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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】作業機、および部品装着方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
H05K13/04 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019121330
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021009863
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 寛之
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-307287(JP,A)
【文献】特開平10-224089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸着部を有するひとつの部品保持具と、
前記部品保持具を、工具を用いることなく着脱可能な作業ヘッドと
を備え、
前記複数の吸着部の各々は、流路を介してひとつの負圧源に連通しており、
前記複数の吸着部の各々に連通する流路には、所定の内径の第1の流路と前記所定の内径より細い内径の第2の流路とがあり、
前記作業ヘッドが備えた前記ひとつの部品保持具の複数の吸着部のうちの一部の吸着部を用いて部品を保持する場合に、前記一部の吸着部は前記第1の流路と連通する作業機。
【請求項2】
前記複数の吸着部の各々は、ひとつの部品の保持が可能である請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記複数の吸着部の下端面への開口が同じ寸法である請求項1または請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記複数の吸着部の各々の吸着面積は、各吸着部に連通する流路の断面積より大きい請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項5】
基板を保持する基板保持装置と、部品を保持する複数種類の部品保持具と、前記複数種類の部品保持具のうちから任意の部品保持具を選択して自動で保持する作業ヘッドとを備えた作業機において、前記作業ヘッドが前記複数種類の部品保持具のうちから複数の吸着部を備え、前記複数の吸着部の各々は、流路を介してひとつの負圧源に連通しており、前記複数の吸着部の各々に連通する流路には、所定の内径の第1の流路と前記所定の内径より細い内径の第2の流路とがある部品保持具を選択して保持した場合に、前記複数の吸着部を備えた部品保持具のうちの一部の吸着部を用いて部品を保持する際に、前記一部の吸着部は前記第1の流路と連通しており、前記一部の吸着部を用いて保持した部品を、前記基板保持装置が保持した基板に装着する部品装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品保持具により保持された部品の装着作業を行う作業機、および、部品装着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、部品保持具により部品を保持し、その部品の装着作業を行う作業機に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-100026号公報
【文献】特開2002-127068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書では、部品保持具により適切に部品を保持することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本明細書は、複数の吸着部を有するひとつの部品保持具と、前記部品保持具を、工具を用いることなく着脱可能な作業ヘッドとを備え、前記複数の吸着部の各々は、流路を介してひとつの負圧源に連通しており、前記複数の吸着部の各々に連通する流路には、所定の内径の第1の流路と前記所定の内径より細い内径の第2の流路とがあり、前記作業ヘッドが備えた前記ひとつの部品保持具の複数の吸着部のうちの一部の吸着部を用いて部品を保持する場合に、前記一部の吸着部は前記第1の流路と連通する作業機を開示する。
【0006】
上記課題を解決するために、本明細書は、基板を保持する基板保持装置と、部品を保持する複数種類の部品保持具と、前記複数種類の部品保持具のうちから任意の部品保持具を選択して自動で保持する作業ヘッドとを備えた作業機において、前記作業ヘッドが前記複数種類の部品保持具のうちから複数の吸着部を備え、前記複数の吸着部の各々は、流路を介してひとつの負圧源に連通しており、前記複数の吸着部の各々に連通する流路には、所定の内径の第1の流路と前記所定の内径より細い内径の第2の流路とがある部品保持具を選択して保持した場合に、前記複数の吸着部を備えた部品保持具のうちの一部の吸着部を用いて部品を保持する際に、前記一部の吸着部は前記第1の流路と連通しており、前記一部の吸着部を用いて保持した部品を、前記基板保持装置が保持した基板に装着する部品装着方法を開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示では、ひとつの部品保持具が複数の吸着部を有しており、その部品保持具が作業ヘッドに工具を用いることなく着脱可能とされている。そして、複数の吸着部のうちから選択された吸着部により保持された部品の装着作業が実行される。また、複数の吸着部のうちの1以上の吸着部を用いることなく保持された部品の装着作業が実行される。これにより、部品保持具により適切に部品を保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電子部品装着装置を示す斜視図である。
図2】吸着ノズルを示す斜視図である。
図3】制御装置を示すブロック図である。
図4】マルチ吸着ノズルを示す斜視図である。
図5図4のAA線における断面図である。
図6】大型部品を保持した状態のマルチ吸着ノズルを示す斜視図である。
図7】小型部品を保持した状態のマルチ吸着ノズルを示す斜視図である。
図8】中型部品を保持した状態のマルチ吸着ノズルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0010】
図1に、電子部品装着装置10を示す。電子部品装着装置10は、1つのシステムベース12と、そのシステムベース12の上に隣接された2台の電子部品装着機(以下、「装着機」と略す場合がある)14とを有している。なお、装着機14の並ぶ方向をX軸方向と称し、その方向に直角な水平の方向をY軸方向と称する。
【0011】
各装着機14は、主に、装着機本体20、搬送装置22、装着ヘッド移動装置(以下、「移動装置」と略す場合がある)24、装着ヘッド26、供給装置27、マークカメラ(図3参照)28、パーツカメラ29、ノズルステーション30、制御装置(図3参照)31を備えている。装着機本体20は、フレーム32と、そのフレーム32に上架されたビーム34とによって構成されている。
【0012】
搬送装置22は、2つのコンベア装置40,42を備えている。それら2つのコンベア装置40,42は、互いに平行、かつ、X軸方向に延びるようにフレーム32に配設されている。2つのコンベア装置40,42の各々は、電磁モータ(図3参照)46によって各コンベア装置40,42に支持される回路基板をX軸方向に搬送する。また、回路基板は、所定の位置において、基板保持装置(図3参照)48によって固定的に保持される。
【0013】
移動装置24は、XYロボット型の移動装置である。移動装置24は、スライダ50をX軸方向にスライドさせる電磁モータ(図3参照)52と、Y軸方向にスライドさせる電磁モータ(図3参照)54とを備えている。スライダ50には、装着ヘッド26が取り付けられており、その装着ヘッド26は、2つの電磁モータ52,54の作動によって、フレーム32上の任意の位置に移動させられる。
【0014】
装着ヘッド26は、回路基板に対して電子部品を装着するものである。装着ヘッド26は、1つの装着ユニット(図示省略)を備えており、装着ユニットの先端部に、吸着ノズル60が装着される。吸着ノズル60は、図2に示すように、胴体筒62とフランジ部64と吸着管66とによって構成されている。胴体筒62は、円筒状をなし、フランジ部64は、胴体筒62の外周面に張り出すようにして固定されている。また、吸着管66は、細いパイプ状をなし、胴体筒62の下端部から下方に向かって延び出した状態で胴体筒62に連結されている。一方、装着ヘッド26の装着ユニットには、フランジ部64に応じた形状の装着面が形成されており、その装着面にエアを吸引するための吸引口が開口している。そして、吸着ノズル60のフランジ部64が、装着ユニットの装着面に密着した状態において、吸引口からエアが吸引されることで、吸着ノズル60が、フランジ部64において、装着ユニットの装着面に工具を用いることなくワンタッチで着脱可能に装着される。この際、装着ユニットに装着された吸着ノズル60は、負圧エア,正圧エア通路を介して、正負圧供給装置(図3参照)70に連通する。これにより、吸着ノズル60は、負圧によって電子部品を吸着保持し、保持した電子部品を正圧によって離脱する。また、装着ユニットは、ユニット昇降装置(図3参照)71によって昇降する。これにより、吸着ノズル60に吸着保持された電子部品の上下方向の位置が変更される。
【0015】
供給装置27は、フィーダ型の供給装置であり、図1に示すように、複数のテープフィーダ72を有している。テープフィーダ72は、テープ化部品を巻回させた状態で収容している。テープ化部品は、電子部品がテーピング化されたものである。そして、テープフィーダ72は、送り装置(図3参照)74によって、テープ化部品を送り出す。これにより、フィーダ型の供給装置27は、テープ化部品の送り出しによって、電子部品を供給位置において供給する。
【0016】
マークカメラ(図3参照)28は、移動装置24のスライダ50に下を向いた状態で固定されており、移動装置24の作動により任意の位置に移動する。これにより、マークカメラ28は、フレーム32の任意の位置を撮像する。また、パーツカメラ29は、フレーム32の上面において、搬送装置22と供給装置27との間に、上を向いた状態で配設されている。これにより、パーツカメラ29は、吸着ノズル60に保持された部品などを撮像する。
【0017】
ノズルステーション30は、ノズルトレイ76を有している。ノズルトレイ76には、吸着ノズルを収容するための収容部78が複数、形成されている。このノズルステーション30では、装着ヘッド26の装着ユニットに装着されている吸着ノズル60と、ノズルトレイ76の収容部78に収容されている吸着ノズルとの交換等が、自動的にワンタッチで行われる。なお、ワンタッチでの吸着ノズルの交換とは、工具等が用いられることなく行われる吸着ノズルの交換を意味する。ちなみに、ノズルトレイ76には、吸着ノズル60とノズル径の異なる吸着ノズル、具体的には、例えば、吸着ノズル60より大径のノズル径を有する吸着ノズル(以下、「大径吸着ノズル」と記載する),吸着ノズル60より小径のノズル径を有する吸着ノズル(以下、「小径吸着ノズル」と記載する)、複数の吸着部を有するノズルなど複数種類のノズルが収容されている。また、吸着ノズル60を、大径吸着ノズルおよび、小径吸着ノズルと区別するべく、中径吸着ノズル60と記載する場合がある。
【0018】
制御装置31は、図3に示すように、コントローラ100と、複数の駆動回路102とを備えている。複数の駆動回路102は、上記電磁モータ46,52,54、基板保持装置48、正負圧供給装置70、ユニット昇降装置71、送り装置74に接続されている。コントローラ100は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路102に接続されている。これにより、搬送装置22、移動装置24等の作動が、コントローラ100によって制御される。また、コントローラ100は、画像処理装置106にも接続されている。画像処理装置106は、マークカメラ28及びパーツカメラ29により撮像された撮像データを処理するための装置である。これにより、コントローラ100は、撮像データから各種情報を取得する。
【0019】
装着機14では、上述した構成によって、搬送装置22に保持された回路基板に対して、装着ヘッド26によって装着作業を行うことが可能である。具体的には、コントローラ100の指令により、回路基板が作業位置まで搬送され、その位置において、回路基板が、基板保持装置48によって固定的に保持される。次に、マークカメラ28が、コントローラ100の指令により、回路基板の上方に移動し、回路基板を撮像する。これにより、回路基板の保持位置等に関する情報が得られる。また、テープフィーダ72は、コントローラ100の指令により、テープ化部品を送り出し、電子部品を供給位置において供給する。
【0020】
そして、装着ヘッド26が、コントローラ100の指令により、電子部品の供給位置の上方に移動し、吸着ノズル60によって電子部品を吸着保持する。続いて、装着ヘッド26が、パーツカメラ29の上方に移動し、吸着ノズルによって保持された電子部品が、パーツカメラ29によって撮像される。これにより、部品の保持姿勢等に関する情報が得られる。そして、装着ヘッド26が、回路基板の上方に移動し、回路基板の保持位置,電子部品の保持姿勢等に基づいて、電子部品を回路基板に装着する。
【0021】
なお、回路基板に装着される電子部品のサイズ,形状等に応じて、装着ヘッド26に装着される吸着ノズルが交換される。具体的には、例えば、小さなサイズの電子部品の装着作業時には、小径吸着ノズルが用いられ、大きなサイズの電子部品の装着作業時には、大
径吸着ノズルが用いられ、中間程度のサイズの電子部品の装着作業時には、中径吸着ノズル60が用いられる。このため、装着対象の部品のサイズが変わるごとに、装着ヘッド26がノズルステーション30に移動して、吸着ノズルの交換作業を行う必要がある。このように、装着対象の部品のサイズが変わるごとに、吸着ノズルの交換作業が実行されると、サイクルタイムの遅延が生じる虞がある。
【0022】
また、吸着ノズルの交換作業を行うことなく、サイズの異なる電子部品の装着作業を行うために、複数台の装着機14を用いて、装着作業を行うことはできる。具体的には、例えば、3台の装着機14により装着システムを構成し、1台目の装着機14では、装着ヘッド26に小径吸着ノズルを装着し、2台目の装着機14では、装着ヘッド26に中径吸着ノズル60を装着し、3台目の装着機14では、装着ヘッド26に大径吸着ノズルを装着しておく。そして、1台目の装着機14において、小さなサイズの電子部品の装着作業を実行し、2台目の装着機14では、中間程度のサイズの電子部品の装着作業を実行し、3台目の装着機14では、大きなサイズの電子部品の装着作業を実行する。これにより、吸着ノズルの交換作業を行うことなく、サイズの異なる電子部品の装着作業を行うことができる。しかしながら、3台の装着機14により装着システムを構成する必要があり、占有スペースの増大,設備投資の増大等を招く虞がある。
【0023】
このようなことに鑑みて、装着機14では、サイズの異なる電子部品を保持可能な吸着ノズル(図4参照)(以下、「マルチ吸着ノズル」と記載する)110が用意されている。マルチ吸着ノズル110は、図4及び図5に示すように、ノズル本体112と、フランジ部114と、5個の吸着パッド116,118,120,122,124とにより構成されている。なお、図4は、マルチ吸着ノズル110の斜視図であり、図5は、図4のAA線における断面図である。
【0024】
ノズル本体112は、胴体筒130と、4本の支持アーム132,134,136,138とにより構成されている。胴体筒130は、概して四角柱形状とされており、胴体筒130には、上端面と下端面とに開口するメイン流路140が形成されている。また、4本の支持アーム132,134,136,138は、胴体筒130の4つの側面から側方に向って延び出した後に、下方に向って延び出している。なお、4本の支持アーム132,134,136,138は、胴体筒130の下端面と同じ高さとなる位置まで、下方に向って延び出している。つまり、胴体筒130の下端面と、4つの支持アーム132,134,136,138の下端面とは、面一とされている。また、4本の支持アーム132,134,136,138には、胴体筒130のメイン流路140に連通するとともに、4本の支持アーム132,134,136,138の下端面に開口する4本のサブ流路150,152,154,156が形成されている。なお、4本のサブ流路150,152,154,156の内径は同じとされているが、各サブ流路150,152,154,156の内径は、メイン流路140の内径の1/10程度とされている。
【0025】
また、フランジ部114は、装着ヘッド26への取り付けに互換性があるように、中径吸着ノズル60等、他の種類の吸着ノズルのフランジ部64と同じ形状とされており、胴体筒130の上端面に固定されている。そのフランジ部114には、胴体筒130のメイン流路140と同じ内径の貫通穴160が形成されている。そして、フランジ部114の貫通穴160と、胴体筒130のメイン流路140とが、同軸的に連通している。
【0026】
また、5個の吸着パッド116,118,120,122,124は、弾性変形可能な素材により形成されており、同寸法とされている。各吸着パッド116,118,120,122,124は、内部が空洞とされており、上端面及び下端面に開口している。そして、各吸着パッド116,118,120,122,124は、上端部から下端部に向うほど内径が広くなるラッパ形状とされている。なお、各吸着パッド116,118,12
0,122,124の上端面への開口は、メイン流路140の内径と略同じとされており、各吸着パッド116,118,120,122,124の下端面への開口は、上端面への開口の略2倍とされている。
【0027】
そして、吸着パッド116は、胴体筒130の下端面に固定されており、吸着パッド116の内部がメイン流路140に連通している。また、吸着パッド118,120,122,124は、4本の支持アーム132,134,136,138の下端面に固定されており、吸着パッド118,120,122,124の内部がサブ流路150,152,154,156に連通している。なお、胴体筒130の下端面と、4つの支持アーム132,134,136,138の下端面とは、上述したように、同一高さとされている。そして、胴体筒130及び、4つの支持アーム132,134,136,138の下端面に同寸法の5個の吸着パッド116,118,120,122,124が固定されている。このため、それら5個の吸着パッド116,118,120,122,124の下端面も同一高さとされている。また、メイン流路140に連通する吸着パッド116を、メイン吸着パッド116と記載し、サブ流路150,152,154,156に連通する吸着パッド118,120,122,124を、サブ吸着パッド118,120,122,124と記載する場合がある。
【0028】
このような構造のマルチ吸着ノズル110は、ノズルステーション30のノズルトレイ76に収容されており、吸着ノズル60と同様に、自動で装着ヘッド26の装着ユニットに装着される。つまり、マルチ吸着ノズル110のフランジ部114が、装着ヘッド26の装着ユニットの装着面に密着した状態において、吸引口からエアが吸引されることで、マルチ吸着ノズル110が、フランジ部114において、装着ユニットの装着面に自動的にワンタッチで装着される。この際、装着ユニットに装着されたマルチ吸着ノズル110では、フランジ部114の貫通穴160が、負圧エア,正圧エア通路を介して、正負圧供給装置(図3参照)70に連通する。これにより、マルチ吸着ノズル110のメイン流路140に、負圧と正圧とが選択的に供給される。
【0029】
このように、装着ヘッド26に装着されたマルチ吸着ノズル110は、サイズや形状の異なる電子部品を保持することが可能とされている。具体的には、図6に示すように、大きなサイズの部品(以下、「大型部品」と記載する)170が、保持対象の部品である場合には、メイン吸着パッド116の下端面の全体が大型部品170の略中央部に密着し、4個のサブ吸着パッド118,120,122,124の下端面の全体が、大型部品170の略中央を囲む4等配の部分に密着する。つまり、メイン吸着パッド116及び、4個のサブ吸着パッド118,120,122,124の下端面の開口が大型部品170により密閉される。そして、メイン流路140に負圧が供給されることで、メイン吸着パッド116と、4個のサブ吸着パッド118,120,122,124とにより、大型部品170が吸着保持される。つまり、5個の吸着パッド116,118,120,122,124のうちの全てのものが、ひとつの部品に密着し、それら5個の吸着パッド116,118,120,122,124のうちの全てのものにより、ひとつの部品が吸着保持される。この際、大型部品170が、5個の吸着パッド116、118,120,122,124により均等に保持されるため、大きなサイズの部品であっても、マルチ吸着ノズル110により適切に保持される。
【0030】
また、図7に示すように、小さなサイズの部品(以下、「小型部品」と記載する)176が、保持対象の部品である場合には、メイン吸着パッド116の下端面の全体が小型部品176に密着するが、4個のサブ吸着パッド118,120,122,124の下端面の全体は、小型部品176に密着しない。つまり、メイン吸着パッド116の下端面の開口が小型部品176により密閉されるが、4個のサブ吸着パッド118,120,122,124の下端面の開口の少なくとも一部が解放され、大気と連通した状態となる。そし
て、メイン流路140に負圧が供給されることで、メイン吸着パッド116により、小型部品176が吸着保持される。一方で、4個のサブ吸着パッド118,120,122,124の下端面の開口の少なくとも一部が解放されているため、4個のサブ吸着パッド118,120,122,124から負圧がリークする。しかしながら、各サブ吸着パッド118,120,122,124に連通するサブ流路150,152,154,156の内径は、メイン流路140の内径の1/10程度とされている。このため、サブ吸着パッド118,120,122,124からの負圧のリークによる圧力損失は、メイン吸着パッド116が大気と連通した場合に比べて小さく、メイン吸着パッド116による吸引力はあまり低下しない。これにより、メイン吸着パッド116の下端面の開口が小型部品176により密閉されるが、4個のサブ吸着パッド118,120,122,124の下端面の開口の少なくとも一部が解放された状態においても、小型部品176は、マルチ吸着ノズル110により適切に保持される。つまり、4個のサブ吸着パッド118,120,122,124を用いることなく、メイン吸着パッド116を用いて小型部品176が保持される場合においても、小型部品176がマルチ吸着ノズル110により適切に保持される。
【0031】
また、図8に示すように、大型部品170と小型部品176との間のサイズの部品(以下、「中型部品」と記載する)178が、保持対象の部品である場合には、メイン吸着パッド116及び2個のサブ吸着パッド120,122の下端面の全体が中型部品178に密着するが、残りの2個のサブ吸着パッド118,124の下端面の全体は、中型部品178に密着しない。つまり、メイン吸着パッド116及び2個のサブ吸着パッド120,122の下端面の開口が中型部品178により密閉されるが、残りの2個のサブ吸着パッド118,124の下端面の開口の少なくとも一部が解放された状態となる。そして、メイン流路140に負圧が供給されることで、メイン吸着パッド116及び2個のサブ吸着パッド120,122により、中型部品178が吸着保持される。この際、残りの2個のサブ吸着パッド118,124から負圧がリークするが、上述したように、負圧のリークによる圧力損失は、小さい。これにより、メイン吸着パッド116及び2個のサブ吸着パッド120,122の下端面の開口が中型部品178により密閉されるが、残りの2個のサブ吸着パッド118,124の下端面の開口の少なくとも一部が解放された状態においても、中型部品178は、マルチ吸着ノズル110により適切に保持される。つまり、2個のサブ吸着パッド118,124を用いることなく、メイン吸着パッド116及び2個のサブ吸着パッド120,122を用いて中型部品178が保持される場合においても、中型部品178がマルチ吸着ノズル110により適切に保持される。
【0032】
このように、マルチ吸着ノズル110では、5個の吸着パッド116,118,120,122,124のうちから選択された吸着パッドによる部品の保持作業を行うことで、サイズの異なる電子部品を適切に保持することができる。これにより、1台の装着機14において、サイズの異なる電子部品の装着作業が実行される際に、吸着ノズルの交換作業を抑制し、サイクルタイムの遅延を防止することが可能となる。また、少ない台数の装着機14であっても、吸着ノズルの交換作業を抑制しつつ、サイズの異なる電子部品の装着作業を行うことができるため、装着機14の占有スペースの抑制,設備投資の抑制等を図ることが可能となる。
【0033】
なお、小型部品176若しくは中型部品178がマルチ吸着ノズル110により保持される際において、メイン吸着パッド116は部品により密閉されるが、4個のサブ吸着パッド118,120,122,124のうちの少なくとも1個以上のものが解放された状態となっている。ただし、各サブ吸着パッド118,120,122,124に連通するサブ流路150,152,154,156の内径は、メイン吸着パッド116に連通するメイン流路140の内径の1/10程度とされている。このため、サブ吸着パッド118,120,122,124からの負圧のリークによる圧力損失は、比較的小さなものであ
り、メイン吸着パッド116による吸引力は部品の保持が不可能な程度には低下しない。これにより、メイン吸着パッド116が部品に密着していれば、4個のサブ吸着パッド118,120,122,124のうちの1個以上のものが解放された状態であっても、部品の適切な保持が担保される。
【0034】
また、部品に密着する吸着パッド116,118,120,122,124は、吸着面に近いほど、内径が大きくされている。つまり、各吸着パッド116,118,120,122,124の吸着面積は、各吸着パッド116,118,120,122,124に連通するメイン流路140若しくはサブ流路150,152,154,156の断面積より大きくされている。これにより、大きな面積において部品を吸着保持することで、吸引力を増大させ、部品を適切に保持することが可能となる。
【0035】
ちなみに、上記実施例において、装着機14は、作業機の一例である。搬送装置22は、基板保持装置の一例である。装着ヘッド26は、作業ヘッドの一例である。正負圧供給装置70は、負圧源の一例である。マルチ吸着ノズル110は、部品保持具の一例である。吸着パッド116,118,120,122,124は、吸着部の一例である。メイン流路140及びサブ流路150,152,154,156は、流路の一例である。
【0036】
また、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。具体的には、例えば、上記実施例では、部品を吸着する吸着部として、吸着パッド116,118,120,122,124が採用されているが、エアを吸引するための開口が形成されていればよく、吸着菅,吸着面,吸引口などを、吸着部として採用することができる。例えば、図2に示したような一般的な部品吸着ノズルに準じた形状であってもよい。また、材質も弾性変形可能な素材である必要もなく、一般的な部品吸着ノズルのように、鋼などの剛体で形成されていてもよい。
【0037】
また、上記実施例では、メイン流路140が、負圧エア,正圧エア通路を介して正負圧供給装置70に連通し、サブ流路150,152,154,156は、メイン流路140から枝分かれしているが、メイン流路140及びサブ流路150,152,154,156が、負圧エア,正圧エア通路を介して正負圧供給装置70に連通してもよい。つまり、メイン流路140及びサブ流路150,152,154,156は、吸着パッド116,118,120,122,124からエアを吸引することが可能な経路であればよい。
【0038】
また、上記実施形態では、5個の吸着パッド116,118,120,122,124から選択された吸着パッドを用いて、1個の部品が保持されているが、複数の部品が保持されてもよい。つまり、例えば、5個の吸着パッド116,118,120,122,124の各々が1個の部品を保持することで、マルチ吸着ノズル110により5個の部品が保持されてもよい。また、例えば、5個の吸着パッド116,118,120,122,124のうちの3個の吸着パッドの各々が1個の部品を保持することで、マルチ吸着ノズル110により3個の部品が保持されてもよい。このような場合には、2個の吸着パッドが開放された状態となる。そして、マルチ吸着ノズル110に保持された3個の部品のサイズや種類は異なっていてもよい。なお、複数の吸着ノズルを備える装着ヘッドでは、各吸着ノズルが1個の部品を保持して、複数の部品を保持する。そして、全ての吸着ノズルが部品を保持した状態の装着ヘッドで、基板への部品の装着作業が実行されるときに、各吸着ノズルから保持された部品は開放される。つまり、複数の吸着ノズルを備える装着ヘッドの運用において、部品の装着作業前には、大気に開放された吸着ノズルはないことが多く、また、保持した部品の装着作業時において、それぞれの吸着ノズルは、順次、大気に開放される。しかしながら、このような複数の吸着ノズルを備える装着ヘッドにおいても、実施例におけるマルチ吸着ノズルと同様に、部品を吸着し、その部品を基板に装着す
る場合には、複数の吸着ノズルを備えるという点においては同様であることから、さまざまな態様を採用することができる。一方で、5個の吸着パッド116,118,120,122,124のうちの3個の吸着パッドの各々が1個の部品を保持することで、マルチ吸着ノズル110により3個の部品が保持される場合には、装着作業前において、2個の吸着ノズルが開放されていることとなる。
【0039】
また、上記実施例では、負圧源として正負圧供給装置70が採用されているが、負圧を供給可能、つまり、エアを吸引可能なものであれば、種々のものを負圧源として採用することができる。
【符号の説明】
【0040】
14:装着機(作業機) 22:搬送装置(基板保持装置) 26:装着ヘッド(作業ヘッド) 70:正負圧供給装置(負圧源) 110:マルチ吸着ノズル(部品保持具) 116:吸着パッド(吸着部) 118:吸着パッド(吸着部) 120:吸着パッド(吸着部) 122:吸着パッド(吸着部) 124:吸着パッド(吸着部) 140:メイン流路(流路) 150:サブ流路(流路) 152:サブ流路(流路) 154:サブ流路(流路) 156:サブ流路(流路)
図1
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図8