(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】除菌洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 1/44 20060101AFI20240514BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20240514BHJP
A01N 33/04 20060101ALI20240514BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20240514BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240514BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20240514BHJP
C11D 1/835 20060101ALI20240514BHJP
C11D 3/33 20060101ALI20240514BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20240514BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C11D1/44
A01N25/02
A01N33/04
A01P1/00
A01P3/00
B08B3/08 Z
C11D1/835
C11D3/33
C11D3/48
C11D17/08
(21)【出願番号】P 2020108877
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】吉川 清章
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲司
(72)【発明者】
【氏名】冨永 光宏
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-210475(JP,A)
【文献】特開2002-371299(JP,A)
【文献】特開2002-155297(JP,A)
【文献】特開2008-100964(JP,A)
【文献】特開昭59-101402(JP,A)
【文献】特開2010-077346(JP,A)
【文献】特開2013-221092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00- 19/00
A01N 1/00- 65/48
A01P 1/00- 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分及び(b)成分並びに任意に(c)成分を含有し、
(a)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比である(c)/(a)が0.3以下であり、
20℃でのpHが
7以上9以下であり、
更に、(d)成分として、(d1)カチオン性界面活性剤〔以下、(d1)成分という〕、及び(d2)(a)成分以外の非イオン界面活性剤〔以下、(d2)成分という〕から選ばれる1種以上の界面活性剤を含有し、
(d)成分として(d1)成分を含有する場合、組成物中の(a)成分の含有量と(d1)成分の含有量との質量比である(d1)/(a)は0.2以上5.0以下であり、
Methylobacterium属の微生物及びCladosporium属の微生物に対して除菌効果を有する、
除菌洗浄剤組成物。
(a)成分:炭素数8以上14以下のアルキル基又はアルケニル基を有し、オキシエチレン基の平均付加モル数が9モル以下であるポリオキシエチレンアルキルアミン
(b)成分:
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)及びこれらの塩から選ばれる1種以上のキレート剤
(c)成分:アニオン性界面活性剤
【請求項2】
(a)成分として、(a1)炭素数10以上14以下のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルアミン〔以下、(a1)成分という〕を含有する、請求項1に記載の除菌洗浄剤組成物。
【請求項3】
(a)成分中、(a1)成分の割合が50質量%以上である、請求項2に記載の除菌洗浄剤組成物。
【請求項4】
使用時における(c)成分の含有量が0質量%以上0.5質量%未満である、請求項1~3の何れか1項に記載の除菌洗浄剤組成物。
【請求項5】
組成物中の(a)成分の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の除菌洗浄剤組成物。
【請求項6】
組成物中の(b)成分の含有量が、0.2質量%以上10質量%以下である、請求項1~5の何れか1項に記載の除菌洗浄剤組成物。
【請求項7】
Methylobacterium属の微生物及びCladosporium属の微生物を含む汚れが付着した硬質表面に、請求項1~
6の何れか1項に記載の除菌洗浄剤組成物を用いて製造した泡を接触させる、硬質表面の除菌洗浄方法。
【請求項8】
硬質表面に、除菌洗浄剤組成物を発泡装置を用いて発泡させた泡を接触させる、請求項
7に記載の硬質表面の除菌洗浄方法。
【請求項9】
発泡装置が、フォームガン又はトリガースプレイヤーである、請求項
8に記載の硬質表面の除菌洗浄方法。
【請求項10】
泡を接触させた後、硬質表面を水ですすぐ、請求項
7~
9の何れか1項に記載の硬質表面の除菌洗浄方法。
【請求項11】
除菌洗浄剤組成物を1倍以上100倍以下に水で希釈して発泡させる、請求項
7~
10の何れか1項に記載の硬質表面の除菌洗浄方法。
【請求項12】
硬質表面が浴場設備の硬質表面である、請求項
7~
11の何れか1項に記載の硬質表面の除菌洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除菌洗浄剤組成物、及び硬質表面の除菌洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽、便器、流し台、配水管、床、壁などの硬質表面の洗浄には、従来、界面活性剤やキレート剤を組み合わせた洗浄剤が用いられている(特許文献1~6)。
浴室などの水廻りの硬質表面は、皮脂や石鹸カスなどの疎水性汚れが付着しやすく、また水中の硬度成分によりスカム化し強固に付着するため、洗浄しづらい汚れの一つである。また、そのような強固に付着した汚れは、細菌や黴などの微生物の栄養分となり、しかも適度な水分が常時存在するため、黴が生えやすく、いったん生えた黴は次亜塩素酸などの強力な酸化剤で除去しなければ洗浄できない等の大きな負担となる。また、細菌によるぬめり汚れも落としにくいやっかいな汚れとなり得る。微生物の中でも、Methylobacterium属の微生物はピンク色のぬめり汚れの、また、Cladosporium属の微生物は黒い点状の汚れという、水回りで発生する代表的な汚れの原因となることが知られている。特許文献7~10には、水溶性無機塩、非イオン性殺菌剤を含有する、黴に対して優れた殺黴効果を発揮する硬質表面用殺黴洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-100964号公報
【文献】国際公開第2015/114994号
【文献】特開2008-247952号公報
【文献】特開2002-155297号公報
【文献】特開2001-335797号公報
【文献】特開2019-112359号公報
【文献】特開2019-151734号公報
【文献】特開2019-151735号公報
【文献】特開2019-151736号公報
【文献】特開2019-151737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公衆浴場、介護施設、病院などの浴室などでは、洗浄領域が広いため、ブラシなどを使用した手洗いでは作業効率が悪い。短時間で効果的に洗浄を行うために、洗浄剤をフォームガンのような発泡装置で泡状にして対象物に適用して洗浄することが考えられるが、そのような洗浄方法で、微生物、例えばMethylobacterium属の微生物及びCladosporium属の微生物の両方の微生物に対して、優れた除菌効果を発揮し且つ対象物を洗浄できる技術については、いまだ十分に検討されていない。これは、特に我々の生活空間において不快感を与える特定の複数の微生物において、それらの微生物が持つ薬剤耐性、温度やpH、泡状などの洗浄剤接触等の環境耐性、ふき取りや擦り洗い等の機械耐性などがそれぞれ異なっていることに由来しているためと考えられる。
【0005】
本発明は、泡を用いた洗浄形態であっても、Methylobacterium属の微生物及びCladosporium属の微生物の両方の微生物に対して優れた除菌効果を示し、対象物の泡洗浄が可能な除菌洗浄剤組成物及び洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(a)成分及び(b)成分並びに任意に(c)成分を含有し、(a)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比である(c)/(a)が0.3以下であり、20℃でのpHが6以上9以下であり、Methylobacterium属の微生物及びCladosporium属の微生物に対して除菌効果を有する、除菌洗浄剤組成物に関する。
(a)成分:炭素数8以上14以下のアルキル基又はアルケニル基を有し、オキシエチレン基の平均付加モル数が9モル以下であるポリオキシエチレンアルキルアミン
(b)成分:キレート剤
(c)成分:アニオン性界面活性剤
【0007】
また、本発明は、Methylobacterium属の微生物及びCladosporium属の微生物を含む汚れが付着した硬質表面に、本発明の除菌洗浄剤組成物を用いて製造した泡を接触させる、硬質表面の除菌洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、泡を用いた洗浄形態であっても、Methylobacterium属の微生物とCladosporium属の微生物の両方の微生物に対して優れた除菌効果を示し、対象物の泡洗浄が可能な除菌洗浄剤組成物及び洗浄方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<除菌洗浄剤組成物>
本発明の除菌洗浄剤組成物は、前記(a)成分及び(b)成分並びに任意に(c)成分を含有し、組成物中の(a)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比である(c)/(a)が0.3以下であり、20℃でのpHが6以上9以下であり、Methylobacterium属の微生物及びCladosporium属の微生物の両方の微生物に対して除菌効果を有する、除菌洗浄剤組成物である。以下、本発明で除菌効果という場合、特記しない限り、Methylobacterium属の微生物及びCladosporium属の微生物の両方の微生物に対する除菌効果を意味する。
【0010】
(a)成分は、炭素数8以上14以下のアルキル基又はアルケニル基を有し、オキシエチレン基の平均付加モル数が9モル以下であるポリオキシエチレンアルキルアミンである。
(a)成分は、炭素数8以上14以下のアルキル基又はアルケニル基を、1つ有する化合物が好ましい。
(a)成分の前記アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、除菌効果の観点から、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、14以下である。
(a)成分のオキシエチレン基の平均付加モル数は、除菌効果の観点から、9モル以下、好ましくは7以下、より好ましくは5以下、そして、好ましくは1以上、より好ましくは2以上である。
【0011】
(a)成分としては、除菌効果の観点から、(a1)炭素数12以上14以下のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルアミン〔以下、(a1)成分という〕が好ましい。本発明の除菌洗浄剤組成物は、(a)成分として、(a1)成分を含有することが好ましい。本発明では、(a)成分中、(a1)成分の割合が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。
【0012】
本発明の除菌洗浄剤組成物は、使用時における(a)成分の含有量が、除菌効果の観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.002質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。本発明の除菌洗浄剤組成物は、この範囲で(a)成分を含有する組成物であってよく、その場合は、水で希釈せずにそのまま用いる組成物として好適である。
【0013】
また、本発明の除菌洗浄剤組成物は、(a)成分の含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは1.0質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下である。この含有量の組成物は、水で希釈して用いる組成物として好適である。
【0014】
(b)成分は、キレート剤である。キレート剤としては、アミノカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシキホスホン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。(b)成分は、アミノカルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上の化合物がより好ましい。
【0015】
アミノカルボン酸及びその塩としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノ二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)、N-ヒドロキシエチル-エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。アミノカルボン酸及びその塩は、エチレンジアミン4酢酸及びその塩、メチルグリシン2酢酸及びその塩、並びにL-グルタミン酸二酢酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
ヒドロキシカルボン酸及びその塩としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及びその塩から選ばれる化合物が好ましい。ヒドロキシカルボン酸及びその塩としては、リンゴ酸、クエン酸及びその塩から選ばれる化合物が挙げられる。
ヒドロキシキホスホン酸及びその塩としては、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)及びその塩から選ばれる化合物が挙げられる。
金属封鎖剤の塩は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられる。好ましくはアルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩である。
【0016】
(b)成分は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、クエン酸、リンゴ酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上が好ましく、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、クエン酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上がより好ましく、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)及びこれらの塩から選ばれる1種以上が更に好ましい。
【0017】
本発明の除菌洗浄剤組成物は、使用時における(b)成分の含有量が、石鹸カス洗浄性の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは0.2質量%以上、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.4質量%以下である。本発明の除菌洗浄剤組成物は、この範囲で(b)成分を含有する組成物であってよく、その場合は、水で希釈せずにそのまま用いる組成物として好適である。
【0018】
また、本発明の除菌洗浄剤組成物は、(b)成分の含有量が、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、より更に好ましくは2.0質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下である。この含有量の組成物は、水で希釈して用いる組成物として好適である。
【0019】
(c)成分は、アニオン性界面活性剤である。アニオン性界面活性剤としては、洗浄性、発泡性及び除菌効果の観点から、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基を有するアニオン性界面活性剤が好ましく、アルキルアリールスルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤、アルカンスルホン酸型界面活性剤、オレフィンスルホン酸型界面活性剤、及びスルホ脂肪酸エステル型界面活性剤から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0020】
アルキルアリールスルホン酸型界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。具体的には、炭素数6以上15以下のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。
【0021】
硫酸エステル型界面活性剤としては、炭素数8以上20以下の炭化水素基と、硫酸エステル基とを有するアニオン性界面活性剤が挙げられる。炭化水素基は、洗浄性の観点から、炭素数が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。炭化水素基は、アルキル基が好ましい。
硫酸エステル型界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が挙げられる。
アルキル硫酸エステル塩としては、洗浄性の観点から、炭素数が8以上、好ましくは10以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下のアルキル基、更に直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル硫酸エステル塩が好適である。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、洗浄性の観点から、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下のアルキル基、更に直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有し、炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基の平均付加モル数が、洗浄性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上、そして、好ましくは6以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2.0以下である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好適である。オキシアルキレン基はエチレン基が好ましい。
【0022】
アルカンスルホン酸型界面活性剤としては、洗浄性の観点から、アルカン部分の炭素数が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは14以上、そして、20以下、好ましくは18以下のアルカンスルホン酸塩が挙げられる。
【0023】
オレフィンスルホン酸型界面活性剤としては、α-オレフィンスルホン酸塩、内部オレフィンスルホン酸塩が挙げられる。α-オレフィンスルホン酸塩は、洗浄性の観点から、オレフィン部分の炭素数が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは14以上、そして、22以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下を挙げることができる。また内部オレフィンスルホン酸塩は、洗浄性の観点から、オレフィン部分の炭素数が8以上、好ましくは12以上、より好ましくは16以上、そして、24以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。
【0024】
スルホ脂肪酸エステル型界面活性剤としては、脂肪酸部分の炭素数が10以上18以下のα-スルホ脂肪酸塩、脂肪酸部分の炭素数が10以上18以下であり、エステル部分の炭素数が1以上5以下であるα-スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩が挙げられる。
【0025】
アニオン性界面活性剤の塩として、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等から選ばれる無機塩、モノエタノールアンモニウム塩、ジエタノールアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、モルホリニウム塩等から選ばれる有機アンモニウム塩が好適である。
【0026】
(c)成分のアニオン性界面活性剤は、洗浄性、発泡性及び除菌効果の観点から、好ましくはアルキル基の炭素数が10以上14以下のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(オキシアルキレン基、好ましくはオキシエチレン基の平均付加モル数は0.4以上、2.0以下)から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤であり、より好ましくはアルキル基の炭素数が10以上14以下のアルキルベンゼンスルホン酸塩である。
【0027】
本発明の除菌洗浄剤組成物は、任意に(c)成分を含有する。本発明の除菌洗浄剤組成物は、組成物中の(a)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比である(c)/(a)が、0.3以下である。(c)/(a)は、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下、そして、0以上であり、0であってもよい。(c)成分の含有量をこのように制限することで、本発明では、泡を用いた洗浄形態であっても、発泡性と、Methylobacterium属の微生物とCladosporium属の微生物の両方の微生物に対する優れた除菌効果とが得られる。
【0028】
本発明では、この質量比を満たした上で、組成物中の(c)成分の含有量を選定できる。本発明の除菌洗浄剤組成物は、使用時における(c)成分の含有量が、洗浄性、発泡性及び除菌効果の観点から、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、より更に好ましくは0.08質量%以下、より更に好ましくは0.05質量%以下、より更に好ましくは0.02質量%以下、そして、0質量%以上であり、0質量%であってもよい。本発明の除菌洗浄剤組成物は、この範囲で(c)成分を含有する組成物であってよく、その場合は、水で希釈せずにそのまま用いる組成物として好適である。また、本発明の除菌洗浄剤組成物は、(c)成分の含有量が、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下、そして、0質量%以上であり、0質量%であってもよい。この含有量の組成物は、水で希釈して用いる組成物として好適である。
【0029】
本発明の除菌洗浄剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(d)成分として、(a)成分及び(c)成分以外の界面活性剤を含有することができる。(d)成分としては、カチオン性界面活性剤、(a)成分以外の非イオン界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。
【0030】
カチオン性界面活性剤〔以下、(d1)成分という〕としては、第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤が挙げられる。第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤としては、窒素原子に結合する基のうち、1つ又は2つが炭素数8以上16以下の炭化水素基であり、残りが炭素数1以上3以下のアルキル基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基及びアリールアルキル基(ベンジル基等)からなる群から選ばれる基である4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤が挙げられる。なかでも、殺菌性能を有する4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤が好ましく、除菌効果の点から、ベンジル基を有する4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤が好ましい。
【0031】
(d1)成分としては、下記一般式(d1-1)で表される陽イオン界面活性剤、及び一般式(d1-2)で表される陽イオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の陽イオン界面活性剤が挙げられる。
【0032】
【0033】
〔式中、R1d~R4dのいずれか1つ又は2つが、炭素数8以上16以下の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、又は次式
【0034】
【0035】
で表される基を示し、残りは同一もしくは異なって、炭素数1以上3以下のアルキル基、ベンジル基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、又は式-(CH2CH2O)mH(mはエチレンオキシド平均付加モル数で、2以上20以下の数を示す)で表される基を示し、R5dは炭素数12以上18以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、X-はハロゲンイオン、好ましくは塩素イオン、又は有機アニオンとなる基を示す。〕
【0036】
(d1)成分は、洗浄性、組成物の安定性、及び殺菌効果の観点から、ジアルキル(炭素数8以上16以下)ジメチルアンモニウムハライド、塩化ベンザルコニウム(炭素数8以上16以下のアルキル基を有するもの)、塩化ベンゼトニウム又はこれらの対イオンが他のアニオンに変換されたカチオン性界面活性剤が好ましく、塩化ベンザルコニウム(炭素数8以上16以下のアルキル基を有するもの)がより好ましい。
【0037】
本発明の除菌洗浄剤組成物が(d1)成分を含有する場合、使用時における(d1)成分の含有量は、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、そして、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。本発明の除菌洗浄剤組成物は、この範囲で(d1)成分を含有する組成物であってよく、その場合は、水で希釈せずにそのまま用いる組成物として好適である。
【0038】
また、本発明の除菌洗浄剤組成物が(d1)成分を含有する場合、(d1)成分の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。この含有量の組成物は、水で希釈して用いる組成物として好適である。
【0039】
本発明の除菌洗浄剤組成物は、組成物中の(a)成分の含有量と(d1)成分の含有量との質量比である(d1)/(a)が、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、そして、好ましくは5.0以下、より好ましくは2.0以下である。
【0040】
(a)成分以外のノニオン性界面活性剤〔以下、(d2)成分という〕としては、炭素数10以上18以下のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル、炭素数10以上18以下のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、炭素数10以上18以下の脂肪酸基を有するポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルグリコシド、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルポリグリコシド、炭素数8以上18以下の脂肪酸基を有するショ糖脂肪酸エステル、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルポリグリセリルエーテル等が挙げられる。中でも洗浄性の観点から、炭素数10以上16以下のアルキル基を有しエチレンオキサイド平均付加モル数が1以上30以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0041】
本発明の除菌洗浄剤組成物が(d2)成分を含有する場合、使用時における(d2)成分の含有量は、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、そして、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。本発明の除菌洗浄剤組成物は、この範囲で(d2)成分を含有する組成物であってよく、その場合は、水で希釈せずにそのまま用いる組成物として好適である。
【0042】
また、本発明の除菌洗浄剤組成物が(d2)成分を含有する場合、(d2)成分の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。この含有量の組成物は、水で希釈して用いる組成物として好適である。
【0043】
両性界面活性剤〔以下、(d3)成分という〕としては、アルキルアミンオキシド等のアミンオキシド、アルキルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン等のベタイン、及びアミドアミノ酸(イミダゾリン系ベタイン)などが挙げられる。(d3)成分はこれらから選ばれる1種以上を含有することができる。(d3)成分は、洗浄性、組成物の安定性の観点から、アミンオキシド及び/又はベタインが好ましい。
【0044】
アミンオキシドとしては、炭素数8以上18以下の炭化水素基を有するアミンオキシドが好ましい。具体的には、下記一般式(d3-1)で表される化合物が挙げられる。
【0045】
【0046】
〔式中、R6dは炭素数8以上18以下の炭化水素基、好ましくは炭素数8以上16以下のアルキル基又はアルケニル基であり、R7dは炭素数1以上6以下のアルキレン基であり、Dは-(CO)O-、-(CO)(NH)-、-O(CO)-、-(NH)(CO)-から選ばれる基である。kは0又は1の数であり、R8d、R9dは、それぞれ炭素数1~3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。〕
【0047】
一般式(d3-1)において、R6dは、好ましくは炭素数10以上14以下のアルキル基又はアルケニル基であり、より好ましくはラウリル基(又はラウリン酸残基)及び/又はミリスチル基(又はミリスチン酸残基)である。Dは、好ましくは-(CO)O-又は-(CO)(NH)-であり、より好ましくは-(CO)(NH)-である。R7dの炭素数は、好ましくは2又は3であり、R8d、R9dは、それぞれ、好ましくはメチル基である。
【0048】
ベタインとしては、炭素数8以上18以下の炭化水素基を有するベタインが好ましい。具体的には、下記一般式(d3-2)で表される化合物が挙げられる。
【0049】
【0050】
〔式中、R10dは炭素数8以上18以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基であり、R11dは炭素数1以上6以下のアルキレン基である。Eは-(CO)O-、-(CO)(NH)-、-O(CO)-、-(NH)(CO)-、-O-から選ばれる基であり、jは0又は1の数である。R12d、R13dは、それぞれ炭素数1以上3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R14dはヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1以上5以下のアルキレン基である。Tは-SO3
-、-OSO3
-、-COO-から選ばれる基である。〕
【0051】
一般式(e2)において、R10dは、好ましくは炭素数9以上、より好ましくは10以上、そして、好ましくは17以下、より好ましくは16以下のアルキル基又はアルケニル基である。R11dは、好ましくは炭素数1以上4以下、より好ましくは2又は3のアルキレン基、jは好ましくは0である。R12d、R13dは、それぞれ、好ましくはメチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基である。R14dはヒドロキシ基で置換してもよい炭素数1~3のアルキレン基が好ましい。Tは洗浄効果の点から-SO3
-が好ましい。
【0052】
本発明の除菌洗浄剤組成物が(d3)成分を含有する場合、使用時における(d3)成分の含有量は、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、そして、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。本発明の除菌洗浄剤組成物は、この範囲で(d3)成分を含有する組成物であってよく、その場合は水で希釈せずにそのまま用いる組成物として好適である。
【0053】
また、本発明の除菌洗浄剤組成物が(d3)成分を含有する場合、(d3)成分の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。この含有量の組成物は、水で希釈して用いる組成物として好適である。
【0054】
本発明の除菌洗浄剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、溶剤、香料、色素、防腐剤、酸化防止剤等の成分((a)~(d)成分を除く)を任意に含有することができる。
【0055】
本発明の除菌洗浄剤組成物は、水を含有することが好ましい。すなわち、前記(a)成分、(b)成分、及び(c)~(d)成分などの任意成分以外の残部が水であってよい。使用時の組成物でも同様である。本発明の除菌洗浄剤組成物は、水を、組成物中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下含有する。この含有量の組成物は、水で希釈して用いる組成物として好適である。水は、イオン交換水、滅菌イオン交換水、水道水等を使用することができる。
【0056】
本発明の除菌洗浄剤組成物は、除菌効果の観点から、20℃でのpHが6以上、好ましくは7以上、そして、9以下、好ましくは8以下である。
【0057】
本発明の除菌洗浄剤組成物は、Methylobacterium属の微生物及びCladosporium属の微生物の両方の微生物に対して除菌効果を有する。例えば、懸濁試験法による殺菌試験、例えば後述する実施例の条件での懸濁試験法による殺菌性と殺黴性の評価方法で、生菌数の対数減少値(ΔLog生菌数)が、Methylobacterium属の微生物及びCladosporium属の微生物で、それぞれ、2以上となるものは、Methylobacterium属の微生物及びCladosporium属の微生物の両方の微生物に対して除菌効果を有すると判断してよい。
【0058】
本発明の除菌洗浄剤組成物は、前記(a)成分及び(b)成分並びに任意に(c)成分を配合してなり、(a)成分の配合量と(c)成分の配合量との質量比である(c)/(a)が0.3以下であり、20℃でのpHが6以上9以下であり、Methylobacterium属の微生物及びCladosporium属の微生物の両方の微生物に対して除菌効果を有する、除菌洗浄剤組成物であってよい。
また、本発明により、前記(a)成分及び(b)成分並びに任意に(c)成分を配合する除菌洗浄剤組成物の製造方法であって、(a)成分の配合量と(c)成分の配合量との質量比である(c)/(a)が0.3以下であり、除菌洗浄剤組成物が、20℃でのpHが6以上9以下であり、Methylobacterium属の微生物及びCladosporium属の微生物の両方の微生物に対して除菌効果を有する、除菌洗浄剤組成物の製造方法が提供される。
これらの態様にも本発明の除菌洗浄剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。その場合、除菌洗浄剤組成物における含有量を配合量に置き換えて適用してよい。
【0059】
本発明の除菌洗浄剤組成物は、硬質表面用、更に、Methylobacterium属の微生物及びCladosporium属の微生物を含む汚れが付着した硬質表面用あってよい。本発明の除菌洗浄剤組成物は、浴場設備、浴室、浴槽、洗面器、タイル、化粧室、洗面台、鏡、台所まわりのシンク、カウンタートップ、水道まわり、食品加工設備、調理設備等の硬質表面の洗浄に好適に用いられ、特に浴室用として好適に用いられる。ここで、浴場設備用ないし浴室用とは、浴室のみならず、浴槽、洗面器、床、壁、作業台、天井など、浴場設備内や浴室内に存在する他の硬質表面を有する物品や構造物なども対象とするものである。本発明は、浴場設備を対象とすることが好ましい。また、本発明の除菌洗浄剤組成物は、泡洗浄用であってよい。本発明の除菌洗浄剤組成物は、硬質表面に泡状で適用されることが好ましい。
【0060】
<硬質表面の除菌洗浄方法>
本発明の硬質表面の除菌洗浄方法は、Methylobacterium属の微生物及びCladosporium属の微生物を含む汚れが付着した硬質表面に、本発明の除菌洗浄剤組成物を用いて製造した泡を接触させる、硬質表面の除菌洗浄方法である。
本発明の除菌洗浄方法には、本発明の除菌洗浄剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。また、(a)~(c)成分の具体例や好ましい態様なども同じである。
【0061】
本発明の硬質表面の除菌洗浄方法では、前記した使用時の含有量で各成分を含有する本発明の除菌洗浄剤組成物を用いることが好ましい。
【0062】
本発明では、前記硬質表面に、本発明の除菌洗浄剤組成物を発泡装置を用いて発泡させた泡を接触させることが好ましい。発泡装置としては、フォームガン又はトリガースプレイヤーが挙げられる。
【0063】
本発明では、本発明の除菌洗浄剤組成物を、例えば、1倍以上、更に5倍以上、更に8倍以上、そして、100倍以下、更に60倍以下に水で希釈して発泡させることができる。この場合、前記した希釈して用いる組成物として好適な含有量で各成分を含有する本発明の除菌洗浄剤組成物を希釈に用いることが好ましい。
【0064】
フォームガンは、本発明の効果を阻害するものでなければ特に限定するものではないが、所定の粗さの網、例えば、JIS G3555(:2004)により定義される目数及び線径が、それぞれ、40メッシュ以上、60メッシュ以下、及び0.15mm以上、0.25mm以下である網を、噴射口に装着したアスピレータ構造を有するフォームガンが挙げられる。網の材質は特に限定されるものではないが、金属、樹脂、セラミクス、ガラス繊維、カーボン繊維などが挙げられる。金属としては、ステンレス、銅、真鍮、アルミなどが挙げられる。樹脂としてはナイロン、PET、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)などが挙げられる。ステンレスとしては、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS310S、SUS420J2等が挙げられ、耐薬剤性の点でSUS304が好ましい。
【0065】
フォームガンの噴射口に装着する網は、例えば、JIS G3555(:2004)により定義される目数が40メッシュ以上、60メッシュ以下である。また、フォームガンの噴射口に装着する網は、例えば、JIS G3555(:2004)により定義される線径が0.15mm以上、0.25mm以下である。噴射口の直径(内径)は10mm以上、更に15mm以上、更に20mm以上、そして、50mm以下、更に4mm以下、更に30mm以下が好ましい。この噴射口の径に合わせて網の形状、大きさを適宜選定できる。
【0066】
フォームガンは、アスピレータ構造を有するものであってよい。アスピレータ構造を有するフォームガンとしては、例えば、Hydoro Systems Company製のHydro Foamer Seriesのフォーマー(例えば、Model 481、482など)が挙げられる。
【0067】
フォームガンは、例えば、本発明の除菌洗浄剤組成物の収容部と、該収容部中の除菌洗浄剤組成物と外部からの水とを混合する手段と、除菌洗浄剤組成物と水の混合物を発泡させる手段と、発泡させた混合物を噴射する開口と、を備えている。アスピレータ構造は、除菌洗浄剤組成物と外部からの水とを混合する手段の一部として機能する。網は、除菌洗浄剤組成物と水の混合物を発泡させる手段の一部として機能する。更に、フォームガンは、水の流路、除菌洗浄剤組成物の流路、水と除菌洗浄剤組成物の混合物の流路、外部からの空気の供給手段を備える。フォームガンは、水を流通できる機構を備えており、水の流路がアスピレータ構造を構成することが好ましい。
【0068】
本発明では、アスピレータ構造を有するフォームガンの原液コンテナ(容器)に除菌洗浄剤組成物の原液を入れて、アスピレータの原液吸込管と水道の蛇口をホースで繋ぎ、水道の水圧で液体を流して発泡することが好適である。
【0069】
本発明では、フォームガンに流通する水量は、洗浄性及び除菌効果の観点から、例えば、1L/分以上、20L/分以下であり、希釈倍率は、例えば、8倍以上、100倍以下である。フォームガンに流通する水量は、18L/分以下、更に16L/分以下が好ましい。洗浄中の水量の変動は、前記水量の1~2割の範囲であることが好ましい。希釈倍率は、100倍以下、更に80倍以下、更に60倍以下、更に40倍以下が好ましい。この希釈倍率は、前記した希釈して用いる組成物として好適な含有量で各成分を含有する本発明の除菌洗浄剤組成物の希釈倍率であることが好ましい。
【0070】
本発明において、除菌洗浄剤組成物を対象物にフォームガンで適用する方法は、連続的であっても間欠的又は断続的であってもよい。洗浄面積1m2当たりの除菌洗浄剤組成物の適用量としては、洗浄性及び除菌効果の観点から、例えば、3g以上、更に5g以上、更に7g以上そして、80g以下、更に50g以下、更に30g以下が好ましい。
【0071】
本発明では、硬質表面に泡を接触させた後、一定の時間保持してもよい。保持する時間としては、作業性、洗浄性及び除菌効果の観点から、1分以上、更に3分以上、更に5分以上、更に7分以上が好ましく、そして、60分以下、更に45分以下、更に30分以下、更に20分以下、更に15分以下が好ましい。泡を保持している間は放置しておくことが好ましいが、僅かの水等を加えるようなことも可能である。
【0072】
本発明では、硬質表面に泡を接触させた後、硬質表面を水ですすぐことが好ましい。すすぎに用いる水の温度は、例えば、10℃以上、更に20℃以上、そして、70℃以下である。濯ぎ水としては、水道水を用いることができ、上記の好ましい水温に調整すべく加熱して用いてもよい。一般的には、ホース等で人の手による濯ぎ作業が行われる。
【0073】
本発明の除菌洗浄方法の対象とする、Methylobacterium属の微生物及びCladosporium属の微生物を含む汚れが付着した硬質表面は、本発明の除菌洗浄剤組成物で述べた硬質表面が挙げられる。具体的には、浴場設備、食品加工設備、調理設備等の設備の硬質表面が挙げられ、浴場設備の硬質表面が好適である。硬質表面は、これらの設備の床、壁、作業台、天井などの構造物や、これらの設備で用いられる機器、器具などの物品の硬質表面を含んでいてもよい。本発明は、浴場設備を対象とすることが好ましい。一般に、浴場設備は、比較的多人数の入浴者が同時に利用する大型の浴槽を備えており、更に、比較的少人数の入浴者が利用する小型の浴槽を備える場合もある。浴場設備はいわゆる共同浴場として利用されることが多く、浴槽や床、壁、天井などの規模が大型であることから、洗浄には手間がかかる。本発明では、フォームガンなどの発泡装置を用いた泡での洗浄により、Methylobacterium属の微生物及びCladosporium属の微生物を含む汚れを効率的に除去できるため、作業効率が格段に向上する。
【実施例】
【0074】
<配合成分>
〔(a)成分〕
a-1:ココアルキルアミンEO付加物(EO2)
a-2:ココアルキルアミンEO付加物(EO5)
a-3:ラウリルアミンEO付加物(EO1)
a-4:ラウリルアミンEO付加物(EO2)
a-5:ラウリルアミンEO付加物(EO7)
a-6:デシルアミンEO付加物(EO2)
a-7:ミリスチルアミンEO付加物(EO2)
a-8:ラウリルアミンEO付加物(EO5)
EOはエチレンオキシドの略であり、EOの次の数字は、アミンに対するエチレンオキシドの平均付加モル数である(以下同様)。
【0075】
〔(a’)成分((a)成分の比較成分)〕
a’-1:ココアルキルアミンEO付加物(EO15)
a’-2:ステアリルアミンEO付加物(EO2)
a’-3:ステアリルアミンEO付加物(EO8)
a’-4:ヘキサデシルアミンEO付加物(EO2)
【0076】
〔(b)成分〕
b-1:エチレンジアミン4酢酸4Na
b-2:メチルグリシン2酢酸3Na
【0077】
〔(c)成分〕
c-1:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ネオペレックスG-15、花王株式会社
【0078】
〔(d)成分〕
d1-1:アルキル(炭素数8~18、平均10)ベンジルジメチルアンモニウムクロライド
d2-1:ポリオキシエチレン(EO23)ラウリルエーテル、エマルゲン 123P、花王株式会社
d3-1:ラウリルジメチルアミンオキサイド
d3-2:ラウリルヒドロキシスルホベタイン、アンヒトール20HD、花王株式会社
d3-3:ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アンヒトール20BS、花王株式会社
【0079】
<実施例1~3、比較例~3>
前記配合成分を用いて表1~3の除菌洗浄剤組成物を調製した。それらを用いて以下の評価を行った。結果を表1~3に示した。
【0080】
<殺黴性評価方法>
住環境優先糸状菌Cladosporium属の環境分離株Cladsporiumsp. PA-4を、CP加ポテトデキストロース平板寒天培地(コージンバイオ株式会社製)上で25℃/7日間培養後、同寒天プレート上に胞子回収液((株)大塚製薬工場製の生理食塩水で調製した和光純薬工業(株)製の0.05%Tween80溶液)を5mL滴下して、コンラージ棒(日水製薬(株)製)でなでるように軽くこすることで菌液を回収した。その後回収した菌液を、ミラクロス(CALBIOCHEM社製)を用いて濾過することで菌糸を除去し、得られた液を遠心処理(8,000rpm、25℃、5min)し、上澄みを除去した。これらの操作を2、3回繰り返し、OD=40に調製して試験胞子液とした。
【0081】
表1~3の除菌洗浄剤組成物を試験液として用い、試験液2mLに対して調製した試験胞子液20μLを混合して、25℃で10分間接触させた後に、その200μLを分取して1800μLのLP希釈液(日水製薬社製のものを能書通りに調製したもの)に懸濁することで試験液を不活化した。これを更に生理食塩水で希釈した後に、“KBM”CP加ポテトデキストロース寒天培地(コージンバイオ株式会社製)に塗布して4日間25℃で培養して得られたコロニー数からΔLog生菌数を算出した。
【0082】
<殺菌性評価方法>
住環境菌Methylobacterium属の環境分離株Methylobacteriumfujisawaense GP-1を、ポテトデキストロースブロス(BectonDickinson社製のPotato Dextrose Broth試薬を能書どおりに調製)で30℃/1日間振とう培養後、菌液を遠心分離処理(4,000rpm、25℃、10min)し、上澄みを除去した。その後、生理食塩水((株)大塚製薬工場製)を加え再分散した後遠心分離処理を行う。これらの操作を2回繰り返し、生理食塩水でOD=0.1に調製して試験菌液とした。
【0083】
表1~3の除菌洗浄剤組成物を試験液として用い、試験液2mLに対して調製した試験胞子液160μLを混合して、25℃で10分間接触させた後に、その200μLを分取して1800μLのLP希釈液(日水製薬社製のものを能書通りに調製したもの)に懸濁することで試験液を不活化した。これを更に生理食塩水で希釈した後に、ポテトデキストロース寒天培地(関東化学株式会社製)に塗布して4日間25℃で培養して得られたコロニー数からΔLog生菌数を算出した。
【0084】
<石鹸カス洗浄性評価>
浴室に付着する石鹸カス汚れの組成を参考にして調製したモデル石鹸カス汚れをポリプロピレン製プレート(サイズ8cm×12cm)上に製膜した。モデル石鹸カス汚れの調製と製膜の方法は、前記プレートを、固形石鹸(花王(株)製、「ホワイト」)を溶かした水溶液(2質量%)、塩化カルシウム水溶液(0.7質量%)に順に浸漬させ、その後乾燥させる工程を10回繰り返すことでモデル石鹸カス汚れの調製と製膜を行った。モデル石鹸カス汚れを前記プレートに製膜した後、プレートの汚れ部分に、表1~3の除菌洗浄剤組成物30μlを滴下し、25℃で10分放置後、水洗し、当該研究に従事する4名の研究員の目視により下記基準で洗浄力を評価し、平均値を評価点とした。この評価は、除菌洗浄剤組成物を泡状で用いた場合の洗浄性と相関し、泡洗浄での洗浄性を対比する指標となる。
5:前記組成物を滴下した箇所の汚れが全て落ちた。
4:前記組成物を滴下した箇所の汚れが全ては落ちなかったが、3/4以上の汚れは落ちた。
3:前記組成物を滴下した箇所の汚れが全ては落ちなかったが、半分以上の汚れは落ちた。
2:前記組成物を滴下した箇所の汚れが全ては落ちなかったが、1/4以上の汚れは落ちた。
1:前記組成物を滴下した箇所の汚れがほとんど落ちなかった。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
表3中、実施例の除菌洗浄剤組成物は、前記の方法で石鹸カス洗浄性を評価すると、3点以上となる。
【0089】
<実施例4及び比較例4>
実施例1等と同様に、ただし実施例1の除菌洗浄剤組成物に代えて表4の除菌洗浄剤組成物を用いて、殺黴性と殺菌性を評価した。結果を表4に示す。
【0090】