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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】加工材料の表面を加工するための方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 29/00 20060101AFI20240514BHJP
   A46B 13/02 20060101ALI20240514BHJP
   A46B 7/10 20060101ALI20240514BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20240514BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20240514BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20240514BHJP
   B24D 13/14 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B24B29/00 D
A46B13/02
A46B7/10
B24B49/04 Z
B24B49/10
B24B49/12
B24D13/14 A
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019199490
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2020097102
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】10 2018 128 269.9
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513069983
【氏名又は名称】モンティ-ヴェルクツォイゲ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】サンデル・ヘンドリクス・ヨハネス・ホフステー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・フレデリック・ドッデマ
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-138095(JP,A)
【文献】特開2007-245334(JP,A)
【文献】特表2017-500216(JP,A)
【文献】特表2013-538699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 29/00
A46B 13/02
A46B 7/10
B24B 49/00 - 49/18
B24D 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシ機構ユニット(5)を用いて、加工材料(2)の表面を加工するための方法であって、
このブラシ機構ユニットが、回転式に駆動可能なブラシホルダー(8)と、外方へと突出する剛毛(7)による剛毛リムを備えるリングブラシ(6、7)とを有し、
それに従って、前記剛毛(7)が、回転する前記剛毛リム内へと入り込む位置調節可能な停止手段(9)の助力のもとで、並びに、運動エネルギーの蓄積によって、弾性的に変形され、
従って、前記剛毛(7)が、これら剛毛の解放の後、前記加工材料(2)の前記表面を、回転してだけではなく、むしろ、前記停止手段(9)の通過の後に解放された、蓄積された運動エネルギーの結果として、同時に打ち付けて加工する方法において、
前記停止手段(9)及び/または前記リングブラシ(6、7)が、前記加工材料(2)の前記表面の粗さに依存して位置調節され
前記加工材料(2)の加工された前記表面の粗さは、触感的及び/または非接触的に検出され、制御/調節ユニット(14)を用いて、それぞれの所望された前記表面の粗さプロフィルに応じて、前記停止手段(9)及び/または前記リングブラシ(6、7)の位置調節移動に変換されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記停止手段(9)は、回転する前記リングブラシ(6、7)の軸線(Z)に対して主に半径方向に、この停止手段の間隔(A)の変化のもとで位置調節されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加工材料(2)の前記表面の粗さは、接触ピンを用いて触感的に、及び/または、音源及び/または電磁的な波のための供給源によって非接触的に走査されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記電磁的な波のための供給源は、例えば、レーザー(11)として形成されており、このレーザーが、前記加工材料(2)の前記表面を走査することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記加工材料(2)の前記表面は、三角測量法により走査されることを特徴とする請求項1からのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記停止手段(9)が、前記リングブラシ(6、7)に対して位置調節されるだけではなく、むしろ、
付加的に、このリングブラシ(6、7)が、前記停止手段(9)と共に、前記加工材料(2)の前記表面に対するのリングブラシの間隔に関して、及び/または、前記加工材料(2)の前記表面に対して平行に移動され得ることを特徴とする請求項1からのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
機械フレーム(1)と、ブラシ機構ユニット(5)と、このブラシ機構ユニット(5)のための駆動ユニット(4)とを有する回転ブラシ工具であって、
前記ブラシ機構ユニット(5)が、回転式に駆動可能なブラシホルダー(8)と、外方へと突出する剛毛(7)を有する剛毛リムを備えるリングブラシ(6、7)とを有し、
回転する前記剛毛リム内へと入り込む位置調節可能な停止手段(9)が設けられており、この停止手段(9)が、前記剛毛(7)を、所定の時間のあいだ制動し、従って、この剛毛の解放の後、この制動によって蓄積された運動エネルギーが、前記剛毛(7)による、加工材料(2)の表面の、付加的に打ち付ける加工のために利用される様式の上記回転ブラシ工具において、
前記停止手段(9)及び/または前記リングブラシ(6、7)が、粗面性測定ユニット(11、12、13)を用いて検出された前記加工材料(2)の加工された前記表面の粗さに依存して、位置調節され、
該表面の粗さは、制御/調節ユニット(14)を用いて、それぞれの所望された前記表面の粗さプロフィルに応じて、前記停止手段(9)及び/または前記リングブラシ(6、7)の位置調節移動に変換されることを特徴とする回転ブラシ工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ機構ユニットを用いて、加工材料の表面を加工するための方法に関し、
このブラシ機構ユニットが、回転式に駆動可能なブラシホルダーと、外方へと突出する剛毛による剛毛リムを備えるリングブラシとを有し、
それに従って、回転する前記剛毛が、回転する前記剛毛リム内へと入り込む位置調節可能な停止手段の助力のもとで、並びに、運動エネルギーの蓄積によって、弾性的に変形され、
従って、前記剛毛が、これら剛毛の解放の後、前記加工材料の前記表面を、回転してだけではなく、むしろ、前記停止手段の通過の後に解放された、蓄積された運動エネルギーの結果として、同時に打ち付けて加工する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に記載された構造の方法は、例示的に、および、主に、出願人の特許文献1内において記載されている。ブラシ機構ユニットと停止手段とを用いて、そのようにして、加工された加工材料の表面において、従来、ただサンドブラスト加工だけによって得られ得る粗面深さが達成可能である。実際に、50μm以上、特に60μm以上100μmに至るまで、および、それ以上の粗面深さが観察される。
提示された粗面深さは、総じて、(DIN 4764並びにDIN ISO 1302に相応する、基準区間の内側での、プロフィル偏差のアブソリュートな値の算術的な平均値としての)いわゆる平均粗さ値Raである。このことは、基本的に、有用であることが実証され、且つ、しばしば、実際に使用される。
それに加えて、同様に、出願人に起因する特許文献2は、この様式の方法を記載しており、この方法において、停止手段が、同時に、剛毛のための研磨体としての機能を果たす。この目的のために、停止手段は、位置調節可能であり、例えば、半径方向及び/または接線方向に位置調節可能に形成されている。同様に偏心的な位置調節も可能である。
【0003】
従来技術は、基本的に、加工材料の表面の粗さを保証すること、表面の被覆または錆を除去することが重要である場合に有用であることが実証された。インク塗布、金属被覆及び/または合成物質被覆等を顧慮しての、表面の事後になってからの加工のために、表面粗さを再現可能に調節することは、しかしながら、しばしば必要である。
このことは、従来説明された処置方法によって直接的に可能ではなく、もしくは、最終的に、手動で置換されねばならない。加工材料の大きな表面は、このようにして、ほとんど再現可能に加工可能ではない。ここで、本発明が総じて救済策を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】ヨーロッパ特許第1 834 733 B1号明細書
【文献】ヨーロッパ特許第2 618 965 B1号明細書
【文献】ヨーロッパ特許出願公開第0 585 893 A1号明細書
【文献】ドイツ連邦共和国特許第43 26 793 C1号明細書
【文献】国際出願公開第2017/220338 A1号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【文献】「Surface preparation of ship-construction steel/(ABS-A) via bristle blasting process」, NACE CORROSION CONFERENCE & EXPO 2010, paper No. 10385
【文献】「Evaluation of bristle blasting process for surface preparation of ship-construction steel」(NACE CORROSION CONFERENCE & EXPO 2012, paper No. C2012-0001442)」
【文献】「SRM - Online Rauheitsmessung」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の根底をなす技術的な課題は、ブラシ機構ユニットを用いての、加工材料の表面を加工するためのこの様式の方法を、表面の所望された粗面深さが再現可能に調節され得るように、更に発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的な課題の解決のために、冒頭に記載された様式の、ブラシ機構ユニットを用いて、加工材料の表面を加工するための方法は、本発明に従い、停止手段及び/またはリングブラシが、加工材料の表面の粗さに依存して位置調節されることによって特徴付けられている。
【発明の効果】
【0008】
即ち、本発明に従い、先ず第一に、加工材料の表面の粗さに依存して、停止手段及び/またはリングブラシの位置調節が行われるように処置される。その際、本発明は、リングブラシを保持し且つ回転式に駆動可能なブラシホルダーの軸線に対する、特に停止手段の半径方向の位置の変化が、直接的に、加工材料の平面の粗さに影響を及ぼすことの認識を出発点とする。
つまり、リングブラシの軸線に対する、停止手段の半径方向の位置の変化によって、最終的に、運動エネルギーが変化され、この運動エネルギーによって、剛毛が加工されるべき加工材料の上に衝突する。その際、一般的に、リングブラシの当該の軸線に対する停止手段の半径方向の間隔が、小さく寸法設定されればされる程、それだけいっそう運動エネルギーがより大きいことの経験則が成り立つ。
つまり、停止手段の半径方向内側の配置は、増大され且つ補強された剛毛の変形を誘起し、且つ、その結果として、増大された運動エネルギーを誘起し、この運動エネルギーによって、剛毛が加工材料の表面に衝突する。
【0009】
これら基本的な関係は、Robert J. Stango教授等によって研究され、且つ、複数の公開刊行物内において描写されている。非特許文献1並びに非特許文献2の両方の公開刊行物を参照して頂きたい。
有利な実施形態により、この目的のために、停止手段は、回転するリングブラシの上述の軸線に対して主に半径方向に位置調節可能に形成されているか、もしくは、上述の軸線に対して半径方向に位置調節され得る。
匹敵して、同様にこのリングブラシは、表面に対して位置調節され得、及び/または、軸線方向移動を実施可能である。
【0010】
加工材料の表面の粗さは、それ自体で、触感的及び/または非接触的に検出可能である。実際に、この関連において、加工材料の表面は、平均的な粗面性Rに基づいて検出される。このことは、中心線からの、個々の測定点の、それぞれに測定された値的な偏差の算術的な平均値に関わる問題である。
そのことが冒頭において説明されているように、これら記載は、その際、DIN ISO 1302に相応して行われる。基本的に、同様にいわゆる最大の粗面性プロフィル高さRzも測定され得、且つ、評価され得る。
このことは、個々の測定区間の内側での、最大のプロフィル先端部Rpの高さと、最大のプロフィル谷部Rvの深さとの合計に関わる問題である。最も高いプロフィル点から最も低いプロフィル点への垂直方向の間隔として、Rzは、粗面性縦座標値の散乱幅に関する1つの寸法である。いずれの場合でも、基本的に、加工材料の平面の粗さまたは粗面性を、触感的及び/または非接触的に検出することの異なる可能性が存在する。
【0011】
その際、基本的に、リングブラシもしくは剛毛を用いて未だに加工されていない、加工材料の表面の粗さまたは粗面性が検出され、これに依存して、停止手段及び/またはリングブラシが相応して位置調節されるように処置され得る。通常の場合、しかしながら、加工された表面の粗さが、検出されるように処置される。
このことによって、停止手段は、相応して、しかも加工材料の加工された表面の粗さもしくは粗面性に関するそれぞれの検出された測定値に応じて移動され得る。この目的のために、当該の且つ加工された表面の粗さは、制御/調節ユニットを用いて、それぞれの所望された表面の粗さプロフィルに応じて、停止手段及び/またはリングブラシの位置調節移動に変換される。
即ち、表面の粗さもしくは粗面性のための値、具体的に実例としてのケースにおいて平均的な粗面性Raもしくは算術的な平均値Raは、制御/調節ユニットの制御のための入力量として利用される。所望された粗さもしくは粗面性と、具体的に算術的な平均値Raとに依存して、ここで、停止手段及び/またはリングブラシは、相応して位置調節され得る。
例えばこの平均値Raが増大されるべき場合、従って、例えば、停止手段は、制御/調節ユニットを用いて半径方向に更に内方へと移動される。逆に、低減された平均的な粗面性Raのために、停止手段の半径方向に外側の位置は可能であり、且つ、考慮可能である。
【0012】
そのような原理的な制御と並んで、同様に1つの調節も可能である。この場合、平均的な粗面性のための実際値RaIstは、実例としてのケースにおいて、調節ユニット内において保管され且つ予め与えられた平均的な粗面性の目標値RaSollと比較される。
目標値RaSollとの比較における、測定された実際の粗面性RaIstのそれぞれの偏差に応じて、その場合に、停止手段は、閉ループ調節回路の意味において追従動作される。上記の結果として、加工材料の平面の粗さは、例えば引き続いてのインク塗布、合成物質被覆、金属被覆等を考慮する、実際の必要条件に適合され得る。
【0013】
表面の粗さは、触感的に、機械的にこの表面を走査する接触ピンを用いて検出可能である。通常の場合に、しかしながら、ここで、非接触に処置される。その場合に、表面の粗さは、例えば音波、および、有利には電磁的な波の助力のもとで走査され得る。
ここで、電磁的な波による、および、特にレーザーを用いての走査は、特に好適および有利であることは判明した。
【0014】
実際に、ここで、大抵の場合、加工されるべき加工材料の表面、もしくは、当該の加工材料の既に加工された表面が、有利には2次元的な三角測量法の意味で走査されるように処置される。その際、レーザー光線は、大抵の場合に、極めて細い光線として、所定の角度において、測定されるべき表面に投射される。レーザーの本来直線状の光線は、加工された表面の粗さもしくは粗面性によって、実例としてのケースにおいて、この平面に対するレーザーの照射角度に比例して歪められる。
カメラとの結合状態における、光学的な撮影装置、例えば顕微鏡を用いて、ここで、この投影されたレーザー光線の像が撮影され得る。表面プロフィルは、ここで、直接的にレーザー光線の偏向から計算可能であり、且つ、特にこの方法が、平均的な粗面性Raの決定のために適している。更に、最大の粗面性プロフィル高さRzは、この方法で決定され得る。
そのような考慮可能な三角測量法の詳細は、例えば、特許文献3内において記載されている。それに加えて、AMEPA社の「amepa.de」のもとでの、非特許文献3のテーマ「SRM - Online Rauheitsmessung」が引き合いに出される。
【0015】
本発明は、特に有利には、停止手段が、リングブラシに対して、典型的に半径方向に位置調節され得ることの可能性の助力を求めるだけではない。むしろ、付加的に、このリングブラシは、有利には停止手段と共に、このリングブラシの間隔に関して、及び/または、加工材料の表面に対して平行に、即ち軸線方向に移動可能である。
加工材料の表面に対する、停止手段を含めてのリングブラシの間隔の変化によって、最終的に、加工されるべき表面に対するこのリングブラシの押圧力は、変化され得る。その際、加工材料の表面に対して、リングブラシの間隔が小さく調節されればされる程、当該の表面に対する、回転する剛毛の押圧力も高くなり、且つ、このようにしてこの表面に生成される粗面性RaもしくはRzも増大することの、経験則が成り立つ。このことは、上述で既に述べられたJ. Stango教授の研究内において述べられており、これら研究を改めて参照して頂きたい。
加工材料の表面に対する、リングブラシの平行移動もしくは軸線方向移動は、更に、加工材料の表面において生成された粗面性プロフィルが、特に均一に構成されており且つ特に如何なる送り方向も有していないことを誘起する。
本発明の対象は、同様にブラシ機構ユニット、および、回転ブラシ工具であり、これら両方が、有利には、加工材料の表面を加工するための、記載された方法により作動し、且つ、相応して構成されたブラシ機構ユニットを装備されている。
【0016】
結果として、加工材料の表面を加工するための新規の方法は提示され、且つ、説明される。この方法は、加工材料の当該の表面が、再現可能な粗さもしくは粗面性を備えられ得ることによって特徴付けられている。このことによって、加工材料の表面性状は、場合によっては後に続く加工または被覆に最適に適合可能である。このことは、従来、この論理的な帰結および特色において可能ではなかった。
それに加えて、基本的にそのことが先に既に詳細に説明されているように、当該の加工材料の表面の自動的な加工は、しかも制御もしくは調節の意味において達成される。
これによって、総じて、適宜に大きな表面は、再現可能に粗面化され得る。この中に、重要な利点は見て取れ得る。
【0017】
以下で、本発明を、ただ1つの実施例を図示した図に基づいて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に相応する、その回転ブラシ工具によって駆動される、所属するリングブラシを有するブラシ機構ユニットを含む、回転ブラシ工具の透視図である。
図2図1による対象の概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1内において、原理的に、回転ブラシ工具が図示されており、この回転ブラシ工具は、機械フレーム1を装備されている。この機械フレーム1は、この実施例において、および、限定的でなく、加工されるべき加工材料2に対して適合されている、円筒形のフレーム部分として形成されていても良い。
この加工材料2は、この実施例により、および、限定的でなく、互いに溶接された個々の管体から成る、パイプラインもしくは管状導管である。これら管体は、その際、図1内において認識され得る溶接継ぎ目3によって互いに結合されている。この溶接継ぎ目3、および、全体としてこれら管体の結合領域を相互間で腐食から保護するために、実例としてのケースにおいて、加工材料2の表面が、溶接継ぎ目3の領域内において、以下で更に詳細に説明されるべき回転ブラシ工具を用いて加工される。
この加工に引き続いて、この領域内において、保護被膜が、管状導管もしくは加工材料2の上に塗布され得る。
【0020】
基本的に、以下で更により詳細に説明されるべき回転ブラシ工具は、言うまでも無く、図1内において図示されたパイプラインもしくは管状導管のような、湾曲された加工材料2の表面の加工のために適合しているだけではない。むしろ、この回転ブラシ工具は、全く同様に、良好に、平坦な加工材料の表面の加工のためにも使用され得、このことは、詳細にはしかしながら図示されていない。
この回転ブラシ工具は、この実施例により、機械フレーム1によって保持されている。それに加えて、機械フレーム1は、この機械フレーム1が、加工材料2もしくは管状導管を、実例としてのケースにおいて、鉤爪状に周囲から把持するように構成されていても良い。更に、機械フレーム1が管状導管の軸線を中心に回転することは考慮可能であり、従って、当該の管状導管が、溶接継ぎ目3の領域内において全体として、および、この溶接継ぎ目の全周囲にわたって見て、回転ブラシ工具を用いて加工され得る。
【0021】
回転ブラシ工具は、ここで、詳細において、ただ図1内において部分的にだけ認識され得る駆動ユニット4を備えており、この駆動ユニットが、回転ブラシ工具の重要な構成要素としてのブラシ機構ユニット5を回転状態に置く。
この目的のために、ブラシ機構ユニット5は、最良に図2内において認識されるリングブラシ6、7を装備されている。このリングブラシ6、7は、ブラシベルト6と、このブラシベルト6に接続され且つ外方へと突出している剛毛7から組み立てられており、これら剛毛7が、ブラシリムを規定する。ブラシベルト6は、例えばポリアミドベースの合成物質織物ベルトから成るブラシベルトであっても良い。
剛毛7は、ブラシベルト6内において固着された鋼剛毛として装備されており、これら鋼剛毛が、図2内における実施例に相応して、および、限定的でなく、それぞれに前面側に斜めにされた剛毛先端部7′を備えている。このことは、もちろん、単に例示的に言えることである。
【0022】
このリングブラシ6、7は、回転式に駆動可能なブラシホルダー8内において収容され、このブラシホルダーが、最良に、図1内において認識される。ブラシホルダー8が、その際、そのことが出願人の特許文献4内において記載されているように構成されていることは可能である。基本的に、この点に関しては、例えば詳細に出願人の特許文献5内において提示されているような、同様に他のブラシホルダー8も考慮可能である。
そのことが、先に言及された特許文献内において記載されているように、リングブラシ6、7の収容のためのブラシホルダー8が、その際、複数の部材から成るように組み立てられていることは可能である。基本的に、リングブラシ6、7が強固にブラシホルダー8と結合されることは、しかもまた考慮可能である。
ただリングブラシ6、7を必要の際および摩耗(Verschliess)の際に交換可能とすることのためだけで、通常の場合に、しかしながら、先に提示された特許文献に相応する、複数の部材から成るブラシホルダー8が使用される。
【0023】
その場合に更に位置調節可能な停止手段9は、回転ブラシ工具もしくはブラシ機構ユニット5のための特別の意義がある。実際に、この停止手段9は、ブラケット10に接続されており、このブラケットの助けにより、停止手段9が、リングブラシ6、7の軸線Zに対するこの停止手段の図2内において図示された間隔Aに関して、位置調節され得る。このことは、図2内における相応する矢印によって示唆されている。
剛毛7に対する、これら剛毛の位置に関する停止手段9の位置調節は、ここで、加工材料2の表面の粗さもしくは粗面性に依存して行われる。即ち、停止手段9は、加工材料2の表面の粗さもしくは粗面性に依存して位置調節される。
停止手段9の位置調節のための尺度として、その際、加工材料2の既に加工された表面、即ち、図2内で矢印Bによって示唆された加工方向において回転ブラシ工具もしくはブラシ機構ユニット5に後続する、加工材料2の表面の領域が利用される。原理的に、同様に加工方向Bにおいて先行する、加工材料2の表面の構成要素も、停止手段9の調節のために援用され得る。
この実施例によりおよび有利には、しかしながら、加工方向Bに後続するおよび加工材料2の表面の既に加工された領域が、この加工材料の粗さもしくは粗面性に関して検査され、且つ、これに依存して停止手段9が位置調節されるように処置される。
【0024】
この目的のために、この実施例により、粗面性測定ユニット11、12、13が設けられている。加工材料2の既に加工された表面を、この加工材料の粗さもしくは粗面性に関して検出可能とするために、この粗面性測定ユニット11、12、13は、ブラシ機構ユニット5もしくは回転ブラシ工具を、このブラシ機構ユニット5もしくは回転ブラシ工具の加工方向Bにおいて追跡する。粗面性測定ユニット11、12、13は、この目的のために、レーザー11、間隔センサー12、および、カメラ13、例えばCCDカメラ13を備えている。
レーザー11と、間隔センサー12と、および、同様にCCDカメラ13とは、総じて、制御ユニット、もしくは、制御/調節ユニット14に接続されており、この制御ユニット、もしくは、制御/調節ユニットが、粗面性測定値Raの制御および検出のため、即ち、実例としてのケースにおいて、および、限定的でなく、冒頭における説明に相応して、平均的な粗面性測定値Raの検出のために利用される。
【0025】
実際に、レーザー11は、所定の角度αにおいて、加工材料2の表面に対して整向されており、当該の表面の上で、極めて細い光線を投射する。
この光線は、ここで、明確には図示されていない顕微鏡が前接続され得る高分解能のカメラ13を用いて、表面組織によって引き起こされるこの光線の歪みに関して検査される。実際に、当該の表面プロフィルは、直接的にこの光線の偏向から、その光線の直線状の経過との比較において計算され得る。
投射され且つ表面組織に基づいて歪められた、レーザー11のこの光線の像は、カメラ13を用いて検出され、且つ、これらデータが、このカメラ13に接続された制御/調節ユニット14によって、所望された粗面性測定値Raに変換され、もしくは、当該の粗面性測定値Raが、これらデータから導出される。
【0026】
付加的な間隔センサー12は、その際、一義的に、コントロールの目的のために利用され、且つ、加工材料2の表面の、場合によっては起こり得る平面からの逸脱、湾曲等の際に、依然として、レーザー11から放出された直線状の光線の問題の無い且つ鮮明な像が、加工材料2の表面上で存在し、且つ、表面組織による、この像の逸脱に関して検査され得ることを保障する。
場合によっては、全粗面性測定ユニット11、12、13は、そのことを図2内における二方向矢印が示唆しているように、加工材料2の表面に対するこの粗面性測定ユニットの間隔に関して相応して変化可能である。この間隔の変化は、その際、間隔センサー12の測定値に応じて行われる。
【0027】
既に述べられているように、停止手段9は、リングブラシ6、7の軸線Zに対して主に半径方向に位置調節され得る。
図2内において単に示唆されている停止手段駆動装置15が、停止手段9の、もしくは、この停止手段9を担持するブラケット10の、相応する位置調節移動のための働きをしても良い。この停止手段駆動装置15は、この目的のために、ブラケット10に作用し、このブラケットが、リングブラシ6、7と軸線同一に、回転可能に軸線Zを中心として支承されている。このことは、もちろん、単に例示的に言えることであり、且つ、決して限定的ではない。
いずれの場合でも、そのことを図2が示唆しているように、停止手段駆動装置15を用いて、停止手段9は、この停止手段の間隔Aに関して、リングブラシ6、7の軸線Zに対して半径方向に変化され得る。
【0028】
リングブラシ6、7のための駆動ユニット4と、停止手段9のための停止手段駆動装置15との他に、要するに、更に、別のリングブラシ駆動装置16が実現されている。このリングブラシ駆動装置16を用いて、停止手段9およびブラケット10を含む全リングブラシ6、7は、そのことを、図2内における相応する二方向矢印16が示唆しているように、加工材料2の表面に対して圧接可能であり、且つ、この加工材料の表面から持ち上げ可能であり、即ち、加工材料2の表面に対して垂直方向に負荷可能である。このようにして、そのことが先に既に説明されたように、加工材料2の表面の粗面深さは、同様に影響を及ぼされ得る。
図2内における相応する電気的な接続導線が示唆しているように、この目的のために、一方では停止手段駆動装置15が、および、他方ではリングブラシ駆動装置16が、それぞれに、制御ユニット14に接続されている。
リングブラシ駆動装置16が、リングブラシ6、7がただ加工材料2の表面に対してこのリングブラシの間隔に関して移動されるだけではなく、むしろ、選択的または付加的に同様に当該の加工材料2の表面に対して平行にも位置変更されることのための働きもすることは、基本的に同様に可能である。即ち、そのことを図1内における両方の二方向矢印が示唆しているように、リングブラシ駆動装置16は、同様にリングブラシ6、7の軸線方向移動に対して責任を負っても良い。
図2への転用は、このことが、リングブラシ駆動装置16が、そこの図示平面に対して垂直方向における、もしくは、軸線Zの方向における同様にリングブラシ6、7の移動のための働きもすることを意味する。
【0029】
本発明の領域内において、ここで、粗面性測定ユニット11、12、13を用いて検出された、加工材料2の表面のそれぞれの粗面性測定値Raに応じて、停止手段9は、停止手段駆動装置15を用いて、及び/または、ブラケット10を有する停止手段9を含めてのリングブラシ6、7が、総じて、リングブラシ駆動装置16の助力のもとで位置調節されるように処置される。このことは、制御/調節ユニット14を用いて、制御の意味で、または、有利には調節の形態において行われ得る。
この目的のために、当該の粗面性測定値RaIstは、加工方向Bにおいてリングブラシ6、7の後ろで、粗面性測定ユニット11、12、13を用いて検出され、且つ、制御/調節ユニット14に引き渡される。この制御/調節ユニット14内において、いまや、そこで保管された目標値RaSollとの、この実際値RaIstの比較は行われる。
調節の経過において、目標値RaSollと実際値RaIstとの間の近接を達成するために、目標値RaSollからの実際値RaIstのそれぞれの偏差に応じて、ここで、停止手段9は、停止手段駆動装置15を用いて、及び/または、全リングブラシ6、7が、リングブラシ駆動装置16の助力のもとで移動される。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の観点として以下を含む。
1.
ブラシ機構ユニット(5)を用いて、加工材料(2)の表面を加工するための方法であって、
このブラシ機構ユニットが、回転式に駆動可能なブラシホルダー(8)と、外方へと突出する剛毛(7)による剛毛リムを備えるリングブラシ(6、7)とを有し、
それに従って、回転する前記剛毛(7)が、回転する前記剛毛リム内へと入り込む位置調節可能な停止手段(9)の助力のもとで、並びに、運動エネルギーの蓄積によって、弾性的に変形され、
従って、前記剛毛(7)が、これら剛毛の解放の後、前記加工材料(2)の前記表面を、回転してだけではなく、むしろ、前記停止手段(9)の通過の後に解放された、蓄積された運動エネルギーの結果として、同時に打ち付けて加工する方法において、
前記停止手段(9)及び/または前記リングブラシ(6、7)が、前記加工材料(2)の前記表面の粗さに依存して位置調節されることを特徴とする方法。
2.
前記停止手段(9)は、回転する前記リングブラシ(6、7)の軸線(Z)に対して主に半径方向に、この停止手段の間隔(A)の変化のもとで位置調節されることを特徴とする上記1に記載の方法。
3.
前記加工材料(2)の前記表面の粗さは、触感的及び/または非接触的に検出されることを特徴とする上記1または2に記載の方法。
4.
前記加工材料(2)の加工された前記表面の粗さは、検出され、且つ、制御/調節ユニット(14)を用いて、それぞれの所望された前記表面の粗さプロフィルに応じて、前記停止手段(9)及び/または前記リングブラシ(6、7)の位置調節移動に変換されることを特徴とする上記3に記載の方法。
5.
前記加工材料(2)の前記表面の粗さは、接触ピンを用いて触感的に、及び/または、音源及び/または電磁的な波のための供給源によって非接触的に走査されることを特徴とする上記1から4のいずれか一つに記載の方法。
6.
前記電磁的な波のための供給源は、例えば、レーザー(11)として形成されており、このレーザーが、前記加工材料(2)の前記表面を走査することを特徴とする上記5に記載の方法。
7.
前記加工材料(2)の前記表面は、三角測量法により走査されることを特徴とする上記1から6のいずれか一つに記載の方法。
8.
前記停止手段(9)が、前記リングブラシ(6、7)に対して位置調節されるだけではなく、むしろ、
付加的に、このリングブラシ(6、7)が、前記停止手段(9)と共に、前記加工材料(2)の前記表面に対するのリングブラシの間隔に関して、及び/または、前記加工材料(2)の前記表面に対して平行に移動され得ることを特徴とする上記1から7のいずれか一つに記載の方法。
9.
回転式に駆動可能なブラシホルダー(8)と、外方へと突出する剛毛(7)を有する剛毛リムを備えるリングブラシ(6、7)とを有する、ブラシ機構ユニット(5)であって、
回転する前記剛毛リム内へと入り込む位置調節可能な停止手段(9)が設けられており、この停止手段(9)が、前記剛毛(7)を、所定の時間のあいだ制動し、従って、この剛毛の解放の後、この制動によって蓄積された運動エネルギーが、前記剛毛(7)による、加工材料(2)の表面の、付加的に打ち付ける加工のために利用される様式の上記ブラシ機構ユニットにおいて、
前記停止手段(9)及び/または前記リングブラシ(6、7)が、前記加工材料(2)の前記表面の粗さに依存して、位置調節されることを特徴とするブラシ機構ユニット(5)。
10.
機械フレーム(1)と、ブラシ機構ユニット(5)と、このブラシ機構ユニット(5)のための駆動ユニット(4)とを有する回転ブラシ工具であって、
前記ブラシ機構ユニット(5)が、回転式に駆動可能なブラシホルダー(8)と、外方へと突出する剛毛(7)を有する剛毛リムを備えるリングブラシ(6、7)とを有し、
回転する前記剛毛リム内へと入り込む位置調節可能な停止手段(9)が設けられており、この停止手段(9)が、前記剛毛(7)を、所定の時間のあいだ制動し、従って、この剛毛の解放の後、この制動によって蓄積された運動エネルギーが、前記剛毛(7)による、加工材料(2)の表面の、付加的に打ち付ける加工のために利用される様式の上記回転ブラシ工具において、
前記停止手段(9)及び/または前記リングブラシ(6、7)が、前記加工材料(2)の前記表面の粗さに依存して、位置調節されることを特徴とする回転ブラシ工具。
【符号の説明】
【0030】
1 機械フレーム
2 加工材料
3 溶接継ぎ目
4 駆動ユニット
5 ブラシ機構ユニット
6 リングブラシ、ブラシベルト
7 剛毛
7′ 剛毛先端部
8 ブラシホルダー
9 停止手段
10 ブラケット
11 レーザー、粗面性測定ユニット
12 間隔センサー、粗面性測定ユニット
13 カメラ、CCDカメラ、粗面性測定ユニット
14 制御/調節ユニット、制御ユニット
15 停止手段駆動装置
16 リングブラシ駆動装置、二方向矢印
A 間隔
B 加工方向
Z 軸線
α 角度
図1
図2