(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】スポーツ用パンツ
(51)【国際特許分類】
A41D 13/00 20060101AFI20240514BHJP
A41D 1/089 20180101ALI20240514BHJP
A41D 27/20 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A41D13/00 115
A41D1/089
A41D27/20 C
(21)【出願番号】P 2020096370
(22)【出願日】2020-06-02
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】江田 容子
(72)【発明者】
【氏名】中田 将文
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-68313(JP,U)
【文献】実開昭58-31215(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0305433(US,A1)
【文献】特開2017-106137(JP,A)
【文献】特開2007-119959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D1/06、1/089、13/00-13/12、27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのサイドポケット部を含むスポーツ用パンツであって、
前記サイドポケット部の入口は前記
スポーツ用パンツのサイド部縫製線上にあり、
少なくとも前記サイドポケット部の入口より下の両サイド部縫製線は、静置した状態における外側折り線より内側に配置しており、
前記サイドポケット部は、ペットボトルの形状に沿った形状であり、上縁部はパンツ生地に固定し、側縁部は前記サイド部縫製線に固定し
ており、
前記
スポーツ用パンツは、
サイドポケット部の上縁部より上で腰の紐入れ部まで、伸縮性肌側生地とその上の伸縮性カバー生地による円筒状の伸縮性胴回り部が配置され、
前記胴回り部は、身丈方向の幅が5~15cmであることを特徴とするスポーツ用パンツ。
【請求項2】
前記サイドポケット部は3辺が直線で1辺が凸円弧の生地を2つ折りし、上縁部はパンツ生地に縫製して固定し、側縁部はサイド部に縫製して固定している請求項1に記載のスポーツ用パンツ。
【請求項3】
前記
スポーツ用パンツは、
上部に伸縮性胴回り部があり、前記伸縮性胴回り部は下腹部及び腰の後部を含む周囲を覆い、下限は恥骨を含む位置から0.1~3cm上にあり、上限は臍部の上下3cm内の位置にあり、
伸縮性肌側生地とその上の伸縮性カバー生地による円筒状の伸縮性胴回り部が配置され、前記伸縮性肌側生地と伸縮性カバー生地は下部で身幅方向に固定されているとともに、身丈方向に複数個所固定され、上部は開放されマルチポケット部が形成されており、
前記
伸縮性胴回り部の下部には織物生地が配置されている請求項1又は2に記載のスポーツ用パンツ。
【請求項4】
前記伸縮性肌側生地と伸縮性カバー生地は、ツーウェイの編み物である請求項1
~3のいずれか1項に記載のスポーツ用パンツ。
【請求項5】
前記
伸縮性肌側生地は、上端部は折り返されて紐入れ部を形成している請求項
1~4のいずれか1項に記載のスポーツ用パンツ。
【請求項6】
前記伸縮性カバー生地は、伸縮性肌側生地の紐入れ部より低い位置に固定されている請求項
1~5に記載のスポーツ用パンツ。
【請求項7】
前記伸縮性カバー生地は、メッシュ生地である請求項
1~6のいずれか1項に記載のスポーツ用パンツ。
【請求項8】
前記マルチポケット部は2~8個である請求項
3に記載のスポーツ用パンツ。
【請求項9】
前記伸縮性肌側生地は、荷重14.7Nで伸長率はタテ25~170%、ヨコ25~170%であり、
前記伸縮性カバー生地は、荷重14.7Nで伸長率はタテ70~130%、ヨコ20~70%である請求項
1~8のいずれか1項に記載のスポーツ用パンツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスポーツ用パンツに関する。さらに好適にはマラソン、ランニング、ジョギング、散歩等のスポーツ用パンツに関する。
【背景技術】
【0002】
ランニング等のスポーツ用パンツは織物性のパンツ、あるいは大臀部、太腿部、膝回り、ふくらはぎ部等の必要な筋肉に着圧パワーをかけたり、筋肉の振動を抑えたり、あるいは腰部を締めて姿勢制御する等の様々なコンプレッションタイプのタイツが知られている。従来例として、本出願人は特許文献1において、ウエストバッグのずれを防止するため、腰後部に滑り止め部材を配置することを提案した。また、スポーツ用タイツとしてはポリウレタン糸等の弾性糸を含む伸縮性編物生地を使用し、必要な個所には弾性の高い伸縮性編物生地を配置し、その他の箇所には弾性の低い伸縮性編物生地を配置していた(例えば特許文献2~3)。さらに本出願人は特許文献4において、伸縮性生地をパンツの上部に円周状に配置し、ペットボトルを腰の位置にヨコ向けに入れて走ることができるパンツを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-127463号公報
【文献】特開2005-226217号公報
【文献】特開2013-067926号公報
【文献】特開2017-106137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献で提案されているパンツは、サイドポケット部に水を入れたペットボトルを入れると、ペットボトルは不安定であり、安定した状態で保持して走るにはなお問題があった。
本発明は、前記従来の問題を解決するため、サイドポケット部の構造を改良し、水を入れたペットボトルを安定した状態で保持して走ることができるスポーツ用パンツを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のスポーツ用パンツは、少なくとも一つのサイドポケット部を含むスポーツ用パンツであって、
前記サイドポケット部の入口は前記スポーツ用パンツのサイド部縫製線上にあり、
少なくとも前記サイドポケット部の入口より下の両サイド部縫製線は、静置した状態における外側折り線より内側に配置しており、
前記サイドポケット部は、ペットボトルの形状に沿った形状であり、上縁部はパンツ生地に固定し、側縁部は前記サイド部縫製線に固定しており、
前記スポーツ用パンツは、サイドポケット部の上縁部より上で腰の紐入れ部まで、伸縮性肌側生地とその上の伸縮性カバー生地による円筒状の伸縮性胴回り部が配置され、
前記胴回り部は、身丈方向の幅が5~15cmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、サイドポケット部の入口はパンツのサイド部縫製線上にあり、少なくともサイドポケット部の入口より下の両サイド部縫製線は、静置した状態における外側折り線より内側に配置しており、前記サイドポケット部は、ペットボトルの形状に沿った形状であり、上縁部はパンツ生地に固定し、側縁部は前記サイド部縫製線に固定していることにより、水を入れたペットボトルはサイドポケット内で安定した状態で保持して走ることができ、走る際の大腿四頭筋の上下動の動きを妨げることがない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態のスポーツ用パンツのサイドポケット部にペットボトルを入れた状態の模式的正面説明図である。
【
図4】
図4Aは同パンツのサイドポケット部生地の模式的平面図、
図4Bは同ポケット部生地の模式的縫製図である。
【
図5】
図5は同パンツのマルチポケット部及び内ポケット部を説明するための模式的一部展開図である。
【
図6】
図6は従来のパンツのサイドポケット部にペットボトルを入れた状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のパンツは、少なくとも一つのサイドポケット部を含む。両サイドにサイドポケット部があってもよい。サイドポケット部の入口はパンツのサイド部縫製線上にあり、少なくともサイドポケット部の入口より下の両サイド部縫製線は、静置した状態における外側折り線より内側に配置しており、ペットボトルの形状に沿った形状であり、上縁部はパンツ生地に固定し、側縁部はサイド部縫製線に固定している。これにより、水の入ったペットボトルは大腿四頭筋、より具体的には大腿直筋の前横あたりに立った状態でサイドポケット部内に挿入される。したがって、走った状態でも大腿四頭筋の上下動の動きを妨げず、ペットボトル自体も安定して保持される。前記サイドポケット部は3辺が直線で1辺が凸円弧の生地を2つ折りし、上縁部はパンツ生地に縫製して固定し、側縁部はサイド部に縫製して固定するのが好ましい。
【0009】
本発明のパンツは、上部に伸縮性肌側生地とその上の伸縮性カバー生地による円筒状の伸縮性胴回り部が配置されているのが好ましい。伸縮性胴回り部は、下腹部及び腰の後部を含む周囲を覆い、下限は恥骨を含む位置から0.1~3cm上にあるのが好ましく、上限は臍部の上下3cmの位置にあるのが好ましい。これにより、下腹部及び腰の後部を含む胴体周囲を締め付けることができ、水を入れたペットボトルをサイドポケットに入れても、パンツはずり落ちることがない。さらに胴回り部は円筒状に形成されていることから走行姿勢の安定化ができるうえ、腰の筋肉の負担が少なく楽に走ることができる。
【0010】
前記胴回り部の伸縮性肌側生地と伸縮性カバー生地は、下部で身幅方向に固定されているとともに、身丈方向に複数個所固定され、上部は開放されマルチポケット部が形成されているのが好ましい。マルチポケット部の上部は空いたままであるので小物入れとして使い勝手が良い。マルチポケット部は、小物入れとして使い勝手が良い。小物としては、携帯電話、各種カード類、スポーツ用ジェル、飴、菓子、ティッシュペーパー、ハンカチ等がある。
【0011】
前記胴回り部の伸縮性肌側生地と伸縮性カバー生地は、例えば編み物である。タテ編み地でもヨコ編み地でもよい。前記胴回り部の身丈方向の長さ(幅)5~15cmが好ましく、より好ましくは6~14cmである。前記伸縮性肌側生地と伸縮性カバー生地は、ツーウェイの編み物が好ましい。ツーウェイの編み物はポリウレタンなどの弾性糸を入れた編み物で形成できる。
伸縮性肌側生地は、試験片寸法 幅5cm、長さ10cm、チャック間距離5cm、荷重速度200mm/minの条件で、荷重14.7N時の伸長率が丸編み地を採用する場合、タテ(身丈方向)25~170%、ヨコ(身幅方向)25~170%が好ましく、トリコット生地を採用する場合、タテとヨコの少なくとも一方の伸長率50%以上が好ましく、より好ましくはタテ30~40%、ヨコ60~120%である。
伸縮性カバー生地は、前記の条件で荷重14.7Nで伸長率はタテ70~130%、ヨコ20~70%が好ましい。前記の範囲であれば、胴体を締め付け、姿勢を安定化させるのに好適である。また、マルチポケット部を設けたときに、小物も安定して保持できる。
【0012】
伸縮性胴回り部の下部には織物生地が配置されているのが好ましい。織物生地は薄くて軽くできる。織物生地は通常のポリエステル繊維で作成されるパンツ生地でよく、低伸縮性又は非伸縮性が好ましい。これによりランニング時には臀部から脚部の筋肉はフリー状態に保たれ、自由な動きができる。マラソンの一流選手は、臀部から脚部の筋肉はフリー状態に保ち、自由な動きを好む人が多い。本発明のパンツはこのような要望に沿うものである。上部胴回りが幅広(5~15cm)の伸縮性編地で、下部が非伸縮性の織物のパンツにすると、上部は従来のタイツ生地であり、下部は従来の織物生地で構成されることになり、デザイン的にも優れたものとなる。サイドポケット部の生地は織物が好ましい。
【0013】
胴回り部は全体が伸縮性生地であるので紐入れ部はなくてもよいが、さらに強固に締めるため、伸縮性肌側生地の上端部は折り返して紐入れ部としてもよい。紐入れ部にはゴム紐とともに通常の非弾性糸の紐を通してもよい。また、前記胴回り部の伸縮性カバー生地は、伸縮性肌側生地の紐入れ部より低い位置に固定されているのが好ましい。これにより、伸縮性肌側生地と伸縮性カバー生地の間を小物入れポケットとして使用する際に、伸縮性カバー生地を外側に開けやすくなり、使い勝手がよくなる。伸縮性カバー生地はメッシュ生地であるのが好ましい。メッシュ生地であると蒸れにくい。
【0014】
マルチポケット部は任意の数とすることができるが、2~8個が好ましい。各ポケット部の大きさは同一としてもよいし、異ならせてもよい。マルチポケット部の少なくとも一つのポケット内部には開閉具(例えばファスナー)付きの内ポケットを設けるのが好ましい。内ポケットがあると小銭、プリベートカード、交通カード等、重要なものを入れるのに便利である。内ポケットは伸縮性肌側生地側に設けるのが好ましい。伸縮性肌側生地は身体にぴったりしているので、内ポケットに小銭を入れて走ってもほとんど動くことはなく、音もしない。
【0015】
前記胴回り部の伸縮性肌側生地と伸縮性カバー生地の単位面積当たりの質量(目付)は、それぞれ40~300g/m2であるのが好ましく、より好ましくは80~250g/m2である。目付が前記の範囲であれば、軽量であり、スポーツ用パンツとして好適である。
【0016】
前記胴回り部の伸縮性肌側生地と伸縮性カバー生地は、例えば、丸編、ヨコ編、タテ編(トリコット編、ラッセル編を含む)、パイル編等を含み、平編、天竺編、リブ編、スムース編(両面編)、ゴム編、パール編、デンビー組織、コード組織、アトラス組織、鎖組織、挿入組織等がある。これらの編み物に用いる繊維は、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)フィラメント糸、同紡績糸、ナイロンフィラメント糸、同紡績糸、ポリウレタンフィラメント糸あるいはこれらの組み合わせが好ましい。パンツの下部に配置する生地は織物が好ましく、例えば平織、綾織、朱子織等がある。
【0017】
本発明のスポーツ用パンツは短パン、7分丈、足首までの長さのパンツのいずれであっても良い。短パンはトレーニング時やレースで着用し、7分丈や足首までの長さのパンツは寒い時期に着用する。
【0018】
以下図面を用いて説明する。以下の図面において同一符号は同一物を示す。
図1は本発明の一実施形態のスポーツ用パンツのサイドポケット部にペットボトルを入れた状態の模式的正面説明図であり、
図2は同パンツの模式的背面図である。このスポーツ用パンツ1は、サイドポケット部2a,2bを含み、サイドポケット部2a,2bの入口(開口部)3a,3bはパンツ1のサイド部縫製線4a,4b上にある。少なくとも前記入口3a,3bより下の両サイド部縫製線4a,4bは、静置した状態における外側折り線5a,5bより内側に配置している。また、サイドポケット部2a,2bは、ペットボトル6の形状に沿った形状であり、上縁部は縫製によりパンツ生地に固定し、側縁部はサイド部縫製線4a,4bに縫製して固定している。ペットボトル6は大腿直筋の前横あたりに立った状態でサイドポケット部内に挿入される。
【0019】
パンツ1は、伸縮性肌側生地7と伸縮性カバー生地9により、走行姿勢を安定化させるための円筒状の胴回り部10を形成している。伸縮性肌側生地7は、例えばツーウェイの編み物である。胴回り部10の下のパンツ下部生地部11は、伸縮性は無いか又は伸縮性肌側生地の伸縮性より低い伸縮性の生地、例えば織物生地である。胴回り部10には身丈方向に複数個所の縫製で固定され、マルチポケット部12a-12cが形成されている。マルチポケット部12aの内部には内ポケット部13が形成され、開閉具(例えばファスナー14)によって開閉可能である。胴回り部10は全体が伸縮性生地であるので紐入れ部8はなくてもよいが、さらに強固に締めるため、伸縮性肌側生地7の上端部は折り返して紐入れ部8としてもよい。紐入れ部8にはゴム紐とともに通常の非弾性糸の紐18を通してもよい。
【0020】
図3は同パンツ1の模式的裏側正面図、
図4Aは同パンツ1のサイドポケット部生地2の模式的平面図、
図4Bは同ポケット部生地2の模式的縫製図である。まず
図4Aに示すように、3辺が直線で1辺が凸円弧のサイドポケット部生地2を2つ折りし、
図4B及び
図3に示すように上縁部15は胴回り部10の下縁部とパンツ下部11の上縁部の縫製線17に縫製して固定し、側縁部16はサイド部4a,4bに縫製して固定している。サイドポケット部2a,2bの生地は織物が好ましい。
【0021】
図5は同パンツ1のマルチポケット部12a-12c及び内ポケット部13を説明するための模式的一部展開図である。伸縮性肌側生地7の上に、伸縮性カバー生地9を配置して縫製し胴回り部10としている。伸縮性肌側生地7と伸縮性カバー生地9とは身丈方向に複数個所固定され、上部は開放されマルチポケット部が形成されている。マルチポケット部12a-12hは
図1、
図2、
図5に示すように胴回り全体にあり、大きさも任意に作成できる。伸縮性カバー部分9の上端部は、伸縮性肌側生地7の紐入れ部8より低い位置に固定されている。これにより、小物の出し入れが容易となる。伸縮性カバー生地9はメッシュ生地が好ましい。マルチポケット部は2~8個が好ましい。
マルチポケット部の内部には開閉具(例えばファスナー14)付きの内ポケット13を設けるのが好ましい。内ポケット13は伸縮性肌側生地7を2重にし、開口部に開閉具(例えばファスナー14)を付けて作成する。内ポケット13は小銭、プリベートカード、交通カード等、重要なものを入れるのに便利である。伸縮性肌側生地は伸縮性生地であり、身体にぴったりしているので、内ポケットに小銭を入れて走ってもほとんど動くことはなく、音もしない。
【0022】
図6は従来のパンツ20のサイドポケット部23にペットボトル25を入れた状態の正面図である。従来のパンツ生地21は織物であり、サイドポケット部23は、入口(開口部)24は斜め下に向かってハの字型に開いており、ポケット内部も大きいため、ペットボトル15を入れて走ると斜めになってしまい、大腿四頭筋、より具体的には大腿直筋の上に乗る形で配置されるため、太腿を挙げる動作の妨げとなっていた。このため、サイドポケット部にペットボトルを入れて走ることは困難であった。また、従来のパンツ20は、胴体を締め付ける部分が紐入れ部22のみであるため、ペットボトルを入れて走るとパンツ20がずり落ちてくる問題があった。
【実施例】
【0023】
以下実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0024】
(実施例1)
(1)伸縮性肌側生地
ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート:PET)のマルチフィラメント糸90質量%、ポリウレタンフィラメント糸10質量%を使用し、トリコット組織の編み物を作成した。目付は245g/m2であった。この編物は、試験片寸法幅5cm×長さ10cm、チャック間距離5cm、荷重速度200mm/minの条件で、荷重14.7N時の伸長率はタテ34%、ヨコ101%であった。
(2)伸縮性カバー生地
繊維素材:ナイロンのマルチフィラメント糸(総繊度:78tex,構成本数24本,生糸)83質量%、ポリウレタンフィラメント糸(繊度:310tex)17質量%を使用し、26ゲージの緯編機でゴム編み組織のメッシュ編み物を作成した。目付は165g/m2であった。この編物は、試験片寸法幅5cm×長さ10cm、チャック間距離5cm、荷重速度200mm/minの条件で、荷重14.7N時の伸長率はタテ96%、ヨコ32%であった。
伸縮性カバー生地の伸度と応力は表1~2のとおりである。
(3)パンツ下部生地及びサイドポケット部の生地
ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート:PET)のマルチフィラメント糸86質量%、ポリウレタンフィラメント糸14質量%を使用した平織物を作成した。目付は92g/m2であった。この織物生地は荷重14.7Nで伸長率はタテ42%、ヨコ24%であった。
前記において、伸長率の試験方法は、生地の場合はJIS L 1096法,試験片サイズ:幅5cm、長さ30cm、チャック間20cm、引っ張り速度200mm/minで測定する。製品から採取する場合は、一例として幅1cm×長さ10cm、チャック間5cmとして伸長率を求めても良い。
【0025】
【0026】
【0027】
伸縮性肌側生地、伸縮性カバー生地及びパンツ下部生地を使用して
図1~5に示すランニング用パンツ(短パン)を縫製により作成した。JASPOのLサイズで、身丈は40cm,静置した場合の腰幅30cm,伸縮性肌生地の身丈方向の長さ(胴周囲方向の幅)12cm,伸縮性カバー生地の身丈方向の長さ(胴周囲方向の幅)10.5cmで、伸縮性肌側生地を1.5cm高くした。このパンツの1着当たりの質量は135gであった。
このパンツは、サイドポケット部に330mLの水入りペットボトルを入れて走っても大腿四頭筋の上下動の動きを妨げず、ペットボトル自体も安定して保持されることが確認でき、パンツがずり落ちることもなかった。
前記胴回り部は円筒状に形成されていることから、走行姿勢を安定に保持できた。さらに、腰の筋肉の負担が少なく、走るのが楽であった。
内ポケットの大きさはタテ11cm,ヨコ18cm,ファスナーの長さ13cmであった。内ポケットは小銭、プリベートカード、交通カード等、重要なものを入れるのに便利であった。伸縮性肌側生地は伸縮性生地であり、身体にぴったりしているので、内ポケットに小銭を入れて走ってもほとんど動くことはなく、音もしなかった。
【0028】
(比較例1)
図6に示す従来のパンツのサイドポケット部にペットボトルを入れて走ったところ、ペットボトル15はポケットの内部で斜めになってしまい、大腿四頭筋の大腿直筋の上に乗る形で斜めになってしまい、太腿を挙げる動作の妨げとなり、走りにくかった。また、ペットボトルの重みで紐入れ部がずり落ち、使いにくかった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のスポーツ用タイツは、ランニング、マラソン、ジョギング、トレイルラン、散歩、登山等のパンツとして好適であるほか、様々なスポーツにも好適である。とくにマラソンを含むランニング用パンツとして好適である。
【符号の説明】
【0030】
1 スポーツ用パンツ
2 サイドポケット部用生地
2a,2b サイドポケット部
3,3a,3b サイドポケット部の入口(開口部)
4a,4b サイド部縫製線
5a,5b 外側折り線
6,25 ペットボトル
7 伸縮性肌側生地
8,22 紐入れ部
9 伸縮性カバー生地
10 伸縮性胴回り部
11 パンツ下部生地
12a-12h マルチポケット部
13 内ポケット
14 ファスナー
15 サイドポケット部用生地の上縁部
16 サイドポケット部用生地の側縁部
17 縫製線
18 紐
20 従来のパンツ
21 従来のパンツ生地
22 紐入れ部
23 サイドポケット部
24 サイドポケット部の入口(開口部)