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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240514BHJP
   B60R 11/04 20060101ALI20240514BHJP
   G01N 21/21 20060101ALI20240514BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20240514BHJP
   G03B 11/00 20210101ALI20240514BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240514BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240514BHJP
【FI】
G08G1/16 F
B60R11/04
G01N21/21 Z
G02B27/01
G03B11/00
G03B15/00 D
G03B15/00 Q
G06T7/00 300F
G06T7/00 660A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022005518
(22)【出願日】2022-01-18
(65)【公開番号】P2023104498
(43)【公開日】2023-07-28
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 邦光
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-159792(JP,A)
【文献】特開2020-159791(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0184199(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60R 11/04
G01N 21/21
G02B 27/01
G03B 11/00
G03B 15/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者の顔を含む顔画像を連続して取得するカメラと、
前記カメラのレンズ前に設置され、入射した光を直線偏光に変換し前記カメラに向けて出射する偏光子と、
取得した前記顔画像に基づいて前記運転者の偏光サングラスの着用を判定する制御部と、を備え、
前記カメラは、
前記偏光子の偏光方向が少なくとも鉛直方向に直交する水平方向になる状態で前記顔画像を取得し、
前記制御部は、
各前記顔画像に対応する輝度値を算出し、算出した輝度値を時系列に関連付けて輝度値情報として記憶手段に記憶させる算出手段と、
前記記憶手段に記憶された複数の輝度値情報のうち、現在の輝度値情報と、過去の輝度値情報とを比較して現在の輝度値情報が低下した場合、前記運転者が偏光サングラスを着用したものと判定する判定手段と、を備え、
当該判定結果を外部に出力する、
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記偏光子は、
前記偏光方向が鉛直方向に直交する水平方向になるように設置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記偏光子を前記カメラのレンズの光軸廻りに回転自在に支持し、かつ前記光軸廻りに回転駆動する回転駆動部をさらに備え、
前記カメラは、
前記回転駆動部により前記偏光子が回転駆動された回転駆動状態で前記顔画像を取得することを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記偏光子は液晶素子であり、
前記液晶素子を通電状態及び非通電状態のいずれか一方に切り替える液晶駆動部を有し、
前記液晶素子は、
前記通電状態において、前記偏光方向が鉛直方向と直交する水平方向になるように設置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記判定手段は、
前記運転者が前記偏光サングラスを着用したものと判定した後において、現在の輝度値情報と、過去の輝度値情報とを比較して現在の輝度値情報が過去の輝度値情報より上昇した場合、前記運転者が偏光サングラスを外したものと判定する、
請求項に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置等の車両用表示装置が搭載された車両において、運転者が偏光サングラスを装着していると、車両前方に表示された虚像(表示画像)が見難くなるおそれがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/194853号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転者が偏光サングラスを着用していることが分かれば、例えば、表示画像の輝度を上げたり、表示光の偏光角度を変えたりすることで、表示画像の視認性を上げることが可能となる。そのため、運転者が偏光サングラスを装着しているか否かを検出することについて必要性がある。
【0005】
本発明は、運転者の偏光サングラスの着用状態を容易に判定することができる車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両用表示装置は、車両の運転者の顔を含む顔画像を連続して取得するカメラと、前記カメラのレンズ前に設置され、入射した光を直線偏光に変換し前記カメラに向けて出射する偏光子と、取得した前記顔画像に基づいて前記運転者の偏光サングラスの着用を判定する制御部と、を備え、前記カメラは、前記偏光子の偏光方向が少なくとも鉛直方向に直交する水平方向になる状態で前記顔画像を取得し、前記制御部は、各前記顔画像に対応する輝度値を算出し、算出した輝度値を時系列に関連付けて輝度値情報として記憶手段に記憶させる算出手段と、前記記憶手段に記憶された複数の輝度値情報のうち、現在の輝度値情報と、過去の輝度値情報とを比較して現在の輝度値情報が低下した場合、前記運転者が偏光サングラスを着用したものと判定する判定手段と、を備え、当該判定結果を外部に出力する、ことを特徴とする。

【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用表示装置によれば、運転者の偏光サングラスの着用状態を容易に判定することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る車両用表示装置の車両への適用例を示す模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係る車両用表示装置の構成例を示すブロック図である。
図3図3(A)は、運転者P1の顔画像の一例を示す模式図、図3(B)は、運転者P2の顔画像の一例を示す模式図である。
図4図4は、第1実施形態に係る制御部にて実施される偏光サングラス着用判定処理の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、第2実施形態に係る車両用表示装置の構成例を示すブロック図である。
図6図6は、第2実施形態における制御部にて実施される偏光サングラス着用判定処理の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、第3実施形態に係る車両用表示装置の構成例を示すブロック図である。
図8図8は、第3実施形態における制御部にて実施される偏光サングラス着用判定処理の流れを示すフローチャートである。
図9図9(A)~図9(C)は、偏光サングラス着用判定時に用いられる判定領域の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る車両用表示装置について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。すなわち、以下の実施形態における構成要素には、いわゆる当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれ、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0010】
[第1実施形態]
本実施形態に係る車両用表示装置を図1図4を参照して説明する。車両用表示装置1は、図1に示すように、例えば自動車等の車両100内に配置される。車両100は、運転者Pから見て、その前方にステアリングホイール101が設置され、ステアリングホイール101の前方にインストルメントパネル102が設置され、インストルメントパネル102の前方にフロントウインドシールドFWが設置される。インストルメントパネル102は、車両100の前方の車室空間を区切る部材であり、スピードメーターなどの計器104などが設置される。インストルメントパネル102には、後述するHUDユニット20から投影される表示光を通過させる開口部102aが設けられる。フロントウインドシールドFWは、車両100の車内と車外との境界を成し、車両100の進行方向における前方の風景を透過する。
【0011】
車両用表示装置1は、カメラユニット10と、HUDユニット20とを備える。カメラユニット10は、運転者Pの視線を検出するものである。カメラユニット10は、車両100のインストルメントパネル102に設けられ、運転者Pと対向する。カメラユニット10は、図2に示すように、カメラ11と、偏光子30とを備える。
【0012】
カメラ11は、撮影手段の一例であり、運転者Pの顔を含む顔領域を撮影し、撮影した顔画像を連続して取得するものである。カメラ11は、レンズ12を有し、レンズ12が、運転者Pの顔に向けて配置されている。カメラ11は、車両100のACC(アクセサリー)電源又はIG(イグニッション)電源がオンされた場合に起動し、これらの電源がオフされるまで運転者Pの顔画像を撮影する。カメラ11は、静止画像又は動画像(以下、単に「画像」と称する)を取得する。カメラ11は、撮影した顔画像を制御部22に出力する。
【0013】
偏光子30は、一方向のみに振動する光のみを透過し、それ以外の方向に振動する光を遮断する性質を持つ光学素子である。偏光子は、一般的に、水面や路面で反射したギラギラとした太陽光をカットすることができるため、撮影時に利用される光学フィルターや偏光サングラス等にも利用されている。本実施形態の偏光子30は、カメラ11のレンズ12前に設置され、入射した光を直線偏光に変換し、カメラ11に向けて出射する。偏光子30は、レンズ12の光軸方向AXのうち、レンズ12と反対側に設置されている。偏光子30は、図示例では、レンズ12に対して隙間を設けて設置されているが、これに限定されず、レンズ12に対して隙間を設けることなく設置されていてもよい。本実施形態の偏光子30は、偏光方向が鉛直方向に直交する水平方向になるように設置される。
【0014】
HUDユニット20は、フロントウインドシールドFWを通して車両100の前方の風景を視認しながら、同時にフロントウインドシールドFW等の投影対象103に映る表示光に含まれる表示情報を虚像Sとして視認することができるようにするものである。表示情報には、例えば、車速情報、ナビゲーション情報、シフトポジション情報、エアコン設定情報などの車両100に関する情報が含まれる。HUDユニット20は、表示情報を含む表示光をフロントウインドシールドFWに投影し、フロントウインドシールドFWで反射した表示光が運転者Pの視点に向かうように光路を形成する。運転者Pは、フロントウインドシールドFWを通して車両100の前方の風景を視認しながら、フロントウインドシールドFWに表示される表示情報を虚像Sとして視認する。HUDユニット20は、インストルメントパネル102内に設けられ、投影部21と、制御部22とを備える。
【0015】
投影部21は、表示情報を含む表示光を、光を透過するフロントウインドシールドFWに投影するものである。投影部21は、表示情報を表示する表示領域Tを有し、表示領域Tが車両100のステアリングホイール101の鉛直方向における上端よりも上方に位置する。投影部21は、不図示の表示器と、非球面ミラーとを備える。表示器は、表示情報を含む表示光を出射するものである。表示器は、表示情報を表示する不図示の液晶パネルと、液晶パネルの背面に設けられる不図示のバックライトなどを備える。表示器は、バックライトにより光が照らされることにより液晶パネルから表示光を出射する。非球面ミラーは、所定の距離の位置に虚像Sを結像するための光学特性を有するものである。非球面ミラーは、表示器に対向して設けられ、フロントウインドシールドFWに対する傾きが調整可能に支持される。非球面ミラーは、表示器から出射された表示光を反射し、インストルメントパネル102の開口部102aを介してフロントウインドシールドFWに向けて表示光を投影する。非球面ミラーから投影された表示光は、フロントウインドシールドFWで反射し、運転者PのアイポイントEに届く。これにより、運転者Pは、フロントウインドシールドFWよりも車両100の全長方向における前方に結像された虚像Sを視認できる。
【0016】
制御部22は、カメラユニット10及び投影部21を制御するものであり、例えばCPUなどで構成された演算処理装置やROM、RAMなどを備える不図示のマイクロプロセッサを主体として構成される。制御部22は、非球面ミラーのフロントウインドシールドFWに対する傾きを調整し、表示領域Tに表示情報として虚像Sを表示させる。また、制御部22は、表示情報を液晶パネルに表示させた状態で、液晶パネルの背面からバックライトを照らし、表示情報を含む表示光を非球面ミラーに向けて出射させる。
【0017】
制御部22は、顔画像に基づいて運転者Pの視線を検出する視線検出機能を有する。制御部22は、例えば、顔画像の眼球の虹彩の位置に基づいて、運転者Pの視線を検出し、検出した運転者Pの視線を示す視線情報を外部に出力する。制御部22は、画像のパターンマッチング等の周知の画像処理により運転者Pの瞳孔の位置を検出する。制御部22は、例えば、予め定められた眼の画像と、カメラ11により撮像された運転者Pの顔画像とを比較し、当該運転者Pの顔画像の中から運転者Pの瞳孔の位置を検出する。制御部22は、検出した運転者Pの瞳孔の位置から運転者Pの視線を検出する。制御部22は、例えば、運転者Pの眠気を検知して警告を行う警告装置等に接続され、視線の検出結果を警告装置に出力する。
【0018】
制御部22は、カメラ11が取得した顔画像に基づいて運転者Pが偏光サングラスを着用しているか否かを判定する着用判定機能を有する。制御部22は、着用判定機能に対応する構成として、算出手段25と、判定手段26と、記憶手段27とを有する。
【0019】
算出手段25は、カメラ11が連続して取得した複数の顔画像に基づいて、各顔画像に対応する輝度値を算出し、算出した輝度値を時系列に関連付けて輝度値情報として記憶手段27に記憶させる機能を有する。算出手段25は、公知の方法を用いて画像処理を行い、各顔画像の輝度値を算出する。算出手段25は、算出した輝度値を、顔画像の撮影時刻を示す時刻情報と共に、輝度値情報として記憶手段27に記憶させる。輝度値情報には、少なくとも、顔画像の撮影時刻を示す時刻情報と、当該顔画像の輝度値とが含まれる。記憶手段27には、複数の輝度値情報が記憶される。
【0020】
判定手段26は、記憶手段27に記憶された複数の輝度値情報のうち、現在の輝度値情報と、過去の輝度値情報とを比較して現在の輝度値情報が低下した場合、運転者Pが偏光サングラスを着用したものと判定する機能を有する。具体的には、判定手段26は、記憶手段27に記憶された複数の輝度値情報のうち、現在の輝度値情報に対応する現輝度値と、過去の輝度値情報に対応する旧輝度値とを比較して現輝度値が旧輝度値より低下した場合、運転者Pが偏光サングラスを着用したものと判定する。現輝度値は、記憶手段27に記憶された複数の輝度値情報のうち、各輝度値情報に含まれる時刻情報が最新の顔画像に対応する輝度値である。旧輝度値は、記憶手段27に記憶された複数の輝度値情報のうち、各輝度値情報に含まれる時刻情報が、現在の輝度値情報に対して、少なくとも直前の顔画像に対応する輝度値である。
【0021】
判定手段26は、現輝度値と旧輝度値とを比較して現輝度値が旧輝度値より低下した場合、運転者Pが偏光サングラスを着用したものと判定する。運転者Pの顔は、一般的に、太陽光、車両周辺の照明光、ドライバーモニター用の照明光等で照らされている。偏光サングラスは、一般的に、垂直方向に偏光される。運転者Pが偏光サングラスを着用した場合、偏光サングラスの反射光は、当該偏光サングラスの偏光方向が常に鉛直方向にあることから、縦偏光のみが透過し、当該偏光サングラスの透過率分、輝度低下して観察される。カメラ11のレンズ12前に、偏光方向が鉛直方向に直交する水平方向になるように偏光子30を設置した場合、運転者P2が偏光サングラスG2を着用すると、カメラ11により得られた顔画像は、図3の(B)に示すように、偏光サングラスG2のレンズ部の輝度が低下する。つまり、運転者P2が偏光サングラスG2を着用した場合、カメラ11により得られた顔画像から公知の方法により運転者P2の視線を検出することが困難になる。一方、偏光方向が鉛直方向になるように偏光子30を設置した場合、カメラ11により得られた顔画像は、図3の(A)に示すように、偏光サングラスG1のレンズ部の輝度がほとんど低下しない。そのため、運転者P1が偏光サングラスG1を着用しても、カメラ11により得られた顔画像から公知の方法により運転者P1の視線を検出することが可能となる。
【0022】
記憶手段27は、各種データ(情報)を記憶する記憶回路やメモリである。記憶手段27は、制御部22が各種機能を実現するためのプログラムを記憶している。記憶手段27は、カメラ11が一定時間撮影したときに得る複数の顔画像に対応する複数の輝度値情報を記憶すること可能な記憶容量を有する。記憶手段27に記憶された複数の輝度値情報は、例えば、各輝度値情報に含まれる時刻情報に基づいて、過去の輝度値情報が順に記憶手段27から消去される。
【0023】
次に、図4のフローチャート図を参照して、第1実施形態における偏光サングラス着用判定処理について説明する。
【0024】
ステップS1では、カメラ11は、運転者Pの顔を含む顔領域を撮影し、撮影した顔画像を取得する。カメラ11は、取得した顔画像の1フレームを制御部22に出力する。
【0025】
ステップS2では、制御部22は、算出手段25により、カメラ11から出力された顔画像に基づいて画像処理を行う。制御部22は、公知の方法を用いて顔検出を行い、1フレームの二次元画像データの中から顔を含む顔領域を抽出する。制御部22は、顔領域から上記公知の方法を用いて眼領域を検出し、検出した眼領域における輝度値を算出する。
【0026】
ステップS3では、制御部22は、算出手段25により、ステップS2で算出した輝度値を輝度値情報として、顔画像の撮影時刻を示す時刻情報と共に、記憶手段27に記憶させる。
【0027】
ステップS4では、制御部22は、判定手段26により、記憶手段27に記憶された複数の輝度値情報のうち、現在の輝度値情報と、過去の輝度値情報とを比較して現在の輝度値情報が低下したか否かを判定する。具体的には、制御部22は、記憶手段27に記憶された複数の輝度値情報のうち、現在の輝度値情報に対応する現輝度値と、過去の輝度値情報に対応する旧輝度値とを比較して現輝度値が旧輝度値より低下したか否かを判定する。運転者Pが偏光サングラスを着用していない場合、現輝度値と旧輝度値とを比較しても旧輝度値に対して現輝度値が低下しない。一方、運転者Pが偏光サングラスを着用した場合、旧輝度値に対して現輝度値が低下する。輝度値が低下していないと判定された場合、ステップS1に戻る。一方、輝度値が低下したと判定した場合、ステップS5に進む。
【0028】
ステップS5では、制御部22は、判定手段26により、運転者Pが偏光サングラスを装着したものと判定し、判定結果を外部に出力して、本処理を終了する。
【0029】
以上説明したように、第1実施形態に係る車両用表示装置1は、運転者Pの顔画像を連続して取得するカメラ11のレンズ12前に、偏光方向が鉛直方向に直交する水平方向になるように設置された偏光子30を有する。車両用表示装置1は、制御部22が、各顔画像に対応する輝度値を算出し、算出した輝度値を時系列に関連付けて輝度値情報として記憶手段27に記憶させる。そして、制御部22は、記憶手段27に記憶された複数の輝度値情報のうち、現在の輝度値情報と、過去の輝度値情報とを比較して現在の輝度値情報が低下した場合、運転者Pが偏光サングラスを着用したものと判定する。
【0030】
上記構成により、例えば、運転者Pが運転の途中で偏光サングラスを着用した場合、過去の輝度値情報に対して現在の輝度値情報が低下するので、運転者Pが偏光サングラスを着用したことを容易に判定することができる。例えば、運転者Pが偏光サングラスを着用したことが分かれば、投影部21による表示画像の輝度を上げたり、表示光の偏光角度を変えたりすることで、表示画像の視認性を上げることが可能となる。これにより、車両用表示装置の商品性を向上させることができる。
【0031】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る車両用表示装置1Aは、カメラ11に対して偏光子30がレンズ12の光軸AX廻りに回転する点が上記第1実施形態とは異なる。以下では、上述した実施形態と同様の構成要素には共通の符号が付されるとともに、共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略する(以下同様。)。
【0032】
第2実施形態に係る車両用表示装置1Aは、図5に示すカメラユニット10Aを有する。カメラユニット10Aは、サーボモータ40、モータ側ギア42、ギアユニット31を備える点で上記カメラユニット10と異なる。カメラユニット10Aのその他の構成は、上述のカメラユニット10と略同様の構成である。
【0033】
サーボモータ40は、回転駆動部の一例であり、偏光子30をカメラ11のレンズ12の光軸AX廻りに回転自在に支持し、かつ光軸AX廻りに回転駆動する。サーボモータ40は、制御部22Aに電気的に接続され、当該制御部22Aから出力される駆動制御信号に基づいて駆動する。サーボモータ40は、偏光子30側の端部に平歯車であるモータ側ギア42が連結された回転軸41を有する。サーボモータ40が駆動すると、モータ側ギア42が回転軸41廻りに正転または逆転する。
【0034】
ギアユニット31は、光軸AX方向から見て円筒状に形成され、内側に偏光子30が固定された平歯車である。ギアユニット31は、モータ側ギア42が噛み合っており、モータ側ギア42の回転により光軸AX廻りに回転する。偏光子30は、サーボモータ40の駆動によりモータ側ギア42、ギアユニット31を介して回転駆動される。モータ側ギア42及びギアユニット31は、サーボモータ40の減速機構を構成する。サーボモータ40、回転軸41、モータ側ギア42、及びギアユニット31は、偏光子30を光軸AX廻りに回動させる回動機構を構成する。
【0035】
制御部22Aは、サーボモータ40の回転駆動を制御する点で上記制御部22と異なる。制御部22Aは、サーボモータ40の駆動制御信号を出力して、当該サーボモータ40の回転駆動を制御する。制御部22Aは、サーボモータ40の回転駆動を制御して、偏光子30の偏光方向が鉛直方向になるようにしたり、当該偏光方向が鉛直方向と直交する水平方向になるようにする。
【0036】
次に、図6のフローチャート図を参照して、第2実施形態における偏光サングラス着用判定処理について説明する。図6に示すステップS12~ステップS17は、図4に示すステップS1~ステップS6と略同様であることから、それらの説明を省略する。
【0037】
ステップS11では、制御部22Aは、サーボモータ40の回転駆動を制御し、偏光子30を光軸AX廻りに回動させる。
【0038】
ステップS12では、カメラ11は、サーボモータ40の回転駆動により偏光子30が光軸AX廻りに回動している状態で、運転者Pの顔を含む顔領域を撮影し、撮影した顔画像を取得する。カメラ11は、取得した顔画像の1フレームを制御部22Aに出力する。カメラ11は、制御部22Aの制御により、例えば、偏光子30が一回転する間に複数の顔画像を取得する。制御部22Aは、偏光子30が一回転する間に当該偏光子30の偏光方向が鉛直方向に直交する水平方向になる位置でカメラ11が顔画像を取得するように、カメラ11の撮影タイミング及び偏光子30の回転駆動を制御する。
【0039】
制御部22Aは、カメラ11が、サーボモータ40の回転駆動により偏光子30が光軸AX廻りに回動している状態で、運転者Pの顔を含む顔領域を撮影し、撮影した顔画像を取得する。これにより、偏光子30の偏光方向が水平方向になる位置以外でも顔画像を取得することが可能となることから、当該顔画像に基づいて運転者Pの視線を検出することが可能となる。
【0040】
以上説明したように、第2実施形態に係る車両用表示装置1Aは、運転者Pの顔画像を連続して取得するカメラ11のレンズ12前に偏光子30を有し、偏光子30がサーボモータ40を含む回動機構により光軸AX廻りに回転駆動される。車両用表示装置1Aは、制御部22Aが、各顔画像に対応する輝度値を算出し、算出した輝度値を時系列に関連付けて輝度値情報として記憶手段27に記憶させる。そして、制御部22Aは、記憶手段27に記憶された複数の輝度値情報のうち、現在の輝度値情報と、過去の輝度値情報とを比較して現在の輝度値情報が低下した場合、運転者Pが偏光サングラスを着用したものと判定する。
【0041】
上記構成により、上記第1実施形態と同様に、運転者Pが運転の途中で偏光サングラスを着用した場合、過去の輝度値情報に対して現在の輝度値情報が低下するので、運転者Pが偏光サングラスを着用したことを容易に判定することができる。また、偏光子30の偏光方向が水平方向になる位置以外でも顔画像を取得することが可能となることから、当該顔画像に基づいて運転者Pの視線を検出することが可能となる。
【0042】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る車両用表示装置1Bは、カメラ11のレンズ12前に、偏光子30に代えて液晶素子50が設置される点で上記第1実施形態とは異なる。
【0043】
第3実施形態に係る車両用表示装置1Bは、図7に示すカメラユニット10Bを有する。カメラユニット10Bは、偏光子30に代えて液晶素子50を備える点で上記カメラユニット10と異なる。カメラユニット10Bのその他の構成は、上述のカメラユニット10と略同様の構成である。
【0044】
液晶素子50は、カメラ11のレンズ12前に設置され、通電状態において、入射した光を直線偏光に変換しカメラ11に向けて出射する。液晶素子50は、制御部22Bに電気的に接続され、当該制御部22Bから出力される駆動制御信号に基づいて駆動し、通電状態及び非通電状態のいずれか一方に切り替わる。液晶素子50は、不図示の偏光板を有し、通電状態において、当該偏光板の偏光方向が鉛直方向と直交する水平方向になるように設置される。
【0045】
制御部22Bは、液晶素子50を駆動制御する点で上記制御部22と異なる。制御部22Bは、液晶素子50の駆動制御信号を出力して、当該液晶素子50の通電状態/非通電状態を切り替える。制御部22Bは、液晶素子50の通電状態/非通電状態を切り替えて、液晶素子50の偏光方向が水平方向になるようにしたり、当該偏光方向が水平方向以外になるようにする。
【0046】
次に、図8のフローチャート図を参照して、第3実施形態における偏光サングラス着用判定処理について説明する。図8に示すステップS22~ステップS27は、図4に示すステップS1~ステップS6と略同様であることから、それらの説明を省略する。
【0047】
ステップS21では、制御部22Bは、液晶素子50を駆動制御し、当該液晶素子50のオン/オフを繰り返させる。ここで液晶素子50をオンすると通電状態となり、オフすると非通電状態となる。
【0048】
ステップS22では、カメラ11は、液晶素子50をオン/オフ駆動している状態で、運転者Pの顔を含む顔領域を撮影し、撮影した顔画像を取得する。カメラ11は、取得した顔画像の1フレームを制御部22Bに出力する。カメラ11は、制御部22Bの制御により、液晶素子50がオン/オフを繰り返す間に複数の顔画像を取得する。制御部22Aは、液晶素子50の偏光方向が水平方向になる位置及び偏光方向が水平方向になる位置以外でカメラ11が顔画像を取得するように、液晶素子50を駆動制御する。
【0049】
制御部22Bは、カメラ11が、液晶素子50が非通電状態で、運転者Pの顔を含む顔領域を撮影し、撮影した顔画像を取得する。これにより、液晶素子50の偏光方向が水平方向になる位置以外でも顔画像を取得することが可能となることから、当該顔画像に基づいて運転者Pの視線を検出することが可能となる。
【0050】
以上説明したように、第3実施形態に係る車両用表示装置1Bは、運転者Pの顔画像を連続して取得するカメラ11のレンズ12前に、通電状態において、偏光方向が鉛直方向と直交する水平方向になるように設置された液晶素子50を有する。車両用表示装置1Bは、制御部22Bが、各顔画像に対応する輝度値を算出し、算出した輝度値を時系列に関連付けて輝度値情報として記憶手段27に記憶させる。そして、制御部22Bは、記憶手段27に記憶された複数の輝度値情報のうち、現在の輝度値情報と、過去の輝度値情報とを比較して現在の輝度値情報が低下した場合、運転者Pが偏光サングラスを着用したものと判定する。
【0051】
上記構成により、上記第1実施形態と同様に、運転者Pが運転の途中で偏光サングラスを着用した場合、過去の輝度値情報に対して現在の輝度値情報が低下するので、運転者Pが偏光サングラスを着用したことを容易に判定することができる。また、偏光子30の偏光方向が水平方向になる位置以外でも顔画像を取得することが可能となることから、当該顔画像に基づいて運転者Pの視線を検出することが可能となる。
【0052】
上記第2及び第3実施形態では、制御部22A,22Bは、現輝度値と旧輝度値とを比較して現輝度値が旧輝度値より低下した場合、運転者Pが偏光サングラスを着用したものと判定している。運転者Pが偏光サングラスを着用したものと判定した後において、制御部22A,Bは、現輝度値が旧輝度値より上昇した場合、運転者Pが偏光サングラスを外したものと判定する構成であってもよい。これにより、運転者Pが偏光サングラスを外したことを容易に判定することができる。
【0053】
上記第1~第3実施形態では、顔画像に対応する輝度値を算出しているが、当該顔画像には、運転者P以外の背景等が写り込んでいることから、太陽光や周辺光の影響で顔画像に対応する輝度値が、偏光サングラスを着用していないにもかかわらず、変化する場合がある。そこで、図9の(A)~図9の(C)に示すように、眼領域と異なる判定領域(H1,H2,H3)を設定し、当該判定領域(H1~H3)に対応する輝度値を算出する構成であってもよい。例えば、判定領域H1は、運転者Pの瞳を中心にした円形状である。判定領域H1の直径は、運転中に目の動く範囲を一般的に30mm以上とすることが多いことから、例えば30mm前後で設定することが好ましい。また、判定領域は、判定領域H1のように円形状だけでなく、判定領域H3のように、矩形状であってもよい。また、片目ずつ判定領域を設けるだけでなく、判定領域H2のように、両目に対して1つの判定領域を設定してもよい。
【0054】
上記第1~第3実施形態では、判定手段26は、現輝度値と旧輝度値とを比較して現輝度値が旧輝度値より低下した場合、運転者Pが偏光サングラスを着用したものと判定しているが、誤判定を防止するために、当該判定を設定時間(例えば3秒間)内に複数回実施し、現輝度値の低下状態が継続しているときに、運転者Pが偏光サングラスを着用したものと判定する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 車両用表示装置
11 カメラ
12 レンズ
22 制御部
25 算出手段
26 判定手段
30 偏光子
100 車両
G1,G2 偏光サングラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9