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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】衣類乾燥機
(51)【国際特許分類】
   D06F 58/36 20200101AFI20240514BHJP
【FI】
D06F58/36
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019169351
(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公開番号】P2021045330
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-04-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊行
(72)【発明者】
【氏名】本村 隆行
(72)【発明者】
【氏名】温 召航
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-253656(JP,A)
【文献】特開2017-079926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 21/00-25/00
D06F 33/00-34/34
D06F 37/00-39/14
D06F 58/02-58/08
D06F 58/20-58/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内に設けられ衣類が収容されるドラムと、
前記ドラムから空気を排出する排気口と該ドラム内に空気を吹込む給気口との間を該ドラムの外側において連通させるように設けられた循環風路と、
前記ドラム内の空気を前記循環風路を通して循環させる送風装置と、
前記排気口に接続された排気ダクトに繋がっており、前記循環風路の一部を構成するヒートポンプダクトと、
圧縮機並びに前記ヒートポンプダクト内に配置された蒸発器及び凝縮器を含んで構成されるヒートポンプと、
前記排気ダクトに設けられ該循環風路内の空気を外部に排出するための排気用開口部と、
前記排気用開口部を開閉する排気ダンパと、
前記ヒートポンプダクトの前記蒸発器と凝縮器との間に位置して設けられた外気吸入口と、
前記ヒートポンプ外部の雰囲気温度を検出する室温センサと、
前記蒸発器の入口部の温度を検出する蒸発器温度センサと、
前記各機構を制御して乾燥運転を実行する制御装置とを備え、
前記制御装置は、乾燥運転の開始時に、前記室温センサの検出温度が第1の所定温度以下の低温である場合に、前記排気ダンパを閉状態から開状態にして前記排気用開口部から空気を排出する蒸発器着霜防止動作を実行し、前記蒸発器着霜防止動作の実行中に、前記蒸発器温度センサの検出温度が前記第1の所定温度よりも低い温度である第2の所定温度よりも高い温度である場合に、前記蒸発器着霜防止動作を終了する衣類乾燥機。
【請求項2】
前記制御装置は、蒸発器着霜防止動作を、乾燥運転の開始から一定時間に関して実行する請求項1記載の衣類乾燥機。
【請求項3】
前記制御装置は、乾燥運転の開始時に、前記室温センサの検出温度が5℃以下である場合に、前記蒸発器着霜防止動作を実行する請求項1又は2記載の衣類乾燥機。
【請求項4】
前記制御装置は、蒸発器着霜防止動作を一定時間実行した時点で、前記蒸発器温度センサの検出温度が前記第2の所定温度以下の低温である場合に、蒸発器着霜防止動作を継続して実行する請求項1から3のいずれか一項に記載の衣類乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、衣類乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣類乾燥機として、ヒートポンプを採用したドラム式の衣類乾燥機が知られている(例えば、特許文献1参照)。このドラム式の衣類乾燥機は、多数の孔を有し衣類が収容されるドラムを回転可能に備える水槽に、給気口と排気口とを設け、それら給気口及び排気口を水槽外で接続する循環風路を送風用のファン装置と共に設け、ヒートポンプの蒸発器及び凝縮器を前記循環風路内に配置して、乾燥風を水槽内に供給するように構成されている。
【0003】
これにより、ドラム内から排出された湿った空気が、蒸発器を通ることにより除湿され、引続き、凝縮器を通ることにより加熱され、高温の乾燥空気となって再びドラム内に供給されるようになっている。このヒートポンプ方式では、ヒータ方式に比して低温度での乾燥を行うため熱による衣類の傷みが少なく、消費電力の低減と時間短縮を図ることができる。尚、近年では、上記凝縮器及び蒸発器に、従来のフィンチューブタイプのものに比べて、熱交換効率の高いマルチフロータイプの熱交換器を採用することが行われてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5979434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の衣類乾燥機においては、例えば低室温の環境下で乾燥運転を開始すると、蒸発器内の冷媒の温度が下がり過ぎてしまい、蒸発器において着霜が発生する虞がある。すると、蒸発器のフィン部分が凍結し、通風路の一部を塞いで熱交換効率を低下させるという問題が発生する。上記特許文献1では、蒸発器に着霜が発生した場合に、圧縮機の制御によって着霜を融解させるようにしているが、着霜が発生してからの対処であるため、乾燥時間が長くなってしまう。
そこで、蒸発器の着霜・凍結を効果的に防止し、良好な乾燥性能を維持することができる衣類乾燥機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の衣類乾燥機は、本体内に設けられ衣類が収容されるドラムと、前記ドラムから空気を排出する排気口と該ドラム内に空気を吹込む給気口との間を該ドラムの外側において連通させるように設けられた循環風路と、前記ドラム内の空気を前記循環風路を通して循環させる送風装置と、前記排気口に接続された排気ダクトに繋がっており、前記循環風路の一部を構成するヒートポンプダクトと、圧縮機並びに前記ヒートポンプダクト内に配置された蒸発器及び凝縮器を含んで構成されるヒートポンプと、前記排気ダクトに設けられ該循環風路内の空気を外部に排出するための排気用開口部と、前記排気用開口部を開閉する排気ダンパと、前記ヒートポンプダクトの前記蒸発器と凝縮器との間に位置して設けられた外気吸入口と、前記ヒートポンプ外部の雰囲気温度を検出する室温センサと、前記蒸発器の入口部の温度を検出する蒸発器温度センサと、前記各機構を制御して乾燥運転を実行する制御装置とを備え、前記制御装置は、乾燥運転の開始時に、前記室温センサの検出温度が第1の所定温度以下の低温である場合に、前記排気ダンパを開状態にする蒸発器着霜防止動作を実行し、前記蒸発器着霜防止動作の実行中に、前記蒸発器温度センサの検出温度が前記第1の所定温度よりも低い温度である第2の所定温度を超える場合に、前記蒸発器着霜防止動作を終了する
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態を示すもので、洗濯乾燥機の内部構成を概略的に示す縦断右側面図
図2】洗濯乾燥機のヒートポンプを含む内部構成を概略的に示す縦断背面図
図3】背面側から見た洗濯乾燥機の外観斜視図
図4】外箱の天板の一部を破断した状態で示すリントフィルタ付近の斜視図
図5】洗濯乾燥機の電気的構成を概略的に示すブロック図
図6】制御装置が実行する乾燥運転開始時の制御手順を示すフローチャート
図7】室温が20℃の場合の、乾燥運転開始時の時間経過に伴う凝縮器温度、蒸発器の入口温度及び出口温度の変化の様子を示す図
図8】室温が5℃で蒸発器着霜防止動作を実行しなかった場合の乾燥運転開始時の時間経過に伴う凝縮器温度、蒸発器の入口温度及び出口温度の変化の様子を示す図
図9】室温が5℃で蒸発器着霜防止動作を実行した場合の乾燥運転開始時の時間経過に伴う蒸発器の入口温度及び出口温度の変化の様子を示す図
図10】第2の実施形態を示すもので、制御装置が実行する乾燥運転開始時の制御手順を示すフローチャート
図11】第3の実施形態を示すもので、制御装置が実行する乾燥運転開始時の制御手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ヒートポンプを備え洗濯機能及び乾燥機能の双方を有したドラム式の洗濯乾燥機に適用したいくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下に述べる複数の実施形態においては、共通する部分には同一符号を付し、新たな図示や繰り返しの説明を省略することとする。
【0009】
(1)第1の実施形態
第1の実施形態について、図1から図9を参照しながら説明する。まず、図1から図5を参照して、本実施形態に係る衣類乾燥機としての洗濯乾燥機1の全体構成について述べる。図1等に示すように、洗濯乾燥機1の本体を構成する外箱2は、ほぼ矩形箱状をなし、外箱2内には、円筒状の水槽3が後下がりに傾斜した状態で、図示しない弾性支持機構を介して支持されている。前記水槽3内には、洗濯物である衣類が収容されるドラムとしての円筒状の回転ドラム4(以下、単に「ドラム4」という)が回転可能に支持されている。このドラム4は、前後方向に延び且つ水平からやや後下がりに傾斜した傾斜軸を中心に回転するように構成されている。
【0010】
図1に示すように、このドラム4の周壁部及び後壁部には通水、通気用の多数の孔4aが形成され、また、ドラム4の周壁部の内面には、洗濯物撹拌用の図示しない複数個のバッフルが設けられている。詳しく図示はしないが、このドラム4の前面部には、衣類が出し入れされる円形の開口部が設けられており、前記水槽3の前面部には、前記開口部に連なる投入口3aが形成されている。外箱2の前面には、その投入口3aを開閉する扉5が設けられている。外箱2の前面部の上部には、操作パネル6が設けられている。詳しく図示はしないが、この操作パネル6には、表示部や操作部が設けられている。
【0011】
図1図2に示すように、前記水槽3の後部には、駆動機構を構成する例えばアウタロータ形のブラシレスモータからなるドラムモータ8が配置されている。図1に示すように、このドラムモータ8の回転軸の先端は、水槽3の背面を貫通して水槽3内に突出し、前記ドラム4の後部中心部に連結固定されている。このような構成により、ドラム4はドラムモータ8により直接的に回転駆動される。この場合、ドラム4は、脱水行程においては、正転方向つまり正面から見て時計回り方向に連続回転されるようになっている。洗い行程やすすぎ行程、乾燥行程等においては、ドラム4は正転、反転が繰り返される。
【0012】
詳しく図示はしないが、前記外箱2内の上部には、給水源としての水道からの水を前記水槽3内等に給水するための給水機構が設けられている。この給水機構は、給水弁7(図5にのみ図示)を含んで構成されている。一方、図1に示すように、水槽3の下部には、排水管路12が接続され、この排水管路12の途中部には排水弁13設けられている。排水弁13が閉鎖された状態で給水機構により水槽3内に水が供給された場合には、その水は水槽3内に貯留される。このとき、水槽3内の水位は、図示しない水位センサにより検出される。前記排水弁13が開放されることに伴い、水槽3内に貯留されていた水は、排水管路12を通して機外へ排出される。また、外箱2内には、排水管路12の近傍に位置して、室温センサ14が設けられている。この室温センサ14は、例えばサーミスタからなり、外箱2内のヒートポンプ15外部の雰囲気温度である室温を検出する。
【0013】
図1に示すように、前記水槽3には、前部の上部右寄り部位に、ドラム4内の空気を排出する排気口17が設けられていると共に、背面部の上部左寄り部位にドラム4内に乾燥風を供給するための給気口18が設けられている。そして、図1図2に示すように、外箱2内部には、ドラム4内に乾燥風つまり温風を循環供給して衣類の乾燥運転を実行するための温風供給機構19が設けられている。
【0014】
前記温風供給機構19は、水槽3の外部に位置して、循環風路20を備えている。この循環風路20の入口は、水槽3の前記排気口17に接続され、循環風路20の出口が前記給気口18に接続されている。温風供給機構19は、循環風の除湿及び加熱を行って乾燥風を生成するヒートポンプ15を備えている。これと共に、前記排気口17から排出された空気を、循環風路20内を矢印A方向に循環させながら前記給気口18から水槽3ひいてはドラム4内に供給する送風装置としての送風ファン16を備えている。
【0015】
前記循環風路20は、具体的には、図1図2に示すように、上部排気ダクト21と、後部排気ダクト22と、ヒートポンプダクト24と、給気ダクト25とを備えている。上部排気ダクト21及び後部排気ダクト22から排気ダクトが構成される。図1に示すように、そのうち上部排気ダクト21は、その基端部が前記排気口17に接続されて外箱2内の右側上部を後方に延びて設けられ、その先端部に、後部排気ダクト22の上端部が接続されている。上部排気ダクト21の途中部位には、乾燥風から糸くずを捕獲するための周知のリントフィルタ26が、外箱2からの出し入れ可能に設けられている。図3図4に示すように、前記リントフィルタ26は、上面に、手掛け部26bを有する蓋板26aを備え、その蓋板26aが外箱2の上面に臨んで配置されている。
【0016】
また、図4にも示すように、上部排気ダクト21の途中部の上部には、前記リントフィルタ26よりも後方に位置して、内部の空気を外箱2の上面から排出するための排気用開口部9が設けられている。図3に示すように、この排気用開口部9は、外箱2の上面に設けられた外箱排気口2aに連なっている。そして、図1に示すように、排気用開口部9を開閉するための排気ダンパ10が設けられている。この排気ダンパ10は、ダンパモータ11(図5にのみ図示)等からなる駆動機構により開閉動作する。これにて、前記排気ダンパ10を開放させることにより、循環風路20内を流れる空気の一部を、排気用開口部9から外箱排気口2aを通して外箱2外へ排出することができる。
【0017】
図2に示すように、前記後部排気ダクト22は、断面が矩形状をなし、水槽3の後方を下方に延び、その下端部が、ヒートポンプダクト24の基端部である右端部に接続されている。ヒートポンプダクト24は、断面が矩形状をなし、外箱2内の底部後寄り部位を右左方向に延びている。このとき、図2に示すように、前記ヒートポンプダクト24内には、ヒートポンプ15を構成する蒸発器27及び凝縮器28が、右左(図2で左右)に順に位置して配置されている。そして、ヒートポンプダクト24の上壁部には、前記蒸発器27と凝縮器28との間に位置して、外気を取入れるための外気吸入口23が設けられている。
【0018】
図2に示すように、ヒートポンプダクト24のその先端側(図2で右端側)に前記送風ファン16が設けられている。この送風ファン16は、例えばファンケーシング32内に遠心ファン33及びそれを駆動するファンモータ34を備えて構成されている。前記ファンケーシング32の出口部に、前記給気ダクト25の基端部である下端部が接続されている。給気ダクト25は、外箱2内の左側の水槽3の後方を上方に延び、その先端部である上端部が前記給気口18に接続されている。
【0019】
前記ヒートポンプ15は、圧縮機29と、前記凝縮器28と、減圧手段である絞り弁30と、前記蒸発器27とを、冷媒配管31により閉ループ状に接続して構成されている。ヒートポンプ15の内部には、所要量の冷媒が封入され、冷媒配管31を循環する。このとき、凝縮器28が乾燥風を加熱する加熱手段として機能し、蒸発器27が乾燥風から湿気を除去する除湿手段として機能する。尚、本実施形態では、蒸発器27及び凝縮器28は、いわゆるマルチフロータイプの熱交換器から構成され、全体として、空気の流れ方向にやや薄型の矩形ブロック状に構成されている。周知のように、マルチフロータイプの熱交換器は、内部に複数の冷媒流通穴を有する偏平プレートと、熱交換フィンとを交互に積層すると共に、複数の偏平プレートの一端側を入口側ヘッダ部で連結し、複数の偏平プレートの他端側を出口側ヘッダ部で連結して構成される。
【0020】
このヒートポンプ15は、図2に冷媒の流れを矢印Bで示すように、圧縮機29が駆動されることにより圧縮機29から吐出された気体冷媒が、凝縮器28に流入し、該凝縮器28における熱交換により凝縮されて液体冷媒とされる。凝縮器28から流出した液体冷媒が絞り弁30によって膨張されて霧状とされ、その霧状の冷媒が、蒸発器27に流入される。そして、蒸発器27において、外気との熱交換により冷媒が気化され、その気体冷媒が圧縮機29に戻される。更に圧縮機29にて冷媒が圧縮されて高温、高圧とされて吐出されるという循環が行われる。
【0021】
このヒートポンプ15の駆動と共に、前記送風ファン16が駆動されることにより、図1図2に風の流れを矢印Aで示すように、水槽3つまりドラム4内の空気が、排気口17から上部排気ダクト21、後部排気ダクト22を順に通ってヒートポンプダクト24に至る。このとき、空気が上部排気ダクト21内を通る際に、リントフィルタ26等により、空気に含まれていたリント即ち糸くずが捕獲される。
【0022】
そして、後部排気ダクト22を通った空気は、ヒートポンプダクト24内を流れて蒸発器27及び凝縮器28を順に通った後、給気ダクト25に流れ、給気口18及び孔4aを通ってドラム4内に供給されるという循環が行われる。この空気の循環により、水槽3即ちドラム4内の衣類から湿気を奪って多量の蒸気を含んだ空気が、ヒートポンプダクト24内の蒸発器27部分を通って冷却されることにより、蒸気が凝縮あるいは昇華されて除湿され、その除湿空気が凝縮器28部分を通ることにより加熱されて乾いた温風となり、再びドラム4内に供給され、衣類の乾燥に供される。
【0023】
また、図2に示すように、ヒートポンプ15の要部には、冷媒の温度を検出するための、例えばサーミスタからなる複数個の温度センサが設けられている。即ち、前記圧縮機29の吐出口付近には、吐出温度センサ35が設けられている。前記凝縮器28部分には、凝縮器温度センサ36が設けられている。前記蒸発器27部分には、蒸発器温度センサ37が設けられている。前記圧縮機29の入口付近には、入口温度センサ38が設けられている。
【0024】
更に、図1に示すように、循環風路20においても、乾燥風の温度を検出するための、例えばサーミスタからなる複数個の乾燥風用温度センサが設けられている。具体的には、前記給気口18付近には、給気口温度センサ39が設けられ、前記後部排気ダクト22部分には、排気温度センサ40が設けられている。そして、図1に示すように、前記外箱2内には、例えばマイクロコンピュータを主体に構成され、洗濯乾燥機1全体の制御を行う制御装置41が設けられている。
【0025】
図5は、制御装置41を中心とした、洗濯乾燥機1の電気的構成を概略的に示している。即ち、制御装置41には、操作パネル6の操作部からの操作信号が入力されると共に、制御装置41が操作パネル6の表示部の表示を制御する。また、制御装置41には、前記室温センサ14、吐出温度センサ35、凝縮器温度センサ36、蒸発器温度センサ37、入口温度センサ38、給気口温度センサ39、排気温度センサ40からの検知信号が入力される。
【0026】
制御装置41は、前記給水弁7、排水弁13、ドラムモータ8、送風ファン16のファンモータ34、ヒートポンプ15の圧縮機29及び絞り弁30、前記ダンパモータ11等を制御する。以上の構成により、制御装置41は、操作パネル6にてユーザにより設定される運転コースに応じて、各センサからの入力信号や予め記憶された制御プログラムに基づいて、洗濯乾燥機1の各機構を制御し、洗い行程、すすぎ行程、脱水行程からなる周知の洗濯運転や、乾燥運転を自動で実行する。このとき、制御装置41は、乾燥運転を実行するにあたっては、室温センサ14、各温度センサ35~40の検出温度に基づいて、ヒートポンプ15の圧縮機29や送風ファン16等を駆動制御すると共に、前記ドラム4を回転駆動する。尚、通常の乾燥運転時には、前記排気ダンパ10は閉塞状態とされる。
【0027】
さて、本実施形態では、次の作用説明(フローチャート説明)でも述べるように、制御装置41は、乾燥運転の開始時に、前記室温センサ14の検出した室温trが第1の所定温度以下の低温である場合に、前記排気ダンパ10を開状態にする蒸発器着霜防止動作を実行する。より具体的には、第1の所定温度は、5℃とされる。但し、検出室温trが0℃以下の氷点下である場合には、乾燥運転及び洗濯運転そのものが行われないように構成されている。また本実施形態では、この蒸発器着霜防止動作は、乾燥運転の開始から一定時間T0に関して実行される。一定時間T0は、10分~25分の範囲のうちいずれかの時間、例えば20分に設定される。
【0028】
次に、上記構成の洗濯乾燥機1の作用について、図6図9も参照して説明する。図6のフローチャートは、乾燥運転時における、制御装置41が実行する主として蒸発器着霜防止動作に関する処理手順を示している。即ち、ステップS1では、乾燥運転が開始されると、ヒートポンプ15の圧縮機29や送風ファン16、ドラム4が駆動される。ステップS2では、室温センサ14の検出した室温trが読込まれる。ステップS3では、検出室温trが、第1の所定温度この場合5℃以下の低温であるかどうかが判断される。尚、上記のように検出室温trは0℃よりも高いことが前提となっている。
【0029】
室温センサ14の検出した室温trが、5℃を超えている場合には(ステップS3にてNo)、ステップS7に進み、通常の乾燥運転制御がなされる。これに対し、室温センサ14の検出した室温trが5℃以下の低温である場合には(ステップS3にてYes)、ステップS4に進み、蒸発器着霜防止動作が実行される。ここで、室温trが5℃以下と低い場合には、そのまま乾燥運転を進めていくと、蒸発器27を流れる冷媒温度が氷点下まで過度に低下して、蒸発器27の表面での着霜が生ずる虞があった。ところが、本実施形態では、ステップS4の蒸発器着霜防止動作で、ダンパモータ11の制御により、排気ダンパ10を開放状態とすることが行われる。
【0030】
この蒸発器着霜防止動作の実行により、図1に示すように、循環風路20を矢印A方向に流れる空気は、上部排気ダクト21の途中のリントフィルタ26を過ぎたところで、一部が矢印Cで示すように、排気用開口部9から排出される。この排気用開口部9からの空気の排出に伴い、図2に矢印Dで示すように、ヒートポンプダクト24に設けられた外気吸入口23から外気つまり外箱2内の空気がヒートポンプダクト24内に吸入される。蒸発器27部分は低温、例えば0℃以下となっていても、外気吸入口23から吸入される外気はプラスの温度であって、蒸発器27の温度よりも高温となる。また、外気吸入口23は、蒸発器27と凝縮器28との間に位置しているので、蒸発器27を通った低温の空気が、外気と混ざり合って温度が上昇して凝縮器28を通る等、循環される空気の温度が次第に上昇していく。
【0031】
このように排気ダンパ10が開状態とされることにより、循環風路20を循環する冷たい空気が、より高い温度の空気に入れ替えられていくようになり、蒸発器27が低温のまま或いはより低温となることが防止され、温度を上昇させていくことができる。これにより、蒸発器27の温度を、0℃以下の状態から速やかに上昇させることができ、蒸発器27を湿った空気が通過しても、着霜や凍結が防止されるのである。
【0032】
図6に戻って、ステップS5では、蒸発器着霜防止動作の開始から所定時間T0(例えば20分)が経過したかどうかが判断される。所定時間T0が経過していなければ(ステップS5にてNo)、ステップS4の蒸発器着霜防止動作が継続される。所定時間T0が経過した場合には(ステップS5にてYes)、ステップS6にて、蒸発器着霜防止動作が終了されて排気ダンパ10が閉状態に戻される。その後、ステップS7にて、通常の乾燥運転制御が行われる。
【0033】
ここで、図7図9は、乾燥運転開始初期における、時間経過に伴う凝縮器28の温度、蒸発器27の入口温度及び出口温度の変化の様子を示すものであり、図7は室温が例えば20℃の場合、図8は室温が例えば5℃で蒸発器着霜防止動作を実行しなかった場合、図9は室温が例えば5℃で蒸発器着霜防止動作を実行した場合を夫々示している。尚、図9では、凝縮器温度を省略し、蒸発器27と凝縮器28との間の温度変化を付加している。
【0034】
今、図7に示すように、例えば室温が比較的高温の場合でも、乾燥運転が開始されて圧縮機29等が駆動されると、凝縮器28における熱交換によりヒートポンプ15の内部の冷媒の温度が急低下し、蒸発器27の入口温度が0℃から更に低下し、例えば-20℃程度に到達する。しかし、圧縮機29の働きにより凝縮器28の温度が急上昇するため、数分後には蒸発器27の温度も上昇する方向に向かい、例えば十数分後には0℃以上に復帰する。この場合、ドラム4内の衣類の温度が上昇途中であって、衣類からの水分蒸発が未だ発生していない乾燥初期においては、蒸発器27の入口温度が0℃以下の低温であっても、着霜や凍結は発生しない。そして、乾燥開始から一定時間T0(例えば10~25分)が経過した後では、蒸発器27の入口温度も0度を超えたプラス温度となるので、やはり蒸発器27の着霜や凍結は発生しない。
【0035】
これに対し、図8に示すように、乾燥運転開始時における室温が例えば5℃と低い場合には、乾燥初期において、循環風路20を流れる空気の温度がなかなか上昇せず、凝縮器28が十分に加熱されず、蒸発器27の温度も上昇しない状況となってしまう。そのため、乾燥開始から一定時間T0が経過しても、蒸発器27の入口温度が0℃以下のままで、プラス温度まで上昇せず、湿った空気が蒸発器27を通過する際に、蒸発器27の表面に着霜が発生し、凍結が起こる虞がある。
【0036】
ところが、本実施形態では、乾燥運転開始時における室温が例えば5℃と低い場合であっても、上記したように乾燥開始から蒸発器着霜防止動作を実行し、排気ダンパ10を開状態とする。これによって、図9に示すように、一定時間T0までに、蒸発器27の入口温度をプラス温度まで上昇させることができる。この結果、蒸発器27における着霜や凍結を防止することができるのである。尚、乾燥運転開始時に室温trが比較的高いこの場合5℃を超える場合には、蒸発器着霜防止動作は実行されることはなく、速やかに通常の制御による乾燥運転を進めることができる。
【0037】
このように本実施形態の洗濯乾燥機1によれば、次のような効果を得ることができる。即ち、本実施形態では、制御装置41は、乾燥運転の開始時に、室温センサ14の検出した室温trが第1の所定温度である5℃以下の低温である場合に、排気ダンパ10を開状態にする蒸発器着霜防止動作を実行する構成とした。これにより、蒸発器27の温度を比較的早期に上昇させることができ、蒸発器27の着霜や凍結を防止することができる。この場合、着霜が発生してからの対処でなく、乾燥運転開始時における制御により、蒸発器27の着霜防止が図られるため、早期に着霜防止の対処ができる。従って、本実施形態によれば、乾燥時間が徒に長くなることを抑制しつつ、着霜を効果的に防止することができるという優れた効果を得ることができる。
【0038】
また、本実施形態では、蒸発器着霜防止動作を、乾燥運転の開始から一定時間T0に関して実行する構成とした。この場合、蒸発器着霜防止動作を必要以上に長く実行すると、逆に乾燥の効率が低下し、乾燥時間が長くなることを招いてしまうため、蒸発器着霜防止動作を一定時間T0で終了することが望ましく、着霜を効果的に防止することができる。更に本実施形態では、上記第1の所定温度を5℃とした。図7の説明で述べたように、実際には、室温trが5℃を超えていれば、通常の乾燥運転を実行しても着霜や凍結の虞はほとんどないことが明らかとなっているので、5℃以下であることを目安に蒸発器着霜防止動作を実行することが望ましい。
【0039】
(2)第2、第3の実施形態、その他の実施形態
図10のフローチャートは、第2の実施形態を示すものであり、乾燥運転時における、制御装置41が実行する主として蒸発器着霜防止動作に関する処理手順を示している。この第2の実施形態が、上記第1の実施形態の図6のフローチャートと異なる点は、制御装置41は、蒸発器着霜防止動作を一定時間実行した時点で、蒸発器温度センサ37の検出温度teが第2の所定温度、例えば0℃以下の低温である場合に、蒸発器着霜防止動作を継続して実行するところにある。
【0040】
即ち、図10のフローチャートにおいて、ステップS1で乾燥運転が開始され、ステップS2で室温センサ14の検出した室温trが読込まれる。ステップS3では、検出室温trが、第1の所定温度この場合5℃以下の低温であるかどうかが判断され、室温センサ14の検出した室温trが5℃以下の低温である場合には(ステップS3にてYes)、ステップS4で蒸発器着霜防止動作が実行される。そして、ステップS5で、蒸発器着霜防止動作の開始から所定時間T0(例えば20分)が経過したと判断されると(ステップS5にてYes)、ステップS11にて、蒸発器温度センサ37の検出した蒸発器27の入口部分の温度teが読込まれる。
【0041】
次のステップS12では、検出温度teが、第2の所定温度以下この場合0℃以下であるかどうかが判断される。蒸発器温度センサ37の検出温度teが、0℃以下である場合には(ステップS12にてYes)、ステップS13に進み、蒸発器着霜防止動作が継続して実行される。この後、再びステップS11からの処理が繰返される。一方、蒸発器温度センサ37の検出温度teが、第2の所定温度この場合0℃を超えている場合には(ステップS12にてNo)、ステップS6にて、蒸発器着霜防止動作が終了され、ステップS7にて、通常の乾燥運転制御が行われる。
【0042】
この第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、蒸発器着霜防止動作の実行によって、乾燥時間が徒に長くなることを抑制しつつ、着霜を効果的に防止することができるという優れた効果を得ることができる。そして、例えば特に室温trが低い場合など、蒸発器着霜防止動作を一定時間T0について実行しただけでは、着霜防止に十分でないケースが予想される。一定時間T0経過後も蒸発器温度センサ37の検出温度teが第2の所定温度より低い場合には、蒸発器着霜防止動作が継続して実行されるので、蒸発器27の着霜、凍結の防止をより確実に行うことができる。
【0043】
図11のフローチャートは、第3の実施形態を示すものであり、やはり乾燥運転時における、制御装置41が実行する処理手順を示している。この第3の実施形態では、制御装置41は、蒸発器着霜防止動作の実行中に、蒸発器温度センサ37の検出温度teが第2の所定温度例えば0℃を超える高温であった場合に、一定時間T0経過を待たずに、蒸発器着霜防止動作を終了するようになっている。
【0044】
即ち、図11のフローチャートにおいて、ステップS1で乾燥運転が開始され、ステップS2で室温センサ14の検出した室温trが読込まれる。ステップS3では、検出室温trが、第1の所定温度この場合5℃以下の低温であるかどうかが判断され、室温センサ14の検出した室温trが5℃以下の低温である場合には(ステップS3にてYes)、ステップS4で蒸発器着霜防止動作が実行される。そして、次のステップS21では、蒸発器温度センサ37の検出した蒸発器27の入口部分の温度teが読込まれる。
【0045】
次のステップS22では、蒸発器温度センサ37の検出温度teが、第2の所定温度以下この場合0℃よりも大きいかどうかが判断される。検出温度teが、0℃以下である場合には(ステップS22にてNo)、ステップS4に戻り、蒸発器着霜防止動作が継続して実行される。これに対し、蒸発器温度センサ37の検出温度teが、第2の所定温度この場合0℃を超えた場合には(ステップS22にてYes)、ステップS6にて、蒸発器着霜防止動作が終了され、ステップS7にて、通常の乾燥運転制御が行われる。
【0046】
この第3の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、蒸発器着霜防止動作の実行によって、乾燥時間が徒に長くなることを抑制しつつ、着霜を効果的に防止することができるという優れた効果を得ることができる。そして、蒸発器温度センサ37の検出した蒸発器27の入口部の温度teが低い場合に、着霜の虞があるが、蒸発器27に流入する冷媒の温度が高くなった場合には、その虞はない。従って、蒸発器温度センサ37により、蒸発器27の入口部の温度を監視することによって、第2の所定温度を超えた時点で、速やかに蒸発器着霜防止動作を終了することができ、無駄なく通常の乾燥運転制御に進むことができる。
【0047】
尚、上記各実施形態で開示した、第1の所定温度や第2の所定温度、一定時間などの具体的数値については、あくまで一例を示したに過ぎず、適宜変更して実施することができる。また、上記実施形態では、いわゆるマルチフロー型の蒸発器及び凝縮器を採用したが、いわゆるフィンチューブ型の熱交換器を採用しても良い。その他、洗濯機能のない乾燥専用の衣類乾燥機にも適用できる。ヒートポンプの全体的な構成例えば循環風路の構成についても、外箱内の上部にヒートポンプダクトを配置するような構成としても良い。
【0048】
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
図面中、1は洗濯乾燥機(衣類乾燥機)、2は外箱(本体)、4はドラム、9は排気用開口部、10は排気ダンパ、11はダンパモータ、14は室温センサ、15はヒートポンプ、16は送風ファン(送風装置)、17は排気口、18は給気口、20は循環風路、23は外気吸入口、24はヒートポンプダクト、25は給気ダクト、27は蒸発器、28は凝縮器、29は圧縮機、37は蒸発器温度センサ、41は制御装置を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11