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特許7488044可動式ホーム柵設置構造および可動式ホーム柵設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】可動式ホーム柵設置構造および可動式ホーム柵設置方法
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20240514BHJP
   E01F 1/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B61B1/02
E01F1/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019207859
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2021079775
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】305018476
【氏名又は名称】阪急電鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】313012073
【氏名又は名称】クリヤマジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】梨本 隆一
(72)【発明者】
【氏名】中島 秀人
(72)【発明者】
【氏名】山口 英樹
(72)【発明者】
【氏名】嶋津 祐司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 太元支
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-103553(JP,A)
【文献】特開2001-106062(JP,A)
【文献】特開2013-063693(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0190031(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
E01F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎床面上に敷設された板状床材と、
前記板状床材の上部に設けられた凹部内に水平レベルが調整可能に設置されたベースプレートと、
前記ベースプレートと前記板状床材とを固定する固定部と、
前記ベースプレートに立設固定された可動式ホーム柵の立設部と、
を備え
前記ベースプレートは、他のベースプレートと一時的に連結して当該他のベースプレートとの間隔および高さに関する位置決めを行うための治具を着脱自在に装着するための治具取付部、を有し、
前記ベースプレートが設置された前記板状床材と、前記他のベースプレートが設置された前記板状床材との間に敷設された中間板状床材であって、
前記凹部が設けられておらず、
前記立設部の電気ケーブルを挿通するための挿通孔と、
前記電気ケーブルをケーブルダクトへ配線するための前記挿通孔に連通した床下空間を形成する床下空間形成部と、
を有する中間板状床材、
を更に備えた可動式ホーム柵設置構造。
【請求項2】
前記ベースプレートは、
前記水平レベルを調整するためのアジャスタボルト
を有する、
請求項1に記載の可動式ホーム柵設置構造。
【請求項3】
前記立設部は、ドアを支持して開閉駆動させる戸袋部である、
請求項1又は2に記載の可動式ホーム柵設置構造。
【請求項4】
基礎床面上に板状床材を敷設する工程と、
前記板状床材の上部に設けられた凹部内に水平レベルが調整可能なベースプレートであって、他のベースプレートと一時的に連結して当該他のベースプレートとの間隔および高さに関する位置決めを行うための治具を着脱自在に装着するための治具取付部を有するベースプレートを設置する工程と、
前記凹部が設けられておらず、可動式ホーム柵の立設部の電気ケーブルを挿通するための挿通孔と、前記電気ケーブルをケーブルダクトへ配線するための前記挿通孔に連通した床下空間を形成する床下空間形成部とを有する中間板状床材を、前記ベースプレートが設置された前記板状床材と、前記他のベースプレートが設置された前記板状床材との間に敷設する工程と、
前記ベースプレートの水平レベルを調整する工程と、
前記ベースプレートと前記板状床材とを固定する工程と、
前記ベースプレートに前記立設部を立設固定する工程と、
前記立設部の前記電気ケーブルを前記挿通孔に挿通し、前記床下空間を通じて前記ケーブルダクトへ配線する工程と、
を含む可動式ホーム柵設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動式ホーム柵の設置構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
可動式ホーム柵は、駅のプラットホームの軌道側端部に設置され、乗降タイミングに合わせてドアが開閉される装置である。可動式ホーム柵には様々なタイプがあるが、戸袋部から引戸式の可動ドアを進退させるようにスライド移動させる引戸タイプの可動式ホーム柵の普及が著しい。可動式ホーム柵を設置することで、プラットホームから軌道側への利用者の転落を防止できる。故に、可動式ホーム柵は、新たに建設される駅への採用は勿論のこと、既存の駅のプラットホームにも追加設置される事例が後を絶たない。
【0003】
ところで、ホーム柵はかなりの重量(例えば、500kgほど)を有する。そして、重量のほとんどはプラットホームに立設される立設部(引戸タイプの可動式ホーム柵であれば戸袋部が該当する。)を介してホーム床面に局所的に作用することとなる。また、可動式ホーム柵を設けることで生まれる横荷重(例えば、乗客が寄り掛かる事による荷重、列車通過時の風圧荷重、台風などの気象現象による風圧荷重、など)も、立設部を介してプラットホームへ局所的に作用する。
【0004】
こうした可動式ホーム柵の設置に伴う重量の増加や横荷重に対して、様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1では、戸袋部を固定するためのベースプレートをボルトで固定することを前提として配筋や厚さが設計された専用のPCスラブを用いる手法が提案されている。また、特許文献2では、戸袋部を取り付けるための部位を予め用意したコンクリート版を盛土式のプラットホームの上にロックボルトで固定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-088135号公報
【文献】特開2014-062407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
可動式ホーム柵を追加的に設置する場合には、新設のプラットホームへの設置とは異なり、特別な工事や手間が発生するという問題や、既存設備との美観的な調和を損ねる傾向にある点が問題とされる場合がある。
例えば、特許文献1の手法を既設のプラットホームに採用した場合、プラットホームの上部を、PCスラブを設置するために相当量削る工事をしなければならない。また、ホーム端部に複数のPCスラブを連続して配置するため、戸袋部を設置する部分以外もPCスラブの追加の重量を支えるための補強工事が必要となる場合もある。また、美観を維持するためには、PCスラブの上面に別途タイルを敷設するなどの追加工事も必要となる。
【0007】
また、特許文献2の手法を採用した場合は、特許文献1を採用した場合に比べれば、戸袋部を設置する部分にだけコンクリート版を設置するのでホーム全体に対する工事部位は比較的小さくて済むが、代わりにプラットホームを局所的に掘削する工事は必須となる。
【0008】
また、特許文献2の手法を採用した場合であっても、設置されるプラットホームが、可動式ホーム柵の重量に加えて、コンクリート版の重量を合わせた荷重を支えなければならなくなるので、補強工事が必要になる点においては変わらない。
プラットホームが局所的に支えなければならない荷重が大きくなれば、必然的にコンクリート版を固定するロックボルトやそれに準ずる構造要素は比較的大きく、その数も多くなる。ときに大口径のパイプを支柱として用いなければならなくなる。桁式プラットホームでは、大口径のパイプがホーム端部を貫通することになるので、桁下に設置されているケーブルやその他の設備を移設するための追加工事が発生する場合もある。また、工事部位が限定的であるが故に、そこだけいかにも追加工事された外観となるため、周囲との統一感が崩れ、プラットホーム全体の美観を損ねてしまう場合もある。
【0009】
なお、こうした問題は、引戸タイプの可動式ホーム柵に限らず、可動柵や索状体の昇降機構を備えた立設部をプラットホーム上に固定する昇降タイプの可動式ホーム柵でも同様である。
【0010】
本発明の課題は、既設のプラットホームに可動式ホーム柵を設置するための新しい技術を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための第1の発明は、基礎床面上に敷設された板状床材と、前記板状床材の上部に設けられた凹部内に水平レベルが調整可能に設置されたベースプレートと、前記ベースプレートと前記板状床材とを固定する固定部と、前記ベースプレートに立設固定された可動式ホーム柵の立設部と、を備えた可動式ホーム柵設置構造である。
【0012】
第1の発明によれば、基礎床面上に新たな床面として敷設される板状床材に凹部を設けておいて、そこにベースプレートを設置・固定する。そして、ベースプレートを介して可動式ホーム柵の立設部を立設できる。
【0013】
本発明によれば、可動式ホーム柵の重量は、ベースプレートと板状床材を介してプラットホームの基礎床面に分散して伝えられる。よって、本発明の可動式ホーム柵が設置されるプラットホームは、この分散荷重を支えられればよく、局所的に大荷重を支える必要はない。設置先が既設のプラットホームであれば、局所的に大荷重を支えるための補強工事(例えば、上述のような大口径のパイプ支柱を桁式プラットホームに貫通設置するような補強工事)は不要となり、既設のプラットホームへの採用も低コストにできる。また、可動式ホーム柵の設置後のプラットホームの床面は、新たな板状床材となるので、PCスラブを用いるよりもはるかに美観に優れる。また、別途タイルを貼るなどの美観のための追加工事を行ってもよいが不要とすることができる。
【0014】
第2の発明は、前記ベースプレートは、前記水平レベルを調整するためのアジャスタボルトと、他のベースプレートと一時的に連結して当該他のベースプレートとの間隔および高さに関する位置決めを行うための治具を着脱自在に装着するための治具取付部と、を有する、第1の発明の可動式ホーム柵設置構造である。
【0015】
第2の発明によれば、複数のベースプレート間を治具を介して連結して、複数のベースプレートの間隔や高さを適切に調整できる。特に、既設のプラットホームに可動式ホーム柵を追加設置する場合には、既設のプラットホームが必ずしもフラットな床面を維持できていなくとも、適切な設置工事を簡単に実現できるようになる。
【0016】
第3の発明は、前記ベースプレートが設置された前記板状床材と、前記他のベースプレートが設置された前記板状床材との間に敷設された中間板状床材であって、1)前記凹部が設けられておらず、2)前記立設部の電気ケーブルを挿通するための挿通孔と、3)前記電気ケーブルをケーブルダクトへ配線するための前記挿通孔に連通した床下空間を形成する床下空間形成部と、を有する中間板状床材、を更に備えた第2の発明の可動式ホーム柵設置構造である。
【0017】
第3の発明によれば、1つの立設部を固定するために、ベースプレートが設置される板状床材を複数枚離隔して設置する一方で、その中間にも中間板状床材を敷設することで、立設部の周囲の外観を統一できる。
加えて、中間板状床材の下に設けた床下空間を利用して、電気ケーブルをケーブルダクトへ配線できるので、可動式ホーム柵の追加にともない、ケーブルダクトへの配線空間を設けるといった追加工事は不要となる。
【0018】
第4の発明は、前記立設部が、前記治具取付部に前記治具が装着されて位置決めが行われた前記ベースプレートと前記他のベースプレートとの上に立設固定される、第2又は第3の発明の可動式ホーム柵設置構造である。
【0019】
第4の発明によれば、1つの立設部を、複数のベースプレートを介して複数の板状床材でプラットホームに対して固定できる。可動式ホーム柵の重量を複数の板状床材に分散できるので、荷重分散の観点から可動式ホーム柵の追加設置にともなう補強工事を更に低減できる。
【0020】
第5の発明は、前記固定部が、硬化することで前記ベースプレートと前記板状床材とを密着固定させる流動性の注入材であり、前記ベースプレートが、前記注入材を注入するための上下に貫通した注入孔を有する、第1~第4の何れかの発明の可動式ホーム柵設置構造である。
【0021】
第5の発明によれば、施工性に優れる。
【0022】
第6の発明は、前記立設部が、ドアを支持して開閉駆動させる戸袋部である、第1~第5の何れかの発明の可動式ホーム柵設置構造である。
【0023】
第6の発明によれば、第1~第5の何れかの発明と同様の効果を発揮する引戸タイプの可動式ホーム柵を実現できる。
【0024】
第7の発明は、基礎床面上に板状床材を敷設する工程と、前記板状床材の上部に設けられた凹部内に水平レベルが調整可能なベースプレートを設置し、水平レベルを調整する工程と、前記ベースプレートと前記板状床材とを固定する工程と、前記ベースプレートに可動式ホーム柵の立設部を立設固定する工程と、を含む可動式ホーム柵設置方法である。
【0025】
第7の発明によれば、第1の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】可動式ホーム柵の設置構造の例を示す俯瞰図。
図2図1のA-A断面図。
図3】基礎床面上に板状床材を敷設する可動式ホーム柵設置方法の第1工程を説明するための第1図。図1のA-A断面の部分拡大図に相当。
図4】基礎床面上に板状床材を敷設する可動式ホーム柵設置方法の第1工程を説明するための第2図。図1のB-B断面の部分拡大図に相当。
図5】可動式ホーム柵設置方法の第2工程を説明するための図。図1のA-A断面の部分拡大図に相当。
図6】可動式ホーム柵設置方法の第3工程を説明するための図。図1のA-A断面の部分拡大図に相当。
図7】可動式ホーム柵設置方法の第4工程を説明するための図。図1のA-A断面の部分拡大図に相当。
図8】可動式ホーム柵設置方法の第5工程を説明するための図。図1のB-B断面の部分拡大図に相当。
図9】基礎板状床材とベースプレートとの連結構造の変形例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、可動式ホーム柵を既設のプラットホームの嵩上げ工事に伴って追加設置するケースを例に挙げて説明する。以下で説明する実施形態は、本発明が適用可能な一形態であって、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限られないことは勿論である。
【0028】
図1は、本実施形態の可動式ホーム柵の設置構造の例を示す俯瞰図である。図の上側が軌道側、図の下側がプラットホーム7の側であり、図の左右がホーム長手方向に当たる。図2は、図1のA-A断面図である。
【0029】
可動式ホーム柵設置構造は、引戸タイプの可動式ホーム柵10と、板状床材30と、を有する。
【0030】
引戸タイプの可動式ホーム柵10は、1)可動ドア11と、2)可動ドア11を収容・進出可能にスライド可能に支持し、内蔵する電動部12で開閉駆動させる戸袋部13と、3)戸袋部13の少なくとも両端部を設置固定する台座部14と、4)台座部14毎に用意され、対応する台座部14を固定するベースプレート15と、5)電動部12へ電力を供給する電気ケーブル16と、を有する。
【0031】
板状床材30は、プラットホーム7の軌道側端部のうち、可動式ホーム柵10が設置される範囲に敷設される床材である。具体的には、板状床材30は、嵩上げ工事に伴って基礎床面(本実施形態では、既設のプラットホーム7の床面)上に敷設されて新たな床面となる大型タイルである
【0032】
板状床材30(30a、30b)は、台座部14直下に敷設される複数の基礎板状床材30aと、基礎板状床材30aの中間に敷設される中間板状床材30bと、を有する。
【0033】
基礎板状床材30aと、中間板状床材30bは、ともに軌道側の反対側(ホーム中央側)の端部が点字タイル帯40の端部に適当な目地部を挟んで接して、軌道側の端部に至るサイズを有する。
【0034】
具体的には、基礎板状床材30aおよび中間板状床材30bのホーム中央側には、ケーブルダクト42の上に点字タイル帯40が、嵩上げKの範囲に積層配置されている。そして、基礎板状床材30aは、例えば、厚さが60~80mm程度、全長(図1に向かって上下方向の長さ)が700~1000mm程度、全幅(図1に向かって左右方向の長さ)が400~500mm程度、を有する。中間板状床材30bは、例えば厚さが30~50mm程度、全長が700~800mm程度、全幅が300~400mm程度、を有する。
【0035】
基礎板状床材30aの軌道側端部には、下方に垂下する延設部32(図2参照)が設けられていて、既設のプラットホーム7の軌道側端部が経年劣化で剥離して軌道側へ落下するのを防止する機能を有する。延設部32は、中間板状床材30bにも同様に設けられている。なお、延設部32を設けない形態としてもよい。
【0036】
そして、基礎板状床材30aは、軌道側の上部に、ベースプレート15を水平レベルの調整が可能に設置可能な凹部33を有する(図2参照)。具体的には、凹部33の上面視寸法は、ベースプレート15の上面視寸法よりも大きく、後述する注入材を注入するために適当な隙間を外周部に有する。凹部33の深さは、ベースプレート15の厚さより大きく、設置されたベースプレート15の下に、水平レベルの調整用と、後述する注入材を注入するために適当なスペースを有する。
【0037】
中間板状床材30bは、基礎板状床材30aの間に複数枚が敷設されるが、基礎板状床材30aに隣接する中間板状床材30bには、挿通孔34(図1,8参照)が開けられる。
【0038】
可動式ホーム柵設置方法を、可動式ホーム柵の設置構造の詳細を述べつつ説明する。
図3は、基礎床面上に板状床材を敷設する可動式ホーム柵設置方法の第1工程を説明するための第1図であって、当該工程における図1のA-A断面の部分拡大図に相当する。図4は、基礎床面上に板状床材を敷設する可動式ホーム柵設置方法の第1工程を説明するための第2図であって、当該工程における図1のB-B断面図の部分拡大図に相当する。なお、図3図4では、理解を容易にするために排水勾配を意図的に大きく表現している。
【0039】
「第1工程」では、既設のプラットホーム7の床面上(基礎床面上)に、基礎板状床材30aおよび中間板状床材30bが敷設される。
図3に示すように、基礎板状床材30aは、適当な排水勾配を付けて、或いは水平に、既設のプラットホーム7の上面にモルタル8や接着剤で貼り付けられるとともに、アンカーボルト39(例えば、ケミカルアンカー)で強固に固定される(図2参照)。
図4に示すように、中間板状床材30bは、基礎床面上との間に床下空間形成部37(いわゆるスペーサー)を挟んで、床下空間形成部37越しにアンカーボルト39で強固に固定される。
【0040】
図5は、可動式ホーム柵設置方法の第2工程を説明するための図である。当該工程における図1のA-A断面の部分拡大図に相当する。
「第2工程」は、基礎板状床材30aの上部に設けられた凹部33内にベースプレート15を設置し、水平レベルを調整する工程である。
【0041】
具体的には、ベースプレート15は、
1)少なくとも3箇所に、水平レベルを調整するためのアジャスタボルト151と、
2)他のベースプレート(ホーム長手方向に隣り合うベースプレートであり、同じ戸袋部13の台座部14に固定されるベースプレート)と一時的に連結して当該他のベースプレートとの間隔および高さに関する位置決めを行うための治具20を着脱自在に装着するための治具取付部152と、を有する。治具取付部152は、治具20との連結方法によって適宜設定可能である。例えば、ボルト153で連結する場合には、治具取付部152としてネジ孔を設ける。
【0042】
第2工程では、作業員は、先ずベースプレート15に治具20をボルト153で固定する。そして、作業員は、治具20に水準器などをあてがいつつ、連結されたベースプレート15が同じ水平レベルで揃うように(または所定角度の傾斜となるように)、連結されているベースプレート15のアジャスタボルト151を調整する。
【0043】
図6は、可動式ホーム柵設置方法の第3工程を説明するための図であって、当該工程における図1のA-A断面の部分拡大図に相当する。
「第3工程」は、水平レベルが調整されたベースプレート15と基礎板状床材30aとを固定する工程である。具体的には、ベースプレート15には、1つまたは複数の注入孔155が設けられている。作業員は、基礎板状床材30aの凹部33の内周面と、ベースプレート15の外周面との間にできている隙間と、上下に貫通する注入孔155と、から硬化性の注入材22(例えば、モルタルや接着剤など)を注入する。
【0044】
注入材22は、時間経過とともに硬化して、基礎板状床材30aとベースプレート15とを強固に接着する。注入材22が硬化したならば、作業員は治具20を取り外す。
【0045】
図7は、可動式ホーム柵設置方法の第4工程を説明するための図であって、当該工程における図1のA-A断面の部分拡大図に相当する。
「第4工程」は、固定されたベースプレート15に可動式ホーム柵10の戸袋部13(立設部)を立設固定する工程である。
具体的には、ベースプレート15には、台座部14をボルト固定するためのネジ孔154を有する。ネジ孔154は、治具取付部152と兼ねてもよいし別途設けてもよい。作業員は、ベースプレート15へ台座部14を固定する。
【0046】
台座部14は、例えば厚鋼板製の板材であって、戸袋部13をボルト固定するためのネジ孔154を適当数有している。作業員は、固定された台座部14へ戸袋部13の位置を合わせてボルト固定する。台座部14をベースプレート15へ固定するボルトと、台座部14へ戸袋部13を固定するボルトは、共通でもよいし別々でもよい。
【0047】
図8は、可動式ホーム柵設置方法の第5工程を説明するための図であって、当該工程における図1のB-B断面の部分拡大図に相当する。
「第5工程」は、電気ケーブル16の配線工程である。作業員は、電気ケーブル16を、既設のプラットホーム7の上面と中間板状床材30bとの間に形成された床下空間9および挿通孔34を通じて、ケーブルダクト42から戸袋部13に内蔵される電動部12まで配線し、適切に接続する。なお、戸袋部13の底面には、適宜、電気ケーブル16を引き込むための引き込み孔131を設けておくものとする。
【0048】
以上、本実施形態によれば、基礎床面上に新たな床面として敷設される基礎板状床材30aに凹部33を設けておいて、そこにベースプレート15を設置・固定する。そして、ベースプレート15を介して可動式ホーム柵10の立設部である戸袋部13を立設する。可動式ホーム柵10の重量は、ベースプレート15および基礎板状床材30aを介して既設のプラットホーム7の基礎床面に分散して伝えられる。よって、既設のプラットホーム7は、この分散荷重を支えられればよく、局所的に大荷重を支える必要はない。局所的に大荷重を支えるための補強工事(例えば、大口径のパイプ支柱を桁式プラットホームに貫通設置するような補強工事)は不要となり、既設のプラットホーム7へ低コストに可動式ホーム柵10を追加設置できる。また、可動式ホーム柵10の設置後のプラットホーム7の床面は、新たな板状床材(基礎板状床材30a、中間板状床材30b)で覆われるので、専用のPCスラブで可動式ホーム柵を固定する手法を用いるよりも、はるかに美観に優れる。また、PCスラブを用いる手法で必要となるタイルを貼るなどの美観のための追加工事も不要となる。
【0049】
なお、本発明を適用可能な形態は上記実施形態に限らず、適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0050】
例えば、図9に示すように、基礎板状床材30aと、ベースプレート15との連結構造に、抜け止め部60を追加してもよい。
抜け止め部60は、基礎板状床材30aの下面に配置される背面板61と、下端が背面板61に溶接固定され上端がベースプレート15の貫通孔156を貫通する抜け止めボルト62と、水平レベル調整後に抜け止めボルト62を締めるナット63と、を有する。
【0051】
また、上記実施形態では、可動式ホーム柵10を引戸タイプとし、戸袋部13を立設部として例示したが、本発明は昇降タイプの可動式ホーム柵にも同様に適用できる。その場合、立設部は、昇降ドアや索状体を昇降する機構部を内蔵してプラットホーム7の上面に立設・固定される部位が該当することになる。
【0052】
また、上記実施形態では、既設のプラットホームの嵩上げ工事に伴って可動式ホーム柵を設置する例を示したが、既設のプラットホーム7の上面を削った上で板状床材30を設置するなどして可動式ホーム柵を設置する工事も可能である。
【0053】
また、上記実施形態では、ケーブルダクト42を点字タイル帯40の下に配置したが、プラットホーム7の下に設けることも可能である。その場合、電気ケーブル16をプラットホーム上からプラットホーム下に通す為の貫通孔が、中間板状床材30bに設けられる挿通孔34の位置近傍に設けられなくても、床下空間9を経由して電気ケーブル16を自由に配置することができる。
【符号の説明】
【0054】
7…プラットホーム
9…床下空間
10…可動式ホーム柵
11…可動ドア
12…電動部
13…戸袋部
14…台座部
15…ベースプレート
16…電気ケーブル
20…治具
22…注入材
30…板状床材
30a…基礎板状床材
30b…中間板状床材
33…凹部
37…床下空間形成部
39…アンカーボルト
42…ケーブルダクト
60…抜け止め部
151…アジャスタボルト
152…治具取付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9