(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】鉄道車両用ドアリーフ、締結構造、及び鉄道車両用ドアリーフの製造方法
(51)【国際特許分類】
B61D 19/00 20060101AFI20240514BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B61D19/00 D
F16B5/02 V
B61D19/00 A
(21)【出願番号】P 2020086332
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 数馬
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝治
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-054559(JP,A)
【文献】実開昭63-173769(JP,U)
【文献】実開昭59-160163(JP,U)
【文献】特開2014-214767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 19/00
F16B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材とを含む鉄道車両用ドアリーフであって、
前記第1部材と前記第2部材との一方が縦枠であり、前記第1部材と前記第2部材との他方が横枠である枠体であって、
前記第2部材に設けられた下穴にねじ立てしながらねじ込まれ、前記第1部材と前記第2部材とを締結するタッピングねじを備え、
前記第2部材における前記下穴を形成する壁は、前記タッピングねじの軸方向と直交する面において前記タッピングねじと接触しない非接触領域を有する
鉄道車両用ドアリーフ。
【請求項2】
前記非接触領域は、前記タッピングねじの軸方向と直交する面において前記タッピングねじのねじ径よりも外側に位置する部分である
請求項1に記載の鉄道車両用ドアリーフ。
【請求項3】
前記下穴を形成する壁は、前記タッピングねじの軸方向と直交する面において前記タッピングねじと接触する接触領域を有し、
前記接触領域の壁のうち前記タッピングねじの周方向の壁は、前記タッピングねじの軸方向と直交する面において、前記下穴中心を中心として前記タッピングねじのねじ径を直径とする仮想的な円の周と平行である
請求項1又は2に記載の鉄道車両用ドアリーフ。
【請求項4】
前記下穴を形成する壁は、前記タッピングねじの軸方向と直交する面において前記タッピングねじと接触する接触領域を有し、
前記接触領域の壁面は、前記タッピングねじの軸方向と直交する面において前記下穴中心を中心として前記タッピングねじのねじ谷径を直径とする仮想的な円よりも外側に位置する部分を含む
請求項1又は2に記載の鉄道車両用ドアリーフ。
【請求項5】
前記下穴を形成する壁は、前記下穴の中心軸を中心として点対称に設けられている
請求項1~4のいずれか一項に記載の鉄道車両用ドアリーフ。
【請求項6】
前記タッピングねじの軸方向と直交する面において、前記タッピングねじのねじ径の円周のうち20~80%に前記非接触領域が設けられている
請求項1~5のいずれか一項に記載の鉄道車両用ドアリーフ。
【請求項7】
前記タッピングねじのねじ径とねじ谷径とに挟まれる体積のうちねじ立てされない体積は、20~80%である
請求項1~5のいずれか一項に記載の鉄道車両用ドアリーフ。
【請求項8】
前記下穴を形成する壁は、
第1位置で前記タッピングねじの軸方向と直交する面において、前記タッピングねじと接触する第1接触領域と前記タッピングねじと接触しない第1非接触領域とから構成され、
前記タッピングねじの軸方向において前記第1位置よりも前記タッピングねじの先端側に位置する第2位置で前記タッピングねじの軸方向と直交する面において、前記タッピングねじと接触する第2接触領域と前記タッピングねじと接触しない第2非接触領域とから構成され、
前記第1接触領域と前記第1非接触領域との和に対する前記第1非接触領域の割合は、前記第2接触領域と第2非接触領域との和に対する前記第2非接触領域の割合よりも多い
請求項1~5のいずれか一項に記載の鉄道車両用ドアリーフ。
【請求項9】
前記非接触領域は、前記タッピングねじの軸方向の一部の領域に設けられている
請求項1~5のいずれか一項に記載の鉄道車両用ドアリーフ。
【請求項10】
前記非接触領域には、前記タッピングねじがねじ立てしたときに発生する切りくずが収容される収容部がさらに設けられる
請求項1~9のいずれか一項に記載の鉄道車両用ドアリーフ。
【請求項11】
前記下穴を有する前記第2部材は、押し出し成形により作製される
請求項1~10のいずれか一項に記載の鉄道車両用ドアリーフ。
【請求項12】
第1部材と第2部材との締結構造であって、
前記第1部材と前記第2部材との一方が縦枠であり、前記第1部材と前記第2部材との他方が横枠である枠体であって、
前記第2部材に設けられた下穴にねじ立てしながらねじ込まれ、前記第1部材と前記第2部材とを締結するタッピングねじとを備え、
前記第2部材における前記下穴を形成する壁は、前記タッピングねじの軸方向と直交する面において前記タッピングねじと接触しない非接触領域を有する
締結構造。
【請求項13】
第1部材と第2部材とを含む鉄道車両用ドアリーフの製造方法であって、
前記第1部材と前記第2部材との一方が縦枠であり、前記第1部材と前記第2部材との他方が横枠である枠体であって、
前記第2部材に設けられた下穴を形成する壁は、前記下穴にねじ込まれるタッピングねじの軸方向と直交する面において前記タッピングねじと接触しない非接触領域を有し、
前記第2部材の前記下穴にねじ立てしながら前記タッピングねじがねじ込まれることで前記第1部材と前記第2部材とを締結する
鉄道車両用ドアリーフの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用ドアリーフ、締結構造、及び鉄道車両用ドアリーフの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両用のドアリーフは、上部縁枠、下部縁枠、戸先側縁枠、及び戸尻側縁枠で構成される枠体を備えている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の枠体のうち戸先側縁枠及び戸尻側縁枠はドアリーフの長手方向である上下方向に延出し、戸先側縁枠及び戸尻側縁枠はドアリーフの短手方向である左右方向に延出している。ドアリーフは、枠体の車両内側面に車内側板が装着され、枠体の車両外側面に車外側板が装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなドアリーフでは、ドアリーフの枠を構成する枠体同士を溶接によって接続している。溶接を用いると、溶接による歪みが発生して、要求精度を満たすように修正する必要があり労力を要する。なお、ドアリーフに限らず、部材同士を接続する必要のある製品であれば同様の課題がある。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造が容易な鉄道車両用ドアリーフ、締結構造、及び鉄道車両用ドアリーフの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する鉄道車両用ドアリーフは、第1部材と第2部材とを含む鉄道車両用ドアリーフであって、前記第2部材に設けられた下穴にねじ立てしながらねじ込まれ、前記第1部材と前記第2部材とを締結するタッピングねじを備え、前記第2部材における前記下穴を形成する壁は、前記タッピングねじの軸方向と直交する面において前記タッピングねじと接触しない非接触領域を有する。
【0007】
タッピングねじを用いて第1部材と第2部材とを締結しようとするとねじ込み途中で締め付けトルクが大きくなり締め付けることができなくなる。そこで、上記構成によれば、下穴の全周がねじ立てされるのではなく、タッピングねじと接触しないことでねじ立てされない非接触領域があるため、タッピングねじを締め付けるときの締付トルクを低減することができ、タッピングねじを用いて第1部材と第2部材とを締結することができる。よって、鉄道車両用ドアリーフを容易に製造することができる。
【0008】
上記鉄道車両用ドアリーフについて、前記非接触領域は、前記タッピングねじの軸方向と直交する面において前記タッピングねじのねじ径よりも外側に位置する部分であることが好ましい。
【0009】
上記鉄道車両用ドアリーフについて、前記下穴を形成する壁は、前記タッピングねじの軸方向と直交する面において前記タッピングねじと接触する接触領域を有し、前記接触領域の壁のうち前記タッピングねじの周方向の壁は、前記タッピングねじの軸方向と直交する面において、前記下穴中心を中心として前記タッピングねじのねじ径を直径とする仮想的な円の周と平行であることが好ましい。
【0010】
上記鉄道車両用ドアリーフについて、前記下穴を形成する壁は、前記タッピングねじの軸方向と直交する面において前記タッピングねじと接触する接触領域を有し、前記接触領域の壁面は、前記タッピングねじの軸方向と直交する面において前記下穴中心を中心として前記タッピングねじのねじ谷径を直径とする仮想的な円よりも外側に位置する部分を含むことが好ましい。
【0011】
上記鉄道車両用ドアリーフについて、前記下穴を形成する壁は、前記下穴の中心軸を中心として点対称に設けられていることが好ましい。
上記鉄道車両用ドアリーフについて、前記タッピングねじの軸方向と直交する面において、前記タッピングねじのねじ径の円周のうち20~80%に前記非接触領域が設けられていることが好ましい。
【0012】
上記鉄道車両用ドアリーフについて、前記タッピングねじのねじ径とねじ谷径とに挟まれる体積のうちねじ立てされない体積は、20~80%であることが好ましい。
上記鉄道車両用ドアリーフについて、前記下穴を形成する壁は、第1位置で前記タッピングねじの軸方向と直交する面において、前記タッピングねじと接触する第1接触領域と前記タッピングねじと接触しない第1非接触領域とから構成され、前記タッピングねじの軸方向において前記第1位置よりも前記タッピングねじの先端側に位置する第2位置で前記タッピングねじの軸方向と直交する面において、前記タッピングねじと接触する第2接触領域と前記タッピングねじと接触しない第2非接触領域とから構成され、前記第1接触領域と前記第1非接触領域との和に対する前記第1非接触領域の割合は、前記第2接触領域と第2非接触領域との和に対する前記第2非接触領域の割合よりも多いことが好ましい。
【0013】
上記鉄道車両用ドアリーフについて、前記非接触領域は、前記タッピングねじの軸方向の一部の領域に設けられていることが好ましい。
上記鉄道車両用ドアリーフについて、前記非接触領域には、前記タッピングねじがねじ立てしたときに発生する切りくずが収容される収容部がさらに設けられることが好ましい。
【0014】
上記鉄道車両用ドアリーフについて、前記下穴を有する前記第2部材は、押し出し成形により作製されることが好ましい。
上記鉄道車両用ドアリーフについて、前記第1部材と前記第2部材との一方が縦枠であり、前記第1部材と前記第2部材との他方が横枠である枠体であることが好ましい。
【0015】
上記課題を解決する締結構造は、第1部材と第2部材との締結構造であって、前記第2部材に設けられた下穴にねじ立てしながらねじ込まれ、前記第1部材と前記第2部材とを締結するタッピングねじとを備え、前記第2部材における前記下穴を形成する壁は、前記タッピングねじの軸方向と直交する面において前記タッピングねじと接触しない非接触領域を有する。
【0016】
タッピングねじを用いて第1部材と第2部材とを締結しようとするとねじ込み途中で締め付けトルクが大きくなり締め付けることができなくなる。そこで、上記構成によれば、下穴の全周がねじ立てされるのではなく、タッピングねじと接触しないことでねじ立てされない非接触領域があるため、タッピングねじを締め付けるときの締付トルクを低減することができ、タッピングねじを用いて第1部材と第2部材とを締結することができる。よって、容易に製造することができる。
【0017】
上記課題を解決する鉄道車両用ドアリーフの製造方法は、第1部材と第2部材とを含む鉄道車両用ドアリーフの製造方法であって、前記第2部材に設けられた下穴を形成する壁は、前記下穴にねじ込まれるタッピングねじの軸方向と直交する面において前記タッピングねじと接触しない非接触領域を有し、前記第2部材の前記下穴にねじ立てしながら前記タッピングねじがねじ込まれることで前記第1部材と前記第2部材とを締結する。
【0018】
タッピングねじを用いて第1部材と第2部材とを締結しようとするとねじ込み途中で締め付けトルクが大きくなり締め付けることができなくなる。そこで、上記方法によれば、下穴の全周がねじ立てされるのではなく、タッピングねじと接触しないことでねじ立てされない非接触領域があるため、タッピングねじを締め付けるときの締付トルクを低減することができ、タッピングねじを用いて第1部材と第2部材とを締結することができる。よって、容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】鉄道車両用ドアリーフの第1実施形態の概略構成を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図。
【
図2】同実施形態の鉄道車両用ドアリーフの締結構造を示す上面拡大図。
【
図3】同実施形態の鉄道車両用ドアリーフの横枠の構成を示す側面拡大図。
【
図4】同実施形態の鉄道車両用ドアリーフに用いられるタッピングねじを示す図。
【
図5】同実施形態の鉄道車両用ドアリーフの横枠に設けられた下穴を示す図。
【
図6】同実施形態の鉄道車両用ドアリーフの横枠に設けられた下穴にタッピングねじが締結された状態を示す図。
【
図8】同実施形態の下穴にタッピングねじが締結された状態を示す図。
【
図10】同実施形態の下穴にタッピングねじが締結された状態を示す図。
【
図12】同実施形態の下穴にタッピングねじが締結された状態を示す図。
【
図14】同実施形態の下穴にタッピングねじが締結された状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、
図1~
図6を参照して、鉄道車両用ドアリーフの第1実施形態について説明する。ドアリーフは、鉄道車両の引戸に用いられる。
【0022】
(ドアリーフ)
図1(a)に示すように、ドアリーフ10の図中左側が戸尻11であり、ドアリーフ10の図中右側が戸先12である。ドアリーフ10の戸尻11側と戸先12側の構成は同じである。
図1(b)に示すように、ドアリーフ10の縦断面は、鉛直方向の下部が鉄道車両の内側へ向かって湾曲している。
【0023】
ドアリーフ10は、枠体20と、枠体20の各表面に接合される化粧板又は下地として機能する表面板13とを備えている。枠体20は、第1部材としての縦枠21と、縦枠21と直交した状態で縦枠21と接続される第2部材としての横枠22とを備える。縦枠21は、ドアリーフ10の上下方向に延出する枠体の一部である。横枠22は、ドアリーフ10の左右方向に延出する枠体の一部である。枠体20は、2つの縦枠21と2つの横枠22とによって四角形状の枠を形成している。
【0024】
図2に示すように、表面板13は、枠体20の表面側である図中下側と図中上側とに接着剤によって貼り付けられている。つまり、枠体20は、両側から2枚の表面板13によって挟まれている。
【0025】
(枠体)
図2に示すように、縦枠21は、四角筒のアルミ押し出し型材であって、押し出し成形によって作製される。横枠22は、四角柱のアルミ押し出し型材であって、押し出し成形によって作製される。
【0026】
縦枠21と横枠22とは、タッピングねじ40によって締結されている。タッピングねじ40は、縦枠21を貫通して横枠22に設けられた下穴30にねじ立てしながらねじ込まれ、縦枠21と横枠22とを締結する。縦枠21には、タッピングねじ40のねじ頭41が貫通する第1貫通孔21Aと、タッピングねじ40のねじ部42が貫通する第2貫通孔21Bが設けられている。第2貫通孔21Bは、タッピングねじ40のねじ頭41は貫通しない大きさである。タッピングねじ40は、第1貫通孔21Aを貫通して、第2貫通孔21Bにねじ部42のみ貫通する。縦枠21は、タッピングねじ40のねじ頭41と横枠22とに挟まれて締結される。つまり、縦枠21と横枠22とは、タッピングねじ40と下穴30との締結構造によって締結されている。
【0027】
図3に示すように、横枠22は、第1空間22A、第2空間22B、第3空間22Cを有する部材である。横枠22の第1空間22Aと第2空間22Bとの間にタッピングねじ40がねじ込まれる下穴30が設けられている。この下穴30は、押し出し成形によって形成されるため、横枠22を貫通している。
【0028】
図4に示すように、タッピングねじ40は、ねじ頭41とねじ部42を備えている。ねじ頭41は、トラス型である。タッピングねじ40は、ねじ部42の先端がカットされ、ねじのピッチが荒い2種のタッピングねじである。ねじ部42の長さがねじ長さLである。下穴30は横枠22を貫通しているため、下穴30の軸方向の長さはねじ長さLよりも長い。ねじ部42のねじ山を含む直径がねじ径DAであって、ねじ部42の谷の直径がねじ谷径DBである。
【0029】
図5に示すように、横枠22における下穴30を形成する壁は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において、タッピングねじ40と接触する接触領域A1と、タッピングねじ40と接触しない非接触領域A2とから構成される。接触領域A1は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴30を形成する壁がタッピングねじ40の2点鎖線で示したねじ径DAよりも内側に位置する部分である。非接触領域A2は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴30を形成する壁がタッピングねじ40の2点鎖線で示したねじ径DAよりも外側に位置する部分である。下穴30を形成する壁のうち接触領域A1に位置する壁をねじ立て壁31とし、非接触領域A2に位置する壁を非ねじ立て壁32とする。なお、下穴30は、横枠22の全長に亘って設けられている。
【0030】
下穴30の非接触領域A2は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面においてタッピングねじ40のねじ径DAの円周のうち20~80%に設けられることが望ましい。本実施形態では、非接触領域A2がタッピングねじ40のねじ径DAの円周のうちおよそ50%に設けられている。
【0031】
また、タッピングねじ40のねじ径DAとねじ谷径DBとに挟まれる体積のうちねじ立てされない体積は20~80%であることが望ましい。本実施形態では、ねじ立てされない体積はおよそ50%である。
【0032】
下穴30を形成する壁は、下穴30の中心軸を中心として点対称に設けられている。すなわち、ねじ立て壁31及び非ねじ立て壁32は点対称の位置に設けられている。ねじ立て壁31と非ねじ立て壁32とは、交互にそれぞれ4つ設けられている。
【0033】
接触領域A1のねじ立て壁31の壁面は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴30中心を中心としてタッピングねじ40のねじ谷径DBを直径とする仮想的な円よりも外側に位置する部分を含む。なお、壁面は、下穴30と横枠22との境界面である。詳しくは、ねじ立て壁31の壁面は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において直線であって、周方向中央がねじ谷径DBと一致して、中央から離れるにつれてねじ径DAを直径とする仮想的な円に近づいていく。すなわち、タッピングねじ40を下穴30にねじ込むときには、ねじ立て壁31の中央部分が最も締め付けトルクが大きくなる。タッピングねじ40を下穴30にねじ込んでいくと、徐々にタッピングねじ40とねじ立て壁31との接触面積が増えていき、締め付けトルクが増大する。したがって、均一にタッピングねじ40とねじ立て壁とが接触する場合と比較して締め付けトルクを低減することができる。
【0034】
非接触領域A2のねじ立て壁32は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴30の中心を中心としてタッピングねじ40のねじ径DAを直径とする仮想的な円の周と平行な曲線である。
【0035】
非接触領域A2には、タッピングねじ40がねじ立てしたときに発生する切りくずが収容される収容部33が設けられている。収容部33は、タッピングねじ40のねじ径DAよりも外側で且つ非ねじ立て壁32とねじ立て壁31の側面31Aとに囲まれる部分である。
【0036】
(製造方法)
次に、上記ドアリーフ10の製造方法について説明する。
まず、
図2に示すように、縦枠21の第2貫通孔21Bと横枠22の下穴30との位置を合わせて、横枠22と縦枠21とを当てる。
【0037】
続いて、タッピングねじ40を第1貫通孔21Aに挿通させて、タッピングねじ40を第2貫通孔21Bから挿し込み、タッピングねじ40を工具で回すことでねじ込んでいく。
【0038】
図6に示すように、タッピングねじ40は、下穴30の接触領域A1をねじ立てしながらねじ込まれていく。すなわち、下穴30のねじ径DAとねじ谷径DBとの間に位置するねじ立て壁31をねじ立てする。ねじ立て壁31のドットを付した部分がねじ立てされている。図中上側の右半分はタッピングねじ40の軸方向においてねじ立て壁31よりも上側にタッピングねじ40のねじ山が見えている状態である。このとき、下穴30の非接触領域A2は、タッピングねじ40が当たることなくねじ立てされない。タッピングねじ40によって発生したきりくずは、下穴30の収容部33や下穴30の奥に収容される。
【0039】
ここで、下穴30のねじ径DAとねじ谷径DBとの間の全周にねじ立てされる壁が位置する場合には、締め付けトルクが大きくなり、ねじ込み途中で締め付けができなくなっていた。そこで、下穴30に非接触領域A2が設けられることで、タッピングねじ40の軸方向と直交する面においてねじ立てされる面積が減るため、締め付けトルクを低減することができる。また、ねじ立て壁31は、ねじ立てされる幅が徐々に増えて中央から徐々に減っていくため、ねじ立て壁31の中央で締め付けトルクが最も大きくなり、ねじ立て壁31において締め付けトルクを低減することができる。
【0040】
続いて、
図2に示すように、2つの縦枠21と2つの横枠22とが締結された枠体20を2枚の表面板13で両側から挟む。枠体20の表面に接着剤が塗布されて、表面板13が枠体20の表面に接合される。よって、枠体20を溶接による接続を用いずにドアリーフ10を容易に製造することができる。特に、下部が折れ曲がったドアリーフ10では、溶接を行うと曲げが変化して修正が発生するため、タッピングねじ40を用いた締結構造は有用である。
【0041】
次に、第1実施形態の効果について説明する。
(1)下穴30の全周がねじ立てされるのではなく、タッピングねじ40と接触しないことでねじ立てされない非接触領域A2があるため、タッピングねじ40を締め付けるときの締付トルクを低減することができ、タッピングねじ40を用いて縦枠21と横枠22とを締結することができる。よって、労力を要する溶接を使わずに鉄道車両用のドアリーフ10を容易に製造することができる。
【0042】
(2)タッピングねじ40のねじ径DAよりも外側に下穴30を形成する非ねじ立て壁32を設けることで、タッピングねじ40を締め付けるときに接触しないことでねじ立てされない非接触領域A2とすることができる。
【0043】
(3)接触領域A1のねじ立て壁31の壁面がタッピングねじ40のねじ谷径DBを直径とする仮想的な円よりも外側に位置する部分を含まない、すなわち接触領域A1が全てねじ谷径を直径とする仮想的な円よりも内側に存在するものと比較してねじ切りするときのタッピングねじ40の締め付けトルクを低減することができる。
【0044】
(4)タッピングねじ40を締め付けるときに点対称の位置でタッピングねじ40に当たるため、タッピングねじ40の位置決めが容易であり、タッピングねじ40を安定して締め付けることができる。
【0045】
(5)タッピングねじ40を締め付けるときの締付トルクを低減することができ、タッピングねじ40を用いて縦枠21と横枠22とを締結することができる。
(6)収容部33に切りくずが収容されるので切りくずがタッピングねじ40と接触領域A1との間に巻き込まれることを抑制することができ、締め付けトルクの増加を抑制することができる。
【0046】
(7)横枠22とともに下穴30が押し出し成形によって作製されるため、下穴30のような複雑な形状であっても成形することができる。また、下穴30を別途成形する必要がない。
【0047】
(第2実施形態)
以下、
図7及び
図8を参照して、鉄道車両用ドアリーフの第2実施形態について説明する。この実施形態の鉄道車両用ドアリーフは、下穴の形状が上記第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0048】
図7及び
図8に示すように、横枠22にはタッピングねじ40がねじ込まれる下穴50が設けられている。下穴50を形成する壁は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において、タッピングねじ40によってねじ立てされる接触領域A1と、タッピングねじ40が当たらずねじ立てされない非接触領域A2とから構成される。接触領域A1は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴50を形成する壁がタッピングねじ40の2点鎖線で示したねじ径DAよりも内側に位置する部分である。非接触領域A2は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴50を形成する壁がタッピングねじ40の2点鎖線で示したねじ径DAよりも外側に位置する部分である。下穴50を形成する壁のうち接触領域A1に位置する壁をねじ立て壁51とし、非接触領域A2に位置する壁を非ねじ立て壁52とする。
【0049】
非接触領域A2は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面においてタッピングねじ40のねじ径DAの円周のうちおよそ30%に設けられている。また、タッピングねじ40のねじ径DAとねじ谷径DBとに挟まれる体積のうちねじ立てされない体積はおよそ30%に設けられている。
【0050】
下穴50を形成する壁は、下穴50の中心軸を中心として点対称に設けられている。すなわち、ねじ立て壁51及び非ねじ立て壁52は点対称の位置に設けられている。ねじ立て壁51と非ねじ立て壁52とは、交互にそれぞれ4つ設けられている。
【0051】
接触領域A1のねじ立て壁51は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴30の中心を中心としてタッピングねじ40のねじ径DAを直径とする仮想的な円の周と平行である。詳しくは、ねじ立て壁51は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において曲線であって、ねじ谷径DBと一致している。すなわち、タッピングねじ40を下穴50にねじ込むときには、ねじ立て壁51のいずれの位置でも同じ締め付けトルクである。
図8に示すように、ねじ立て壁51のドットを付した部分がねじ立てされた部分であり、タッピングねじ40とねじ立て壁51と噛み合っている部分である。図中上側の右半分はタッピングねじ40の軸方向においてねじ立て壁51よりも上側にタッピングねじ40のねじ山が見えている状態である。
【0052】
非接触領域A2のねじ立て壁52は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴30の中心を中心としてタッピングねじ40のねじ径DAを直径とする仮想的な円の周と平行な曲線である。
【0053】
非接触領域A2には、タッピングねじ40がねじ立てしたときに発生する切りくずが収容される収容部53が設けられている。収容部53は、タッピングねじ40のねじ径DAよりも外側で且つ非ねじ立て壁52とねじ立て壁51の側面51Aとに囲まれる部分である。
【0054】
上記のように、下穴50に非接触領域A2が設けられることで、タッピングねじ40の軸方向と直交する面においてねじ立てされる面積が減るため、締め付けトルクを低減することができる。また、ねじ立て壁51は、ねじ立てされる幅が一律であるため、ねじ立て壁31において締め付けトルクが変化せず、締め付けトルクを安定させることができる。
【0055】
次に、第2実施形態の効果について説明する。なお、第1実施形態の(1)、(2)、(4)~(7)の効果に加え、以下の効果を奏する。
(8)接触領域A1とタッピングねじ40との距離が一定であるので、タッピングねじ40の位置決めが容易であり、タッピングねじ40を安定して締め付けることができる。
【0056】
(第3実施形態)
以下、
図9及び
図10を参照して、鉄道車両用ドアリーフの第3実施形態について説明する。この実施形態の鉄道車両用ドアリーフは、下穴の形状が上記第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0057】
図9及び
図10に示すように、横枠22にはタッピングねじ40がねじ込まれる下穴60が設けられている。下穴60を形成する壁は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において、タッピングねじ40によってねじ立てされる接触領域A1と、タッピングねじ40が当たらずねじ立てされない非接触領域A2とから構成される。接触領域A1は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴60を形成する壁がタッピングねじ40の2点鎖線で示したねじ径DAよりも内側に位置する部分である。非接触領域A2は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴60を形成する壁がタッピングねじ40の2点鎖線で示したねじ径DAよりも外側に位置する部分である。下穴60を形成する壁のうち接触領域A1に位置する壁をねじ立て壁61とし、非接触領域A2に位置する壁を非ねじ立て壁62とする。
【0058】
非接触領域A2は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面においてタッピングねじ40のねじ径DAの円周のうちおよそ50%に設けられている。また、タッピングねじ40のねじ径DAとねじ谷径DBとに挟まれる体積のうちねじ立てされない体積はおよそ50%に設けられている。
【0059】
下穴60を形成する壁は、下穴60の中心軸を中心として点対称に設けられている。すなわち、ねじ立て壁61及び非ねじ立て壁62は点対称の位置に設けられている。ねじ立て壁61と非ねじ立て壁62とは、交互にそれぞれ4つ設けられている。
【0060】
接触領域A1のねじ立て壁61は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴30の中心を中心としてタッピングねじ40のねじ径DAを直径とする仮想的な円の周と平行である。詳しくは、ねじ立て壁61は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において曲線であって、ねじ谷径DBと一致している。すなわち、タッピングねじ40を下穴60にねじ込むときには、ねじ立て壁61のいずれの位置でも同じ締め付けトルクである。
図10に示すように、ねじ立て壁61のドットを付した部分がねじ立てされた部分であり、タッピングねじ40とねじ立て壁61と噛み合っている部分である。図中上側の右半分はタッピングねじ40の軸方向においてねじ立て壁61よりも上側にタッピングねじ40のねじ山が見えている状態である。
【0061】
非接触領域A2のねじ立て壁62は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面においてタッピングねじ40のねじ軸とは異なる点を中心とする円弧状である。
非接触領域A2には、タッピングねじ40がねじ立てしたときに発生する切りくずが収容される収容部63が設けられている。収容部63は、タッピングねじ40のねじ径DAよりも外側で且つ非ねじ立て壁62に囲まれる部分である。
【0062】
上記のように、下穴50に非接触領域A2が設けられることで、タッピングねじ40の軸方向と直交する面においてねじ立てされる面積が減るため、締め付けトルクを低減することができる。また、ねじ立て壁51は、ねじ立てされる幅が一律であるため、ねじ立て壁31において締め付けトルクが変化せず、締め付けトルクが安定させることができる。第3実施形態の構成によれば、第1実施形態の(1)、(2)、(4)~(7)及び第2実施形態の(8)の効果を奏する。
【0063】
(第4実施形態)
以下、
図11及び
図12を参照して、鉄道車両用ドアリーフの第4実施形態について説明する。この実施形態の鉄道車両用ドアリーフは、下穴の形状が上記第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0064】
図11及び
図12に示すように、横枠22にはタッピングねじ40がねじ込まれる下穴70が設けられている。下穴70を形成する壁は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において、タッピングねじ40によってねじ立てされる接触領域A1と、タッピングねじ40が当たらずねじ立てされない非接触領域A2とから構成される。接触領域A1は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴70を形成する壁がタッピングねじ40の2点鎖線で示したねじ径DAよりも内側に位置する部分である。非接触領域A2は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴70を形成する壁がタッピングねじ40の2点鎖線で示したねじ径DAよりも外側に位置する部分である。下穴70を形成する壁のうち接触領域A1に位置する壁をねじ立て壁71とし、非接触領域A2に位置する壁を非ねじ立て壁72とする。
【0065】
非接触領域A2は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面においてタッピングねじ40のねじ径DAの円周のうちおよそ60%に設けられている。また、タッピングねじ40のねじ径DAとねじ谷径DBとに挟まれる体積のうちねじ立てされない体積はおよそ60%に設けられている。
【0066】
下穴70を形成する壁は、下穴70の中心軸を中心として点対称に設けられている。すなわち、ねじ立て壁71及び非ねじ立て壁72は点対称の位置に設けられている。ねじ立て壁71と非ねじ立て壁72とは、交互にそれぞれ4つ設けられている。
【0067】
接触領域A1のねじ立て壁71の壁面は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴70の中心を中心としてタッピングねじ40のねじ谷径DBを直径とする仮想的な円よりも外側に位置する部分を含む。なお、壁面は、下穴70と横枠22との境界面である。詳しくは、ねじ立て壁71の壁面は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において曲線であって、周方向中央がねじ谷径DBと一致して、中央から離れるにつれてねじ径DAを直径とする仮想的な円に近づいていく。すなわち、タッピングねじ40を下穴70にねじ込むときには、ねじ立て壁71の中央部分が最も締め付けトルクが大きくなる。タッピングねじ40を下穴70にねじ込んでいくと、徐々にタッピングねじ40とねじ立て壁71との接触面積が増えていき、締め付けトルクが増大する。
図12に示すように、ねじ立て壁71のドットを付した部分がねじ立てされた部分であり、タッピングねじ40とねじ立て壁71と噛み合っている部分である。図中上側の右半分はタッピングねじ40の軸方向においてねじ立て壁71よりも上側にタッピングねじ40のねじ山が見えている状態である。したがって、第2実施形態や第3実施形態のように均一にタッピングねじ40とねじ立て壁51,61とが接触する場合と比較して締め付けトルクを低減することができる。
【0068】
非接触領域A2のねじ立て壁72は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面においてタッピングねじ40のねじ径DAよりも外側を含む。詳しくは、非ねじ立て壁72は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において直線とねじ立て壁71とつながる曲線とからなる。
【0069】
非接触領域A2には、タッピングねじ40がねじ立てしたときに発生する切りくずが収容される収容部73が設けられている。収容部73は、タッピングねじ40のねじ径DAよりも外側で且つ非ねじ立て壁72に囲まれる部分である。
【0070】
上記のように、下穴70に非接触領域A2が設けられることで、タッピングねじ40の軸方向と直交する面においてねじ立てされる面積が減るため、締め付けトルクを低減することができる。また、ねじ立て壁71は、ねじ立てされる幅が徐々に増えて中央から徐々に減っていくため、ねじ立て壁71の中央で締め付けトルクが最も大きくなり、ねじ立て壁71において締め付けトルクを低減することができる。第4実施形態の構成によれば、第1実施形態の(1)~(7)の効果を奏する。
【0071】
(第5実施形態)
以下、
図13及び
図14を参照して、鉄道車両用ドアリーフの第5実施形態について説明する。この実施形態の鉄道車両用ドアリーフは、下穴の形状が上記第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0072】
図13及び
図14に示すように、横枠22にはタッピングねじ40がねじ込まれる下穴80が設けられている。下穴80を形成する壁は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において、タッピングねじ40によってねじ立てされる接触領域A1と、タッピングねじ40が当たらずねじ立てされない非接触領域A2とから構成される。接触領域A1は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴80を形成する壁がタッピングねじ40の2点鎖線で示したねじ径DAよりも内側に位置する部分である。非接触領域A2は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴80を形成する壁がタッピングねじ40の2点鎖線で示したねじ径DAよりも外側に位置する部分である。下穴80を形成する壁のうち接触領域A1に位置する壁をねじ立て壁81とし、非接触領域A2に位置する壁を非ねじ立て壁82とする。
【0073】
非接触領域A2は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面においてタッピングねじ40のねじ径DAの円周のうちおよそ60%に設けられている。また、タッピングねじ40のねじ径DAとねじ谷径DBとに挟まれる体積のうちねじ立てされない体積はおよそ60%に設けられている。
【0074】
下穴80を形成する壁は、下穴80の中心軸を中心として点対称に設けられている。すなわち、ねじ立て壁81及び非ねじ立て壁82は点対称の位置に設けられている。ねじ立て壁81と非ねじ立て壁82とは、交互にそれぞれ4つ設けられている。
【0075】
接触領域A1のねじ立て壁81の壁面は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴80の中心を中心としてタッピングねじ40のねじ谷径DBを直径とする仮想的な円よりも外側に位置する部分を含む。なお、壁面は、下穴80と横枠22との境界面である。詳しくは、ねじ立て壁81は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において直線であって、中央がねじ谷径DBと一致して、中央から離れるにつれてねじ径DAを直径とする仮想的な円に近づいていく。すなわち、タッピングねじ40を下穴80にねじ込むときには、ねじ立て壁81の中央部分が最も締め付けトルクが大きくなる。タッピングねじ40を下穴80にねじ込んでいくと、徐々にタッピングねじ40とねじ立て壁81との接触面積が増えていき、締め付けトルクが増大する。
図14に示すように、ねじ立て壁81のドットを付した部分がねじ立てされた部分であり、タッピングねじ40とねじ立て壁81と噛み合っている部分である。図中上側の右半分はタッピングねじ40の軸方向においてねじ立て壁81よりも上側にタッピングねじ40のねじ山が見えている状態である。したがって、第2実施形態や第3実施形態のように均一にタッピングねじ40とねじ立て壁51,61とが接触する場合と比較して締め付けトルクを低減することができる。
【0076】
非接触領域A2のねじ立て壁82は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面においてタッピングねじ40のねじ径DAよりも外側を含む。詳しくは、非ねじ立て壁82は、タッピングねじ40の軸方向と直交する面においてねじ立て壁81と連続する直線と、2つの直線とつながる曲線とからなる。
【0077】
非接触領域A2には、タッピングねじ40がねじ立てしたときに発生する切りくずが収容される収容部83が設けられている。収容部73は、タッピングねじ40のねじ径DAよりも外側で且つ非ねじ立て壁82に囲まれる部分である。
【0078】
上記のように、下穴80に非接触領域A2が設けられることで、タッピングねじ40の軸方向と直交する面においてねじ立てされる面積が減るため、締め付けトルクを低減することができる。また、ねじ立て壁81は、ねじ立てされる幅が徐々に増えて中央から徐々に減っていくため、ねじ立て壁81の中央で締め付けトルクが最も大きくなり、ねじ立て壁81において締め付けトルクを低減することができる。
【0079】
次に、第4実施形態の効果について説明する。なお、第1実施形態の(1)~(7)の効果を奏するとともに、以下の効果を奏する。
(9)下穴80は、ねじ立て壁81と非ねじ立て壁82とが連続する直線で形成されるため、下穴80の形状が複雑でなく、横枠22の押し出し成形を複雑なものよりも容易に行うことができる。
【0080】
(他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0081】
・上記各実施形態では、下穴30,50,60,70,80を横枠22の全長に亘って設けた。しかしながら、横枠22の全長において下穴の形状が異なっていてもよい。タッピングねじ40の軸方向においてねじ頭41側に位置する第1位置と先端側に位置する第2位置とがあるとする。下穴を形成する壁は、第1位置でタッピングねじ40の軸方向と直交する面においてタッピングねじ40と接触する第1接触領域とタッピングねじ40と接触しない第1非接触領域とから構成され、タッピングねじ40の軸方向において第1位置よりもタッピングねじ40の先端側に位置する第2位置でタッピングねじ40の軸方向と直交する面においてタッピングねじ40と接触する第2接触領域とタッピングねじ40と接触しない第2非接触領域とから構成されるとする。そして、第1接触領域と第1非接触領域との和に対する第1非接触領域の割合を第2接触領域と第2非接触領域との和に対する第2非接触領域の割合よりも高くしてもよい。例えば、ねじ頭41側の第1位置に第1実施形態の割合が50%の下穴30を形成し、先端側の第2位置に第2実施形態の割合が30%の下穴50を形成してもよい。また、下穴をタッピングねじ40の軸方向からずらすことで実現してもよい。このようにすれば、ねじ頭41に近い側での締結トルクを弱くでき、先端側での締結強度を高めることができる。
【0082】
・また、非接触領域A2をタッピングねじ40の軸方向の一部の領域に設けてもよい。例えば、下穴30,50,60,70,80の深さをタッピングねじ40のねじ長さLよりも短くすることで実現してもよい。
【0083】
・上記各実施形態では、非接触領域A2を、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴30,50,60,70,80を形成する壁がタッピングねじ40の2点鎖線で示したねじ径DAよりも外側に位置する部分とした。しかしながら、非接触領域A2を、タッピングねじ40の軸方向と直交する面において下穴30,50,60,70,80を形成する壁がタッピングねじ40の2点鎖線で示したねじ径DAに位置する部分としてもよい。この場合、収容部は設けられない。
【0084】
・上記各実施形態では、下穴30,50,60,70,80を形成する壁を下穴30,50,60,70,80の中心軸を中心として点対称に設けたが、下穴を形成する壁を点対称ではないように設けてもよい。
【0085】
・上記各実施形態では、下穴30,50,60,70,80を押し出し成形によって横枠22に形成したが、下穴を切削加工等によって横枠22に形成してもよい。
・また、下穴の長さは、開口からタッピングねじのねじ長さLがあれば、横枠の全長のうち一部であってもよい。
【0086】
・上記各実施形態では、横枠22に第1空間22A、第2空間22B、第3空間22Cを設けたが、横枠22に空間を任意に設けてもよく、横枠22に空間を設けなくてもよい。
【0087】
・上記実施形態では、2種タッピングねじとしたが、2種に限らず、先端が尖り先端までねじ山が設けられ、ねじのピッチが2種タッピングねじより荒い1種タッピングねじや、先端がカットされ、ねじのピッチが2種タッピングねじより細かい3種タッピングねじや、切端が尖り先端までねじ山が設けられ、ねじのピッチが2種タッピングねじと同じ4種タッピングねじであってもよい。また、ねじの先端に溝のある溝付きとしてもよい。さらに、ねじ部の断面を三角形状としたタッピングねじとしてもよい。
【0088】
・上記実施形態では、タッピングねじ40のねじ頭41をトラス型としたが、タッピングねじのねじ頭を皿型や丸皿型やなべ型等の他の形状としてもよい。
・上記各実施形態において、下穴の大きさをタッピングねじ40のねじ径DAやねじ谷径DBに合わせて任意に変更してもよい。
【0089】
・上記各実施形態では、第2部材である横枠22に下穴30,50,60,70,80を設けて、第1部材である縦枠21に第2貫通孔21Bを設けた。しかしながら、第1部材としての横枠に貫通孔を設け、第2部材としての縦枠に下穴を設けて、縦枠に横枠をタッピングねじで締結してもよい。
【0090】
・上記各実施形態では、ドアリーフ10の鉛直方向の下部が鉄道車両の内側へ向かって湾曲しているようにしたが、ドアリーフの鉛直方向の下部が湾曲していないストレートであってもよい。
【0091】
・上記各実施形態は、鉄道車両のドアリーフ10の枠体20の締結構造としてタッピングねじと下穴とを用いたが、鉄道車両用ドアリーフの枠体に限らず、2つの部材の締結構造として用いてもよい。
【0092】
・上記各実施形態では、溶接を使わずにタッピングねじと下穴とによって2つの部材を締結した。しかしながら、タッピングねじと下穴とによって2つを締結した後に溶接を用いれば、溶接による歪みを抑制して要求精度を満たすための修正を不要とすることができる。
【符号の説明】
【0093】
A1…接触領域
A2…非接触領域
DA…ねじ径
DB…ねじ谷径
L…ねじ長さ
10…ドアリーフ
11…戸尻
12…戸先
13…表面板
20…枠体
21…第1部材としての縦枠
21A…第1貫通孔
21B…第2貫通孔
22…第2部材としての横枠
22A…第1空間
22B…第2空間
22C…第3空間
30…下穴
31…ねじ立て壁
31A…側面
32…非ねじ立て壁
33…収容部
40…タッピングねじ
41…ねじ頭
42…ねじ部
50…下穴
51…ねじ立て壁
51A…側面
52…非ねじ立て壁
53…収容部
60…下穴
61…ねじ立て壁
62…非ねじ立て壁
63…収容部
70…下穴
71…ねじ立て壁
72…非ねじ立て壁
73…収容部
80…下穴
81…ねじ立て壁
82…非ねじ立て壁
83…収容部