(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】隙間調整装置及びブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
F16D 65/74 20060101AFI20240514BHJP
F16D 65/56 20060101ALI20240514BHJP
B61H 5/00 20060101ALI20240514BHJP
B60T 13/38 20060101ALI20240514BHJP
F16D 63/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
F16D65/74
F16D65/56 C
B61H5/00
B60T13/38
F16D63/00 A
(21)【出願番号】P 2020091678
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】内海 崇
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-192637(JP,A)
【文献】特開2000-052952(JP,A)
【文献】特開平05-126180(JP,A)
【文献】特開昭60-047757(JP,A)
【文献】特表2005-527420(JP,A)
【文献】特表2013-519048(JP,A)
【文献】米国特許第3003592(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/38-65/74
B61H 5/00
B60T 13/38
F16D 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被押圧部材と前記被押圧部材に押し当てられる摩擦材との間隔を調整するとともに、エネルギーが供給されると前記間隔を狭くする動作を行う隙間調整器と、
鉄道車両に設けられるブレーキシリンダのシリンダロッドの移動量を検知する検知部と、
前記移動量が所定値以上である場合に、前記シリンダロッドの移動にともなって生じるエネルギーとは異なるエネルギーを前記隙間調整器に供給する供給部とを備え
、
前記ブレーキシリンダは、圧縮空気によって駆動され、
前記供給部は、圧縮空気を前記エネルギーとして前記隙間調整器に供給し、
前記ブレーキシリンダに供給される圧縮空気と前記隙間調整器に供給される圧縮空気とは、前記鉄道車両に搭載される同一のタンクから供給される
隙間調整装置。
【請求項2】
前記供給部は、
前記タンクから前記ブレーキシリンダに供給される圧縮空気の配管を分岐させて前記隙間調整器に供給する分岐部を備える
請求項
1に記載の隙間調整装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記シリンダロッドが当接することで前記所定値以上移動したことを検知するスイッチである
請求項1
又は2に記載の隙間調整装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記シリンダロッドの移動量が前記所定値以上であるときに前記供給部を供給状態にするとともに、前記シリンダロッドの移動量が所定値未満であるときに前記供給部を排出状態にするスイッチである
請求項
3に記載の隙間調整装置。
【請求項5】
前記供給部は、前記隙間調整器に圧縮空気を供給する供給状態と前記隙間調整器から圧縮空気を排出する排出状態を切り替えるバルブであって、
前記スイッチは、前記シリンダロッドの移動量が前記所定値以上である場合には前記バルブを前記供給状態に切り替え、前記シリンダロッドの移動量が前記所定値未満である場合には前記バルブを排出状態に切り替える
請求項
3又は
4に記載の隙間調整装置。
【請求項6】
前記隙間調整器は、前記ブレーキシリンダによって駆動される一対のアームの基端部に懸架され、
前記バルブは、前記ブレーキシリンダが取り付けられるとともに前記一対のアームが支持されるキャリパ装置のボディに設けられ、
前記供給部は、前記バルブと接続して前記隙間調整器に圧縮空気を入力するホースを備える
請求項
5に記載の隙間調整装置。
【請求項7】
前記検知部は、非接触センサである
請求項1~
5のいずれか一項に記載の隙間調整装置。
【請求項8】
前記ブレーキシリンダは、常用ブレーキシリンダと駐車ブレーキシリンダとを備え、
前記供給部は、前記駐車ブレーキシリンダに供給される圧縮空気の配管を分岐させて前記エネルギーとして前記隙間調整器に供給する分岐部を備える
請求項
1に記載の隙間調整装置。
【請求項9】
前記隙間調整器は、前記圧縮空気が流出入する流出入部と、
前記流出入部から流入した前記圧縮空気によって軸方向に伸長し、軸方向への短縮が規制される伸縮部とを備える
請求項
1に記載の隙間調整装置。
【請求項10】
鉄道車両に設けられ、圧縮空気によって駆動されるブレーキシリンダと、
前記ブレーキシリンダによって駆動されディスクを挟む一対のアームと、
前記一対のアームの基端部に懸架され前記一対のアームの先端に設けられる摩擦材と前記ディスクとの間隔を調整するとともに、エネルギーが供給されると前記間隔を狭くする動作を行う隙間調整器とを備え、
前記隙間調整器は、
前記ブレーキシリンダのシリンダロッドの移動量を検知する検知部と、
前記移動量が所定値以上である場合に、前記シリンダロッドの移動にともなって生じるエネルギーとは異なるエネルギーとし
て圧縮空気を前記隙間調整器に供給する供給部とを備え、
前記ブレーキシリンダ
に供給される圧縮空気と前記隙間調整器に供給される圧縮空気とは、前記鉄道車両に搭載される
同一のタンクから供給さ
れ、
前記供給部は、前記タンクから前記ブレーキシリンダに供給される圧縮空気の配管を分岐させて前記隙間調整器に供給する分岐部を備える
ブレーキ装置。
【請求項11】
鉄道車両に設けられ、圧縮空気によって駆動されるブレーキシリンダと、
前記ブレーキシリンダによって駆動されるブレーキてこと、
制動時に前記ブレーキてこによって車輪の踏面に当接される制輪子と、
前記制輪子と前記車輪の踏面との間隔を調整するとともに、エネルギーが供給されると前記間隔を狭くする動作を行う隙間調整器とを備え、
前記隙間調整器は、
前記ブレーキシリンダのシリンダロッドの移動量を検知する検知部と、
前記移動量が所定値以上である場合に、前記シリンダロッドの移動にともなって生じるエネルギーとは異なるエネルギーとし
て圧縮空気を前記隙間調整器に供給する供給部とを備え、
前記ブレーキシリンダ
に供給される圧縮空気と前記隙間調整器に供給される圧縮空気とは、前記鉄道車両に搭載される
同一のタンクから供給さ
れ、
前記供給部は、前記タンクから前記ブレーキシリンダに供給される圧縮空気の配管を分岐させて前記隙間調整器に供給する分岐部を備える
ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隙間調整装置及びブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、ディスクブレーキ装置のキャリパブレーキは、2つのアームを備えている。2つのアームの一方の端部にブレーキパッドが連結され、2つのアームの中央にはブレーキシリンダが設けられ、2つのアームの他方の端部には、ブレーキパッドの摩耗に応じて長さを伸長する隙間調整装置が設けられている。
【0003】
隙間調整装置は、ブレーキシリンダのストロークが制御棒によって調整レバーに作用することで、隙間調整装置の長さが伸長する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の隙間調整装置では、ブレーキシリンダの駆動力が隙間調整装置の動力として機械的に伝達されるため、その動力分を挟み力に利用することができず損失となる。このため、ブレーキシリンダの駆動力をブレーキ装置の動作のみに使用することが求められている。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブレーキシリンダの駆動力をブレーキ装置の動作のみに使用する隙間調整装置及びブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する隙間調整装置は、被押圧部材と前記被押圧部材に押し当てられる摩擦材との間隔を調整するとともに、エネルギーが供給されると前記間隔を狭くする動作を行う隙間調整器と、ブレーキシリンダのシリンダロッドの移動量を検知する検知部と、前記移動量が所定値以上である場合に、前記シリンダロッドの移動にともなって生じるエネルギーとは異なるエネルギーを前記隙間調整器に供給する供給部とを備える。
【0008】
上記構成によれば、シリンダロッドの移動にともなって生じるエネルギーとは異なるエネルギーを使って隙間調整器が間隔を狭くする動作を行うため、ブレーキシリンダの駆動力をブレーキ装置の動作のみに使用することができる。
【0009】
上記隙間調整装置について、前記ブレーキシリンダは、圧縮空気によって駆動され、前記供給部は、圧縮空気を前記エネルギーとして前記隙間調整器に供給することが好ましい。
【0010】
上記隙間調整装置について、前記供給部は、前記ブレーキシリンダに供給される圧縮空気の配管を分岐させて前記隙間調整器に供給する分岐部を備えることが好ましい。
上記隙間調整装置について、前記ブレーキシリンダは、鉄道車両に設けられ、前記鉄道車両に搭載されるタンクから供給される圧縮空気によって前記シリンダロッドが駆動され、前記供給部は、前記タンクから供給される圧縮空気を前記分岐部を介して前記隙間調整器に供給することが好ましい。
【0011】
上記隙間調整装置について、前記検知部は、前記シリンダロッドが当接することで前記所定値以上移動したことを検知するスイッチであることが好ましい。
上記隙間調整装置について、前記検知部は、前記シリンダロッドの移動量が前記所定値以上であるときに前記供給部を供給状態にするとともに、前記シリンダロッドの移動量が所定値未満であるときに前記供給部を排出状態にするスイッチであることが好ましい。
【0012】
上記隙間調整装置について、前記供給部は、前記隙間調整器に圧縮空気を供給する供給状態と前記隙間調整器から圧縮空気を排出する排出状態を切り替えるバルブであって、前記スイッチは、前記シリンダロッドの移動量が前記所定値以上である場合には前記バルブを前記供給状態に切り替え、前記シリンダロッドの移動量が前記所定値未満である場合には前記バルブを排出状態に切り替えることが好ましい。
【0013】
上記隙間調整装置について、前記隙間調整器は、前記ブレーキシリンダによって駆動される一対のアームの基端部に懸架され、前記バルブは、前記ブレーキシリンダが取り付けられるとともに前記一対のアームが支持されるキャリパ装置のボディに設けられ、前記供給部は、前記バルブと接続して前記隙間調整器に圧縮空気を入力するホースを備えることが好ましい。
【0014】
上記隙間調整装置について、前記検知部は、非接触センサであることが好ましい。
上記隙間調整装置について、前記ブレーキシリンダは、常用ブレーキシリンダと駐車ブレーキシリンダとを備え、前記供給部は、前記駐車ブレーキシリンダに供給される圧縮空気の配管を分岐させて前記エネルギーとして前記隙間調整器に供給する分岐部を備えることが好ましい。
【0015】
上記隙間調整装置について、前記隙間調整器は、前記圧縮空気が流出入する流出入部と、前記流出入部から流入した前記圧縮空気によって軸方向に伸長し、軸方向への短縮が規制される伸縮部とを備えることが好ましい。
【0016】
上記課題を解決するブレーキ装置は、圧縮空気によって駆動されるブレーキシリンダと、前記ブレーキシリンダによって駆動されディスクを挟む一対のアームと、前記一対のアームの基端部に懸架され前記一対のアームの先端に設けられる摩擦材と前記ディスクとの間隔を調整するとともに、エネルギーが供給されると前記間隔を狭くする動作を行う隙間調整器とを備え、前記隙間調整器は、前記ブレーキシリンダのシリンダロッドの移動量を検知する検知部と、前記移動量が所定値以上である場合に、前記シリンダロッドの移動にともなって生じるエネルギーとは異なるエネルギーとして前記圧縮空気を前記隙間調整器に供給する供給部とを備え、前記ブレーキシリンダは、鉄道車両に設けられ、前記鉄道車両に搭載されるタンクから供給される圧縮空気によって前記シリンダロッドが駆動され、前記供給部は、前記タンクから前記ブレーキシリンダに供給される圧縮空気の配管を分岐させて前記隙間調整器に供給する分岐部を備える。
【0017】
上記構成によれば、シリンダロッドの移動にともなって生じるエネルギーとは異なるエネルギーを使って隙間調整器が間隔を狭くする動作を行うため、ブレーキシリンダの駆動力をアームの動作のみに使用することができる。
【0018】
上記課題を解決するブレーキ装置は、圧縮空気によって駆動されるブレーキシリンダと、前記ブレーキシリンダによって駆動されるブレーキてこと、制動時に前記ブレーキてこによって車輪の踏面に当接される制輪子と、前記制輪子と前記車輪の踏面との間隔を調整するとともに、エネルギーが供給されると前記間隔を狭くする動作を行う隙間調整器とを備え、前記隙間調整器は、前記ブレーキシリンダのシリンダロッドの移動量を検知する検知部と、前記移動量が所定値以上である場合に、前記シリンダロッドの移動にともなって生じるエネルギーとは異なるエネルギーとして前記圧縮空気を前記隙間調整器に供給する供給部とを備え、前記ブレーキシリンダは、鉄道車両に設けられ、前記鉄道車両に搭載されるタンクから供給される圧縮空気によって前記シリンダロッドが駆動され、前記供給部は、前記タンクから前記ブレーキシリンダに供給される圧縮空気の配管を分岐させて前記隙間調整器に供給する分岐部を備える。
【0019】
上記構成によれば、シリンダロッドの移動にともなって生じるエネルギーとは異なるエネルギーを使って隙間調整器が間隔を狭くする動作を行うため、ブレーキシリンダの駆動力をブレーキてこの動作のみに使用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ブレーキシリンダの駆動力をブレーキ装置の動作のみに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】隙間調整装置を備えるキャリパブレーキ装置の第1実施形態の構成を示す斜視図。
【
図2】同実施形態のキャリパブレーキ装置の構成を示す上面部分断面図。
【
図3】同実施形態の隙間調整装置の検知部及び供給部の動きを示す部分拡大図。
【
図4】同実施形態のキャリパブレーキ装置の検知部及び供給部の構成を示す部分拡大図。
【
図5】同実施形態の隙間調整装置の隙間調整器の構造を示す拡大断面図。
【
図6】隙間調整装置を備えるキャリパブレーキ装置の第2実施形態の構成を示す斜視図。
【
図7】同実施形態のキャリパブレーキ装置の構成を示す上面部分断面図。
【
図8】同実施形態の隙間調整装置の検知部及び供給部の動きを示す部分拡大図。
【
図9】隙間調整装置を備える踏面ブレーキ装置の第3実施形態の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、
図1~
図5を参照して、隙間調整装置を備えたキャリパブレーキ装置の第1実施形態について説明する。
【0023】
図1及び
図2に示すように、キャリパブレーキ装置20は、図示しない鉄道車両の台車に取り付けられ、台車の車輪を回転させる車軸と一体に回転する円盤状のディスク11(
図2参照)に制輪子12を押し付けることによりブレーキ力を車輪に付与する。すなわち、キャリパブレーキ装置20は、ディスク11とともにディスクブレーキ装置を構成する。
【0024】
キャリパブレーキ装置20は、台車に取り付けられるブラケット21(
図1参照)と、ブラケット21に揺動可能に吊り下げられる連結部材30と、連結部材30に支持される一対の左側アーム40及び右側アーム50とを備える。また、キャリパブレーキ装置20は、圧縮空気の供給と排出とによって左側アーム40及び右側アーム50が制輪子12を介してディスク11を挟むための力を出力するシリンダ装置60を備える。シリンダ装置60に供給される圧縮空気は、鉄道車両に搭載されるタンクから供給される。なお、シリンダ装置60がブレーキシリンダに相当する。
【0025】
連結部材30は、ブラケット21の回転軸に貫装される基部31(
図1参照)と、基部31から左右に延出して左側アーム40及び右側アーム50を支持する第1支持部32と、第1支持部32の中央から後方に延出してシリンダ装置60を支持する第2支持部33とを備える。第1支持部32の左側には、左側アーム40を支持する左側支持部32Aが設けられている。左側支持部32Aには、左側アーム40を回転可能に支持する左側回転軸35が左側支持部32Aに対して回転可能な状態で挿通されている。左側回転軸35には、シリンダ装置60の駆動力によって操作される操作レバー35Aが固定されている。第1支持部32の右側には、右側アーム50を支持する右側支持部32Bが設けられている。右側支持部32Bには、右側アーム50を回転可能に支持する右側回転軸36が上側と下側とにそれぞれ右側支持部32Bに対して回転可能な状態で挿通されている。
【0026】
左側アーム40は、左側回転軸35の軸方向において離間し互いに対向して延出する一対の左側延出片41を備えている。左側アーム40の先端部には、制輪子12が取り付けられる制輪子取付部材42が制輪子回転軸43により接続されている。制輪子回転軸43は、左側延出片41に対して回動可能である。制輪子回転軸43は、制輪子取付部材42に固定されている。
【0027】
右側アーム50は、右側回転軸36の軸方向において離間し互いに対向して延出する一対の右側延出片51を備えている。右側アーム50の先端部には、制輪子12が取り付けられる制輪子取付部材52が制輪子回転軸53により接続されている。制輪子回転軸53は、右側延出片51に対して回動可能である。制輪子回転軸53は、制輪子取付部材52に固定されている。
【0028】
図2に示すように、シリンダ装置60は、連結部材30の第2支持部33に取り付けられている。シリンダ装置60は、常用ブレーキシリンダ70と駐車ブレーキシリンダ80とを備えている。常用ブレーキシリンダ70は、連結部材30の第2支持部33の左側の面に取り付けられている。駐車ブレーキシリンダ80は、連結部材30の第2支持部33の右側の面に取り付けられている。よって、常用ブレーキシリンダ70と駐車ブレーキシリンダ80とは、連結部材30の第2支持部33を挟んで設けられている。常用ブレーキシリンダ70と駐車ブレーキシリンダ80とは、各4個のボルトによって第2支持部33に固定されている。
【0029】
常用ブレーキシリンダ70は、第1シリンダ室71と、第1ピストン72と、第1ロッド73と、第1ばね74とを備えている。第1ピストン72は、第1シリンダ室71の中を移動する。第1ロッド73は、第1ピストン72に固定されて第1シリンダ室71から突出する。第1ばね74は、第1ロッド73が第1シリンダ室71に収容される方向に第1ピストン72を付勢する。第1シリンダ室71の第1ばね74が設けられていない側を第1空間75とする。常用ブレーキシリンダ70は、第1シリンダ室71の第1空間75に圧縮空気を供給する第1供給ポート76(
図1参照)を備えている。第1供給ポート76は、第1シリンダ室71の外部に設けられている。常用ブレーキシリンダ70は、第1シリンダ室71の第1空間75に圧縮空気が供給されると第1ピストン72が押されて第1ロッド73が突出する。また、常用ブレーキシリンダ70は、第1シリンダ室71の第1空間75から圧縮空気が排出されると第1ピストン72が第1ばね74に押されて第1ロッド73が第1シリンダ室71に収容される。
【0030】
駐車ブレーキシリンダ80は、第2シリンダ室81と、第2ピストン82と、第2ロッド83と、第2ばね84とを備えている。第2ピストン82は、第2シリンダ室81の中を移動する。第2ロッド83は、第2ピストン82に固定されて第2シリンダ室81から第1シリンダ室71に突出する。第2ばね84は、第2ロッド83が第2シリンダ室81から突出する方向に第2ピストン82を付勢する。第2シリンダ室81の第2ばね84が設けられていない側を第2空間85とする。駐車ブレーキシリンダ80は、第2シリンダ室81の第2空間85に圧縮空気を供給する第2供給ポート86(
図1参照)を備えている。第2供給ポート86は、第2シリンダ室81の外部に設けられている。駐車ブレーキシリンダ80は、第2シリンダ室81の第2空間85に圧縮空気が供給されると第2ピストン82が押されて第2ロッド83が第2シリンダ室81に収容される。また、駐車ブレーキシリンダ80は、第2シリンダ室81の第2空間85から圧縮空気が排出されると第2ピストン82が第2ばね84に押されて第2ロッド83が第2シリンダ室81から第1シリンダ室71に突出して第1ピストン72を押して第1ロッド73が突出する。
【0031】
操作レバー35Aの先端には、回転するローラ35Bが取り付けられている。シリンダ装置60の第1ロッド73の先端には、ローラ35Bを収容するとともに接触する貫通孔である収容部73Aが設けられている。この収容部73Aは、第1ロッド73の直線運動と操作レバー35Aの回転運動とのずれを吸収しつつ、第1ロッド73の駆動力を操作レバー35Aに伝達する。
【0032】
図1及び
図2に示すように、キャリパブレーキ装置20は、制輪子12とディスク11との隙間を調整する隙間調整装置100を備えている。隙間調整装置100は、隙間を調整する隙間調整器101と、シリンダ装置60の第1ロッド73の移動量を検知する検知部である検知スイッチ90とを備える。隙間調整器101は、左側アーム40の基端部と右側アーム50の基端部とを連結している。左側アーム40と隙間調整器101とは、上下一対のボルト45によって回動可能に連結されている。右側アーム50と隙間調整器101とは、上下一対のボルト55によって回動可能に連結されている。左側アーム40と隙間調整器101とは回転軸44にて回転し、右側アーム50と隙間調整器101とは回転軸54にて回転する。
【0033】
隙間調整装置100は、左側アーム40の基端部と右側アーム50の基端部との距離を調整することで制輪子12とディスク11との隙間を調整する。さらに、隙間調整装置100は、制輪子12の摩耗によって制輪子12とディスク11との隙間が長くなったときに、左側アーム40の基端部と右側アーム50の基端部との距離を伸長することで、制輪子12とディスク11との隙間を短くする。
【0034】
隙間調整装置100は、第1ロッド73の移動量が所定値以上であることを検知スイッチ90が検知したときに、シリンダ装置60の外部から供給されるエネルギーを用いて隙間調整器101を動作させる供給部110を備える。供給部110は、シリンダ装置60に供給される圧縮空気をエネルギーとして隙間調整器101に供給する。供給部110は、シリンダ装置60に供給される圧縮空気の配管を分岐させて隙間調整器101に供給する分岐部111を備える。分岐部111は、第2シリンダ室81の外部に設けられる第2供給ポート86に取り付けられ、第2供給ポート86から第2シリンダ室81に供給される手前で圧縮空気の流れを分岐させる。
【0035】
図3及び
図4に示すように、検知スイッチ90は、第1ロッド73が当接することで所定値以上移動したことを検知するスイッチである。検知スイッチ90は、第1ロッド73の移動量が所定値以上であるときに当接するローラ91と、ローラ91を支持してローラ91に第1ロッド73の先端部が当接したときに回転する支持部92とを備えている。支持部92は、第1ロッド73の移動量が所定値以上であるときに第1ロッド73の先端部とローラ91とが当接することによって回転する。
【0036】
検知スイッチ90には、供給部としてのメカニカルバルブ113が取り付けられている。メカニカルバルブ113は、隙間調整器101への圧縮空気の供給と、隙間調整器101から圧縮空気の排出とを切り替える3ポートメカニカルバルブである。メカニカルバルブ113は、分岐部111から圧縮空気が入力される入力ポートP1と、入力ポートP1から入力された圧縮空気を出力する出力ポートP2と、出力ポートP2から出力した圧縮空気を外部に排出する排出ポートP3とを備える。メカニカルバルブ113の入力ポートP1と分岐部111とは、柔軟性の高い第1ホース112を介して接続されている。メカニカルバルブ113の出力ポートP2と隙間調整器101とは、柔軟性の高い第2ホース114を介して接続されている。なお、出力ポートP2が供給部として機能する。
【0037】
メカニカルバルブ113は、検知スイッチ90の動作によってバルブのオンオフが切り替えられる。すなわち、メカニカルバルブ113は、スイッチ113Aを備えている。メカニカルバルブ113は、このスイッチ113Aを検知スイッチ90の支持部92が回転して押すと、入力ポートP1と出力ポートP2とを導通して隙間調整器101に圧縮空気を供給する(供給状態)。一方、メカニカルバルブ113は、このスイッチ113Aに対する検知スイッチ90の支持部92の押しがなくなると、入力ポートP1と出力ポートP2との導通が遮断されて出力ポートP2と排出ポートP3とが導通されて隙間調整器101に供給した圧縮空気を排出ポートP3から排出する(排出状態)。すなわち、検知スイッチ90は、第1ロッド73が所定値以上移動したときにメカニカルバルブ113を供給状態とするとともに、第1ロッド73が戻るときにメカニカルバルブ113を排出状態とするスイッチである。検知スイッチ90は、メカニカルバルブ113の供給状態と排出状態とを直接切り替える。
【0038】
図5に示すように、隙間調整器101は、第1ケース121と、第2ケース122とを備えている。第1ケース121は、一対の左側延出片41の基端部の間に接続されている。第1ケース121と一対の左側延出片41とはボルト45によって回動可能に連結されている。第2ケース122は、一対の右側延出片51の基端部の間に接続されている。第2ケース122と一対の右側延出片51とはボルト55によって回動可能に連結されている。第1ケース121と第2ケース122との間は、蛇腹状のカバー130によって覆われている。
【0039】
第1ケース121は、第2ケース122に向かって延出する円筒状の延出部121Aを備えている。第1ケース121には、多角柱状の多角形ロッド123が固定されている。多角形ロッド123は、第1ケース121の延出部121Aの延出方向に設けられ、第2ケース122側のみ開口する円柱状の空間123Aを有している。多角形ロッド123の空間123Aには、駆動ピストン120が挿通されている。駆動ピストン120は、多角形ロッド123から第2ケース122に向かって突出している。駆動ピストン120は、多角形ロッド123の空間123Aの閉塞側に圧縮空気が供給されることで多角形ロッド123から突出する方向に押圧される。
【0040】
第1ケース121には、メカニカルバルブ113の出力ポートP2に接続された第2ホース114が接続されて、メカニカルバルブ113から出力された圧縮空気が通過する空気通路121Bが設けられている。空気通路121Bは、流出入部に相当する。空気通路121Bは、多角形ロッド123に接続されている。多角形ロッド123の基端部は、第1ケース121の外部に突出している。多角形ロッド123の基端部は、六角柱に形成された六角部123Bが設けられている。多角形ロッド123の六角部123Bを手動にて回すことにより、制輪子12とディスク11との隙間を調整することができる。
【0041】
第2ケース122には、第1ケース121に向かって延出する円柱状のねじ軸124が固定されている。ねじ軸124は、第1ケース121側のみ開口する円柱状の空間124Aを有している。ねじ軸124の空間124Aには、多角形ロッド123及び駆動ピストン120が挿通されている。駆動ピストン120は、ねじ軸124の空間124Aの底面に当接する。ねじ軸124の第2ケース122に固定されている部分以外の外周には、雄ねじ124Bが設けられている。ねじ軸124は、支持ばね122Aによって支持されている。ねじ軸124の基端部は、六角柱に形成された六角部124Cが設けられている。ねじ軸124の六角部124Cを手動にて回すことにより、制輪子12とディスク11との隙間を調整することができる。
【0042】
ねじ軸124の外周には、円筒状の調整ナット125が設けられている。調整ナット125の一部の内壁には、ねじ軸124の雄ねじ124Bと螺合する雌ねじ125Aが設けられている。調整ナット125は、ねじ軸124の雄ねじ124Bに螺合しながらねじ軸124に対して回転する。すなわち、多角形ロッド123の駆動ピストン120がねじ軸124を押圧して多角形ロッド123からねじ軸124が離間する方向に移動すると、調整ナット125はねじ軸124の雄ねじ124Bと調整ナット125の雌ねじ125Aとによって回転する。なお、ねじ軸124と調整ナット125とが軸方向に伸長する伸縮部として機能する。
【0043】
調整ナット125は、第1ケース121の延出部121Aとねじ軸124との間に位置している。調整ナット125の外周には、第1ケース121の延出部121Aの内壁に向かって突出する凸条部125Bが設けられている。調整ナット125と第1ケース121の延出部121Aとの間には、凸条部125Bを調整ナット125の軸方向において第1ケース121側へ付勢する振動対策ばね126が設けられている。振動対策ばね126は、コイルばねであって、調整ナット125の外周に設けられる。調整ナット125の凸条部125Bが振動対策ばね126によって付勢されているので振動による影響を低減することができる。調整ナット125と第1ケース121の延出部121Aとの間には、当接クラッチ127が設けられている。当接クラッチ127は、凸条部125Bが軸方向において左側アーム40側へ押されたときに、凸条部125Bの軸方向に対して垂直な面と接触することで調整ナット125の回転を規制する。また、調整ナット125と第1ケース121の延出部121Aとの間には、ワンウェイクラッチ128が設けられている。ワンウェイクラッチ128は、隙間調整器101が伸長するための調整ナット125の回転を許容し、隙間調整器101が短縮するための調整ナット125の回転を規制する。なお、当接クラッチ127及びワンウェイクラッチ128が軸方向への短縮が規制される伸縮部として機能する。
【0044】
次に、上記キャリパブレーキ装置20及び隙間調整装置100の作用について説明する。まず、
図2を併せて参照して、制輪子12が摩耗していない状態のキャリパブレーキ装置20及び隙間調整装置100の動作について説明する。
【0045】
図2に示すように、キャリパブレーキ装置20は、常用ブレーキを作動させるときには、シリンダ装置60の常用ブレーキシリンダ70の第1空間75に圧縮空気が供給される。常用ブレーキシリンダ70の第1ロッド73は、第1ピストン72とともに第1シリンダ室71から突出する方向に移動してローラ35Bを介して操作レバー35Aを時計回りに駆動する。このとき、制輪子12の摩耗が小さく、第1ロッド73の移動量が所定値未満であれば、操作レバー35Aの先端部は検知スイッチ90のローラ91には接触しない。
【0046】
第1ロッド73が第1シリンダ室71から突出する方向に移動すると、操作レバー35Aは左側回転軸35とともに時計周りに回転する。左側回転軸35が時計回りに回転すると、左側アーム40が回転軸44を回転中心として左側の制輪子12がディスク11に接触する方向に回転して、左側の制輪子12がディスク11に接触する。
【0047】
続いて、左側の制輪子12がディスク11に接触した後、左側アーム40は制輪子回転軸43を回転中心として時計回りに回転する。そして、左側アーム40が制輪子回転軸43を回転中心として回転すると、右側アーム50は、回転軸44及び隙間調整器101及び回転軸54を介して右側回転軸36を回転中心として時計回りに回転して、右側の制輪子12がディスク11に接触する。
【0048】
なお、駐車ブレーキシリンダ80の第2空間85から圧縮空気が排出されて、第2ロッド83が第2シリンダ室81から突出するときには、第2ロッド83が第1ピストン72及び第1ロッド73を押すことで、第1ロッド73が第1シリンダ室71から突出したときと同様に動作する。
【0049】
続いて、
図3を併せて参照して、制輪子12が摩耗した状態のキャリパブレーキ装置20及び隙間調整装置100の動作について説明する。制輪子12が摩耗した状態のときも常用ブレーキシリンダ70は圧縮空気の供給によって同様に動作して、第1ロッド73の移動量が制輪子12の摩耗量に応じて増加する。そして、制輪子12の摩耗量が大きくなり、第1ロッド73の移動量が所定値以上となると、隙間調整装置100が動作する。すなわち、隙間調整器101が伸長して、制輪子12とディスク11との隙間を短くする。
【0050】
第1ロッド73が所定値以上移動すると、第1ロッド73の先端部が検知スイッチ90のローラ91に当接して支持部92が回転することでメカニカルバルブ113のスイッチ113Aが支持部92に押される。メカニカルバルブ113は、スイッチ113Aが押されて供給状態となると、入力ポートP1と出力ポートP2とを導通して第2ホース114を介して圧縮空気を隙間調整器101に供給する。なお、第1ロッド73の移動量が所定値以上とは制輪子12とディスク11との隙間が規定値以上であることに相当する。
【0051】
隙間調整器101に圧縮空気が供給されると、第1ケース121の空気通路121Bを介して多角形ロッド123の空間123Aに圧縮空気が流入して駆動ピストン120を駆動する。駆動された駆動ピストン120がねじ軸124を隙間調整器101が伸長する方向に押すことで、ねじ軸124が第1ケース121から離間する方向に移動する。このため、ねじ軸124の軸方向の移動にともなってねじ軸124の雄ねじ124Bと調整ナット125の雌ねじ125Aとの螺合によって調整ナット125が回転して、調整ナット125からねじ軸124が伸長する方向に送り出される。このとき、ワンウェイクラッチ128は、伸長する方向には回転可能なので、調整ナット125が回転する。これにより、隙間調整器101の全長が長くなることで、左側アーム40の基端部と右側アーム50の基端部との距離が長くなり、制輪子12とディスク11との隙間が短縮される。
【0052】
続いて、キャリパブレーキ装置20は、ディスク11を左側の制輪子12と右側の制輪子12とが挟んで隙間調整器101に圧縮力が発生すると、ねじ軸124が短縮方向に調整ナット125を回転させようとする。このとき、調整ナット125は、当接クラッチ127と調整ナット125の凸条部125Bとの摩擦力と、ワンウェイクラッチ128により回転が規制され、ねじ軸124は短縮方向に移動せず、キャリパブレーキ装置20の挟み力が維持されてブレーキ力が発生する。
【0053】
続いて、キャリパブレーキ装置20は、常用ブレーキシリンダ70への圧縮空気の供給が停止されてブレーキが解除されると、第1ロッド73が第1シリンダ室71に戻る。そして、第1ロッド73とメカニカルバルブ113のスイッチ113Aとの接触がなくなり、スイッチ113Aが排出状態になると、入力ポートP1と出力ポートP2とが遮断されて、出力ポートP2と排出ポートP3とが導通される。そして、隙間調整器101内の圧縮空気が排出ポートP3から排出されて、駆動ピストン120の駆動力がなくなり隙間調整動作が停止して、制輪子12とディスク11との隙間が所定値に維持される。
【0054】
上記の隙間調整装置100によれば、シリンダ装置60の外部から供給されるエネルギーを用いて隙間調整器101を動作させることにより、シリンダ装置60の駆動力をキャリパブレーキ装置20の動作のみに使用することができる。すなわち、シリンダ装置60の駆動力の損失が少なく、駆動力の伝達効率の低下を抑制することができる。
【0055】
また、圧縮空気の供給源とメカニカルバルブ113とを柔軟性の高い第1ホース112で接続するとともに、メカニカルバルブ113と隙間調整器101とを柔軟性の高い第2ホース114で接続している。このため、振動やキャリパブレーキ装置20の動作によって互いの位置が変位しても影響が抑制されてロバスト性を高くすることができる。
【0056】
隙間調整器101の左側には手動による隙間調整のための多角形ロッド123の六角部123Bが設けられ、隙間調整器101の右側には手動による隙間調整のためのねじ軸124の六角部124Cが設けられている。このため、隙間調整器101の両側から隙間調整が可能であり、1度の隙間調整量が大きくなり、メンテナンス時の調整作業を効率的かつ容易に行うことができる。
【0057】
次に、第1実施形態の効果について説明する。
(1)シリンダ装置60の第1ロッド73の移動にともなって生じるエネルギーとは異なるエネルギーを使って隙間調整器101が間隔を狭くする動作を行う。このため、シリンダ装置60の駆動力をキャリパブレーキ装置20の動作のみに使用することができる。
【0058】
(2)シリンダ装置60の駆動エネルギーと隙間調整器101の駆動エネルギーを同種のエネルギーとすることによりエネルギー源を共通化することができる。
(3)シリンダ装置60に供給される圧縮空気を分岐部111によってメカニカルバルブ113に供給することで隙間調整器101を駆動するためのエネルギーを別途用意する必要がないため、隙間調整器101を簡単に動作させることができる。
【0059】
(4)鉄道車両に搭載されるタンクから供給される圧縮空気によって隙間調整器101を動作させることができる。
(5)検知スイッチ90が第1ロッド73の移動を直接検知するため、第1ロッド73の移動を別部材で検知して検知部に伝達する場合と比較して、部品点数を低減することができる。
【0060】
(6)第1ロッド73の移動量が所定値以上であるときに検知スイッチ90がメカニカルバルブ113を供給状態とするとともに、第1ロッド73の移動量が所定値未満であるときに検知スイッチ90がメカニカルバルブ113を排出状態とする。このため、シリンダ装置60の動作に合わせて、自動でメカニカルバルブ113の供給と排出とを切り替えることができる。
【0061】
(7)検知スイッチ90がメカニカルバルブ113のスイッチ113Aを操作することでメカニカルバルブ113が供給状態と排出状態とが切り替えられるため、検知部とメカニカルバルブ113との接続部分が不要となり、省スペースにできる。第1ロッド73の移動量が所定値以上か所定値未満かによってスイッチ113Aがメカニカルバルブ113の状態を切り替えるので、第1ロッド73の移動によって隙間調整器101の隙間を調整することができる。
【0062】
(8)一対の左側アーム40及び右側アーム50がシリンダ装置60によって駆動されることでメカニカルバルブ113と隙間調整器101との間が相対変位したときであっても、第2ホース114によって柔軟性があるため相対変位による影響を抑制することができる。
【0063】
(9)常用ブレーキシリンダ70を使用している時は、駐車ブレーキシリンダ80には常に圧縮空気が導入されている。このため、駐車ブレーキシリンダ80に供給されている圧縮空気を隙間調整器101の駆動力として使うことができる。
【0064】
(第2実施形態)
以下、
図6~
図8を参照して、隙間調整装置を備えたキャリパブレーキ装置の第2実施形態について説明する。この実施形態のキャリパブレーキ装置は、駐車ブレーキシリンダを備えていない点が上記第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0065】
図6及び
図7に示すように、キャリパブレーキ装置220は、常用ブレーキシリンダ70のみを備えている。そして、第1実施形態において駐車ブレーキシリンダ80が設けられていた位置に検知部としての検知スイッチ90と供給部としてのメカニカルバルブ113とが設けられている。第2支持部33の右側には、メカニカルバルブ113を取り付けるための取付部33Bが固定されている。
【0066】
常用ブレーキシリンダ70の第1ピストン72の第1ロッド73が設けられている側と反対側には、突出ロッド93が固定されている。突出ロッド93は、第2支持部33に設けられた貫通孔33Aを貫通して突出している。常用ブレーキシリンダ70の第1シリンダ室71の第1空間75に圧縮空気が供給されていないときの突出量が最大である。一方、第1シリンダ室71の第1空間75に圧縮空気が供給されているときには、突出ロッド93は第1シリンダ室71内に引き込まれる。なお、突出ロッド93は、シリンダロッドに相当する。
【0067】
隙間調整装置100は、突出ロッド93の移動量が所定値以上であることを検知スイッチ90が検知したときに、シリンダ装置60の外部から供給されるエネルギーを用いて隙間調整器101を動作させる供給部を備える。供給部は、シリンダ装置60に供給される圧縮空気の供給源から供給される圧縮空気を隙間調整器101に供給する。第2実施形態の隙間調整器101は、第1実施形態において駐車ブレーキシリンダ80が設けられていた位置に検知スイッチ90とメカニカルバルブ113とが設けられているため、第1実施形態の隙間調整器101と左右反対の構成となっている。
【0068】
図8に示すように、検知スイッチ90は、突出ロッド93の当接がなくなることで所定値以上移動したことを検知するスイッチである。検知スイッチ90は、突出ロッド93の移動量が所定値未満であるときに当接するローラ91と、ローラ91を支持してローラ91に突出ロッド93の先端部が当接しなくなったときに回転する支持部92とを備えている。支持部92は、突出ロッド93の移動量が所定値以上であるときに突出ロッド93の先端部とローラ91との当接がなくなることによって回転する。
【0069】
検知スイッチ90には、供給部としてのメカニカルバルブ113が取り付けられている。メカニカルバルブ113は、隙間調整器101への圧縮空気の供給と、隙間調整器101から圧縮空気の排出とを切り替える3ポートメカニカルバルブである。メカニカルバルブ113は、分岐部111から圧縮空気が入力される入力ポートP1と、入力ポートP1から入力された圧縮空気を出力する出力ポートP2と、出力ポートP2から出力した圧縮空気を外部に排出する排出ポートP3とを備える。メカニカルバルブ113の入力ポートP1と圧縮空気の供給源とは、柔軟性の高い第1ホース112を介して接続されている。メカニカルバルブ113の出力ポートP2と隙間調整器101とは、柔軟性の高い第2ホース114を介して接続されている。なお、出力ポートP2が供給部として機能する。
【0070】
メカニカルバルブ113は、検知スイッチ90の動作によってバルブのオンオフが切り替えられる。すなわち、メカニカルバルブ113は、スイッチ113Aを備えている。なお、第2実施形態のスイッチ113Aは、第1実施形態と逆の動作を行う。メカニカルバルブ113は、このスイッチ113Aを検知スイッチ90の支持部92が押しているときには、入力ポートP1と出力ポートP2との導通が遮断されて出力ポートP2と排出ポートP3とが導通されて隙間調整器101に供給した圧縮空気を排出ポートP3から排出する(排出状態)。一方、メカニカルバルブ113は、このスイッチ113Aに対する検知スイッチ90の支持部92が回転して押しがなくなると、入力ポートP1と出力ポートP2とを導通して隙間調整器101に圧縮空気を供給する(供給状態)。すなわち、検知スイッチ90は、突出ロッド93が所定値以上移動したときにメカニカルバルブ113を供給状態とするとともに、突出ロッド93が戻るときにメカニカルバルブ113を排出状態とするスイッチである。検知スイッチ90は、メカニカルバルブ113の供給状態と排出状態とを直接切り替える。
【0071】
次に、上記キャリパブレーキ装置220及び隙間調整装置100の作用について説明する。
図8を併せて参照して、制輪子12が摩耗した状態のキャリパブレーキ装置220及び隙間調整装置100の動作について説明する。常用ブレーキシリンダ70は第1実施形態と同様に動作して、第1ロッド73及び突出ロッド93の移動量が制輪子12の摩耗量に応じて増加する。そして、制輪子12の摩耗量が大きくなり、第1ロッド73及び突出ロッド93の移動量が所定値以上となると、隙間調整装置100が動作する。すなわち、隙間調整器101が伸長して、制輪子12とディスク11との隙間を短くする。
【0072】
突出ロッド93が所定値以上移動すると、突出ロッド93の先端部が検知スイッチ90のローラ91と当接しなくなり支持部92が回転することでメカニカルバルブ113のスイッチ113Aが支持部92に押されなくなる。メカニカルバルブ113は、スイッチ113Aが押されなくなり供給状態となると、入力ポートP1と出力ポートP2とを導通して第2ホース114を介して圧縮空気を隙間調整器101に供給する。なお、突出ロッド93の移動量が所定値以上とは制輪子12とディスク11との隙間が規定値以上であることに相当する。
【0073】
隙間調整器101に圧縮空気が供給されると、隙間調整器101は第1実施形態と同様に動作して全長が長くなることで、左側アーム40の基端部と右側アーム50の基端部との距離が長くなり、制輪子12とディスク11との隙間が短縮される。
【0074】
次に、第2実施形態の効果について説明する。なお、第1実施形態の(1)~(4)、(7)、及び(8)の効果に加え、以下の効果を奏する。
(5)検知スイッチ90が突出ロッド93の移動を直接検知するため、突出ロッド93の移動を別部材で検知して検知部に伝達する場合と比較して、部品点数を低減することができる。
【0075】
(6)突出ロッド93の移動量が所定値以上であるときに検知スイッチ90がメカニカルバルブ113を供給状態とするとともに、突出ロッド93の移動量が所定値未満であるときに検知スイッチ90がメカニカルバルブ113を排出状態とする。このため、シリンダ装置60の動作に合わせて、自動でメカニカルバルブ113の供給と排出とを切り替えることができる。
【0076】
(第3実施形態)
以下、
図9を参照して、隙間調整装置を備えた踏面ブレーキ装置の第3実施形態について説明する。
【0077】
図9に示すように、踏面ブレーキ装置300は、常用ブレーキ機構320を備えている。常用ブレーキ機構320がブレーキシリンダに相当する。常用ブレーキ機構320は、シリンダ321と、シリンダ321内を移動するピストン323と、ピストン323をブレーキ解除方向へ付勢するばね322とを備えている。ピストン323には、シリンダロッド324が固定されている。ピストン323は、シリンダ321内のばね322のない側に圧縮空気が供給されることでピストン323が駆動される。シリンダロッド324の先端には、支軸333を中心に回転するブレーキてこ332が連結ピン332Aを介して連結されている。ブレーキてこ332のシリンダロッド324が連結された端部と反対の端部には、球面軸受334を介して円柱状のさや棒335が取り付けられている。さや棒335の内面には、雌ねじが設けられている。さや棒335の雌ねじには、雄ねじが外周に形成された押棒336が螺合している。押棒336の先端には、制輪子302を固定する制輪子頭337が取り付けられている。制輪子302は、車輪303の踏面303Aに押し当てることで車輪303にブレーキ力を付与する。
【0078】
踏面ブレーキ装置300は、制輪子302と車輪303の踏面303Aとの隙間を調整する隙間調整装置340を備えている。隙間調整装置340は、隙間を調整する隙間調整器341と、シリンダロッド324の移動量を検知する検知部である検知スイッチ90とを備える。隙間調整器341は、さや棒335を回転させることで押棒336を押し出すことで制輪子302と車輪303の踏面303Aとの隙間を調整する。検知スイッチ90は、シリンダロッド324の移動量が所定値以上であることを検知する。
【0079】
検知スイッチ90は、シリンダロッド324の先端部324Aが当接することで所定値以上移動したことを検知するスイッチである。検知スイッチ90は、第1実施形態と同様のローラ91と、支持部92とを備えている。支持部92は、シリンダロッド324の移動量が所定値以上であるときにシリンダロッド324の先端部324Aとローラ91とが当接することによって回転する。
【0080】
隙間調整装置340は、シリンダロッド324の移動量が所定値以上であることを検知スイッチ90が検知したときに、常用ブレーキ機構320の外部から供給されるエネルギーを用いて隙間調整器341を動作させる供給部を備える。供給部は、常用ブレーキ機構320に供給される圧縮空気の供給源から供給される圧縮空気を隙間調整器341に供給する。
【0081】
検知スイッチ90には、供給部としてのメカニカルバルブ113が取り付けられている。メカニカルバルブ113は、隙間調整器341への圧縮空気の供給と、隙間調整器341から圧縮空気の排出とを切り替える3ポートメカニカルバルブである。メカニカルバルブ113は、外部の供給源から圧縮空気が入力される入力ポートP1と、入力ポートP1から入力された圧縮空気を出力する出力ポートP2と、出力ポートP2から出力した圧縮空気を外部に排出する排出ポートP3とを備える。メカニカルバルブ113は、検知スイッチ90の動作によってバルブのオンオフが切り替えられる。メカニカルバルブ113の入力ポートP1と供給源とは、柔軟性の高い第1ホース112を介して接続されている。メカニカルバルブ113の出力ポートP2と隙間調整器341とは、柔軟性の高い第2ホース114を介して接続されている。メカニカルバルブ113の排出ポートP3には、柔軟性の高い第3ホース115が接続されている。第1ホース112及び第3ホース115は、ケース330を貫通している。
【0082】
隙間調整器341は、メカニカルバルブ113から供給された圧縮空気を受けて回転する回転部342を備える。回転部342は、圧縮空気が供給されると、図示しないピストンがさや棒335を回転させて、押棒336を突出させる。
【0083】
次に、上記踏面ブレーキ装置300及び隙間調整装置340の作用について説明する。
踏面ブレーキ装置300は、常用ブレーキを作動させるときには、常用ブレーキ機構320のシリンダ321に圧縮空気が供給される。ピストン323及びシリンダロッド324が駆動されると、ブレーキてこ332が支軸333を中心に回転して、さや棒335とともに押棒336を押し出す。押棒336が押し出されると、制輪子302が車輪303の踏面303Aに押し当てられる。
【0084】
制輪子302が摩耗すると、シリンダロッド324の移動量が制輪子302の摩耗量に応じて増加する。そして、制輪子302の摩耗量が大きくなり、シリンダロッド324の移動量が所定値以上となると、隙間調整装置340が動作する。すなわち、隙間調整器341の回転部342が回転することで、押棒336がさや棒335から突出して、制輪子302と車輪303の踏面303Aとの隙間を短くする。よって、第3実施形態によれば、第1実施形態の(1)、(5)~(8)の効果を奏する。
【0085】
(他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0086】
・上記第1実施形態では、駐車ブレーキシリンダ80に供給される圧縮空気を、分岐部111を介してメカニカルバルブ113に入力したが、シリンダ装置60に供給される圧縮空気の供給源であるタンクからの配管を分岐する分岐部を設けてメカニカルバルブ113に直接入力してもよい。
【0087】
・上記各実施形態では、検知スイッチ90が第1ロッド73や突出ロッド93の所定値以上の移動を検知したが、第1ロッド73や突出ロッド93の制輪子12の摩耗が進んだ特定の状態を検知してもよい。
【0088】
・上記各実施形態では、検知スイッチ90が検知するとメカニカルバルブ113が圧縮空気を隙間調整器101に供給したが、検知部と供給部とを離間させて、検知部が検知したことを、圧縮空気をパイロット圧として供給部に出力することで供給部を動作させてもよい。このような構成によれば、圧縮空気を供給部に送ることでシリンダロッドが所定値以上移動したことを供給部に伝えることができる。
【0089】
・上記第3実施形態では、常用ブレーキ機構320のみ備える踏面ブレーキ装置300としたが、駐車ブレーキ機構も備える踏面ブレーキ装置としてもよい。この場合、駐車ブレーキ機構に供給される圧縮空気を分岐させて、隙間調整器を駆動する外部エネルギーとしてもよい。
【0090】
・上記第3実施形態では、シリンダロッド324の移動が所定値以上であることを検知スイッチ90が検知した。しかしながら、シリンダロッド324の移動が所定値未満であることを検知スイッチ90が検知して、検知していないときに、隙間調整器341を動作させてもよい。
【0091】
・上記各実施形態では、シリンダロッドの移動が所定値以上であることを検知する検知スイッチ90とした。しかしながら、検知部は、シリンダ装置のシリンダロッドの移動量が所定値以上の場合と所定値未満の場合とで状態が切り替わるものでもよい。このような場合でも「検知部がシリンダロッドの移動量を検知する」に含まれる。
【0092】
・上記各実施形態では、検知スイッチ90が第1ロッド73や突出ロッド93やシリンダロッド324と機械的に接触することで検知したが、検知部を非接触センサとしてもよい。例えば、シリンダロッドに設けられる目印等の被検知部を検知してもよい。このような構成によれば、シリンダ装置のシリンダロッドと検知部との接触をなくすことができる。
【0093】
・上記各実施形態では、隙間調整器を圧縮空気によって動作させたが、隙間調整器をモータ等の電気駆動によって動作させてもよい。
【符号の説明】
【0094】
11…ディスク
12…制輪子
20…キャリパブレーキ装置
21…ブラケット
30…連結部材
31…基部
32…第1支持部
32A…左側支持部
32B…右側支持部
33…第2支持部
35…左側回転軸
35A…操作レバー
35B…ローラ
36…右側回転軸
40…左側アーム
41…左側延出片
42…制輪子取付部材
43…制輪子回転軸
44…回転軸
45…ボルト50…右側アーム
51…右側延出片
52…制輪子取付部材
53…制輪子回転軸
54…回転軸
55…ボルト
60…シリンダ装置
70…常用ブレーキシリンダ
71…第1シリンダ室
72…第1ピストン
73…第1ロッド
73A…収容部
74…第1ばね
75…第1空間
76…第1供給ポート
80…駐車ブレーキシリンダ
81…第2シリンダ室
82…第2ピストン
83…第2ロッド
84…第2ばね
85…第2空間
86…第2供給ポート
90…検知スイッチ
91…ローラ
92…支持部
100…隙間調整装置
101…隙間調整器
110…供給部
111…分岐部
112…第1ホース
113…メカニカルバルブ
113A…スイッチ
114…第2ホース
115…第3ホース
120…駆動ピストン
121…第1ケース
121A…延出部
121B…空気通路
122…第2ケース
122A…支持ばね
123…多角形ロッド
123A…空間
123B…六角部
124…ねじ軸
124A…空間
124B…雄ねじ
124C…六角部
125…調整ナット
125A…雌ねじ
125B…凸部
126…振動対策ばね
127…当接クラッチ
128…ワンウェイクラッチ
220…キャリパブレーキ装置
300…踏面ブレーキ装置
302…制輪子
303…車輪
303A…踏面
320…常用ブレーキ機構
321…シリンダ
322…ばね
323…ピストン
324…シリンダロッド
324A…先端部
330…ケース
332…ブレーキてこ
332A…連結ピン
333…支軸
334…球面軸受
335…さや棒
336…押棒
337…制輪子頭
340…隙間調整装置
341…隙間調整器
342…回転部