(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】光コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20240514BHJP
G02B 6/36 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G02B6/42
G02B6/36
(21)【出願番号】P 2020074130
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀山 勲
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-309923(JP,A)
【文献】特開2001-194558(JP,A)
【文献】特開2007-256798(JP,A)
【文献】特開2008-292676(JP,A)
【文献】実開昭64-020750(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0372937(US,A1)
【文献】特開2003-227968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/36-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバに接続された第1光コネクタと、光電素子を有する第2光コネクタと、を備え、前記第1光コネクタと前記第2光コネクタとを接合させることにより、前記光ファイバと前記光電素子とを光通信させる光コネクタ装置であって、
前記第1光コネクタは、第1ハウジングと、前記光ファイバの端部に固定され、前記第1ハウジング内に収容されるフェルールと、を備え、
前記第2光コネクタは、前記第1ハウジングが嵌合される第2ハウジングと、両端にレンズ面を有し、一端側のレンズ面が前記光電素子に対向配置されて前記第2ハウジングに収容された弾性導光部材と、を備え、
前記弾性導光部材は、導光性を有する弾性材料から形成され、前記第1光コネクタと前記第2光コネクタとの接合状態において、他端側の前記レンズ面に前記フェルールの先端面で露出した前記光ファイバ
における光ファイバ芯線の端面が密着され
、他端側の前記レンズ面が密着している前記光ファイバ芯線の端面の変位に追従して弾性変形及び撓み変形する、
ことを特徴とする光コネクタ装置。
【請求項2】
前記弾性導光部材には、他端側の前記レンズ面の周囲を囲う円筒状突出部が形成され、
前記第1光コネクタと前記第2光コネクタとの接合状態において、前記フェルールの先端部分が前記円筒状突出部の内周側に配置され、
前記弾性導光部材には、一端側の前記レンズ面の周囲を囲う円筒状周壁部が形成され、
前記第1光コネクタと前記第2光コネクタとの接合状態において、前記光電素子が前記円筒状周壁部の内側に収容される、
ことを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ装置。
【請求項3】
前記光電素子は、レーザ光を発する面発光型半導体レーザ素子からなる発光素子である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光コネクタ装置。
【請求項4】
前記光電素子は、光信号を電気信号に変換するフォトダイオードからなる受光素子である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光コネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野で用いられる光コネクタ装置は、雄型コネクタと雌型コネクタとを有する。そして、これらを接合させることによって、雄型コネクタに接続された一対の光ファイバと、雌型コネクタに設けられたFOT(Fiber Optic Transceiver)とが光学的に接続されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この光コネクタ(光コネクタ装置)の雌型コネクタは、FOTの発光素子及び受光素子に対向配置されたレンズユニット(導光部材)を備えている。そして、この光コネクタでは、雌型コネクタと雄型コネクタとを接合させた状態において、透明樹脂により一体成形されたレンズユニットを通して光ファイバとFOTとの間で光伝送が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、雌型コネクタに雄型コネクタを接合させる光コネクタ装置では、これらの雌型コネクタと雄型コネクタとの間のガタつきによって光ファイバの光軸とレンズユニットの光軸との間にズレが生じるおそれがある。特に、光コネクタ装置を車両に搭載した場合、車両の走行時に付与される振動等によって光ファイバとレンズユニットとの光軸のズレが生じやすく、光損失が発生して光伝送性能が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、光ファイバと導光部材のレンズ面との光軸のズレの発生が抑えられて高い光伝送性能で光伝送が可能な光コネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 光ファイバに接続された第1光コネクタと、光電素子を有する第2光コネクタと、を備え、前記第1光コネクタと前記第2光コネクタとを接合させることにより、前記光ファイバと前記光電素子とを光通信させる光コネクタ装置であって、
前記第1光コネクタは、第1ハウジングと、前記光ファイバの端部に固定され、前記第1ハウジング内に収容されるフェルールと、を備え、
前記第2光コネクタは、前記第1ハウジングが嵌合される第2ハウジングと、両端にレンズ面を有し、一端側のレンズ面が前記光電素子に対向配置されて前記第2ハウジングに収容された弾性導光部材と、を備え、
前記弾性導光部材は、導光性を有する弾性材料から形成され、前記第1光コネクタと前記第2光コネクタとの接合状態において、他端側の前記レンズ面に前記フェルールの先端面で露出した前記光ファイバにおける光ファイバ芯線の端面が密着され、他端側の前記レンズ面が密着している前記光ファイバ芯線の端面の変位に追従して弾性変形及び撓み変形する、ことを特徴とする光コネクタ装置。
【0007】
上記(1)の構成の光コネクタ装置によれば、導光性を有する弾性材料から形成された弾性導光部材の他端側のレンズ面には、光ファイバの端面が密着される。そして、弾性を有する導光部材である弾性導光部材の他端側は、レンズ面が密着している光ファイバの端面の変位に追従して弾性変形及び撓み変形することができる。したがって、第1光コネクタと第2光コネクタとの間にガタつきがあったり、搭載した車両の走行時に振動が付与されたりしても、光ファイバと弾性導光部材のレンズ面との光軸のズレを抑えることができる。これにより、光ファイバと弾性導光部材との間での光損失を抑え、高い光伝送性能で光伝送が可能である。
【0008】
(2) 前記弾性導光部材には、他端側の前記レンズ面の周囲を囲う円筒状突出部が形成され、
前記第1光コネクタと前記第2光コネクタとの接合状態において、前記フェルールの先端部分が前記円筒状突出部の内周側に配置され、
前記弾性導光部材には、一端側の前記レンズ面の周囲を囲う円筒状周壁部が形成され、
前記第1光コネクタと前記第2光コネクタとの接合状態において、前記光電素子が前記円筒状周壁部の内側に収容される、
ことを特徴とする上記(1)に記載の光コネクタ装置。
【0009】
上記(2)の構成の光コネクタ装置によれば、フェルールの先端部分が、弾性導光部材における他端側のレンズ面の周囲を囲う円筒状突出部の内周側に配置される。したがって、光ファイバと弾性導光部材のレンズ面との光軸のズレをさらに良好に抑えることができる。
【0010】
(3) 前記光電素子は、レーザ光を発する面発光型半導体レーザ素子からなる発光素子である、ことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の光コネクタ装置。
【0011】
上記(3)の構成の光コネクタ装置によれば、面発光型半導体レーザ素子からなる発光素子から発したレーザ光を、弾性導光部材を通して光ファイバへ良好に伝送させることができる。
【0012】
(4) 前記光電素子は、光信号を電気信号に変換するフォトダイオードからなる受光素子である、ことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の光コネクタ装置。
【0013】
上記(4)の構成の光コネクタ装置によれば、光ファイバからの光信号を、弾性導光部材を通してフォトダイオードからなる受光素子へ良好に伝送させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光ファイバと導光部材のレンズ面との光軸のズレの発生が抑えられて高い光伝送性能で光伝送が可能な光コネクタ装置を提供できる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光コネクタ装置の斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る光コネクタ装置の平面図である。
【
図3】本実施形態に係る光コネクタ装置の側面図である。
【
図8】第2光コネクタの後方側からの斜視図である。
【
図9】第2光コネクタの前方側からの斜視図である。
【
図10】接合前の光コネクタ装置の
図3におけるA-A断面相当図である。
【
図11】接合前の光コネクタ装置の
図2におけるB-B断面相当図である。
【
図12】第1光コネクタと第2光コネクタとの接合状態における弾性導光部材の状態を示す図であって、(a)及び(b)は、それぞれ光ファイバ及び弾性導光部材の光軸に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る光コネクタ装置100の斜視図である。
図2は、本実施形態に係る光コネクタ装置100の平面図である。
図3は、本実施形態に係る光コネクタ装置100の側面図である。
図4は、
図3におけるA-A断面図である。
図5は、
図2におけるB-B断面図である。
図6は、
図2におけるC-C断面図である。
【0018】
図1~
図6に示すように、本実施形態に係る光コネクタ装置100は、雄型光コネクタである第1光コネクタ10と、雌型光コネクタである第2光コネクタ50とから構成されている。第2光コネクタ50は、例えば、車両に搭載される車載機器の筐体1に組付けられる。第1光コネクタ10と第2光コネクタ50とは、互いに接合される。これにより、この第1光コネクタ10と第2光コネクタ50との光通信が可能となる。
【0019】
図7は、第1光コネクタ10の分解斜視図である。
図7に示すように、第1光コネクタ10は、一対の光ファイバ13と、これらの光ファイバ13の端部に組付けられたフェルール14と、フェルール14が組付けられた光ファイバ13の端部に接続されるオスハウジング(第1ハウジング)15と、フェルール14をオスハウジング15に保持させるホルダ16とを有している。
【0020】
オスハウジング15は、電気絶縁性の合成樹脂から成形されている。オスハウジング15は、
図5及び
図6に示すように、その先端が嵌合部17とされており、この嵌合部17が第2光コネクタ50に嵌合される。オスハウジング15には、その底部に、装着窓18が形成されており、この装着窓18にホルダ16が組付けられる。また、オスハウジング15には、その両側部に、組付孔19が形成されている。
【0021】
オスハウジング15は、装着窓18と反対側の上部に、ロック爪21を有するロックアーム22が形成されている。ロックアーム22は、オスハウジング15の先端側に連設されている。このロックアーム22は、オスハウジング15との連設側からオスハウジング15の後端側へ延在されている。
【0022】
オスハウジング15には、
図4に示すように、二つのフェルール収容室25が形成されており、これらのフェルール収容室25には、後方側からフェルール14が挿し込まれる。また、オスハウジング15には、フェルール収容室25側へ突出する係止爪27が形成されている。フェルール14には、複数のフランジ26が軸方向に間隔をあけて形成されている。これにより、フェルール収容室25へフェルール14を挿し込むことにより、フェルール14の先端側のフランジ26が係止爪27に係止され、フェルール14が抜け止めされる。
【0023】
ホルダ16には、複数の係止部28が間隔をあけて形成されている。また、ホルダ16には、その両側部に、組付爪29が形成されている。ホルダ16は、オスハウジング15の装着窓18に嵌め込まれる。装着窓18にホルダ16が嵌め込まれると、ホルダ16の組付爪29がオスハウジング15の組付孔19に係止される。これにより、ホルダ16がオスハウジング15に装着される(
図4参照)。
【0024】
ホルダ16がオスハウジング15に装着されると、ホルダ16の係止部28がフェルール収容室25に挿し込まれたフェルール14のフランジ26を係止する。これにより、フェルール14は、オスハウジング15の係止爪27とともにホルダ16の係止部28によって係止され、オスハウジング15のフェルール収容室25に挿し込まれた状態で保持される(
図4参照)。
【0025】
図4及び
図5に示すように、光ファイバ13は、コア31とクラッド32とからなる光ファイバ芯線33を有している。光ファイバ芯線33は、その外周が外被34によって覆われている。光ファイバ13は、フェルール14が組付けられる端部において外被34から光ファイバ芯線33が露出されている。フェルール14には、ファイバ挿通孔35が形成されており、このファイバ挿通孔35には、外被34から露出された光ファイバ芯線33の端部が挿し込まれて固定されている。ファイバ挿通孔35に挿し込まれた光ファイバ芯線33は、その端面33aがフェルール14の先端面36に達している。なお、光ファイバ芯線33の端面33aは、フェルール14の先端面36から僅かに引き込んだ位置に配置されていてもよい。フェルール14は、その先端側が小径に形成された接続部37とされている。この接続部37は、その先端部分にテーパ部38を有している。
【0026】
図8は、第2光コネクタ50の後方側からの斜視図である。
図9は、第2光コネクタ50の前方側からの斜視図である。
図8及び
図9に示すように、第2光コネクタ50は、メスハウジング(第2ハウジング)51と、一対の弾性導光部材53と、FOT(Fiber Optic Transceiver)基板55と、を備えている。
【0027】
メスハウジング51は、電気絶縁性の合成樹脂から成形された箱状の部材である。メスハウジング51には、
図8に示すように、その後端側から、弾性導光部材53及びFOT基板55が順に組み付けられる。メスハウジング51には、その後端側に、ボルト挿通孔60を有するフランジ部61が外周側へ張り出すように形成されている。第2光コネクタ50は、フランジ部61のボルト挿通孔60にボルト(図示略)を挿し込み、このボルトを車載機器の筐体1に形成されたボルト孔へねじ込むことにより筐体1に固定される。
【0028】
メスハウジング51には、
図9に示すように、前端側に嵌合凹部62が形成されている。この嵌合凹部62には、第1光コネクタ10の嵌合部17が嵌合される。この嵌合凹部62の内面には、係止突起63が形成されている(
図6参照)。
【0029】
メスハウジング51は、後端側に、基板収容凹部64及びレンズ収容凹部65が順に形成されている。また、メスハウジング51には、嵌合凹部62内に突出する一対の嵌合筒部66が形成されている(
図4及び
図5参照)。これらの嵌合筒部66には、先端側からフェルール嵌合孔67及びレンズ係合孔68が順に形成されている。また、メスハウジング51には、レンズ係合孔68の縁部における互いに対向位置に、係止凹部69が形成されている(
図5参照)。
【0030】
図4及び
図5に示すように、レンズ体である弾性導光部材53は、略円柱状に形成されている。弾性導光部材53は、導光性を有する弾性材料から形成されている。弾性導光部材53の材料としては、例えば、透明なシリコン樹脂等が用いられる。弾性導光部材53には、一端側に、素子側レンズ面(一端側のレンズ面)75及び円筒状周壁部76が形成されている。素子側レンズ面75は、外方へ膨出する半球面状に形成されている。円筒状周壁部76は、素子側レンズ面75の周囲を囲うように形成されており、素子側レンズ面75よりも突出されている。また、弾性導光部材53には、その周面に、互いに反対側へ突出する係止片78が形成されている。また、弾性導光部材53は、他端側に、ファイバ側レンズ面71(他端側のレンズ面)及び円筒状突出部72が形成されている。ファイバ側レンズ面71は、外方へ膨出する半球面状に形成されている。円筒状突出部72は、ファイバ側レンズ面71の周囲を囲うように形成されており、その突出寸法は、ファイバ側レンズ面71の突出寸法以上とされている。(
図5参照)。
【0031】
FOT基板55は、回路基板80と、発光素子81A及び受光素子81Bとを有している。回路基板80は、プリント配線板からなるもので、この回路基板80に、発光素子81A及び受光素子81Bが互いに間隔をあけて実装されている。これらの発光素子81A及び受光素子81Bは、メスハウジング51の嵌合筒部66同士の間隔と同一間隔で配置されている。
【0032】
回路基板80には、発光素子81A及び受光素子81Bを囲うように、円筒状壁部82がそれぞれ設けられている。なお、回路基板80には、光電変換回路を構成する電子部品(図示略)が実装されており、発光素子81A及び受光素子81Bが光電変換回路に対して電気的に接続されている。
【0033】
発光素子81Aは、例えば、面発光型半導体レーザ素子(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)などの光電素子であり、受光素子81Bは、例えば、フォトダイオード(PD:Photo Diode)などの光電素子である。なお、発光素子81Aとしては、LED(Light Emitting Diode)なども用いることができる。
【0034】
メスハウジング51には、その後端側から一対の弾性導光部材53及びFOT基板55が装着される。弾性導光部材53は、嵌合筒部66のレンズ係合孔68へ、ファイバ側レンズ面71及び円筒状突出部72を有する他端側から挿し込まれる。そして、弾性導光部材53の係止片78がレンズ係合孔68の縁部に形成された係止凹部69に係合される。これにより、弾性導光部材53がメスハウジング51に装着され、素子側レンズ面75及び円筒状周壁部76を有する他端側がレンズ収容凹部65に配置される。なお、弾性導光部材53は、レンズ係合孔68に対して、周囲に僅かなクリアランスをあけて係合される。
【0035】
FOT基板55は、発光素子81A及び受光素子81Bの実装面をメスハウジング51に向けて基板収容凹部64へ嵌め込む。このFOT基板55は、例えば、メスハウジング51に対して、接着材による接着固定、ネジ止め固定などの各種の固定構造によって固定される。
【0036】
FOT基板55がメスハウジング51に装着されると、一方の弾性導光部材53の円筒状周壁部76の内側に、発光素子81A及び円筒状壁部82が収容され、他方の弾性導光部材53の円筒状周壁部76の内側に、受光素子81B及び円筒状壁部86が収容される。そして、この状態において、一方の弾性導光部材53の素子側レンズ面75と発光素子81Aとが互いに対向した位置に配置され、他方の弾性導光部材53の素子側レンズ面75と受光素子81Bとが互いに対向した位置に配置される。
【0037】
次に、第1光コネクタ10と第2光コネクタ50とを接合させる場合について説明する。
図10は、接合前の光コネクタ装置100の
図3におけるA-A断面相当図である。
図11は、接合前の光コネクタ装置100の
図2におけるB-B断面相当図である。
【0038】
図10及び
図11に示すように、第2光コネクタ50から離間した第1光コネクタ10が第2光コネクタ50へ向かって(
図10及び
図11における矢印A方向)へ近接される。そして、第2光コネクタ50のメスハウジング51の嵌合凹部62に第1光コネクタ10の嵌合部17が嵌合される。
【0039】
すると、
図4及び
図5に示すように、第2光コネクタ50の嵌合筒部66が第1光コネクタ10のフェルール収容室25へ嵌合するとともに、フェルール14の接続部37が嵌合筒部66のフェルール嵌合孔67に嵌合する。
【0040】
この嵌合状態において、第1光コネクタ10のオスハウジング15に形成されたロックアーム22のロック爪21が、第2光コネクタ50のメスハウジング51に形成された係止突起63に係止される。これにより、第2光コネクタ50に第1光コネクタ10が嵌合された状態でロックされる(
図6参照)。
【0041】
このように、第2光コネクタ50に第1光コネクタ10が接合されると、フェルール14の先端部分が弾性導光部材53の円筒状突出部72の内周側に入り込む。このとき、フェルール14の先端部分には、テーパ部38が設けられているので、このテーパ部38によってフェルール14の先端部分が円筒状突出部72の内周側へ円滑に案内される。
【0042】
そして、フェルール14の先端部分で露出された光ファイバ芯線33の端面33aが、弾性導光部材53のファイバ側レンズ面71の対向位置に配置されるとともに、ファイバ側レンズ面71に密着される。この光ファイバ13における光ファイバ芯線33の端面33aとファイバ側レンズ面71との密着とは、ファイバ側レンズ面71が弾性変形することにより、光ファイバ芯線33の端面33aとファイバ側レンズ面71とが面接触した状態に限らない。例えば、光ファイバ芯線33の端面33aとファイバ側レンズ面71とが僅かに点接触した状態でもよい。また、フェルール14の先端面36に対して光ファイバ芯線33の端面33aが引っ込んでいる場合、光ファイバ芯線33の端面33aとともにフェルール14の先端面36がファイバ側レンズ面71に接触してもよい。
【0043】
本実施形態の光コネクタ装置100では、第1光コネクタ10と第2光コネクタ50との嵌合状態において、発光素子81Aで電気信号から変換されて発生した光信号は、弾性導光部材53へ素子側レンズ面75から入射する。そして、この弾性導光部材53へ入射した光信号は、ファイバ側レンズ面71から出射し、第1光コネクタ10の一方の光ファイバ13における光ファイバ芯線33の端面33aからコア31に入射されて光伝送される。また、第1光コネクタ10の他方の光ファイバ13の光ファイバ芯線33の端面33aから出射した光信号は、弾性導光部材53へファイバ側レンズ面71から入射する。そして、この弾性導光部材53へ入射した光信号は、素子側レンズ面75から出射し、受光素子81Bで受光されて電気信号に変換される。
【0044】
ところで、第1光コネクタ10と第2光コネクタ50とは、
図12の(a)に示すように、互いに接合した状態において、光ファイバ13の光軸XAと、弾性導光部材53の光軸XBとが一致することが望ましい。
【0045】
しかしながら、第1光コネクタ10と第2光コネクタ50との間におけるガタつきによって光軸XAと光軸XBにズレが生じるおそれがある。第1光コネクタ10及び第2光コネクタ50におけるガタつきは、例えば、第1光コネクタ10におけるフェルール14の組付けガタ、第2光コネクタ50における弾性導光部材53の組付けガタ、第1光コネクタ10のオスハウジング15及び第2光コネクタ50のメスハウジング51同士の嵌合ガタ等がある。このような光軸XA,XBのズレは、搭載した車両の走行時に付与される振動等によっても生じるおそれがある。そして、この光軸XAと光軸XBにズレが生じると、光ファイバ13と弾性導光部材53との間で光損失が生じ、光伝送性能が低下するおそれがある。
【0046】
本実施形態に係る光コネクタ装置100では、導光性を有する弾性材料から形成された弾性導光部材53のファイバ側レンズ面71には、光ファイバ13における光ファイバ芯線33の端面33aが密着されている。
【0047】
そして、弾性を有する導光部材である弾性導光部材53の他端側(
図12中、上端側)は、ファイバ側レンズ面71が密着している光ファイバ芯線33の端面33aの変位に追従して弾性変形及び撓み変形することができる。したがって、第1光コネクタ10と第2光コネクタ50とが互いに接合した状態において、これらの第1光コネクタ10と第2光コネクタ50との間にガタつきがあったり、搭載した車両の走行時に振動が付与されたりしても、
図12の(b)に示すように、弾性導光部材53が弾性変形することにより、ガタつきや振動が吸収される。そして、光ファイバ芯線33の端面33aとファイバ側レンズ面71との密着箇所では、摩擦力によって、それぞれの光軸XAと光軸XBとの軸心ズレが抑えられる。これにより、光ファイバ13と弾性導光部材53との間での光損失を抑え、高い光伝送性能で光伝送が可能である。
【0048】
また、弾性導光部材53が撓み変形することにより、弾性導光部材53のファイバ側レンズ面71の光軸XBと素子側レンズ面75の光軸XCとに軸心ズレが生じても、ファイバ側レンズ面71または素子側レンズ面75から入射した光は、弾性導光部材53の内部を通過して素子側レンズ面75またはファイバ側レンズ面71へ導光される。したがって、弾性導光部材53のファイバ側レンズ面71の光軸XBと素子側レンズ面75の光軸XCとの軸心ズレによる伝送損失はほとんど生じることはない。
【0049】
また、弾性導光部材53には、ファイバ側レンズ面71の周囲を囲う円筒状突出部72が形成されている。そこで、フェルール14の先端部分が、この円筒状突出部72の内周側に配置される。したがって、光ファイバ13の光軸XAと弾性導光部材53のファイバ側レンズ面71の光軸XBとの軸心ズレをさらに良好に抑えることができる。
【0050】
そして、本実施形態の光コネクタ装置100によれば、例えば、面発光型半導体レーザ素子からなる発光素子81Aから発したレーザ光を、弾性導光部材53を通して光ファイバ13へ良好に伝送させることができる。また、光ファイバ13からの光信号を、弾性導光部材53を通してフォトダイオードからなる受光素子81Bへ良好に伝送させることができる。
【0051】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0052】
ここで、上述した本発明に係る光コネクタ装置の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 光ファイバ(13)に接続された第1光コネクタ(10)と、光電素子(発光素子81A,受光素子81B)を有する第2光コネクタ(50)と、を備え、前記第1光コネクタ(10)と前記第2光コネクタ(50)とを接合させることにより、前記光ファイバ13と前記光電素子(発光素子81A,受光素子81B)とを光通信させる光コネクタ装置(100)であって、
前記第1光コネクタ(10)は、第1ハウジング(オスハウジング15)と、前記光ファイバ(13)の端部に固定され、前記第1ハウジング(オスハウジング15)内に収容されるフェルール(14)と、を備え、
前記第2光コネクタ(50)は、前記第1ハウジング(オスハウジング15)が嵌合される第2ハウジング(メスハウジング51)と、両端にレンズ面(ファイバ側レンズ面71,素子側レンズ面75)を有し、一端側のレンズ面(素子側レンズ面75)が前記光電素子(発光素子81A,受光素子81B)に対向配置されて前記第2ハウジング(メスハウジング51)に収容された弾性導光部材(53)と、を備え、
前記弾性導光部材(53)は、導光性を有する弾性材料から形成され、前記第1光コネクタ(10)と前記第2光コネクタ(50)との接合状態において、他端側の前記レンズ面(ファイバ側レンズ面71)に前記フェルール(14)の先端面(36)で露出した前記光ファイバ(13)の端面(33a)が密着される、ことを特徴とする光コネクタ装置。
[2] 前記弾性導光部材(53)には、他端側の前記レンズ面(ファイバ側レンズ面71)の周囲を囲う円筒状突出部(72)が形成され、
前記第1光コネクタ(10)と前記第2光コネクタ(50)との接合状態において、前記フェルール(14)の先端部分が前記円筒状突出部(72)の内周側に配置される、ことを特徴とする上記[1]に記載の光コネクタ装置。
[3] 前記光電素子は、レーザ光を発する面発光型半導体レーザ素子からなる発光素子(81A)である、ことを特徴とする上記[1]または[2]に記載の光コネクタ装置。
[4] 前記光電素子は、光信号を電気信号に変換するフォトダイオードからなる受光素子(81B)である、ことを特徴とする上記[1]または[2]に記載の光コネクタ装置。
【符号の説明】
【0053】
10…第1光コネクタ
13…光ファイバ
14…フェルール
15…オスハウジング(第1ハウジング)
33…光ファイバ芯線
33a…端面
36…先端面
50…第2光コネクタ
51…メスハウジング(第2ハウジング)
53…弾性導光部材
71…ファイバ側レンズ面(他端側のレンズ面)
72…円筒状突出部
75…素子側レンズ面(一端側のレンズ面)
81A…発光素子(光電素子)
81B…受光素子(光電素子)
100…光コネクタ装置