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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】粉体成膜装置および粉体成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20240514BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C23C16/44 F
C23C16/455
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020043128
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021143393
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】藤井 博文
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-530798(JP,A)
【文献】米国特許第04925632(US,A)
【文献】特表平05-504600(JP,A)
【文献】特開昭62-125821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/44
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体に成膜処理を施す粉体成膜装置であって、
装置本体と、
第1原料ガスを供給することが可能な第1ガス供給部と、
前記第1原料ガスとは異なる第2原料ガスを供給することが可能な第2ガス供給部と、
前記装置本体に設けられ、前記第1原料ガスのガス分子と前記第2原料ガスのガス分子との反応によって粉体の粒子の表面に膜を形成することが可能な少なくとも一つの成膜処理部であって、複数の頂部と複数の底部とを有し上下に蛇行しながら上下方向と交差する移動方向に粉体が流れることを許容する粉体流路が形成されている少なくとも一つの成膜処理部と、
前記少なくとも一つの成膜処理部において前記粉体流路に沿って粉体を連続的に移動させることが可能な粉体移動機構と、
を備え、
前記少なくとも一つの成膜処理部は、
前記粉体流路の前記底部をそれぞれ構成し、粉体を貯留する複数の粉体貯留部と、
前記粉体流路の前記頂部をそれぞれ構成し、前記複数の粉体貯留部のうち隣接する粉体貯留部同士を互いに接続するとともに内部にガスを収容する複数のガス収容部であって、前記第1ガス供給部から前記第1原料ガスを受け入れ当該第1原料ガスを収容する第1ガス収容部と前記第2ガス供給部から前記第2原料ガスを受け入れ当該第2原料ガスを収容する第2ガス収容部とを少なくとも含む複数のガス収容部と、
を有し、
前記粉体移動機構は、粉体が前記粉体貯留部から前記ガス収容部に流入することで前記ガス収容部内のガスに曝露され、粉体が前記ガス収容部から次の粉体貯留部に流入するように、前記粉体流路において粉体を移動させ、
前記複数の粉体貯留部は、隣接するガス収容部同士の間で前記粉体流路に沿ってガスが流れることを前記貯留する粉体によって抑止することが可能なように粉体を貯留する形状を有している、粉体成膜装置。
【請求項2】
前記複数のガス収容部において、前記第1ガス収容部および前記第2ガス収容部は前記移動方向に沿って交互に配置されており、
前記複数の粉体貯留部の各々は、前記第1ガス収容部および前記第2ガス収容部とそれぞれ連通している、請求項1に記載の粉体成膜装置。
【請求項3】
前記第1原料ガスおよび前記第2原料ガスとは異なるガスであって粉体内から余剰となった第1原料ガスまたは第2原料ガスを除去するためのパージガスを供給することが可能なパージガス供給部を更に備え、
前記複数のガス収容部において、前記第1ガス収容部および前記第2ガス収容部は前記移動方向に沿って交互に配置されており、
前記複数のガス収容部は、前記粉体流路における粉体の流れにおいて前記第1ガス収容部と前記第2ガス収容部との間にそれぞれ配置され、前記パージガス供給部から前記パージガスを受け入れ当該パージガスを収容する複数のパージガス収容部を更に有する、請求項1に記載の粉体成膜装置。
【請求項4】
前記パージガス収容部の圧力が、前記第1ガス収容部の圧力および前記第2ガス収容部の圧力よりも低くなるように、前記パージガス収容部の圧力を調整する圧力調整機構と、
前記パージガス収容部から前記パージガスを排気する排気機構と、
を更に備える、請求項3に記載の粉体成膜装置。
【請求項5】
前記パージガス収容部の圧力が、前記第1ガス収容部の圧力および前記第2ガス収容部の圧力よりも高くなるように、前記パージガス収容部の圧力を調整する圧力調整機構と、
前記パージガス収容部から前記パージガスを排気する排気機構と、
を更に備える、請求項3に記載の粉体成膜装置。
【請求項6】
前記複数のガス収容部において、前記第1ガス収容部および前記第2ガス収容部は前記移動方向に沿って交互に配置されており、
前記複数のガス収容部は、前記粉体流路における粉体の流れにおいて前記第1ガス収容部と前記第2ガス収容部との間にそれぞれ配置され、前記第1原料ガスおよび前記第2原料ガスとは異なるガスであって粉体内から余剰となった第1原料ガスまたは第2原料ガスを除去するためのパージガスが供給されない複数のダミーガス収容部を更に有し、
前記ダミーガス収容部に接続される排気機構を更に備える、請求項1に記載の粉体成膜装置。
【請求項7】
前記装置本体は、
底壁と、
前記底壁の上方に配置される天壁と、
前記装置本体の前記天壁に前記移動方向に互いに間隔をおいて配置されかつ前記天壁から下方にそれぞれ延び前記粉体流路を画定する少なくとも3つの第1仕切部であって、
前記底壁に対して所定の間隔をおいて配置される第1仕切先端部をそれぞれ有する、少なくとも3つの第1仕切部と、
前記少なくとも3つの第1仕切部のうち前記移動方向において互いに隣接する前記第1仕切部同士の間にそれぞれ配置されるように前記装置本体の前記底壁に前記移動方向に互いに間隔をおいて配置されかつ前記底壁から上方にそれぞれ延び前記粉体流路を画定する複数の第2仕切部であって、前記天壁に対して所定の間隔をおいて配置される第2仕切先端部をそれぞれ有する、複数の第2仕切部と、
を有し、
前記少なくとも3つの第1仕切部のうち前記移動方向において互いに隣接する複数対の前記第1仕切部が、少なくとも前記第2仕切先端部よりも上方の部分において、前記複数のガス収容部をそれぞれ画定し、
前記複数の第2仕切部のうちの前記移動方向において互いに隣接する少なくとも一対の前記第2仕切部が、前記第1仕切先端部を両側から挟むように前記粉体貯留部を画定する、請求項1乃至6の何れか1項に記載の粉体成膜装置。
【請求項8】
前記装置本体のうち前記移動方向の上流側部分よりも前記移動方向の下流側部分の方が下方に位置するように前記装置本体が傾斜して配置されている、請求項1乃至7の何れか1項に記載の粉体成膜装置。
【請求項9】
前記少なくとも一つの成膜処理部は、複数の成膜処理部を有し、
前記複数の成膜処理部のうちの一の成膜処理部の前記第1ガス収容部および前記第2ガス収容部を通過した粉体が、前記複数の成膜処理部のうちの他の成膜処理部の前記第1ガス収容部および前記第2ガス収容部を通過するように、前記複数の成膜処理部が互いに接続されている、請求項1乃至8の何れか1項に記載の粉体成膜装置。
【請求項10】
前記複数の成膜処理部は、前記粉体流路が上下方向に延びる中心軸周りに螺旋状に配設されるように互いに接続されている、請求項9に記載の粉体成膜装置。
【請求項11】
粉体が前記少なくとも一つの成膜処理部のうち同じ前記第1ガス収容部および前記第2ガス収容部を繰り返し通過可能なように、前記少なくとも一つの成膜処理部の前記粉体流路のうち前記第2ガス収容部よりも前記移動方向下流側部分が当該少なくとも一つの成膜処理部の前記粉体流路のうち前記第1ガス収容部よりも前記移動方向上流側部分に連通している、請求項1乃至9の何れか1項に記載の粉体成膜装置。
【請求項12】
前記少なくとも一つの成膜処理部の前記第1ガス収容部および前記第2ガス収容部から気体を排気する真空ポンプを更に備える、請求項1乃至11の何れか1項に記載の粉体成膜装置。
【請求項13】
前記粉体移動機構は、前記装置本体に対して前記移動方向および上下方向をそれぞれ含む特定方向の振動を与える振動発生部を含む、請求項1乃至12の何れか1項に記載の粉体成膜装置。
【請求項14】
前記第1ガス供給部および前記第2ガス供給部のうちの少なくとも一方のガス供給部は、
前記第1原料ガスまたは前記第2原料ガスを収容するガスタンクと、
前記粉体貯留部において貯留される粉体中に配置され、前記ガスタンクから原料ガスを受け入れるとともに前記第1ガス収容部または前記第2ガス収容部に向かって前記原料ガスを噴出することが可能なガス噴出部と、
を有する、請求項1乃至13の何れか1項に記載の粉体成膜装置。
【請求項15】
粉体に成膜処理を施す粉体成膜方法であって、
複数の頂部と複数の底部とを有し上下に蛇行しながら上下方向と交差する移動方向に粉体が流れることを許容する粉体流路が形成されている装置本体を準備する準備工程と、
前記粉体流路のうち前記複数の頂部よりも下方の領域に粉体を貯留し、当該貯留された粉体によって前記複数の頂部同士の間を仕切る、粉体貯留工程と、
前記複数の頂部のうちの一の頂部に第1原料ガスを収容する一方、前記一の頂部よりも前記移動方向下流側の他の頂部に前記第1原料ガスとは異なる第2原料ガスを収容するガス収容工程と、
前記装置本体において前記粉体流路に沿って前記粉体を前記移動方向に連続的に移動させることで、前記粉体を前記第1原料ガスおよび前記第2原料ガスに順に曝露させ、前記第1原料ガスのガス分子と前記第2原料ガスのガス分子との反応によって前記粉体の粒子の表面に成膜処理を施す成膜工程と、
を備える粉体成膜方法。
【請求項16】
前記成膜工程は、前記装置本体に対して前記移動方向および上下方向をそれぞれ含む特定方向の振動を与えることで、前記粉体を前記移動方向に移動させることを含む、請求項15に記載の粉体成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体に成膜処理を施す粉体成膜装置および粉体成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉体に成膜処理を施す技術として、原子層堆積(Atomic Layer Deposition)処理技術が知られている。当該技術では、粉体を2種類の原料ガスに交互に曝露することによって、各原料ガスの相互反応によって粉体上に膜が形成される。
【0003】
特許文献1には、ベルトコンベア上に積層された粉体が、前記ベルトコンベアによって複数のガス収容部を通過するように搬送され、粉体上に順に膜が形成される技術が開示されている。また、特許文献2には、反応容器内に第1原料ガスを充填した状態で、当該反応容器内で粉体を落下させることで粉体上に第1原料ガスのイオンを付着させ、反応容器から前記第1原料ガスを完全に排出したのち、第2原料ガスを充填した状態で、前記粉体を再び落下させることで、粉体上に膜を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2018/0363136号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0015106号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、ベルトコンベアによって粉体を搬送するため、隣接するガス収容部同士を仕切るための隔壁とベルトコンベア上の粉体との間には所定の隙間が形成されている。このため、当該隙間において互いに異なる原料ガス同士が混触し反応すると、粉体上に本来の設定値よりも厚い膜が不規則に形成されるという問題や、上記反応によって生成された反応物が粉体内に混入するという問題があった。また、特許文献2に開示された技術では、反応容器に原料ガスを充填したのち当該原料ガスを完全に排出する工程を1原子層を成膜する毎に繰り返す必要があるため、粉体に対する成膜処理時間が長くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題を踏まえてなされたものであり、粉体を構成する粒子の表面以外での原料ガス同士の混触を抑制しつつ、粉体に連続的に成膜処理を施すことが可能な粉体成膜装置および粉体成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る粉体成膜装置は、粉体に成膜処理を施す粉体成膜装置であって、装置本体と、第1原料ガスを供給することが可能な第1ガス供給部と、前記第1原料ガスとは異なる第2原料ガスを供給することが可能な第2ガス供給部と、前記装置本体に設けられ、前記第1原料ガスのガス分子と前記第2原料ガスのガス分子との反応によって粉体の粒子の表面に膜を形成することが可能な少なくとも一つの成膜処理部であって、複数の頂部と複数の底部とを有し上下に蛇行しながら上下方向と交差する移動方向に粉体が流れることを許容する粉体流路が形成されている少なくとも一つの成膜処理部と、前記少なくとも一つの成膜処理部において前記粉体流路に沿って粉体を連続的に移動させることが可能な粉体移動機構と、を備える。前記少なくとも一つの成膜処理部は、前記粉体流路の前記底部をそれぞれ構成し、粉体を貯留する複数の粉体貯留部と、前記粉体流路の前記頂部をそれぞれ構成し、前記複数の粉体貯留部のうち隣接する粉体貯留部同士を互いに接続するとともに内部にガスを収容する複数のガス収容部であって、前記第1ガス供給部から前記第1原料ガスを受け入れ当該第1原料ガスを収容する第1ガス収容部と前記第2ガス供給部から前記第2原料ガスを受け入れ当該第2原料ガスを収容する第2ガス収容部とを少なくとも含む複数のガス収容部と、を有し、前記粉体移動機構は、粉体が前記粉体貯留部から前記ガス収容部に流入することで前記ガス収容部内のガスに曝露され、粉体が前記ガス収容部から次の粉体貯留部に流入するように、前記粉体流路において粉体を移動させ、前記複数の粉体貯留部は、隣接するガス収容部同士の間で前記粉体流路に沿ってガスが流れることを前記貯留する粉体によって抑止することが可能なように粉体を貯留する形状を有している。
【0008】
本構成によれば、粉体が成膜処理部の粉体流路を連続的に移動すると、当該粉体が第1ガス収容部および第2ガス収容部において第1原料ガスおよび第2原料ガスに順に曝露され、各粒子の表面に吸着したそれぞれのガス分子の反応によって粉体上に連続的に膜を形成することができる。また、複数の粉体貯留部は、隣接するガス収容部同士の間で粉体流路に沿ってガスが流れることを前記貯留する粉体によって抑止することが可能とされている。このため、粉体を構成する粒子の表面以外での原料ガス同士の混触を抑止することができる。
【0009】
上記の構成において、前記複数のガス収容部において、前記第1ガス収容部および前記第2ガス収容部は前記移動方向に沿って交互に配置されており、前記複数の粉体貯留部の各々は、前記第1ガス収容部および前記第2ガス収容部とそれぞれ連通していることが望ましい。
【0010】
本構成によれば、成膜処理部の各粉体貯留部が、第1ガス収容部と第2ガス収容部とにそれぞれ連通することで、貯留する粉体によって第1ガス収容部と第2ガス収容部との間をシールすることができる。このため、第1ガス収容部と第2ガス収容部との間で各原料ガスが行き来することが抑止される。この結果、粉体を構成する粒子の表面とは異なる部分で原料ガス同士が混触することを抑制し、両ガスが反応することを抑止することができる。また、パージガス収容部などのように原料ガスとは異なるガスを収容する他のガス収容部を有する場合と比較して、粉体成膜装置の移動方向におけるサイズを小さくすることが可能となる。
【0011】
上記の構成において、前記第1原料ガスおよび前記第2原料ガスとは異なるガスであって粉体内から余剰となった第1原料ガスまたは第2原料ガスを除去するためのパージガスを供給することが可能なパージガス供給部を更に備え、前記複数のガス収容部において前記第1ガス収容部および前記第2ガス収容部は前記移動方向に沿って交互に配置されており、前記複数のガス収容部は前記粉体流路における粉体の流れにおいて前記第1ガス収容部と前記第2ガス収容部との間にそれぞれ配置され前記パージガス供給部から前記パージガスを受け入れ当該パージガスを収容する複数のパージガス収容部を更に有することが望ましい。
【0012】
本構成によれば、複数のパージガス収容部が第1ガス収容部と第2ガス収容部との間に配置されパージガスを収容することで、第1原料ガスおよび第2原料ガスが粉体の表面以外において互いに混触することを抑止し、ガス収容部を通過した粉体から原料ガスの余剰分を取り除くことができる。したがって、前記余剰分の第1原料ガスのガス分子と第2原料ガスのガス分子とが互いに反応し、不要な反応生成物が生成されることを抑止することができる。
【0013】
上記の構成において、前記パージガス収容部の圧力が、前記第1ガス収容部の圧力および前記第2ガス収容部の圧力よりも低くなるように、前記パージガス収容部の圧力を調整する圧力調整機構と、前記パージガス収容部から前記パージガスを排気する排気機構と、を更に備えることが望ましい。
【0014】
本構成によれば、各パージガス収容部が各ガス収容部に対して負圧に設定されるため、粉体内に残留する第1原料ガスおよび第2原料ガスの余剰分が各パージガス収容部に引き寄せられやすい。このため、排気機構によってこれらの余剰ガスをパージガスとともに確実に排気することができる。
【0015】
上記の構成において、前記パージガス収容部の圧力が、前記第1ガス収容部の圧力および前記第2ガス収容部の圧力よりも高くなるように、前記パージガス収容部の圧力を調整する圧力調整機構と、前記パージガス収容部から前記パージガスを排気する排気機構と、を更に備えるものでもよい。
【0016】
本構成によれば、パージガス収容部が各ガス収容部に対して正圧に設定されるため、粉体内に残留する第1原料ガスおよび第2原料ガスの余剰分が各パージガス収容部に流入し互いに混触することを防止することができる。
【0017】
上記の構成において、前記複数のガス収容部において、前記第1ガス収容部および前記第2ガス収容部は前記移動方向に沿って交互に配置されており、前記複数のガス収容部は、前記粉体流路における粉体の流れにおいて前記第1ガス収容部と前記第2ガス収容部との間にそれぞれ配置される複数のダミーガス収容部を更に有し、前記ダミーガス収容部に接続される排気機構を更に備えるものでもよい。
【0018】
本構成によれば、第1原料ガスおよび第2原料ガスが粉体の粒子の表面以外において互いに混触することを抑止することができる。また、ダミーガス収容部に侵入、滞留した第1原料ガスおよび第2原料ガスの混触を排気機構によって防止することができる。
【0019】
上記の構成において、前記装置本体は、底壁と、前記底壁の上方に配置される天壁と、前記装置本体の前記天壁に前記移動方向に互いに間隔をおいて配置されかつ前記天壁から下方にそれぞれ延び前記粉体流路を画定する少なくとも3つの第1仕切部であって、前記底壁に対して所定の間隔をおいて配置される第1仕切先端部をそれぞれ有する、少なくとも3つの第1仕切部と、前記少なくとも3つの第1仕切部のうち前記移動方向において互いに隣接する前記第1仕切部同士の間にそれぞれ配置されるように前記装置本体の前記底壁に前記移動方向に互いに間隔をおいて配置されかつ前記底壁から上方にそれぞれ延び前記粉体流路を画定する複数の第2仕切部であって、前記天壁に対して所定の間隔をおいて配置される第2仕切先端部をそれぞれ有する、複数の第2仕切部と、を有し、前記少なくとも3つの第1仕切部のうち前記移動方向において互いに隣接する複数対の前記第1仕切部が、少なくとも前記第2仕切先端部よりも上方の部分において、前記複数のガス収容部をそれぞれ画定し、前記複数の第2仕切部のうちの前記移動方向において互いに隣接する少なくとも一対の前記第2仕切部が、前記第1仕切先端部を両側から挟むように前記粉体貯留部を画定することが望ましい。
【0020】
本構成によれば、装置本体内に配設された第1仕切部および第2仕切部が、複数のガス収容部および粉体貯留部をそれぞれ画定することができる。この場合、各仕切部を挟んでガス収容部または粉体貯留部が互いに近接して配置されるため、ガス収容部および粉体貯留部が互いに離間して配置される場合と比較して、粉体成膜装置のサイズを小さくすることができる。
【0021】
上記の構成において、前記装置本体のうち前記移動方向の上流側部分よりも前記移動方向の下流側部分の方が下方に位置するように前記装置本体が傾斜して配置されていることが望ましい。
【0022】
本構成によれば、移動方向に沿って粉体流路を先下がりに配設することができるため、重力の作用を受けて、粉体の移動を促進することができる。
【0023】
上記の構成において、前記少なくとも一つの成膜処理部の前記第1ガス収容部および前記第2ガス収容部を通過した粉体が、前記複数の成膜処理部のうちの他の成膜処理部の前記第1ガス収容部および前記第2ガス収容部を通過するように、前記複数の成膜処理部が互いに接続されていることが望ましい。
【0024】
本構成によれば、複数の成膜処理部において粉体に対する成膜処理を連続的に行うことができるため、成膜処理を効率的に行うことができる。また、各成膜処理部間における第1原料ガスおよび第2原料ガスの流れを粉体によって抑止し、粉体を構成する粒子の表面以外における両ガスの反応を抑止することができる。
【0025】
上記の構成において、前記複数の成膜処理部は、前記粉体流路が上下方向に延びる中心軸周りに螺旋状に配設されるように互いに接続されていることが望ましい。
【0026】
本構成によれば、複数の成膜処理部において粉体に対する成膜処理を連続的に行うことができるとともに、複数の成膜処理部が水平方向に沿って互いに接続される場合と比較して、成膜処理装置の設置面積を小さくすることができる。
【0027】
上記の構成において、粉体が前記少なくとも一つの成膜処理部のうち同じ前記第1ガス収容部および前記第2ガス収容部を繰り返し通過可能なように、前記少なくとも一つの成膜処理部の前記粉体流路のうち前記第2ガス収容部よりも前記移動方向下流側部分が当該少なくとも一つの成膜処理部の前記粉体流路のうち前記第1ガス収容部よりも前記移動方向上流側部分に連通していることが望ましい。
【0028】
本構成によれば、粉体を同じ第1ガス収容部および第2ガス収容部を繰り返し通過させることで、粉体に対して成膜処理を連続的に行うことができる。このため、粉体が第1ガス収容部および第2ガス収容部を1回ずつ通過する場合と比較して、多数の粉体貯留部およびガス収容部を並べる必要がなく、最小数の粉体貯留部およびガス収容部で構成することができる。
【0029】
上記の構成において、前記少なくとも一つの成膜処理部の前記第1ガス収容部および前記第2ガス収容部から気体を排気する真空ポンプを更に備えることが望ましい。
【0030】
本構成によれば、各ガス収容部を真空引きしながら、必要量の原料ガスを供給することができるため、各ガス収容部における原料ガスの純度を高めることができる。この結果、粉体に対して高純度の成膜処理を行うことができる。
【0031】
上記の構成において、前記粉体移動機構は、前記装置本体に対して前記移動方向および上下方向をそれぞれ含む特定方向の振動を与える振動発生部を含むことが望ましい。
【0032】
本構成によれば、装置本体に対して特定方向の振動が付与されることで、粉体流路を移動する移動力を粉体に付与することができる。このため、回転する羽根部材のように粉体に直接接触する機械的な移動機構を有することなく、各ガス収容部を通過するように粉体を安定して移動させることができる。したがって、上記のような機械的な移動機構を備える場合と比較して、装置を簡略化することができるとともに、機械的な移動力によって粉体を構成する粒子が粉砕されることを抑止することができる。また、羽根部材の一部が粉体に混入すること(コンタミ)を防止することができる。
【0033】
上記の構成において、前記第1ガス供給部および前記第2ガス供給部のうちの少なくとも一方のガス供給部は、前記第1原料ガスまたは前記第2原料ガスを収容するガスタンクと、前記粉体貯留部において貯留される粉体中に配置され、前記ガスタンクから原料ガスを受け入れるとともに前記第1ガス収容部または前記第2ガス収容部に向かって前記原料ガスを噴出することが可能なガス噴出部と、を有することが望ましい。この際、当該ガス噴出部は、前記第1粉体貯留部の下流側または前記第2粉体貯留部の下流側に配置されることが更に望ましい。
【0034】
本構成によれば、ガス噴出部が原料ガスを噴出するとその噴出力によって粉体を流動化させて粉体がガス収容部に流入することを促進することができる。
【0035】
本発明の他の局面に係る粉体成膜方法は、粉体に成膜処理を施す粉体成膜方法であって、複数の頂部と複数の底部とを有し上下に蛇行しながら上下方向と交差する移動方向に粉体が流れることを許容する粉体流路が形成されている装置本体を準備する準備工程と、前記粉体流路のうち前記複数の頂部よりも下方の領域に粉体を貯留し、当該貯留された粉体によって前記複数の頂部同士の間を仕切る、粉体貯留工程と、前記複数の頂部のうちの一の頂部に第1原料ガスを収容する一方、前記一の頂部よりも前記移動方向下流側の他の頂部に前記第1原料ガスとは異なる第2原料ガスを収容するガス収容工程と、前記装置本体において前記粉体流路に沿って前記粉体を前記移動方向に連続的に移動させることで、前記粉体を前記第1原料ガスおよび前記第2原料ガスに順に曝露させ、前記第1原料ガスのガス分子と前記第2原料ガスのガス分子との反応によって前記粉体の粒子の表面に成膜処理を施す成膜工程と、を備える。
【0036】
上記の方法において、前記成膜工程は、前記装置本体に対して前記移動方向および上下方向をそれぞれ含む特定方向の振動を与えることで、前記粉体を前記移動方向に移動させることを含むことが望ましい。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、粉体を構成する粒子の表面以外での原料ガス同士の混触を抑制しつつ、粉体に連続的に成膜処理を施すことが可能な粉体成膜装置および粉体成膜方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1実施形態に係る粉体成膜装置の模式的な正断面図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る粉体成膜装置の模式的な正断面図である。
図3】本発明の第3実施形態に係る粉体成膜装置の模式的な正断面図である。
図4】本発明の第4実施形態に係る粉体成膜装置の模式的な斜視図である。
図5】本発明の第5実施形態に係る粉体成膜装置の模式的な水平断面図である。
図6】本発明の第5実施形態に係る粉体成膜装置の模式的な透視斜視図である。
図7】本発明の変形実施形態に係る粉体成膜装置の模式的な正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る粉体成膜装置1について説明する。本実施形態に係る粉体成膜装置1は、粉体に対して原子層堆積(Atomic Layer Deposition)による成膜処理を施す。図1は、本実施形態に係る粉体成膜装置1の模式的な正断面図である。粉体成膜装置1は、装置本体10と、原料ガス排気部120と、第1ガス供給部121と、パージガス供給部122と、第2ガス供給部123と、パージガス排気部124と、粉体移動機構125と、を有する。以下では、粉体成膜装置1によって粉体(たとえば金属粉、鉄粉)上にアルミナ(Al)の成膜を行う場合を例に説明する。
【0040】
装置本体10は、粉体成膜装置1の本体部分に相当し、本実施形態では直方体形状の筐体構造を有している。装置本体10の内部には、後記で詳述するように粉体が流れることを許容する粉体流路100が複数のガス収容部を通過するように形成されている。
【0041】
原料ガス排気部120は、真空ポンプからなり、装置本体10内の各ガス収容部を真空状態とする(真空引き)。原料ガス排気部120は、第1ガス排気部120Aと、第2ガス排気部120Bとを有する。第1ガス排気部120Aは、第1ガス収容部101を真空状態とし、当該第1ガス収容部101から第1原料ガスを排気する。同様に、第2ガス排気部120Bは、第2ガス収容部103を真空状態とし、当該第2ガス収容部103から第2原料ガスを排気する。第1ガス排気部120Aおよび第2ガス排気部120Bが互いに独立して配置されることで、各排気経路において第1原料ガスと第2原料ガスとが混触することが防止される。
【0042】
第1ガス供給部121は、装置本体10内の第1ガス収容部101に第1原料ガスを供給することが可能とされている。本実施形態では、第1原料ガスとして、TMA(トリメチルアルミニウム:Trimethylaluminum)が用いられている。
【0043】
第2ガス供給部123は、装置本体10内の第2ガス収容部103に第1原料ガスとは異なる第2原料ガスを供給することが可能とされている。本実施形態では、第2原料ガスとして、水蒸気(H0)または酸素プラズマが用いられている。
【0044】
パージガス供給部122は、装置本体10内のパージガス収容部102にパージガスを供給することが可能とされている。パージガスは、前記第1原料ガスおよび前記第2原料ガスとは異なるガスであって粉体内から余剰の前記第1原料ガスおよび前記第2ガスを除去するためのものである。本実施形態では、パージガスとして、窒素ガスが用いられている。
【0045】
パージガス排気部124は、原料ガス排気部120に対して独立して設けられた真空ポンプからなり、パージガス収容部102から前記パージガスを排気する。
【0046】
粉体移動機構125は、装置本体10内の後記の成膜処理部100Cにおいて粉体流路100に沿って粉体Fを連続的に移動させることが可能とされている。本実施形態では、粉体移動機構125は、装置本体10に対して、粉体Fの移動方向(右方向)および上下方向をそれぞれ含む特定方向(図1の矢印D1)の振動を与える振動発生部を含む。
【0047】
装置本体10は、供給側貯留室100Aと、排出側貯留室100Bと、供給側貯留室100Aと排出側貯留室100Bとの間に配置される複数の成膜処理部100Cとを有する。供給側貯留室100Aは、装置本体10の左端部に配置されており、その上面部には粉体Fを受け入れる粉体供給口10Pが開口されている。同様に、排出側貯留室100Bは、装置本体10の右端部に配置されており、その下面部には粉体Fを排出する粉体排出口10Qが開口されている。なお、粉体供給口10Pおよび粉体排出口10Qにはそれぞれ開閉可能な不図示のカバーが装着されている。
【0048】
複数の成膜処理部100Cは、前記第1原料ガスのガス分子と前記第2原料ガスのガス分子との反応によって粉体Fを構成する粒子の表面にそれぞれ膜を形成する。なお、図1では、複数の成膜処理部100Cのうちの一の成膜処理部100Cについて詳細に示している。装置本体10内では、図1の成膜処理部100Cの上流側(左側)および下流側(右側)にも、それぞれ他の成膜処理部100Cが連続的に配置されている。このような複数の成膜処理部100Cは、前述の粉体流路100を構成している。粉体流路100は、図1の矢印D2、D3に示すように、複数の頂部と複数の底部とを有し上下に蛇行しながら水平な移動方向(右方向)に向かって粉体Fが流れることを許容する。
【0049】
成膜処理部100Cは、それぞれが粉体流路100の頂部を構成する、第1ガス収容部101、当該第1ガス収容部101の下流側に配置される一のパージガス収容部102、第2ガス収容部103、当該第2ガス収容部103の下流側に配置される他のパージガス収容部102(以上、複数のガス収容部)と、これらのガス収容部の下方に互いに隣接して配置され、それぞれが粉体流路100の底部を構成する4つの粉体貯留部105(複数の粉体貯留部)と、を有する。
【0050】
第1ガス収容部101は、粉体流路100の一部を構成する。第1ガス収容部101は、第1ガス供給部121から前記第1原料ガスを受け入れ、当該第1原料ガスを収容する。
【0051】
第2ガス収容部103は、粉体流路100の一部を構成する。第2ガス収容部103は、第1ガス収容部101よりも前記移動方向の下流側に配置され、第2ガス供給部123から前記第2原料ガスを受け入れ、当該第2原料ガスを収容する。
【0052】
各パージガス収容部102は、粉体流路100における粉体の流れにおいて第1ガス収容部101とパージガス収容部102との間に配置され、パージガス供給部122から前記パージガスを受け入れ当該パージガスを収容する。
【0053】
複数の粉体貯留部105は、第1ガス収容部101、パージガス収容部102および第2ガス収容部103の下方で、互いに異なるガス収容部に跨るようにそれぞれ配置されている。換言すれば、前記複数のガス収容部の各々は、前記複数の粉体貯留部のうち隣接する粉体貯留部同士を互いに接続する。図1に示すように、各粉体貯留部105は、後記の第2仕切部112の上端部近傍まで粉体Fを貯留している。また、複数の粉体貯留部105は、隣接するガス収容部同士の間で粉体流路100に沿ってガスが流れることを、貯留する粉体によって抑止することが可能なように粉体を貯留する形状を有している。
【0054】
ここで、装置本体10内に上記の各ガス収容部および粉体貯留部が形成される構造について更に詳述する。図1に示すように、装置本体10は、底壁10Bと、底壁10Bの上方に配置される天壁10Tと、複数の第1仕切部111(少なくとも3つの第1仕切部)と、複数の第2仕切部112(複数の第2仕切部)と、を有する。
【0055】
複数の第1仕切部111は、前記装置本体10の前記天壁10Tに前記移動方向に互いに間隔をおいて配置され、かつ、前記天壁10Tから下方にそれぞれ延び前記粉体流路100を画定している。各第1仕切部111は、底壁10Bに対して所定の間隔をおいて配置される先端部(下端部、第1仕切先端部)をそれぞれ有する。
【0056】
複数の第2仕切部112は、複数の第1仕切部111のうち前記移動方向において互いに隣接する第1仕切部111同士の間にそれぞれ配置されるように、前記装置本体10の底壁10Bに前記移動方向に互いに間隔をおいて配置され、かつ、底壁10Bから上方にそれぞれ延び粉体流路100を画定している。各第2仕切部112は、天壁10Tに対して所定の間隔をおいて配置される先端部(上端部、第2仕切先端部)をそれぞれ有する。
【0057】
図1に示すように、複数の第1仕切部111のうち前記移動方向において互いに隣接する複数対の第1仕切部111が、第1仕切部111同士の間の空間のうち少なくとも第2仕切部112の先端部よりも上方の部分において、第1ガス収容部101、パージガス収容部102および第2ガス収容部103をそれぞれ画定している。
【0058】
また、複数の第2仕切部112のうちの前記移動方向において互いに隣接する複数対(少なくとも一対)の第2仕切部112が、第2仕切部112同士の間の第1仕切部111(第1仕切先端部)を左右両側から挟むように粉体貯留部105をそれぞれ画定している。
【0059】
図1に示すように、粉体移動機構125によって装置本体10に対して矢印D1で示す方向の振動が加えられながら、粉体供給口10Pから粉体Fが供給側貯留室100Aに投入されると、前記振動を受けて粉体Fが移動方向下流側に移動する。成膜処理部100Cの最も上流側に位置する粉体貯留部105に貯留された粉体Fは、矢印D2で示すように、第1仕切部111の下方を潜りながら、矢印D3で示すように、第2仕切部112を乗り越える。このような動きを繰り返しながら、やがて図1に示すように、各粉体貯留部105に粉体Fが貯留される。次に、第1ガス供給部121、パージガス供給部122および第2ガス供給部123が、それぞれ第1ガス収容部101、パージガス収容部102および第2ガス収容部103に、対応するガスを供給する。この際、各粉体貯留部105に貯留される粉体Fが各ガス収容部の下面部を画定し、シールする。なお、第1ガス供給部121、パージガス供給部122および第2ガス供給部123は、粉体Fによってシールされたガス収容部から順にガスを供給してもよい。このように、成膜処理部100Cにおいて粉体Fが第1ガス収容部101、パージガス収容部102、第2ガス収容部103および他のパージガス収容部102をそれぞれ順に通過する。そして、粉体Fが第1ガス収容部101に流入すると、粉体Fの粒子の表面には前駆体として機能するトリメチルアルミニウムが付着する。この際、粉体F(下地)の粒子の表面の酸素基にアルミニウム基が一つ結合し核が形成されるとともに、トリメチルアルミニウム中のメチル基は、粉体Fから脱離する。そして、この核を起点として膜が横方向(表面に沿った方向)に成長し、粉体Fの粒子の上にアルミニウム層(レイヤー)が形成される。粉体Fの粒子の表面の酸素基が埋まると、それ以上アルミニウム基が粉体Fの粒子に付着することができないため、粉体Fの周辺に存在するトリメチルアルミニウムは余剰分となる。このため、粉体移動機構125による移動に伴って粉体Fがパージガス収容部102に進入すると、粉体Fの周辺のトリメチルアルミニウムの余剰分は、パージガス収容部102中のパージガス(窒素)とともに、パージガス排気部124によって排気される。
【0060】
次に、粉体Fが第2ガス収容部103に流入すると、粉体Fの粒子の表面のアルミニウム基に水蒸気中の酸素基が付着し、粉体Fを包むように酸素基の層が形成される。同様に、次のパージガス収容部102において、余剰分の水蒸気(酸素基)が排気されたのち、更に下流の成膜処理部100Cの第1ガス収容部101において、前記酸素基にトリメチルアルミニウムが付着する。このような工程が繰り返されることで、粉体排出口10Qから排出される粉体Fの粒子の表面には複数のアルミニウム原子層を含むアルミナの膜(Al)が形成されている。このように、本実施形態では、粉体Fに対して連続的に膜を形成することができる。また、図1に示すように、第1ガス収容部101と第2ガス収容部103との間には、パージガス収容部102が配置されるとともに、2つの粉体貯留部105に貯留される粉体Fが第1ガス収容部101と第2ガス収容部103とを互いに隔離している(シールしている)。このため、粉体Fを構成する粒子表面とは異なる部分(たとえば第1ガス収容部101、第2ガス収容部103の内壁)において、第1原料ガス(トリメチルアルミニウム)と第2原料ガス(水蒸気)とが互いに反応し、アルミナが生成、付着することが防止される。なお、上記のような粉体Fに対する成膜処理が施されるにあたって、初期的に各ガス収容部の封止のみに使用され、十分な成膜処理を受けなかった粉体Fは、再び粉体供給口10Pから供給側貯留室100Aに投入されリユースされてもよい。
【0061】
ここで、図1に示される本実施形態に係る成膜処理部100Cの構造は、第1ガス収容部101および第2ガス収容部103を基準として以下のように捉えることができる。成膜処理部100Cは、第1ガス収容部101と、第1パージガス収容部102Aと、第2ガス収容部103と、第2パージガス収容部102Bと、第1粉体貯留部100Jと、第2粉体貯留部100Kと、2つの中間粉体貯留部100M、100Nとを有する。
【0062】
第1ガス収容部101と第2ガス収容部103との間には、第1パージガス収容部102Aが配置されている。同様に、第2ガス収容部103の下流側(第2ガス収容部103と次の第1ガス収容部101との間)は、第2パージガス収容部102Bが配置されている。当該第1パージガス収容部102Aおよび第2パージガス収容部102Bは、前記粉体流路100の一部を構成する。また、第1パージガス収容部102Aおよび第2パージガス収容部102Bは、パージガス供給部122からパージガスを受け入れ当該パージガスを収容する。
【0063】
第1粉体貯留部100Jは、図1において、第1ガス収容部101の直上流の粉体貯留部105に相当する。当該第1粉体貯留部100Jは、粉体流路100の一部を構成する。第1粉体貯留部100Jは、第1ガス収容部101の前記移動方向の上流側部分に下方から連通し、第1ガス収容部101に供給される粉体Fを貯留することが可能とされている。第1粉体貯留部100Jは、第1ガス収容部101から当該第1ガス収容部101よりも上流側のパージガス収容部102に第1原料ガスが流れることを抑止するように粉体Fを貯留する。なお、図1に示される成膜処理部100Cが最も上流側に位置する成膜処理部100Cの場合には、第1粉体貯留部100Jは、第1ガス収容部101から供給側貯留室100Aに第1原料ガスが流れることを抑止する。
【0064】
また、第2粉体貯留部100Kは、図1において、第2ガス収容部103の直上流の粉体貯留部105に相当する。当該第2粉体貯留部100Kは、粉体流路100の一部を構成する。第2粉体貯留部100Kは、第2ガス収容部103の前記移動方向の上流側部分に下方から連通し、第2ガス収容部103に供給される粉体Fを貯留することが可能とされている。また、第2粉体貯留部100Kは、第1パージガス収容部102Aの前記移動方向の下流側部分に下方から連通し、第1パージガス収容部102Aを通過した粉体Fを受け入れることが可能とされている。
【0065】
また、中間粉体貯留部100Mは、第1ガス収容部101の前記移動方向の下流側部分および第1パージガス収容部102Aの前記移動方向の上流側部分のそれぞれに下方から連通し、粉体Fを貯留することが可能とされている。中間粉体貯留部100Mは、当該貯留した粉体Fによって第1ガス収容部101と第1パージガス収容部102Aとの間で前記第1原料ガスおよび前記パージガスが流れることをそれぞれ抑止するように粉体Fを貯留する。
【0066】
更に、中間粉体貯留部100Nは、第2ガス収容部103の直下流の粉体貯留部105に相当する。中間粉体貯留部100Nは、粉体流路100の一部を構成する。中間粉体貯留部100Nは、第2ガス収容部103の前記移動方向の下流側部分に下方から連通し、第2ガス収容部103を通過した粉体Fを貯留する(受け入れる)ことが可能とされている。また、中間粉体貯留部100Nは、第2パージガス収容部102Bの前記移動方向の上流側部分に下方から連通し、第2パージガス収容部102Bに供給される粉体Fを貯留するとともに、貯留した粉体Fによって第2ガス収容部103と第2パージガス収容部102Bとの間での前記第2原料ガスおよび前記パージガスの流れをそれぞれ抑止するように粉体Fを貯留する。
【0067】
なお、図1のパージガス供給部122は、パージガス収容部102に対するパージガスの供給量を制御することが可能な流量制御弁122C(図2参照、圧力調整機構)を有している。当該流量制御弁122Cは、前記第1パージガス収容部102Aの圧力および前記第2パージガス収容部102Bの圧力が、第1ガス収容部101の圧力および第2ガス収容部103の圧力よりも低くなるように、前記第1パージガス収容部102Aの圧力および前記第2パージガス収容部102Bの圧力をそれぞれ調整する。一方、パージガス排気部124は、第1パージガス収容部102Aおよび第2パージガス収容部102Bからパージガスをそれぞれ排気する。このため、各パージガス収容部102が第1ガス収容部101および第2ガス収容部103に対して負圧に設定されるため、粉体F内に残留する第1原料ガスおよび第2原料ガスの余剰分が各パージガス収容部102に引き寄せられやすい。このため、パージガス排気部124によってこれらの余剰ガスをパージガスとともに確実に排気することができる。
【0068】
更に、本実施形態では、原料ガス排気部120およびパージガス排気部124が、第1ガス収容部101、パージガス収容部102および第2ガス収容部103から気体を排気する。このため、各ガス収容部を真空引きしながら、必要量の原料ガスを供給することができるため、各ガス収容部における原料ガスの純度を高めることができる。この結果、粉体Fに対して高純度の成膜処理を行うことができる。
【0069】
以上のように、本実施形態では、粉体移動機構125が粉体Fを成膜処理部100Cの粉体流路100を連続的に移動させることで、当該粉体Fが第1ガス収容部101および第2ガス収容部103において第1原料ガスおよび第2原料ガスに順に曝露されることによって、両ガスのガス分子の反応をうけて粉体Fの粒子の表面上に連続的に膜を形成することができる。また、成膜処理部100Cの第1ガス収容部101と第2ガス収容部103との間に配置される各粉体貯留部105は、貯留する粉体Fによって第1ガス収容部101と第2ガス収容部103との間をシールすることができる。このため、第1ガス収容部101と第2ガス収容部103との間で各原料ガスが行き来することが抑止される。この結果、いずれかのガス収容部において粉体Fの粒子の表面とは異なる部分、たとえばガス収容部の壁面などにおいて原料ガス同士が混触することを抑制し、両ガスが反応することを抑止することができる。
【0070】
また、本実施形態では、複数のガス収容部において、第1ガス収容部101および第2ガス収容部103は前記移動方向に沿って交互に配置されており、前記複数のガス収容部は、前記粉体流路100における粉体Fの流れにおいて第1ガス収容部101と第2ガス収容部103との間にそれぞれ配置され、パージガス供給部122から前記パージガスを受け入れ当該パージガスを収容する複数のパージガス収容部102を更に有する。このような構成によれば、第1原料ガスおよび第2原料ガスが、粉体Fの粒子の表面以外において互いに混触することを抑止し、第2ガス収容部103を通過した粉体Fから第2原料ガスの余剰分を第2パージガス収容部102Bにおいて取り除くことができる。したがって、前記余剰分の第2原料ガスが次の処理工程で第1原料ガスと反応し、粉体Fから独立した反応生成物が生成されることを抑止することができる。
【0071】
また、本実施形態では、装置本体10内に配設された複数の第1仕切部111および複数の第2仕切部112が、装置本体10内に上下に蛇行した粉体流路100を形成し、第1ガス収容部101、第2ガス収容部103および粉体貯留部105をそれぞれ画定することができる。特に、各仕切部を挟んでガス収容部または粉体貯留部が互いに近接して配置されるため、ガス収容部および粉体貯留部が互いに離間して配置される場合と比較して、粉体Fの移動方向における粉体成膜装置1のサイズを小さくすることができる。
【0072】
また、本実施形態では、一の成膜処理部100Cの第1ガス収容部101および第2ガス収容部103を通過した粉体Fが、更に下流側の他の成膜処理部100Cの第1ガス収容部101および第2ガス収容部103を通過するように、装置本体10内で複数の成膜処理部100Cが互いに接続され、連続した粉体流路100が形成されている。この際、複数の成膜処理部100Cのうちの一の成膜処理部100Cの第2パージガス収容部102Bが、複数の成膜処理部100Cのうちの一の成膜処理部100Cよりも前記移動方向の下流側の他の成膜処理部100Cの第1粉体貯留部100Jに連通しており、当該第1粉体貯留部100Jは、貯留する粉体Fによって前記一の成膜処理部100Cの第2ガス収容部103と前記他の成膜処理部100Cの第1ガス収容部101との間で前記第1原料ガスおよび前記第2原料ガスが流れることを抑止するように粉体Fを貯留している。このため、複数の成膜処理部100Cにおいて粉体Fに対する成膜処理を連続的かつ効率的に行うことができる。また、各成膜処理部100C間における第1原料ガスおよび第2原料ガスの流れを粉体Fの層によって抑止し、粉体Fの表面以外における両ガスの反応を抑止することができる。なお、前記一の成膜処理部100Cの第2ガス収容部103と前記他の成膜処理部100Cの第1ガス収容部101との間に配置される、第2パージガス収容部102Bも、上記と同様に原料ガスの混触を抑止する機能を有している。
【0073】
更に、本実施形態では、粉体移動機構125が装置本体10に対して振動を付与することが可能な振動発生部を含んでいる。このため、装置本体10に対して特定方向の振動が付与されることで、粉体Fに対して粉体流路100を移動する移動力を付与することができる。このため、回転する羽根部材のように粉体Fに直接接触する機械的な移動機構を有することなく、各ガス収容部を通過するように粉体Fを安定して移動させることができる。特に、上記のような機械的な移動機構を備える場合と比較して、装置を簡略化することができるとともに、機械的な移動力によって粉体Fを構成する粒子が粉砕されることを抑止することができる。また、羽根部材の一部が粉体に混入すること(コンタミ)を防止することができる。
【0074】
また、本実施形態に係る粉体成膜方法は、粉体に成膜処理を施す粉体成膜方法であって、複数の頂部と複数の底部とを有し上下に蛇行しながら水平な移動方向に粉体が流れることを許容する粉体流路100が形成されている装置本体10を準備する準備工程と、前記粉体流路100のうち前記複数の頂部よりも下方の領域に粉体Fを貯留し、当該貯留された粉体Fによって前記複数の頂部同士の間を仕切る粉体貯留工程と、前記複数の頂部のうちの一の頂部に第1原料ガスを収容する一方、前記一の頂部よりも前記移動方向下流側の他の頂部に前記第1原料ガスとは異なる第2原料ガスを収容するガス収容工程と、前記粉体流路に沿って粉体Fを前記移動方向に連続的に移動させることで、前記粉体Fを前記第1原料ガスおよび前記第2原料ガスに順に曝露させ、前記第1原料ガスのガス分子と前記第2原料ガスのガス分子との反応によって前記粉体Fの粒子の表面に成膜処理を施す成膜工程と、を備える。
【0075】
このような方法によれば、粉体Fが複数の頂部において第1原料ガスおよび第2原料ガスに順に曝露されることによって、両ガスの反応をうけて粉体F上に連続的に膜を形成することができる。また、貯留される粉体Fによって、粉体流路100の複数の頂部間をシールすることができる。このため、複数の頂部間で各原料ガスが行き来することが抑止される。この結果、粉体Fを構成する粒子の表面とは異なる部分で原料ガス同士が混触することを抑制し、両ガスが反応することを抑止することができる。
【0076】
上記の方法において、前記成膜工程は、前記装置本体10に対して前記移動方向および上下方向をそれぞれ含む特定方向の振動を与えることで、前記粉体Fを前記移動方向に移動させることを含む。このような方法よれば、各頂部を通過するように粉体Fを安定して移動させることができる。
【0077】
図2は、本発明の第2実施形態に係る粉体成膜装置1の模式的な正断面図である。図1では、第1ガス収容部101、パージガス収容部102および第2ガス収容部103に対して、各原料ガスおよびパージガスが上から供給される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図2に示されるように、第1ガス供給部121は、第1原料ガスを収容する第1ガスタンク121Aと、第1ガスノズル121Bと、を有する。同様に、パージガス供給部122は、パージガスを貯留するパージガスタンク122A(ガスタンク)とパージガスノズル122Bとを有し、第2ガス供給部123は、第2原料ガスを収容する第2ガスタンク123Aと、第2ガスノズル123Bとを有する。なお、第1ガス供給部121、パージガス供給部122、第2ガス供給部123のうちの少なくとも一の供給部が、上記のような構造を備えていてもよい。
【0078】
更に、本実施形態では、第1ガスノズル121B、パージガスノズル122Bおよび第2ガスノズル123B(いずれもガス噴出部)が、それぞれ、図1における第1粉体貯留部100J、中間粉体貯留部100M、100N、第2粉体貯留部100Kに貯留される粉体F中に配置されており、各ガスを第1ガス収容部101、パージガス収容部102および第2ガス収容部103に向かって噴出することが可能とされている。
【0079】
このような構成によれば、各ガスノズルが各粉体貯留部の下流側において、粉体Fの流れ方向において更に下流側に配置されるガス収容部の上流側部分に向かって、前記ガス収容部と同種の原料ガスを噴出可能なように配置されている。このため、当該ガスノズルが原料ガスを噴出するとその噴出力によって粉体を流動化させて振動による搬送を促進することができる。なお、上記の各ガスノズルが粉体F中に配置されるものとして、ガスノズルが粉体貯留部の壁面または底面に配置され、当該ノズルの先端部が粉体F中に露出するものでもよい。
【0080】
図3は、本発明の第3実施形態に係る粉体成膜装置1の模式的な正断面図である。上記の第1、第2実施形態では、箱型の装置本体10の内部が複数の第1仕切部111および複数の第2仕切部112によって仕切られることで、粉体流路100が形成される態様にて説明したが、図3に示すように、装置本体10は上下に蛇行したパイプ(管材)からなるものでもよい。この場合も、パイプの頂部に第1ガス収容部101、各パージガス収容部102および第2ガス収容部103がそれぞれ形成され、パイプの底部に粉体Fを貯留する粉体貯留部105が形成される。このような構成においても、粉体移動機構125が装置本体10に振動を付与することで、粉体Fが各ガス収容部を通過し、粉体Fを構成する粒子上に成膜処理を施すことができる。
【0081】
図4は、本発明の第4実施形態に係る粉体成膜装置1の模式的な斜視図である。本実施形態では、複数の成膜処理部100Cが、粉体流路100が上下方向に延びる中心軸周りに螺旋状に配設されるように互いに接続されている。このような構成によれば、複数の成膜処理部100Cにおいて粉体Fに対する成膜処理を連続的に行うことができるとともに、複数の成膜処理部100Cが水平方向に沿って互いに接続される場合と比較して、粉体成膜装置1の設置面積を小さくすることができる。なお、粉体Fが螺旋を下るように搬送する場合には、図4の矢印D1方向に振動を付与し、粉体Fが螺旋を上るように搬送する場合には、図4の矢印D1′方向に振動を付与すればよい。
【0082】
図5および図6は、本発明の第5実施形態に係る粉体成膜装置の模式的な水平断面図および透視斜視図である。本実施形態では、単一の成膜処理部100Cが円筒状の装置本体10内に配置されており、その上流側と下流側とが互いに接続されている。
【0083】
詳しくは、粉体Fが同じ成膜処理部100Cの第1ガス収容部101および第2ガス収容部103を繰り返し通過可能なように、成膜処理部100Cの第2パージガス収容部102B(図1参照)が成膜処理部100Cの第1粉体貯留部100J(図1参照)に連通している(無限ループ状)。そして、成膜処理部100Cの第1粉体貯留部100Jは、貯留する粉体Fによって第2ガス収容部103と下流側の第1ガス収容部101との間で前記第1原料ガスおよび前記第2原料ガスが流れることをそれぞれ抑止するように粉体Fを貯留している。そして、図6の矢印D1方向の振動を付与することによって、図5図6の矢印D2のように粉体Fが各第1仕切部111を潜り、図5図6の矢印D3のように粉体Fが各第2仕切部112を乗り越えることができる。
【0084】
このような構成によれば、粉体Fを同じ第1ガス収容部101および第2ガス収容部103を通過させることで、粉体Fに対して成膜処理を連続的に行うことができる。このため、より多くの成膜処理部が互いに接続される場合と比較して、粉体成膜装置1のサイズを小さくすることができるとともに、粉体Fが同じ第1ガス収容部101および第2ガス収容部103を1回ずつ通過する場合と比較して、多数の粉体貯留部およびガス収容部を並べる必要がなく、最小数の粉体貯留部およびガス収容部で構成することができる。この結果、粉体Fに効率的に成膜を施すことができる。なお、図5図6に示すような無限ループ状の構造は、複数の成膜処理部100Cが連続して接続され、ループ状に配置されるものでもよい。
【0085】
以上、本発明の一実施形態に係る粉体成膜装置1およびこれを用いた成膜処理方法について説明したが、本発明はこれらの形態に限定されるものではなく、以下のような変形実施形態が可能である。
【0086】
(1)上記の第1実施形態では、原料ガス排気部120、第1ガス供給部121、パージガス供給部122、第2ガス供給部123、パージガス排気部124が図1に示されるように配置される態様にて説明したが、これらの構造物の数は、上記の態様に限定されるものでない。一例として、一つの第1ガス排気部120Aが、複数の第1ガス収容部101に連通し、各第1ガス収容部101から第1原料ガスを排気してもよい。同様に、一つの第2ガス排気部120Bが、複数の第2ガス収容部103に連通し、各第2ガス収容部103から第2原料ガスを排気してもよい。更に、一つのパージガス排気部124が複数のパージガス収容部102に連通し、各パージガス収容部102からパージガスを排気してもよい。他の実施形態においても同様である。また、各実施形態において、装置本体10内に配置される成膜処理部100Cの数は限定されるものではなく、少なくとも一つの成膜処理部100Cが配置されればよい。
【0087】
(2)上記の第1実施形態では、装置本体10が水平方向に延びるように配置される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図1において、装置本体10のうち前記移動方向の上流側部分よりも前記移動方向の下流側部分の方が下方に位置するように前記装置本体10が傾斜して配置されてもよい。このような構成によれば、移動方向に沿って粉体流路100を先下がりに設定することができるため、重力の作用を受けて、粉体Fの移動を促進することができる。なお、この場合も粉体Fは少なくとも水平な方向を含むような移動方向に移動される。また、他の実施形態においても、同様に装置本体10に傾斜をもたせてもよい。
【0088】
(3)上記の第1実施形態では、第1ガス収容部101と第2ガス収容部103との間に第1パージガス収容部102Aが配置され、第2ガス収容部103の下流側に第2パージガス収容部102Bが配置される態様にて説明したが、これらのパージガス収容部102A、102Bは配置されなくてもよく、一方のパージガス収容部102のみが配置されてもよい。
【0089】
図7は、本発明の変形実施形態に係る粉体成膜装置の模式的な正断面図である。図7のように、第1ガス収容部101および第2ガス収容部103が移動方向に沿って交互に配置され、第1ガス収容部101と第2ガス収容部103とに下方から跨るように、各粉体貯留部105が配設されるものでもよい。すなわち、本変形実施形態では、図1の第1パージガス収容部102A、第2パージガス収容部102B、中間粉体貯留部100M、100Nが備えられておらず、複数の粉体貯留部105の各々は、第1ガス収容部101および第2ガス収容部103のうちの一方のガス収容部の前記移動方向の上流側部分に下方から連通するとともに、第1ガス収容部101および第2ガス収容部103のうちの他方のガス収容部の前記移動方向の下流側部分に下方から連通している。このような構成によれば、第1実施形態のようなパージガス収容部102を有する場合と比較して、粉体成膜装置1の移動方向におけるサイズを小さくすることが可能となる。
【0090】
(4)また、上記の第1実施形態では、パージガス排気部124が、第1パージガス収容部102Aおよび第2パージガス収容部102Bからパージガスをそれぞれ排気し、各パージガス収容部が第1ガス収容部101および第2ガス収容部103に対して負圧に設定される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。パージガス収容部102A、102Bの圧力が、第1ガス収容部101の圧力および第2ガス収容部103の圧力よりも高くなるように、流量制御弁122C(圧力調整機構)が各パージガス収容部の圧力を調整するものでもよい。この場合、各パージガス収容部が各ガス収容部に対して正圧に設定されるため、粉体内に残留する第1原料ガスおよび第2原料ガスの余剰分が各パージガス収容部に流入し互いに混触することを防止することができる。
【0091】
(5)また、粉体成膜装置1における粉体Fの移動方向は右方向(水平方向)に限定されるものではなく、水平な方向に対して上方または下方に傾斜した略水平方向であってもよいし、粉体Fの移動が可能であれば、上下方向と鋭角に交差する所定の移動方向であってもよい。当該所定の方向には、水平方向および前記略水平方向が含まれる。また、粉体Fを安定して搬送するために、前記移動方向と水平方向とがなす角度は60度以内に設定されることが望ましく、45度以内に設定されることが更に望ましい。
【0092】
(6)また、上記の実施形態では、第1ガス収容部101および第2ガス収容部103が前記移動方向に沿って交互に配置されており第1ガス収容部101と第2ガス収容部103との間に複数のパージガス収容部102がそれぞれ配置される態様にて説明したが、当該パージガス収容部102の代わりに、専用のガスを収容しないダミーガス収容部がそれぞれ配置されてもよい。すなわち、ダミーガス収容部にはパージガス供給部122から前記パージガスが供給されない。このような場合でも、第1原料ガスおよび第2原料ガスが、粉体Fの粒子の表面以外において互いに混触することを抑止することができる。なお、ダミーガス収容部に流入した各原料ガスを排気するために、前記ダミーガス収容部にパージガス排気部124と同様の排気機構が接続される。この結果、ダミーガス収容部に侵入、滞留した第1原料ガスおよび第2原料ガスの混触を防止することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 粉体成膜装置
10 装置本体
10B 底壁
10T 天壁
100 粉体流路
100A 供給側貯留室
100B 排出側貯留室
100C 成膜処理部
100J 第1粉体貯留部
100K 第2粉体貯留部
100M、100N 中間粉体貯留部
101 第1ガス収容部(ガス収容部)
102 パージガス収容部(ガス収容部)
103 第2ガス収容部(ガス収容部)
105 粉体貯留部
10P 粉体供給口
10Q 粉体排出口
111 第1仕切部
112 第2仕切部
120 原料ガス排気部
120A 第1ガス排気部120A
120B 第2ガス排気部120B
121 第1ガス供給部
121A 第1ガスタンク
121B 第1ガスノズル
122 パージガス供給部
122A パージガスタンク
122B パージガスノズル
122C 流量制御弁(圧力調整機構)
123 第2ガス供給部
123A 第2ガスタンク
123B 第2ガスノズル
124 パージガス排気部(排気機構)
125 粉体移動機構
F 粉体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7