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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】可動式ホーム柵
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20240514BHJP
   E05F 15/643 20150101ALI20240514BHJP
【FI】
B61B1/02
E05F15/643
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020081950
(22)【出願日】2020-05-07
(65)【公開番号】P2021176720
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 仁志
(72)【発明者】
【氏名】中島 秀人
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-11673(JP,A)
【文献】実開昭63-129076(JP,U)
【文献】特開平9-125801(JP,A)
【文献】特開2012-245840(JP,A)
【文献】岡松史明,津田雅史,楊鵬,“「どこでも柵TM」の開発”,神戸製鋼技報,日本,株式会社神戸製鋼所,2015年04月14日,第65巻・第1号,pp.80-83,ISSN 2188-0913(online),0373-8868(print)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02,
E05F 15/40,15/632,
E06B 3/46,
E01F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸袋部に設けられ、可動扉の上部に当接する上方ローラと、
前記戸袋部に設けられ、前記可動扉の下部に当接する下方ローラと、
前記上方ローラ及び前記下方ローラのうちの前記可動扉の荷重を受けるローラである一方のローラを支持するローラ支持部と、
カムリフト方向を上下とするカム面で前記ローラ支持部を支持する回転カムを有するローラ位置調整カム部と、
前記上方ローラ及び前記下方ローラのうちの前記可動扉に対して下方に向けて接触するローラである他方のローラを下方に付勢することで前記可動扉を下方に向けて弾性的に付勢する付勢部と、
を備え、前記付勢部により前記可動扉が下方に付勢された状態で前記回転カムの回転調整が可能な可動式ホーム柵。
【請求項2】
前記他方のローラは、前記上方ローラであり、
2つ以上の前記上方ローラを備え、
前記付勢部は、前記上方ローラ毎に設けられている、
請求項に記載の可動式ホーム柵。
【請求項3】
戸袋部に設けられ、可動扉の上部に当接する上方ローラと、
前記戸袋部に設けられ、前記可動扉の下部に当接する下方ローラと、
前記下方ローラを支持するローラ支持部と、
カムリフト方向を上下とするカム面で前記ローラ支持部を支持する回転カムを有するローラ位置調整カム部と、
を備える可動式ホーム柵であって、
2つ以上の前記下方ローラを1組とした複数組を備え、
前記ローラ支持部及び前記ローラ位置調整カム部は、前記下方ローラの組毎に設けられている、
可動式ホーム柵
【請求項4】
前記ローラ位置調整カム部は、前記下方ローラの組毎に、当該組に含まれる最も戸先側の下方ローラと最も戸尻側の下方ローラとの間の位置で、前記ローラ支持部を支持する、
請求項に記載の可動式ホーム柵。
【請求項5】
戸袋部に設けられ、可動扉の上部に当接する上方ローラと、
前記戸袋部に設けられ、前記可動扉の下部に当接する下方ローラと、
前記上方ローラ及び前記下方ローラのうちの一方を支持するローラ支持部と、
カムリフト方向を上下とするカム面で前記ローラ支持部を支持する回転カムを有するローラ位置調整カム部と、
を備え
前記ローラ位置調整カム部は、
前記回転カムのカム軸受部と、
前記回転カムの偏心円筒部を貫通し、前記回転カムと前記ローラ支持部との間で前記カム軸受部を挟んで前記ローラ支持部に螺合する軸固定ボルトと、
を有し、前記軸固定ボルトを緩めることで前記回転カムの軸固定が緩解されて回転可能となり、前記軸固定ボルトを締めることで前記回転カムが軸固定されて前記戸袋部に対する固定角度が決定される、
可動式ホーム柵。
【請求項6】
前記ローラ支持部は、前記可動扉を進退方向と交差する方向で挟むようにして前記可動扉が挿通可能に配置された一対の延設部を有する、
請求項1~の何れか一項に記載の可動式ホーム柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動式ホーム柵に関する。
【背景技術】
【0002】
可動式ホーム柵は、鉄道駅のプラットホームに設置される安全設備であって、乗降客の線路への転落や走行列車との接触などの危険事象のリスクを低減する設備である。引戸型の可動式ホーム柵は、戸袋部に対して左右一方又は両方へ進退動する1枚又は2枚の可動扉を備えている。1つの乗降口に対して左側の可動扉と右側の可動扉とを突き合わせるようにして2台の可動式ホーム柵が設置される場合が多い。
【0003】
引戸型の可動式ホーム柵を設置する際には、戸袋部に対する可動扉の取り付け位置の調整が行われる。具体的には、乗降口を閉じた時(左右の可動扉を突き合わせた時)に、左右の可動扉の先端の突き合わせ位置にずれが生じないように、戸袋部に対する可動扉の位置及び姿勢を調整する。こうした可動扉の位置調整は、設置初期時のみならず、必要に応じて定期点検においても実施される。そのため、引戸型の可動式ホーム柵に、戸袋部に対する可動扉の位置調整のための構造を設けた技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-187954号公報
【文献】特開2016-210301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、開口幅が大きい引戸型の可動式ホーム柵への需要が増大する傾向にある。開口幅が大きくなると、必然的に可動扉も長尺化し重量も増す。従来の可動式ホーム柵では、作業員は、可動扉の位置を調整する間、可動扉を支え続けなければならないため、重量が増した開口幅が大きい引戸型の可動式ホーム柵では作業負担の増加が著しい。もっとも、開口幅の大きさに関わらず可動扉の位置調整は作業負担になっている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、戸袋部に対する可動扉の位置調整の作業性を向上させることができる技術を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の発明は、戸袋部に設けられ、可動扉の上部に当接する上方ローラと、前記戸袋部に設けられ、前記可動扉の下部に当接する下方ローラと、前記上方ローラ及び前記下方ローラのうちの一方を支持するローラ支持部と、カムリフト方向を上下とするカム面で前記ローラ支持部を支持する回転カムを有するローラ位置調整カム部と、を備える可動式ホーム柵である。
【0008】
第1の発明の可動式ホーム柵は、ローラ支持部の戸袋部に対する上下位置を、ローラ位置調整カム部のカムリフトによって調整することができる。そして、調整作業はローラ位置調整カム部の固定角度を変えることで実現される。可動扉の荷重は、調整作業中であろうとなかろうと、上方ローラ又は下方ローラ→ローラ位置調整カム部→戸袋部といった具合に伝達して支えられている。従って、作業員は、従来の可動式ホーム柵の位置調整のように、調整作業中、可動扉の荷重を支える必要がない。そのため、調整作業に係る負担が大幅に軽減し、作業性が向上する。
【0009】
第2の発明は、前記上方ローラ及び前記下方ローラのうちの他方を前記可動扉に向けて付勢する付勢部、を備える第1の発明の可動式ホーム柵である。
【0010】
第2の発明の可動式ホーム柵は、可動扉の調整にともなって可動扉と戸袋部との相対角度に変化が生じても、上方ローラ及び下方ローラのうちの他方のローラが自動的に位置を変化させて可動扉を弾性的に押し続ける。可動扉と戸袋部との相対角度の変化が自動的に吸収され、ローラと戸袋部の当接が適切に保たれる。つまり、一方のローラに係る調整作業に伴う他方のローラについての調整作業は不要となり、作業性が向上する。
【0011】
第3の発明は、前記他方が、前記上方ローラであり、2つ以上の前記上方ローラを備え、前記付勢部は、前記上方ローラ毎に設けられている、第2の発明の可動式ホーム柵である。
【0012】
第3の発明の可動式ホーム柵は、可動扉を複数の上方ローラで弾性的に継続的に押した状態を維持するので、可動扉の進退動にともなうガタツキを効果的に抑制する。
【0013】
第4の発明は、前記一方が、前記下方ローラであり、2つ以上の前記下方ローラを1組とした複数組を備え、前記ローラ支持部及び前記ローラ位置調整カム部は、前記下方ローラの組毎に設けられている、第1~第3の何れかの発明の可動式ホーム柵である。
【0014】
第4の発明の可動式ホーム柵は、複数のローラそれぞれが可動扉に接する複数の当接位置で可動扉の姿勢を維持するため、可動扉の進退動を安定させることができる。また、ローラが受ける荷重を分担することができるため、ローラの損耗を低減し、ローラの寿命を延ばすことができる。
【0015】
第5の発明は、前記ローラ位置調整カム部が、前記下方ローラの組毎に、当該組に含まれる最も戸先側の下方ローラと最も戸尻側の下方ローラとの間の位置で、前記ローラ支持部を支持する、第4の発明の可動式ホーム柵である。
【0016】
第5の発明の可動式ホーム柵では、ローラ支持部は、同一組の複数の下方ローラのうちの最も戸先側の下方ローラと最も戸尻側の下方ローラとの間でローラ位置調整カム部に当接する。従って、可動扉の開閉動作に伴う外力がローラ支持部及びローラ位置調整カム部に与える影響を低減することができ、調整後の状態を長く保つことができる。
【0017】
第6の発明は、前記ローラ位置調整カム部が、前記回転カムのカム軸受部と、前記回転カムの偏心円筒部を貫通し、前記回転カムと前記ローラ支持部との間で前記カム軸受部を挟んで前記ローラ支持部に螺合する軸固定ボルトと、を有し、前記軸固定ボルトを緩めることで前記回転カムの軸固定が緩解されて回転可能となり、前記軸固定ボルトを締めることで前記回転カムが軸固定されて前記戸袋部に対する固定角度が決定される、第1~第5の何れかの発明の可動式ホーム柵である。
【0018】
第6の発明では、ローラ位置調整カム部は、回転カムの偏心円筒部を貫通する軸固定ボルトが、回転カムとローラ支持部との間でカム軸受部を挟んでローラ支持部に螺合する。作業員は、軸固定ボルトを締める/緩めることで、カム軸受部を挟む力を強める/弱めることができ、回転カムの回転不能(軸固定の状態)と回転可能(軸可動の状態)とを切り換えることができる。つまり、軸固定ボルトは、連結部品と回転調整用部品との兼用の作用効果を奏し、可動式ホーム柵の構成部品点数および重量の削減に寄与する。
【0019】
第7の発明は、前記ローラ支持部が、前記可動扉を進退方向と交差する方向で挟むようにして前記可動扉が挿通可能に配置された一対の延設部を有する、第1~第6の何れかの発明の可動式ホーム柵である。
【0020】
第7の発明の可動式ホーム柵は、可動扉の進退方向に交差する方向への可動扉のズレやブレを抑制することができる。つまり、可動扉の安定した進退動を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】可動式ホーム柵の内部構造の例を示す内部構造図。
図2】第1支持案内部の構成例を示す斜視外観図。
図3】第1支持案内部の構成例を示す縦断面図。
図4】第2支持案内部の構成例を示す、第2支持案内部の周りを拡大した斜視図。
図5】第2支持案内部の構成例を示す分解斜視図。
図6】第2支持案内部の構成例を示す前後方向縦断面の図(図8の最低位置と同状態における回転カム部周りの前後方向の縦断面図)。
図7】調整作業時の工具の使い方を示す図。
図8】第2支持案内部が戸袋部に対して最高位置に調整された状態と、最低位置に調整された状態との比較正面図。
図9】回転カム周りの前後方向の縦断面図であって、第2支持案内部が戸袋部に対して最高位置に調整された状態と、最低位置に調整された状態との比較図。
図10】可動式ホーム柵の内部構造の第1の変形例を示す第1支持案内部の周りを拡大した斜視図。
図11】可動式ホーム柵の内部構造の第1の変形例を示す第2支持案内部の周りを拡大した斜視図。
図12】可動式ホーム柵の内部構造の第2の変形例を示す内部構造図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態の例を説明するが、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限られないことは勿論である。各図には、便宜上の直交3軸を示す。この直交3軸は、可動扉の進退方向(すなわち乗降口開閉に伴う移動方向。戸先・戸尻を付して示す。)と、上下と、プラットホーム側を前とし線路側を後とする前後方向と、を示す。
【0023】
図1は、プラットホーム側から見た可動式ホーム柵の内部構造の例を示す内部構造図であって、戸袋部に対する可動扉の支持構造周りについて示している。なお、理解を容易にするために一部の部品(例えば、戸袋部を覆うケース、駆動機構、制御機構、など)の図示を省略している。
【0024】
可動式ホーム柵3は、引戸型の可動扉4を、プラットホームから線路側を見て戸袋部6の左方へ進退させて開閉する左ドアタイプである。なお、右ドアタイプを実現するには、可動式ホーム柵3と左右反転した構成を用いるものとする。
【0025】
可動扉4は、外枠に相当するフレーム42に、通過阻止材44(例えば、透明樹脂パネルや透明ガラス、格子、ネット、バーなど。図1では透明樹脂パネルとして図示。)を取り付けてドアパネルが形成される。可動扉4の上面および下面にはフレーム42が露出している。
【0026】
そして、可動扉4は、戸袋部6が内蔵する駆動機構5と連結されている。
駆動機構5は、電動モータ(図示略)、電動モータで駆動される駆動プーリ(図示略)と、従動プーリ54と、歯付ベルト56とを有する。歯付ベルト56は、駆動プーリと従動プーリ54との間に架け渡されることで、可動扉4の進退方向(図1に向かって左右方向)に沿って円環状に張架されている。可動扉4は、ベルトクランプ58によって歯付ベルト56と連結されている。図1の例では、ベルトクランプ58は、プラットホーム側から見てフレーム42に設けられた扉連結部43に固定されている。
【0027】
可動扉4は、戸袋部6に設けられた第1支持案内部7および第2支持案内部8によって上下に挟むようにして支持され、進退方向へ案内される。
【0028】
図2は、第1支持案内部7の構成例を示す斜視外観図である。
図3は、第1支持案内部7の構成例を示す進退方向に沿った縦断面図である。
第1支持案内部7は、1つの可動扉4に対して2つ用意される。第1支持案内部7は、可動扉4の進退方向に沿って2つ並べて取り付けられており、それぞれが可動扉4を第2支持案内部8へ(下方へ)押しつけながら進退動可能に支持・案内する。
【0029】
1つの第1支持案内部7は、(1)戸袋部6の内部フレーム62にボルト固定される基部71と、(2)基部71に軸72で上下揺動可能に支持された揺動片であって、V字状に2つの腕部を有する揺動片73と、(3)揺動片73の一方の腕に前後方向軸74で回転可能に支持された付勢ローラ75と、(4)揺動片73の他方の腕を基部71に対して付勢する付勢部76と、(5)案内延設部78と、を有する。
【0030】
付勢ローラ75は、可動扉4を下方へ向けて付勢するローラである。図1に示す構成では、付勢ローラ75は、可動扉4及び戸袋部6にとって上方にあるので「上方ローラ」となる。
【0031】
付勢部76は、六角ボルト76aと、球面ナット76bと、コイルスプリング76cと、を有する。六角ボルト76aは、基部71の貫通孔71hを挿通し、ボルト頭は貫通孔71hを挟んで揺動片73とは反対側にあり、貫通孔71hとの間にコイルスプリング76cを挟持している。六角ボルト76aのネジ側は、貫通孔71hの揺動片73側にあって、球面ナット76bで揺動片73の他方の腕に係合する。
【0032】
従って、付勢部76は、六角ボルト76a及び球面ナット76bを締める/緩めることで、コイルスプリング76cの圧縮を調整し、揺動片73へ与えるトルクを変化させる。コイルスプリング76cを圧縮すると、揺動片73には、付勢ローラ75を可動扉4のフレーム42へより強く押しつけるトルクが加えられる。
【0033】
案内延設部78は、基部71の前後の両下端それぞれから下方へ延設された二つの延設板部78aと、これら延設板部78aの対向面に固定された滑板78bと、を有する。二つの延設板部78aの間隔は、可動扉4の厚さすなわちフレーム42の幅(前後幅)よりも僅かに大きく設定されている。従って、可動扉4は、第1支持案内部7の付勢ローラ75の転動面からプラットホーム側や線路側の方向へ外れることはない。
【0034】
図4は、第2支持案内部8の構成例を示し、第2支持案内部8の周りを拡大した斜視図である。
図5は、第2支持案内部8の構成例を示す分解斜視図である。
図6は、第2支持案内部8の構成例を示す前後方向縦断面の図である。
【0035】
図4に示すように、第2支持案内部8は、1つの可動扉4に2つ用意される。第2支持案内部8は、可動扉4の下方に進退方向に並べて配置され、可動扉4のフレーム42を下方から支持し、進退動可能に案内する。
【0036】
図5に示すように1つの第2支持案内部8は、2つの荷重支持ローラ81と、2つの荷重支持ローラ81を可動扉4の進退方向の進出側と退行側とに並べて、進退方向に回転可能に(前後方向の軸で)軸支するローラ支持部82と、ローラ位置調整カム部83と、を有する。
【0037】
荷重支持ローラ81は、可動扉4のフレーム42に下方より接触して可動扉4の荷重を受ける部位である。図1の構成では、荷重支持ローラ81は、可動扉4及び戸袋部6の下方にあるので「下方ローラ」となる。
【0038】
ローラ位置調整カム部83は、回転カム84と、カム軸受部85と、軸固定ボルト86と、を有する。
【0039】
回転カム84は、
(1)カム軸受部85の軸受孔部85aと嵌合する円筒状であってその軸AXc(図6参照)がカムとしての軸となる回転軸部84aと、
(2)回転軸部84aの軸AXcから偏心した位置において後方へ突設された円筒部であって、その外周がカム面となる偏心円筒部84bと、
(3)前方側の端面に設けられたフランジ部84cと、
(4)偏心円筒部84bと同軸の軸AXb(図6参照)で軸固定ボルト86を挿通するボルト挿通孔84dと、
(5)フランジ部84cの外面に設けられ、回転カム84を回転させるための工具と係合するための工具穴84e(図示の例は、カニ目レンチ用或いはユニバーサルピンレンチ用の穴)と、を有する。
【0040】
カム軸受部85は、カムリフト方向を上下とする姿勢の回転カム84を回転可能に支持する。カム軸受部85は、軸受孔部85aと、軸受孔部85aを戸袋部6にボルト固定するための連結部85bと、軸受孔部85aの孔内に嵌着されたブッシュ85cと、を有する。
【0041】
回転カム84の回転軸部84aの軸方向の長さは、カム軸受部85の軸受孔部85aにブッシュ85cを嵌着した時の軸方向長さより僅かに大きく設定されている。
【0042】
軸固定ボルト86は、回転カム84を回転可能(軸可動の状態)と回転不能(軸固定の状態)とを切り換えるための操作対象部品である。軸固定ボルト86の長さは、回転カム84の軸方向長さよりも長く設定されている。
【0043】
ローラ支持部82は、2つの荷重支持ローラ81それぞれの軸の中間(最も戸先側の下方ローラと最も戸尻側の下方ローラとの間の位置)に、軸固定ボルト86のネジに対応した雌ネジ部82aと、偏心円筒部84bが嵌合する偏心円筒嵌合穴82bと、を同軸に有する。
【0044】
また、ローラ支持部82の進退方向の一端側には、2つの案内延設部87を有する。
2つの案内延設部87は、第1支持案内部7の2つの案内延設部78と同様の構成を有しており、同様の効果をもたらす。すなわち、案内延設部87は、ローラ支持部82の手前側と奥側の両端から上方へ延設された2つの延設板部87aと、これら延設板部87aの対向面に固定された滑板87bと、を有する。2つの延設板部87aの間隔は、可動扉4の厚さすなわちフレーム42の幅(手前側~奥側の幅)よりも僅かに大きく設定されている。従って、可動扉4は、第2支持案内部8の荷重支持ローラ81の転動面からプラットホーム側や線路側の方向へ外れることはない。
【0045】
第2支持案内部8(ローラ位置調整カム部83)の組み立ては、次の通りである(図6参照)。すなわち、作業員は、回転カム84をカム軸受部85へ挿入する。挿入された回転カム84は、そのフランジ部84cがカム軸受部85の挿入側端面に突き当たる位置で止まり、回転軸部84aがブッシュ85cを介して軸受孔部85a内に収まる。この状態になると、偏心円筒部84bは軸受孔部85aの後方側へつき抜けた状態となる。また、ブッシュ85cの軸方向の両端にあるフランジ部の一方は、フランジ部84cとカム軸受部85の挿入側端面とで挟まれ、他方はカム軸受部85とローラ支持部82との間に挟まれた状態となる。
【0046】
次に、作業員は、ローラ支持部82を、カム軸受部85の後ろ側から、後方側へつき抜けている偏心円筒部84bが偏心円筒嵌合穴82bへ嵌入するように組み付ける。そして、作業員は、ボルト挿通孔84dに軸固定ボルト86を挿入して、軸固定ボルト86の先端の雄ネジ部をローラ支持部82の雌ネジ部82aにねじ込む。これで、第2支持案内部8の組み立てが完了となる。
【0047】
次に、可動扉4の調整手順について説明する。
図7は、調整作業時の工具の使い方を示す図である。
図8は、第2支持案内部8が戸袋部6に対して最高位置に調整された状態と、最低位置に調整された状態との比較正面図である。
図9は、回転カム84周りの前後方向の縦断面図であって、最高位置に調整された状態と最低位置に調整された状態との比較図である。
【0048】
図7に示すように、調整作業をする際、作業員は、カニ目レンチ90のピンを、回転カム84の工具穴84eに差し込み、六角レンチ92を軸固定ボルト86の工具穴に差し込んで準備する。
【0049】
次に、作業員は六角レンチで軸固定ボルト86を緩める。これにより、ブッシュ85cが生み出している摺動抵抗が軽減し、回転カム84がカム軸受部85に対して回転可能になる。そして、作業員は、カニ目レンチ90で回転カム84を回転させ、可動扉4を所望の位置及び姿勢となるように、第2支持案内部8をより高い位置或いはより低い位置へ変化させる。
【0050】
第2支持案内部8の調整範囲は、図8及び図9で示す最高位置に調整された状態の第2支持案内部8maxと、最低位置に調整された状態の第2支持案内部8minとの間となる。
【0051】
第2支持案内部8は、可動扉4の進退方向に沿って2つ用意されているので、これら2つをそれぞれの調整範囲内で上げ下げすることにより、様々な調整に対応が可能になる。
【0052】
例えば、戸先を上げたい場合には、尻側の第2支持案内部8をそのままにして戸先側の第2支持案内部8を上げるか、逆に戸先側の第2支持案内部8をそのままにして戸尻側の第2支持案内部8を下げる。戸先を下げたい場合は、戸先側と戸尻側との調整方向の関係はこの逆となる。また例えば、可動扉4全体の高さを調整したい場合には、戸尻側と戸先側との両方の第2支持案内部8を同じように上げるか、又は下げればよい。勿論、これらの例の混合もあり得る。
【0053】
そして、望ましい位置に可動扉4が到達したならば、作業員は、六角レンチ92で軸固定ボルト86を締めて、位置調整の作業は終了となる。
【0054】
これにより、回転カム84が、カムリフト方向を上下とする姿勢で、戸袋部6に対して固定角度を調整可能に軸固定されたことになる。そして、ローラ支持部82が、回転カム84のカム面(偏心円筒部84bの円筒面)に載って、戸袋部6に対する固定角度が調整可能に支持されたことになる。
【0055】
すなわち、軸固定ボルト86を締め上げると、ブッシュ85cが、軸方向に圧縮された分、円筒部分が径方向に膨らみ、カム軸受部85と回転カム84の回転軸部84aとの間に十分な摺動抵抗が生まれて、カム軸受部85と回転カム84とが固定される。
また、ブッシュ85cのフランジ部分のうち、回転カム84のフランジ部84cとカム軸受部85との間に挟まれている一方のフランジ部分、及びカム軸受部85とローラ支持部82とに挟まれる他方のフランジ部分とが、ともに軸方向に圧縮されて十分な摺動抵抗を生み出して、カム軸受部85と回転カム84とローラ支持部82を一体的に固定する。つまり、ローラ支持部82の戸袋部6に対する相対角度(可動扉4の進退方向に対して戸袋部6の長手方向が成す傾斜)が固定される。
【0056】
位置調整の作業の間、作業員は第1支持案内部7を調整する必要はない。すなわち、付勢ローラ75が、揺動片73を介して、可動扉4のフレーム42の上端に対してコイルスプリング76cの弾性力で下方に付勢されている(図3参照)。よって、第2支持案内部8の上げ下げによって、可動扉4の戸袋部6に対する姿勢が変化したとしても、姿勢変化は揺動片73の揺動によって吸収される。可動扉4は、調整前、調整中、調整後の何れにあっても、第1支持案内部7によって第2支持案内部8へ向けて安定して押しつけられている。可動扉4は、付勢ローラ75と荷重支持ローラ81との間でしっかりと挟持されるように支持され、進退動自在に案内される。第1支持案内部7の調整は不要である。
【0057】
また、可動扉4を付勢ローラ75と荷重支持ローラ81とで移動可能に挟持することで、可動扉4を進退動させるときの抵抗を低減しつつ、調整に懸かる荷重を低減し、調整作業性を従来よりも向上さえることができる。
【0058】
具体的には、従来の可動式ホーム柵のように、直動機構で可動扉4をスライド可能に支持する構成の場合、可動扉4の戸先を上げる調整や、全体を持ち上げる調整を行うには、調整作業中、可動扉4と直動機構の両方の重量を何らかの特別な方法で支持する手当てが必要となる。しかし、同様の調整を行う場合でも、本実施形態の可動式ホーム柵3では、可動扉4を付勢ローラ75と荷重支持ローラ81とで移動可能に挟持しているので、調整作業中であっても、可動扉4を特別な方法で支持する必要がなく、調整作業の労力が少なくて済む。しかも、可動扉4は、歯付ベルト56によって進退動する構成なので、可動扉4の調整時の位置変化は歯付ベルト56の弾性によって賄える。すなわち、駆動機構と可動扉4との間の相対的な連結位置の調整をする必要がなく、調整時の作業性向上に寄与している。
【0059】
以上、本実施形態によれば、戸袋部に対する可動扉の位置調整の作業性を向上させることができる。
【0060】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な形態は、上記実施形態に限らず、適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0061】
例えば、上記実施形態の可動式ホーム柵3は、引戸型の可動扉4をプラットホームから線路側を見て戸袋部6の左方へ進退させて開閉する左ドアタイプとして例示したがこれに限らない。可動式ホーム柵3は、戸袋部6のプラットホームから見て右方へ進退させて開閉する右ドアタイプや、1つの戸袋部6に左方と右方との2つの可動扉を収容し、それぞれ左右へ進退させるタイプとしてもよい。
【0062】
また例えば、上記実施形態では、可動扉4のフレーム42の上面及び下面を平面とし、これに接触しながら転動する付勢ローラ75及び荷重支持ローラ81の外周面(転動面)を軸方向に平坦として例示したが、これに限らない。
【0063】
例えば、図10及び図11に示すように、可動扉4のフレーム42の上面の前後方向断面を進退方向から見て上方へ凸の形状とし、フレーム42の下面の前後方向断面を進退方向から見て下方へ凸の形状としてもよい。そして、付勢ローラ75及び荷重支持ローラ81が外周面に絞り部(軸方向の両端よりも小径な部分)を有する構成とする。この場合、フレーム42の上面の凸が付勢ローラ75の絞り部に嵌まり、フレーム42の下面の凸が荷重支持ローラ81の絞り部に嵌まる。これにより、付勢ローラ75や荷重支持ローラ81に対する可動扉4の前後方向へのズレやブレを抑制できる。抑制効果が十分であれば、第1支持案内部7の案内延設部78や、第2支持案内部8の案内延設部87を省略してもよい。
【0064】
また例えば、第1支持案内部7と第2支持案内部8との戸袋部6に対する配置位置関係を、上記実施形態とは上下逆にした構成も可能である。具体的には、図12に示す可動式ホーム柵3Bのように、フレーム42の上部の下面に荷重支持ローラ81を当接させるように第2支持案内部8を設け、フレーム42の下部の上面に付勢ローラ75を当接させるように、第1支持案内部7を設けた構成も可能である。当該構成では、荷重支持ローラ81が「上方ローラ」、付勢ローラ75が「下方ローラ」になる。当該構成の可動式ホーム柵3Bでは、全高を低く抑制できる。
【0065】
また例えば、上記実施形態では、回転カム84とカム軸受部85とを1種類ずつ例示したが、カム曲線や最大リフト量の異なる複数種類を用意しておいて、もし元々備えられている回転カム84とカム軸受部85との組合せで調整量が不足する場合には、適宜別種の組合せに現場で組み換えて対応するとしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
3…可動式ホーム柵
4…可動扉
42…フレーム
44…通過阻止材
5…駆動機構
54…従動プーリ
56…歯付ベルト
58…ベルトクランプ
6…戸袋部
7…第1支持案内部
71…基部
73…揺動片
75…付勢ローラ
76…付勢部
78…案内延設部
8…第2支持案内部
81…荷重支持ローラ
82…ローラ支持部
83…ローラ位置調整カム部
84…回転カム
84b…偏心円筒部
84e…工具穴
85…カム軸受部
86…軸固定ボルト
87…案内延設部
90…カニ目レンチ
92…六角レンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12