(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】アルカリ蓄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/28 20060101AFI20240514BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20240514BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20240514BHJP
H01M 4/24 20060101ALI20240514BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20240514BHJP
【FI】
H01M10/28 A
H01M50/545
H01M50/531
H01M4/24 Z
H01M50/107
(21)【出願番号】P 2020051202
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】高須 大
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-022320(JP,A)
【文献】実開昭48-060029(JP,U)
【文献】特開2008-066302(JP,A)
【文献】特開平11-144761(JP,A)
【文献】特開平11-213983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/24-32
H01M 50/10-198
H01M 50/50-598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の正極板と、帯状の負極板と、前記正極板及び前記負極板の間に配置された帯状のセパレータと、が互いに重ね合わされて最外周で前記負極板が露出するように渦巻き状に形成された渦状電極群と、
該渦状電極群がアルカリ電解液とともに収容される有底円筒形状の外装缶であって、上端が開口しており、前記有底円筒形状の内側面が前記負極板と接触した外装缶と、
該外装缶の前記開口を封口する封口体と、
該封口体に電気的に接続された正極端子と、を備え、
前記正極板は、帯状の正極板本体部と、渦巻き状の前記渦状電極群の内周部分において該正極板本体部の一部から前記封口体の側へ突出し、前記封口体に当接することで電気的に接続される正極凸部と、を含んでおり、
前記負極板は、帯状の負極板本体部と、該負極板本体部の一部から前記封口体の側へ突出し、前記封口体と前記負極板本体部との間で終端する負極凸部と、を含んでおり、
前記正極板は、その全面に正極活物質を有しており、前記負極板は、その全面に負極活物質を有する、ことを特徴とするアルカリ蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルカリ蓄電池、特に円筒形状のアルカリ蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ蓄電池は、正極板と負極板とセパレータとを積層した電極群を備えている。電極群において、セパレータは正極板と負極板との間に配置されている。当該アルカリ蓄電池において、例えば電極群は渦巻き状に巻回されて、導電性を有する円筒形状の外装缶にアルカリ電解液と共に収容されている。当該アルカリ蓄電池では、セパレータを介して対向する正極板と負極板との間で所定の電気化学反応が生じ、これにより充電及び放電が行われている。
【0003】
渦巻き状の電極群を有する電池として、例えば特許文献1には、セパレータを介して正極板と負極板とを重ね合わせた電極体を電池容器の内部に収容したニッケル水素二次電池について記載されている。具体的には、特許文献1に記載のニッケル水素二次電池において、電極体は、正極板の一部が封口体の側へ突出してなる正極凸部を含んでいる。当該正極凸部は、封口体に直接接続されており、当該正極板の正極凸部には、活物質が充填されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電池の高容量化を図るためには、例えば、セパレータを薄く形成し、正極板及び負極板に塗布される活物質の量を増やすことが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載のニッケル水素二次電池において、セパレータを薄く形成して正極活物質及び負極活物質の量を増加した場合、正極板及び負極板に生じたバリがセパレータを突き破り、電池内部での短絡が生じる恐れがあった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内部での短絡発生を抑制しつつ、高容量化を図ることのできるアルカリ蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るアルカリ蓄電池は、帯状の正極板と、帯状の負極板と、前記正極板及び前記負極板の間に配置された帯状のセパレータとが互いに重ね合わされて渦巻き状に形成された渦状電極群と、該渦状電極群がアルカリ電解液とともに収容される有底円筒形状の外装缶であって上端が開口した外装缶と、該外装缶の前記開口を封口する封口体と、該封口体に電気的に接続された正極端子と、を備え、前記正極板は、帯状の正極板本体部と、該正極板本体部の一部から前記封口体の側へ突出し、前記封口体と電気的に接続される正極凸部と、を含んでおり、前記負極板は、帯状の負極板本体部と、該負極板本体部の一部から前記封口体の側へ突出し、前記封口体と前記負極板本体部との間で終端する負極凸部と、を含んでおり、前記正極板及び前記負極板は、前記セパレータを介して対向する部分の夫々に、正極活物質及び負極活物質を有することを特徴とするとする。
【0008】
本発明の一態様に係るアルカリ蓄電池において、前記封口体と前記正極凸部との間に配設された接続部材であって、導電性及び弾性を有する接続部材を更に備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るアルカリ蓄電池によれば、前記正極板は、帯状の正極板本体部と、該正極板本体部の一部から前記封口体の側へ突出し、前記封口体と電気的に接続される正極凸部と、を含んでいる。又、前記負極板は、帯状の負極板本体部と、該負極板本体部の一部から前記封口体の側へ突出し、前記封口体と前記負極板本体部との間で終端する負極凸部と、を含んでいる。更に、前記正極板及び前記負極板は、前記セパレータを介して対向する部分の夫々に、正極活物質及び負極活物質を有する。このように、本発明に係るアルカリ蓄電池においては、正極板及び負極板の各々が、正極板本体部及び負極板本体部とは別に正極凸部及び負極凸部を有しており、且つ、前記セパレータを介して対向する部分の夫々に、正極活物質及び負極活物質を有している。つまり、正極板及び負極板の一部を他の部分に対して高さ方向(外装缶の軸線方向)に長く形成することにより、渦状電極群を厚み方向(外装缶の径方向)に厚く形成することなく当該電池の高容量化を実現することができる。更に、当該電池の高容量化を図るためにセパレータを薄く形成する必要がないため、正極板及び負極板に生じたバリによるセパレータの突き破りを抑制することができ、当該電池の内部での短絡発生を抑制することができる。このようにして、内部での短絡発生を抑制しつつ、高容量化を図ることのできるアルカリ蓄電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るアルカリ蓄電池の縦断面を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すアルカリ蓄電池の正極基材を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すアルカリ蓄電池の正極板を示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すアルカリ蓄電池の負極芯体を示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すアルカリ蓄電池の負極板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化したアルカリ蓄電池の一例としてニッケル水素二次電池1(以下、単に「電池1」ともいう)の実施形態を説明する。なお、本実施形態として、AAサイズの円筒形の電池1に本発明が適用された場合を説明するが、電池1のサイズはこれに限るものではなく、例えばAAAサイズ等他のサイズでもよい。また、アルカリ蓄電池としては、電解液にアルカリ溶液を用いるものであればよく、例えばニッケルカドミウム蓄電池等でもよい。
【0012】
図1は、一実施形態に係るニッケル水素二次電池1(アルカリ蓄電池)の縦断面を示す断面図である。
図2は、
図1に示すニッケル水素二次電池1の正極基材21を示す平面図である。
図3は、
図1に示すニッケル水素二次電池1の正極板20を示す平面図である。
図4は、
図1に示すニッケル水素二次電池1の負極芯体31を示す平面図である。
図5は、
図1に示すニッケル水素二次電池1の負極板30を示す平面図である。なお、説明の便宜上、円筒形状の外装缶10の軸線xにおいて、矢印a方向を上側、矢印b方向を下側とする。ここで、上側とは、電池1における正極端子70が設けられている側を意味し、下側とは、電池1における底壁15が設けられている側であり、上側の反対側を意味する。また、軸線xに垂直な方向(以下「径方向」ともいう。)において、軸線xから遠ざかる方向を外周側とし(矢印c方向)、軸線xに向かう方向を内周側とする(矢印d方向)。
【0013】
図1に示すように、電池1は、上側(矢印a方向)が開口した有底円筒形状をなす外装缶10を備えている。外装缶10は導電性を有し、下側(矢印b方向)に設けられた底壁15は負極端子として機能する。外装缶10の開口には、外装缶10を封口するための封口体60が固定されている。この封口体60は、導電性を有する円板形状の部材である。外装缶10の開口内には、封口体60及びこの封口体60を囲むリング形状の絶縁パッキン12が配置され、絶縁パッキン12は外装缶10の開口縁13をかしめ加工することにより外装缶10の開口縁13に固定されている。すなわち、封口体60及び絶縁パッキン12は互いに協働して外装缶10の開口を気密に閉塞している。
【0014】
ここで、封口体60は中央に中央貫通孔61を有し、そして、封口体60の上側の面である外面上には中央貫通孔61を塞ぐゴム製の弁体80が配置されている。更に、封口体60の外面上には、弁体80を覆うようにしてフランジ付の金属製の正極端子70が電気的に接続されている。この正極端子70は弁体80を封口体60に向けて押圧している。なお、正極端子70には、ガス抜き孔71が開口されている。
【0015】
通常時、中央貫通孔61は弁体80によって気密に閉じられている。一方、外装缶10内にガスが発生し、そのガスの圧力が高まれば、弁体80はガスの圧力によって圧縮され、中央貫通孔61を開き、その結果、外装缶10内から中央貫通孔61及び正極端子70のガス抜き孔71を介して外部にガスが放出される。つまり、封口体60の中央貫通孔61、弁体80及び正極端子70のガス抜き孔71は電池1のための安全弁を形成している。
【0016】
外装缶10には、渦状電極群50が収容されている。この渦状電極群50は、それぞれ帯状の正極板20、負極板30及びセパレータ40が互いに重ね合わされて形成されている。渦状電極群50は、正極板20と負極板30との間にセパレータ40が挟み込まれた状態で渦巻き状に形成されている。すなわち、セパレータ40を介して正極板20及び負極板30が互いに重ね合わされている。また、渦状電極群50と外装缶10の底壁15との間には円形の下部絶縁部材17が配置されている。
【0017】
更に、外装缶10内には、所定量のアルカリ電解液(図示せず)が注入されている。このアルカリ電解液は、渦状電極群50に含浸され、正極板20と負極板30との間での充放電の際の電気化学反応(充放電反応)を進行させる。このアルカリ電解液としては、KOH、NaOH及びLiOHのうちの少なくとも一種を溶質として含む水溶液を用いることが好ましい。
【0018】
セパレータ40の材料としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布に親水性官能基を付与したもの、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したもの等を用いることができる。
【0019】
図1~
図3に示すように、正極板20は、帯状の正極板本体部22と、正極板本体部22の一部から封口体60の側である上側(矢印a方向)へ突出し、封口体60と電気的に接続される正極凸部23と、を含んでいる。具体的には、
図2に示すように、正極板本体部22は、所定の上下方向高さH2を有する帯状の部材である。正極凸部23は、正極板本体部22における巻き始め端縁24から所定の長さL1の範囲において、正極板本体部22から上側に突出する部分である。ここで、所定の長さL1とは、渦状電極群50の状態で封口体60に当接する正極板20の長さ範囲、より具体的には、渦状電極群50の状態で絶縁パッキン12の内周側(矢印d方向)に位置する正極板20の長さ範囲を意味する。正極板20は、正極凸部23の部分において、正極板本体部22の上下方向高さH2より大きな高さH1を有する。
図1に示すように、ニッケル水素二次電池1において、正極凸部23は封口体60に当接している。つまり、正極板20が封口体60に直接接続されており、これにより、正極端子70と正極板20とは、封口体60を介して互いに電気的に接続されている。
【0020】
図2及び
図3に示すように、正極板20は、多孔質構造を有する導電性の正極基材21と、この正極基材21の空孔内に保持された正極合剤25とを含んでいる。正極板20は、セパレータ40を介して後述する負極板30と対向する部分に、正極活物質としての正極合剤25を有する。具体的には、正極板20において、正極基材21の全面(両面)に、正極合剤25が坦持されている。このような正極基材21としては、例えば、発泡ニッケルのシートを用いることができる。正極合剤25は、正極活物質粒子と、結着剤とを含む。また、正極合剤25には、必要に応じて正極添加剤が添加される。
【0021】
又、封口体60と正極凸部23との間には、導電性及び弾性を有する接続部材(図示せず)が配設されていてもよい。当該接続部材は、
図1に示す正極凸部23の形状に対応して渦巻き状に形成されているものでもよいし、正極凸部23の最外径と同等又は略同等の径を有する円板状に形成されていてもよい。なお、接続部材は、少なくとも正極凸部23の一部を封口体60に電気接続するものでればよく、その形状が特に限定されるものではない。例えば、接続部材としては、ゴム等の弾性部材の周面に、金属箔やニッケルスポンジ等の導電部材を取り付けたもの等であってよい。接続部材としては、導電性及び弾性を有するものであれば、上述の例に限定されるものではない。
【0022】
上記した結着剤は、正極活物質粒子を互いに結着させるとともに、正極活物質粒子を正極基材21に結着させる働きをする。ここで、結着剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ディスパージョン、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)ディスパージョンなどを用いることができる。また、正極添加剤としては、酸化亜鉛、水酸化コバルト等が挙げられる。
【0023】
正極活物質粒子としては、ニッケル水素二次電池用として一般的に用いられている水酸化ニッケル粒子が用いられる。この水酸化ニッケル粒子は、高次化されている水酸化ニッケル粒子を採用することが好ましい。上記したような正極活物質粒子は、ニッケル水素二次電池用として一般的に用いられている製造方法により製造される。
【0024】
ついで、正極板20は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、所定の形状に成形された正極基材21を準備しておく(
図2)。他方、正極活物質粒子、水及び結着剤を含む正極合剤スラリーを調製する。調製された正極合剤スラリーは、正極基材21としての発泡ニッケルのシートに充填され、乾燥させられる。乾燥後、水酸化ニッケル粒子等が充填された発泡ニッケルのシートは、圧延されてから裁断され、正極板20が製造される(
図3)。
【0025】
次に、負極板30について説明する。負極板30は、帯状の負極板本体部32と、負極板本体部32の一部から封口体60の側である上側へ突出し、封口体60と負極板本体部32との間で終端する負極凸部33と、を含んでいる。具体的には、
図4に示すように、負極板本体部32は、所定の上下方向高さH3を有する帯状の部材である。負極凸部33は、負極板本体部32における巻き始め端縁34から所定の長さL3の範囲において、負極板本体部32から上側に突出する部分である。ここで、所定の長さL3とは、渦状電極群50の状態で正極板20の正極凸部23に対向する負極板30の長さ範囲を意味する。負極板30は、負極凸部33の部分において、負極板本体部32の上下方向高さH4より大きな高さH3を有する。
図1に示すように、ニッケル水素二次電池1において、負極凸部33は封口体60に当接していない。つまり、負極板30は封口体60に接続されていない。
【0026】
図4及び
図5に示すように、負極板30は、金属製の負極芯体31と、この負極芯体31に担持された、負極活性物質を含む負極合剤35とを備えている。負極芯体31は、導電性を有している。具体的には、負極板30は、セパレータ40を介して正極板20と対向する部分に負極活物質を有する。具体的には、負極板30において、負極芯体31の全面(両面)に、負極合剤35が坦持されている。負極板30は、ニッケル水素二次電池1の負極端子をなす外装缶10の内周面に接した状態で、当該外装缶10と電気的に接続されている。
【0027】
負極芯体31は、貫通孔(図示せず)が分布された帯状の金属材であり、例えば、パンチングメタルシートを用いることができる。負極合剤35は、負極活性物質を含む負極合剤により形成されている。負極合剤35は、負極芯体31の貫通孔内に充填されるばかりでなく、負極芯体31の表面及び裏面にも層状に担持されてれレイヤー状の負極合剤35を形成している。負極合剤35は、負極活物質としての水素を吸蔵及び放出可能な水素吸蔵合金粒子、導電剤、結着剤及び負極補助剤を含む。
【0028】
上記した結着剤は水素吸蔵合金粒子、導電剤等を互いに結着させると同時に水素吸蔵合金粒子、導電剤等を負極芯体31に結着させる働きをする。ここで、結着剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、親水性若しくは疎水性のポリマー、カルボキシメチルセルロースなどの、ニッケル水素二次電池用として一般的に用いられている結着剤を用いることができる。また、負極補助剤としては、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸ナトリウム等を用いることができる。水素吸蔵合金粒子における水素吸蔵合金としては、特に限定されるものではなく、一般的なニッケル水素二次電池に用いられているものを用いるのが好ましい。導電剤としては、ニッケル水素二次電池の負極に一般的に用いられている導電剤が用いられる。例えば、カーボンブラック等が用いられる。
【0029】
負極板30は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、所定の形状に成形された負極芯体31を準備しておく(
図4)。他方、上記のような水素吸蔵合金粒子の集合体である水素吸蔵合金粉末と、導電剤と、結着剤と、水とを準備し、これらを混練して負極合剤のペーストを調製する。得られたペーストは負極芯体31に塗着され、乾燥させられる。乾燥後、負極板30に対し全体的に圧延が施される圧延工程により負極合剤35の密度が所定の値になるように調整が行われる。このようにして、負極板30が製造される。
【0030】
以上のようにして製造された正極板20及び負極板30は、セパレータ40を介在させた状態で渦巻き状に巻回して、渦状電極群50が形成される。このようにして得られた渦状電極群50は、外装缶10内に収容される。引き続き、当該外装缶10内には所定量のアルカリ電解液が注入される。その後、渦状電極群50及びアルカリ電解液を収容した外装缶10は、正極端子70を備えた封口体60により封口され、一実施形態に係る電池1が得られる。電池1は、初期活性化処理が施され、使用可能状態とされる。
【0031】
次いで、本発明の一実施形態の電池1の作用、効果について説明する。上述したように、一実施形態に係るニッケル水素二次電池1によれば、正極板20は、帯状の正極板本体部22と、正極板本体部22の一部から封口体60の側へ突出し、封口体60と電気的に接続される正極凸部23と、を含んでいる。又、負極板30は、帯状の負極板本体部32と、負極板本体部32の一部から封口体60の側へ突出し、封口体60と負極板本体部32との間で終端する負極凸部33と、を含んでいる。更に、正極板20及び負極板30は、セパレータ40を介して対向する部分の夫々に、正極活物質及び負極活物質を有する。このように、一実施形態に係る電池1においては、正極板20及び負極板30の各々が、正極板本体部22及び負極板本体部32とは別に正極凸部23及び負極凸部33を有しており、且つ、セパレータ40を介して対向する部分の夫々に正極活物質及び負極活物質を有している。つまり、正極板20及び負極板30の一部を高さ方向(外装缶10の軸線x方向)に長く形成することにより、渦状電極群50を厚み方向(外装缶10の径方向)に厚く形成することなく当該電池1の高容量化を実現することができる。更に、当該電池1の高容量化を図るために、セパレータ40を薄く形成する必要がないため、正極板20及び負極板30に生じたバリによるセパレータ40の突き破りを抑制することができ、当該電池1の内部での短絡発生を抑制することができる。このようにして、内部での短絡発生を抑制しつつ、高容量化を実現することのできる電池1を提供することができる。
【0032】
又、一実施形態に係る電池1は、封口体60と正極凸部23との間に配設され、導電性及び弾性を有する接続部材を更に備える。このように、一実施形態に係る電池1においては、例えば正極凸部23が封口体60に直接接触しない場合であっても、封口体60と正極板20との間の電気接続を確実に形成することができる。
【0033】
[実施例]
以下の表1では、本実施例に係る電池と比較例1,2に係る電池とを100セルずつ製造し、これらの電池における短絡発生数と放電容量とを比較した結果を示す。本試験条件は、充電時間を「0.1C × 16H」とし、休止時間を「1H」とし、放電時間を「0.2C」とする。とする。ここで、「C」とは、充電及び放電のスピードを意味しており、「1C」とは、1Hで完全充電又は完全放電させる電流値を意味する。つまり、本試験条件は、10時間で完全充電する充電速度で16H充電し、その後1H休止し、その後、5時間で完全放電する放電速度で放電するものである。なお、表1における数字は、実施例における実験値を基準にした比として表示するものである。
[表1]
[電池高さ]
本実施例では、電池高さ、即ち、
図1における軸線xに沿う方向における底壁15の下面と正極端子70の上面との間の距離を基準「1」とする。比較例1、2の電池高さは、実施例における電池高さと同じである。
[正極]
本実施例では、正極板20の全長L2(
図2参照)を基準「1」とする。比較例1、2の正極板の全長は、実施例における正極板20の全長と同じである。
本実施例では、正極板20の高さ、即ち正極板本体部22の高さH2(
図2)を基準「1」とし、正極板20の正極凸部23における高さH1(
図2)を「1.04」とする。この際、L1:L2=1:1.72とした。比較例1、2の正極板の高さは、実施例における正極板本体部22の高さH2と同じである。つまり、比較例1、2の正極板は、長さL2、高さH2の矩形である。
本実施例では、正極板20の厚み、即ち正極基材21及び正極合剤25を含む厚みを基準「1」とする。比較例1の正極板の厚みは、実施例における正極板20の厚みと同じであり、比較例2の正極板の厚みは、実施例における正極板20の厚みに対し「1.02」とする。つまり、比較例2では、本実施例の正極合剤の量よりも多くの正極合剤を塗布した。
上述したように、所定の形状に成形された正極基材を準備しておく(
図2)。他方、正極活物質粒子、水及び結着剤を含む正極合剤スラリーを調製する。調製された正極合剤スラリーは、正極基材としての発泡ニッケルのシートに充填され、乾燥させられる。乾燥後、水酸化ニッケル粒子等が充填された発泡ニッケルのシートは、圧延してから裁断されて正極板が製造される。このような正極板を100セル製造した(
図3)。
[負極]
本実施例では、負極板30の全長L4(
図4参照)を基準「1」とする。比較例1、2の負極板の全長は、実施例における負極板30の全長と同じとする。
本実施例では、負極板の高さ、即ち負極板本体部32の高さH3(
図4)を基準「1」とし、負極板30の負極凸部33における高さH4(
図4)を「1.04」とする。この際、L3:L4=1:2.72とした。比較例1、2の負極板の高さは、実施例における負極板本体部32の高さH3と同じとする。つまり、比較例1、2の負極板は、長さL4、高さH3の矩形である。
本実施例では、負極板30の厚み、即ち負極芯体31及び負極合剤35を含む厚みを基準「1」とする。比較例1の負極板の厚みは、実施例における負極板30の厚みと同じであり、比較例2の負極板の厚みは、実施例における負極板30の厚みに対し「1.02」とする。つまり、比較例2では、本実施例の負極合剤の量よりも多くの負極合剤を塗布した。
上述したように、所定の形状に成形された負極芯体を準備しておく(
図4)。他方、上記のような水素吸蔵合金粒子の集合体である水素吸蔵合金粉末と、導電剤と、結着剤と、水とを準備し、これらを混練して負極合剤のペーストを調製する。得られたペーストは負極芯体に塗着され、乾燥させられる。乾燥後、負極板に対し全体的に圧延が施される圧延工程により負極合剤の密度が所定の値になるように調整が行われて負極板が製造される。このような負極板を100セル製造した。
[渦状電極群]
以上のようにして製造された正極板及び負極板は、セパレータを介在させた状態で渦巻き状に巻回して、渦状電極群が形成される。このようにして得られた渦状電極群は、外装缶内に収容される。引き続き、当該外装缶内には所定量のアルカリ電解液が注入される。その後、渦状電極群及びアルカリ電解液を収容した外装缶は、正極端子を備えた封口体により封口されて電池が得られる。電池は、初期活性化処理が施され、使用可能状態とされる。
[短絡発生、放電容量]
このようにして製造された電池に対して、上述した試験条件を負荷し、上記表1の結果を得た。上記表1に示すように、本実施例の電池によれば、比較例1の電池に対して放電容量を大きくすることができ、且つ、比較例2の電池に対して短絡発生本数を少なくできることを確認できた。
【0034】
以上、好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に係るニッケル水素二次電池1に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。また、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【0035】
1 ニッケル水素二次電池(アルカリ蓄電池)
10 外装缶
20 正極板
22 正極板本体部
23 正極凸部
30 負極板
32 負極板本体部
33 負極凸部
40 セパレータ
50 渦状電極群
60 封口体
70 正極端子