(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】位置情報システム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/14 20060101AFI20240514BHJP
G01S 1/68 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G01S5/14
G01S1/68
(21)【出願番号】P 2020095741
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】川崎 宏治
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-522171(JP,A)
【文献】特表2015-525340(JP,A)
【文献】特表2009-515201(JP,A)
【文献】特開2009-052948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0011175(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/68
G01S 5/00-5/14
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1移動体と、
前記第1移動体と通信可能な複数の基準局と、
第2移動体に搭載されており、前記基準局と通信可能な位置取得装置と、を備え、
前記第1移動体は、
前記第1移動体を移動させる移動機構と、
前記複数の基準局のうちの特定の基準局との距離を示す距離情報を取得する複数の距離取得部であって、互いに異なる高さに配置される前記複数の距離取得部と、
前記
複数の距離取得部のそれぞれの位置を示す第1位置情報を取得する第1位置取得部と、
前記特定の基準局の位置を示す基準局位置情報を推定する基準局位置推定部と、
を備え、
前記基準局位置推定部は、前記第1移動体が移動している間の複数の地点における前記複数の距離取得部のそれぞれの位置を示す前記第1位置情報と、前記複数の距離取得部のそれぞれと前記特定の基準局との距離を示す前記距離情報と、を用いて、前記特定の基準局の位置を推定し、
前記複数の基準局のそれぞれは、
前記基準局位置情報を取得する基準局位置取得部を備え、
前記位置取得装置は、
前記基準局によって取得済みの前記基準局位置情報と
、
前記第
2移動体と前記複数の基準局のうちの少なくとも1つの基準局との距離
と、
を用いて得られる前記第2移動体の位置を示す第2位置情報を取得する第2位置取得部を備える、位置情報システム。
【請求項2】
前記第1移動体は
、特定済みの前
記基準局位置情報を、前記複数の基準局のそれぞれに送信する基準局位置送信
部を備え、
前記基準局位置取得部は、前記基準局位置情報を受信することによって、前記基準局位置情報を取得する、請求項1に記載の位置情報システム。
【請求項3】
前記第1移動体が移動している間の複数のタイミングのそれぞれにおいて、
前記第1位置取得部は、前記第1位置情報を取得し、
前記距離取得部は、前記複数の基準局のそれぞれについて、当該基準局との間の複数の前記距離情報を取得し、
前記基準局位置推定部は、前記複数の基準局のそれぞれについて、取得済みの複数の前記第1位置情報と複数の前記距離情報とを用いて、当該基準局の位置を推定する、請求項2に記載の位置情報システム。
【請求項4】
前記第1移動体は、取得済みの前記距離情報と、取得済みの前記第1位置情報と、を格納部に累積的に格納する、格納制御部をさらに備え、
前記基準局位置推定部は、前記複数の基準局のそれぞれについて、前記格納部に累積的に格納されている前記距離情報と前記第1位置情報とを用いて、当該基準局の位置を推定する、請求項3に記載の位置情報システム。
【請求項5】
前記第1位置取得部は、外部サーバから前
記第1位置情報を取得し、
前記基準局位置取得部は、前記外部サーバから、前記基準局位置情報を取得し、
前記第2位置取得部は、前記外部サーバから、前記第2位置情報を取得する、請求項1から4のいずれか一項に記載の位置情報システム。
【請求項6】
前記基準局は、移動不可能に設置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の位置情報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、複数の基準局と、移動体と、を備える位置情報システムに関する。
【0002】
特許文献1には、車両の位置を特定するための位置管理システムが開示されている。位置管理システムは、基準局装置と、車両に搭載される移動局装置と、を備える。基準局装置は、GPS(Global Positioning Systemの略)衛星から受信される電波を用いて、GPSによる測位位置を補正するための補正情報を生成して、移動局装置に送信する。移動局装置は、GPS衛星から受信される電波を用いて、移動局装置の位置を表す位置情報を生成する。移動局装置は、生成済みの位置情報を、受信済みの補正情報を用いて補正することによって、補正済みの位置情報を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のシステムでは、基準局をGPS衛星からの電波を受信可能な位置に配置し、基準局に電波を受信するためのGPS受信機を設置しなければならない。移動体の位置を推定するための位置情報システムでは、移動可能な移動体と通信可能にするために、位置情報システムに、複数の基準局を設置する場合がある。この場合、複数の基準局のそれぞれに、GPS衛星からの電波を受信可能な装置を利用しなければならない。
【0005】
本明細書では、複数の基準局のそれぞれがGPS衛星から電波を受信しなくて済む技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する位置情報システムは、第1移動体と、前記第1移動体と通信可能な複数の基準局と、第2移動体に搭載されており、前記基準局と通信可能な位置取得装置と、を備え、前記第1移動体は、前記第1移動体を移動させる移動機構と、前記第1移動体の位置を示す第1位置情報を取得する第1位置取得部と、を備え、前記複数の基準局のそれぞれは、前記第1位置情報と、前記第1移動体と当該基準局との距離と、を用いて得られる当該基準局の位置を示す基準局位置情報を取得する基準局位置取得部を備え、前記位置取得装置は、前記基準局によって取得済みの前記基準局位置情報と前記第1移動体と前記複数の基準局のうちの少なくとも1つの基準局との距離を用いて得られる前記第2移動体の位置を示す第2位置情報を取得する第2位置取得部を備えていてもよい。
【0007】
上記の構成では、第1移動体が第1移動体の位置を示す第1位置情報を有する。基準局の位置は、第1移動体と当該基準局との距離と、第1位置情報と、を用いて特定することができる。これにより、基準局がGPS衛星から電波を受信しなくても、第1移動体の位置と第1移動体からの距離とを用いて、基準局の位置を特定することができる。この構成によれば、第2移動体の位置は、位置が特定された基準局との距離を利用して特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】基準局位置推定処理のフローチャートを示す。
【
図6】移動体位置推定処理のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書が開示する位置情報システムの技術要素を、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0010】
第1移動体は、第1移動体と複数の基準局のそれぞれとの間の距離を示す距離情報を取得する距離取得部と、取得済みの距離情報を用いて、複数の基準局のそれぞれの位置を推定する基準局位置推定部と、特定済みの基準局の位置を示す基準局位置情報を、複数の基準局のそれぞれに送信する基準局位置送信部と、を備え、基準局位置取得部は、基準局位置情報を受信することによって、基準局位置情報を取得してもよい。
【0011】
この構成によれば、第1移動体が、基準局の位置を推定することができる。基準局は、第1移動体によって推定された自身の位置を取得することができる。
【0012】
第1移動体が移動している間の複数のタイミングのそれぞれにおいて、第1位置取得部は、第1位置情報を取得し、距離取得部は、複数の基準局のそれぞれについて、当該基準局との間の複数の距離情報を取得し、基準局位置推定部は、複数の基準局のそれぞれについて、取得済みの複数の第1位置情報と複数の距離情報とを用いて、当該基準局の位置を推定してもよい。
【0013】
この構成によれば、第1移動体と、複数の基準局のうちの1個の基準局と、の位置関係から、当該基準局の位置を特定することができる。これにより、位置を推定すべき1個の基準局とは異なる他の基準局の位置を用いなくても、基準局の位置を推定することができる。
【0014】
第1移動体は、取得済みの距離情報と、取得済みの第1位置情報と、を格納部に累積的に格納する、格納制御部をさらに備え、基準局位置推定部は、複数の基準局のそれぞれについて、格納部に累積的に格納されている距離情報と第1位置情報とを用いて、当該基準局の位置を推定してもよい。
【0015】
この構成によれば、第1移動体は、格納部に累積的に格納されている距離情報と第1位置情報とを用いて、基準局の位置を推定することができる。
【0016】
第1位置取得部は、外部サーバから第1移動体の位置を示す第1位置情報を取得し、基準局位置取得部は、外部サーバから、前記基準局位置情報を取得し、第2位置取得部は、前記外部サーバから、第2位置情報を取得してもよい。
【0017】
この構成によれば、位置情報システム以外の外部サーバから得られる情報を取得することによって、第1移動体に、第1移動体の位置を算出するための装置を備えずに済む。
【0018】
基準局は、移動不可能に設置されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、基準局位置情報を用いて第2移動体の位置を特定すべき場合毎に、基準局位置情報を更新しなくて済む。
【0020】
第1移動体は、複数の基準局のうちの特定の基準局との距離を示す距離情報を取得する複数の距離取得部であって、互いに異なる高さに配置される前記複数の距離取得部と、基準局位置情報を推定する基準局位置推定部と、をさらに備え、第1位置取得部は、複数の距離取得部のそれぞれの位置を示す第1位置情報を取得し、基準局位置推定部は、第1移動体が移動している間の複数の地点における複数の距離取得部のそれぞれの位置を示す第1位置情報と、複数の距離取得部のそれぞれと特定の基準局との距離を示す距離情報と、を用いて、特定の基準局の位置を推定してもよい。
【0021】
第1移動体の位置と第1移動体と特定の基準局との距離とを用いて基準局の位置を得る場合、複数の地点における第1移動体の位置が高さ方向において変化しない場合、特定の基準局の位置として、実際に基準局が配置されている実際の位置と、実際の位置に対して、複数の地点を含む平面に対して対称に配置される誤った位置と、が推定され得る。上記の構成では、第1位置情報として、互いに高さが異なる距離取得部の位置を示す情報を用いて、特定の基準局の位置を推定する。この構成によれば、特定の基準局の位置として、誤った位置が推定される事態を回避することができる。
【0022】
(第1実施形態)
図1に示す実施形態の位置情報システム10は、ユーザが搭乗している第2移動体80の位置を推定する。位置情報システム10は、複数の基準局20、22、24、26と、第1移動体50と、第2移動体80に搭載される制御部90と、を備える。なお、
図1に破線によって示されるサーバ100は、第3実施形態で用いられ、第1実施形態では用いられない。
【0023】
(基準局20、22、24、26の構成)
複数の基準局20、22、24、26は、地上に固定されて設置されている。複数の基準局20、22、24、26は、互いに離間して配置されている。基準局20、22、24、26は、位置情報システム10の提供者によって設置される。
【0024】
基準局20は、制御部30と、格納部32と、無線通信インターフェイス34(以下では「インターフェイス」を「I/F」と呼ぶ)と、測距信号処理部36と、を備える。格納部32は、ハードディスク等の記憶装置を備える。格納部32は、基準局20の位置を示す位置情報を格納するための格納領域を有する。無線通信I/F34は、例えば、LTE(Long Term Evolution)のような移動通信ネットワーク4と無線通信可能に接続されるインターフェイスを有する。基準局20は、無線通信I/F34によって、移動通信ネットワーク4を介して、外部装置と無線通信可能に接続される。無線通信I/F34は、第1移動体50と無線通信可能に接続されている。
【0025】
測距信号処理部36は、超音波、電波等の測距信号を発信する発信器と、他の装置が発信した測距信号を受信する受信器と、を備える。制御部30は、格納部32、無線通信I/F34及び測距信号処理部36と、図示省略された配線によって、通信可能に接続されている。制御部30は、CPUとメモリとを有する。制御部30は、メモリに格納されているコンピュータプログラムに従って、格納部32、無線通信I/F34及び測距信号処理部36を制御する。
【0026】
基準局22、24、26は、基準局20と同様の構成を有する。
【0027】
(第1移動体50の構成)
第1移動体50は、自動車等の車両である。
図3に示すように、第1移動体50は、制御部60と、格納部62と、無線通信I/F64と、位置特定部66と、測距信号処理部68と、走行機構69と、を備える。走行機構69は、エンジン、モータ等の駆動装置、車輪、トランスミッション等、第1移動体50が走行するための装置を有する。
【0028】
無線通信I/F64は、無線通信I/F34と同様の構成を有する。第1移動体50は、無線通信I/F64によって、移動通信ネットワーク4を介して、外部装置と無線通信可能に接続される。無線通信I/F64は、基準局20、22、24、26と無線通信可能に接続されている。
【0029】
位置特定部66は、複数のGPS衛星から測位信号を受信するためのアンテナを有する。位置特定部66は、複数のGPS衛星から発信される測位信号のうち、受信可能な測位信号を受信する。
【0030】
測距信号処理部68は、測距信号処理部36と同様に、超音波、電波等の測距信号を発信する発信器と、他の装置が発信した測距信号を受信する受信器と、を備える2個の測距センサ68a、68bを備える。制御部60は、格納部62、無線通信I/F64、位置特定部66及び測距信号処理部68と、図示省略された配線によって、通信可能に接続されている。制御部60は、CPUとメモリとを有する。制御部60は、メモリに格納されているコンピュータプログラムに従って、格納部62、無線通信I/F64、位置特定部66及び測距信号処理部68を制御する。
【0031】
(第2移動体80の構成)
第2移動体80は、第1移動体50と同様の自動車等の車両である。第2移動体80は、位置情報システム10によって位置が推定される。これにより、第2移動体80の搭乗者は、自身の現在の位置を知ることができる。
図4に示すように、第2移動体80は、制御部90と、格納部92と、無線通信I/F94と、測距信号処理部98と、走行機構99と、を備える。走行機構99は、走行機構69と同様である。格納部92は、格納部62と同様である。
【0032】
無線通信I/F94は、無線通信I/F34、64と同様の構成を有する。第2移動体80は、無線通信I/F94によって、移動通信ネットワーク4を介して、外部装置と無線通信可能に接続される。無線通信I/F94は、基準局20、22、24、26と無線通信可能に接続されている。測距信号処理部98は、測距信号処理部36と同様の構成を有する。
【0033】
制御部90は、格納部92、無線通信I/F94及び測距信号処理部98と、図示省略された配線によって、通信可能に接続されている。制御部90は、CPUとメモリとを有する。制御部90は、メモリに格納されているコンピュータプログラムに従って、格納部92、無線通信I/F94及び測距信号処理部98を制御する。制御部90は、例えば、第2移動体80の現在位置、目的地までの道順等を表示するナビゲーションシステムに含まれる。
【0034】
(基準局位置推定処理)
基準局20、22、24、26は、移動不可能に設置されている。基準局20の位置P20は、予め設定された基準点(0、0、0)に対して、(x0,y0,z0)と表される。同様に、基準局22の位置P22は(x2,y2,z2)と表され、基準局24の位置P24は(x4,y4,z4)と表され、基準局26の位置P26は(x6,y6,z6)と表される。基準局20、22、24、26が設置された時点では、基準局20、22、24、26の位置は特定されない。基準局20、22、24、26の位置は、基準局位置推定処理によって推定される。
【0035】
基準位置推定処理は、第1移動体50の制御部60によって実行される。制御部60は、第1移動体50を移動させながら、基準位置推定処理を実行する。基準位置推定処理では、制御部60は、まず、第1移動体50の位置P50(x50,y50,z50)を特定する。S12では、制御部60は、位置特定部66で受信されるGPS衛星からの測位信号を取得する。次いで、S14では、制御部60は、第1移動体50の位置P50を特定する。制御部60は、位置特定部66で受信される複数のGPS衛星からの測位信号を用いて、各GPS衛星の位置と、測位信号が発信されて位置特定部66に受信されるまでの期間と、を特定する。次いで、制御部60は、測位信号が受信されるまでの期間を用いて、GPS衛星までの距離を算出する。制御部60は、GPS衛星の位置とGPS衛星までの距離とを用いて、第1移動体50の位置P50を特定する。制御部60は、特定された第1移動体50の位置P50を表す位置情報を格納部62に格納させる。基準位置推定処理では、S12から後述するS22までの処理が繰り返し実行される。S14では、制御部60は、前回までのS14の処理において格納部62に格納されている第1移動体50の位置P50を表す位置情報を削除せずに、累積的に格納する。
【0036】
次いで、S16において、制御部60は、測距センサ68a、68bのそれぞれから、測距信号を発信させる。測距センサ68a、68bのそれぞれは、他の測距センサ68a、68bから発信される測距信号と区別可能な態様で信号を発信する。制御部60は、測距信号が発信された時刻を格納しておく。基準局20の制御部30は、測距信号処理部36において測距信号が受信されると、測距信号処理部36から測距信号を発信させる。測距信号処理部36は、測距センサ68a、68bのいずれかのセンサから測距信号が受信されると、受信される測距信号と同一の信号を含む測距信号を発信する。S18において、制御部60は、基準局20から発信された測距信号を、測距センサ68a、68bに受信させる。制御部60は、測距センサ68a、68bで受信される測距信号に、測距センサ68a、68bのどちらのセンサから発信された測距信号が含まれているかを特定する。制御部60は、測距信号が受信された時刻を、測距センサ68a、68bのうちの特定された測距センサ68a、68bから測距信号が受信された時刻として、格納部62に格納させる。
【0037】
次いで、S20では、制御部60は、測距センサ68a、68bと基準局20との距離を算出する。具体的には、まず、測距センサ68aについて、制御部60は、S16で測距信号が発信された時刻とS18で測距センサ68aの測距信号が受信された時刻との差を算出する。次いで、制御部60は、測距信号の進行速度と時刻との差とを乗算して算出される距離の1/2の距離を、測距センサ68aと基準局20との距離として算出する。制御部60は、算出された基準局20との距離を、測距センサ68aの位置を表す位置情報に組み合わせて格納部62に格納させる。測距センサ68aの位置を表す位置情報は、直前のS14の処理で既に格納部62に格納されている位置情報、即ち、第1移動体50の位置を表す位置情報と同一である。同様に、制御部60は、測距センサ68bと基準局20との距離として算出する。制御部60は、算出された基準局20との距離を表す距離情報を、測距センサ68bの位置を表す位置情報に組み合わせて格納部62に格納させる。測距センサ68bの位置は、測距センサ68aの位置、即ち、第1移動体50の位置から、測距センサ68aと測距センサ68bとの高さの相違分が差し引きされている。なお、以下では、測距センサ68aの位置と測距センサ68bの位置と、を合わせて、第1移動体50の位置と称する。
【0038】
上記では、基準局20との測距信号の通信及び基準局20との距離の算出について説明されている。しかしながら、複数の基準局20、22、24、26のうち、S16において第1移動体50から発信された測距信号を受信した基準局は、基準局20と同様に、測距信号を、第1移動体50に送信する。これにより、S18では、複数の基準局20、22、24、26のうち、1個以上の基準局からの測距信号が受信される。S20では、制御部60は、基準局20との距離を算出する処理と同様の処理を実行して、測距信号の送信元の基準局との距離を算出して、第1移動体50の位置を示す位置情報との組み合わせを、格納部62に格納させる。
【0039】
次いで、S22において、制御部60は、所定の回数の距離が算出されているか否かを判断する。所定の回数は、第1移動体50、即ち測距センサ68a、68bの位置を表す位置情報と、第1移動体50と基準局20との距離を表す距離情報と、の組み合わせを用いて、基準局20の位置を特定するために必要な組み合わせの個数以上の回数である。例えば、所定の回数は、4回であってもよいし、5回以上であってもよい。
【0040】
所定の回数の距離が算出されていない場合(S22でNO)、S12に戻って、S12からS20までの処理が再度実行される。第1移動体50は、移動しながら、基準局位置推定処理を実行している。このため、S12からS20までの処理が実行されるごとに、異なる第1移動体50の位置と基準局20との距離との組み合わせが算出される。
【0041】
所定回数の距離が算出されている場合(S22でYES)、S24において、制御部60は、所定回数の基準局20との距離を表す距離情報と、第1移動体50の位置を表す位置情報と、の組み合わせを用いて、基準局20の位置を推定する。
【0042】
基準局20の位置P20=(x20,y20,z20)と、特定のタイミングでの第1移動体50の位置P50k=(x50k,y50k,z50k)と、を用いると、特定のタイミングでの第1移動体50と基準局20との距離D20kは、以下の式で表すことができる。
【0043】
【0044】
同様に、基準局22、24、26のそれぞれの位置を、P22、P24、P26と表すと、特定のタイミングでの第1移動体50との距離D22k、D24k、D26kは、上記の数式と同様に表すことができる。但し、GPS信号及び測距信号を用いて、位置の推定及び距離の測定を実行する場合、信号伝播の際のノイズ、第1移動体50の計時のずれ等によって、誤差が生じ得る。制御部60は、以下の数式によって算出される評価値Jが最小となるように、各基準局20、22、24、26の位置を推定する。
【0045】
【0046】
ここで、Mは、所定の回数を示す。P50kは、k回目の第1移動体50の位置P50を示し、測距センサ68a、68bのそれぞれについて、区別される。Piは、複数の基準局iの位置を示し、iは、20、22、24、26を含む。Dkiは、k回目の第1移動体50と基準局iとの距離を示し、測距センサ68a、68bのそれぞれについて、区別される。
【0047】
(移動体位置推定処理)
次いで、
図6を参照して、制御部90が実行する移動体位置推定処理を説明する。移動体位置推定処理によって、第2移動体80の位置が推定される。第2移動体位置推定処理では、まず、S32において、制御部90は、測距信号処理部98に、測距信号を発信させる。基準局20の制御部30は、測距信号処理部36において測距信号が受信されると、測距信号処理部36から測距信号を発信させる。測距信号処理部36は、測距信号処理部98から測距信号が受信されると、受信される測距信号と同一の信号を含む測距信号を発信する。同様に、基準局22、24、26の制御部は、基準局22、24、26の測距信号処理部において測距信号が受信されると、測距信号処理部から測距信号を発信させる。
【0048】
S34では、制御部90は、基準局20、22、24、26から発信された測距信号を、測距信号処理部98に受信させる。S36では、制御部90は、基準局20、22、24、26のそれぞれの位置を表す位置情報を、無線通信I/F94を介して、各基準局20、22、24、26から取得する。次いで、S38では、制御部90は、第2移動体80の位置を推定する。具体的には、まず、制御部90は、S32における測距信号の発信時刻と、S34における基準局20から受信される測距信号の受信時刻と、測距信号の伝播速度と、を用いて、第2移動体80と基準局20との距離を算出する。同様に、制御部90は、基準局22、24、26と第2移動体80との距離を算出する。
【0049】
次いで、制御部90は、第2移動体80の位置P80と、基準局20の位置P20と、第2移動体80と基準局20との距離D80と、の関係を表す以下の関係式、すなわち、D280=||P80-P20||2を用いるとともに、第2移動体80の位置と、基準局22、24、26の位置と、第2移動体80と基準局22、24、26のそれぞれの距離と、を用いて、第2移動体80の位置を算出する。
【0050】
なお、制御部90は、4個以上の基準局20、22、24、26との位置関係から、第2移動体80の位置を推定する場合、基準局位置推定処理と同様に、第2移動体80の位置と基準局20、22、24、26の位置とから算出される第2移動体80の位置と基準局20、22、24、26との距離と、測距信号の送受信で得られる第2移動体80の位置と基準局20、22、24、26との距離と、の差の評価値Jが最小になるように、第2移動体80の位置を推定する。
【0051】
(効果)
位置情報システム10では、第1移動体50が、第1移動体50の位置を特定するために、位置特定部66を備える一方、複数の基準局20、22、24、26は、GPS衛星からの信号を受信するための装置を備えていない。これにより位置情報システム10内に複数配置される基準局20、22、24、26の構成を簡素化することができる。また、位置情報システム10では、基準局20、22、24、26がGPS衛星からの信号を受信せずに済むため、基準局20、22、24、26をGPS衛星からの信号が届きづらい位置(例えば屋内)に配置することができる。
【0052】
基準局20、22、24、26の位置は、第1移動体50の位置と第1移動体50からの距離とを用いて推定される。基準局20、22、24、26は、GPS衛星から電波を受信しなくても、基準局20、22、24、26の位置を特定することができる。この結果、基準局20、22、24、26の位置を予め厳密に特定せずに済む。
【0053】
第1移動体50は、測距信号を発信することによって、基準局20、22、24、26との距離を特定し、基準局20、22、24、26の位置を推定する。このため、基準局20、22、24、26の位置を推定するための装置を別途準備せずに済む。
【0054】
第1移動体50は、基準局20、22、24、26の位置を推定する際に、複数の地点から、基準局20、22、24、26との距離を特定する。この構成によれば、第1移動体50は、1個の基準局20の位置を推定する際に、複数地点における第1移動体50の位置と、第1移動体50と基準局20との距離と、を特定することによって、1個の基準局20の位置を推定することができる。これにより、1個の基準局20の位置を推定する際に、他の基準局22、24、26の位置を推定せずに済む。なお、本実施形態では、1個の基準局20の位置を推定する際に、複数地点における第1移動体50の位置と、第1移動体50と他の基準局20との距離と、を特定することによって、基準局20の位置の推定精度を向上させている。
【0055】
基準局位置推定処理では、第1移動体50は、S14で特定済みの第1移動体50の位置と、S20で算出済みの基準局20、22、24、26との距離と、を、格納部62に累積的に格納している。この構成によると、第1移動体50は、格納部62に累積的に格納しているS14で特定済みの第1移動体50の位置と、S20で算出済みの基準局20、22、24、26との距離と、を用いることによって、基準局20、22、24、26の位置を推定することができる。この構成によれば、予め、S14で特定済みの第1移動体50の位置と、S20で算出済みの基準局20、22、24、26との距離と、を格納しておけば、第1移動体50は、いつでも基準局20、22、24、26の位置を推定することができる。
【0056】
第1移動体50は、高さが異なる測距センサ68a、68bから測距信号を発信して、測距センサ68a、68bから基準局20、22、24、26との距離を特定する。これにより、基準局位置推定処理の際に、第1移動体50の高さが変動しない場合に、基準局20、22、24、26の高さ方向の位置が誤って推定される事態を回避することができる。
【0057】
上記から明らかなように、制御部90が、「位置取得装置」の一例である。
【0058】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1移動体50の位置特定部66の構成が、第1実施形態と異なる。また、基準局位置推定処理のS12、S14において、第1移動体50の位置を特定する処理が、第1実施形態と異なる。本実施形態では、位置特定部66は、GPSアンテナに換えて、レーザ光を照射する照射器と、周囲の物体に当たって反射されるレーザ光を受光する受光器と、を備える。また、格納部62は、第1移動体50の周囲の建物や物体の配置を示す環境地図を、予め格納している。
【0059】
基準位置推定処理のS12、S14では、LiDAR(Light Detection and Rangingの略)を利用して、第1移動体50の位置を特定する。具体的には、S12において、制御部60は、位置特定部66にレーザ光を照射させて、周囲の建物等から反射されたレーザ光を受光する。次いで、S14では、制御部60は、レーザ光の受光タイミングから、第1移動体50の周囲に位置する建物等の形状を検出する。次いで、制御部60は、格納部62に格納されている環境地図と、検出済みの周囲の形状と、を照合することによって、第1移動体50の位置を特定する。
【0060】
この構成によれば、第1移動体50は、GPS衛星からの信号を受信せずに済む。このため、第1移動体50がGPS衛星からの信号が届きづらい場所を走行している間でも、第1移動体50の位置を特定することができる。なお、変形例では、第1移動体50の位置特定部66は、GPSアンテナと、レーザ光を照射する照射器と、周囲の物体に当たって反射されるレーザ光を受光する受光器と、を備えていてもよい。この場合、制御部60は、GPS衛星からの測位信号を用いた位置特定と、LiDARを用いた位置特定のどちらかを用いて、第1移動体50の位置を特定してもよい。
【0061】
(第3実施形態)
図1に示すように、本実施形態は、第1移動体50と、基準局20、22、24、26と、第2移動体80と、のそれぞれと、移動通信ネットワーク4を介して、通信可能なサーバ100が配置されている。サーバ100は、位置情報システム10の外部に配置されている。本実施形態では、サーバ100は、第1移動体50の位置を特定する処理と、基準局20、22、24、26の位置を推定する処理と、第2移動体80の位置を特定する処理と、を実行する。具体的には、制御部60は、S12と同様に、GPS衛星からの測位信号を、サーバ100に送信する。サーバ100は、受信済みのGPS衛星からの測位信号を用いて、S14と同様の処理を実行することによって、第1移動体50の位置を特定する。サーバ100は、特定済みの第1移動体50の位置を表す位置情報を、第1移動体50に送信する。これにより、制御部60は、第1移動体50の位置を表す位置情報を取得する。
【0062】
次いで、制御部60は、S16~S20の処理を実行することによって、基準局20、22、24、26との距離を算出する。次いで、制御部60は、算出済みの距離を表す距離情報を、サーバ100に送信する。サーバ100では、受信済みの距離情報と、第1移動体50の位置を表す位置情報と、を用いて、基準局20、22、24、26の位置を推定する。サーバ100は、推定済みの基準局20、22、24、26の位置を表す位置情報を、基準局20、22、24、26に送信する。基準局20の制御部30は、サーバ100から位置情報を受信することによって、位置情報を取得する。基準局22、24、26の制御部も同様である。
【0063】
さらに、第2移動体80の制御部90が、S32、S34の処理を実行して得られた第2移動体80と基準局20、22、24、26との距離情報を、サーバ100に送信する。サーバ100は、受信済みの距離情報と、基準局20、22、24、26の位置を表す位置情報と、を用いて、S38の処理と同様に、第2移動体80の位置を推定する。サーバ100は、推定済みの第2移動体80の位置を表す位置情報を、第2移動体80に送信する。第2移動体80の制御部90は、サーバ100から送信から位置情報を受信することによって、位置情報を取得する。
【0064】
本実施形態では、位置情報システム10に、第1移動体50の位置を特定する処理と、基準局20、22、24、26の位置を推定する処理と、第2移動体80の位置を特定する処理と、を実行するための装置を配置せずに済む。これにより、位置情報システム10を簡素化することができる。なお、変形例では、サーバ100は、第1移動体50の位置を特定する処理と、基準局20、22、24、26の位置を推定する処理と、第2移動体80の位置を特定する処理と、のうちの少なくとも1個の処理を実行してもよい。
【0065】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
【0066】
(変形例)
(1)基準局位置推定処理では、第1移動体50の位置及び第1移動体50と基準局20、22、24、26との距離に加えて、複数の基準局20、22、24、26のうちの2個の基準局間の距離を示す距離情報を用いて、基準局20、22、24、26を推定してもよい。基準局間の距離は、各基準局20、22、24、26が測距信号を通信することによって、特定されてもよいし、予め、基準局20、22、24、26又は第1移動体50に格納されていてもよい。この場合、例えば、基準局20の推定位置と基準局22の推定位置とから算出される基準局20と基準局22との距離と、既知の基準局20と基準局22との距離と、の差が、最小となるように、基準局20と基準局22の推定位置を特定してもよい。他の基準局24、26も同様である。
【0067】
(2)複数の基準局20、22、24、26のうちの少なくとも1個の基準局は、移動可能であってもよい。この場合、移動可能な基準局は、走行機構、飛行機構等の移動機構を備えていてもよい。あるいは、基準局が、海、湖等の水面に浮遊して配置されており、水面の上下動に合わせて移動可能であってもよい。
【0068】
(3)第1移動体50、第2移動体80は、ドローン等、飛行によって移動可能であってもよい。
【0069】
(4)第1移動体50は、測距センサ68a、68bを備える。しかしながら、測距信号処理部68の構成は、これに限られない。例えば、第1移動体50は、測距センサ68a、68bに加えて、さらに、測距センサを備えていてもよい。この場合、追加の測距センサは、測距センサ68a、68bの少なくとも一方と同一の高さであって、異なる位置に配置されていてもよい。第2移動体80、基準局20、22、24、26も同様に、複数の測距センサを備えていてもよい。また、例えば、第1移動体50は、1個の測距センサ68aのみを備えていてもよい。この場合、測距センサ68aは、第1移動体50において、移動可能に配置されていてもよい。例えば、測距センサ68aは、少なくとも上下方向に移動可能であってもよいし、回転可能であってもよい。
【0070】
(5)位置情報システム10は、複数の第1移動体50を備えていてもよい。この場合、各第1移動体50は、1個の測距センサ68a、68bを備えていてもよい。
【0071】
(6)基準局位置推定処理は、制御部60以外の制御部、例えば、制御部30、基準局22、24、26の制御部が実行してもよい。同様に、移動体位置推定処理は、制御部90以外の制御部、例えば、制御部30、60が実行してもよい。
【0072】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0073】
4:移動通信ネットワーク、10:位置情報システム、20、22、24、26:基準局、30:制御部、32:格納部、34:無線通信インターフェイス、36:測距信号処理部、50:第1移動体、60:制御部、62:格納部、64:無線通信I/F、66:位置特定部、68:測距信号処理部、68a、68b:測距センサ、69:走行機構、80:第2移動体、90:制御部、92:格納部、94:無線通信I/F、98:測距信号処理部、99:走行機構、100:サーバ