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特許7488054アンテナ制御装置およびアンテナ制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】アンテナ制御装置およびアンテナ制御システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20240514BHJP
   H04B 10/2575 20130101ALI20240514BHJP
   H04J 1/00 20060101ALI20240514BHJP
   H04L 27/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H04B7/06 150
H04B10/2575
H04J1/00
H04L27/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020023262
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021129234
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発の委託事業 研究開発課題 「IoT機器増大に対応した有無線最適制御型電波有効利用基盤技術の研究開発」 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】相葉 孝充
(72)【発明者】
【氏名】松下 健治
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-041599(JP,A)
【文献】特開2014-138197(JP,A)
【文献】特開2003-134070(JP,A)
【文献】特開昭63-267084(JP,A)
【文献】特開昭62-029325(JP,A)
【文献】相葉 孝充 、他,マルチモード光ファイバ無線による高速デジタル・アナログ信号重畳伝送,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.118 No.144,一般社団法人電子情報通信学会,2018年07月12日,第118巻,pp.89-93
【文献】安田 裕紀 、他,デジタル光通信用TIAを用いたRoFシステムによるアナログ無線信号の伝送特性 ,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.118 No.396 [online],一般社団法人電子情報通信学会,2019年01月10日,第118巻,pp.87-91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02-7/12
H04L 27/00-27/38
H04J 1/00
H04B 10/2575
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送波によって変調された無線信号を生成する無線信号生成部と、
前記無線信号を送信するアンテナ装置の指向性を制御するアンテナ素子の位相制御信号を生成する位相制御信号生成部と、
前記位相制御信号の変調周波数をfmとし、前記搬送波の搬送波周波数をfcとし、nを自然数とした場合に、以下の式(1)を満たすように前記位相制御信号を変調する位相制御信号変調部と、
fc=n×fm・・・式(1)
前記位相制御信号が前記位相制御信号変調部によって変調されて生成されたデジタル信号、および、前記無線信号生成部によって生成された前記無線信号を重畳して重畳信号を生成する重畳部と、
前記重畳信号を伝送する伝送路と、
を含み、
前記アンテナ素子はアレイアンテナを構成し、複数の前記アンテナ素子のそれぞれに対応する複数の前記位相制御信号は、パラレル/シリアル変換部によって1つのシリアル位相制御信号に変換され、前記位相制御信号変調部は前記1つのシリアル位相制御信号を、前記式(1)を満たすように変調し、前記重畳部は、変調された前記1つのシリアル位相制御信号、および、前記無線信号生成部によって生成された前記無線信号を重畳して前記重畳信号を生成するアンテナ制御装置。
【請求項2】
前記伝送路によって伝送された前記重畳信号は前記搬送波周波数を通過帯域に含む帯域通過フィルタによって、前記無線信号が抽出され、抽出された前記無線信号は前記アンテナ装置のアンテナから放射される請求項1に記載のアンテナ制御装置。
【請求項3】
前記伝送路によって伝送された前記重畳信号は前記搬送波周波数の信号成分を雑音レベル以下に減衰させる帯域制限フィルタによって、変調された前記位相制御信号が抽出され、位相制御信号復調部によって復調された前記位相制御信号は前記アンテナ素子に印加されて前記アンテナ装置のアンテナの指向性を制御する請求項1または2に記載のアンテナ制御装置。
【請求項4】
前記位相制御信号変調部と、前記重畳部との間に設けられる帯域制限部を含み、
前記帯域制限部は、前記デジタル信号の周波数成分の中の前記変調周波数fmより高い周波数成分を減衰させる請求項1からのいずれか一項に記載のアンテナ制御装置。
【請求項5】
前記無線信号はマルチキャリア変調によって構成され、前記搬送波周波数は、マルチキャリア変調によって使用される周波数帯域の中心周波数、または、中心となるキャリアの周波数である請求項1からのいずれか一項に記載のアンテナ制御装置。
【請求項6】
前記伝送路は、メタル線または光ファイバを含んで構成され、前記伝送路に前記光ファイバが含まれる場合には、前記重畳信号を光信号に変換する発光素子を含む請求項1からのいずれか一項に記載のアンテナ制御装置。
【請求項7】
前記伝送路が前記光ファイバである場合に、前記伝送路の終端部には光カプラが含まれ、前記重畳信号に含まれる無線信号成分と、デジタル信号成分とのエネルギーの分岐比は、無線信号成分>デジタル信号成分であり、分岐された後の前記無線信号成分は光/電気変換部を介して無線信号に変換され、分岐された後の前記デジタル信号成分は他の光/電気変換部を介して位相制御信号に変換される請求項に記載のアンテナ制御装置。
【請求項8】
前記伝送路が前記光ファイバである場合に、前記伝送路の終端部には前記光信号を電気信号に変換する光電気変換部を含む請求項に記載のアンテナ制御装置。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載のアンテナ制御装置と、
前記位相制御信号が入力される、前記アンテナ素子の指向性を制御するデジタル位相器、および、前記デジタル位相器に接続された前記アンテナ素子によって構成されるアンテナを含む前記アンテナ装置と、を含むアンテナ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ制御装置およびアンテナ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アレイアンテナ等のアンテナを含むアンテナモジュールでは、アレイアンテナの指向性を制御するために、アレイアンテナを構成する各アンテナ素子にデジタル位相制御信号を印可する必要がある場合がある。このような場合には、従来、アレイアンテナから放射させる無線信号とアンテナ素子に印加するデジタル位相制御信号とを別々の信号線で伝送するために、伝送路が肥大化し配策性が劣化するという問題点を有していた。
【0003】
このような課題を解決するために、例えば、特許文献1では、別途の制御ケーブルを接続しなくとも、伝送ケーブル1本によって通信と共にアンテナ部の制御も可能とする非接触通信装置およびアンテナ装置を提供する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-041599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成によれば、無線信号からアレイアンテナの位相制御信号を除去するために、HPF(High Pass Filter)を使用している。したがって、アレイアンテナの位相制御を高速に実行する必要がある場合には、HPFでは高速な位相制御信号から高調波成分が除去できないために、無線信号に帯域外輻射が重畳された違法な無線信号を放射する可能性があるという課題がある。
【0006】
例えば、アプリケーションとして5G通信のような低遅延な無線通信システムへの適用を考えると、アレイアンテナの移動制御も高速な応答が要求されることが想定され、高速な位相制御信号を適用することが必要になる。特許文献1のようにHPFを提供する場合には、重畳する位相制御信号が無線の無線信号の搬送波周波数に対して、十分に低速な場合にしか適用できないために、5G通信のような低遅延な無線通信システムへ適用することが困難になる場合がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、アレイアンテナから放射させる無線信号とアンテナ素子に印加するデジタル位相制御信号とを一本の信号線で伝送することで省線化とコストを低減するとともに、簡易な構成でデジタル位相制御信号の高調波による不要輻射を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に係るアンテナ制御装置は、搬送波によって変調された無線信号を生成する無線信号生成部と、前記無線信号を送信するアンテナ装置の指向性を制御するアンテナ素子の位相制御信号を生成する位相制御信号生成部と、前記位相制御信号の変調周波数をfmとし、前記搬送波の搬送波周波数をfcとし、nを自然数とした場合に、以下の式(1)を満たすように前記位相制御信号を変調する位相制御信号変調部と、fc=n×fm・・・式(1)、前記位相制御信号が前記位相制御信号変調部によって変調されて生成されたデジタル信号、および、前記無線信号生成部によって生成された無線信号を重畳して重畳信号を生成する重畳部と、前記重畳信号を伝送する伝送路と、を含むことが好ましい。
【0009】
前記伝送路によって伝送された前記重畳信号は前記搬送波周波数を通過帯域に含む帯域通過フィルタによって、前記無線信号が抽出され、抽出された前記無線信号は前記アンテナ装置のアンテナから放射されることが好ましい。
【0010】
前記アンテナ素子はアレイアンテナを構成し、複数の前記アンテナ素子のそれぞれに対応する複数の前記位相制御信号は、パラレル/シリアル変換部によって1つのシリアル位相制御信号に変換され、前記位相制御信号変調部は前記1つのシリアル位相制御信号を、前記式(1)を満たすように変調し、前記重畳部は、変調された前記1つのシリアル位相制御信号、および、前記無線信号生成部によって生成された無線信号を重畳して重畳信号を生成することが好ましい。
【0011】
前記伝送路によって伝送された前記重畳信号は前記搬送波周波数の信号成分を雑音レベル以下に減衰させる帯域制限フィルタによって、変調された前記位相制御信号が抽出され、位相制御信号復調部によって復調された前記位相制御信号は前記アンテナ素子に印加されて前記アンテナ装置のアンテナの指向性を制御することが好ましい。
【0012】
前記位相制御信号変調部と、前記重畳部との間に設けられる帯域制限部を含み、
前記帯域制限部は、前記デジタル信号の周波数成分の中の前記変調周波数fmより高い周波数成分を減衰させることが好ましい。
【0013】
前記無線信号はマルチキャリア変調によって構成され、前記搬送波周波数は、マルチキャリア変調によって使用される周波数帯域の中心周波数、または、中心となるキャリアの周波数であることが好ましい。
【0014】
前記伝送路は、メタル線または光ファイバを含んで構成され、前記伝送路に前記光ファイバが含まれる場合には、前記重畳信号を光信号に変換する発光素子を含むことが好ましい。
【0015】
前記伝送路が光ファイバである場合に、前記伝送路の終端部には光カプラが含まれ、前記重畳信号に含まれる無線信号成分と、デジタル信号成分とのエネルギーの分岐比は、無線信号成分>デジタル信号成分であり、分岐された後の前記無線信号成分は光/電気変換部を介して無線信号に変換され、分岐された後の前記デジタル信号成分は他の光/電気変換部を介して位相制御信号に変換されることが好ましい。
【0016】
前記伝送路が光ファイバである場合に、前記伝送路の終端部には前記光信号を電気信号に変換する光電気変換部を含むことが好ましい。
【0017】
本発明の他の態様に係るアンテナ制御システムは、アンテナ制御装置と、前記位相制御信号が入力される、前記アンテナ素子の指向性を制御するデジタル位相器、および、前記デジタル位相器に接続された前記アンテナ素子によって構成されるアンテナを含む前記アンテナ装置と、を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アンテナから放射させる無線信号とアンテナ素子に印加するデジタル位相制御信号とを一本の信号線で伝送することで省線化とコストを低減するとともに、簡易な構成でデジタル位相制御信号の高調波による不要輻射を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係るアンテナ制御システムの一例を示す模式図である。
図2】(a)パルス波形の一例を示す図である。(b)(a)のパルス波形の周波数スペクトルの模式図である。(c)変調された位相制御信号であるデジタル信号の周波数スペクトルの一例を示す模式図である。
図3】(a)単一の搬送波によるアナログ信号の一例を示す図である。(b)(a)のアナログ信号の周波数スペクトルの一例を示す模式図である。
図4】ローパスフィルタとして機能する帯域制限部により減衰した、変調された位相制御信号であるデジタル信号の周波数スペクトルの模式図である。
図5】(a)無線信号と変調された位相制御信号が重畳された重畳信号の周波数スペクトルの一例を示す模式図である。(b)無線信号と変調された位相制御信号が重畳された重畳信号の周波数スペクトルの他の一例を示す模式図である。
図6】本実施形態に係るアンテナ制御システムの他の一例を示す模式図である。
図7】本実施形態に係るアンテナ制御システムのその他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態に係わるアンテナ制御装置およびアンテナ制御システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、一例であり、本開示に限定する主旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。さらに、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0021】
本実施形態に係るアンテナ制御装置およびアンテナ制御システムを図1図7を用いて説明する。
【0022】
(アンテナ制御装置およびアンテナ制御システムの適用例の概要)
本実施形態のアンテナ制御装置およびアンテナ制御システムは、無線信号に重畳されたデジタル位相制御信号の高調波による帯域外輻射を抑制するために、デジタル位相制御信号のディップを無線信号の搬送波周波数に合わせることを特徴とする。このような構成によって、無線信号のSNRの劣化を抑制し、なおかつ、バンドパスフィルタ等によって無線信号からデジタル位相制御信号を除去することを可能にし、高品質な無線信号の放射と、適切なデジタル位相制御を実現することを可能にする。
【0023】
(信号伝送システムの概要)
図1に本実施形態に係わるアンテナ制御装置およびアンテナ制御装置を含むアンテナ制御システムの一例の概要について説明する。アンテナ制御システム1000aは、例えば、図1に示すように、送信装置100a、伝送路200aおよび受信装置300aを含むアンテナ制御装置400a、並びに、アンテナ装置500を含む。なお、図6に示す他の一例の送信装置100bおよび図7に示すその他の一例の送信装置100c、並びに、送信装置100aを総称して送信装置100と称する場合がある。同様に、図6に示す他の一例の伝送路200bおよび図7に示すその他の一例の伝送路200c、並びに、伝送路200aを総称して伝送路200と称する場合がある。また、図6に示す他の一例の受信装置300bおよび図7に示すその他の一例の受信装置300c、並びに、受信装置300aを総称して受信装置300と称する場合がある。さらに、図6に示す他の一例のアンテナ制御システム1000bおよび図7に示すその他の一例のアンテナ制御システム1000c、並びに、アンテナ制御システム1000aを総称してアンテナ制御システム1000と称する場合がある。
【0024】
送信装置100aは、アナログ信号である無線信号と、アレイアンテナの各アンテナ素子から放射される無線信号の位相を制御する、デジタル信号であるデジタル位相制御信号を含むシリアルデジタル位相制御信号と、を重畳して送信する装置である。送信装置100aは、無線信号生成部110、デジタル信号生成部120、帯域制限部130、重畳部140、および、送信部150aを含んで構成される。なお、帯域制限部130は必須の構成要素ではない。
【0025】
無線信号生成部110は、搬送波によって変調された無線信号等のアナログ信号を生成する機能を有する。アナログ信号には、一例として、無線信号等の搬送波を用いた連続波形信号が挙げられる。図3(a)は、アナログ信号の波形の一例を示す図であり、縦軸は電圧を示し横軸は時間を示している。図3(b)は、図3(a)のアナログ信号の周波数スペクトルを示す図であり、縦軸はスペクトル強度としての電力を示し横軸は周波数を示している。
【0026】
図3(a)では、搬送波の搬送波周波数fcを用いて振幅変調を行っているために、図3(b)の周波数スペクトルでは、搬送波周波数fcだけが観測されている。しかし、本実施形態では、変調方法には、位相変調、周波数変調等の変調方式も含まれるので、図5の周波数スペクトルが、搬送波周波数fcから上下方向の周波数を周波数バンドとして含む場合もある。また、5G通信などのようにマルチキャリア変調方式を採用する場合には、複数の搬送波周波数を含む場合もある。以下の説明ではアナログ信号として、図3(b)のように単一の搬送波周波数fcを有する信号について主に説明する。無線信号生成部110は重畳部140に接続され、無線信号生成部110で生成された無線信号等のアナログ信号を重畳部140に出力する。
【0027】
次に、アンテナ装置500のアンテナの指向性を制御するデジタル位相制御信号を含むデジタル信号を生成するデジタル信号生成部120について説明する。デジタル信号生成部120には、位相制御信号生成部121、P/S変換部122および位相制御信号変調部123が含まれる。(P/S:パラレル/シリアル)
【0028】
位相制御信号生成部121は、デジタル位相制御信号を構成するパルス信号を生成する。パルス信号は、例えば、図2(a)に示すように、特定の幅を持った矩形波である。図2(a)は、パルス信号の1つのパルス波形を示す図であり、縦軸は振幅(電圧または電流)であり横軸は時間を示している。パルス信号は、デジタル情報の「1」と「0」に対応して、振幅が特定の値を持ったり、振幅が0になったりする。特定の値はアンテナ制御システム1000aが任意の値に設定することができる。
【0029】
図2(b)は、パルス信号が高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)された後の周波数スペクトルの模式図を示す。パルス信号の周波数成分は直流であるDCから0.45/ΔT(ΔT:パルス幅)以上の広帯域な周波数成分を有する。図1(b)のパルス信号の周波数スペクトルを示す図では、縦軸はスペクトル強度としての電力であり横軸は周波数を示している。
【0030】
デジタル位相制御信号は、上述のようなパルス信号によって構成され、アンテナ装置500の1つのアンテナ素子に対して、1つのデジタル位相制御信号が生成される。一例として、図1に示すように、デジタル位相制御信号DS1は、アンテナ素子ANT1の位相を制御するためのデジタル信号である。また、デジタル位相制御信号DS2は、アンテナ素子ANT2の位相を制御するためのデジタル信号であり、デジタル位相制御信号DS3は、アンテナ素子ANT3の位相を制御するためのデジタル信号である。さらに、デジタル位相制御信号DS4は、アンテナ素子ANT4の位相を制御するためのデジタル信号である。ただし、アンテナ装置500に含まれるアンテナ素子の数は4個に限定されるわけではないので、アンテナ装置500に含まれるアンテナ素子の数だけのデジタル位相制御信号が位相制御信号生成部121によって生成される。
【0031】
位相制御信号生成部121は、P/S変換部122に接続され、生成した複数のデジタル位相制御信号をパラレルにP/S変換部122に出力する。
【0032】
P/S変換部122は、位相制御信号生成部121において生成された複数のデジタル位相制御信号を1つのシリアル位相制御信号に変換する機能を有する。パラレルデジタル信号からシリアルデジタル信号に変更する技術は既知の従来技術であるので、ここでは詳細な説明は省略するが、変換方法およびフレームフォーマットに関しては制限が設けられることはない。
【0033】
位相制御信号変調部123は、P/S変換部122で生成されたシリアル位相制御信号を変調し、デジタル信号DSを生成する。変調周波数がfmである場合の、デジタル信号DSの周波数スペクトルを図2(c)に示す。図2(c)に示す周波数スペクトルは、変調周波数fmの整数倍の周波数で極小点SP1、SP2、SP3、SP4等が存在する。本実施形態の位相制御信号変調部123は、シリアル位相制御信号の変調周波数をfmとし、搬送波の搬送波周波数をfcとし、自然数をnとした場合に、fc=n×fmとなるようにシリアル位相制御信号を変調し、デジタル信号DSを生成する。すなわち、搬送波周波数が、デジタル信号DSの極小点SP1、SP2、SP3、SP4に位置するように選択することによって、アナログ信号ASのSNRの劣化を抑制することが可能になる。なお、5G通信ではマルチキャリア変調方式を採用しているので、搬送波周波数fcはマルチキャリアの中心のキャリアの周波数、または、使用されている周波数帯域の中心の周波数とすることも可能である。
【0034】
帯域制限部130は、位相制御信号変調部123において変調周波数fmで変調されて生成されたデジタル信号DSの高周波数成分を減衰させるフィルタである。例えば、帯域制限部130は、変調周波数fmより高い周波数成分を減衰させる。つまり、図2(c)における変調周波数fmを示す極小点SP1よりも高い周波数成分を減衰させる。したがって、搬送波周波数fcに位置するアナログ信号ASと干渉する周波数成分が減衰する。一方、デジタル信号DSを復調させるには、主として、変調周波数fmを示す極小点SP1よりも低い周波数成分が必要である。したがって、帯域制限部130は、変調周波数fmを示す極小点SP1以下の周波数成分の減衰を防ぐように機能する。一例として、帯域制限部130の遮断周波数はfmHzであり、傾きは-6dB/オクターブである。なお、帯域制限部130を使用しないで、デジタル信号DSをアナログ信号ASと重畳させる構成にすることも可能である。
【0035】
図4は、帯域制限部130を通過したデジタル信号DSの周波数スペクトルを示す図であり、縦軸が電力を示し横軸が周波数を示している。図4から分かるように、変調周波数fmを示す極小点SP1以下の周波数成分は減衰せず、変調周波数fmを示す極小点SP1よりも高い周波数成分が減衰している。
【0036】
帯域制限部130は、変調周波数fmより高い周波数成分が減衰した帯域制限デジタル信号LDSを重畳部140に出力する。
【0037】
重畳部140は、変調周波数fmより高い周波数成分が減衰した帯域制限デジタル信号LDSまたはデジタル信号DSと、無線信号生成部110で生成された搬送波周波数fcを有するアナログ信号ASとを重畳させた重畳信号を生成する機能を有する。重畳部140の一例として、方向性結合器が挙げられる。
【0038】
図5(a)は、重畳部140で重畳された重畳信号の周波数スペクトルの一例を示す図であり、縦軸が電力を示し横軸が周波数を示している。図5(a)では、P/S変換部122で生成されたシリアル位相制御信号の変調周波数fmは14GHzであり、アナログ信号ASとしての無線信号の搬送波周波数fcは28GHzである。したがって、シリアル位相制御信号の周波数成分の2番目の極小点である2×fmの周波数に、無線信号の搬送波周波数fcが位置する。無線信号は十分な信号品質を有することが分かる。
【0039】
図5(b)は、重畳部140で重畳された重畳信号の周波数スペクトルの他の一例を示す図であり、縦軸が電力を示し横軸が周波数を示している。図5(b)では、P/S変換部122で生成されたシリアル位相制御信号の変調周波数fmは(28/3)GHzであり、アナログ信号ASとしての無線信号の搬送波周波数fcは28GHzである。したがって、シリアル位相制御信号の周波数成分の3番目の極小点である3×fmの周波数に、無線信号の搬送波周波数fcが位置する。無線信号は図5(a)よりも十分な信号品質を有することが分かる。
【0040】
なお、図5(a)および図5(b)では、変調周波数fmの高次の周波数に無線信号の搬送波周波数fcを一致させているが、変調周波数fmに無線信号の搬送波周波数fcを一致させることも可能である。変調周波数fmを無線信号の搬送波周波数fcまで上げることが可能になるので、アンテナ素子の位相制御をより高速に実行することも可能になる。
【0041】
重畳部140は、変調周波数fmより高い周波数成分が減衰した帯域制限デジタル信号LDSまたはデジタル信号DSとアナログ信号ASとを重畳させた重畳信号を送信部150aに出力する機能を有する。
【0042】
送信部150aは、重畳信号を伝送路200aに出力する機能を有する。送信部150aには、送信装置100aと伝送路200aを接続するためのコネクタが含まれる場合がある。また、送信部150aには、重畳信号を増幅するための増幅器が含まれてもよいが、重畳信号は必ず増幅されるわけではない。
【0043】
伝送路200aは、送信装置100aと受信装置300aとを接続する1本の通信線である。伝送路200aは、重畳信号の周波数帯域において平坦な利得周波数特性を有するメタル線または光ファイバを使用することが可能である。図1においては、伝送路200aがメタル線である場合を説明し、図6および図7においては、伝送路200bおよび伝送路200cが光ファイバである場合を説明する。
【0044】
受信装置300aは、伝送路200aを伝送した重畳信号を受信する装置である。図1における受信装置300aは、分岐部310a、無線帯域通過部320a、位相帯域通過部330a、位相制御信号復調部340aおよびS/P変換部350aを含んで構成される。(S/P:シリアル/パラレル)
【0045】
分岐部310aは、伝送路200aを伝送した重畳信号を入力し、分岐する機能を有する。分岐部310aには、受信装置300aと伝送路200aを接続するためのコネクタが含まれる場合がある。分岐部310aによって、重畳信号を任意のエネルギー比率に分岐し、無線帯域通過部320aおよび位相帯域通過部330aに分岐された重畳信号を出力する。
【0046】
無線帯域通過部320aは、分岐された重畳信号から無線信号を抽出する機能を有する。一例として、無線帯域通過部320aは、中心周波数が搬送波周波数fcであるバンドパスフィルタであってもよい。このような無線帯域通過部320aによって、分岐された重畳信号からシリアル位相制御信号の周波数成分を除去することが可能になる。無線帯域通過部320aを通過した無線信号は、アンテナ装置500に含まれるデジタル位相器510を介して、アンテナ素子ANT1、アンテナ素子ANT2、アンテナ素子ANT3およびアンテナ素子ANT4から放射される。
【0047】
位相帯域通過部330aは、分岐された重畳信号から変調されたシリアル位相制御信号を抽出する機能を有する。一例として、位相帯域通過部330aは、中心周波数が搬送波周波数fcであるバンドストップフィルタであってもよい。また、バンドストップフィルタとしてノッチフィルタが使用されてもよい。このような位相帯域通過部330aによって、分岐された重畳信号から無線信号の周波数成分を除去することが可能になる。
【0048】
位相制御信号復調部340aは、変調されたシリアル位相制御信号を復調する復調器である。変調されたシリアル位相制御信号を復調することによって、P/S変換部122で生成されたシリアル位相制御信号を取得する。位相制御信号復調部340aにおいて復調されたシリアル位相制御信号はS/P変換部350aに出力される。
【0049】
S/P変換部350aは、入力されたシリアル位相制御信号を、位相制御信号生成部121において生成された複数のデジタル位相制御信号に変換する機能を有する。図1においては、S/P変換部350aは、シリアル位相制御信号からアンテナ素子ANT1の位相を制御するデジタル位相制御信号DS1、アンテナ素子ANT2の位相を制御するデジタル位相制御信号DS2を生成する。また、S/P変換部350aは、シリアル位相制御信号からアンテナ素子ANT3の位相を制御するデジタル位相制御信号DS3、アンテナ素子ANT4の位相を制御するデジタル位相制御信号DS4を生成する。
【0050】
アンテナ装置500は、デジタル位相器510、および、アレイアンテナを構成するアンテナ素子ANT1、アンテナ素子ANT2、アンテナ素子ANT3およびアンテナ素子ANT4を含んで構成される。
【0051】
デジタル位相器510には、アンテナ素子ANT1の無線信号の位相を制御するデジタル位相制御信号DS1が入力される位相器511、アンテナ素子ANT2の無線信号の位相を制御するデジタル位相制御信号DS2が入力される位相器512が含まれる。さらに、デジタル位相器510には、アンテナ素子ANT3の無線信号の位相を制御するデジタル位相制御信号DS3が入力される位相器513、アンテナ素子ANT4の無線信号の位相を制御するデジタル位相制御信号DS4が入力される位相器514が含まれる。
【0052】
アレイアンテナの指向性は、デジタル位相制御信号DS1、デジタル位相制御信号DS2、デジタル位相制御信号DS3およびデジタル位相制御信号DS4によって制御される。
【0053】
(変形例1)
上記実施形態においては、伝送路200がメタル線によって構成される場合について説明したが、伝送路200が光ファイバによって構成される場合について図6および図7を用いて説明する。最初に図6のアンテナ制御システム1000bについて変形例1として説明する。
【0054】
図6に示すアンテナ制御システム1000bは、例えば、送信装置100b、伝送路200bおよび受信装置300bを含むアンテナ制御装置400b、並びに、アンテナ装置500を含む。
【0055】
図1に示す送信装置100aの構成と図6に示す送信装置100bの構成とでは、送信部150aと電気/光変換部150bだけが異なるので、図6に示される電気/光変換部150bについて説明する。
【0056】
電気/光変換部150bは、重畳部140から出力された重畳信号を光ファイバとしての伝送路200bによって伝送するために、電気信号である重畳信号を光信号に変換する機能を有する。電気/光変換部150bの一例として、発光素子が挙げられる。発光素子は重畳信号を光信号に変換し、変換された光信号を伝送路200bに出力する素子である。また、発光素子には、レーザや発光ダイオードが含まれてもよい場合がある。
【0057】
伝送路200bは、送信装置100bと受信装置300bとを接続する1本の通信線である。伝送路200bの一例としては、光ファイバが挙げられる。光ファイバは、例えば、ガラス製又は樹脂製である。光ファイバは、例えば、光信号が伝搬するコア層及びコア層の周囲を覆うクラッド層等を含んで構成される。光ファイバは、光信号がコア層とクラッド層との境界面において所定の角度で全反射することにより光信号がコア層内を伝搬する。光ファイバは、当該光ファイバの線径をメタル線よりも小さくすることができると共に軽量化を実現することが可能となる。
【0058】
受信装置300bは、伝送路200bを伝送した重畳信号を受信する装置である。図6における受信装置300bは、分岐部310b、無線帯域通過部320b、位相帯域通過部330b、位相制御信号復調部340b、S/P変換部350b、光/電気変換部361および光/電気変換部362を含んで構成される。
【0059】
分岐部310bの一例として、光分岐器が挙げられ、光分岐器は光信号を分岐する分岐器である。光分岐器は、光ファイバで構成される伝送路200bを介して送信装置100bに接続され、送信装置100bから送信された伝送信号としての光信号を分岐する。
【0060】
光分岐器は、伝送路200bによって伝送された光信号を一定の比率(例えば9対1の比率)で分岐する。なお、分岐する比率は、9対1に限定されず、その他の比率で光信号を分岐してもよい。分岐する比率の詳細については後述する。光分岐器は、光/電気変換部361および光/電気変換部362に接続される。光分岐器は、送信装置100bから送信された伝送信号としての光信号を一定の比率で分岐し、分岐された光信号をそれぞれ光/電気変換部361および光/電気変換部362に出力する。
【0061】
光/電気変換部361は、分岐部310bで一定の比率で分岐された伝送信号を入力する。図6においては、伝送信号が光信号であるので、光/電気変換部361はフォトダイオード等の受光素子である。受光素子は、光信号を電流信号等の電気信号に変換する素子であり、変換された電気信号を無線帯域通過部320bに出力する。なお、受光素子で光信号から変換された電流信号を増幅して電圧信号として出力する増幅器が含まれてもよい。増幅部の一例としてはローノイズアンプが挙げられる。ローノイズアンプは低雑音増幅器で、放送や通信など高周波の送受信回路に多く使われている。
【0062】
無線帯域通過部320bは、光信号から変換された電気信号から無線信号を抽出する機能を有する。一例として、無線帯域通過部320bは、中心周波数が搬送波周波数fcであるバンドパスフィルタであってもよい。このような無線帯域通過部320bによって、光信号から変換された電気信号からシリアル位相制御信号の周波数成分を除去することが可能になる。無線帯域通過部320bを通過した無線信号は、アンテナ装置500に含まれるデジタル位相器510を介して、アンテナ素子ANT1、アンテナ素子ANT2、アンテナ素子ANT3およびアンテナ素子ANT4から放射される。
【0063】
位相帯域通過部330bは、光信号から変換された電気信号から変調されたシリアル位相制御信号を抽出する機能を有する。一例として、位相帯域通過部330bは、中心周波数が搬送波周波数fcであるバンドストップフィルタであってもよい。また、バンドストップフィルタとしてノッチフィルタが使用されてもよい。このような位相帯域通過部330bによって、光信号から変換された電気信号から無線信号の周波数成分を除去することが可能になる。
【0064】
位相制御信号復調部340bは、変調されたシリアル位相制御信号を復調する復調器である。変調されたシリアル位相制御信号を復調することによって、P/S変換部122で生成されたシリアル位相制御信号を取得する。位相制御信号復調部340において復調されたシリアル位相制御信号はS/P変換部350bに出力される。
【0065】
S/P変換部350bは、入力されたシリアル位相制御信号を、位相制御信号生成部121において生成された複数のデジタル位相制御信号に変換する機能を有する。図6においては、S/P変換部350bは、シリアル位相制御信号からアンテナ素子ANT1の位相を制御するデジタル位相制御信号DS1、アンテナ素子ANT2の位相を制御するデジタル位相制御信号DS2を生成する。また、S/P変換部350bは、シリアル位相制御信号からアンテナ素子ANT3の位相を制御するデジタル位相制御信号DS3、アンテナ素子ANT4の位相を制御するデジタル位相制御信号DS4を生成する。
【0066】
(変形例2)
上記変形例1においては、伝送路200が光ファイバによって構成される場合であって、光信号としての重畳信号が分岐する一例について説明したが、変形例2においては、重畳信号を電気信号に変換してから分岐する一例について図7を用いて説明する。
【0067】
図7に示すアンテナ制御システム1000cは、例えば、送信装置100c、伝送路200cおよび受信装置300cを含むアンテナ制御装置400c、並びに、アンテナ装置500を含む。
【0068】
図1に示す送信装置100aの構成と図7に示す送信装置100cの構成とでは、送信部150aと電気/光変換部150cだけが異なる。なお、図6に示される電気/光変換部150bおよび図7に示される電気/光変換部150cは同じ機能を有するが再度説明する。
【0069】
電気/光変換部150cは、重畳部140から出力された重畳信号を光ファイバとしての伝送路200cによって伝送するために、電気信号である重畳信号を光信号に変換する機能を有する。電気/光変換部150cの一例として、発光素子が挙げられる。発光素子は重畳信号を光信号に変換し、変換された光信号を伝送路200cに出力する素子である。また、発光素子には、レーザや発光ダイオードが含まれてもよい場合がある。
【0070】
伝送路200cは、送信装置100cと受信装置300cとを接続する1本の通信線である。伝送路200cの一例としては、光ファイバが挙げられる。光ファイバは、例えば、ガラス製又は樹脂製である。光ファイバは、当該光ファイバの線径をメタル線よりも小さくすることができると共に軽量化を実現することが可能となる。
【0071】
受信装置300cは、伝送路200cを伝送した重畳信号を受信する装置である。図7における受信装置300cは、分岐部310c、無線帯域通過部320c、位相帯域通過部330c、位相制御信号復調部340c、S/P変換部350cおよび光/電気変換部363を含んで構成される。
【0072】
光/電気変換部363は、光ファイバで構成される伝送路200cを伝送した光信号を電気信号に変換する機能を有する。図7において、光信号を電気信号に変換する光/電気変換部361の一例には、フォトダイオード等の受光素子が挙げられる。受光素子は、光信号を電流信号等の電気信号に変換する素子であり、変換された電気信号を分岐部310cに出力する。なお、受光素子で光信号から変換された電流信号を増幅して電圧信号として出力する増幅器が含まれてもよい。増幅部の一例としてはローノイズアンプが挙げられる。ローノイズアンプは低雑音増幅器で、放送や通信など高周波の送受信回路に多く使われている。
【0073】
分岐部310cは、光/電気変換部363で電気信号に変換された重畳信号を入力し、分岐する機能を有する。分岐部310aによって、重畳信号を任意のエネルギー比率に分岐し、無線帯域通過部320cおよび位相帯域通過部330cに分岐された重畳信号を出力する。
【0074】
無線帯域通過部320cは、分岐された重畳信号から無線信号を抽出する機能を有する。一例として、無線帯域通過部320cは、中心周波数が搬送波周波数fcであるバンドパスフィルタであってもよい。このような無線帯域通過部320cによって、分岐された重畳信号からシリアル位相制御信号の周波数成分を除去することが可能になる。無線帯域通過部320cを通過した無線信号は、アンテナ装置500に含まれるデジタル位相器510を介して、アンテナ素子ANT1、アンテナ素子ANT2、アンテナ素子ANT3およびアンテナ素子ANT4から放射される。
【0075】
位相帯域通過部330cは、分岐された重畳信号から変調されたシリアル位相制御信号を抽出する機能を有する。一例として、位相帯域通過部330cは、中心周波数が搬送波周波数fcであるバンドストップフィルタであってもよい。また、バンドストップフィルタとしてノッチフィルタが使用されてもよい。このような位相帯域通過部330cによって、分岐された重畳信号から無線信号の周波数成分を除去することが可能になる。
【0076】
位相制御信号復調部340cは、変調されたシリアル位相制御信号を復調する復調器である。変調されたシリアル位相制御信号を復調することによって、P/S変換部122で生成されたシリアル位相制御信号を取得する。位相制御信号復調部340cにおいて復調されたシリアル位相制御信号はS/P変換部350cに出力される。
【0077】
S/P変換部350cは、入力されたシリアル位相制御信号を、位相制御信号生成部121において生成された複数のデジタル位相制御信号に変換する機能を有する。図7においては、S/P変換部350cは、シリアル位相制御信号からアンテナ素子ANT1の位相を制御するデジタル位相制御信号DS1、アンテナ素子ANT2の位相を制御するデジタル位相制御信号DS2を生成する。また、S/P変換部350cは、シリアル位相制御信号からアンテナ素子ANT3の位相を制御するデジタル位相制御信号DS3、アンテナ素子ANT4の位相を制御するデジタル位相制御信号DS4を生成する。
【0078】
アンテナ装置500は、デジタル位相器510、および、アレイアンテナを構成するアンテナ素子ANT1、アンテナ素子ANT2、アンテナ素子ANT3およびアンテナ素子ANT4を含んで構成される。
【0079】
デジタル位相器510には、アンテナ素子ANT1の無線信号の位相を制御するデジタル位相制御信号DS1が入力される位相器511、アンテナ素子ANT2の無線信号の位相を制御するデジタル位相制御信号DS2が入力される位相器512が含まれる。さらに、デジタル位相器510には、アンテナ素子ANT3の無線信号の位相を制御するデジタル位相制御信号DS3が入力される位相器513、アンテナ素子ANT4の無線信号の位相を制御するデジタル位相制御信号DS4が入力される位相器514が含まれる。
【0080】
アレイアンテナの指向性は、デジタル位相制御信号DS1、デジタル位相制御信号DS2、デジタル位相制御信号DS3およびデジタル位相制御信号DS4によって制御される。
【0081】
上記構成によれば、アンテナ位相制御の信号線路が削減され、アンテナと無線信号の送信装置との間の線路の省スペース化が可能になる。また、伝送路を光ファイバとすることによって、送信装置とアンテナ間の伸長化が可能になり、張り出しアンテナ等の設置自由度を向上可能なシステムを提供可能となる。
【0082】
以下に、本実施形態のアンテナ制御装置400およびアンテナ制御システム1000の特徴について記載する。
【0083】
本発明の第1の態様に係るアンテナ制御装置400は、搬送波によって変調された無線信号を生成する無線信号生成部110を含むことが好ましい。また、アンテナ制御装置400は、無線信号を送信するアンテナ装置の指向性を制御するアンテナ素子ANTの位相制御信号を生成する位相制御信号生成部121を含むことが好ましい。さらに、アンテナ制御装置400は、位相制御信号の変調周波数をfmとし、搬送波の搬送波周波数をfcとし、nを自然数とした場合に、以下の式(1)を満たすように位相制御信号を変調する位相制御信号変調部123を含むことが好ましい。fc=n×fm・・・式(1)。さらに、アンテナ制御装置400は、位相制御信号が位相制御信号変調部123によって変調されて生成されたデジタル信号、および、無線信号生成部によって生成された無線信号を重畳して重畳信号を生成する重畳部140を含むことが好ましい。さらに、アンテナ制御装置400は、重畳信号を伝送する伝送路200を含むことが好ましい。
【0084】
上記構成によれば、アンテナから放射させる無線信号とアンテナの指向性を制御する位相制御信号とを一本の信号線で伝送することで省線化とコストを低減するとともに、簡易な構成でデジタル位相制御信号の高調波による不要輻射を低減することが可能になる。
【0085】
本発明の第2の態様に係るアンテナ制御装置400は、伝送路200によって伝送された重畳信号は搬送波周波数を通過帯域に含む帯域通過フィルタ320によって、無線信号が抽出されることが好ましい。抽出された無線信号はアンテナ装置のアンテナから放射されることが好ましい。
【0086】
上記構成によれば、帯域通過フィルタ320がバンドパスフィルタとして機能するので、変調された位相制御信号の基本周波数、および、変調された位相制御信号の高調波成分を適切に除去することが可能になる。その結果、高品質な無線信号をアンテナから放射することが可能になる。
【0087】
本発明の第3の態様に係るアンテナ制御装置400において、アンテナ素子ANTはアレイアンテナを構成することが好ましい。複数のアンテナ素子のそれぞれに対応する複数の位相制御信号はパラレル/シリアル変換部によって1つのシリアル位相制御信号に変換され、位相制御信号変調部123は1つのシリアル位相制御信号を、式(1)を満たすように変調することが好ましい。重畳部140は、変調された1つのシリアル位相制御信号、および、無線信号生成部110によって生成された無線信号を重畳して重畳信号を生成することが好ましい。
【0088】
上記構成によれば、アレイアンテナを含むアンテナ装置500の位相制御信号を、シリアル位相制御信号とすることで無線信号との重畳を容易にすることが可能になる。また、シリアル位相制御信号のディップ部分に無線信号を重畳させることで、無線信号のSNRの劣化を抑制することが可能になる。さらに、シリアル位相制御信号の劣化を抑制して、アレイアンテナの指向性制御を適切に実行することが可能になる。
【0089】
本発明の第4の態様に係るアンテナ制御装置400において、伝送路200によって伝送された重畳信号は搬送波周波数の信号成分を雑音レベル以下に減衰させる帯域制限フィルタ330によって、変調された位相制御信号が抽出されることが好ましい。位相制御信号復調部340によって復調された位相制御信号はデジタル位相器510に印加されてアンテナ装置のアンテナの指向性を制御することが好ましい。
【0090】
上記構成によれば、搬送波周波数の周辺の周波数には、位相制御信号の主要な周波数成分が含まれないので、抽出された変調された位相制御信号によって、アンテナ装置のアンテナの指向性制御を適切に実行することが可能になる。
【0091】
本発明の第5の態様に係るアンテナ制御装置400において、位相制御信号変調部123と、重畳部140との間に設けられる帯域制限部130を含むことが好ましい。帯域制限部130は、デジタル信号の周波数成分の中の変調周波数fmより高い周波数成分を減衰させることが好ましい。
【0092】
上記構成によれば、変調周波数fmより低い周波数に含まれる位相制御信号の主要な信号成分を残しつつ、変調周波数fmより高い周波数に含まれる位相制御信号の高調波成分を低減することがより容易に実行することが可能になる。
【0093】
本発明の第6の態様に係るアンテナ制御装置400の無線信号はマルチキャリア変調によって構成され、搬送波周波数は、マルチキャリア変調によって使用される周波数帯域の中心周波数、または、中心となるキャリアの周波数であることが好ましい。
【0094】
上記構成によれば、5G通信などのマルチキャリア変調にアンテナ制御装置400を適用した場合にも、無線信号のSNRの劣化を抑制し、高品質な無線信号の放射と高速な位相制御を実現することが可能になる。
【0095】
本発明の第7の態様に係るアンテナ制御装置400の伝送路200は、メタル線または光ファイバを含んで構成され、伝送路200に光ファイバが含まれる場合には、重畳信号を光信号に変換する電気/光変換部150bを含むことが好ましい。
【0096】
上記構成によれば、無線信号と位相制御信号を含む重畳信号を一本の伝送路によって伝送する構成とすることが可能になる。その結果、省線化が可能になり、配策性が向上するとともに、コストを低減することが可能になる。また、伝送路200に光ファイバを用いれば、装置をより軽量化することも可能になる。
【0097】
本発明の第8の態様に係るアンテナ制御装置400の伝送路200が光ファイバである場合に、伝送路200の終端部には光カプラが含まれることが好ましい。重畳信号に含まれる無線信号成分と、デジタル信号成分とのエネルギーの分岐比は、無線信号成分>デジタル信号成分であることが好ましい。分岐された後の無線信号成分は光/電気変換部361を介して無線信号に変換され、分岐された後のデジタル信号成分は他の光/電気変換部362を介して位相制御信号に変換されることが好ましい。
【0098】
上記構成によれば、光の信号領域においても、重畳信号を無線信号成分と、位相制御信号成分を含むデジタル信号成分とに分離することが可能になる。
【0099】
本発明の第9の態様に係るアンテナ制御装置400の伝送路200が光ファイバである場合に、伝送路200の終端部には光信号を電気信号に変換する光電気変換部353を含むことが好ましい。
【0100】
上記構成によれば、重畳信号を光ファイバで伝送した後に、光から電気に変換した信号領域においても、重畳信号を無線信号成分と、位相制御信号成分を含むデジタル信号成分とに分離することが可能になる。
【0101】
本発明の第10の態様に係るアンテナ制御システム1000は、第1の態様から第9の態様のいずれかのアンテナ制御装置400を含むことが好ましい。また、アンテナ制御システム1000は、位相制御信号が入力される、アンテナ素子ANTの指向性を制御するデジタル位相器510を含むことが好ましい。さらに、アンテナ制御システム1000は、デジタル位相器510に接続されたアンテナ素子ANTによって構成されるアンテナを含むアンテナ装置500と、を含むことが好ましい。
【0102】
上記構成によれば、アンテナから放射させる無線信号とアンテナの指向性を制御する位相制御信号とを一本の信号線で伝送することで省線化とコストを低減するとともに、簡易な構成でデジタル位相制御信号の高調波による不要輻射を低減することが可能になる。
【0103】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。また、さまざまな実施形態の一部または全部を組み合わせて新たな実施形態とすることも可能である。
【符号の説明】
【0104】
110 無線信号生成部
120 デジタル信号生成部
121 位相制御信号生成部
122 P/S変換部
123 位相制御信号変調部
130 帯域制限部
140 重畳部
500 アンテナ装置
510 デジタル位相器
1000 アンテナ制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7