(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネセンス材料及びデバイス
(51)【国際特許分類】
H10K 85/30 20230101AFI20240514BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20240514BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20240514BHJP
H10K 101/10 20230101ALN20240514BHJP
H10K 101/30 20230101ALN20240514BHJP
【FI】
H10K85/30
C09K11/06 660
C09K11/06 690
H10K50/12
H10K101:10
H10K101:30
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020070929
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2022-10-07
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503055897
【氏名又は名称】ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ジェイ・トンプソン
(72)【発明者】
【氏名】チュン・リン
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-168803(JP,A)
【文献】特表2014-507444(JP,A)
【文献】特開2019-169710(JP,A)
【文献】特開2017-022378(JP,A)
【文献】特開2017-108108(JP,A)
【文献】特開2019-062184(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0058144(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102/20
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光スペクトルを有する有機発光デバイス(OLED)であって、
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に配置された有機発光層とを含み、前記有機発光層が、
最高被占分子軌道(HOMO)エネルギー及び最低空分子軌道(LUMO)エネルギーを有する第1のホスト
と、
HOMOエネルギー及びLUMOエネルギーを有する発光体とを含み、
前記有機発光層における全ての材料が互いに混合されており、
前記発光体が、リン光金属錯体及び遅延蛍光発光体からなる群から選択され、
高いHOMOエネルギーが、前記有機発光層中の全ての材料の中で最も高いHOMOエネルギーであり、
低いLUMOエネルギーが、前記有機発光層中の全ての材料の中で最も低いLUMOエネルギーであり、
a≦E
T-ΔE≦bであり;式中、E
Tは、前記発光体の三重項エネルギーT
1であって、前記有機発光層中の全ての材料の中で最も低いT
1エネルギーであり、ΔEは、前記高いHOMOエネルギーと前記低いLUMOエネルギーとの間のエネルギーギャップであり、aは、0.00~最大0.15eVであり、bは、0.05~最大0.45eVであり;
前記OLEDの前記発光スペクトルが、
前記発光体と
前記発光体との間でE
T
-ΔE<0を満たすホストとからなる
有機発光層を有するOLEDの発光スペクトルと
比較されたとき、少なくとも95%同一であ
り、
前記発光体が、式M(L
1
)
x
(L
2
)
y
(L
3
)
z
を有する、ことを特徴とする有機発光デバイス(OLED)。
(式中
L
1
、L
2
、及びL
3
は、同一であっても異なっていてもよく;
xは、1、2、又は3であり;
yは、0、1、又は2であり;
zは、0、1、又は2であり;
x+y+zは、金属Mの酸化状態であり;
L
1
、L
2
、及びL
3
は、それぞれ独立して、下記からなる群から選択される:
【化1】
式中、各X
1
~X
17
は、独立して、炭素及び窒素からなる群から選択され;
Xは、BR’、NR’、PR’、O、S、Se、C=O、S=O、SO
2
、CR’R’’、SiR’R’’、及びGeR’R’’からなる群から選択され;
R’及びR’’は、縮合又は結合して環を形成してもよく;
各R
a
、R
b
、R
c
、及びR
d
は、モノ置換から可能な最大の置換数を表すことができる、又は無置換を表すことができ;
R’、R’’、R
a
、R
b
、R
c
、及びR
d
は、それぞれ独立して、水素である、又は水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、ボリル、及びこれらの組合せからなる群から選択され;
任意の2つのR
a
、R
b
、R
c
、及びR
d
は、縮合又は結合して環を形成する又は多座配位子を形成してもよく、
L
1
における、R
a
、R
b
、R
c
、及びR
d
の少なくとも1つは、互いに隣接して縮合しない少なくとも3つの6員芳香環を含む化学基である。)
【請求項2】
前記発光体が、リン光金属錯体又は遅延蛍光発光体である請求項1に記載のOLED。
【請求項3】
E
Tが、少なくとも2.60eVである請求項1に記載のOLED。
【請求項4】
前記高いHOMOエネルギーが発光体のHOMOエネルギーであり、前記低いLUMOエネルギーが第1のホストのLUMOエネルギーである請求項1に記載のOLED。
【請求項5】
前記高いHOMOエネルギーが第1のホストのHOMOエネルギーであり、前記低いLUMOエネルギーが前記発光体のLUMOエネルギーである請求項1に記載のOLED。
【請求項6】
前記OLED
の前記有機発光層が第2のホストを更に含み、
前記高いHOMOエネルギーが
前記第1のホストのHOMOエネルギーであり、前記低いLUMOエネルギーが前記第2のホストのLUMOエネルギーである
か、又は、前記高いHOMOエネルギーが前記第2のホストのHOMOエネルギーであり、前記低いLUMOエネルギーが第1のホストのLUMOエネルギーである、請求項1に記載のOLED。
【請求項7】
第1のホストが、トリフェニレン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、イミダゾール、ボリル、5,9-ジオキサ-13b-ボラナフト[3,2,1-de]アントラセン、及びそれらのアザ-バリアントからなる群から選択される少なくとも1つの化学部分を含む請求項1に記載のOLED。
【請求項8】
前記発光体が、リン光青色発光体である請求項1に記載のOLED。
【請求項9】
前記発光体が、Ir(L
1
)(L
2
)(L
3
)、Ir(L
1
)
2
(L
2
)、及びIr(L
1
)
3
からなる群から選択される式を有する請求項1に記載のOLED。
(式中、L
1
、L
2
、及びL
3
は、異なっており、それぞれ独立して下記からなる群から選択される。)
【化2】
【請求項10】
前記発光体が、式M(L
1
)
2
又はM(L
1
)(L
2
)を有し、
Mが、Ptであり、L
1
及びL
2
が、それぞれ異なる二座配位子である;又は
Mが、Ir、Rh、Re、Ru、又はOsであり、L
1
及びL
2
が、それぞれ異なる三座配位子である請求項1に記載のOLED。
【請求項11】
前記発光体が、下記からなる群から選択される請求項10に記載のOLED。
【化3】
(式中、各R
A
~R
F
は、モノ置換から可能な最大の置換数を表すことができる、又は無置換を表すことができ;
R
A
~R
F
は、それぞれ独立して、水素である、又は重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、ボリル、及びこれらの組合せからなる群から選択され;
任意の2つのR
A
~R
F
は、縮合又は結合して環を形成する又は多座配位子を形成してもよく、R
A
~R
F
の少なくとも1つは、互いに隣接して縮合しない少なくとも3つの6員芳香環を含む化学基である。)
【請求項12】
発光スペクトルを有する有機発光デバイス(OLED)を含む消費者製品であって、前記OLEDが、請求項1に記載のOLEDであることを特徴とする消費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その開示内容の全体を参照により本明細書に援用する、2018年11月28日出願の米国仮出願第62/772,403号に対する優先権を米国特許法第119条(e)の定めにより主張する、2019年11月14日出願の同時係属中の米国特許出願第16/683,507号の一部継続出願である。
【0002】
本開示は、一般に、有機金属化合物及び組成物、並びに有機発光ダイオード及び関連する電子デバイスなどのデバイスにおける発光体を含むそれらの各種使用に関する。
【背景技術】
【0003】
有機材料を利用する光電子デバイスは、各種理由から、次第に望ましいものとなりつつある。そのようなデバイスを作製するために使用される材料の多くは比較的安価であるため、有機光電子デバイスは無機デバイスを上回るコスト優位性の可能性を有する。加えて、柔軟性等の有機材料の固有の特性により、該材料は、フレキシブル基板上での製作等の特定用途によく適したものとなり得る。有機光電子デバイスの例は、有機発光ダイオード/デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池及び有機光検出器を含む。OLEDについて、有機材料は従来の材料を上回る性能の利点を有し得る。
【0004】
OLEDはデバイス全体に電圧が印加されると光を放出する薄い有機膜を利用する。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明及びバックライティング等の用途において使用するためのますます興味深い技術となりつつある。
【0005】
リン光性発光分子の1つの用途は、フルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイの業界標準は、「飽和(saturated)」色と称される特定の色を放出するように適合された画素を必要とする。特に、これらの標準は、飽和した赤色、緑色及び青色画素を必要とする。若しくは、OLEDは、白色光を照射するように設計することができる。従来の、白色バックライトからの液晶ディスプレイ発光は、吸収フィルターを用いてフィルタリングされ、赤色、緑色、及び青色発光を生成する。同様の技術は、OLEDでも用いられることができる。白色OLEDは、単一の発光層(EML)デバイス又は積層体構造のいずれかであることができる。色は、当技術分野において周知のCIE座標を使用して測定することができる。
【発明の概要】
【0006】
アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された有機発光層とを含む有機発光デバイス(OLED)が開示され、前記有機発光層は、最高被占分子軌道(HOMO)エネルギー及び最低空分子軌道(LUMO)エネルギーを有する第1のホスト材料と、HOMOエネルギー及びLUMOエネルギーを有する発光体材料とを含む。発光体は、リン光金属錯体及び遅延蛍光発光体からなる群から選択される。前記有機発光層における発光体とホスト材料は、次の条件を満たす:a≦ET-ΔE≦b;式中、ETは、前記発光体の三重項エネルギーT1であって、前記有機発光層中の全ての材料の中で最も低いT1エネルギーであり;ΔEは、高いHOMOエネルギーと低いLUMOエネルギーとの間のエネルギーギャップであり;aは、0.00~最大0.15eVであり、bは、0.05~最大0.45eVであり;前記OLEDの発光スペクトルは、有機発光層が第1の発光体と不活性ホストとからなるOLEDの発光スペクトルと少なくとも95%同一(like)である。「高いHOMOエネルギー」は、有機発光層中の全ての材料の中で最も高いHOMOエネルギーとして定義され、「低いLUMOエネルギー」は、有機発光層中の全ての材料の中で最も低いLUMOエネルギーとして定義される。
【0007】
前記OLEDを含む消費者製品も開示される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【0009】
【
図2】
図2は、別の電子輸送層を有さない、反転された有機発光デバイスを示す。
【0010】
【
図3】
図3は、ホスト化合物5と3にそれぞれドープされた発光体1化合物と発光体2化合物の測定したフォトルミネッセンス強度(PL)のプロットを示し、いずれのスペクトルも1に規格化されており、ピーク波長を468nmにシフトさせている。
【0011】
【
図4】
図4は、2種類の膜、即ち、ホスト化合物3に12vol.%でドープされた発光体の膜と、及びホスト化合物5に12vol.%でドープされた同一発光体の第2の膜との間のPLスペクトルにおける差の絶対値のプロットを示し、いずれのスペクトルも1に規格化されており、ピーク波長を468nmにシフトさせている。これら2種類の膜間の差を、発光体1及び発光体2についてプロットしている。
【0012】
【
図5】
図5は、ホスト化合物5に(12vol.%で)ドープされた発光体1の規格化されシフトされたPLスペクトルと、化合物5と化合物4の混合物である(化合物4が60vol.%)ホストに(12vol.%で)ドープされた発光体1の規格化されシフトされたELスペクトルのプロットを示す。
【0013】
【
図6】
図6は、化合物5と、化合物1、2、3、及び4との4種類の混合物にドープされた発光体1の規格化されシフトされたELスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、有機発光デバイス100を示す。図は必ずしも一定の縮尺ではない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子ブロッキング層130、発光層135、正孔ブロッキング層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、カソード160、及びバリア層170を含み得る。カソード160は、第1の導電層162及び第2の導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。これらの種々の層の特性及び機能並びに材料例は、参照により組み込まれるUS7,279,704、6~10段において更に詳細に記述されている。
【0015】
これらの層のそれぞれについて、更なる例が利用可能である。例えば、フレキシブル及び透明基板-アノードの組合せは、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5、844、363号において開示されている。p-ドープされた正孔輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号において開示されている通りの、50:1のモル比でm-MTDATAにF4-TCNQをドープしたものである。発光材料及びホスト材料の例は、参照によりその全体が組み込まれるThompsonらの米国特許第6,303,238号において開示されている。n-ドープされた電子輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号において開示されている通りの、1:1のモル比でBPhenにLiをドープしたものである。参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5,703,436号及び同第5,707,745号は、上を覆う透明の、導電性の、スパッタリング蒸着したITO層を有するMg:Ag等の金属の薄層を有する複合カソードを含むカソードの例を開示している。ブロッキング層の理論及び使用は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,097,147号及び米国特許出願公開第2003/0230980号において更に詳細に記述されている。注入層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号において提供されている。保護層についての記述は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号において見ることができる。
【0016】
図2は、反転させたOLED200を示す。デバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、及びアノード230を含む。デバイス200は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。最も一般的なOLED構成はアノードの上に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下に配置されたカソード215を有するため、デバイス200は「反転させた」OLEDと称されることができる。デバイス100に関して記述されたものと同様の材料を、デバイス200の対応する層において使用してよい。
図2は、幾つかの層が如何にしてデバイス100の構造から省略され得るかの一例を提供するものである。
【0017】
図1及び
図2において例証されている単純な層構造は、非限定的な例として提供されるものであり、本開示の実施形態は多種多様な他の構造に関連して使用され得ることが理解される。記述されている特定の材料及び構造は、事実上例示的なものであり、他の材料及び構造を使用してよい。機能的なOLEDは、記述されている種々の層を様々な手法で組み合わせることによって実現され得るか、又は層は、設計、性能及びコスト要因に基づき、全面的に省略され得る。具体的には記述されていない他の層も含まれ得る。具体的に記述されているもの以外の材料を使用してよい。本明細書において提供されている例の多くは、単一材料を含むものとして種々の層を記述しているが、ホスト及びドーパントの混合物等の材料の組合せ、又はより一般的には混合物を使用してよいことが理解される。また、層は種々の副層を有してもよい。本明細書における種々の層に与えられている名称は、厳しく限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し、正孔を発光層220に注入し、正孔輸送層又は正孔注入層として記述され得る。一実施形態において、OLEDは、カソード及びアノードの間に配置された「有機層」を有するものとして記述され得る。有機層は単層を含んでいてよく、又は、例えば
図1及び
図2に関して記述されている異なる有機材料の多層を更に含んでいてよい。
【0018】
参照によりその全体が組み込まれるFriendらの米国特許第5,247,190号において開示されているもののようなポリマー材料で構成されるOLED(PLED)等、具体的には記述されていない構造及び材料を使用してもよい。更なる例として、単一の有機層を有するOLEDが使用され得る。OLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第5,707,745号において記述されている通り、積み重ねられてよい。OLED構造は、
図1及び
図2において例証されている単純な層構造から逸脱してよい。例えば、基板は、参照によりその全体が組み込まれる、Forrestらの米国特許第6,091,195号において記述されているメサ構造及び/又はBulovicらの米国特許第5,834,893号において記述されているくぼみ構造等、アウトカップリングを改良するための角度のついた反射面を含み得る。
【0019】
別段の規定がない限り、種々の実施形態の層のいずれも、任意の適切な方法によって堆積され得る。有機層について、好ましい方法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,013,982号及び同第6,087,196号において記述されているもの等の熱蒸着、インクジェット、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第6,337,102号において記述されているもの等の有機気相堆積(OVPD)、並びに参照によりその全体が組み込まれる米国特許第7,431,968号において記述されているもの等の有機気相ジェットプリンティング(OVJP)による堆積を含む。他の適切な堆積法は、スピンコーティング及び他の溶液ベースのプロセスを含む。溶液ベースのプロセスは、好ましくは、窒素又は不活性雰囲気中で行われる。他の層について、好ましい方法は熱蒸着を含む。好ましいパターニング法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,294,398号及び同第6,468,819号において記述されているもの等のマスク、冷間圧接を経由する堆積、並びにインクジェット及び有機蒸気ジェット印刷(OVJP)等の堆積法の幾つかに関連するパターニングを含む。他の方法を使用してもよい。堆積する材料は、特定の堆積法と適合するように修正され得る。例えば、分枝鎖状又は非分枝鎖状であり、好ましくは少なくとも3個の炭素を含有するアルキル及びアリール基等の置換基は、溶液プロセシングを受ける能力を増強するために、低分子において使用され得る。20個以上の炭素を有する置換基を使用してよく、3~20個の炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する材料は、対称構造を有するものよりも良好な溶液プロセス性を有し得、これは、非対称材料のほうが再結晶する傾向が低くなり得るからである。溶液プロセシングを受ける低分子の能力を増強するために、デンドリマー置換基が使用され得る。
【0020】
特段の断りがない限り、本明細書に使用される下記用語は、以下のように定義される。
【0021】
本明細書において使用される場合、用語「有機」は、有機光電子デバイスを製作するために使用され得るポリマー材料及び低分子有機材料を含む。「低分子」は、ポリマーでない任意の有機材料を指し、且つ「低分子」は実際にはかなり大型であってよい。低分子は、幾つかの状況において繰り返し単位を含み得る。例えば、長鎖アルキル基を置換基として使用することは、「低分子」クラスから分子を排除しない。低分子は、例えばポリマー骨格上のペンダント基として、又は該骨格の一部として、ポリマーに組み込まれてもよい。低分子は、コア部分上に構築された一連の化学的シェルからなるデンドリマーのコア部分として役立つこともできる。デンドリマーのコア部分は、蛍光性又はリン光性低分子発光体であってよい。デンドリマーは「低分子」であってよく、OLEDの分野において現在使用されているデンドリマーは全て低分子であると考えられている。
【0022】
本明細書において使用される場合、「頂部」は基板から最遠部を意味するのに対し、「底部」は基板の最近部を意味する。第1の層が第2の層「の上に配置されている」と記述される場合、第1の層のほうが基板から遠くに配置されている。第1の層が第2の層「と接触している」ことが指定されているのでない限り、第1の層と第2の層との間に他の層があってもよい。例えば、間に種々の有機層があるとしても、カソードはアノード「の上に配置されている」と記述され得る。
【0023】
本明細書において使用される場合、「溶液プロセス可能な」は、溶液又は懸濁液形態のいずれかの液体媒質に溶解、分散若しくは輸送されることができ、且つ/又は該媒質から堆積されることができるという意味である。
【0024】
配位子は、該配位子が発光材料の光活性特性に直接寄与していると考えられる場合、「光活性」と称され得る。配位子は、該配位子が発光材料の光活性特性に寄与していないと考えられる場合には「補助」と称され得るが、補助配位子は、光活性配位子の特性を変化させることができる。
【0025】
本明細書において使用される場合、当業者には概して理解されるように、第1の「最高被占分子軌道」(HOMO)又は「最低空分子軌道」(LUMO)エネルギー準位は、第1のエネルギー準位が真空エネルギー準位に近ければ、第2のHOMO又はLUMOエネルギー準位「よりも大きい」又は「よりも高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は、真空準位と比べて負のエネルギーとして測定されるため、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有するIP(あまり負でないIP)に相当する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有する電子親和力(EA)(あまり負でないEA)に相当する。頂部に真空準位がある従来のエネルギー準位図において、材料のLUMOエネルギー準位は、同じ材料のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりもそのような図の頂部に近いように思われる。
【0026】
本明細書において使用される場合、当業者には概して理解されるように、第1の仕事関数がより高い絶対値を有するならば、第1の仕事関数は第2の仕事関数「よりも大きい」又は「よりも高い」。仕事関数は概して真空準位と比べて負数として測定されるため、これは「より高い」仕事関数が更に負であることを意味する。頂部に真空準位がある従来のエネルギー準位図において、「より高い」仕事関数は、真空準位から下向きの方向に遠く離れているものとして例証される。故に、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣例に準ずる。
【0027】
「ハロ」、「ハロゲン」、及び「ハライド」という用語は、相互交換可能に使用され、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を指す。
【0028】
「アシル」という用語は、置換されたカルボニル基(C(O)-Rs)を指す。
【0029】
「エステル」という用語は、置換されたオキシカルボニル(-O-C(O)-Rs又は-C(O)-O-Rs)基を指す。
【0030】
「エーテル」という用語は、-ORs基を指す。
【0031】
「スルファニル」又は「チオエーテル」という用語は、相互交換可能に使用され、-SRs基を指す。
【0032】
「スルフィニル」という用語は、-S(O)-Rs基を指す。
【0033】
「スルホニル」という用語は、-SO2-Rs基を指す。
【0034】
「ホスフィノ」という用語は、-P(Rs)3基を指し、各Rsは、同一であっても異なっていてもよい。
【0035】
「シリル」という用語は、-Si(Rs)3基を指し、各Rsは、同一であっても異なっていてもよい。
【0036】
「ボリル」という用語は、-B(Rs)2基、又はそのルイス(Lewis)付加物-B(Rs)3基を指し、Rsは同一であっても異なっていてもよい。
【0037】
上記のそれぞれにおいて、Rsは、水素である、又は重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及びこれらの組合せからなる群から選択される置換基であることができる。好ましいRsは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0038】
「アルキル」という用語は、直鎖及び分岐鎖アルキル基の両方を指し、含む。好ましいアルキル基としては、1個から15個までの炭素原子を含むものであり、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、及び2,2-ジメチルプロピル等が挙げられる。更に、前記アルキル基は、任意に置換されていてもよい。
【0039】
「シクロアルキル」という用語は、単環式、多環式、及びスピロアルキル基を指し、含む。好ましいシクロアルキル基は、3~12個の環炭素原子を含むものであり、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ビシクロ[3.1.1]ヘプチル、スピロ[4.5]デシル、スピロ[5.5]ウンデシル、アダマンチルなどが挙げられる。更に、前記シクロアルキル基は、任意に置換されていてもよい。
【0040】
「ヘテロアルキル」又は「ヘテロシクロアルキル」という用語は、それぞれ、ヘテロ原子によって置換された少なくとも1つの炭素原子を有するアルキル基又はシクロアルキル基を指す。任意に、少なくとも1つのヘテロ原子は、O、S、N、P、B、Si、及びSe、好ましくはO、S、又はNから選択される。更に、前記ヘテロアルキル基又は前記ヘテロシクロアルキル基は、任意に置換されていてもよい。
【0041】
「アルケニル」という用語は、直鎖及び分枝鎖のアルケン基の両方を指し、含む。アルケニル基は、本質的に、アルキル鎖中に少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含むアルキル基である。シクロアルケニル基は、本質的に、シクロアルキル環中に少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含むシクロアルキル基である。本明細書で使用される「ヘテロアルケニル」という用語は、ヘテロ原子によって置換された少なくとも1つの炭素原子を有するアルケニル基を指す。任意に、少なくとも1つのヘテロ原子は、O、S、N、P、B、Si、及びSe、好ましくはO、S、又はNから選択される。好ましいアルケニル、シクロアルケニル、又はヘテロアルケニル基は、2~15個の炭素原子を含むものである。更に、前記アルケニル、前記シクロアルケニル、又は前記ヘテロアルケニル基は、任意に置換されていてもよい。
【0042】
「アルキニル」という用語は、直鎖及び分枝鎖アルキン基の両方を指し、含む。アルキニル基は、本質的に、アルキル鎖に少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含むアルキル基である。好ましいアルキニル基は、2~15個の炭素原子を含むものである。更に、前記アルキニル基は、任意に置換されていてもよい。
【0043】
「アラルキル」又は「アリールアルキル」という用語は、相互交換可能に使用され、アリール基で置換されたアルキル基を指す。更に、前記アラルキル基は、任意に置換されていてもよい。
【0044】
「複素環式基(ヘテロ環基;heterocyclic group)」という用語は、少なくとも1つのヘテロ原子を含む芳香族及び非芳香族の環式基を指し、含む。任意に、前記少なくとも1つのヘテロ原子は、O、S、N、P、B、Si、及びSe、好ましくはO、S、又はNから選択される。ヘテロ芳香族環式基は、ヘテロアリールと相互交換可能に使用され得る。好ましいヘテロ非芳香族環式基は、3~7個の環原子を含むものであって、少なくとも1つのヘテロ原子を含み、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノなどの環式アミン、及び例えばテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオフェンなどの環式エーテル/チオエーテルを含む。更に、前記複素環式基は、任意に置換されていてもよい。
【0045】
「アリール」という用語は、単環式芳香族ヒドロカルビル基及び多環式芳香族環系の両方を指し、含む。多環とは、2つの隣接する環(前記環は、「縮合」している)に2つの炭素が共有されている2つ以上の環を有することができ、前記環の少なくとも1つは、芳香族ヒドロカルビル基であり、例えば、他の環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロ環、及び/又はヘテロアリールであることができる。好ましいアリール基は、6~30個の炭素原子を含むものであり、6~20個の炭素原子を含むものが好ましく、6~12個の炭素原子を含むものが更に好ましい。6個の炭素を有するアリール基、10個の炭素を有するアリール基、又は12個の炭素を有するアリール基が特に好ましい。好適なアリール基としては、フェニル、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、テトラフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナンスレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、及びアズレン等が挙げられ、フェニル、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、フルオレン、及びナフタレンが好ましい。更に、前記アリール基は、任意に置換されていてもよい。
【0046】
「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1つのヘテロ原子を含む単環式芳香族基及び多環式芳香族環系の両方を指し、含む。ヘテロ原子としては、O、S、N、P、B、Si、及びSeが挙げられるが、これらに限定されない。多くの例においては、O、S、又はNが好ましいヘテロ原子である。ヘテロ単環式芳香族系は、好ましくは5個又は6個の環原子を有する単環であり、前記環は1~6個のヘテロ原子を有することができる。ヘテロ多環式環系は、2つの原子が2つの隣接する環(前記環は「縮合している」)に共通している2つ以上の環を有することができ、前記環の少なくとも1つはヘテロアリールであり、例えば、他の環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロ環、及び/又はヘテロアリールであることができる。複素多環式芳香族環系は、多環式芳香族環系の環当たり1~6個のヘテロ原子を有することができる。好ましいヘテロアリール基は、3~30個の炭素原子を含むものであり、3~20個の炭素原子を含むものが好ましく、3~12個の炭素原子を含むものがより好ましい。好適なヘテロアリール基としては、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンズイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジン、及びセレノフェノジピリジンが挙げられ、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、イミダゾール、ピリジン、トリアジン、ベンズイミダゾール、1,2-アザボリン、1,3-アザボリン、1,4-アザボリン、ボラジン、及びこれらのアザ類似体が好ましい。更に、前記ヘテロアリール基は、任意に置換されていてもよい。
【0047】
上記にリストされる前記アリール及び前記ヘテロアリール基のうち、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、イミダゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、及びベンズイミダゾールの基、並びにそのそれぞれのアザ類似体が、特に興味深い。
【0048】
本明細書において使用される用語であるアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アラルキル、複素環基、アリール、及びヘテロアリールは、独立して非置換である、又は独立して1つ以上の一般的な置換基で置換される。
【0049】
多くの例において、前記一般的な置換基は、重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボン酸、エーテル、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、ボリル、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0050】
幾つかの例において、好ましい一般的な置換基は、重水素、フッ素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、ボリル、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0051】
幾つかの例においては、より好ましい一般的な置換基は、重水素、フッ素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、ボリル、アリール、ヘテロアリール、スルファニル、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0052】
更に他の例においては、最も好ましい一般的な置換基は、重水素、フッ素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0053】
「置換された」及び「置換」という用語は、関連する位置(例えば炭素又は窒素)に結合されているH以外の置換基を指す。例えば、R1がモノ置換を表す場合、1つのR1はH以外でなければならない(即ち、置換)。同様に、R1がジ置換を表す場合、R1の2つはH以外でなければならない。同様に、R1がゼロ又は無置換を表す場合、R1は、例えば、ベンゼンにおける炭素原子及びピロール中の窒素原子の場合のように、環原子の利用可能な原子価における水素であることができる、又は完全に満たされた原子価を有する環原子(例えば、ピリジン中の窒素)の場合には単に何も表さない。環構造において可能な置換の最大数は、環原子における利用可能な原子価の総数に依存する。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「これらの組合せ」は、適用されるリストから当業者が想到することができる、知られた又は化学的に安定な配置を形成するために、適用されるリストの1つ以上のメンバーが組み合わされることを示す。例えば、アルキル及び重水素は、組み合わされて、部分的又は完全に重水素化されたアルキル基を形成することができる;ハロゲン及びアルキルは、組み合わされて、ハロゲン化アルキル置換基を形成することができる;ハロゲン、アルキル、及びアリールは、組み合わされて、ハロゲン化アリールアルキルを形成することができる。1つの例においては、置換という用語は、リストされた基の2~4個の組合せを含む。別の例においては、置換という用語は、2~3個の基の組合せを含む。更に別の例では、置換という用語は、2個の基の組合せを含む。置換基の好ましい組合せは、水素又は重水素でない50個までの原子を含むもの、又は水素又は重水素ではない40個までの原子を含むもの、又は水素若しくは重水素ではない30個までの原子を含むものである。多くの例においては、置換基の好ましい組合せは、水素又は重水素ではない20個までの原子を含む。
【0055】
本明細書において記述されるフラグメント、例えば、アザ-ジベンゾフラン、アザ-ジベンゾチオフェン等の中の「アザ」という名称は、各芳香族環中のC-H基の1つ以上が窒素原子に置き換わることができることを意味し、例えば、何ら限定するものではないが、アザトリフェニレンは、ジベンゾ[f,h]キノキサリンとジベンゾ[f,h]キノリンのいずれをも包含する。当業者であれば、上述のアザ誘導体の他の窒素類似体を容易に想像することができ、このような類似体全てが本明細書に記載の前記用語によって包含されることが意図される。
【0056】
本明細書で使用される場合、「重水素」は、水素の同位体を指す。重水素化化合物は、当該分野で公知の方法を用いて容易に調製されることができる。例えば、それらの内容の全体を参照によって援用する、米国特許第8,557,400号明細書、国際公開第WO2006/095951号、及び米国特許出願公開第2011/0037057号には、重水素で置換された有機金属錯体の作製が記載されている。更なる参照は、それらの内容の全体を参照によって組み込まれる、Tetrahedron 2015,71,1425~30(Ming Yanら)及びAngew.Chem.Int.Ed.(Reviews)2007,46,7744~65(Atzrodtら)によって為され、ベンジルアミン中のメチレン水素の重水素化及び芳香族環水素を重水素で置換する効率的な経路が、それぞれ記載されている。
【0057】
分子フラグメントが置換基であるとして記述される、又は他の部分に結合されているものとして記述される場合、その名称は、フラグメント(例えば、フェニル、フェニレン、ナフチル、ジベンゾフリル)又は分子全体(例えば、ベンゼン、ナフタレン、ジベンゾフラン)であるように記載されることがあることを理解されたい。本明細書においては、置換基又は結合フラグメントの表示の仕方が異なっていても、これらは、等価であると考える。
【0058】
ある例においては、対の隣接する置換基は、任意に結合又は縮合し、環を形成することができる。好ましい環は、5員環、6員環、又は7員環の炭素環又は複素環であり、対の置換基によって形成される環の部分が飽和されている例及び対の置換基によって形成される環の部分が不飽和である例の両方を含む。本明細書中で使用される「隣接する」は、安定した縮合環系を形成することができる限り、関連する2つの置換基が、互いに隣り合って同じ環上にあることができる、又はビフェニルにおける2位と2’位、及びナフタレンにおける1位と8位など、2つの最も近い利用可能な置換可能位置を有する2つの隣どうしの環上にあることができることを意味する。
【0059】
本開示のOLED
エキサイプレックス発光スペクトルは、ブロードなことが知られている。しかし、多くのOLED用途では、OLEDデバイスが、狭い発光スペクトルを有することが望ましい。例えば、青色マイクロキャビティのために最も高い効率を有する非常に飽和度の高い色にするためには、OLEDは、狭いスペクトルの発光体を必要とする。更に、OLEDデバイスの安定化(即ち、より長い寿命)は、より低いLUMO準位の材料をデバイスに用いることによって、達成することができる。したがって、OLED中でのエキサイプレックスの生成は、通常、避けるべきものである。しかし、多くの場合、エキサイプレックスは、OLED発光層中の最も浅い(即ち、最も高い)HOMO準位の材料と、最も深い(即ち、最も低い)LUMO準位の材料との間で生成され得る。そして、OLEDデバイスの全体的な発光は、エキサイプレックスからの発光によって品位の低下につながり得る。発光が、エキサイプレックスの発光と発光体の発光との混合である場合もあれば、発光が、全てエキサイプレックスによるものである場合もある。
【0060】
発光体の発光スペクトルよりも赤色側の発光スペクトルを有するエキサイプレックスを含むものの、エキサイプレックスからの発光が抑制され、発光体の発光が依然として全体的なOLED発光スペクトルの主となるOLED構成が開示される。これは、多くの種々の手段で達成される。1つの実施形態は、HOMO及びLUMO準位によって決定されるエキサイプレックスのエネルギーが発光体の三重項エネルギーT1のエネルギーよりも低くても、ホスト材料と発光体との間のエキサイプレックスの生成がOLEDの発光スペクトルの一部とならないように発光体を設計することである。
【0061】
本開示の前には、エキサイプレックスがOLED中の最も低いエネルギー状態である場合でも、OLEDの発光に対するエキサイプレックスの影響を抑制できることは知られていなかった。
【0062】
エキサイプレックスの生成が生じる場合と生じない場合との間の差を数学的に決定するのを助けるために、本発明者らは、二乗平均平方根(RMSD)関数、即ち、下記に示す式(1)を用いる。この関数は、全波長での2つのスペクトル間の差の平均である1つの値を与える。
【数1】
【0063】
式(1)中、nは、点の総数であり、I
1及びI
2は、波長λの関数としての規格化された強度スペクトル(エレクトロルミネッセンス(EL)又はフォトルミネッセンス(PL))である。重要なこととして、比較されるスペクトルが同一ピーク波長にシフトされ、規格化され、これにより、材料を、誘電率が異なる材料に入れることに起因し得るスペクトル差の一部が排除される。関数I
1及びI
2は、一定数の波長に対して既存データを内挿することによって達成できる点の数が完全に同一である必要があり、且つ、ここでも内挿によって達成可能な同一の波長範囲をカバーする必要がある。この関数の汎用性を実証するために、本発明者らは、まず、ホスト化合物5及び3に12体積%でドープした発光体1及び発光体2の、測定したフォトルミネッセンス強度(PL)をプロットし、いずれのスペクトルも1の値に規格化されており、ピーク波長を468nmにシフトさせている。このプロットを
図3に示す。化合物5のエネルギー準位に基づくと、各発光体とのエキサイプレックス生成の可能性はゼロである。化合物5における各発光体のPLスペクトルは、いずれか一方が、分子のエネルギー論によりエキサイプレックス生成が予測される場合に例えることができることを表す。発光体1及び2を化合物3にドープした場合、材料のエネルギー準位から、何が起こるか予測できる。化合物3における両発光体の場合、発光体が最も高いHOMOを有し、化合物3が最も低いLUMOを有する。次いで、本発明者らは、化合物3にドープされたこれらの発光体について、ΔE
発光体1=|-5.33- -2.78|=2.55eVとΔE
発光体2=|-5.35- -2.78|=2.57eVの各場合における、最も高いエネルギーHOMOと最も低いエネルギーLUMOに基づいて生じるエキサイプレックスのエネルギー差(ΔE)を計算することができる。発光体1及び発光体2のいずれの場合も、ΔEは、三重項エネルギーE
Tの2.73及び2.81eVよりもそれぞれ小さく、このことは、エキサイプレックスが、発光体と化合物3との間で生成することを示す。実際に、
図3から分かるように化合物3中の発光体2の場合、更にブロードで赤色シフトした発光が観測された。本発明者らは、化合物3中の発光体2のPLスペクトルの歪みは、2つの材料間でのエキサイプレックス生成を示唆すると考える。反対に、発光体2のスペクトルは、フォトルミネッセンス発光体の三重項エネルギーが、E
T-ΔE
発光体2>0として数学的に表現できるエキサイプレックスのエネルギーΔEよりも大きいという、エキサイプレックス生成のエネルギー基準を満たす場合であっても、化合物5にドープされたときに殆ど変化がない。
【0064】
2種類の膜間のPLスペクトルの差を表し、エキサイプレックス生成を決定するための定量的方法を提供する1つの数字を計算する手段として、本発明者らは、ホスト化合物3及び5における発光体1及び発光体2それぞれのPLスペクトルの差を、波長の関数としてプロットする。各発光体について、化合物3及び化合物5における発光体の規格化されシフトされたスペクトル間の差の絶対値を、
図4にプロットする。
【0065】
図4のプロットから、発光体1と発光体2は、ホスト化合物3及び5にドープしたときに挙動が異なることが示される。発光体1は、2種類のホスト化合物にドープしたときに差を殆ど示さなかった。しかし、多くの波長で、発光体2は、化合物5を化合物3と比較したときにPLスペクトルの顕著な差を示した。重要なこととしては、最大の差の値が、~500nm~>650nmの波長範囲で生じたことであり、これは、化合物5におけるPLと比較して変化した化合物3中の発光体2のPLスペクトル(
図3)と同一領域である。両発光体における~430nmから~480nmのシャープな形状は、最大値の周りのPL強度の形状が僅かに異なり大きな差をもたらしているという事実に起因する。この差は、各材料が、急傾斜領域の周りの測定したPLスペクトルにおける微差をもたらす誘電率を有することを理由とすると予想される、又はデータの元々のサンプリングに差があり、それが高傾斜領域の周りに内挿したことにより生じ得る。
【0066】
図4に示されるプロットに基づき、本発明者らは、各スペクトルのRMSD値を計算することができる。本発明者らは、発光体1のRMSD(12体積%でホスト化合物3及び5にドープされた発光体1のPLスペクトルを比較することによる)は、0.021であり、一方、発光体2のRMSD(12体積%でホスト化合物3及び5にドープされた発光体2のPLスペクトルを比較することによる)は、0.198であることを見出した。RMSD関数は、(
図3に示される実験的に観測されるエキサイプレックス生成に基づく)エキサイプレックスを生成するホストと発光体の組合せの場合、約10xであり、これは、材料の組合せがエキサイプレックスを生成するかどうかを判定し、定量的な数を生成する上でのRMSD使用の有効性を示している。
【0067】
次に、種々のスペクトルを比較したときに生じるRMSDのベースラインレベルを決定した。まず、種々のタイプのスペクトル測定のRMSD値を計算した。
図5は、ホスト化合物5にドープされた発光体1(12vol.%)の規格化されシフトされたPLスペクトルと、化合物5と化合物4の混合物であるホストにドープされた発光体1(化合物4が60vol.%及び12vol.%の発光体1)の規格化されシフトされたELスペクトルのプロットを示す。RMSDは、0.012と非常に低い。発光層(EML)組成物が、40vol.%の化合物3及び10又は15vol.%の発光体1でドープされた化合物5であるELのRMSDも計算した。RMSDは、0.0073であった。EML組成物が、20vol.%の化合物3及び15vol.%の発光体1でドープした化合物5から60vol.%の化合物3及び15vol.%の発光体1でドープした化合物5であるELのRMSDも計算した。RMSDは、0.0147であった。スペクトルを生成する、発光体ドーピングのパーセンテージを変更する、及びEML中のホストの比を変更するという各種方法から生成される、スペクトル(EL対PL)を比較するためのRMSDが、いずれも低い値であることを考慮すると、RMSDが、スペクトルを比較するための堅固な(robust)方法であることが示される。本発明者らは、更に、予想されるエキサイプレックスが存在しない多くの種々のスペクトルについて調べ、0.05を超えるRMSDの差に意味があり、エキサイプレックス生成が顕著と考えられ得る良好な値であることを見出した。
【0068】
純粋に数学的な表現の言葉による記述への変換が有用である場合がある。RMSDは、類似の記述に言い換えることができる。例えば、比較される2つのスペクトルが同一である場合、RMSDは0である。そのような2つのスペクトルは、完全に同一又は100%同一である。したがって、次の関係:(1-RMSD)*100を用いてパーセンテージとして、2つのスペクトル間の同一性を定義及び定量することができる。したがって、本文脈においては、≧95%同一である全てのスペクトルを、0.05未満のRMSDの値が有意な差ではないという事実により同一であるとみなす。
【0069】
以下の表1は、化合物1~5及び発光体1及び2のHOMO、LUMO、三重項エネルギーT1、及び予測されるエキシマーエネルギー準位を示す。発光体1及び2のいずれの場合も、化合物1、2、及び3は、エネルギー準位に基づいてエキサイプレックスを生成する一方、化合物4及び5は生成しない。HOMOエネルギーは、サイクリックボルタンメトリーから導出される第1の酸化ポンテンシャルから推定される。LUMOエネルギーは、サイクリックボルタンメトリーから導出される第1の還元ポンテンシャルから推定される。発光体化合物の三重項エネルギーT1は、77Kにおけるフォトルミネッセンスからのピーク波長を用いて測定される。発光体-ホストの組合せを選ぶときに、a≦ET-ΔE≦bの条件が満たされれば、エキサイプレックスが生成する。a≦ET-ΔE≦bにおいて、ETは、前記発光体の三重項エネルギーT1であって、前記有機発光層中の全ての材料の中で最も低いT1エネルギーであり、ΔEは、前記有機発光層中で最も高いHOMOエネルギーを有する材料のHOMOエネルギーと、前記有機発光層中で最も低いLUMOエネルギーを有する材料のLUMOエネルギーとの間のエネルギーギャップであり、aは、0.00~最大0.15eVの値を有し、bは、0.05~最大0.45eVの値を有する。しかし、前記条件は、適切な発光体を設計することによって満たされ、前記OLEDは、有機発光層が第1の発光体と不活性ホストとからなるOLEDの発光スペクトルと少なくとも95%同一である発光スペクトルを有する。
【0070】
化合物5と、化合物1、2、3、及び4との4種類の混合物にドープされた発光体1のELスペクトルを
図6に示す。各ホスト化合物1~4について、次の式にしたがって調製した混合物:40vol.%の化合物1と12vol.%の発光体1でドープした化合物5;40vol.%の化合物2と12vol.%の発光体1でドープした化合物5;40vol.%の化合物3と12vol.%の発光体1でドープした化合物5;40vol.%の化合物4と12vol.%の発光体1でドープした化合物5。本発明者らは、化合物5と1、2、又は3の混合物を、エキサイプレックス生成がエネルギー的に予測されない化合物4でドープした化合物5と比較するRMSDが、それぞれ0.0201、0.0306、及び0.0239であることを見出した。分かり易く言えば、ホストを化合物4から化合物1、2、又は3に変更すること以外は同一組成のEMLは、いずれも互いに対して3%以下で同一であり、したがって、有効に同一である。そのため、発光体のHOMO準位とホストのLUMO準位のエネルギー論からエキシマー生成が存在するであろうと予測されたとしても、発光体1とこれらのホストとの間にはエキシマー生成がない。この結果は、全く予想外のものである。何ら理論に拘束されるものではないが、この予想外の結果は、発光体に由来する立体効果の可能性がある。励起子のエネルギーは、空間的コンポーネントを有し、波動関数のホール及び電子の各部分の間の距離が上昇するにつれて、上昇する。発光体の立体的コンポーネントが、発光体とE型ホストとの間でエキサイプレックスが生成される距離を上昇させる場合、それは、より高いエキサイプレックスエネルギーにつながり、エキサイプレックスのエネルギーを、発光体の三重項エネルギーT
1よりも大きくなるように押し上げる。したがって、より大きな立体的保護を有する発光体分子は、より低いLUMO準位を有するE型ホストの使用を可能とし、これが、デバイス全体の安定化につながる。デバイスに用いることができるエネルギー準位の範囲を広げることの利点は、特に、青色発光体にとって有益である。したがって、本明細書に開示されるOLED構成は、安定なOLED、特に安定な青色リン光OLEDを達成するために、発光体分子を設計し、適切なホスト系、特にe-ホストを選択するためのロードマップを提供する。
【0071】
【表1】
表1において、各EML混合物のΔEを、まず、混合物中のどの化合物が高いHOMOエネルギー(EML混合物中の全ての材料の中で最も高いHOMOエネルギー)を有するかと、混合物中のどの化合物が低いLUMOエネルギー(EML混合物中の全ての材料の中で最も低いLUMOエネルギー)を有するかを決定することによって計算する。次に、ΔEは、高いHOMOエネルギーと低いLUMOエネルギーとの間のエネルギーギャップである。続いて、E
T-ΔEと、次の条件a≦E
T-ΔE≦b(式中、E
Tは、前記第1の発光体の三重項エネルギーT
1であって、前記有機発光層中の全ての材料の中で最も低いT
1エネルギーであり;aは、0.00~最大0.15eVであり、bは、0.05~最大0.45eVである)が満たされるかどうかを決定する。
【0072】
表1に示されるデータで言及される化合物を以下に示す。
【化1】
【0073】
溶液サイクリックボルタンメトリー及び微分パルスボルタンメトリーを、無水ジメチルホルムアミド溶媒とテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを支持電解質として用いるCHインスツルメンツモデル6201Bポテンシオスタットを用いて行った。ガラス状炭素、並びに白金及び銀ワイヤを、作動電極、対向電極、及び参照電極としてそれぞれ用いた。電子化学電位は、微分パルスボルタンメトリーからピーク電位差を測定することにより、内部フェロセン-フェロセニウムレドックス対(Fc+/Fc)を参照とした。EHOMO=-[(Eox1対Fc+/Fc)+4.8]、ELUMO=-[(Ered1対Fc+/Fc)+4.8]であり、式中、Eox1は、第1の酸化電位であり、Ered1は、第1の還元電位である。
【0074】
アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された有機発光層とを含む有機発光デバイス(OLED)が、本明細書に開示される。前記有機発光層は、最高被占分子軌道(HOMO)エネルギー及び最低空分子軌道(LUMO)エネルギーを有する第1のホスト材料と、HOMOエネルギー及びLUMOエネルギーを有する発光体材料とを含む。発光体は、リン光金属錯体及び遅延蛍光発光体からなる群から選択される。前記有機発光層における発光体とホスト材料は、次の条件を満たす:a≦ET-ΔE≦b;式中、ETは、前記発光体の三重項エネルギーT1であって、前記有機発光層中の全ての材料の中で最も低いT1エネルギーであり;ΔEは、高いHOMOエネルギーと低いLUMOエネルギーとの間のエネルギーギャップであり;aは、0.00~最大0.15eVであり、bは、0.05~最大0.45eVであり;前記OLEDの発光スペクトルは、有機発光層が第1の発光体と不活性ホストとからなるOLEDの発光スペクトルと少なくとも95%同一である。「高いHOMOエネルギー」は、有機発光層中の全ての材料の中で最も高いHOMOエネルギーとして定義され、「低いLUMOエネルギー」は、有機発光層中の全ての材料の中で最も低いLUMOエネルギーとして定義される。
【0075】
幾つかの実施形態においては、有機発光層中の全ての材料が混合物であることができる。この混合物は、均一な混合物であることができる、又は有機発光層の各成分が発光層中の厚みに亘って勾配のある濃度であることができる。濃度勾配は、線形、非線形、正弦波形などであることができる。
【0076】
発光体は、リン光金属錯体又は遅延蛍光発光体であることできる。
【0077】
OLEDの幾つかの実施形態においては、aは、0.15eVである。幾つかの実施形態においては、aは、0.10eVである。幾つかの実施形態においては、aは、好ましくは、0.05eVである。幾つかの実施形態においては、bは、0.05eVである。幾つかの実施形態においては、bは、0.15eVである。幾つかの実施形態においては、bは、0.25eVである。幾つかの実施形態においては、bは、好ましくは、0.35eVである。幾つかの実施形態においては、ETは、少なくとも2.60eVである。幾つかの実施形態においては、ETは、少なくとも2.65eVである。幾つかの実施形態においては、ETは、少なくとも2.70eVである。幾つかの実施形態においては、ETは、好ましくは、少なくとも2.75eVである。
【0078】
OLEDの幾つかの実施形態においては、高いHOMOエネルギーは、発光体のHOMOエネルギーであり、低いLUMOエネルギーは、第1のホストのLUMOエネルギーである。幾つかの実施形態においては、高いHOMOエネルギーは、第1のホストのHOMOエネルギーであり、低いLUMOエネルギーは、発光体のLUMOエネルギーである。
【0079】
幾つかの実施形態においては、OLEDは、第2のホストを更に含み、高いHOMOエネルギーが、第1のホストのHOMOエネルギーであり、低いLUMOエネルギーが、第2のホストのLUMOエネルギーである。幾つかの実施形態においては、高いHOMOエネルギーが、第2のホストのHOMOエネルギーであり、低いLUMOエネルギーが、第1のホストのLUMOエネルギーである。
【0080】
第2のホストを含むOLEDの幾つかの実施形態においては、第1のホスト、第2のホスト、及び発光体のみが、発光層の成分である。幾つかの実施形態においては、第1のホスト、第2のホスト、及び発光体のみが、発光層の成分である。
【0081】
幾つかの実施形態においては、OLEDは、10mA/cm2で6.0V未満の動作電圧を有する。幾つかの実施形態においては、OLEDは、10mA/cm2で5.0V未満の動作電圧を有する。幾つかの実施形態においては、OLEDは、10mA/cm2で4.0V未満の動作電圧を有する。
【0082】
OLEDの幾つかの実施形態においては、第1のホストが、トリフェニレン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、イミダゾール、ボリル、5,9-ジオキサ-13b-ボラナフト[3,2,1-de]アントラセン、及びそれらのアザ-バリアントからなる群から選択される少なくとも1つの化学基を含む。
【0083】
OLEDの幾つかの実施形態においては、発光体は、リン光青色発光体である。ここで、青色発光体は、その発光λmaxが490nm未満、480nm未満、470nm未満、又は好ましくは460nm未満である、又はCIE座標における発光が、X<0.3、<0.25、<0.2、又は好ましくは<0.18、且つY<0.5、<0.4、<0.3、又は好ましくは<0.2であるリン光発光体を意味する。
【0084】
OLEDの幾つかの実施形態においては、発光体は、式M(L
1)
x(L
2)
y(L
3)
zを有し;L
1、L
2、及びL
3は、同一であっても異なっていてもよく;xは、1、2、又は3であり;yは、0、1、又は2であり;zは、0、1、又は2であり;x+y+zは、金属Mの酸化状態であり;L
1、L
2、及びL
3は、それぞれ独立して、下記からなる群から選択される:
【化2】
【化3】
式中、各X
1~X
17は、独立して、炭素及び窒素からなる群から選択され;Xは、BR’、NR’、PR’、O、S、Se、C=O、S=O、SO
2、CR’R’’、SiR’R’’、及びGeR’R’’からなる群から選択され;R’及びR’’は、縮合又は結合して環を形成してもよく;各R
a、R
b、R
c、及びR
dは、モノ置換から可能な最大の置換数を表すことができる、又は無置換を表すことができ;R’、R’’、R
a、R
b、R
c、及びR
dは、それぞれ独立して、水素である、又は本明細書に定義される一般的な置換基からなる群から選択される置換基であり;任意の2つのR
a、R
b、R
c、及びR
dは、縮合又は結合して環を形成する又は多座配位子を形成してもよい。
【0085】
幾つかの実施形態においては、Ra、Rb、Rc、及びRdの少なくとも1つは、互いに隣接して縮合しない少なくとも3つの6員芳香環を含む化学基を含む。幾つかの実施形態においては、Ra、Rb、Rc、及びRdの少なくとも1つは、互いに隣接して縮合しない少なくとも4つの6員芳香環を含む化学基を含む。幾つかの実施形態においては、Ra、Rb、Rc、及びRdの少なくとも1つは、互いに隣接して縮合しない少なくとも5つの6員芳香環を含む化学基を含む。幾つかの実施形態においては、Ra、Rb、Rc、及びRdの少なくとも1つは、互いに隣接して縮合しない少なくとも6つの6員芳香環を含む化学基を含む。幾つかの実施形態においては、Ra、Rb、Rc、及びRdの少なくとも1つは、ターフェニル(より好ましくは、メタ-ターフェニル)又はN-フェニルカルバゾールを含む化学基を含む。幾つかの実施形態においては、Raは、本明細書に記載される化学基を含む。嵩高い基を、発光体錯体の配位子周辺に付加するより詳細な記述は、別の場所、例えば、参照によりその全体を本明細書に援用する米国出願第16/807,877に詳述されている。
【0086】
発光体が式M(L
1)
x(L
2)
y(L
3)
zを有するOLEDの幾つかの実施形態においては、発光体は、Ir(L
1)(L
2)(L
3)、Ir(L
1)
2(L
2)、及びIr(L
1)
3からなる群から選択される式を有することができ、式中、L
1、L
2、及びL
3は、異なっており、それぞれ独立して下記からなる群から選択される。
【化4】
【0087】
発光体が式M(L
1)
x(L
2)
y(L
3)
zを有する化合物の幾つかの実施形態においては、発光体は、式Pt(L
1)
2又はPt(L
1)(L
2)を有することができ、L
1及びL
2は、それぞれ異なる二座配位子である。幾つかの実施形態においては、L
1は、他方のL
1又はL
2に結合し、四座配位子を形成する。幾つかの実施形態においては、発光体は、式M(L
1)
2又はM(L
1)(L
2)を有し、Mは、Ir、Rh、Re、Ru、又はOsであり、L
1及びL
2は、それぞれ異なる三座配位子である。幾つかの実施形態においては、L
1は、下記からなる群から選択される。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【0088】
発光体が式Pt(L
1)
2又はPt(L
1)(L
2)を有するOLEDの幾つかの実施形態においては、発光体は、下記からなる以下の群1から選択される。
【化12】
式中、各R
A~R
Fは、モノ置換から可能な最大の置換数を表すことができる、又は無置換を表すことができ;R
A~R
Fは、それぞれ独立して、水素である、又は本明細書に定義される一般的な置換基からなる群から選択される置換基であり;任意の2つのR
A~R
Fは、縮合又は結合して環を形成する又は多座配位子を形成してもよい。幾つかの実施形態においては、R
A~R
Fの少なくとも1つは、互いに隣接して縮合しない少なくとも3つの6員芳香環を含む化学基を含む。
【0089】
発光体が式Pt(L1)2又はPt(L1)(L2)を有し且つ発光体が前記群1から選択されるOLEDの幾つかの実施形態においては、RAは、互いに隣接して縮合しない少なくとも3つの6員芳香環を含む化学基を含む。
【0090】
OLEDの幾つかの実施形態においては、発光体は、E型遅延蛍光発光体である。
【0091】
幾つかの実施形態においては、発光体は、式D-L-Aを有し;Dは、電子供与体基であり、Aは、電子受容体基であり、Lは、直接結合又はリンカーである。幾つかの実施形態においては、電子供与体基は、アミノ、インドール、カルバゾール、インドロカルバゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの化学部分を含む。幾つかの実施形態においては、電子受容体基は、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ニトリル、イソニトリル、及びボリルからなる群から選択される少なくとも1つの化学部分を含む。
【0092】
別の態様によれば、本明細書に開示される本発明OLEDを含む消費者製品も開示される。消費者製品は、フラットパネルディスプレイ、コンピュータモニター、メディカルモニター、テレビ、掲示板、屋内若しくは屋外照明及び/又は信号送信用のライト、ヘッドアップディスプレイ、完全又は部分透明ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンター、電話、携帯電話、タブレット、ファブレット、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ウェアラブルデバイス、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダー、ビューファインダー、対角で2インチ未満のマイクロディスプレイ、3-Dディスプレイ、バーチャルリアリティ又は拡張現実ディスプレイ、車両、共に並べた多重ディスプレイを含むビデオウォール、劇場又はスタジアムのスクリーン、光療法デバイス、及び看板のうちの1つであることができる。
【0093】
一般に、前記したエネルギー要件がEMLで満たされる限り、任意の金属錯体又は有機化合物を本開示のOLEDにおけるホスト材料として用いることができる。例えば、ホール輸送発光体を有する電子輸送ホスト(e-ホスト)又はその逆であることができる。そのようなe-ホストのファミリーは、参照により本明細書にその内容を援用する、2019年11月14日出願の米国特許出願第16/683,507号に開示されている。
【0094】
本開示のOLEDのためのホスト化合物は、金属錯体であることができる。ホストとして用いられる金属錯体の例としては、下記一般式を有することが好ましい。
【化13】
式中、Metは金属であり;(Y
103-Y
104)は二座配位子であり、Y
103及びY
104は、C、N、O、P及びSから独立に選択され;L
101は他の配位子であり;k’は、1から金属に結合し得る配位子の最大数までの整数値であり;且つ、k’+k’’は、金属に結合し得る配位子の最大数である。
【0095】
一態様において、金属錯体は、下記である。
【化14】
式中、(O-N)は、原子O及びNに配位された金属を有する二座配位子である。
【0096】
別の態様において、Metは、Ir及びPtから選択される。更なる態様において、(Y103-Y104)はカルベン配位子である。
【0097】
一態様において、前記ホスト化合物は、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、テトラフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、及びアズレン等の芳香族炭化水素環式化合物からなる群;ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンズイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジン及びセレノフェノジピリジン等の芳香族複素環式化合物からなる群;並びに芳香族炭化水素環式基及び芳香族複素環式基から選択される同じ種類又は異なる種類の基であり、且つ、直接的に、又は酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子、鎖構造単位及び脂肪族環式基の少なくとも1つを介して互いに結合している2から10個の環式構造単位からなる群から選択される群の少なくとも1つを含む。各基内の各オプションは、非置換であることができる、又は重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボン酸、エーテル、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びこれらの組合せからなる群から選択される置換基によって置換されることができる。
【0098】
一態様において、前記ホスト化合物は、分子中に、下記基の少なくとも1つを含む。
【化15】
式中、R
101は、水素、重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボン酸、エーテル、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びこれらの組合せからなる群から選択され、それがアリール又はヘテロアリールである場合、上記で言及したArのものと同様の定義を有する。kは0から20又は1から20までの整数である。X
101~X
108は、独立して、C(CHを含む)又はNから選択される。Z
101及びZ
102は、独立して、NR
101、O、又はSから選択される。
【0099】
本明細書において開示される材料と組み合わせて、OLED中に用いられることができるホスト材料の非制限的な例は、これらの材料を開示する文献と共に下記に例示される。
EP2034538、EP2034538A、EP2757608、JP2007254297、KR20100079458、KR20120088644、KR20120129733、KR20130115564、TW201329200、US20030175553、US20050238919、US20060280965、US20090017330、US20090030202、US20090167162、US20090302743、US20090309488、US20100012931、US20100084966、US20100187984、US2010187984、US2012075273、US2012126221、US2013009543、US2013105787、US2013175519、US2014001446、US20140183503、US20140225088、US2014034914、US7154114、WO2001039234、WO2004093207、WO2005014551、WO2005089025、WO2006072002、WO2006114966、WO2007063754、WO2008056746、WO2009003898、WO2009021126、WO2009063833、WO2009066778、WO2009066779、WO2009086028、WO2010056066、WO2010107244、WO2011081423、WO2011081431、WO2011086863、WO2012128298、WO2012133644、WO2012133649、WO2013024872、WO2013035275、WO2013081315、WO2013191404、WO2014142472、US20170263869、US20160163995、US9466803
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【0100】
概して、OLEDは、アノード及びカソードの間に配置され、それらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が印加されると、アノードが正孔を注入し、カソードが電子を有機層(複数可)に注入する。注入された正孔及び電子は、逆帯電した電極にそれぞれ移動する。電子及び正孔が同じ分子上に局在する場合、励起エネルギー状態を有する局在電子正孔対である「励起子」が形成される。光は、励起子が緩和した際に、光電子放出機構を介して放出される。幾つかの事例において、励起子はエキシマー又はエキサイプレックス上に局在し得る。熱緩和等の無輻射機構が発生する場合もあるが、概して望ましくないとみなされている。
【0101】
数種のOLED材料及び構成は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,844,363号明細書、米国特許第6,303,238号明細書、及び米国特許第5,707,745号明細書において記述されている。
【0102】
初期のOLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第4,769,292号において開示されている通り、その一重項状態から光を放出する発光分子(「蛍光」)を使用していた。蛍光発光は、概して、10ナノ秒未満の時間枠で発生する。
【0103】
ごく最近では、三重項状態から光を放出する発光材料(「リン光」)を有するOLEDが実証されている。参照によりその全体が組み込まれる、Baldoら、「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」、Nature、395巻、151~154、1998;(「Baldo-I」)及びBaldoら、「Very high-efficiency green organic light emitting devices based on electrophosphorescence」、Appl.Phys.Lett.、75巻、3号、4~6(1999)(「Baldo-II」)。リン光については、参照により組み込まれる米国特許第7,279,704号5~6段において更に詳細に記述されている。
【0104】
図1は、有機発光デバイス100を示す。図は必ずしも一定の縮尺ではない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子ブロッキング層130、発光層135、正孔ブロッキング層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、カソード160、及びバリア層170を含み得る。カソード160は、第1の導電層162及び第2の導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。これらの種々の層の特性及び機能並びに材料例は、参照により組み込まれるUS7,279,704、6~10段において更に詳細に記述されている。
【0105】
これらの層のそれぞれについて、更なる例が利用可能である。例えば、フレキシブル及び透明基板-アノードの組合せは、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5、844、363号において開示されている。p-ドープされた正孔輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号において開示されている通りの、50:1のモル比でm-MTDATAにF4-TCNQをドープしたものである。発光材料及びホスト材料の例は、参照によりその全体が組み込まれるThompsonらの米国特許第6,303,238号において開示されている。n-ドープされた電子輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号において開示されている通りの、1:1のモル比でBPhenにLiをドープしたものである。参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5,703,436号及び同第5,707,745号は、上を覆う透明の、導電性の、スパッタリング蒸着したITO層を有するMg:Ag等の金属の薄層を有する複合カソードを含むカソードの例を開示している。ブロッキング層の理論及び使用は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,097,147号及び米国特許出願公開第2003/0230980号において更に詳細に記述されている。注入層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号において提供されている。保護層についての記述は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号において見ることができる。
【0106】
図2は、反転させたOLED200を示す。デバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、及びアノード230を含む。デバイス200は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。最も一般的なOLED構成はアノードの上に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下に配置されたカソード215を有するため、デバイス200は「反転させた」OLEDと称されることができる。デバイス100に関して記述されたものと同様の材料を、デバイス200の対応する層において使用してよい。
図2は、幾つかの層が如何にしてデバイス100の構造から省略され得るかの一例を提供するものである。
【0107】
図1及び
図2において例証されている単純な層構造は、非限定的な例として提供されるものであり、本開示の実施形態は多種多様な他の構造に関連して使用され得ることが理解される。記述されている特定の材料及び構造は、事実上例示的なものであり、他の材料及び構造を使用してよい。機能的なOLEDは、記述されている種々の層を様々な手法で組み合わせることによって実現され得るか、又は層は、設計、性能及びコスト要因に基づき、全面的に省略され得る。具体的には記述されていない他の層も含まれ得る。具体的に記述されているもの以外の材料を使用してよい。本明細書において提供されている例の多くは、単一材料を含むものとして種々の層を記述しているが、ホスト及びドーパントの混合物等の材料の組合せ、又はより一般的には混合物を使用してよいことが理解される。また、層は種々の副層を有してもよい。本明細書における種々の層に与えられている名称は、厳しく限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し、正孔を発光層220に注入し、正孔輸送層又は正孔注入層として記述され得る。一実施形態において、OLEDは、カソード及びアノードの間に配置された「有機層」を有するものとして記述され得る。有機層は単層を含んでいてよく、又は、例えば
図1及び
図2に関して記述されている異なる有機材料の多層を更に含んでいてよい。
【0108】
参照によりその全体が組み込まれるFriendらの米国特許第5,247,190号において開示されているもののようなポリマー材料で構成されるOLED(PLED)等、具体的には記述されていない構造及び材料を使用してもよい。更なる例として、単一の有機層を有するOLEDが使用され得る。OLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第5,707,745号において記述されている通り、積み重ねられてよい。OLED構造は、
図1及び
図2において例証されている単純な層構造から逸脱してよい。例えば、基板は、参照によりその全体が組み込まれる、Forrestらの米国特許第6,091,195号において記述されているメサ構造及び/又はBulovicらの米国特許第5,834,893号において記述されているくぼみ構造等、アウトカップリングを改良するための角度のついた反射面を含み得る。
【0109】
別段の規定がない限り、種々の実施形態の層のいずれも、任意の適切な方法によって堆積され得る。有機層について、好ましい方法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,013,982号及び同第6,087,196号において記述されているもの等の熱蒸着、インクジェット、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第6,337,102号において記述されているもの等の有機気相堆積(OVPD)、並びに参照によりその全体が組み込まれる米国特許第7,431,968号において記述されているもの等の有機気相ジェットプリンティング(OVJP)による堆積を含む。他の適切な堆積法は、スピンコーティング及び他の溶液ベースのプロセスを含む。溶液ベースのプロセスは、好ましくは、窒素又は不活性雰囲気中で行われる。他の層について、好ましい方法は熱蒸着を含む。好ましいパターニング法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,294,398号及び同第6,468,819号において記述されているもの等のマスク、冷間圧接を経由する堆積、並びにインクジェット及び有機蒸気ジェット印刷(OVJP)等の堆積法の幾つかに関連するパターニングを含む。他の方法を使用してもよい。堆積する材料は、特定の堆積法と適合するように修正され得る。例えば、分枝鎖状又は非分枝鎖状であり、好ましくは少なくとも3個の炭素を含有するアルキル及びアリール基等の置換基は、溶液プロセシングを受ける能力を増強するために、低分子において使用され得る。20個以上の炭素を有する置換基を使用してよく、3~20個の炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する材料は、対称構造を有するものよりも良好な溶液プロセス性を有し得、これは、非対称材料のほうが再結晶する傾向が低くなり得るからである。溶液プロセシングを受ける低分子の能力を増強するために、デンドリマー置換基が使用され得る。
【0110】
本開示の実施形態に従って製作されたデバイスは、バリア層を更に含んでいてよい。バリア層の1つの目的は、電極及び有機層を、水分、蒸気及び/又はガス等を含む環境における有害な種への損傷性暴露から保護することである。バリア層は、基板、電極の上、下若しくは隣に、又はエッジを含むデバイスの任意の他の部分の上に堆積し得る。バリア層は、単層又は多層を含んでいてよい。バリア層は、種々の公知の化学気相堆積技術によって形成され得、単相を有する組成物及び多相を有する組成物を含み得る。任意の適切な材料又は材料の組合せをバリア層に使用してよい。バリア層は、無機若しくは有機化合物又は両方を組み込み得る。好ましいバリア層は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,968,146号、PCT特許出願第PCT/US2007/023098号及び同第PCT/US2009/042829号において記述されている、ポリマー材料及び非ポリマー材料の混合物を含む。「混合物」とみなされるためには、バリア層を含む前記のポリマー及び非ポリマー材料は、同じ反応条件下で及び/又は同時に堆積されるべきである。非ポリマー材料に対するポリマー材料の重量比は、95:5から5:95の範囲内となり得る。ポリマー材料及び非ポリマー材料は、同じ前駆体材料から作製され得る。一例において、ポリマー材料及び非ポリマー材料の混合物は、ポリマーケイ素及び無機ケイ素から本質的になる。
【0111】
本明細書において記述されている種々の実施形態は、単なる一例としてのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解される。例えば、本明細書において記述されている材料及び構造の多くは、本発明の趣旨から逸脱することなく他の材料及び構造に置き換えることができる。したがって、特許請求されている通りの本発明は、当業者には明らかとなるように、本明細書において記述されている特定の例及び好ましい実施形態からの変形形態を含み得る。なぜ本発明が作用するのかについての種々の理論は限定を意図するものではないことが理解される。
【符号の説明】
【0112】
100 有機発光デバイス
110 基板
115 アノード
120 正孔注入層
125 正孔輸送層
130 電子ブロッキング層
135 発光層
140 正孔ブロッキング層
145 電子輸送層
150 電子注入層
155 保護層
160 カソード
162 第1の導電層
164 第2の導電層
170 バリア層
200 反転させたOLED、デバイス
210 基板
215 カソード
220 発光層
225 正孔輸送層
230 アノード