(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】細断化パルプシートからの改質繊維、方法、およびシステム
(51)【国際特許分類】
D21H 25/02 20060101AFI20240514BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
D21H25/02
D06M15/263
(21)【出願番号】P 2018534105
(86)(22)【出願日】2016-12-22
(86)【国際出願番号】 US2016068417
(87)【国際公開番号】W WO2017117023
(87)【国際公開日】2017-07-06
【審査請求日】2019-12-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-22
(32)【優先日】2015-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504293447
【氏名又は名称】インターナショナル・ペーパー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,チャールズ・イー
(72)【発明者】
【氏名】ロバス,アラン・ディ
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】西本 浩司
【審判官】稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-508327(JP,A)
【文献】米国特許第5536369(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00 - 1/38
D21C 1/00 - 11/14
D21D 1/00 - 99/00
D21F 1/00 - 13/12
D21H 11/00 - 27/42
D21J 1/00 - 7/00
D21G 1/00 - 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋セルロース生成物を形成する方法であって、
セルロース繊維の水素結合マットを断片化して、60~80%の固形分含有量を有するセルロース繊維マット断片を形成させること、
ポリアクリル酸架橋剤と前記セルロース繊維マット断片とを、2~14%のケミカル・オン・パルプ・レベルおよび50~60%の架橋剤と前記セルロース繊維マット断片との混合物の固形分含有量を達成するような量および濃度で混合すること、ここで、前記混合することは周囲条件で行われ、かつ、前記混合することは前記セルロース繊維を個別化するものであり、
前記得られた混合物を85~100%の固形分となるまで乾燥すること、および、
前記乾燥された混合物を、前記セルロース繊維を架橋するのに効果的な条件下で硬化させること、
を含む方法。
【請求項2】
前記セルロース繊維マット断片を形成する前に前記セルロース繊維の水素結合マットを湿潤させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セルロース繊維の水素結合マットを断片化することが、前記セルロース繊維の水素結合マットを、細断すること、切断すること、またはダイシングすることの1つ以上をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記セルロース繊維の水素結合マットが、パルプシート、紙、板紙、不織布、およびまったく乾燥されていないかまたは前もって乾燥されたセルロースからなる湿潤ラップシートの1つ以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記セルロース繊維の水素結合マットを断片化することが、前記セルロース繊維の水素結合マットを、ベールまたはロール形態で、粉砕機、ダイサー、および/または細断機に通すことを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
混合することが、押出機、ハイドラパルパ、リファイナ、デフレーカ、およびミキサーの1つ以上の中で行われる、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記セルロース繊維は広葉樹種の繊維を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記セルロース繊維はユーカリの繊維を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、改質繊維、特に、繊維内架橋セルロース繊維を、パルプシートおよび/またはパルプシートの断片から形成する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的に、ダイオウマツおよびその他の針葉樹種からのセルロース繊維は、吸収性製品に使用されており、それは、大部分は、これらの繊維の形態が良好な吸収性能を提供するからである。広葉樹繊維と比較して、ダイオウマツおよびその他の針葉樹繊維は、より長く(例えば、約2.5mmの長さ加重繊維長を有する)、より粗い(例えば、約20mg/100mより大きい粗さを有する)傾向があり、液体中でその重量の数倍を保持するのに十分な空隙容量を有する低密度パッドを形成する。一方、広葉樹繊維は、紙用途におけるそれらの性能で知られており、より短い繊維長(例えば、約1mm)およびより低い粗さ(例えば、約20mg/100m未満)であることにより、密な構造および滑らかな紙表面を提供する。
【0003】
架橋セルロース繊維は、通常、シートの化学物質含浸を保証するために、従来の針葉樹パルプ繊維の乾燥シートまたはロールに、一般に希薄濃度で架橋剤を適用し、続いてハンマーミルで湿式繊維化して、処理された個別化されたセルロース繊維を作成することによって製造される。次いで、これらの繊維を気流乾燥機等で乾燥させ、オーブン等で硬化させる。得られた繊維は、セルロース繊維内のセルロース分子が架橋された繊維内架橋を示す。繊維内架橋は、一般に、セルロース繊維にねじれおよびカールを付与し、また、繊維にバルクを付与し、これらの性質はいくつかの吸収性製品において有利である。
【0004】
この方法の1つの欠点は、製造プロセスの高い資本コスト、ならびに硬化させる前に繊維を乾燥させることによる高エネルギーコストである。別の欠点は、湿式ハンマーミリングが、熱および高気流の通常のミル条件下で繊維および化学物質の蓄積を生じさせる可能性があることである。さらに、湿式ハンマーミリングは、繊維化していない繊維塊または元のパルプシートの片である、ノット等の望ましくない特徴を生じる。一般に、製造速度が上昇すると、ハンマーミリング効率が低下するにつれてノットのレベルも上昇する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
架橋セルロース生成物を形成する方法、ならびにそれから形成される架橋セルロース生成物の様々な実施形態を本明細書に開示する。生成物は、例えば、個別の架橋セルロース繊維、ならびに一般に個別の架橋セルロース繊維から作られる、マット、パッド、シート、ウェブ等を含み得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様において、本開示は、架橋剤と、高固形分含有量、すなわち少なくとも約45%であり約95%までの固形分含有量を有する水素結合セルロース繊維から形成されるセルロース繊維マット断片とを混合することを含む、架橋セルロース生成物の形成方法を提供する。架橋剤は、マット断片の固形分含有量に基づいてセルロース繊維中に望ましいレベルの架橋をもたらすのに好適な量にて添加される。いくつかの方法において、混合することは、繊維と架橋剤との実質的に均質な混合物を形成しつつ、セルロース繊維の個別化(フラッフ化)を達成するのに十分である。いくつかの方法において、混合することは周囲条件で行われる。いくつかの方法において、(架橋剤とマット断片との)混合物の固形分含有量は、約40~60%に設定され、これは、マット断片と混合された場合にかかる混合物の固形分含有量を達成するような濃度で架橋剤を添加すること等によりなされる。これは、架橋剤とマット断片とを混合することの前に、架橋剤を希釈または濃縮することを含み得る。この方法はさらに、得られた混合物(それを構成するものに関して、すなわち、化学処理された個別の繊維とも称される)を85~100%の固形分となるまで乾燥させること、次いで乾燥した化学処理された個別の繊維を硬化させて繊維を架橋させることを含む。いくつかの方法は、混合することの前に、パルプシート等のセルロース繊維マットまたはシートを、断片化すること、すなわち、細断すること、切断すること、ダイシングすること、またはその他の方法で破断して片とすることによって、マット断片を調製することをさらに含む。これらのマットまたはシートは、ベール、湿潤ラップまたはロールの形態で提供され得る。場合によっては、断片化する前または断片化の最中に、マットまたはシートを軟化させる等、マットまたはシートを湿潤させてもよい。湿潤剤のいくつかの例としては、水、架橋剤、触媒溶液、その他の液体ベースの添加剤、またはそれらの様々な組合せが挙げられる。
【0007】
かかる方法の1つの具体的な非限定的な例においては、高固形分含有量を有するセルロース繊維マット断片は、セルロースパルプシートを、細断すること、切断することまたはダイシングすることによって形成され、次いで、ポリアクリル酸架橋剤とマット断片とを、約2~14%のケミカル・オン・パルプ・レベル(chemical on pulp level)を達成する量にて混合し、ここで該架橋剤は繊維断片と周囲条件で混合される。混合物の目標固形分含有量は、約50~60%であり、目標混合物固形分含有量および望ましい薬品使用量を達成するのに好適な濃度で架橋剤を添加することによって設定される。混合の最中に、マット断片はミキサー内で別々のセルロース繊維へと個別化される。次いで、得られた化学処理された個別の繊維は、上記のように乾燥および硬化される。
【0008】
その他の態様において、本開示は、水素結合セルロース繊維により形成され、かつ約45~95%の高固形分含有量を有するセルロース繊維マット断片と架橋剤とから、非架橋の個別化されたセルロース繊維と架橋剤との実質的に均質な混合物を、周囲条件で形成するように構成されたミキサーを含む、架橋セルロース生成物を形成するためのシステムの実施形態を提供する。この混合物はまた、化学処理された個別の繊維とも称される。このシステムはさらに、ミキサーの下流に、架橋剤を硬化させることなく実質的に均質な混合物を85~100%のコンシステンシーまで乾燥させるように構成された乾燥機と、乾燥機に連結され、架橋剤を硬化させ、それによって乾燥かつ硬化した架橋セルロース繊維を形成するように構成された硬化ユニットとを含む。
【0009】
さらに別の態様において、架橋剤は、本明細書に記載の手段や当該技術分野で公知のその他の方法によって、個別のセルロース繊維を生成する前に、パルプシートに添加することができる。より具体的には、架橋剤は、マット断片の形成の前またはマット断片の形成の後に、パルプシートまたはマットに添加することができる。断片化する前の添加は、コーティング、噴霧、浸漬等といった手段によって可能である。架橋剤は、例えば、混合ユニットで混合することの前に噴霧することによって、断片化に続いて添加することができる。湿潤ラップが出発セルロースマットとして使用される場合、例えば、湿潤ラップマット中に架橋剤が目標使用量にて存在するように、湿潤ラッププロセスの間に架橋剤を添加することも可能である。
【0010】
その他の態様において、本開示は、約2~14%のケミカル・オン・パルプ・レベルおよび少なくとも16.0g/gのAFAQ能力を有する、繊維内架橋セルロースパルプ繊維を提供する。いくつかの実施形態において、セルロース繊維は、広葉樹セルロースパルプ繊維、例えば、ユーカリセルロースパルプ繊維もしくは繊維の混合物であるか、またはこれらを含むものである。
【0011】
上記で簡潔に説明した概念、特徴、方法、および成分構成を、添付の図面および以下の詳細な説明に言及することによって明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の1つの態様による架橋セルロース繊維を製造するのに好適なシステムの例示的かつ非限定的な実施形態の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1つの文献であるHerronらの米国特許第5183707号明細書によると、3つの基本的な架橋プロセスがある。第1のプロセスは、例えば、Bernardinの米国特許第3224926号明細書に記載されている、乾式架橋として特徴付けることができる。「乾式架橋」プロセスにおいては、水溶液中の未膨潤繊維を架橋剤により架橋すること、機械的作用により繊維を脱水および解繊すること、そして繊維を昇温状態で乾燥させて、繊維が実質的に個別の状態で存在する間に架橋をもたらすことにより、個別化され、架橋された繊維が製造される。繊維は、架橋の前に脱水される結果、未膨潤の崩壊状態で本質的に架橋される。かかるプロセスは、「乾式架橋」繊維と称されるものを製造する。乾式架橋繊維は、一般に、架橋結合によって高度に硬化されており、それから製造された吸収性構造は、比較的高い湿乾復元力を示す。乾式架橋繊維は、低い流体保持値(FRV)によってさらに特徴付けられる。
【0014】
Steigerの米国特許第3241553号明細書に例示されている第2のタイプは、架橋剤および触媒を含有する水溶液中で繊維を架橋することを含む。このようにして製造された繊維は、「水溶液架橋」繊維と称される。セルロース繊維中の水の膨潤効果のために、水溶液架橋繊維は、非崩壊膨潤状態にて架橋される。乾式架橋繊維と比較して、例えば、米国特許第3241553号明細書に開示されているような水溶液架橋繊維は、より高い柔軟性とより低い剛性を有し、より高い流体保持値(FRV)によって特徴付けられる。水溶液架橋繊維から製造された吸収性構造は、乾式架橋繊維から製造された構造よりも低い湿乾復元力を示す。
【0015】
Sangenisらの米国特許第4035147号明細書に例示されている第3のタイプにおいては、脱水された非膨潤繊維と、架橋剤および触媒とを、繊維を膨潤させるには不十分な量の水を含有する実質的に非水溶液中で接触させることによって、個別化され、架橋された繊維が製造される。繊維がこの実質的に非水溶液中にある間に架橋が起こる。このプロセスは、本明細書において「非水溶液架橋」繊維と称される繊維を製造する。かかる繊維は、当業者に膨潤試薬として知られている溶液と長時間接触させても膨潤しない。乾式架橋繊維と同様に、非水溶液架橋繊維は、架橋結合によって高度に硬化されており、それから製造された吸収性構造は、比較的高い湿乾復元力を示す。
【0016】
本明細書においてより詳細に説明するように、本開示は、Herronによって記載された3つのアプローチと比較して、さらなる、より実行可能で適応性のあるアプローチを記載する。
【0017】
一般に、架橋セルロース繊維は、好適な条件(例えば、温度、圧力等)下で繊維内架橋を達成するのに十分な量にて架橋剤をセルロース繊維に適用することによって調製することができる。ポリアクリル酸架橋セルロース繊維のいくつかの例およびポリアクリル酸架橋セルロース繊維の製造方法の例は、米国特許第5549791号明細書、米国特許第5998511号明細書、および米国特許第6306251号明細書に記載されている。ポリアクリル酸架橋セルロース繊維を形成するための従来のアプローチを例示すると考えることができるシステムおよび方法は、例えば、米国特許第5447977号明細書および米国特許第6620865号明細書に開示されている。したがって、「従来のアプローチ」という言及は、Herronによって記載されているような「乾式架橋プロセス」に従う上記の特許におけるものに概ね従った架橋セルロース繊維の製造のことを指す。簡単に説明すると、これらの特許におけるシステムは、繊維処理ゾーンを通ってセルロース繊維のマットまたはウェブを搬送する搬送装置、繊維処理ゾーンで繊維に架橋剤を適用するアプリケータ、マットを構成する個別のセルロース繊維を分離して、実質的に壊れておらず、本質的に単糸化された(すなわち個別化された)セルロース繊維からなる繊維アウトプットを形成する解繊機、残留湿気をフラッシュ蒸発させる、解繊機に連結された乾燥機、および、繊維の追加の加熱のための制御温度ゾーン、および、架橋剤を硬化させて、乾燥され、硬化された個別化された架橋繊維を形成するオーブンを含む。
【0018】
架橋セルロース繊維生成物を製造するための現在の商業的プロセスは、前述の米国特許第5447977号明細書および米国特許第6620865号明細書に開示されているものとは異なる試薬、試薬の量、反応およびその他のプロセス条件等を使用することができるが、本開示の目的のために、本明細書における現在の商業的プロセスという言及は、一般に、これらの特許に概説された従来のアプローチを指す。
【0019】
従来のアプローチの様々な態様を、以下の諸段落においてより詳細に説明する。「マット」という用語は、互いに共有結合していないが、機械的に絡み合っているおよび/または水素結合している、セルロース繊維またはその他の繊維から形成された不織シート構造を指す。繊維としては、木材パルプまたは綿ぼろ、アサ、草、茎、トウモロコシの茎、トウモロコシの皮を含むその他の供給源、またはシートに敷設され得るセルロース繊維のその他の好適な供給源から得られた繊維が挙げられる。セルロース繊維のマットは、一般にシート状であり、多数の別々のサイズのベール包装シートの1つであってもよく、または連続ロールであってもよい。
【0020】
セルロース繊維の各マットは、マットを繊維処理ゾーンを通って運搬する搬送装置によって搬送され、この繊維処理ゾーンで架橋剤溶液がマットに適用される。架橋剤溶液は、噴霧、回転、浸漬等を含む方法を用いてマットの片面または両面に適用される。架橋剤溶液が適用された後、溶液は、例えば、マットを1対のプレス、コンパクション(compaction)、または圧縮ローラもしくはベルト等に通すことによって、マットを通して均一に分配され得る。
【0021】
次いで、含浸されたマットは、ハンマーミルを介してマットを供給することによって湿式繊維化される。ハンマーミルは、マットをその成分である個別のセルロース繊維へと分解し、次いで繊維は乾燥ユニットを通って空気搬送され、残留湿気が除去される。
【0022】
次いで、得られた処理パルプは、パルプの温度を硬化温度にするために、追加の加熱ゾーン(例えば、乾燥機)を通って空気搬送される。1つの変形形態では、乾燥機は、繊維を受け取り、フラッシュ乾燥法によって繊維から残留湿気を除去するための第1の乾燥ゾーンと、架橋剤を硬化させ、化学反応(例えば、いくつかの実施形態においては、エステル化)を完了させるための第2の加熱ゾーンとを含む。あるいは、その他の変形形態においては、処理された繊維をフラッシュ乾燥機に通して吹き飛ばして残留湿気を除去し、硬化温度まで加熱し、次いで処理された繊維が続いて硬化されるオーブンに移す。全体として、処理された繊維を乾燥させ、次いで架橋を達成するのに十分な時間および十分な温度で硬化させる。
【0023】
上記のように、従来のアプローチおよび過去のアプローチにはいくつかの欠点がある。例えば、従来の(「乾式架橋」)アプローチにおいては、化学物質のパルプシートへの完全な含浸をより確実にするために、架橋溶液は一般に非常に希薄であり、それに応じて非常に粘度が低く、一般に5cP未満である。完全な含浸をより確実にするための別の手段として、従来の方法はまた、過剰の架橋性化学物質を添加することも含み、これは追加の化学物質取り扱いの懸念を与える。さらに、ハンマーミルによる等の湿式繊維化は、通常のミル条件下で(時には汚染と呼ばれることもある)、定期的に除去しなければならない繊維および化学物質の蓄積をもたらし、これにより、製造中断時間が必要となる。さらに、湿式ハンマーミリングは、ノットを残す傾向があり、製造速度が上昇するにつれてノット数が一般に増加し、これに対応してハンマーミリング効率が低下する。さらに、従来のアプローチは、繊維を硬化させる前の湿式ハンマーミリングおよび水分除去プロセスのために高いエネルギーコストを伴う。水溶液架橋の欠点は、余分な水および化学物質のリサイクル/再利用ループが必要であり、制御および補充が必要であることである。
【0024】
また、従来のアプローチでは、繊維マットを水性架橋溶液で湿潤させ、次いでローラに通してからハンマーミルに供給し、繊維化する、乾式架橋プロセスで効果的に使用するのに好適なセルロース繊維の種類に関しては限定されることが判明した。したがって、液体を含浸させたときに機械的操作に耐えるのに十分な完全性のマットを形成しない繊維は、非実用的ではないとしても、標準的な架橋装置で効率的に加工することが非常に困難となる傾向がある。例えば、広葉樹繊維は、一般に、その繊維形態のために、吸収性製品または架橋セルロース繊維用途には使用されない。さらに、ユーカリ等のいくつかの広葉樹繊維は、湿潤した際に容易に崩壊するマットを形成し、したがって、従来のアプローチでの使用に好適な繊維ではない。
【0025】
ほとんどまたは全く過剰の水を含まない非結合セルロース繊維(すなわち、水素結合またはその他の化学結合していないセルロース繊維)と架橋剤とを混合することを含む、同時係属米国特許出願第14/320,279号明細書に開示されるシステムおよび方法は、前述の欠点を回避することができ、かつ、比較的広い範囲のセルロース繊維を用いて使用することができるアプローチを提供する。架橋剤を高固形分含有量のセルロース繊維マット断片と混合することを含む、本明細書において開示されるシステムおよび方法は、従来の架橋アプローチにおける上記の問題を回避しながら、より広い適用性を有する別の代替的なアプローチを記載する。
【0026】
例えば、架橋剤と、水素結合セルロース繊維から形成されたセルロース繊維マットの断片または片である、セルロース繊維マット断片とを、高固形分含有量で混合することにより、湿式ハンマーミリングに伴う汚染およびノット含有の問題を回避することができる。かかるアプローチはまた、化学物質リサイクルループの必要性を排除し得る。さらに、架橋剤がミキサーにのみ添加される実施形態は、化学的に含浸されたマットの機械的操作を必要としないか、そうでなければ伴わなくてよい可能性があり、開示される方法のこの態様は、ポリマーであって潜在的に粘着性の架橋剤と加工装置との接触を低減することができ、そしてその結果、汚染および化学物質蓄積を低減することができる。本明細書において開示される方法およびシステムはまた、例えば、ユーカリ等の広葉樹種からの、低い濡れ引張強さまたは構造完全性を有する高固形分セルロース繊維マットおよびシート、または、湿潤ラップ形態で利用可能なセルロース繊維を架橋するための1つの選択肢を提供する。さらに、本開示の方法は、広葉樹または針葉樹木以外の植物種由来のセルロース繊維、ならびに処理されたセルロース(例えば、シルケット加工繊維等)または溶解および再生されたセルロース(例えば、リヨセル等)に好適であり得る。
【0027】
本開示における使用に好適な高固形分のセルロース繊維マットまたはシート断片は、セルロース繊維マットまたはシートを、細断すること、切断することまたはダイシングすること等の任意の好適な方法によって製造することができる。これらのプロセスおよび同様のプロセスは、本明細書においては「断片化」とも称される。 断片化は、前もってマットまたはシートを準備することなく行うことができ、すなわち、断片化の容易性を改良し、それによってエネルギー消費を削減するために、マットを軟化させる等のために、一般に1つ以上の湿潤剤の形態で水分をそれらに付与することで達成することができる。マットを湿潤させることは、噴霧、カーテンコーティング、浴またはバットへの浸漬等といった標準的な方法によって行うことができる。所望により、湿潤ラップまたはその他の含水形態のパルプ(例えば、まったく乾燥されていないセルロース繊維)を使用することができる。
【0028】
マット断片は、それらが形成される由来であるセルロース繊維シートまたはマットと同様に、水素結合セルロース繊維から形成されるか、または水素結合セルロース繊維から構成される。換言すると、マット断片は、ほとんどの場合、本質的に水素結合セルロース繊維からなるが、いくつかの実施形態では、マット断片は、いくつかのその他の種類の繊維を含むものであってもよい。マット断片の固形分含有量は、一般に、乾燥すること等によっていくらか水分が除去されるか、または上記のように水分が付与されない限り、マット断片が形成される由来のセルロース繊維シートまたはマットの固形分含有量である。従来の市販のパルプシートは、一般に、およそ90%の固形分含有量を有するが、これは、環境条件、木材の種類、パルプ化および/または乾燥方法等を含むいくつかの因子に応じて多少変動し得る。ある場合には、固形分含有量は約95%もの高さであることがある。一方、湿潤ラップ等の含水形態のパルプは、約45%もの低い固形分含有量を有することがあり得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、マット断片は、約60~80%の固形分含有量を有することができる。例えば、本開示によるいくつかの方法は、マットを軟化させて装置への負荷および/またはエネルギーコストを低減する等のために、断片化の前または断片化の間にセルロース繊維のマットを湿潤させることを含むことができる。上記のように、市販のパルプシートは、約90%の固形分含有量を有する場合があり、これは、断片化のために水分を添加することによって約80%まで低下させることができる。別の例として、現在の混合装置は、高固形分混合物を収容するように構成されたものであっても、効果的な加工は60%以下の固形分含有量を有する混合物に限定され得る。したがって、マット断片は、ミキサーに添加される前に、かかる固形分含有量を有するように製造または加工されてもよい。
【0030】
本開示による方法においては、架橋剤は、混合物の望ましい固形分含有量を達成するのに好適な濃度で高固形分セルロース繊維マット断片に添加される。このように、本開示による方法においては、望ましい混合物固形分含有量はいかなる特定の範囲にも限定されないが、設備容量、化学物質入手可能性等といった実際的な考慮事項は、達成可能な範囲を効果的に覆うことができる。例えば、高コンシステンシーミキサー(high-consistency mixer)等の、開示される方法での使用に好適な現在利用可能な混合装置の中には、固形分含有量が高すぎる混合物を効果的に加工することが困難なものがある。別の例として、架橋剤の中には、濃縮された形態においてさえも、水溶液中でのみ現在入手可能なものもある。混合時間およびその他のプロセスの考慮事項等のその他の因子は、トレードオフの関係で存在してもよく、異なる種類のパルプ繊維および/または架橋剤についての好適な混合物固形分含有量に対する効果において異なっている場合もある。さらに、理論に拘束されることを望むものではないが、混合物中に存在する水の量が少ないと、繊維の膨潤、ひいては架橋剤が繊維細胞壁に完全に浸透する能力を低下させる可能性がある。これは、その結果、架橋が繊維表面に限定されている場合に、より剛性の高い繊維が一般に得られる点で、架橋された繊維における望ましい品質である繊維剛性を上昇させる可能性がある。したがって、混合物の望ましい固形分含有量を導き得る様々な考慮事項が存在する。
【0031】
本開示による方法は、化学物質成分中に存在する水分の量を減少させることによって、「低固形分」の従来の架橋アプローチに関連する、なんらかのエネルギーコストおよび装置汚染のリスク等のその他の問題を(現在の実用的な製造および/または加工限界まで)低減することができる。さらに、開示される方法にしたがって製造された架橋繊維は、驚くべきことに、より良好な5K密度およびAFAQ性能を提供した。したがって、本発明者らは、約40~50%の混合物固形分含有量と、開示される実施例で使用された装置と材料の組合せとが、より低いまたはより高い混合物固形分含有量範囲と比較して良好な結果を提供することを見出したが、本発明はこの範囲に限定されるものではない。実際、この範囲外の固形分含有量(例えば、60%までの固形分)を有する混合物も、許容可能な結果を有することが判明した。実施例で使用した特定のミキサーが50%までの固形分含有量を有する混合物に推奨されることを考えると、60%までの固形分含有量を有する混合物で達成された良好な結果は予想外であった。
【0032】
したがって、本明細書において開示される方法のいくつかの実施形態においては、架橋剤は、約50~60%の混合物の固形分含有量および望ましい薬品使用量(またはCOP)を提供するのに好適な濃度で高固形分セルロース繊維マット断片に添加される。ポリマー架橋化学物質の典型的な濃度範囲は約5~50%(触媒または水の添加前)である。したがって、マット断片の固形分含有量が望ましい混合物固形分含有量より高い場合等、場合によっては、混合することは、マット断片に架橋剤を添加する前または添加する間に架橋剤の希釈を含むことがある。所望により、水分を混合物に別々に添加してもよい。
【0033】
本明細書において使用される場合、「架橋剤」という用語は、限定されないが、多数の架橋剤および架橋触媒のいずれかを含む。以下は、有用な架橋剤および触媒の代表的なリストである。以下に記載する特許の各々は、参照によりその全体が本明細書に明確に組み込まれる。
【0034】
好適なウレア・ベースの架橋剤としては、置換ウレア、例えば、メチロール化ウレア、メチロール化環状ウレア、メチロール化低級アルキル環状ウレア、メチロール化ジヒドロキシ環状ウレア、ジヒドロキシ環状ウレア、および低級アルキル置換環状ウレアが挙げられる。具体的なウレア・ベースの架橋剤としては、ジメチルジヒドロキシウレア(DMDHU、1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン)、ジメチロールジヒドロキシエチレンウレア(DMDHEU、1,3-ジヒドロキシメチル-4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン)、ジメチロールウレア(DMU、ビス[N-ヒドロキシメチル]ウレア)、ジヒドロキシエチレンウレア(DHEU、4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン)、ジメチロールエチレンウレア(DMEU、1,3-ジヒドロキシメチル-2-イミダゾリジノン)、およびジメチルジヒドロキシエチレンウレア(DDI、4,5-ジヒドロキシ-1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)が挙げられる。
【0035】
好適な架橋剤としては、米国特許第4822453号明細書、米国特許第4888093号明細書、米国特許第4889595号明細書、米国特許第4889596号明細書、米国特許第4889597号明細書、および米国特許第4898642号明細書に記載されているような、ジアルデヒド、例えば、C2~C8ジアルデヒド(例えば、グリオキサール)、少なくとも1つのアルデヒド基を有するC2~C8ジアルデヒド酸類縁体、ならびにこれらのアルデヒドおよびジアルデヒド酸類縁体のオリゴマーが挙げられる。その他の好適なジアルデヒド架橋剤としては、米国特許第4853086号明細書、米国特許第4900324号明細書、および米国特許第5843061号明細書に記載されているものが挙げられる。
【0036】
その他の好適な架橋剤としては、アルデヒドおよびウレア・ベースのホルムアルデヒド付加物が挙げられる。例えば、米国特許第3224926号明細書、米国特許第3241533号明細書、米国特許第3932209号明細書、米国特許第4035147号明細書、米国特許第3756913号明細書、米国特許第4689118号明細書、米国特許第4822453号明細書、米国特許第3440135号明細書、米国特許第4935022号明細書、米国特許第3819470号明細書、および米国特許第3658613号明細書を参照されたい。
【0037】
好適な架橋剤としては、例えば、米国特許第4968774号明細書に記載のウレアのグリオキサール付加体、ならびに、米国特許第4285690号明細書、米国特許第4332586号明細書、米国特許第4396391号明細書、米国特許第4455416号明細書、および米国特許第4505712号明細書に記載のような、グリオキサール/環状ウレア付加体が挙げられる。
【0038】
その他の好適な架橋剤としては、カルボン酸架橋剤、例えば、ポリカルボン酸が挙げられる。ポリカルボン酸架橋剤(例えば、クエン酸、プロパントリカルボン酸、およびブタンテトラカルボン酸)および触媒は、米国特許第3526048号明細書、米国特許第4820307号明細書、米国特許第4936865号明細書、米国特許第4975209号明細書、および米国特許第5221285号明細書に記載されている。少なくとも3つのカルボキシル基を含有するC2~C9ポリカルボン酸(例えば、クエン酸およびオキシジコハク酸)の架橋剤としての使用は、米国特許第5137537号明細書、米国特許第5183707号明細書、米国特許第5190563号明細書、米国特許第5562740号明細書、および米国特許第5873979号明細書に記載されている。
【0039】
ポリマーポリカルボン酸もまた好適な架橋剤である。好適なポリマーポリカルボン酸架橋剤は、米国特許第4391878号明細書、米国特許第4420368号明細書、米国特許第4431481号明細書、米国特許第5049235号明細書、米国特許第5160789号明細書、米国特許第5442899号明細書、米国特許第5698074号明細書、米国特許第5496476号明細書、米国特許第5496477号明細書、米国特許第5728771号明細書、米国特許第5705475号明細書、および米国特許第5981739号明細書に記載されている。架橋剤としてのポリアクリル酸および関連コポリマーは、米国特許第5447977号明細書、米国特許第5549791号明細書、米国特許第5998511号明細書、および米国特許第6306251号明細書に記載されている。ポリマレイン酸架橋剤もまた米国特許第5998511号明細書に記載されている。
【0040】
具体的な好適なポリカルボン酸架橋剤としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、シトラコン酸、イタコン酸、酒石酸一コハク酸(tartrate monosuccinic acid)、マレイン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメチルビニルエーテル・コ・マレエートコポリマー、ポリメチルビニルエーテル・コ・イタコネートコポリマー、アクリル酸のコポリマー、およびマレイン酸のコポリマーが挙げられる。
【0041】
その他の好適な架橋剤は、米国特許第5225047号明細書、米国特許第5366591号明細書、米国特許第5556976号明細書、米国特許第5536369号明細書、米国特許第6300259号明細書、および米国特許第6436231号明細書に記載されている。
【0042】
好適な触媒には、酸性塩、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、およびリン含有酸のアルカリ金属塩が含まれ得る。1つの実施形態において、架橋触媒は、次亜リン酸ナトリウムである。架橋剤および触媒の混合物またはブレンドもまた使用することができる。
【0043】
架橋剤は、固形分含有量に基づいて個別の高固形分セルロース繊維の望ましいレベルの架橋をもたらすのに好適な量にて添加される。本明細書において、「望ましいレベルの架橋」は、典型的には質量パーセントとして表されるケミカル・オン・パルプ(または「COP」)のレベルとして特徴とすることができる。しかしながら、それはまた、以下にともに記載する吸収能力(または「AFAQ能力」)、5K密度、ならびにその他のもの等の架橋セルロース繊維と関連するようになった物理的または化学的性質を指す場合もある。
【0044】
望ましいレベルの架橋の決定は、多くの場合、架橋による繊維の剛性の上昇と毛管圧の低下との間のトレードオフ、ならびに材料およびエネルギーコスト、取り扱いの懸念事項、製造速度等といったいくつかの考慮事項に基づいている。上記のように、架橋剤の量は、質量パーセントとして表される、COPとして特徴付けることができる。本開示によるいくつかの方法は、セルロース繊維の架橋の分野において、好ましいコスト対性能のトレードオフを提供することが判明している範囲である、約2~14%のCOPで架橋剤を添加することを含むが、その他のCOPレベルおよび/または範囲も本開示の範囲内である。プロセス効率の原理にしたがって、いくつかの方法では、架橋剤の量は、望ましいレベルの架橋を達成するために必要とされるだけに過ぎない。
【0045】
架橋剤の濃度は、一般に、高固形分セルロース繊維への剤の添加が、得られる混合物の含水量を望ましい範囲を超えて上昇させないように選択される。一方、得られる混合物の含水量の、早すぎる(すなわち、乾燥前の)、望ましい範囲を下回るまでの低下は、望ましくない効果を有することもある。いくつかの架橋剤では、水を除去すると、混合物が粘着性になり、および/または、そうでなくても取り扱いが困難になる場合があり、その結果、加工が遅くなることがある。このことの1つの例は、水の不足により混合物の固形分含有量が上昇し、ポリマーが粘着性になる、ポリマー架橋剤で見られることがある。したがって、本開示による方法においては、架橋剤は、本明細書において溶液からの水分損失が最小となる条件のセット(例えば、温度、圧力、気流、時間等)として定義される、周囲条件で水性混合物に添加される。
【0046】
架橋剤は、高コンシステンシーミキサー、押出機(または押出機の領域またはセグメント)、リファイナ等においてといった、任意の好適な方法で高固形分セルロース繊維と混合することができる。いくつかの実施形態において、高コンシステンシーミキサーの使用の1つの利点は、高コンシステンシーミキサーは、約50%までの固形分含有量で混合物に架橋化学物質を直接注入することを可能とするだけでなく、ミキサーはまた、乾燥用に繊維を準備するために、繊維を個別化(または「フラッフ化」)もすることである。いったん混合されると、本開示の方法は、標準的な乾燥装置(例えば、フラッシュ乾燥機、ジェット乾燥機、リング乾燥機等、またはそれらの組合せ)を用いるなどにより、混合物を約85~100%の固形分となるまで乾燥させることを含む。
【0047】
上記のように、現在利用可能な装置および/または化学物質の実際的な限定は、混合物の固形分含有量を一般に約60%までの範囲に効果的に限定し得るため、「乾燥」という用語は、85~100%の固形分の前記範囲まで等に水分含量を低下させることを意味する。しかし、本発明はそれに限定されず、より高い固形分含有量の混合物を意図する。したがって、混合物の固形分含有量がさらに高く、特に85~100%の範囲内にある実施形態においては、「乾燥」という用語は、水分レベルを低下させることを示すことができ、あるいは水分レベルを85~100%の範囲に維持することを示すこともできるということを理解すべきである。
【0048】
硬化とは、架橋剤とセルロースとの間に化学結合をもたらすことの開始およびその後の化学反応を指す。架橋は、架橋剤に応じて、異なる化学反応によって起こる。例えば、ポリアクリル酸およびポリカルボン酸架橋剤は、典型的には、エステル化反応によって化学架橋を確立する。本開示は、エステル化架橋反応によるだけでなく、エーテル化等といったその他の架橋反応、ならびにかかる反応に好適な反応条件によって進行する方法も包含する。本開示による方法は、高固形分セルロースマットまたはシート断片に由来する個別の化学処理されたセルロース繊維を架橋するのに効果的な条件下で乾燥された混合物を硬化させることによって進行する。硬化は、従来のアプローチ等において使用されるもののような任意の好適な方法によって達成することができる。
【0049】
そのなかの様々な工程、概念、および変形例を含む上記の例示的な方法を念頭において、
図1は、全体的に10で示される、本開示の態様による架橋されたセルロース組成物を製造するのに好適な、システムの例示的で非限定的な実施形態の略図であることが理解できる。
【0050】
システム10は、矢印によって接続された一連のボックスを含むよう
図1に示されている。以下に説明するように、ボックスは、システム10の異なる機能領域、すなわちユニットを表す。便宜上、各機能ユニットとして用いられるボックスならびに「ユニット」という用語は、単一の構成要素(例えば、機械、装置、機器等)であってもよいし、あるいは1つ以上のその他の機能ユニットをも組み込むより大きい構成要素の一部であってもよいし、あるいはユニットの機能を実行するために協働する複数の構成要素等を表してもよい。システム10の様々な機能ユニットおよび構成要素は、単一の設備(例えば、ミル)内等のように同じ場所に配置されてもよく、または互いに遠隔に配置されてもよい。システム10は、実験室スケールから工業/商業スケールまで、任意の好適なスケールであってもよい。矢印は、一般に、様々な機能ユニットによって製造または加工される材料または生成物の方向を表し、したがって、あるユニットからその他のユニット(例えば、導管、コンベア等)、および/またはその他の加工装置またはハンドリング装置に材料を搬送する任意の好適な手段を表すこともできる。
【0051】
図1において、システム10は、一般に、高固形分マット断片の形態で繊維22を架橋剤24と混合して、非架橋のセルロース繊維と架橋剤との実質的に均質な混合物を形成するように構成された混合ユニット20と、混合物を85~100%の固形分となるように乾燥させるように構成された乾燥ユニット30と、架橋剤を硬化させ、それによって乾燥および架橋されたセルロース繊維を形成するように構成された硬化ユニット40とを含むことが示される。
図1はまた、一般に50として示される1つ以上の後処理プロセス、ならびに混合ユニット20の上流にあり、セルロースパルプシートからのもの等の、混合ユニットにおける使用のための、高固形分マット断片を製造するように構成された断片化ユニット60等の、システム10のいくつかの任意の構成要素も示す。様々なユニットおよび構成要素については、以下にさらに詳細に説明する。
【0052】
上記のように、混合ユニット20は、水素結合セルロース繊維を含み、かつ約45~95%の固形分含有量を有する高固形分含有量を有する、セルロース繊維マット断片の形態にある繊維22と架橋剤24とから、非架橋のセルロース繊維と架橋剤との実質的に均質な混合物を、周囲条件で形成するように構成されている。したがって、混合ユニット20は、例えば、高コンシステンシーミキサー、デフレーカ(deflaker)、またはリファイナを含むことができ、これらに上記のマット断片および架橋剤が添加される。かかる装置の好適な例としては、Andritz AG(Graz、Austria)、Metso(Helsinki、Finland)、およびその他によって製造されたもの等の高コンシステンシーミキサー、Coperion(Ramsay、NJ)、Davis-Standard(Pawcatuck、CT)、Milacron(Cincinnati、OH)、およびその他によって製造されたもの等の押出機(またはその部分、例えば、いくつかの実施形態においては、脱水セクションの下流の押出機バレルの混合/フラッフ化領域)、Andritz Sprout Bauer、GL&V Pulp and Paper Group(Nashua、NH)、およびその他によって製造されたもの等のリファイナ等が挙げられる。混合ユニットに使用される装置の形態および構成は、望ましい用途によってある程度決定され得る。例えば、高コンシステンシーミキサーの使用の1つの利点は、いくつかの実施形態において、かかるミキサーは、約50%までの固形分含有量で混合物に架橋化学物質を直接注入することを可能とするだけでなく、乾燥用に繊維を準備するために、繊維をフラッフ化するようにも構成されていることである。混合ユニットは、所望により、混合物構成要素のための必要な計量および/または送達装置を含むことができる。水26は、ミキサーへの任意の供給物としても示されており、マット断片および/または架橋剤に与えられることに加えて水を別個の流れとして加えることができることを模式的に示している。
【0053】
所望により、いくつかの実施形態において、混合ユニット20は、例えば、マット断片をさらに壊すように、構成要素を前混合および/または構成要素を計測する等のために、材料の混合前または混合中に、繊維22および/または架橋剤24を加工するように構成されていてもよい。かかる実施形態のいくつかにおいて、混合ユニットは、様々な機能を果たし、実質的に均質な混合物を形成するように構成された別々のゾーン(別個に図示せず)を含むものとして特徴付けることができる。かかる実施形態の1つの例として、別個のゾーンは、押出機の続く領域であってもよい。いくつかの実施形態において、例えば、1つ以上の材料、すなわち混合物が望ましい固形分含有量となるまで脱水される実施形態では、混合ユニット20は、水リサイクル/再生ループ(図示せず)を含むことができる。
【0054】
混合ユニット20は、高固形分マット断片と架橋剤とを混合するように構成されており、上記のように、所望により溶液からの水分損失が最小限に抑えられる周囲条件、すなわち温度、圧力、気流、時間等といった加工条件下で、1つ以上の架橋化学物質および/または触媒を含むことができる。セルロース繊維、水および架橋剤を含む混合物を記載するために使用される場合、「実質的に均質な」という用語は、乾燥し、硬化したときに各繊維全体にわたって一貫した均一な架橋を形成するように、架橋剤が個別化された繊維の間に十分に良好に分配されていることを示す。上記のように、混合ユニットが高コンシステンシーミキサーを含む実施形態におけるもの等の混合ユニットはまた、混合物中で繊維をフラッフ化する(すなわち、かさ密度の上昇を与える)ことができる。所望により、混合ユニットは、乾燥前に混合物をフラッフ化させるその他の装置を含んでもよい。
【0055】
混合ユニット20の下流には、混合物、すなわち化学処理された個別の繊維を、混合ユニットから受け取り、混合物を85~100%の固形分になるよう乾燥させるように構成された乾燥ユニット30がある。したがって、乾燥ユニット30は、1つ以上のオーブン、フロート乾燥機、ドラム乾燥機、フラッシュ乾燥機、ジェット乾燥機等といった1つ以上の乾燥装置を含むことができる。いくつかの実施形態において、乾燥ユニット30はまた、繊維温度を硬化温度までまたはその近くの温度まで上げることができる。
【0056】
最後に、乾燥された繊維は、架橋剤を硬化させるように構成された硬化ユニット40によって受け取られ、それによって、乾燥および架橋されたセルロース繊維を形成する。したがって、硬化ユニットは、追加の乾燥装置、オーブン等を組み込むことができる。いくつかの実施形態において、乾燥ユニットおよび/または硬化ユニットは、繊維が設定温度および/または時間で平衡することを可能とするような保持領域を組み込んでもよく、すなわちかかる平衡は、繊維が1つの機能ユニットから次の機能ユニットへと搬送される際に起こり得る。いくつかの実施形態は、硬化装置から乾燥装置への空気/熱のリサイクル/再生ループを含むことができる。
【0057】
いったん形成されると、架橋された繊維は硬化ユニット40を出て、例えば標準的な方法に従ってベール包装されることにより、出荷または貯蔵のために繊維を準備する等のために、一般に50で示され、再湿潤化またはその他の化学的な後処理に続いてベール包装等が含まれ得る様々な後処理プロセスに供され得る。
【0058】
上記のように、システム10は、所望により混合ユニット20の上流に、断片化ユニット60を含み得、断片化ユニット60は、例えば、セルロースパルプシート等のセルロースマットまたはシートから、混合ユニットで使用されるマット断片(すなわち、繊維22)を製造するように構成される。この「非断片化」形態の繊維は、一般に62で示されている。断片化ユニット60およびそれと共に使用される「非断片化」形態の繊維62は破線で示されており、これらの構成要素はシステム10のすべての実施形態に存在する必要はないことを示している。例えば、システム10のいくつかの実施形態は、あらかじめ製造されたマット断片の形態で繊維22を受容するように構成されてもよい。しかしながら、断片化ユニット60を含むシステム10の実施形態においては、構成要素は、ホッパー、コンベア、バットまたは浴、細断機、粉砕機、ダイサー、計量装置等といった、断片化および/またはその他の加工もしくはハンドリング装置の1つ以上を含み得る。この装置の構成は、繊維62の形態、例えば、ベールまたはロール形態のセルロースシート、ならびにかかる形態におけるその水分含量、得られるマット断片の望ましい形態および/または水分含量等に依存し得る。例えば、いくつかの用途においては、計量可能な形態のマット断片を混合ユニット20に供給することが望ましい場合があり、この場合、Henion Dicing Productsから入手可能なHenionダイサー等のダイサーを使用して、実質的に均一な質量またはサイズのダイシングされたセルロース粒子を製造することができる。好適な装置のその他の例としては、Atlantic Coast Crushersから入手可能なFlow-Smasher(商標)粉砕機およびFranklin-Millerから入手可能なTaskmaster(登録商標)紙・パルプ細断機が挙げられる。
【0059】
所望により、断片化のために繊維62を軟化させ、湿潤させ、またはその他の方法で調製する等のために、断片化ユニット60と関連して湿潤剤64を使用することができる。湿潤剤のいくつかの例としては、水、架橋剤、触媒溶液、その他の液体ベースの添加剤、またはそれらの様々な組合せが挙げられる。断片化の前にセルロースパルプシートの片面または両面に噴霧される水の形態での湿潤剤の使用は、断片化プロセスに必要なエネルギーを減少させる可能性がある。
【0060】
断片化ユニット60は、混合ユニット20において使用するのに望ましい固形分含有量を有する、水素結合セルロース繊維のマット断片、すなわち、繊維22を製造するように構成することができる。所望により、上記のように、混合ユニット20は、断片化ユニット60の装置および/または機能の一部を組み込むことができる。1つの例示的な実施形態においては、混合ユニットは、任意の固形分含有量のマット断片の形態の繊維22を受け入れ、望ましい混合物固形分含有量を達成するのに十分な水を(架橋剤24とともにまたは別個の水流26として)添加するように構成することができる。
【0061】
上記の記載は、任意の数の好適な適用方法およびシステム、ならびにそれらの組合せを例示しており、これらのすべては、本開示に包含されると理解される。
【0062】
架橋セルロース繊維の様々な性質は、材料の吸収性およびその他の性質を決定する等のため、例えば、様々な用途におけるその適合性を確認する等のために、様々な試験によって測定することができる。
【0063】
例えば、Automatic Fiber Absorption Quality(AFAQ)分析器(Weyerhaeuser Co.,Federal Way,WA)を使用して、架橋セルロース組成物の吸収性(例えば、湿潤バルク、ウィック時間(wick time)、ウィック速度(wick rate)、吸収能力等)を決定することができる。標準的な試験手順を、以下の諸段落で説明する。
【0064】
パルプ組成物の4グラムのサンプル(50%RHおよび華氏73度(摂氏23度)で少なくとも4時間コンディショニングされたもの)をピン・ミルに通してパルプを開き、次いでチューブにエアレイドする。チューブをAFAQ分析器に入れる。次いで、プランジャをエアレイドしたフラッフパッド上に0.6kPaの圧力で下降させる。パッドの高さを測定し、パッドの高さからパッドのバルク(すなわちサンプルが占有する容積)を決定する。重荷を増加させて2.5kPaの圧力を達成させ、バルクを再計算する。その結果、2つの異なる圧力にて乾燥フラッフパルプ上で2回のバルク測定が行われる。
【0065】
プランジャが高い方の圧力にある間に、チューブの底部(パッドの底部)に水を導入し、水がパッドを通ってプランジャに到達するまで上向きに導かれる(wick upward)のに必要な時間を測定する。これから、ウィック時間およびウィック速度を決定することができる。2.5kPaでの湿潤パッドのバルクもまた計算することができる。次いで、プランジャをチューブから引き抜き、湿潤パッドを60秒間膨張させる。一般に、サンプルの復元力が高いほど、湿潤した休止状態に達するまでより良好に膨張する。いったん膨張した後、プランジャを0.6kPaで湿潤パッドに再度適用し、バルクを測定することによって、この復元力を測定する。0.6kPaでの湿潤パッドの最終バルクは、パルプ組成物の「0.6kPaでの湿潤バルク」(cm3/g、0.6kPaのプランジャ負荷の下での湿潤パッドの重量当たりの湿潤パッドにより占有された容積を示す)であると考えられる。吸収能力(または「AFAQ能力」)は、水が装置から排出された後に湿潤パッドを秤量することによって計算することができ、乾燥パルプ1グラム当たりのグラム水として報告される。
【0066】
その他の例として、5K密度試験は、繊維から製造された構造の繊維剛性および乾燥復元力(すなわち、繊維が実質的に乾燥状態にある間に加えられる圧縮力の解放時に膨張するその能力)を測定する。5K密度試験は、例えば、米国特許第5873979号明細書に開示されており、以下の手順に従って実施することができる。
【0067】
約7.5gの質量を有する4×4インチ四方(10.16×10.16cm)のエアレイドパッドを、乾燥復元力を決定すべき繊維から調製し、乾燥状態で、5000psiの圧力まで液圧プレスによって圧縮する。その後、圧力を迅速に解放する。パッドを回転させて均一な負荷を確保し、圧縮と迅速な解放と繰り返す。パッドの厚さを、次いで、2インチ2(12.8cm2)の円形フットを含む総負荷90gf(0.88N)を適用するAmes Caliper Gaugeで測定する。これは0.1psi(0.69kPa)の圧力に相当する。中央に1箇所、および4隅のそれぞれに1箇所ずつの5箇所の厚さ測定値を読み取り、5つの値の平均をとる。プレス後、パッドはわずかに膨張する。パッドを4×4インチ(10.16cm×10.16cm)に裁断し、秤量する。プレス後の密度は、質量/(面積×厚さ)として計算される。この密度は、いわゆる液圧プレスによって圧力の量が加えられた後の「5K密度」と称される。5K密度の値がより小さいことは、繊維剛性がより大きく、かつ乾燥復元力がより大きいことに対応する。
【0068】
以下の実施例は、上記の方法および概念に従って架橋セルロース生成物を形成する、代表的で非限定的な実施形態および方法を要約しており、例示的な性質のものである。試薬の量、時間、条件、およびその他のプロセス条件は、本開示の範囲から逸脱することなく、以下の実施例に開示される具体的な代表的手順に開示されるものから変更され得る。
【0069】
実施例1
ダイオウマツ繊維のパルプシート(CF416、Weyerhaeuser NR Company)を、4インチ×30インチ(10.16cm×76.2cm)のストリップへと切断した。相対湿度50%、および華氏73度(摂氏23度)でコンディショニングした場合、この形態のセルロース繊維は約6.5%の含水量を有し、これは約93.5%の固形分含有量に相当する。これに基づいて、水分含量を35%(固形分65%に相当)に増加させるのに必要な水の量を計算した。9つのパルプストリップをシリンジを介して追加の水で処理し、平衡化させるために一晩プラスチックバッグに入れ、こうして固形分含有量65%の9つのパルプシートを生成した。次いで、これらのストリップをおよそ1インチ×1.5インチ(2.54cm×3.80cm)の長方形に手で細断化した。試験のための所望量の繊維をコンベアを介してホッパーに供給した。ホッパーの底にあるスクリューは、繊維の切断を最小限に抑えるようにギャップ(一般に0.050インチ~0.300インチ)を設定した状態で、鉛直構成にてリファイナプレート(C2976)を取り付けた実験室スプラウト(Sprout)リファイナに繊維を供給した。繊維を1168ODg/分の固定速度で送達した。化学物質ポンプ速度を、2~14%の範囲内の試験COPレベルと、50~60%(リファイナの限界)のリファイナ中の混合物の全固形分含有量を達成するように設定して、11.6%の固形分含有量の架橋剤(ポリアクリル酸(「PAA」)ポリマーおよび次亜リン酸ナトリウム(「SHP」)、触媒)を、繊維がリファイナに入る直前に、スクリューの末端に位置する化学物質ポートを介して適用した。52%の測定固形分含有量を有する処理した繊維を、リファイナから出してプラスチックバケツに入れた。この最終固形分含有量において、COPレベルは、繊維の質量に基づいて6.5%であると計算された。繊維を、華氏356度(摂氏180度)の目標入口温度を有するFluid Energy 4-in ThermaJet(商標)ジェット乾燥機で乾燥させた。出口温度は、各サンプルの乾燥終了時に摂氏約120度であると測定された。乾燥した繊維を室温で平衡させた後、華氏370度(摂氏187.8度)で強制空気オーブン中で5分間硬化させた。
【0070】
非結合繊維を用いた対照として、ダイオウマツ繊維(CF416、Weyerhaeuser NR Company)を低固形分(10%未満)の1000g(OD)バッチで実験室用パルパーでスラリー化し、次いで実験用遠心分離機で脱水した。脱水した繊維を、実験室用ピン・ミルを用いてより小さな繊維束に分解した。繊維の固形分含有量は46.4%であると測定され、次いで試験のための所望量の繊維をコンベアを介してホッパーに供給した。ホッパーの底にあるスクリューは、繊維の切断を最小限に抑えるようにギャップ(一般に0.050インチ~0.300インチ)を設定した状態で、鉛直構成にてリファイナプレート(C2976)を取り付けた実験室スプラウト(Sprout)リファイナに繊維を供給した。20%の固形分含有量の架橋剤(PAAポリマーとSHP)を、繊維がリファイナに入る直前に、スクリューの末端に位置する化学物質ポートを介して適用した。繊維を1168ODg/分の固定速度で送達した。化学物質ポンプ速度を、上記の計算COPレベルと、50~60%のリファイナ中の混合物の全固形分含有量を達成するように設定した。約43%の測定固形分含有量の処理した繊維を、リファイナから出してプラスチックバケツに入れた。繊維を、華氏356度(摂氏180度)の目標入口温度を有するFluid Energy 4-in ThermaJet(商標)ジェット乾燥機で乾燥させた。出口温度は、各サンプルの乾燥終了時に摂氏約120度であると測定された。乾燥した繊維を室温で平衡させた後、華氏370度(摂氏187.8度)で5分間硬化させた。
【0071】
実施例2
実施例1と同様に、CF416ダイオウマツ繊維のパルプシートをWeyerhaeuserから入手し、4インチ×30インチ(10.16cm×76.2cm)のストリップに切断した。水分含量を15%(固形分85%に相当)に増加させるのに必要な水の量を実施例1のようにして計算した。9つのパルプストリップをシリンジを介して追加の水で処理し、平衡化させるために一晩プラスチックバッグに入れ、こうして固形分含有量85%の9つのパルプシートを生成した。次いで、これらのストリップをおよそ1インチ×1.5インチ(2.54cm×3.80cm)の長方形に手で細断化した。試験のための所望の量の繊維を、コンベアを介してホッパーに、次いで実施例1に記載のように構成した実験室スプラウトリファイナに供給した。実施例1の計算COPに十分な、7.3%の固形分含有量の架橋剤(PAAポリマーとSHP)を実施例1と同様にして適用し、化学物質および繊維を50~60%のリファイナ中の混合物の全固形分含有量を達成する速度で送達した。58%の測定固形分含有量の処理した繊維を、リファイナから出してプラスチックバケツに入れた。繊維をFluid Energy 4-in ThermaJet(商標)ジェット乾燥機で乾燥させ、実施例1のように硬化させた。
【0072】
サンプルを、同様の化学物質の負荷および硬化条件下で調製されたが、従来の方法に従った、対照と比較した。代表的なサンプルおよび標的COPでのそれらの対応するAFAQ能力の結果を表1に示す(サンプルUCは実施例1に記載の非結合繊維対照を表し、サンプルCCは実施例1および2と同じ架橋剤処方を用いて従来の様式で製造した対照を表す)。表1は、高固形分で効果的な架橋が達成されただけでなく、本開示の高固形分法にしたがって調製されたサンプルのAFAQ能力が、従来の方法にしたがって調製されたサンプルや非結合繊維から調製されたサンプルと比較して予想外に大きいこともまた示す。
【0073】
【0074】
本発明を、前記の作動原理ならびに例示された実施例および実施形態を参照して示し、説明したが、当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更をなし得ることが明らかであろう。本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれる、すべてのかかる代替、改変および変更を包含することが意図される。