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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】理美容鋏
(51)【国際特許分類】
   B26B 13/28 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
B26B13/28 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020048824
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021145899
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】515059865
【氏名又は名称】株式会社ミュウ
(74)【代理人】
【識別番号】100109597
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 章
(72)【発明者】
【氏名】堀 博明
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-213610(JP,A)
【文献】特開2002-058886(JP,A)
【文献】特開平11-156067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 13/00 - 13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1刃体と第2刃体が枢軸部で枢着され、第1刃体の基端と第2刃体の基端にそれぞれ設けられる把持部を操作することにより第1刃体と第2刃体が開閉自在な理美容鋏であって、
前記枢軸部は、前記第1刃体と前記第2刃体に挿通される、フランジを有する頭部とくびれ箇所を有する軸部とからなる軸体と、
当該軸体に嵌着される転がり軸受と、
当該転がり軸受を前記軸部のくびれ箇所に固着する止め輪と、
前記第2刃体で前記軸部に螺着される締結体と、
前記頭部のフランジの径より拡径の孔を有し、前記第1刃体の表側に固着され、前記第1刃体の前記軸体からの離脱を防ぐ止め体と、を備え、
前記軸体における頭部のフランジの表側に、治具を嵌めて軸体を微妙に回すための凹部が形成され、
前記転がり軸受の径は、前記頭部のフランジの径より拡径されていることを特徴とする理美容鋏。
【請求項2】
第2刃体に軸体の軸部と螺合する雌ねじが螺刻されてなることを特徴とする請求項1に記載の理美容鋏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枢軸部に特徴のある理美容鋏に関し、詳細には、枢軸部の締め付け具合の微調整を精度良く行え、枢軸部が出っ張りが少なく嵩高くない理美容鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
理美容鋏は、一対の刃体の頻回な開閉により枢軸部の締め付けが緩むことがあるため、締め付け具合を調整し、刃体間の噛合圧力を調整することや使用者の好みの噛合圧力に調整することがある。また、枢軸部が出っ張りが多く嵩高いと理美容鋏を操作する上でバランスが悪くなり、使い勝手が悪くなることがある。
【0003】
従来、枢軸部の締め付け具合を微調整できるように工夫された考案の提案がある。すなわち、特許文献1には、刃部と持手部を有し、支軸周りに回動可能な第一鋏片及び第二鋏片と、第一鋏片の支軸近傍の第二鋏片と対向する面に形成された深さが刃部側から持手部側に向かって浅くなる凹部と、凹部に嵌挿可能に形成された嵌挿体とを具備する鋏が開示されている。
また、枢軸部が出っ張りが少なく嵩高くなく、使用者の邪魔にならないように工夫された発明の提案がある。すなわち、特許文献に2は、各刃体の各貫通孔に少なくとも軸部と円板部が一体加工された軸部材の軸部と他の軸部材の軸部とが互いに対向するように嵌挿され、螺合連結された状態で、一体加工された軸部材に外装されたコイルバネの付勢力により両刃体を他の軸部材との間で挟み込み、一体加工された軸部材の一部を薄くすることができる鋏の枢軸構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3115998号公報
【文献】特開2018-094093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の考案は、一対の刃体の接触圧力(噛合圧力)の微調整を厚みの異なる嵌挿片(嵌挿体)を使い分けて行うため作業が繁雑であり、また、鋏の構成が複雑となる。特許文献2の発明は、刃体の表面から飛び出す部分の量が減る枢軸構造ではあるが、軸部材にコイルバネが外装される構成であるため、出っ張りを少なくし嵩高さを抑えることに限界がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、枢軸部の締め付け具合の微調整が容易に行える理美容鋏を提供することを課題とする。また、枢軸部が出っ張りが少なく嵩高くない、使い勝手の良い理美容鋏を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明は、第1刃体と第2刃体が枢軸部で枢着され、第1刃体の基端と第2刃体の基端にそれぞれ設けられる把持部を操作することにより第1刃体と第2刃体が開閉自在な理美容鋏であって、前記枢軸部は、前記第1刃体と前記第2刃体に挿通される、フランジを有する頭部とくびれ箇所を有する軸部とからなる軸体と、当該軸体に嵌着される転がり軸受と、当該転がり軸受を前記軸部のくびれ箇所に固着する止め輪と、前記第2刃体で前記軸部に螺着される締結体と、前記頭部のフランジの径より拡径の孔を有し、前記第1刃体の表側に固着され、前記第1刃体の前記軸体からの離脱を防ぐ止め体と、を備え、前記軸体における頭部のフランジの表側に、治具を嵌めて軸体を微妙に回すための凹部が形成され、前記転がり軸受の径は、前記頭部のフランジの径より拡径されていることを特徴とする理美容鋏に関する。この構成により、第1刃体と枢軸部が一体となり、軸体の頭部を左右に回すことにより第1刃体を動かし、第1刃体と第2刃体の間隔を調整することができる。
【0008】
上記の発明において、第2刃体に軸体の軸部と螺合する雌ねじを螺刻してもよい。この構成により、第2刃体を強固に締結できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、枢軸部が簡単な構成でありながら、一対の刃体の間隔の微調整、ひいては刃体間の噛合圧力の微調整を精度良く行うことができるので、頻回な使用により緩んだ枢軸部の締め付け具合を精度良く微調整でき、また、使用者の好みに応じた刃体間の噛合圧力に微調整することが可能な理美容鋏を提供できる。
また、一対の刃体の間隔を適度に設定することにより触点が不要な構成とできるので、刃体の開閉を円滑に行える使い勝手に優れる理美容鋏を提供できる。
【0011】
本発明によれば、枢軸部が出っ張りが少なく、嵩高くないので、操作する上でバランスが良く、使い勝手に優れる理美容鋏を提供できる。
【0012】
本発明によれば、分解・組立が容易で、刃研ぎなどのメンテナンスを円滑に行える理美容鋏を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る理美容鋏の平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る理美容鋏の枢軸部が設けられていない第1刃体と第2刃体の各平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る理美容鋏の枢軸部における軸体の平面図と正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る理美容鋏の枢軸部における転がり軸受の平面図と正面図である。
図5】本発明の実施形態に係る理美容鋏の枢軸部におけるE-リングの平面図と正面図である。
図6】本発明の実施形態に係る理美容鋏の枢軸部における締結体の平面図と正面図である。
図7】本発明の実施形態に係る理美容鋏の枢軸部における止め板の平面図と正面図である。
図8】本発明の実施形態に係る理美容鋏における別態様の止め板の平面図と正面図である。
図9】本発明の実施形態に係る理美容鋏の枢軸部の要部拡大断面図である。
図10】本発明の実施形態に係る理美容鋏に用いる治具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図面を参照しながら実施形態により説明する。
【0015】
本実施形態に係る理美容鋏100は、図1に示すように、第1刃体60、第2刃体70、把持部65、75及び枢軸部90から構成されている。
【0016】
本実施形態に係る理美容鋏100の枢軸部90を構成する軸体10は、図3に示すように、フランジ15を有する頭部11と軸部12とから構成されている。軸部12は略中央にくびれ箇所13が形成され、当該くびれ箇所13から下に雄ねじが螺刻されている。頭部11のフランジ15の表側には、図10に示す治具80を嵌めて軸体10を回すための凹部14が形成されている。
【0017】
本実施形態に係る理美容鋏100の枢軸部90を構成する転がり軸受20は、図4に示すように、インナーレース21とアウターレース22間に玉が転動体として介在する玉軸受けである。転がり軸受20の上下方向の一方にフランジ23が形成されている。フランジ23の径は、軸体10における頭部11のフランジ15の径より拡径されている。また、転がり軸受20は、フランジ23を設けず、転がり軸受20の径自体を頭部11のフランジ15の径より拡径に形成してもよい。さらに、転がり軸受20は、玉軸受けに限定されす、他の転がり軸受でもよい。
【0018】
本実施形態に係る理美容鋏100の枢軸部90を構成する図5に示すE-リング30は、固着手段に相当する。固着手段は、E-リングに限定されず、C-リングのような他の止め輪でもよく、また金属用接着剤等でもよい。
【0019】
本実施形態に係る理美容鋏100の枢軸部90を構成する締結体40は、図6に示すように、リング状をなし、中央に孔41を有する。孔41の内周には、軸体10の軸部12の雄ネジと螺合する雌ネジが螺刻されている。締結体40の表側には、治具80を嵌めて締結体40を回すために用いる凹部42が形成されている。
【0020】
本実施形態に係る理美容鋏100の枢軸部90を構成する止め板50は、図7に示すように、板状をなし、軸体10における頭部11のフランジ15より拡径の孔51が形成されている。また、ビス止め用の穴52が形成されている。止め板は、板状であれば形状は特に限定されず、図8に示すような円板状でもよい。
【0021】
本実施形態に係る理美容鋏100の第1刃体60は、図2に示すように、転がり軸受20のフランジ23を収容する第1凹部61と当該第1凹部61に連通し軸部12が挿通される第1孔62が形成されている。また、上記の転がり軸受20にフランジ23を設けない構成とする場合、第1凹部は必要ではない。第2刃体70は、図2に示すように、締結体40を収容する第2凹部71と当該第2凹部71に連通し軸体10の軸部12が挿通される第2孔72が形成されている。第2孔72の内周には、軸体10の軸部12と螺合する雌ねじが螺刻されている。また、第2刃体70に軸体10の軸部12と螺合する雌ねじを螺刻せず、第2刃体70を軸体10の軸部12に螺着しない構成としてもよい。さらに、第2凹部71を設けることなく、第2刃体70から軸体10の軸部12を突出させ、突出した軸部12に締結体40を螺着する構成としてもよい。また、通常、第1刃体60は静刃で、第2刃体70は動刃であるが、上記の第1刃体が動刃で、第2刃体が静刃でもよい。
【0022】
上記の軸体10、転がり軸受20、E-リング30、締結体40及び止め板50を備える枢軸部90は、図9に示すように構成されている。すなわち、転がり軸受20は、軸体10に嵌着され、軸体10のくびれ箇所13に嵌め込まれたE-リング30で固着されている。転がり軸受20が固着された軸体10は、第1刃体60の第1凹部61と第1孔62に挿通され、止め板50は第1刃体60の表側にビス53で固着されている。転がり軸受20のフランジ23の径は、軸体10における頭部11のフランジ15の径より拡径されているため、止め板50の下側はフランジ23の上側に当接し、止め板50は第1刃体60が軸体10から離脱するのを防止する。また、第2刃体70は、軸体10の軸部12に螺着されている。締結体40は、治具80を用いて第2凹部71内で軸部12に螺着され、第2刃体70を締結している。このように、本実施形態に係る理美容鋏100の枢軸部90は、軸体10、転がり軸受20、E-リング30、締結体40及び止め板50を第1刃体60と第2刃体70に組み付けることにより得られる簡単な構成となっている。
【0023】
本実施形態に係る理美容鋏100の枢軸部90は、上記のように、軸体10における頭部11のフランジ15の径より拡径された転がり軸受20のフランジ23及び止め板50が設けられていることにより、第1刃体60と枢軸部90が一体となる構成となっている。そのため、治具80を用いて軸体10の頭部11を左右に回し、第1刃体60を動かすことにより、第1刃体60と第2刃体70の間隔の調整を行うことができる。このように、治具80を用いて頭部11を微妙に回すことができるという構成及び第1刃体60を動かすという構成により、第1刃体60と第2刃体70の間隔の微調整を精度良く行うことができ、ひいては第1刃体60と第2刃体70間の噛合圧力の微調整を精度良く行うことができる。また、第1刃体60と第2刃体70の間隔を適度に設定することにより本実施形態に係る理美容鋏100を触点が不要な構成とすることができる。
【0024】
本実施形態に係る理美容鋏100の枢軸部90は、軸体10の頭部11を治具80を用いて左右に回し、また、第2刃体内に収容される締結体40を治具80を用いて左右に回す構成であるため、第1刃体の表側からの出っ張り及び第2刃体の表側からの出っ張りが少なく、枢軸部90は嵩高くない構成となっている。
【0025】
本実施形態に係る理美容鋏100の分解・組立は、止め板50の着脱及び治具80を用いた締結体40の着脱により簡単に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、理容分野や美容分野で利用することができ、使用者に大きな福音をもたらすことができる。
【符号の説明】
【0027】
10 軸体
11 頭部
12 軸部
14 凹部
15 フランジ
20 転がり軸受
23 フランジ
30 E-リング
40 締結体
41 孔
42 凹部
50 止め板
51 孔
60 第1刃体
61 第1凹部
62 第1孔
65 把持部
70 第2刃体
71 第2凹部
72 第2孔
75 把持部
90 枢軸部
100 理美容鋏
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10