車両の相応する部分として車両要素の正確な確認を提供することが判明した。したがって、車両要素の外部寸法を、シミュレートされるべき車両の部分と比較して高め、それによりこの部分の外面と同じ面積を実現する必要はない。先に記載された実施形態では、換言すると、車両要素の外部寸法は、レーダー反射性内層の僅かな面積に基づき運転支援システムの誤測定が生じることなく維持される。
【0030】
別の例示的な実施形態によると、外層の厚さは、約0.1cm(センチメートル)または0.5cm~30cm、特に2~15cm、特に5cm~10cmである。換言すると、外層の厚さは、例えば20cm未満、特に10cm未満または5cm未満である。
【0031】
別の例示的な実施形態によると、内層は、箔として形成されている。箔は、例えば、0.4cm未満、特に0.1cm未満の厚さを有してよい。
【0032】
別の例示的な実施形態によると、内層は電気伝導性である。
【0033】
別の例示的な実施形態によると、内層は、金属層である。例えば、内層は、金属箔として形成されていてよい。さらに、金属層は、金属ワイヤからなる網からなってよい。金属機器は、例えば伝導性でない材料からなるキャリアマトリックス内に埋め込まれていてよい。あるいは、相応する例示的な実施形態では、電気伝導性の特別な金属粒子が、キャリアマトリックス内に埋め込まれてよい。
【0034】
別の例示的な実施形態によると、外層は、プラスチック、特にポリ塩化ビニル、ポリオレフィン材料(ポリエチレン、ポリプロピレン)またはポリウレタンから形成されている。
【0035】
特に、外層は、発泡された材料から製造されてよい。外層の単位体積重量または嵩密度は、例えば15~150kg/m3であってよい。
【0036】
別の例示的な実施形態によると、外層上に光学層、特に箔が被着されている。光学層は、例えば箔としてまたは塗料として塗布されてよい。光学層は、例えば、例えばホイール、窓またはヘッドライトのような車両の外面上の光学要素をシミュレートする。光学層は、例えばポリ塩化ビニルまたはポリウレタンからなる。
【0037】
他の例示的な実施形態によると、ダミー車両は、地面上を走行可能なプラットフォームとの連結のための連結要素を有する。走行可能なプラットフォームは、例えば、地面上で走行路に沿って個々に制御されてよい。ダミー車両は、連結要素によって、この走行可能なプラットフォームに取り外し可能に連結されてよく、この連結要素は、例えば機械的または磁気的な連結要素を表してよい。
【0038】
他の例示的な実施形態によると、ダミー車両は、レーダー反射性層を有していない別の車両要素を有する。別の車両要素は、例えばレーダー反射性層を有する車両要素に隣接してよいため、車両要素と別の車両要素とは、共通の中空体を形成する。あるいは、車両要素と別の車両要素は、別個の中空体を形成してよい。
【0039】
別の車両要素は、例えばシミュレートされるべき車両の、同様にレーダー反射性の特性を有していないかまたはレーダー反射性の特性をほとんど有していない部分を写し取る。例えば、別の車両要素は、ダミー車両の窓領域またはホイール領域を形成してよい。
【0040】
別の例示的な実施形態によると、車両要素と別の車両要素は、一体式に形成されている。よって、例えば、車両要素と別の車両要素は、発泡材料から一緒に製造されてよく、別の車両要素の領域内には、レーダー反射性内層は設けられていない。
【0041】
本発明によるダミー車両は、シミュレートされるべき車両の模倣のために、レーダー反射性内層を有する多数の車両要素と、レーダー反射性層のない多数の別の車両要素とを有してよい。
【0042】
ここに記載された実施形態は、本発明の可能な実施バリエーションに関して限定された選択だけを表していることが指摘される。したがって、個々の実施形態の特徴を相互に適切に組み合わせることが可能であるので、当業者にとって、本明細書で説明された実施バリエーションによって多くの異なる実施態様が明らかに開示されていると見なすことができる。特に、本発明のいくつかの実施形態は、装置の請求項により記載され、本発明の他の実施形態は、方法の請求項により記載されている。しかしながら、本出願を読めば、他に明示的に示されていない限り、本発明の主題の一つのタイプに所属する複数の特徴の組合せに加えて、本発明の主題の他のタイプに所属する複数の特徴の任意の組合せも可能であることは、当業者には直ちに明らかとなる。
【0043】
以下に、本発明のさらなる解説のためおよびより良い理解のために、添付図面を参照しながら実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の例示的な実施形態によるオートバイのシミュレーションのためのダミー車両の概略図を示す。
【
図2】本発明の例示的な実施形態による自動車のシミュレーションのためのダミー車両の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
異なる図面内の同じまたは類似の構成要素は、同じ参照符号が付けられている。図面内の描写は概略的である。
【0046】
図1は、本発明の例示的な実施形態による、運転支援システム用の試験を実施するためのオートバイの形態のダミー車両100を示す。ダミー車両100は、シミュレートされるべき車両の一部分を写し取る車両要素101を備える。車両要素101は、カバー構造103を形成し、このカバー構造は、外層と内層とを有する。外層は、カバー構造103内で、内層105よりもさらに外側に配置されている。外層104は、運転支援システムのセンサのセンサ信号に対して透過性であり、内層105は、運転支援システムのセンサのセンサ信号に対してセンサ感応性である。
【0047】
図1からの例示的な実施形態では、カバー構造は、中空体103を形成し、カバー構造は、外層104と内層105とを有する。
【0048】
本発明によるダミー車両100は、シミュレートされるべきオートバイを写し取る。特に、ダミー車両100は、別の車両の運転支援システムのレーダーセンサに対して知覚可能または認識可能である。ダミー車両100は、運転支援システムが組み込まれている車両の周囲環境内を動くことができる。
【0049】
本発明によるダミー車両100は、いくつかの異なる車両要素101を有する。各車両要素101は、シミュレートされるべき車両の一部分を写し取る。車両要素101は、例えば、シミュレートされるべきオートバイの縦軸、タンク、エンジンブロック、シートまたはベースフレームを写し取ることができる。車両要素101は、特に、シミュレートされるべきオートバイの、例えば金属構造を有しかつ例えばレーダー波を反射する部分を写し取る。
【0050】
内層105は、カバー構造の、中空空間103に接触する層である。内層105は、
図1では破線で示されている。
【0051】
外層104は、特に、例えば弾性でかつ形状安定性である軽量の発泡材料から形成されている。発泡材料は、特に、車両要素101が自立するように形成されている。
【0052】
外層104の内側で、内層105には、センサ感応性の、例えばレーダー反射性の材料が設けられている。内層105は、特に、車両要素101の形状安定性ために寄与せず、例えば柔軟に形成されていてよい。
【0053】
外層104は、電気伝導性ではない。換言すると、材料は、電気絶縁性であり、相応して伝導性でなくてよいので、レーダー波反射は、もっぱらレーダー反射性内層105によって可能になる。
【0054】
図1に示すように、外層104の厚さと内層105の厚さは、内部表面の面積が、外部表面の少なくとも70%、特に外部表面の80%~90%を有するように形成されている。
【0055】
内層105は、電気伝導性である。内層105は、特に金属層である。例えば、内層105は、金属箔として形成されていてよい。外層104は、例えば硬質発泡体、例えばポリ塩化ビニル、ポリフェニルまたはポリウレタンから形成されている。
【0056】
ダミー車両100は、さらに地面上を走行可能なプラットフォームとの連結のための連結要素106を有する。走行可能なプラットフォーム(図示されていない)は、例えば、地面上で走行路に沿って個々に制御されてよい。
【0057】
さらに、レーダー反射性層を有していない別の車両要素102が示されている。別の車両要素102は、例えば、レーダー反射性層を有する車両要素101に隣接されてよいため、車両要素101と別の車両要素102は一緒になって中空体103を形成する。あるいは、車両要素101と別の車両要素102は、別個の中空体を形成してよい。
【0058】
別の車両要素102は、例えば、シミュレートされるべき車両の、同様にレーダー反射性の特性を有していないかまたはレーダー反射性の特性をほとんど有していない部分を写し取る。例えば、
図1に示すように、別の車両要素102は、オートバイのリム内の開口部を表してよい。
【0059】
さらに、車両要素101は、シミュレートされるべき車両のシミュレートされるべき金属部材の特別な形状を模倣する中空空間103を有してよい。
図1では、例えば図示されるオートバイの車両要素101のベースフレーム内の中空空間103によって、エンジンブロック107がシミュレートされる。中空空間103は、この場合、エンジンブロック107の特別な形状を有する。内側では、レーダー反射性特性を有する内層105が取り囲み、したがって、中空空間103は、エンジンブロック107の形状を模倣する。内層105は、例えばセンサ信号としての放射線、例えば温度放射線を放射してよい。よって、例えば、車両要素101内では、センサ信号用のジェネレータ、例えば熱源が配置されてよく、内層105は、熱放射線を外側に向けて放射する。よって、例えば、車両のエンジンブロック107がシミュレートされてよい。
【0060】
したがって、カバー構造の形成により、例えば外層を示す中実体を形成することができ、この中実体内に、シミュレートされるべき対象の形態を示すキャビティが形成される。内層は、キャビティの周りで外層に接するように配置され、よって、例えば車両要素の外側形状の他に、同様に車両のレーダー反射性内部構成要素、例えばエンジンブロックを模倣することができる。
【0061】
図2は、自動車の形態のダミー車両100を示す。図示されたダミー車両100は、いくつかの異なる車両要素101を有する。各車両要素101は、シミュレートされるべき自動車の一部分を写し取る。車両要素101は、例えばシミュレートされるべき自動車のエンジンフード、車体またはドアを写し取る。レーダー反射性内層105を有する車両要素101は、特に、シミュレートされるべき自動車の、例えば金属構造を有するかまたはレーダー波を反射する部分を写し取る。
【0062】
さらに、ダミー車両100の、別の車両要素102を示す領域が示される。別の車両要素102は、例えば、シミュレートされるべき自動車の窓領域またはヘッドライトを写し取る。車両要素102は、レーダー反射性内層を有していないかほとんどレーダー反射性でない内層105を有する。
【0063】
車両要素101と別の車両要素102は、一体式に形成されていてよい。よって、例えば、車両要素101と別の車両要素102は、一緒になって発泡材料から製造されてよく、別の車両要素102の領域内で、レーダー反射性内層105は設けられていない。
【0064】
補足的に、「含む(umfassend)」は、他の要素またはステップを除外するものではなく、かつ「一つ(eine)」または「一つ(ein)」は複数を除外するものではないことを指摘する。さらに、先の実施例の一つを参照して説明される特徴またはステップは、先に記載された別の実施例の別の特徴またはステップと組み合わせて使用されてもよいことを指摘する。特許請求の範囲の符号は、限定とは見なされない。
【符号の説明】
【0065】
100 ダミー車両
101 車両要素
102 別の車両要素
103 中空体
104 外層
105 内層
106 連結要素
107 エンジンブロック