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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】印刷物載置テーブル及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240514BHJP
   B41J 11/02 20060101ALI20240514BHJP
   B65H 5/18 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J11/02
B65H5/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020100701
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021194793
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】伊田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕一
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-121711(JP,A)
【文献】特開2013-193167(JP,A)
【文献】特開2002-248818(JP,A)
【文献】特開平11-239991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 11/02
B65H 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に複数の孔を有するとともに該複数の孔と連通する内部空間を有し、印刷対象物が載置可能なメインテーブルと、前記メインテーブルの内部空間に負圧を発生させる吸引装置と、を備えた印刷装置に用いられ、前記メインテーブルの上に着脱可能に設置される印刷物載置テーブルにおいて、
通気孔と、該通気孔の径方向外側に板状に広がる平面状の閉塞部と、を有し、前記メインテーブルの上に取付けられる設置状態で前記メインテーブルの上面に積層される基部と、
前記基部よりも上方に位置し、印刷対象物が載置される上面と、該上面に形成された複数の吸引孔と、を有するとともに、内部に前記複数の吸引孔と連通する空間を有する載置台と、
前記載置台の前記空間と前記基部の通気孔とを連通させる通気路を有し、前記基部と前記載置台との間に介在される筒状の通気部と、を備え
前記閉塞部は、前記設置状態で前記メインテーブルの前記複数の孔のうち一部の孔を覆うように構成され、前記通気孔は、前記設置状態で前記複数の孔のうち残部の孔と重なる領域で開口されるように構成されており、前記設置状態で前記吸引装置を作動させることにより、前記複数の孔のうち前記残部の孔を介して前記空間に負圧を発生させ、前記印刷対象物を前記載置台の上面に吸着させることを特徴とする印刷物載置テーブル。
【請求項2】
前記通気部の通気路の断面積は、前記メインテーブルの上面の面積よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の印刷物載置テーブル。
【請求項3】
前記基部は、少なくとも一部が前記通気部に対して分離可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷物載置テーブル。
【請求項4】
前記載置台は、該載置台の上面よりも下方に位置する下面と、前記空間に連通し前記下面に形成される排気孔とを有し、該載置台の前記上面と前記下面の間に前記空間が形成されており、
前記通気部の通気路は、前記載置台の排気孔と前記基部の通気孔とを連通させることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の印刷物載置テーブル。
【請求項5】
上面に複数の孔を有するとともに該複数の孔と連通する内部空間を有し、印刷対象物を載置可能なメインテーブルと、
前記メインテーブルの内部空間に負圧を発生させる吸引装置と、
前記メインテーブルの上に着脱可能に設置される印刷物載置テーブルと、を備えた印刷装置において、
前記印刷物載置テーブルは、
前記複数の孔のうち一部の孔を覆う平面状の閉塞部と、前記複数の孔のうち残部の孔と重なる領域で開口される通気孔とを有し、前記メインテーブルの上面に積層される基部と、
前記基部よりも上方に位置し、印刷対象物が載置される上面と、該上面に形成された複数の吸引孔と、該複数の吸引孔と連通する内部空間を有する載置台と、
前記載置台の内部空間と前記基部の通気孔とを連通させる通気路を有し、前記基部と前記載置台との間に介在される筒状の通気部と、を備えたことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物載置テーブル及び印刷装置に関し、特に、印刷装置に設けられたメインテーブルに対して着脱可能な印刷物載置テーブル、及び、該印刷物載置テーブルを備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置として、印刷対象物が載置されるテーブルと、テーブルの上方に配置されたインクヘッドと、テーブルを昇降させる昇降機構とを備えたものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の印刷装置は、テーブルと、昇降機構と、インクヘッドとを備えており、昇降機構を作動させてテーブルの高さを調整することで、インクヘッドとテーブルに載置された印刷対象物の表面との距離が予め設定された範囲内となるようすることが記載されている。さらに、特許文献1には、印刷装置に、印刷対象物をテーブル上面に吸着させる吸着手段を設けることが記載されている。また、特許文献2には、印刷対象物を吸着させる手段として、テーブル上面に吸引力を発生させる吸引装置を設けることが記載されている。
【0004】
このような従来の印刷装置では、吸引装置を作動させて印刷対象物をテーブル上面に吸着させることにより、印刷対象物の位置を固定することができる。また、昇降機構によってテーブルとインクヘッドとの距離を調節することで、厚みの異なる複数種の印刷対象物に印刷を行うことが可能である。
【0005】
しかしながら、厚みが大きく異なる印刷対象物(例えば、薄厚のシートや厚みの大きいバッグなど)に対応できるように、昇降機構による昇降ストロークを大きくしようとすると、印刷装置全体が大型化してしまうという問題がある。
【0006】
それ故、薄厚の印刷対象物に対して印刷をする際に、2つのテーブルを積層する、即ち、印刷装置に設けられたテーブル(以下、「メインテーブル」とも称する)の上に、さらに、別のテーブル(以下、「印刷物載置テーブル」とも称する)を設置する方法が採用されている。
【0007】
しかしながら、単にメインテーブルに対して別の印刷物載置テーブルを積層したものでは、印刷物載置テーブルを使用する際に、印刷対象物を印刷物載置テーブル上に吸着させることができなくなる。
【0008】
このような問題を解消するために、印刷物載置テーブルに対して専用の吸引装置を設置し、印刷物載置テーブルを使用する際に、この吸引装置を作動させて印刷対象物を載置面に吸着させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開第2017-47663号公報
【文献】特許第4049073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、印刷物載置テーブルに対して専用の吸引装置を設けると、印刷物載置テーブルの製造コストが高くなってしまう。また、印刷物載置テーブルを用いて印刷を行う場合に、吸引装置に電力を供給するための電源ケーブルを電源コンセントに接続する必要が生じ、印刷物載置テーブルを取外す際には、接続した電源ケーブルを取外す手間がかかる。それ故、印刷物載置テーブルの取付け作業や、取外し作業に手間がかかるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、取付け・取外し作業が簡易であって、製造コストを低減することができる印刷物載置テーブル及び該印刷物載置テーブルを備えた印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る印刷物載置テーブルは、上面に複数の孔を有するとともに該複数の孔と連通する内部空間を有し、印刷対象物が載置可能なメインテーブルと、前記メインテーブルの内部空間に負圧を発生させる吸引装置と、を備えた印刷装置に用いられ、前記メインテーブルの上に着脱可能に設置される印刷物載置テーブルにおいて、前記複数の孔のうち一部の孔を覆う平面状の閉塞部と、前記複数の孔のうち残部の孔と重なる領域で開口される通気孔とを有し、前記メインテーブルの上面に積層される基部と、前記基部よりも上方に位置し、印刷対象物が載置される上面と、該上面に形成された複数の吸引孔と、該複数の吸引孔と連通する内部空間とを有する載置台と、前記載置台の内部空間と前記基部の通気孔とを連通させる通気路を有し、前記基部と前記載置台との間に介在される筒状の通気部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る印刷装置は、上面に複数の孔を有するとともに該複数の孔と連通する内部空間を有し、印刷対象物を載置可能なメインテーブルと、前記メインテーブルの内部空間に負圧を発生させる吸引装置と、前記メインテーブルの上に着脱可能に設置される印刷物載置テーブルと、を備えた印刷装置において、前記印刷物載置テーブルは、前記複数の孔のうち一部の孔を覆う平面状の閉塞部と、前記複数の孔のうち残部の孔と重なる領域で開口される通気孔とを有し、前記メインテーブルの上面に積層される基部と、前記基部よりも上方に位置し、印刷対象物が載置される上面と、該上面に形成された複数の吸引孔と、該複数の吸引孔と連通する内部空間を有する載置台と、前記載置台の内部空間と前記基部の通気孔とを連通させる通気路を有し、前記基部と前記載置台との間に介在される筒状の通気部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
上記印刷物載置テーブル及び上記印刷装置によれば、メインテーブルに印刷物載置テーブルを設置した状態で吸引装置を作動することにより、印刷物載置テーブルの内部空間に負圧を発生させることができる。この負圧により、印刷物載置テーブルの載置台に載置された印刷対象物を載置台上面に吸着させることができる。また、基部によりメインテーブルの複数の孔の一部を閉塞して吸引される気体の通気路を小さくすることで、吸引装置による吸引力の伝達ロスを低減することができる。これにより、印刷物載置テーブルに専用の吸引装置を設ける必要がなくなり、印刷物載置テーブルの製造コストを低減することができる。また、印刷物載置テーブルを着脱するたびに、吸引装置に電力を供給するための電源ケーブルを電源コンセントに対して接続したり、取外したりする必要がないため、取付け・取外し作業が簡易である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る印刷物載置テーブル及び印刷物載置テーブルを備えた印刷装置によれば、印刷物載置テーブルの製造コストを低減することができるとともに、印刷物載置テーブルの取付け・取外し作業を簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態である印刷物載置テーブルを備えた印刷装置の斜視図である。
図2】印刷装置から印刷物載置テーブルを取外した状態を示す斜視図である。
図3】メインテーブルの上に印刷対象物テーブルを設置した状態を示す断面図である。
図4】印刷装置のテーブル移動装置を説明する斜視図である。
図5】印刷物載置テーブルを上面側から見た斜視図である。
図6】印刷物載置テーブルを下面側から見た斜視図であって、閉塞板を外した状態を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明に係る印刷物載置テーブルを備えた印刷装置の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る印刷装置の斜視図である。印刷装置10は、印刷対象物(以下、単に「印刷物」とも称する)をテーブル上に載置して、インクによる印刷を実施することが可能な装置である。本実施形態では、一例として、テーブル上に載置された印刷物に対して、インクヘッドが同一平面内を直交する2方向に変位可能な、所謂、フラットヘッドタイプの印刷装置10を説明する。
【0018】
図1において、符号U及びDは上方及び下方、符号Fr及びRrは前方及び後方、符号L及びRは左方及び右方を示している。ここで、前方及び後方とは、印刷装置10の正面にいる作業者から見て作業者に向かう方向及び作業者から遠ざかる方向を意味し、左方及び右方とは、印刷装置10の正面にいる作業者から見た左方向及び右方向を意味する。また、本実施形態では、印刷装置10のインクヘッドの移動方向を主走査方向Yといい、主走査方向と平面視で直交する方向を副走査方向Xといい、主走査方向Y及び副走査方向Xと直交する方向を高さ方向Zという。本実施形態において、主走査方向Yは左右方向と一致し、副走査方向Xは前後方向と一致し、高さ方向Zは上下方向と一致している。
【0019】
印刷装置10は、箱状に形成されており、ケース12と、ケース12の表面に設けられた操作パネル18とを備えている。ケース12には、複数のインクカートリッジ26を収容するカートリッジ収容部27が取付けられている。また、印刷装置10は、ケース12の内部に、ガイドレール20と、ガイドレール20に沿って移動可能なキャリッジ22と、キャリッジ22に搭載された複数のインクヘッド24とを備えるとともに、メインテーブル30と、メインテーブル30を移動させるテーブル移動装置40と、吸引装置50と、メインテーブル30に着脱可能な印刷物載置テーブル60とを備えている。
【0020】
メインテーブル30及び印刷物載置テーブル60は、それぞれ、印刷を実行する際に印刷物を載置するために用いられるテーブルであり、メインテーブル30は印刷装置10に組み込まれており、印刷物載置テーブル60は着脱可能であって、必要に応じてメインテーブル30の上に取付けられる。印刷物載置テーブル60は、メインテーブル60上に取付けられた状態で薄厚の印刷物、例えば紙やシートなど、を印刷する際に用いられる。メインテーブル30は、比較的厚みのある印刷物を印刷する際に、図2に示すように印刷物載置テーブル60を取外した状態で用いられる。
【0021】
ケース12は、ベースと13と、前壁14Aと、後壁14Bと、左壁15Aと、右壁15Bと、上壁16とを備えている。ベース13は、ケース12の底部を形成する板状の部材である。前壁14Aは、ベース13の前端から上方に向かって延びており、後壁14Bha,ベース13の後端から上方に向かって延びている。左壁15Aは、ベース13の左端から上方に向かって延びており、右壁15Bは、ベース13の右端から上方に向かって延びている。前壁14Aの左端及び右端のそれぞれは、左壁15Aの前端及び右壁15Bの前端のそれぞれと接続されている。後壁14Bの左端及び右端のそれぞれは、左壁15Aの後端及び右壁15Bの後端のそれぞれと接続されている。
【0022】
ケース12の前部には、開口部17が形成されており、この開口部17からケース12内のメインテーブル30又は印刷物載置テーブル60に、印刷物を載置する。なお、図示していないが、開口部17は、図示していないカバーを用いて開閉可能な構成とすることができる。印刷中にカバーを用いて開口部17を閉塞することで、ケース12内に塵や埃が入ることを防止することが可能である。
【0023】
操作パネル18は、ケース12の上壁16に設けられている。操作パネル18は、光沢感の有無などの印刷の種類、解像度、印刷の状況などの印刷に関する情報を表示する表示部や、作業者が印刷に関する情報を入力するための入力部などを有している。操作パネル18は、ケース12の内部に収容された制御装置28と電気的に接続されており、制御装置50は、入力情報に基づいて印刷の制御を行うとともに、印刷状況等を操作パネル18の表示部に表示させる。
【0024】
ケース12の左壁15Aの外部には、複数のインクカートリッジ26が収容されたカートリッジ収容部27が取付けられている。各インクカートリッジ26には異なるカラーのインクが収容されている。各インクカートリッジ26は、各インクヘッド24と図示していないインクチューブで接続されている。
【0025】
次に、印刷装置10の内部構造について説明する。既述のとおり、ケース12の内部には、ガイドレール20、キャリッジ22に搭載されたインクヘッド24、インクカートリッジ28が収容されている。
【0026】
ガイドレール20は、キャリッジ22の移動を案内するものであり、ケース12内を主走査方向Yに延びている。ガイドレール20は、両端部が図示していない支持部材で支持されており、ケース12に固定されている。本実施形態では、ベース13の前後方向の中央部にガイドレール20を設けている。
【0027】
キャリッジ22は、インクヘッド24を主走査方向Yに沿って移動させるものである。キャリッジ22は、ガイドレール20に係合し、ガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動自在に構成されている。また、キャリッジ22は、内部に駆動モータを備えており、この駆動モータの駆動力によりガイドレール20に沿って移動する。キャリッジ22には、複数のインクヘッド24が搭載されている。本実施形態において、インクヘッド24は、カラーインクを液敵状にノズルから吐出するインクジェット方式の印刷ヘッドである。各インクヘッド24は、それぞれ異なるカラーのインクを吐出する。
【0028】
次に、図2及び図3を用いて、ケース12に収容されたメインテーブル30について説明する。図2は、印刷装置10から印刷物載置テーブル60を取外した状態を示す斜視図であり、図3は、メインテーブル30の上に印刷対象物テーブル60を設置した状態を示す断面図である。メインテーブル30は、ガイドレール20及びインクヘッド24よりも下方に配置されている。メインテーブル30は、内部に空間31(以下、「内部空間31」とも称する)を有する薄厚の箱状に形成されており、本実施形態では、平面視で左右方向に延びる側辺が、前後方向に延びる側辺の長さよりも長い矩形状に形成されている。メインテーブル30は、金属材料、樹脂材料、又はこれらを組み合わせた材料などで形成することができる。
【0029】
本実施形態のメインテーブル30は、図3に示すように、上面33を形成する上板34と、下面を形成する下板35と、上板34の周辺と下板35の周辺と繋ぐ断面矩形状の側板36とを有し、上板34、下板35及び側板36で囲まれた領域が、メインテーブル30の内部空間31となっている。また、メインテーブル30の上面33には、上板34を貫通して内部空間31と連通する複数の孔32が形成されている。複数の孔32は、メインテーブル30の上面33の全域にほぼ均一に形成されており、本実施形態では、主走査方向Y及び副走査方向Xに配列されている。
【0030】
メインテーブル30の下面には、下板35を貫通して内部空間31と連通する排気孔37が形成されている。排気孔37は、排気ダクト38を介して吸引装置50と連通されている。排気孔37の内径は、メインテーブル30の上面33の孔32の内径よりも十分に大きく形成されている。
【0031】
メインテーブル30は、テーブル移動装置40により、ベース13に対して移動可能に構成されている。テーブル移動装置40は、メインテーブル30を上下方向(即ち、高さ方向Z)に移動させる第1移動機構41と、メインテーブル30を副走査方向Xに移動させる第2移動機構45を備えている。第1移動機構41及び第2移動機構45は、それぞれ、メインテーブル30の下方に配置されている。
【0032】
図1及び図2に示すように、第1移動機構41は、第2移動機構46の上に設けられている。図3及び図4に示すように、第1移動機構41は、昇降部42と、無端状の駆動ベルト43と、上下方向に延びる複数のボールねじ44とを備えている。昇降部42は、主走査方向Yに延びる板状の本体部42Aと、本体部42Aの左端から下方に延びる左脚部42Bと、本体部42Aの右端から下方に延びる右脚部42Cと、を備えている。駆動ベルト43は、後述する支持台47の開口47Xから昇降部42を出没可能に駆動させる。駆動ベルト43は、支持台47上に配置されている。昇降部42は、開口47X内を上下方向に移動する。ボールねじ44は、駆動ベルト43が巻き掛けられるプーリ44Cと、上端にプーリ44Cが固定され、上下方向に延びる軸部44Aと、軸部44Aに螺合され、駆動ベルト43によって上下方向に移動可能なねじ部44Bとを有している。昇降部42上には、メインテーブル30が固定されている。ボールねじ44のねじ部44Bは、本体部42Aに連結されている。昇降部42は、駆動ベルト43によりプーリ44Cが回転することによってねじ部44Bが軸部44A上を上下方向に移動することで、支持台47に対して上下方向に移動する。複数のボールねじ44の上端には、駆動ベルト43が巻き掛けられている。また、駆動ベルト43は、図示しない第1モータの回転軸にも巻き掛けられている。第1モータが駆動して駆動ベルト43が一の方向に移動すると、ボールねじ44のねじ部44Bが回転し、昇降部42は上方に移動する。一方、第1モータが駆動して駆動ベルト43が一の方向と逆方向に移動すると、ボールねじ44のねじ部44Bが逆回転し、昇降部42は下方に移動する。このように、第1モータを駆動することによって、メインテーブル30は上下方向に移動する。
【0033】
図4に示すように、第2移動機構45は、第1移動機構41の下方であって、ベース13に配置されている。第2移動機構45は、ベース13に形成された開口13X内に設けられている。第2移動機構45は、移動ベース46と、支持台47と、第1シャフト81と、第2シャフト82と、固定ベース48とを備えている。
【0034】
第1シャフト81および第2シャフト82は、副走査方向Xに延びている。第1シャフト81は、第2シャフト82の左方に配置されており、第1シャフト81と第2シャフト82とは平行に配置されている。第1シャフト81および第2シャフト82は、ベース13に支持されている。
【0035】
移動ベース46は、第1シャフト81から第2シャフト82まで延びており、第1シャフト81及び第2シャフト82に摺動自在に係合している。移動ベース46は、副走査方向Xに延びる第1筒状部46Aと第2筒状部46Bとを備えている。第1シャフト81は、第1筒状部46Aに挿入されており、第2シャフト82は、第2筒状部46Bに挿入されている。移動ベース46は、第1シャフト81及び第2シャフト82に沿って副走査方向Xにスライド移動可能に構成されている。
【0036】
支持台47は、図4に示すように、移動ベース46上に設けられている。複数のボールねじ44の軸部44Aは、移動ベース46に支持されている。支持台47は、主走査方向Yに延びる板状の本体部47Aと、本体部47Aの左端から下方に延びる左脚部47Bと、本体部47Aの右端から下方に延びる右脚部47Cとを備えており、支持台47は、正面視において、下向きに開放されたコ字状(U字状)に形成されている。本体部47Aには、上下方向に開口する矩形状の開口47Xが貫通形成されており、昇降部42は、開口47Xから出没可能に構成されている。左脚部47Bおよび右脚部47Cは、移動ベース46に固定されている。左脚部47Bは、第1シャフト81より右方に配置されている。右脚部47Cは、第2シャフト82より左方に配置されている。図3に示すように、支持台47には、左脚部47Bおよび右脚部47Cの下端から内側に向けて突出する板状のフランジ47Dが形成されており、フランジ47Dと本体部47Aとにボールねじ44の軸部44Aが固定されている。
【0037】
図4に示すように、固定ベース48は、副走査方向Xに延びている。固定ベース48は、第1シャフト81より右方かつ第2シャフト82より左方に配置されており、ベース13に支持されている。固定ベース48は、移動ベース46より上方に配置されている。固定ベース48は、支持台47の本体部47Aより下方に配置されており、左脚部47Bより右方かつ右脚部47Cより左方に配置されている。固定ベース48には、固定ベース48の前部に設けられた第1プーリ48Aと、固定ベース48の後部に設けられた第2プーリ(図示せず)が設けられている。第1プーリ48Aおよび第2プーリには、無端状のベルト48Bが巻き掛けられている。第1プーリ48Aは、第1プーリ48Aを駆動する第2モータ(図示せず)に接続されている。第2モータを駆動することによって、ベルト48Bが回転駆動する。これにより、支持台47及び移動ベース46は、第1シャフト81および第2シャフト84に沿って副走査方向Xにスライド移動する。即ち、第2モータを駆動することによって、メインテーブル30は、副走査方向Xに移動する。
【0038】
吸引装置50は、メインテーブル30よりも下方であって、第2移動機構46の移動ベース46上に配置されている。吸引装置50は、内部にファンを備えた減圧室(図示せず)を有している。ファンは、制御装置28に電気的に接続されており、制御装置28によって駆動が制御される。図3に示すように、ファンの駆動により減圧室内の気圧が下がると、メインテーブル30の内部空間31の空気が排気ダクト38を介して減圧室内に吸い込まれ、内部空間31に負圧が発生する。減圧室に吸引された空気は、ベース13の下面に形成された図示していない排出口から印刷装置10の外部へ排出される。
【0039】
次に、図1図3図5及び図6を用いて印刷物載置テーブル60について説明する。図5において、符号X´、Y´及びZ´は、互いに直交する方向であって、それぞれ、印刷物載置テーブル60の奥行方向X´、幅方向Y´及び高さ方向Z´を示している。印刷物載置テーブル60は、メインテーブル30の上に着脱可能に設置されるテーブルであり、メインテーブル30に設置された状態で、奥行方向X´、幅方向Y´及び高さ方向Z´のそれぞれは、印刷装置10の前後方向、左右方向及び上下方向のそれぞれに一致する。以下の説明では、奥行方向X´、幅方向Y´及び高さ方向Z´を印刷物載置テーブル60の前後方向、左右方向及び上下方向と称する。
【0040】
印刷物載置テーブル60は、金属材料、樹脂材料、又はこれらを組み合わせた材料などで形成することができる。図1図3及び図5に示すように、印刷物載置テーブル60は、メインテーブル30上に設置された状態(以下、単に「設置状態」とも称する)で、メインテーブル30の上面33に積層される基部66と、基部66よりも上方に位置して印刷対象物が載置される載置台62と、基部66と載置台62との間に介在された筒状の通気部64とを備える。
【0041】
図3図5及び図6に示すように、載置台62は、内部に空間71(以下、「内部空間71」とも称する)する薄厚の箱状に形成されており、平面視で左右方向に平行に延びる側辺が、前後方向に平行に延びる側辺よりも長い矩形状に形成されている。さらに、本実施形態の載置台62は、メインテーブル30とほぼ同じ大きさに形成されている。なお、載置台62は、メインテーブル30よりも上面73Aの面積が大きく又は小さくなるように形成することができ、平面視形状も矩形に限られず、円形、楕円形、他の多角形など、適宜変更することが可能である。
【0042】
載置台62は、印刷対象物が載置される上面73Aを形成する上板74と、下面73Bを形成する下板75とを有するとともに、上板74及び下板75の左右方向に延びる両側辺を繋ぐ前後の側板76A,76Bと、上板74及び下板75の前後方向に延びる両側辺を繋ぐ左右の側板76C,76Dとを有する。載置台62において、上板74、下板75及び各側板76A~76Dで囲まれた領域が内部空間71を形成している。また、載置台62の上面73Aには、上板74を貫通して内部空間71と連通する複数の吸引孔72が形成されている。複数の吸引孔72は、上面73Aの全域にほぼ均一に形成されており、本実施形態では、前後方向及び左右方向に配列されている。載置台62の下面73Bには、下板75を貫通して内部空間71と連通する排気孔77が形成されている。排気孔77は、平面視で、排気孔77の開口内に、上面73Aに形成された複数の吸引孔72の幾つかが内包されるように、その内径が、吸引孔72の内径よりも大きく形成されている。
【0043】
通気部64は、載置台62の下面73Bから下方に突出して基部66まで延びる中空筒状の部位である。通気部64の中空部は、載置台62の内部空間71と、後述する基部66の通気孔64Aとを連通させる通気路を形成している。本実施形態では通気部64の上端部が載置台62の下面73Bに接続されている。通気部64は、平面視で載置台62の中央部に位置しており、本実施形態では、載置台62及び通気部64が、左右対称かつ前後対称となるように形成されている。このように、通気部64を載置台62の中央部に配置することで、載置台62の撓みを小さくすることができる。
【0044】
載置台62の排気孔77は、通気部64の上部開口64Aの内側に位置している。なお、排気孔77の開口面積は、上部開口64の開口面積と同じかそれ以下であればよいが、上部開口64の開口面積の2分の1以下であることが好ましく、4分の1以下であることがより好ましい。本実施形態では、排気孔77の開口面積を上部開口64の開口面積の5分の1以下に設定している。
【0045】
図5及び図6に示すように、本実施形態の通気部64は断面が矩形状であって、左右方向に延びる前側壁65A,後側壁65Bと、前後方向に延びる左側壁65C,右側壁65Dとにより形成されている。本実施形態において通気部64の高さは、載置台62の高さ(即ち、載置台62の厚さ)よりも大きく設定されている。
【0046】
通気部64は、設置状態で、載置台62を下方から支持するとともに、その内部は、空気が流れる通気路を形成する。通気部64の通気路の断面積(筒状に形成された通気部64の径方向の断面積、即ち、本実施形態では、上下方向と直交する面の断面積)は、メインテーブル30の上面33の面積よりも小さいことが好ましい。なお、通気部64の通気路の断面積は、上面33の面積の2分の1以下であることがより好ましく、3分の1以下であることがより一層好ましい。本実施形態では、通気路の断面積を上面33の面積の約4分の1に設定している。
【0047】
基部66は、メインテーブル30の上面33を覆う大きさを有する板状に形成されている。基部66は、メインテーブル30に対する設置状態(メインテーブル30の上面33に基部66を積層した状態)で、メインテーブル30の複数の孔32のうち、一部の孔32を覆う平面状の閉塞部66Aと、複数の孔32のうち、閉塞部66Aに覆われていない残部の孔32と重なる領域で開口される通気孔64Bとを有している。本実施形態では、平板状の基部66の中央部領域に通気孔64Bが形成されている。また、本実施形態において通気孔64Bは、図3に示すように、通気部64の下部開口と一致しており、基部66は、この下部開口から通気部64の径方向外側に広がる板状に形成されている。通気孔64Bは、設置状態で、メインテーブル30の複数の孔32の幾つかと重なり、これらの孔32の通気を許容する。また、閉塞部66Aは、通気孔64Bを除く領域において、メインテーブル30の複数の孔32を閉塞する。
【0048】
基部66は、通気部64と一体又は別体の一枚の板材により形成することができる。また、これに代えて、基部66の一部が、通気部64と分離可能な構成であってもよい。本実施形態では、基部66の閉塞部66Aが、通気部64と一体に形成された一対のベース板67A,67Bと、通気部64と分離可能な一対の閉塞板68A,閉塞板68Bとにより構成されている。一対のベース板67A,67Bは、通気部64の前後の側壁65,側壁65Bのそれぞれの下端から前後方向外側に延びている。一対の閉塞板68A,68Bは、ベース板67A,67Bと隣接するように、ベース板67A,67Bの左右方向外側に配置される。
【0049】
基部66の下面の周縁部及び通気孔64Aの開口周縁部には、気密性を保つために、ゴムなどのシール部材(図示せず)を取付けることができる。なお、シール部材は、基部66の下面全域に取付けてもよいが、少なくとも、基部66の外周の全周に亘って取付けられることが好ましい。
【0050】
上述した印刷物載置テーブル60は、基部66をメインテーブル30の上面33に積層した状態で、ボルトなどの固定部材79でメインテーブル30に固定される。また、固定部材79による基部66とメインテーブル30の係合固定を解除することで、印刷物載置テーブル60をメインテーブル30から取外すことができる。
【0051】
次に、印刷装置10において、吸引装置50を作動させた際の動作について説明する。まず、厚みのある印刷対象物に対して印刷を行う場合、印刷物載置テーブル60をメインテーブル30から取外した状態で、吸引装置50を作動させる。すると、吸引装置50によりメインテーブル30の内部空間31の空気が吸引され、内部空間31は負圧状態になり、メインテーブル30の上面33に形成された孔32から空気が吸引される。この吸引力により、上面33に載置された印刷対象物は、上面33に吸着される。
【0052】
次に、図3を用いて、印刷物載置テーブル60をメインテーブル30に設置した状態で、吸引装置50を作動させた際の動作について説明する。図3において、矢印は空気の流れを示している。
【0053】
薄厚の印刷対象物に対して印刷を行う場合、印刷物載置テーブル60をメインテーブル30上に設置する。この設置状態で吸引装置50を作動させると、吸引装置50は、メインテーブル30の内部空間31の空気を吸引し、内部空間31が負圧状態になる。すると、通気孔64Bと重なっているメインテーブル30の一部の孔32から通気部64内の空気が吸引され、通気部64内が負圧になり、この負圧を解消するように、載置台62の下面73Bに形成された排気孔77から、通気部64内に載置台62の内部空間71の空気が流れ込む。これにより、載置台62の内部空間71が負圧状態になり、その結果、載置台62の各吸引孔72から内部空間71に空気が吸引される。一方、通気部64を介してメインテーブル30の内部空間31内に空気が吸引されるのは、メインテーブル30の一部の孔32だけであって、一対のベース板67A,67Bおよび一対の閉塞板68A,68Bで閉塞された残部の孔32から通気部64内の空気が吸引されないので、吸引装置50によってメインテーブル30の内部空間31の空気を吸引することによって発生する負圧を、開放されている上記一部の孔32に集中させることができ、印刷物載置テーブル50に発生させる吸着力を高めることができる。
【0054】
上述したように、本実施形態の印刷装置10では、メインテーブル30に印刷物載置テーブル50を設置した状態で吸引装置50を作動させることにより、印刷物載置テーブル60の内部空間71に負圧を発生させることができ、その結果、載置台62に載置された印刷対象物を載置台62の上面73Aに吸着させることができる。また、基部66によりメインテーブル30の複数の孔32の一部を閉塞して、メインテーブル30の上面33において空気が吸引される範囲を狭くすることで、吸引装置50による吸引力の伝達ロスを低減することができる。これにより、1つの吸引装置50で、メインテーブル30及び印刷物載置テーブル60の両方に対して十分な吸引力を発生させることができる。その結果、印刷物載置テーブル60に専用の吸引装置を設ける必要がなくなり、印刷物載置テーブル60の製造コストを低減することができる。
【0055】
また、本実施形態の印刷装置10では、通気部64の通気路の断面積をメインテーブル30の上面33の面積よりも小さくしているので、空気が通気部64内を通過する際の吸引力の伝達ロスを低減することができる。また、載置台62の下面73Bに形成された排気孔77の開口面積を通気部64の通気路の断面積よりも小さくすることで、載置台62の内部空間71を流れる空気の速度を速めることができ、各吸引孔72に十分な吸引力を発生させることができる。
【0056】
また、上述した印刷装置10では、印刷物載置テーブル60を着脱するたびに、吸引装置50に電力を供給するための電源ケーブルを電源コンセントに対して接続したり、取外したりする必要がないため、印刷物載置テーブル60の取付け・取外し作業が簡易である。さらに、上述した印刷物載置テーブル60では、専用の吸着装置を備えた従来の印刷物載置テーブルに比べて、重量も軽量化することができるので、持ち運び作業も容易である。さらに、印刷物載置テーブル60の基部66の一部を載置台62及び通気部64と分離した状態で持ち運ぶことができるので、持ち運び時の軽量化や小型化を図ることができる。
【0057】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0058】
例えば、上述した実施形態では、印刷物載置テーブル60の載置台62の上面73Aの面積をメインテーブル30の上面33と同じ大きさにしているが、載置台62の面積の方が大きくしてもよいし、小さくしてもよい。載置台62の上面73Aの面積をメインテーブル30の上面33よりも大きくした場合、印刷対象物を載置する数を多くすることができ、上面33よりも小さくした場合、印刷対象物を吸着させる吸引力を大きくすることができる。
【0059】
また、上述した実施形態では、フラットヘッドタイプのインクジェット式の印刷装置10について説明したが、本発明に係る印刷物載置テーブル60を備えた印刷装置10は、これに限られず、印刷装置10に組み込まれたメインテーブル30に対して、印刷物載置テーブル60を着脱可能であり、吸引装置50を用いてメインテーブル30及び印刷物載置テーブル60に負圧を発生さることが可能なものであればよい。
【符号の説明】
【0060】
10 印刷装置
30 メインテーブル
31 メインテーブルの内部空間
32 孔
34 メインテーブルの上面
50 吸引装置
60 印刷物載置テーブル
62 載置台
64 通気部
64B 通気孔
66 基部
66A 閉塞部
68A 第1閉塞板
68B 第2閉塞板
71 載置台の内部空間
72 吸引孔
73A 載置台の上面
図1
図2
図3
図4
図5
図6