(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】樹脂封止モジュール、及び樹脂封止モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20240514BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240514BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20240514BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H01L23/30 B
H01L21/56 R
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2020087161
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 雄幸
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/096277(WO,A1)
【文献】特開昭63-067758(JP,A)
【文献】特開2014-056880(JP,A)
【文献】国際公開第2012/093690(WO,A1)
【文献】特開2008-288610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 21/56
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフロー工程により回路基板に実装される樹脂封止モジュールであって、
一方の面に外部電極が設けられたプリント基板と、
該プリント基板における前記一方の面に背向する他方の面に実装された電子部品と、
該電子部品が少なくとも部分的に埋設されるように、前記プリント基板の前記他方の面に配置された熱可塑性樹脂からなる第1の層と、
該第1の層における前記プリント基板と対向する下面に背向する上面に配置された熱硬化性樹脂からなる第2の層と、を備え、
前記プリント基板は、前記他方の面において前記一方の面の方向に凹み、且つ前記第1の層を少なくとも部分的に包囲する窪み部を有し、
前記第2の層は、前記上面の全体を被覆する上面被覆部と、前記上面及び前記下面を接続する前記第1の層の側面の全体を被覆する側面被覆部と
、前記側面被覆部から連続して延びて前記窪み部に突入する係合突部とを有する、ことを特徴とする樹脂封止モジュール。
【請求項2】
前記第1の層には、前記電子部品の全体が埋設さ
れている、請求項1記載の樹脂封止モジュール。
【請求項3】
前記第1の層をなす前記熱可塑性樹脂の軟化温度は、前記第2の層をなす前記熱硬化性樹脂の硬化温度よりも高い、請求項1又は2記載の樹脂封止モジュール。
【請求項4】
前記窪み部は、前記第1の層を全周に亘って包囲している、請求項
1記載の樹脂封止モジュール。
【請求項5】
前記第2の層は、前記上面被覆部及び前記側面被覆部を接続する被覆接続部を更に有し、該被覆接続部は、前記上面被覆部及び前記側面被覆部の厚さよりも大きい厚さを有する、請求項1から
4までのいずれか1項記載の樹脂封止モジュール。
【請求項6】
リフロー工程により回路基板に実装される樹脂封止モジュールの製造方法であって、
一方の面に外部電極が設けられ、前記一方の面に背向する他方の面に電子部品が実装されたプリント基板を準備する準備工程と、
該準備工程の後、前記電子部品が少なくとも部分的に埋設されるように、前記プリント基板の前記他方の面に熱可塑性樹脂を配置して第1の層を形成する第1の層形成工程と、
該第1の層形成工程の後、前記第1の層における前記プリント基板と対向する下面に背向する上面に熱硬化性樹脂を配置して第2の層を形成する第2の層形成工程と、を備え、
前記第1の層形成工程の後且つ前記第2の層形成工程の前に第1の切削工程を備え、該第1の切削工程において、前記他方の面において前記一方の面の方向に凹み、且つ前記第1の層を少なくとも部分的に包囲する窪み部が形成されるように前記プリント基板を切削し、
前記第2の層形成工程において、前記上面の全体を被覆する上面被覆部と、前記上面及び前記下面を接続する前記第1の層の側面の全体を被覆する側面被覆部とを含むように、さらに、
前記側面被覆部から連続して延び、前記窪み部に突入する係合突部を含むように、前記第2の層を形成する、ことを特徴とする樹脂封止モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記第1の層形成工程において、該第1の層に前記電子部品の全体が埋設されるように前記第1の層を形成する、請求項
6記載の製造方法。
【請求項8】
前記準備工程において、前記熱硬化性樹脂の硬化温度よりも高い軟化温度を有する前記熱可塑性樹脂を準備する、請求項
6又は
7記載の製造方法。
【請求項9】
前記第1の切削工程において、前記窪み部が前記第1の層を全周に亘って包囲するように前記プリント基板を切削する、請求項
6記載の製造方法。
【請求項10】
前記第1の層形成工程の後且つ前記第1の切削工程の前に第2の切削工程を備え、該第2の切削工程において、前記第2の層が前記上面被覆部及び前記側面被覆部を接続する被覆接続部を有するように、且つ、該被覆接続部が前記上面被覆部及び前記側面被覆部の厚さよりも大きい厚さを有するように、前記被覆接続部に対応する前記第1の層の部分を切削する、請求項
6又は
9記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂封止モジュール、特にプリント基板に実装された電子部品を樹脂で封止した樹脂封止モジュール、及び当該樹脂封止モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント基板上に実装された半導体チップ等の電子部品を、熱可塑性樹脂で封止した樹脂封止モジュールが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、底面に外部電極が形成された基板と、基板における底面とは反対の面に実装された電子部品と、当該電子部品が埋設されるように当該基板に配置された熱可塑性樹脂層と、当該熱可塑性樹脂層の基板とは反対の面に配置された熱硬化性樹脂層と、を備える樹脂封止モジュールについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の樹脂封止モジュールは、当該樹脂封止モジュールを別の基板等に実装するためのリフロー工程において、基板が熱膨張するよりも先に熱可塑性樹脂が軟化するように構成されている。これにより、基板の伸びが熱可塑性樹脂層にほとんど伝達されず、基板の反りを抑制している。
【0006】
他方、特許文献1に記載の樹脂封止モジュールは、熱可塑性樹脂層を熱硬化性樹脂層と基板とによって挟み込むように構成されている。これにより、リフロー工程において熱可塑性樹脂が軟化した場合であっても、熱可塑性樹脂の流動を抑制し、当該熱可塑性樹脂層の形状の維持を図っている。
【0007】
しかしながら、当該樹脂封止モジュールでは、リフロー工程において、熱可塑性樹脂の上方及び下方への流動は抑制されるものの、当該熱可塑性樹脂の側方への流動を十分に抑制することができず、当該熱可塑性樹脂層の形状を維持できない虞があった。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱可塑性樹脂の形状の維持を図ることのできる樹脂封止モジュール、及び当該樹脂封止モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る樹脂封止モジュールは、一方の面に外部電極が設けられたプリント基板と、該プリント基板における前記一方の面に背向する他方の面に実装された電子部品と、該電子部品が少なくとも部分的に埋設されるように、前記プリント基板の前記他方の面に配置された熱可塑性樹脂からなる第1の層と、該第1の層における前記プリント基板と対向する下面に背向する上面に配置された熱硬化性樹脂からなる第2の層と、を備え、該第2の層は、前記上面の全体を被覆する上面被覆部と、前記上面及び前記下面を接続する前記第1の層の側面の全体を被覆する側面被覆部とを有する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る樹脂封止モジュールにおいて、前記第1の層には、前記電子部品の全体が埋設さている。
【0011】
本発明の一態様に係る樹脂封止モジュールにおいて、前記第1の層をなす前記熱可塑性樹脂の軟化温度は、前記第2の層をなす前記熱硬化性樹脂の硬化温度よりも高い。
【0012】
本発明の一態様に係る樹脂封止モジュールにおいて、前記プリント基板は、前記他方の面において前記一方の面の方向に凹み、且つ前記第1の層を少なくとも部分的に包囲する窪み部を有し、前記第2の層は、前記側面被覆部から連続して延び、前記窪み部に突入する係合突部を更に有する。
【0013】
本発明の一態様に係る樹脂封止モジュールにおいて、前記窪み部は、前記第1の層を全周に亘って包囲している。
【0014】
本発明の一態様に係る樹脂封止モジュールにおいて、前記第2の層は、前記上面被覆部及び前記側面被覆部を接続する被覆接続部を更に有し、該被覆接続部は、前記上面被覆部及び前記側面被覆部の厚さよりも大きい厚さを有する。
【0015】
また、本発明に係る樹脂封止モジュールの製造方法は、一方の面に外部電極が設けられ、前記一方の面に背向する他方の面に電子部品が実装されたプリント基板を準備する準備工程と、該準備工程の後、前記電子部品が少なくとも部分的に埋設されるように、前記プリント基板の前記他方の面に熱可塑性樹脂を配置して第1の層を形成する第1の層形成工程と、該第1の層形成工程の後、前記第1の層における前記プリント基板と対向する下面に背向する上面に熱硬化性樹脂を配置して第2の層を形成する第2の層形成工程と、を備え、前記第2の層形成工程において、前記上面の全体を被覆する上面被覆部と、前記上面及び前記下面を接続する前記第1の層の側面の全体を被覆する側面被覆部とを含むように、前記第2の層を形成する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る製造方法において、前記第1の層形成工程において、該第1の層に前記電子部品の全体が埋設されるように前記第1の層を形成する。
【0017】
本発明の一態様に係る製造方法において、前記準備工程において、前記熱硬化性樹脂の硬化温度よりも高い軟化温度を有する前記熱可塑性樹脂を準備する。
【0018】
本発明の一態様に係る製造方法において、前記第1の層形成工程の後且つ前記第2の層形成工程の前に第1の切削工程を備え、該第1の切削工程において、前記他方の面において前記一方の面の方向に凹み、且つ前記第1の層を少なくとも部分的に包囲する窪み部が形成されるように前記プリント基板を切削し、前記第2の層形成工程において、前記側面被覆部から連続して延び、前記窪み部に突入する係合突部を含むように前記第2の層を形成する。
【0019】
本発明の一態様に係る製造方法において、前記第1の切削工程において、前記窪み部が前記第1の層を全周に亘って包囲するように前記プリント基板を切削する。
【0020】
本発明の一態様に係る製造方法において、前記第1の層形成工程の後且つ前記第1の切削工程の前に第2の切削工程を備え、該第2の切削工程において、前記第2の層が前記上面被覆部及び前記側面被覆部を接続する被覆接続部を有するように、且つ、該被覆接続部が前記上面被覆部及び前記側面被覆部の厚さよりも大きい厚さを有するように、前記被覆接続部に対応する前記第1の層の部分を切削する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る樹脂封止モジュールによれば、第2の層は、前記第1の層の上面の全体を被覆する上面被覆部と、前記上面及び前記第1の層の下面を接続する前記第1の層の側面の全体を被覆する側面被覆部とを有する。このように、本発明に係る樹脂封止モジュールにおいては、熱可塑性樹脂からなる第1の層は、その上面及び側面を熱硬化性樹脂層からなる第2の層によって被覆され、その下面を基板によって被覆されている。つまり、第1の層は、第2の層及び基板によって完全に密閉された状態に形成されている。このため、樹脂封止モジュールを別の基板等に実装するためのリフロー工程において、熱可塑性樹脂が軟化した場合であっても、当該熱可塑性樹脂の外部への流出を確実に防止することができ、ひいては第1の層の形状を維持することができる。このようにして、熱可塑性樹脂からなる第1の層の形状を維持することのできる樹脂封止モジュールを提供することができる。
【0022】
また、本発明に係る樹脂封止モジュールの製造方法によれば、前記第2の層形成工程において、前記上面の全体を被覆する上面被覆部と、前記上面及び前記下面を接続する前記第1の層の側面の全体を被覆する側面被覆部とを含むように、前記第2の層を形成する。このように、本発明に係る樹脂封止モジュールの製造方法においては、熱可塑性樹脂からなる第1の層は、その上面及び側面を熱硬化性樹脂層からなる第2の層によって被覆され、その下面を基板によって被覆されて形成される。つまり、第1の層は、第2の層及び基板によって完全に密閉された状態に形成される。このため、樹脂封止モジュールを別の基板等に実装するためのリフロー工程において、熱可塑性樹脂が軟化した場合であっても、当該熱可塑性樹脂の外部への流出を確実に防止することができ、ひいては第1の層の形状を維持することができる。このようにして、熱可塑性樹脂からなる第1の層の形状を維持することのできる樹脂封止モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュールの概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法における準備工程を示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法における第1の層形成工程の一工程を示す断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法における第1の層形成工程の一工程を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法における第1の層形成工程の一工程を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法における第1の層形成工程の一工程を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法における第1の切削工程を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法における第2の層形成工程の一工程を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法における第2の層形成工程の一工程を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法における第2の層形成工程の一工程を示す断面図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法における第2の層形成工程の一工程を示す断面図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法における分離工程を示す断面図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る樹脂封止モジュールの概略構成を示す断面図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法の一工程を示す断面図であり、(a)は第2の切削工程を示す断面図であり、(b)は第1の切削工程を示す断面図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係る樹脂封止モジュールの変形例としての樹脂封止モジュールの概略構成を示す断面図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係る樹脂封止モジュールの変形例としての樹脂封止モジュールの製造方法の一工程を示す断面図であり、(a)は第2の切削工程を示す断面図であり、(b)は第1の切削工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明を具体化した樹脂封止モジュール1を説明する。
【0025】
図1は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1の概略構成を示す断面図である。なお、説明の便宜上、
図1に示すプリント基板10を基準に、電子部品20が設けられている側を上方、外部電極25が設けられる側を下方とする。また、
図1に示す電子部品20の配列方向を左右方向とし、上下方向及び左右方向に垂直な方向を前後方向とする。
【0026】
<第1実施形態>
図1に示すように、第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1は、プリント基板10と、電子部品20と、第1の層30と、第2の層40とを備える。
【0027】
プリント基板10は、ガラスエポキシ樹脂から形成された平板状の部材である。具体的には、プリント基板10は、上下方向において所定の厚さを有し、下方を向いて形成された基板下面12と、上方を向いて形成された基板上面14とを有する平板状の部材である。基板上面14は、基板下面12に対して背向している。基板下面12及び基板上面14は、それぞれ、前後左右方向に広がる面である。
【0028】
図1に示すように、プリント基板10の基板下面12(一方の面)には、外部電極25が取り付けられている。又、プリント基板10の基板上面14(他方の面)には、電子部品20が実装されている。具体的には、プリント基板10の基板上面14には、複数のランド16が形成されている。そして、当該ランド16に、電子部品20の一つである半導体チップ21に予め形成されたはんだバンプ18が接続されている。これにより、半導体チップ21は、はんだバンプ18、はんだ(図示せず)、及びランド16を介して、プリント基板10に電気接続される。又、別のランド16には、電子部品20の一つであるチップ部品23(抵抗、コンデンサ、インダクタ等)が、はんだ19を介して接続されている。これにより、チップ部品23は、はんだ19及びランド16を介して、プリント基板10に電気接続される。なお、はんだバンプ18及びはんだ19の融点は約220℃である。
【0029】
図1に示すように、プリント基板10は、基板上面14において基板下面12の方向に凹み、且つ後述する第1の層30を少なくとも部分的に包囲する窪み部11を有する。具体的には、
図1に示すように、窪み部11は、プリント基板10の左右方向の角隅を切り欠いて形成されており、当該窪み部11は前後方向に延びている。これにより、窪み部11は、プリント基板10の右方においては上方及び右方に開放して前後方向に延在しており、プリント基板10の左方においては上方及び左方に開放して前後方向に延在している。又、窪み部11は、プリント基板10の前後方向の角隅を切り欠いて形成されてもよく、窪み部11は左右方向に延びていてもよい。これにより、窪み部11は、プリント基板10の前方においては上方及び前方に開放して左右方向に延在しており、プリント基板10の後方においては上方及び後方に開放して左右方向に延在している。プリント基板10の前後方向の角隅及び左右方向の角隅に窪み部11を形成することによって、窪み部11は、後述する第1の層30を全周に亘って包囲する。
【0030】
第1の層30は、熱可塑性樹脂から形成されている。具体的には、第1の層30は、SiO2からなる無機フィラーを含有したポリカーボネートやポリアミド系の熱可塑性樹脂から形成されている。当該熱可塑性樹脂の軟化温度は、150℃~200℃に設定されている。このように、第1の層30をなす熱可塑性樹脂の軟化温度は、はんだバンプ18及びはんだ19の融点より低く設定されている。又、第1の層30をなす熱可塑性樹脂の軟化温度は、後述する第2の層40をなす熱硬化性樹脂の硬化温度よりも高く設定されている。
【0031】
第1の層30は、電子部品20が少なくとも部分的に埋設されるように、プリント基板10の基板上面14に配置されている。より詳細には、
図1に示すように、第1の層30には、電子部品20の全体が埋設されてもよい。つまり、電子部品20の各々は、第1の層30の内部に配置されており、第1の層30から上下方向、左右方向、前後方向のいずれの方向にも突出することがない。
図1に示すように、第1の層30は、断面において略矩形の輪郭を有するように形成されており、プリント基板10と対向する面であり、下方を向いて形成された第1の層下面32(下面)と、当該第1の層下面32に背向し、上方を向いて形成された第1の層上面34(上面)とを有する。
【0032】
第2の層40は、熱硬化性樹脂から形成されている。具体的には、第2の層40は、SiO2からなる無機フィラーを含有したエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂から形成されている。熱硬化性樹脂の硬化温度は、100℃~150℃に設定されている。このように、第2の層40をなす熱硬化性樹脂の硬化温度は、第1の層30をなす熱可塑性樹脂の軟化温度より低く設定されている。
【0033】
第2の層40は、第1の層上面34に配置されており、当該第1の層上面34の全体を被覆する上面被覆部42と、第1の層上面34及び第1の層下面32を接続する第1の層30の第1の層側面36(側面)の全体を被覆する側面被覆部44とを有する。具体的には、第2の層40の上面被覆部42は、
図1に示す断面において、左右方向に延びる平板状の部分である。又、第2の層40の側面被覆部44は、
図1に示す断面において、上面被覆部42の左右方向の端部から下方向に延びる部分である。これにより、第2の層40の上面被覆部42、側面被覆部44、及びプリント基板10の基板上面14により、第1の層30の全体が包囲される。
【0034】
図1に示すように、第2の層40は、側面被覆部44から連続して延び、窪み部11に突入する係合突部46を更に有する。具体的には、第2の層40の係合突部46は、
図1に示す断面において、側面被覆部44の下側端部から連続して下方に延びる部分である。係合突部46は、窪み部11の形状に倣う形状を有している。
【0035】
次いで、
図2~
図12を参照しながら第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1の製造方法について説明する。
【0036】
図2は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1の製造方法における準備工程を示す断面図である。準備工程では、基板下面12(一方の面)に外部電極25が設けられ、基板下面12に背向する基板上面14(他方の面)に電子部品20が実装されたプリント基板10を準備する。具体的には、同一モジュールの回路パターンが複数個格子状に多面付けされ、ガラスエポキシ樹脂から形成された平板状の部材であるプリント基板10を用意する。当該プリント基板10に形成された複数のランド16上に、ペースト状のはんだ19を印刷する。当該はんだ19の上に半導体チップ21やチップ部品23(抵抗、コンデンサ、インダクタ等)を載置した後、リフローにより電子部品20をプリント基板10に実装する。なお、半導体チップ21には予めはんだバンプ18が形成されており、半導体チップ21は、はんだバンプ18を介してはんだ(図示せず)上に載置される。はんだバンプ18及びはんだ19の融点は約220℃である。又、準備工程において、熱硬化性樹脂と、当該熱硬化性樹脂の硬化温度よりも高く且つはんだバンプ18及びはんだ19の融点より低い軟化温度を有する熱可塑性樹脂とを準備する。熱可塑性樹脂は、SiO
2からなる無機フィラーを含有したポリカーボネートやポリアミド系の樹脂である。当該熱可塑性樹脂の軟化温度は、150℃~200℃に設定されている。このように、第1の層30をなす熱可塑性樹脂の軟化温度は、はんだバンプ18及びはんだ19の融点より低く設定されている。熱硬化性樹脂は、SiO
2からなる無機フィラーを含有したエポキシ樹脂である。熱硬化性樹脂の硬化温度は、100℃~150℃に設定されている。
【0037】
図3~
図6は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1の製造方法における第1の層形成工程の一工程を示す断面図である。上記準備工程の後の第1の層形成工程においては、電子部品20が少なくとも部分的に埋設されるように、プリント基板10の基板上面14に熱可塑性樹脂を配置して第1の層30を形成する。第1の層形成工程において、第1の層30に電子部品20の全体が埋設されるように第1の層30を形成してもよい。
【0038】
具体的には、準備工程において用意した熱可塑性樹脂を加温して第1液状樹脂を準備する。次いで、
図3に示すように、プリント基板10を加温基板テーブル50及びメタルマスク55を用いて挟持する。その後、真空印刷法により、半導体チップ21及びチップ部品23の全体を覆うように、当該第1液状樹脂を、第1のスキージ60を用いてプリント基板10の上に一次印刷する(
図3)。その後、真空脱泡により第1液状樹脂中の気泡を除去する(
図3)。
図3に示すように、一次印刷した状態において、半導体チップ21及びチップ部品23の下側に、第1液状樹脂は充填されていない。次いで、真空差圧(圧力を大気圧まで戻して差圧を生じさせること)により、大気の力で、半導体チップ21及びチップ部品23の下側の空隙を第1液状樹脂で充填する(
図4)。次いで、第2のスキージ65を用いて、第1液状樹脂の表面を平滑化、即ち二次印刷する(
図5)。次いで、第1液状樹脂の融点以下まで冷却して第1液状樹脂を固化することにより、熱可塑性樹脂からなる第1の層30を形成する(
図6)。
【0039】
図7は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1の製造方法における第1の切削工程を示す断面図である。
図7に示すように、第1の層形成工程の後且つ後述する第2の層形成工程の前に設けられた第1の切削工程では、基板上面14において基板下面12の方向に凹み、且つ第1の層30を少なくとも部分的に包囲する窪み部11が形成されるようにプリント基板10を切削する。なお、第1の切削工程において、窪み部11が第1の層30を全周に亘って包囲するようにプリント基板10を切削してもよい。具体的には、第1のダイシング工具70を用いて、上方から下方へ向けて第1の層30及びプリント基板10を切削する。更に、第1のダイシング工具70を用いて、プリント基板10の前後方向及び左右方向に延在する窪み部11を形成する。
【0040】
図8~
図11は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1の製造方法における第2の層形成工程の一工程を示す断面図である。第1の層形成工程の後の第2層形成工程では、第1の層30におけるプリント基板10と対向する第1の層下面32(下面)に背向する第1の層上面34(上面)に熱硬化性樹脂を配置して第2の層40を形成する。具体的には第2の層形成工程において、第1の層上面34の全体を被覆する上面被覆部42と、第1の層上面34及び第1の層下面32を接続する第1の層30の第1の層側面36(側面)の全体を被覆する側面被覆部44とを含むように、第2の層40を形成する。又、第2の層形成工程において、側面被覆部44から連続して延び、窪み部11に突入する係合突部46を含むように第2の層40を形成する。
【0041】
具体的には、準備工程において用意した熱硬化性樹脂からなる第2液状樹脂を準備する。次いで、
図8に示すように、プリント基板10を常温基板テーブル51及びメタルマスク55を用いて挟持する。その後、真空印刷法により、第1の層30の第1の層上面34、及び第1の切削工程で形成されたモジュール個片の間に当該第2液状樹脂を一次印刷して、第1の層上面34及び第1の層側面36を第2液状樹脂で被覆する(
図8)。次いで、真空脱泡により第2液状樹脂中の気泡を除去する(
図8)。次いで、真空差圧(圧力を大気圧まで戻して差圧を生じさせること)により、大気の力で、窪み部11を第2液状樹脂で充填する(
図9)。次いで、第2のスキージ65を用いて、第2液状樹脂の表面を平滑化、即ち二次印刷する(
図10)。次いで、第2液状樹脂を加熱して当該第2液状樹脂を硬化させることにより、熱硬化性樹脂からなる第2の層40を形成する(
図11)。
【0042】
図12は、第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1の製造方法における分離工程を示す概略断面図である。
図12に示すように、湿式ダイシングからなる第2のダイシング工具75を用いて、モジュール個片間における第2の層40及びプリント基板10を切断することで、複数の樹脂封止モジュール1に分離し、これにより樹脂封止モジュール1が完成する。
【0043】
次いで、本発明の第1実施形態の樹脂封止モジュール1の作用、効果について説明する。上述したように、第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1によれば、第2の層40は、第1の層上面34の全体を被覆する上面被覆部42と、第1の層側面36の全体を被覆する側面被覆部44とを有する。又、第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1の製造方法によれば、第2の層形成工程において、第1の層上面34の全体を被覆する上面被覆部42と、第1の層側面36の全体を被覆する側面被覆部44とを含むように、第2の層40を形成する。このように、第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1及び当該樹脂封止モジュール1の製造方法においては、熱可塑性樹脂からなる第1の層30は、第1の層上面34及び第1の層側面36を熱硬化性樹脂層からなる第2の層40によって被覆され、第1の層下面32をプリント基板10によって被覆される。つまり、第1の層30は、第2の層40及びプリント基板10によって完全に密閉された状態に形成される。このため、樹脂封止モジュール1を別の基板等に実装するためのリフロー工程において、第1の層30を形成する熱可塑性樹脂が軟化した場合であっても、当該熱可塑性樹脂の外部への流出を確実に防止することができ、ひいては第1の層30の形状を維持することができる。このようにして、熱可塑性樹脂からなる第1の層30の形状を維持することのできる樹脂封止モジュール1及び当該樹脂封止モジュール1の製造方法を提供することができる。
【0044】
第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1によれば、第1の層30には、電子部品20の全体が埋設さている。又、第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1の製造方法によれば、第1の層形成工程において、第1の層30に電子部品20の全体が埋設されるように第1の層30を形成する。このように、電子部品20の各々は、第1の層30の内部に配置されており、第1の層30から上下方向、左右方向、前後方向のいずれの方向にも突出することがない。このため、樹脂封止モジュール1を別の基板等に実装するためのリフロー工程において、電子部品20とプリント基板10とを電気接続するはんだ19が溶融し、膨張し、この膨張によって応力が発生した場合であっても、リフロー工程において軟化した第1の層30によって当該応力を分散することができる。これにより、第1の層30とプリント基板10との間、第1の層30と電子部品20との間、はんだバンプ18と第1の層30との間、はんだ19と第1の層30との間での剥離発生を抑制でき、はんだフラッシュによるショート発生の抑制を図ることができる。
【0045】
第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1によれば、第1の層30をなす熱可塑性樹脂の軟化温度は、第2の層40をなす熱硬化性樹脂の硬化温度よりも高く、且つ、はんだバンプ18及びはんだ19の融点より低く設定されている。又、第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1の製造方法によれば、準備工程において、熱硬化性樹脂の硬化温度よりも高く、且つ、はんだバンプ18及びはんだ19の融点より低い軟化温度を有する熱可塑性樹脂を準備する。このため、樹脂封止モジュール1を別の基板等に実装するためのリフロー工程において、樹脂封止モジュール1を加熱する際、熱可塑性樹脂が軟化する前に熱硬化性樹脂が硬化する。このため、熱可塑性樹脂が軟化した場合であっても、第1の層30の形状を維持することができる。又、当該リフロー工程において、熱可塑性樹脂が軟化した後にはんだ19が溶融するため、はんだ19やはんだバンプ18が溶融し、膨張し、この膨張によって応力が発生した場合であっても、リフロー工程において軟化した第1の層30によって当該応力を分散することができる。これにより、第1の層30とプリント基板10との間、第1の層30と電子部品20との間、はんだバンプ18と第1の層30との間、はんだ19と第1の層30との間での剥離発生を抑制でき、はんだフラッシュによるショート発生の抑制を図ることができる。
【0046】
第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1によれば、プリント基板10は、基板上面14において基板下面12の方向に凹み、且つ第1の層30を少なくとも部分的に包囲する窪み部11を有する。又、第2の層40は、側面被覆部44から連続して延び、窪み部11に突入する係合突部46を有する。又、第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1の製造方法によれば、第1の切削工程では、基板上面14において基板下面12の方向に凹み、且つ第1の層30を少なくとも部分的に包囲する窪み部11が形成されるようにプリント基板10を切削する。又、第2の層形成工程において、側面被覆部44から連続して延び、窪み部11に突入する係合突部46を含むように第2の層40を形成する。このように、熱硬化性樹脂層からなる第2の層40は、熱可塑性樹脂からなる第1の層30における第1の層上面34及び第1の層側面36を被覆しつつ、更に、係合突部46において窪み部11に突入している。つまり、第1の層30は、第2の層40によって一層確実に密閉された状態に形成される。このため、樹脂封止モジュール1を別の基板等に実装するためのリフロー工程において、第1の層30を形成する熱可塑性樹脂が軟化した場合であっても、当該熱可塑性樹脂の外部への流出を一層確実に防止することができ、ひいては第1の層30の形状を維持することができる。
【0047】
第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1によれば、窪み部11は、第1の層30を全周に亘って包囲する。又、第1実施形態に係る樹脂封止モジュール1の製造方法によれば、第1の切削工程において、窪み部11が第1の層30を全周に亘って包囲するようにプリント基板10を切削する。このように、熱硬化性樹脂層からなる第2の層40は、熱可塑性樹脂からなる第1の層30を第1の層上面34及び第1の層側面36において被覆しつつ、更に、係合突部46において窪み部11に突入している。つまり、第1の層30は、第2の層40によって全周に亘って包囲され、より一層確実に密閉された状態に形成される。このため、樹脂封止モジュール1を別の基板等に実装するためのリフロー工程において、第1の層30を形成する熱可塑性樹脂が軟化した場合であっても、当該熱可塑性樹脂の外部への流出をより一層確実に防止することができ、ひいては第1の層30の形状を維持することができる。
【0048】
<第2実施形態>
図13は、第2実施形態に係る樹脂封止モジュール2の概略構成を示す断面図である。
図14は、第2実施形態に係る樹脂封止モジュール2の製造方法の一工程を示す断面図であり、(a)は第2の切削工程を示す断面図であり、(b)は第1の切削工程を示す断面図である。
【0049】
樹脂封止モジュール2は、上述の樹脂封止モジュール1に対して、後述する第1の被覆接続部48(被覆接続部)が形成されている点で異なる。以下、上述の樹脂封止モジュール1と同じ又は類似する機能を有する構成については、樹脂封止モジュール1と同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0050】
図13に示すように、樹脂封止モジュール2において、第2の層40aは、上面被覆部42及び側面被覆部44を接続する第1の被覆接続部48(被覆接続部)を有し、第1の被覆接続部48は、上面被覆部42及び側面被覆部44の厚さよりも大きい厚さを有する。具体的には、第1の被覆接続部48は、
図13に示す断面において、右方向且つ下方向へ斜めに延びる部分と、左方向且つ下方向へ斜めに延びる部分とを含む。この場合、第1の被覆接続部48は、上面被覆部42の右端部及び側面被覆部44の上端部を接続し、且つ、上面被覆部42の左端部及び側面被覆部44の上端部を接続している。又、第1の被覆接続部48は、図示されない、前方向且つ下方向へ斜めに延びる部分と、後方向且つ下方向へ斜めに延びる部分とを更に含んでもよい。この場合、第1の被覆接続部48は、上面被覆部42の前端部及び側面被覆部44の上端部を接続し、且つ、上面被覆部42の後端部及び側面被覆部44の上端部を接続している。これにより、第1の被覆接続部48は、上面被覆部42及び側面被覆部44を全周に亘って接続する。
【0051】
又、第1の層30aは、第2の層40aの第1の被覆接続部48に対応するテーパ面38を有する。テーパ面38は、
図13に示すように、右方向且つ下方向へ斜めに延びる部分と、左方向且つ下方向へ斜めに延びる部分とを含む。この場合、テーパ面38は、
図13に示すように、第1の層上面34の左右両端の夫々を、第1の層側面36の夫々と接続する。又、テーパ面38は、図示されない、前方向且つ下方向へ斜めに延びる部分と、後方向且つ下方向へ斜めに延びる部分とを更に含んでもよい。この場合、テーパ面38は、第1の層上面34の前後両端の夫々を、第1の層側面36の夫々と接続する。これにより、テーパ面38は、第1の層上面34及び第1の層側面36を全周に亘って接続する。
【0052】
次いで、
図14を参照しながら、第2実施形態に係る樹脂封止モジュール2の製造方法について説明する。樹脂封止モジュール2の製造方法は、上述の樹脂封止モジュール1の製造方法に対して、後述する第2切削工程を備える点で異なる。以下、上述の樹脂封止モジュール1の製造方法と同じ又は類似する機能を有する構成については、樹脂封止モジュール1の製造方法と同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0053】
第1の層形成工程の後且つ第1の切削工程の前に第2の切削工程が設けられている。第2の切削工程において、第2の層40aが上面被覆部42及び側面被覆部44を接続する第1の被覆接続部48(被覆接続部)を有するように、且つ、第1の被覆接続部48が上面被覆部42及び側面被覆部44の厚さよりも大きい厚さを有するように、第1の被覆接続部48に対応する第1の層30aの部分を切削する。
【0054】
具体的には、
図14(a)に示すように、第2の切削工程において、V字形状の先端を有する第3のダイシング工具80が使用される。第3のダイシング工具80は、湿式ダイシングであり、モジュール個片間の第1の層30aの一部を切断して溝入れを行う。この際、第3のダイシング工具80の先端部がV字形を有するため、第1の層30aにテーパ面38が形成される。
図14(a)に示す態様では、合計4個のテーパ面38が看取される。テーパ面38は、第1の層30aにおいて、前後方向及び左右方向に延在するように形成される。
【0055】
次いで、
図14(b)に示すように、第2の切削工程の後の第1の切削工程において、基板上面14において基板下面12の方向に凹み、且つ第1の層30aを少なくとも部分的に包囲する窪み部11が形成されるようにプリント基板10を切削する。なお、第1の切削工程において、窪み部11が第1の層30aを全周に亘って包囲するようにプリント基板10を切削してもよい。具体的には、第1のダイシング工具70を用いて、上方から下方へ向けて第1の層30a及びプリント基板10を切削し、テーパ面38及び第1の層側面36が形成されるとともに、プリント基板10の前後方向及び左右方向に延在する窪み部11が形成される。一つのモジュール個片において、テーパ面38は、
図14(b)に示すように、右方向且つ下方向へ斜めに延びる部分と、左方向且つ下方向へ斜めに延びる部分とを含む。この場合、テーパ面38は、
図14(b)に示すように、第1の層上面34の左右両端の夫々を、第1の層側面36の夫々と接続する。又、テーパ面38は、図示されない、前方向且つ下方向へ斜めに延びる部分と、後方向且つ下方向へ斜めに延びる部分とを更に含んでもよい。この場合、テーパ面38は、第1の層上面34の前後両端の夫々を、第1の層側面36の夫々と接続する。これにより、テーパ面38は、第1の層上面34及び第1の層側面36を全周に亘って接続する。
【0056】
次いで、本発明の第2実施形態の樹脂封止モジュール2の作用、効果について説明する。上述したように、第2実施形態に係る樹脂封止モジュール2によれば、第2の層40aは、上面被覆部42及び側面被覆部44を接続する第1の被覆接続部48(被覆接続部)を有し、第1の被覆接続部48は、上面被覆部42及び側面被覆部44の厚さよりも大きい厚さを有する。又、第2実施形態に係る樹脂封止モジュール2の製造方法によれば、第2の切削工程において、第2の層40aが上面被覆部42及び側面被覆部44を接続する第1の被覆接続部48(被覆接続部)を有するように、且つ、第1の被覆接続部48が上面被覆部42及び側面被覆部44の厚さよりも大きい厚さを有するように、第1の被覆接続部48に対応する第1の層30aの部分を切削する。このように、第1の被覆接続部48の厚さが上面被覆部42及び側面被覆部44の厚さより大きいので、第1の被覆接続部48の剛性を上面被覆部42及び側面被覆部44の剛性よりも高く設定することができる。つまり、第1の被覆接続部48は、上面被覆部42及び側面被覆部44よりも変形し難く形成される。このため、樹脂封止モジュール2を別の基板等に実装するためのリフロー工程において、プリント基板10の熱膨張によって当該プリント基板10に反りが発生した場合であっても、当該反りやその他の外部応力に対する第2の層40aの変形量を抑制することができる。これにより、第2の層40aにおけるクラック発生を抑制でき、リフロー工程において、第1の層30aを形成する熱可塑性樹脂が軟化した場合であっても、当該熱可塑性樹脂の外部への流出を完全に防止することができ、ひいては第1の層30aの形状を維持することができる。
【0057】
<第2実施形態の変形例>
図15は、第2実施形態に係る樹脂封止モジュール2の変形例としての樹脂封止モジュール3の概略構成を示す断面図である。
図16は、第2実施形態に係る樹脂封止モジュール2の変形例としての樹脂封止モジュール3の製造方法の一工程を示す断面図であり、(a)は第2の切削工程を示す断面図であり、(b)は第1の切削工程を示す断面図である。
【0058】
樹脂封止モジュール3は、上述の樹脂封止モジュール1に対して、後述する第2の被覆接続部49(被覆接続部)が形成されている点で異なる。以下、上述の樹脂封止モジュール1と同じ又は類似する機能を有する構成については、樹脂封止モジュール1と同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0059】
図15に示すように、樹脂封止モジュール3において、第2の層40bは、上面被覆部42及び側面被覆部44を接続する第2の被覆接続部49(被覆接続部)を有し、第2の被覆接続部49は、上面被覆部42及び側面被覆部44の厚さよりも大きい厚さを有する。具体的には、第2の被覆接続部49は、
図15に示す断面において、上面被覆部42の右端部及び側面被覆部44の上端部に設けられた厚肉部分と、上面被覆部42の左端部及び側面被覆部44の上端部に設けられた厚肉部分とを含む。この場合、第2の被覆接続部49は、上面被覆部42の右端部及び側面被覆部44の上端部を接続し、且つ、上面被覆部42の左端部及び側面被覆部44の上端部を接続している。又、第2の被覆接続部49は、図示されない、上面被覆部42の前端部及び側面被覆部44の上端部に設けられた厚肉部分と、上面被覆部42の後端部及び側面被覆部44の上端部に設けられた厚肉部分とを含んでもよい。この場合、第2の被覆接続部49は、上面被覆部42の前端部及び側面被覆部44の上端部を接続し、且つ、上面被覆部42の後端部及び側面被覆部44の上端部を接続している。これにより、第2の被覆接続部49は、上面被覆部42及び側面被覆部44を全周に亘って接続する。
【0060】
又、第1の層30bは、第2の層40bの第2の被覆接続部49に対応する段差面39を有する。段差面39は、
図13に示すように、第1の層30の左右両側において上下方向に延びる面と、左右方向に延びる面とを含む。この場合、段差面39は、
図13に示すように、第1の層上面34の左右両端の夫々を、第1の層側面36の夫々と接続する。又、段差面39は、図示されない、上下方向の延びる面と、前後方向に延びる面とを含んでもよい。この場合、段差面39は、第1の層上面34の前後両端の夫々を、第1の層側面36の夫々と接続する。これにより、段差面39は、第1の層上面34及び第1の層側面36を全周に亘って接続する。
【0061】
次いで、
図16を参照しながら、第2実施形態に係る樹脂封止モジュール2の変形例としての樹脂封止モジュール3の製造方法について説明する。樹脂封止モジュール3の製造方法は、上述の樹脂封止モジュール1の製造方法に対して、後述する第2切削工程を備える点で異なる。以下、上述の樹脂封止モジュール1の製造方法と同じ又は類似する機能を有する構成については、樹脂封止モジュール1の製造方法と同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0062】
第1の層形成工程の後且つ第1の切削工程の前に第2の切削工程が設けられている。第2の切削工程において、第2の層40bが上面被覆部42及び側面被覆部44を接続する第2の被覆接続部49(被覆接続部)を有するように、且つ、第2の被覆接続部49が上面被覆部42及び側面被覆部44の厚さよりも大きい厚さを有するように、第2の被覆接続部49に対応する第1の層30bの部分を切削する。
【0063】
具体的には、
図16(a)に示すように、第2の切削工程において、矩形形状の先端を有する第4のダイシング工具85が使用される。第4のダイシング工具85は、湿式ダイシングであり、モジュール個片間の第1の層30bの一部を切断して溝入れを行う。この際、先端部が矩形を有するため、第1の層30bに段差面39が形成される。
図16(a)に示す態様では、合計4個の段差面39が看取される。段差面39は、第1の層30bにおいて、前後方向及び左右方向に延在するように形成される。
【0064】
次いで、
図16(b)に示すように、第2の切削工程の後の第1の切削工程において、基板上面14において基板下面12の方向に凹み、且つ第1の層30bを少なくとも部分的に包囲する窪み部11が形成されるようにプリント基板10を切削する。なお、第1の切削工程において、窪み部11が第1の層30bを全周に亘って包囲するようにプリント基板10を切削してもよい。具体的には、第1のダイシング工具70を用いて、上方から下方へ向けて第1の層30b及びプリント基板10を切削し、段差面39及び第1の層側面36が形成されるとともに、プリント基板10の前後方向及び左右方向に延在する窪み部11が形成される。一つのモジュール個片において、段差面39は、
図16(b)に示すように、第1の層上面34の左右両端の夫々を、第1の層側面36の夫々と接続する。又、段差面39は、図示されない、第1の層30の前後両側において上下方向に延びる面と、前後方向に延びる面とを含んでもよい。この場合、段差面39は、第1の層上面34の前後両端の夫々を、第1の層側面36の夫々と接続する。これにより、段差面39は、第1の層上面34及び第1の層側面36を全周に亘って接続する。
【0065】
次いで、本発明の第2実施形態の樹脂封止モジュール2の変形例に係る樹脂封止モジュール3の作用、効果について説明する。上述したように、樹脂封止モジュール3によれば、第2の層40bは、上面被覆部42及び側面被覆部44を接続する第2の被覆接続部49(被覆接続部)を有し、第2の被覆接続部49は、上面被覆部42及び側面被覆部44の厚さよりも大きい厚さを有する。又、第2実施形態に係る樹脂封止モジュール3の製造方法によれば、第2の切削工程において、第2の層40bが上面被覆部42及び側面被覆部44を接続する第2の被覆接続部49(被覆接続部)を有するように、且つ、第2の被覆接続部49が上面被覆部42及び側面被覆部44の厚さよりも大きい厚さを有するように、第2の被覆接続部49に対応する第1の層30bの部分を切削する。このように、第2の被覆接続部49の厚さが上面被覆部42及び側面被覆部44の厚さより大きいので、第2の被覆接続部49の剛性を上面被覆部42及び側面被覆部44の剛性よりも高く設定することができる。つまり、第2の被覆接続部49は、上面被覆部42及び側面被覆部44よりも変形し難く形成される。このため、樹脂封止モジュール3を別の基板等に実装するためのリフロー工程において、プリント基板10の熱膨張によって当該プリント基板10に反りが発生した場合であっても、当該反りやその他の外部応力に対する第2の層40bの変形量を抑制することができる。これにより、第2の層40bにおけるクラック発生を抑制でき、リフロー工程において、第1の層30bを形成する熱可塑性樹脂が軟化した場合であっても、当該熱可塑性樹脂の外部への流出を完全に防止することができ、ひいては第1の層30bの形状を維持することができる。
【0066】
以上、好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に係る樹脂封止モジュール1,2,3に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。また、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【0067】
例えば、上記実施形態では、真空印刷法を用いて樹脂封止モジュール1,2,3を製造する方法について説明したが、樹脂封止モジュール1,2,3の製造方法はこれに限定されるものではなく、例えば、ディスペンス法やコンプレッション法等を用いて製造することも可能である。
【符号の説明】
【0068】
1,2,3 樹脂封止モジュール
10 プリント基板
11 窪み部
12 基板下面(一方の面)
14 基板上面(他方の面)
20 電子部品
25 外部電極
30,30a,30b 第1の層
32 第1の層下面(下面)
34 第1の層上面(上面)
36 第1の層側面(側面)
40,40a,40b 第2の層
42 上面被覆部
44 側面被覆部
46 係合突部
48 第1の被覆接続部(被覆接続部)
49 第2の被覆接続部(被覆接続部)