(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】映像処理装置、映像処理装置の作動方法および映像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 21/4402 20110101AFI20240514BHJP
H04N 21/442 20110101ALI20240514BHJP
H04N 5/57 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H04N21/4402
H04N21/442
H04N5/57
(21)【出願番号】P 2021006896
(22)【出願日】2021-01-20
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000214984
【氏名又は名称】TVS REGZA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 誠
【審査官】大西 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-193285(JP,A)
【文献】特開2009-194550(JP,A)
【文献】特開2011-166315(JP,A)
【文献】特開2014-241457(JP,A)
【文献】特開2020-024277(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0162262(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0211172(US,A1)
【文献】株式会社東芝研究開発本部,AI技術を駆使してテレビの画質を向上させるAI高画質技術,東芝レビュー TOSHIBA REVIEW,日本,株式会社東芝 TOSHIBA CORPORATION,2018年03月01日,第73巻、第2号,40頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00 -21/858
H04N 5/50 - 5/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレビジョン受信装置の映像処理装置であって、
映像の変化レベルを推定する
第1のAI演算を行う第1推定部と、
前記変化レベルを所定値と比較する比較部と、
前記変化レベルが前記所定値超の場合にだけ
、映像が複数のシーンのいずれに分類されるかを推定する
第2のAI演算を行う第2推定部と、
推定されたシーンに基づいて、画質パラメータを設定する設定部と、
前記画質パラメータを用いて、映像を調整する調整部と、を具備し、
前記第1推定部とリソースを共有する前記第2推定部が演算中に、第1のAI演算をするタイミングとなった場合は、演算を中断し、前記第1推定部の処理が行われていない間に分割して処理を行うことを特徴とする映像処理装置。
【請求項2】
テレビジョン受信装置の映像処理装置であって、
映像の変化レベルを推定する
第1のAI演算を行う第1推定部と、
前記変化レベルを所定値と比較する比較部と、
前記変化レベルが前記所定値超の場合にだけ
、映像が複数のシーンのいずれに分類されるかを推定する
第2のAI演算を行う第2推定部と、
推定されたシーンに基づいて、画質パラメータを設定する設定部と、
前記画質パラメータを用いて、映像を調整する調整部と、を具備し、
前記第1推定部の第1の処理間隔は、前記第1推定部の第1の処理時間よりも長く、前記第1の処理時間と前記第2推定部の第2の処理時間との合計時間よりも短く、
前記第1推定部は、リソースを共有する前記第2推定部の処理が完了するまで処理を再開しないことを特徴とする映像処理装置。
【請求項3】
チューナ、モニタおよびスピーカとともに、前記テレビジョン受信装置を構成していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の映像処理装置。
【請求項4】
前記映像が、ジャンルが判明している放送番組の映像であり、
前記設定部は、前記ジャンルおよび前記第2推定部が推定した前記シーンに基づいて前記画質パラメータを、設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の映像処理装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記シーンに基づいて、音質パラメータを設定し、
前記調整部は、前記音質パラメータを用いて前記映像の音を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の映像処理装置。
【請求項6】
テレビジョン受信装置の映像処理装置の作動方法であって、
映像の変化レベルを推定する
第1のAI演算を行うステップと、
前記変化レベルを所定値と比較するステップと、
前記変化レベルが前記所定値超の場合にだけ
、映像が複数のシーンのいずれに分類されるかを推定する
第2のAI演算を行うステップと、
推定されたシーンに基づいて、画質パラメータを設定するステップと、
前記画質パラメータを用いて、映像を調整するステップと、を具備し、
前記第2のAI演算は、前記第1のAI演算が行われていない間に分割して処理を行うことを特徴とする映像処理装置の作動方法。
【請求項7】
テレビジョン受信装置の映像処理装置の映像処理プログラムであって、
映像の変化レベルを推定する
第1のAI演算を行うステップと、
前記変化レベルを所定値と比較するステップと、
前記変化レベルが前記所定値超の場合にだけ
、映像が複数のシーンのいずれに分類されるかを推定する
第2のAI演算を行うステップと、
推定されたシーンに基づいて、画質パラメータを設定するステップと、
前記画質パラメータを用いて、映像を調整するステップと、をコンピュータに実行させ、
前記第1のAI演算処理間隔は、前記第1のAI演算の第1の処理時間よりも長く、前記第1の処理時間と前記第2のAI演算の第2の処理時間との合計時間よりも短く、
前記第2のAI演算は、前記第1のAI演算が行われていない間に分割して処理を行うことを特徴とする映像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、映像処理装置、映像処理装置の作動方法および映像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
番組の映像をジャンルに応じた画質、音質に自動的に調整する機能を有するテレビジョン受信機、スマートフォン等の映像表示装置が開発されている。番組のジャンルは、EPG番組表等のメタデータから取得される。
【0003】
しかし、1つの番組には、最適の画質等が異なる複数のシーン(場面)が含まれている。例えば、ジャンルがニュースの番組には、人物シーン、屋内シーン、風景シーン、および、スポーツシーン等が含まれている。
【0004】
このため、番組のジャンルだけに基づく調整では、それぞれのシーンに最適な映像を提供できない。また、EPG番組表等のメタデータを参照できない映像もある。
【0005】
近年、映像処理にAI(人工知能)演算が用いられている。AI演算は、演算量が多いため、大きなリソース(計算資源)が必要である。AI演算を効率的に行う方法の開発が進んでいる。
【0006】
しかし、テレビジョン受信機等のエッジデバイスでは、リソースが小さいため、AI演算を用いて適切な映像処理を行うことは容易ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-28871号公報
【文献】国際公開第2018/067962号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、シーンに応じた最適の映像を出力する映像処理装置、シーンに応じた最適の映像を出力する映像処理装置の作動方法およびシーンに応じた最適の映像を出力する映像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態の映像処理装置は、テレビジョン受信装置の映像処理装置であって、映像の変化レベルを推定する第1のAI演算を行う第1推定部と、前記変化レベルを所定値と比較する比較部と、前記変化レベルが前記所定値超の場合にだけ、映像が複数のシーンのいずれに分類されるかを推定する第2のAI演算を行う第2推定部と、推定されたシーンに基づいて画質パラメータを設定する設定部と、前記画質パラメータを用いて映像を調整する調整部と、を具備し、前記第1推定部とリソースを共有する前記第2推定部は、前記第1推定部の処理が行われていない間に分割して処理を行う。
【0010】
本発明の実施形態の映像処理装置の作動方法は、テレビジョン受信装置の映像処理装置の作動方法であって、映像の変化レベルを推定する第1のAI演算を行うステップと、前記変化レベルを所定値と比較するステップと、前記変化レベルが前記所定値超の場合にだけ、映像が複数のシーンのいずれに分類されるかを推定する第2のAI演算を行うステップと、推定されたシーンに基づいて画質パラメータを設定するステップと、前記画質パラメータを用いて映像を調整するステップと、を具備し、前記第1のAI演算処理間隔は、前記第1のAI演算の第1の処理時間よりも長く、前記第1の処理時間と前記第2のAI演算の第2の処理時間との合計時間よりも短く、前記第2のAI演算は、前記第1のAI演算が行われていない間に分割して処理を行う。
【0011】
本発明の実施形態の映像処理プログラムは、テレビジョン受信装置の映像処理プログラムであって、映像の変化レベルを推定する第1のAI演算を行うステップと、前記変化レベルを所定値と比較するステップと、前記変化レベルが前記所定値超の場合にだけ、映像が複数のシーンのいずれに分類されるかを推定する第2のAI演算を行うステップと、推定されたシーンに基づいて画質パラメータを設定するステップと、前記画質パラメータを用いて映像を調整するステップと、をコンピュータに実行させ、前記第1のAI演算処理間隔は、前記第1のAI演算の第1の処理時間よりも長く、前記第1の処理時間と前記第2のAI演算の第2の処理時間との合計時間よりも短く、前記第2のAI演算は、前記第1のAI演算が行われていない間に分割して処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態の映像処理装置を含むテレビジョン受信機の構成図である。
【
図2】第1実施形態の映像処理装置の作動方法のフローチャートである。
【
図3】第1実施形態の映像処理装置の作動方法を説明するための図である。
【
図4】第2実施形態の映像処理装置の作動方法のフローチャートである。
【
図5】第2実施形態の映像処理装置の作動方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
図1に示すように本実施形態の映像処理装置1は、チューナ31およびメモリ32と、受信装置30を構成している、受信装置30は、モニタ42およびスピーカ43と、受信システム9を構成している。受信装置30は、モニタ42およびスピーカ43と一体のテレビジョン受信装置でもよい。
【0014】
モニタ42は、液晶、EL(エレクトロミネッセンス)、プラズマディスプレイ、SED(表面電界ディスプレイ)、ビデオプロジェクタ、リアプロジェクション(背面投影型)、またはブラウン管(平面型を含む)などである。利用者が受信装置30を操作する端末であるリモコン44は、スマートフォン、タブレット端末、AIスピーカ等でもよい。
【0015】
チューナ31は、例えば、受信アンテナ41によって受信される地上デジタルテレビジョン放送および衛星デジタルテレビジョン放送の複数のチャンネルの中から1つのチャンネルを選局することによって受信する。チューナ31は、ネット回線46を経由してサーバー47から入力されるインターネット放送を受信してもよい。レコーダ45に記録されている番組映像が、受信装置30に入力されてもよい。
【0016】
映像処理装置1は、入力された映像を処理し、画像信号と音声信号とを出力する。画像信号はモニタ42に出力され、音声信号はスピーカ43に出力されることによって、利用者は番組を視聴する。
【0017】
映像処理装置1は、プロセッサであるCPU10と、ニューラルネットワークであるAI演算部20と、を有する。
【0018】
AI演算部20は第1推定部21と第2推定部22とを有する。第1推定部21と第2推定部22とは、AI演算部20のリソースを共有しているため、同時に演算処理を行うことはできない。AI演算部20は半導体からなり、例えば、メモリ32に記憶されているプログラムを読み込み動作する。
【0019】
後述するように、第1推定部21は、映像の画像の変化レベルDを、ニューラルネットワークを用いて推定する第1のAI演算(AI演算1)を行う。第2推定部22は、映像が複数のシーンのいずれに分類されるかを、ニューラルネットワークを用いて推定する第2のAI演算(AI演算2)を行う。
【0020】
ニューラルネットワークによるAI演算は、深層学習アルゴリズムに基づく深層学習を用いて、映像の解析処理を実行する。深層学習アルゴリズムは、公知の畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)の手法と、全結合層と、出力層とを含むアルゴリズムである。深層学習はディープラーニングと呼ばれる。深層学習を用いたAI演算による画像解析処理は公知技術であるので、具体的な説明は省略する。
【0021】
CPU10は、受信装置30の全体の制御を行う。CPU10は半導体からなり、例えば、メモリ32に記憶されているプログラムを読み込み動作する。CPU10は、比較部11、設定部12、調整部13を含む。なお、CPU10が実行する、これらの機能部の少なくともいずれかは、CPU10とは別の専用回路として構成されていてもよい。また、1つのCPUユニットが、CPU10とAI演算部20とを有していてもよい。ただし、高速処理のためには、AI演算はAI専用プロセッサにおいて行われることが好ましい。
【0022】
比較部11は、第1推定部21が推定した映像の変化レベルDを所定値Kと比較する。第2推定部22は、第1推定部21が第1のAI演算によって推定した変化レベルDが所定値K超の場合にだけ、シーンの推定演算である第2のAI演算を行う。
【0023】
例えば、所定値Kが75%、映像が変化している可能性である変化レベルDが80%の場合、変化レベルDが所定値K超であるため、第2のAI演算が行われる。設定部12は、第2推定部22が推定したシーンに基づいて、画質パラメータを設定する。調整部13は、画質パラメータを用いて映像を調整する。
【0024】
所定値Kが75%、変化レベルDが60%の場合、変化レベルDが所定値K以下であるため、第2のAI演算は行われない。
【0025】
従来のAI演算では、複数の演算は必ず連続して行われるパイプライン方式であった。すなわち、第1のAI演算の出力にかかわらず第2のAI演算が行われる。これに対して、映像処理装置1では、第1のAI演算の出力によっては、第2のAI演算を行わないことがある。このため、リソースが小さいエッジデバイスである映像処理装置であっても、シーンに応じた最適の映像を出力する。
【0026】
<映像処理装置の作動方法>
図2のフローチャートにそって、映像処理装置1の作動方法を説明する。
【0027】
<ステップS10> フレーム画像入力
図3の上段に示すように、テレビジョン放送の映像は、例えば、1秒間に30枚のフレーム画像(静止画)を有している。第1推定部21に、フレーム画像(第1画像)と、その次のフレーム画像(第2画像)とが入力される。
【0028】
<ステップS20> 第1のAI演算
第1推定部21は、第1画像と第2画像との変化レベルDをAI演算部20において推定する第1のAI演算を行う。例えば、第1のAI演算においては、2次元の特徴マップの抽出、または1次元の特徴ベクトルの抽出を行う。
【0029】
映像の明るさ変化、画素毎の輝度の変化等を基にシーンを推定すると、映像が、僅かにズームアップされたり、カメラがターンしたりした場合に、シーンが変化したと誤った推定をするおそれがある。しかし、AI演算を用いることによって、シーンの変化を正確に推定できる。
【0030】
<ステップS30> 変化レベル比較
比較部11が、第1推定部21が推定した変化レベルDと、所定値Kとを比較する。変化レベルDが所定値Kより大きい場合(YES)には、ステップS40の処理が行われる。変化レベルDが所定値K以下の場合(NO)には、ステップS10の処理が行われる。
【0031】
なお、所定値Kが小さすぎると、頻繁に画質調整が行われ不自然な映像となるおそれがある。このため、所定値Kは適切な値、例えば70%超に設定される。所定値Kは利用者の操作によって変更可能であってもよい。
【0032】
<ステップS40> 第2のAI演算開始
第2推定部22は、第2画像が複数のシーンのいずれであるかを、第1推定部21と共有のAI演算部20において推定する第2のAI演算を行う。
【0033】
シーンは、例えば、人物シーン、風景シーン、夜景シーン、スポーツシーンである。
【0034】
例えば、第2のAI演算においては、2次元の特徴マップを入力とした物体検出もしくはセグメンテーション、または、1次元の特徴ベクトルを入力とした画像分類処理が行われる。
【0035】
<ステップS50> 時間計測(TA経過)
図3に示すように、映像処理装置1では、繰り返して行われる第1推定部21の処理間隔(時間)TA、すなわち、第1のAI演算の間隔TAは、第1のAI演算の第1の処理時間T1よりも長い。しかし、間隔TAは、第1のAI演算の第1の処理時間T1と第2のAI演算の第2の処理時間T2(T2A+T2B)との合計時間よりも短い。このため、間隔TAの間に、第2のAI演算は完了しない。
【0036】
処理間隔TAになると(YES)、映像処理装置1は、第2のAI演算をいったん中断して、ステップS60からの処理を行う。
【0037】
<ステップS60> フレーム画像入力
ステップS10と同じように、第1推定部21に、新しい2枚のフレーム画像が入力される。
【0038】
<ステップS70> 第1のAI演算
ステップS20と同じように、第1推定部21は変化レベルDを推定する第1のAI演算を行う。
【0039】
<ステップS80> 変化レベル比較
ステップS30と同じように、比較部11が、第1推定部21が推定した変化レベルDと、所定値Kとを比較する。ステップS80では、変化レベルDが所定値Kより大きい場合(YES)には、ステップS40において新たな第2のAI演算が行われる。途中まで処理されていた第2の演算は強制終了される。なお、すでに処理済みの途中結果を第2のAI演算結果として代替利用してもかまわない。これに対して、変化レベルDが所定値K以下の場合(NO)には、途中まで行われていた第2のAI演算Aが、再開する。
【0040】
すなわち、第2推定部22による第2のAI演算は、第1推定部21による第1のAI演算が行われていない間に分割して行われる。映像処理装置1では、第2のAI演算は、第2のAI演算2A、2Bに、2分割して行われていたが、第2のAI演算は、3分割以上されてもよいことは言うまでも無い。
【0041】
なお、映像処理装置1では、第1のAI演算の処理間隔TAは、フレーム間隔Tf(例えば、1/30秒)よりも長い。しかし、AI演算速度が速い場合には、全フレーム画像に対して、第1のAI演算が行われてもよい。
【0042】
また、第2のAI演算に続いて第3のAI演算が行われてもよい。例えば、第2のAI演算において映像シーンが「スポーツ」であることが推定された後に、第3のAI演算において具体的な競技名「サッカー」が推定されてもよい。
【0043】
<ステップS90> 第2のAI演算完了
第2のAI演算が完了する(YES)と、ステップS10からの一連の処理が再び行われると同時に、ステップS100の処理が行われる。第2のAI演算は完了するまで(NO)、続けられる。
【0044】
<ステップS100>
第2推定部22が推定したシーンに基づいて、設定部12が画質パラメータを設定する。調整部13が画質パラメータを用いて映像、すなわち、変化があったフレーム画像以降のフレーム画像を調整する。
【0045】
画質パラメータは、例えば、明るさ、色の濃さ、色合い、色温度、シャープネス、ノイズリダクションレベル、コントラストエンハンサーレベル、ディテールエンハンサーレベルである。
【0046】
例えば、風景シーンの場合には、明るさレベル、色の濃さ、および、色合いの各レベルを標準パラメータよりも上げることによって、鮮やかな映像となる。人物シーンの場合には、ノイズリダクションレベルおよびディテールエンハンサーレベルを上げて、色の濃さレベルを下げることによって、肌の質感が自然となる。それぞれのシーンに基づく画質パラメータは、例えば、予めメモリ32に記憶されている。
【0047】
映像処理装置1は、リソースが小さいエッジデバイスであるが、シーンに応じた最適の映像を出力できる。
【0048】
以上の説明のように、映像処理装置の作動方法は、第1のAI演算によって映像の変化レベルを推定するステップS20と、前記変化レベルを所定値と比較するステップS30と、前記変化レベルが前記所定値超の場合にだけ、第2のAI演算によって映像が複数のシーンのいずれに分類されるかを推定するステップS40と、推定されたシーンに基づいて画質パラメータを設定するステップS100と、前記画質パラメータを用いて映像を調整するステップS100と、を具備する。
【0049】
映像処理プログラムは、第1のAI演算によって映像の変化レベルを推定するステップS20と、前記変化レベルを所定値と比較するステップS30と、前記変化レベルが前記所定値超の場合にだけ、第2のAI演算によって、映像が複数のシーンのいずれに分類されるかを推定するステップS40と、推定されたシーンに基づいて画質パラメータを設定するステップS100と、前記画質パラメータを用いて映像を調整するステップS100と、をコンピュータに実行させる。
【0050】
<第1実施形態の変形例1>
本変形例の映像処理装置1Aは、映像処理装置1と類似しているので、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0051】
映像処理装置1Aは、例えば、テレビジョン番組の映像信号に付加されている番組データ(例えば、EPG:Electronic Programming Guide)を取得する。EPGデータはメモリ32に記憶される。番組データは、番組名、出演者、番組概要等に加えて、ジャンルデータを有している。ジャンルは、例えば、「ニュース/報道」、「スポーツ」、「情報/ワイドショー」、「ドラマ」、「音楽」、「バラエティ」、「映画」、「アニメ/特撮」、「ドキュメンタリー/教養」、「劇場/公演」、「趣味/教育」、「福祉」である。
【0052】
映像処理装置1Aの設定部12は、ジャンルおよび第2推定部22が推定したシーンに基づいて画質パラメータを、設定する。
【0053】
すなわち、同じ風景シーンであっても、ジャンルがニュースの映像の場合には、ジャンルが映画の映像の場合によりも、明るさレベル、色の濃さ、および、色合いの各レベルを上げる割合が小さい画質パラメータが設定される。このため、ジャンルがニュースの映像においては、例えば、人物シーンから風景シーンに切り替わっても大きく映像が変化することがない。逆に、ジャンルが映画の映像においては、ジャンルがニュースの映像よりも迫力のある風景シーンの映像が出力される。
【0054】
複数のジャンルそれぞれの複数のシーンに基づく画質パラメータは、例えば、予めメモリ32に記憶されている。映像処理装置1Aは、ジャンルに応じて、より適切にシーンの映像を調整できる。
【0055】
<第1実施形態の変形例2>
本変形例の映像処理装置1Bは、映像処理装置1と類似しているので、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0056】
映像処理装置1Bの設定部12は、シーンに基づいて、画質パラメータだけでなく、音質パラメータを設定する。調整部13は、映像の画質だけでなく、音質パラメータを用いて映像の音を調整する。
【0057】
音質パラメータは、例えば、ハイパスフィルターおよびローパスフィルタによるイコライザレベル、ノイズリダクションレベル、である。
【0058】
例えば、人物の口が動いている会話シーンでは、より聞き取りやすくするため、イコライザレベルはフラットに、ノイズリダクションレベルは大きく、設定される。
【0059】
映像処理装置1Bでは、映像は、画像だけでなく音も、シーンに応じて適切に調整される。
【0060】
映像処理装置1Bにおいて、映像処理装置1Aのように、ジャンルおよび第2推定部22が推定したシーンに基づいて画質パラメータを設定してもよいことは言うまでも無い。
【0061】
<第2実施形態>
本実施形態の映像処理装置1Cは、映像処理装置1等と類似しているので、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0062】
図4のフローチャートにそって、映像処理装置1Cの作動方法を説明する。
【0063】
<ステップS10-S30>
図2において説明した映像処理装置1と同じである。
【0064】
<ステップS41>
第2のAI演算が開始し、完了するまで処理が行われる。第2のAI演算が完了後に、ステップS10からの一連の処理が再び行われると同時に、ステップS100の処理が行われる。
【0065】
<ステップS100>
図2において説明した映像処理装置1と同じである。
【0066】
映像処理装置1Cでは、映像処理装置1と同じように、繰り返して行われる第1推定部21の第1の処理間隔(時間)TAは、第1のAI演算の第1の処理時間T1と第2のAI演算の第2の処理時間T2(T2A+T2B)との合計時間よりも短い。
【0067】
図5に示すように、映像処理装置1Cの第1推定部21は、第2推定部22の処理が完了するまで処理を再開しない。このため、第2のAI演算が行われた場合の第1推定部21の第2の処理間隔TA2は、第2のAI演算が行われない場合の第1の処理間隔TA1よりも長くなる。
【0068】
映像処理装置1Cは、第1推定部21の処理間隔が長くなることがあるため、シーン変化の激しい映像では適切にシーンの映像を調整できないおそれもある。しかし、第1推定部21が映像のシーン変化を検出した場合に、映像処理装置1よりも早く、適切な画質の映像を出力できる。
【0069】
映像処理装置1cにおいて、映像処理装置1Aのようにジャンルおよび第2推定部22が推定したシーンに基づいて画質調整したり、映像処理装置1Bのようにシーンに基づいて音質調整したり、してもよいことは言うまでも無い。
【0070】
発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1、1A-1C…映像処理装置
9…受信システム
11…比較部
12…設定部
13…調整部
20…ニューラルネットワーク
21…第1推定部
22…第2推定部
30…受信装置
31…チューナ
32…メモリ
41…受信アンテナ
42…モニタ
43…スピーカ
44…リモコン
45…レコーダ
46…ネット回線
47…サーバー