(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】キャスタ及びこれを利用した家具
(51)【国際特許分類】
B60B 33/00 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
B60B33/00 503D
(21)【出願番号】P 2020103844
(22)【出願日】2020-06-16
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健一
(72)【発明者】
【氏名】上田 伸行
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-102629(JP,A)
【文献】実開昭58-009803(JP,U)
【文献】特開2007-223581(JP,A)
【文献】特開2011-251653(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0214436(US,A1)
【文献】中国実用新案第206446374(CN,U)
【文献】独国特許出願公開第102006055981(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャスタ本体と、
前記キャスタ本体に取り付けられるリング状の車輪と、
前記車輪を前記キャスタ本体に回転可能に支持させる車輪支持部材とを備え
、
前記車輪支持部材それ自体にすべり軸受面を設け、このすべり軸受面に車輪を直接嵌め合わせ
、
前記車輪支持部材は中央部に開口を有した円環状のスリーブであり、キャスタ本体も中央部に開口を有するものであって、スリーブの外周に車輪を直接取り付けているものにおいて、
前記スリーブそれ自体に第2抜け止め部を設けたものであり、この第2抜け止め部は、スリーブのキャスタ本体への取り付けに伴い、前記キャスタ本体の開口の外周位に設けた孔に係合してスリーブの離脱を規制することを特徴とするキャスタ。
【請求項2】
前記第2抜け止め部は、前記スリーブを前記キャスタ本体に対して回転させることによって、キャスタ本体の孔により深く係合する、請求項1に記載のキャスタ。
【請求項3】
前記スリーブそれ自体に戻り止め部を設けたものであり、この戻り止め部は、スリーブがキャスタ本体に対して回転した位置でキャスタ本体の一部に係止されて逆回転が規制される、請求項2に記載のキャスタ。
【請求項4】
前記スリーブそれ自体に第1抜け止め部を設けたものであり、この第1抜け止め部は、スリーブのキャスタ本体への取り付けに伴い、前記車輪の側面のうち前記キャスタ本体から遠い外側面に係合して車輪の離脱を規制する、請求項1~3の何れかに記載のキャスタ。
【請求項5】
前記第1抜け止め部は全周に設けられている、請求項
4に記載のキャスタ。
【請求項6】
前記車輪支持部材と前記車輪とを異種材料により構成している、請求項1~5の何れかに記載のキャスタ。
【請求項7】
前記車輪を、車輪支持部材に支持される内輪と、接地面に接する外輪とを一体化した二層構造にしている、請求項1~6の何れかに記載のキャスタ。
【請求項8】
前記車輪は双輪であり、前記キャスタ本体の両側にそれぞれ車輪支持部材を介して取り付けられる、請求項1~7の何れかに記載のキャスタ。
【請求項9】
請求項1~8の何れかに記載のキャスタを利用した家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子やテーブルを始め、広く一般の家具に利用されるキャスタ及びこれを利用した家具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のキャスタとして、例えば特許文献1に示すものが知られている。
【0003】
このキャスタは、外見を向上させるために車軸を無くして車輪の中央部を大きく開口させたもので、車輪を目立たなくすることで、車輪を取り付けた家具等が浮いているような視覚的効果がもたらされるものとなっている。
【0004】
また、転がりベアリングを使用すると小型化、軽量化に向かず、機械的安定性が低く、長時間の使用に耐えるためには注油などメンテナンスが必要になる。そこで、同文献のものはそれらを解決するために、双輪キャスタを構成する各車輪において、2つのドライベアリングをスリーブやキャスタ本体に取り付け、これらのドライベアリングに車輪を支持させることで転がりベアリングを不要にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、やはりドライベアリングが各車輪ごとに2つずつ必要になるため、部品点数の削減に課題が残る。また、部品点数が多いことでキャスタ製造に係る組立工数、コストの削減にも一定の限界があり、更なるキャスタの軽量化、小型化を阻む要因になっている。
【0007】
本発明は、このような課題に着目し、部品点数の更なる削減、これに伴うキャスタの軽量化、小型化を図った、新たなキャスタ及びこれを利用した家具を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち、本発明に係るキャスタは、キャスタ本体と、前記キャスタ本体に取り付けられるリング状の車輪と、前記車輪を前記キャスタ本体に回転可能に支持させる車輪支持部材とを備え、前記車輪支持部材それ自体にすべり軸受面を設け、このすべり軸受面に車輪を直接嵌め合わせ、前記車輪支持部材は中央部に開口を有した円環状のスリーブであり、キャスタ本体も中央部に開口を有するものであって、スリーブの外周に車輪を直接取り付けているものにおいて、前記スリーブそれ自体に第2抜け止め部を設けたものであり、この第2抜け止め部は、スリーブのキャスタ本体への取り付けに伴い、前記キャスタ本体の開口の外周位に設けた孔に係合してスリーブの離脱を規制することを特徴とする。
【0010】
このようにすれば、車輪支持部材自体がすべり軸受として機能するので、ベアリングを不要にすることができる。そして、これによりキャスタ製造に係る組立工数、コストの削減とともに、キャスタの軽量化、小型化を図ることができる。また、キャスタの外観をベアリング構造を採用したときよりも更に目立たなくすることができ、スリーブをキャスタ本体に取り付けるだけでスリーブの抜け止めを図ることができる。
【0011】
第2抜け止め部の効果を簡単に高めるとともに、車幅方向のガタつきを低減するためには、前記第2抜け止め部は、前記スリーブを前記キャスタ本体に対して回転させることによって、キャスタ本体の孔により深く係合することが好適である。
【0012】
スリーブを簡単に組み付ける構造を採用してもより外れにくい構成を実現するためには、前記スリーブそれ自体に戻り止め部を設け、この戻り止め部は、スリーブがキャスタ本体に対して回転した位置でキャスタ本体の一部に係止されて逆回転が規制されることが好適である。
【0013】
スリーブをキャスタ本体に取り付けるだけで車輪を適切に保持するためには、前記スリーブそれ自体に第1抜け止め部を設け、この第1抜け止め部は、スリーブのキャスタ本体への取り付けに伴い、前記車輪の側面のうち前記キャスタ本体から遠い外側面に係合して車輪の離脱を規制するように構成されることが好ましい。
【0014】
このように構成する際には、前記第1抜け止め部は全周に設けられていることが好適である。
【0015】
音鳴りの発生を防ぎ、材料選択の適正化にも通ずる構成としては、前記車輪支持部材と前記車輪とを異種材料により構成していることが好ましい。
【0016】
車輪支持部材自体を軸受材料により構成する場合の車輪を始めとした各部材の材料の制約を軽減するためには、前記車輪を、車輪支持部材に支持される内輪と、接地面に接する外輪とを一体化した二層構造にしていることが好ましい。
【0017】
ベアリングレス構造を適用することによる効果が倍増する態様としては、前記車輪が双輪であり、前記キャスタ本体の両側にそれぞれ車輪支持部材を介して取り付けられるものが挙げられる。
【0018】
本発明は、以上のような構成であるから、椅子やテーブルその他の家具に適用した場合に、キャスタの軽量化、小型化を通じて当該家具の足元によりすっきりした構成を実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上説明した構成であるから、ベアリングレスによる部品点数の更なる削減、これに伴うキャスタの軽量化、小型化を図った、新たなキャスタ及びこれを利用した家具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係るキャスタを示す斜視図。
【
図3】
図2の一部を省略するとともに車輪を外輪と内輪に分離した図。
【
図10】同キャスタを構成する第2抜け止め部の作用を示す
図6に対応した断面図。
【
図11】同キャスタを構成する戻り止め部の作用を示す底面図。
【
図12】本発明の変形例を示す
図2に対応した分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は本実施形態に係るキャスタCを示す斜視図、
図2は同分解斜視図、
図3は
図2のキャスタCの一部を省略するとともに車輪2を外輪22と内輪21に分離した図である。
図4は同キャスタCの外観図、
図5は
図4におけるV-V線断面図、
図6は
図4におけるVI-VI線断面図、
図7は
図4におけるVII-VII線断面図である。
図8は同キャスタCの組立手順を示す説明図、
図9は同キャスタCを構成する車輪1の詳細図、
図10は同キャスタCを構成する第2抜け止め部34の作用を示す
図6に対応した断面図、
図11は同キャスタを構成する戻り止め部35の作用を示す底面図である。
【0025】
図1に示す本実施形態に係るキャスタCは、椅子等の家具Fに取り付けられて利用されるもので、
図1~
図4に示すように、キャスタ本体1と、キャスタ本体1に取り付けられるリング状の車輪2と、車輪2をキャスタ本体1に回転可能に支持させる車輪支持部材たるスリーブ3とを含み、スリーブ3に車輪2を直接嵌め合わせて構成されている。
【0026】
キャスタ本体1、車輪2およびスリーブ3は、それぞれ開口1p、2p、3pを有したもので、開口1pの中心1m、開口2pを通る軸心2m、開口3pの中心3mは互いに合致させて配置される。キャスタ本体1の開口1pから外れた位置には、ボスなどの取付部11が上方に向けて一体的に突設されている。取付部11は取付対象たる家具Fに設けた軸f1が挿入される軸孔11aを有している。
【0027】
キャスタ本体1はまた、開口1pの周囲に、
図2及び
図5に示すように外筒12と、この外筒12よりも幅広な内筒13と、外筒12の幅方向中央部と内筒13の幅方向中央部の間を接続する円盤状の内壁14とからなる円環部1bが一体に成形されている。外筒12と内筒13の間は、円周方向の適宜位置がリブ15によって補強されている。この実施形態における幅方向とは、軸心2mや中心1m、3mの方向をいう。
【0028】
そして、内壁14の幅方向両側において内筒13の外周13aと外筒12の外側面12aとで部分的に囲まれる位置に、スリーブ3及び車輪2を配置している。内筒13の外周13aは幅方向内側から外側に向かって縮径するテーパ面をなしており、対応するスリーブ3の内面もこれに対応したテーパ面をなしている。キャスタ本体1の内筒13の内周13bはR状に形成されている。スリーブ3の開口3pも幅方向外側に開くようなR状をなし、キャスタ本体1の開口1pとスリーブ3の開口3pとは滑らかに連続している。
【0029】
内壁14には、
図6に示すように、等角位置(本実施形態では3箇所)にスリーブ3を取り付けるための孔14aが幅方向に開口している。この孔14aは、円周方向に延びる円弧状のスリット部14a1と、このスリット部14a1の長手方向中央部に拡開する拡開部14a2を有している。
【0030】
また、キャスタ本体1の下方は平坦部1cとなっている。この平坦部1cにおいて内壁14から幅方向へ変位した位置には、
図7に示すように、後述するスリーブ3の戻り止め部35を係止する係止片16が形成されている。
【0031】
スリーブ3は、全体がすべり軸受の材料により構成されたもので、耐久性や耐衝撃性、耐摩耗性に優れ軸受材料として利用できるものであれば特に限定されないが、この実施形態では例えばPA(ポリアミドナイロン)により構成されている。このスリーブ3は、
図2、
図5及び
図8等に示すように、キャスタ本体1の内筒13の外周13aと車輪2の内周2aとの間に嵌め込まれるリング状をなし、それ自体の外周面3aをすべり軸受面としている。すべり軸受面3aの幅方向中央部には溝3a1が形成されている。
【0032】
具体的にこのスリーブ3は、外周をすべり軸受面3aとする円筒部31と、この円筒部31のうちキャスタ本体1から遠い外縁部に設けられ内径側に突出して所定挿入位置で内筒13の端面に当接する係止部32と、キャスタ本体1から遠い外縁部に設けられ外径側に突出することで車輪2の外側面2b(特に内輪21の外側面)に係合して車輪2の脱落を防止する第1抜け止め部33とを有している。本実施形態において、外径側とは中心1m、3mや軸心2mから外方向に離れる方向をいい、内径側とはその逆方向をいう。第1抜け止め部33は円周方向の間欠位置にのみ設けてもよいが、本実施形態ではスリーブ3の全周に設けられている。
【0033】
またこのスリーブ3には、
図2、
図6及び
図8等に示すように、キャスタ本体1の内壁14に設けた孔14aに対応する円周方向の等角位置(本実施形態では3箇所)に、幅方向に延びる第2抜け止め部34が形成されている。この第2抜け止め部34は、舌片部34aと、この舌片部34aの先端に外径方向に屈曲して設けられた爪部34bとを有している。
【0034】
この第2抜け止め部34は、スリーブ3の円筒部31が内輪21の内周位に装着された際に舌片部34aが
図10(a)に示すように爪部34bとともに内壁14の拡開部14a2に差し込まれ、その位置から紙面手前側に位置するスリーブ3が時計回りに回転することによって、
図10(b)に示すように舌片部34aがスリット14a内を時計回りに移動し、爪部34bが内壁14の裏面に係合するようになっている。
【0035】
なお、紙面奥側に位置するもう一つのスリーブ3は、
図10において反時計回りに移動する。具体的には、
図7に示すように紙面奥側のスリーブ3を取り付ける孔14a´は紙面手前側のスリーブを取り受ける孔14aに対して拡開部を含む全体が円周方向にピッチがずれていて、第2の抜け止め部34同士が
図2に示すように異なる角度位置に取り付けられることで互いに干渉しない関係にしてある。
【0036】
このスリーブ3には、キャスタ本体1の係止片16に対応する位置に、
図2及び
図8に示すような戻り止め部35が形成してある。この戻り止め部35は、弾性片によって構成されており、スリーブ3をキャスタ本体1の所定位置に挿入した
図10(a)の段階で同図および
図11(a)に示すように戻り止め部35がキャスタ本体1の係止片16の内側に装入され、その位置から紙面手前側のスリーブ3が時計回りに回転した
図10(b)の段階で、戻り止め部35が同図および
図11(b)のように係止片16を一時的に押し開きながらその外に移動し、再び係止片16の内側に戻ることが規制されるようになっている。
【0037】
なお、紙面奥側に位置するもう一つのスリーブ3は、
図10において反時計回りに移動することにより、当該スリーブ3の戻り止め部35が対応する係止片の内側から外側に出て戻り止めが図られるようにしている(
図11(c)参照)。
【0038】
車輪2は、
図3~
図5等に示すように、接地面Gに接する外輪22と、スリーブ3に支持される内輪21とを一体化したもので、スリーブ3と直接接触する内輪21はスリーブ3とは異なる材料で構成される。この内輪21の材料も、耐久性や耐衝撃性、耐摩耗性に優れすべり面に適用される材料であれば特に限定されないが、ここでは例えばPOM(ポリアセタール)によって構成してある。接地面Gに接触する外輪22も、内輪21とは異なる材料が採用されている。外輪22の材料は、特に接地面との接地状態、走行性能等との関係で決定され、ここでは例えばTPU(熱可塑性ウレタン)によって構成してある。
【0039】
そして、外輪22と内輪21がインサート成形によって二色成形している。
図3では
図2の車輪2を内輪21と外輪22に便宜上分離して示しているが、実際には樹脂一体成形により内輪21と外輪22は一体不可分となっている。
【0040】
図9(a)、(b)に示すように、内輪21はその円環部21aの等角位置に複数の孔21bが厚み方向に形成され、外輪22は内輪21の約半分を包み込んだ状態で成形されている。その際に外輪22の円環部22aを構成する肉の一部が内輪21の孔21bに入り込んで一体化している。
【0041】
図9(c)に示すように、外輪22の外側面22cは内輪21の外側面21cよりもキャスタ本体1から遠い外側方(幅方向外側)に突出しており、内輪21の内側面21dは外輪22の内側面22dよりもキャスタ本体1に近い内側方(幅方向内側)に突出している。
【0042】
そして、
図8に矢印で示すように、スリーブ3の円筒部31を第2抜け止め部34や戻り止め部35とともに車輪2の内周に挿入しつつ、スリーブ3の第2抜け止め部34をキャスタ本体1の孔14aに挿入して回転させることによって、
図10に示したように第2抜け止め部34をキャスタ本体1の孔14aを構成するスリット14a2の端部に係合させるとともに、
図11に示すように、戻り止め部35をキャスタ本体1の係止片16から外れた位置に係止して、キャスタCの組立を完了している。
【0043】
ここにおいて、
図5に示すように、スリーブ3の外側面3bは僅かであるが外輪2の外側面2bの内側に配され、キャスタ本体1の外筒12の外側面12aと外輪2の内側面2cとの間には、回転に支障が生じない程度のクリアランスが確保される。
【0044】
以上のように、本実施形態のキャスタは、キャスタ本体1と、キャスタ本体1に取り付けられるリング状の車輪2と、車輪2をキャスタ本体1に回転可能に支持させる車輪支持部材たるスリーブ3とを備え、スリーブ3それ自体にすべり軸受面3aを設け、このすべり軸受面3aに車輪2を直接嵌め合わせて構成したものである。
【0045】
このようにすれば、スリーブ3それ自体がすべり軸受として機能するので、ベアリングを不要にすることができる。そして、これによりキャスタ製造に係る組立工数、コストの削減とともに、キャスタの軽量化、小型化を図ることができる。
【0046】
また、スリーブ3と車輪2とを異種材料により構成しているので、互いに相対摺動する部材に同一部材を用いたときのような音鳴り(びびり音)の発生を抑制することができる。そして、スリーブ3は軸受としての耐久性や耐衝撃性、耐摩耗性の観点で選択でき、車輪2の材料は接地面上に接地する材料との関係で選択できるので、この点でもスリーブ3と車輪2を異種材料にする合理性がある。
【0047】
また車輪2を、スリーブ3に支持される内輪21と、接地面Gに接する外輪22とを一体化した二層構造にしている。車輪2が単一材料で構成される場合は、車輪2とスリーブ3のすべり特性、車輪2と接地面Gの間の走行特性を両立するための車輪2の材料の選択幅は極めて狭くなる。これに対して、車輪2を二層構造にすれば、内輪21と外輪22で材料を異ならせることができるので、内輪21とスリーブ3の間のすべり特性、外輪22と接地面Gの間の走行特性を両立させることが容易となる。
【0048】
よって、スリーブ3それ自体を軸受材料により構成する場合の車輪2を始めとした各部材の材料の制約が大幅に軽減し、ベアリングレス構造を実現し易くなる。
【0049】
また、車輪2は双輪であり、キャスタ本体1の両側にそれぞれスリーブ3を介して取り付けられる。車輪2が双輪であれば軸受部品点数が倍増するため、ベアリングレス構造を適用することによる効果が倍増する。
【0050】
また、車輪支持部材は板状や軸状のものでもよいが、本実施形態の車輪支持部材は中央部に開口を有した円環状のスリーブ3であり、キャスタ本体1も中央部に開口1pを有するものであって、スリーブ3の外周に車輪2を直接取り付けている。特にこのような構造では、ベアリングレスにすることでキャスタC全体の開口を大きくすることができ、開口が同じ大きさであればキャスタCの車輪径を小さくすることができるので、キャスタCの外観をベアリング構造を採用したときよりも更に目立たなくすることができる。
【0051】
また、スリーブ3それ自体に第1抜け止め部33を設けたものであり、この第1抜け止め部33は、スリーブ3のキャスタ本体1への取り付けに伴い、車輪2のキャスタ本体1から遠い外側面(具体的には内輪21の外側面)に係合して車輪2の離脱を規制する。このようにすれば、スリーブ3をキャスタ本体1に取り付けるだけで、車輪2を適切に保持することができる。
【0052】
その第1抜け止め部33は、本実施形態では全周に設けられているので、スリーブ3を利用して車輪2の安定した抜け止めを図ることができる。
【0053】
また、スリーブ3それ自体に第2抜け止め部34を設けたものであり、この第2抜け止め部34は、スリーブ3のキャスタ本体1への取り付けに伴い、キャスタ本体1の開口の外周位に設けた孔14aに係合してスリーブ3の離脱を規制する。このようにすれば、スリーブ3をキャスタ本体1に取り付けるだけで、スリーブ3の抜け止めを図ることができる。
【0054】
また、第2抜け止め部34は、スリーブ3をキャスタ本体1に対して回転させることによって、キャスタ本体1の孔14aにより深く係合する。このようにすれば、第2抜け止め部34の効果を簡単に高めることができる。特に、回転するにつれて第2抜け止め部34の爪部34bがキャスタ本体1のスリット14a1の裏面に係合し、スリーブ3をキャスタ本体1の内壁14側に引き込むので、スリーブ3の幅方向のガタつきを低減する効果が得られる。
【0055】
また、スリーブ3それ自体に戻り止め部35を設けたものであり、この戻り止め部35は、スリーブ3がキャスタ本体1に対して回転した位置でキャスタ本体1の一部に係止されて逆回転が規制される。このようにすれば、スリーブ3を簡単に組み付ける構造を採用しても、より外れにくい構造を実現することができる。
【0056】
そして、以上のキャスタCを利用して家具Fを構成すれば、キャスタCに対する軽量化、小型化を通じて、足元がよりすっきりした外観の家具Fを提供することが可能となる。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0058】
例えば、上記実施形態では車輪支持部材であるスリーブ3の材料にPAを、車輪2(特にスリーブ3と接触する内輪21)の材料にPOMを用いたが、材料の関係を逆にして、スリーブ3の材料にPOMを、車輪2(特に内輪21)の材料にPAを用いてもよい。
【0059】
また、車輪2(特に外輪22)は接地面Gの材料との関係で適宜選択される。例えば、上記実施形態では接地面Gが比較的硬いフローリング等であることを前提に外輪22に比較的柔らかいTPUを用い、内輪21には耐久性や耐衝撃性、耐摩耗性のPOMを用いたが、例えば接地面Gが比較的柔らかいカーペット等である場合は、外輪22には比較的硬いPOMを用いてもよい。この場合、内輪21はPAでもPOMでもよい。内輪がPOMの場合は、外輪もPOMになることから、二層構造にする必要はない。
【0060】
勿論、スリーブ3を構成するすべり軸受材料や、そのすべり軸受面に接する車輪(特に内輪21)の材料、車輪(特に外輪22)の材料も、上記以外の種々の組み合わせの下に実施することが可能である。
【0061】
また、上記実施形態ではスリーブ3を、第2抜け止め部34を孔14aに通した後に回転させて戻り止め部35により戻り止めすることでキャスタ本体1に取り付けたが、
図12、
図13に示す第2抜け止め部134のように構成してもよい。この第2抜け止め部134も、スリーブ103のキャスタ本体101への取り付けに伴い、キャスタ本体101の開口の外周位に設けた孔114aに係合してスリーブ103の離脱を規制し、車輪102を保持するものである。
【0062】
第2抜け止め部134は、舌片134aの先端に外径側に屈曲する爪部134bを有し、この爪部134bはキャスタ本体の孔114aとほぼ同幅とされて、孔114aの内部の拡開した位置まで挿入した際に爪部134bが弾性復元してキャスタ本体101の内部壁に係合するものとなっている。両側のスリーブ103の第2抜け止め部134が干渉しないように、孔114aは位相が異なる位置に設けてある。
【0063】
このようにしても、スリーブ103を車輪102とともにキャスタ本体101に挿入するだけで、取り付けを完了することができる。
【0064】
また、上記実施形態ではスリーブ3、103を第2抜け止め部34、134や戻り止め部135によってキャスタ本体1、101に取り付けたが、勿論、樹脂ヒンジやビスによって取り付けを行っても構わない。
【0065】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符合の説明】
【0066】
1…キャスタ本体
1p…開口
2…車輪
3…スリーブ
3a…すべり軸受面
21…内輪
22…外輪
33…第1抜け止め部
34…第2抜け止め部
35…戻り止め部
C…キャスタ
F…家具
G…接地面