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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】パッキン
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20240514BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
F16J15/10 N
H01R13/52 301H
F16J15/10 R
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020110507
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022007493
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓貴
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0266752(US,A1)
【文献】実開昭51-093417(JP,U)
【文献】特開平11-233202(JP,A)
【文献】特開2000-055203(JP,A)
【文献】特開2016-212969(JP,A)
【文献】特開2015-041508(JP,A)
【文献】特開2001-085099(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104122(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0292656(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0318473(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0204157(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109854829(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1497283(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合されることになる外周側部材と内周側部材との間に挟まれ、前記外周側部材の内周面及び前記内周側部材の外周面の双方と当接することになる、環状のパッキンであって、
前記外周側部材と前記内周側部材との嵌合方向における一方側に位置する環状の第1シール部と、
前記第1シール部よりも前記嵌合方向の他方側に位置する環状の第2シール部と、
前記第1シール部の径方向外側の表面に連続するとともに前記第1シール部から前記一方側に向けて離れるにつれて径方向内側に向かうように傾斜する傾斜面を有し、前記第1シール部の前記一方側に位置する、環状の傾斜部と、
前記傾斜部の径方向内側の面に設けられる径方向外側に窪む第1窪み部と
前記第2シール部の前記他方側に位置する環状の端末部と、
前記端末部の径方向内側の面に設けられる径方向外側に窪む第2窪み部と、を備え、
弾性変形していない状態において、前記嵌合方向に延びる環状の基準外周面及び前記嵌合方向に延びる環状の基準内周面により画成され且つ肉厚が全域に亘って一定の基準筒形状に対して、外周面に、径方向外側に突出し且つその頂部に対応する部分が前記第1シール部を構成する環状の第1突起部、及び、径方向外側に突出し且つその頂部に対応する部分が前記第2シール部を構成する環状の第2突起部が設けられ、且つ、内周面に、径方向外側に窪む環状の前記第1窪み部及び環状の前記第2窪み部が設けられた、筒形状を有しており、
前記第2突起部よりも前記嵌合方向の他方側に位置する部分の全域が前記端末部を構成し、前記端末部の外周面の全域が前記基準外周面に含まれており、
前記第2窪み部は、前記端末部と前記第2突起部との境界部の径方向内側面に設けられている、
パッキン。
【請求項2】
請求項に記載のパッキンにおいて、
前記第2窪み部の窪み寸法は、前記第1窪み部の窪み寸法よりも小さい、
パッキン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに嵌合されることになる外周側部材と内周側部材との間に挟まれて外周側部材の内周面及び内周側部材の外周面の双方と当接することになる、環状のパッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、互いに嵌合される外周側部材と内周側部材との間に挟まれるように用いられ、それら両者間の止水などを図るための環状のパッキンが提案されている(例えば、特許文献1~6を参照。)。例えば、この種のパッキンは、外周側部材の内周面および内周側部材の外周面の双方と当接するシール部を有しており、上述した内周面及び外周面の双方にシール部を当接させることで、外周側部材の内周面と内周側部材の外周面との間を封止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-251193号公報
【文献】特開2013-8598号公報
【文献】特開2014-139890号公報
【文献】特開2016-212969号公報
【文献】国際公開第2014/104122号
【文献】特許第5417800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した環状のパッキンを実際に使用する際、パッキンのシール部には、通常、本来のシール性を発揮するべく外周側部材と内周側部材との間で押し潰される方向(即ち、径方向)の外力に加え、外周側部材と内周側部材との嵌合に伴う嵌合方向の外力も及ぼされる。特に、シール性を高める目的でシール部の肉厚を大きくした場合、後者の外力(即ち、嵌合方向の外力)が大きくなる傾向がある。後者の外力が過度に大きくなると、パッキンのめくれ上がり等に伴うパッキンの噛み込みや、パッキン自体の座屈変形などが生じる可能性がある。このようなパッキンの異常変形が生じることは、パッキンが設計通りのシール性を発揮する妨げになり得るため、出来る限り抑制されることが望ましい。
【0005】
本発明は、上述した状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、使用時における異常変形を抑制することでシール性に優れるパッキン、の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るパッキンは、下記[1]~[]を特徴としている。
[1]
互いに嵌合されることになる外周側部材と内周側部材との間に挟まれ、前記外周側部材の内周面及び前記内周側部材の外周面の双方と当接することになる、環状のパッキンであって、
前記外周側部材と前記内周側部材との嵌合方向における一方側に位置する環状の第1シール部と、
前記第1シール部よりも前記嵌合方向の他方側に位置する環状の第2シール部と、
前記第1シール部の径方向外側の表面に連続するとともに前記第1シール部から前記一方側に向けて離れるにつれて径方向内側に向かうように傾斜する傾斜面を有し、前記第1シール部の前記一方側に位置する、環状の傾斜部と、
前記傾斜部の径方向内側の面に設けられる径方向外側に窪む第1窪み部と
前記第2シール部の前記他方側に位置する環状の端末部と、
前記端末部の径方向内側の面に設けられる径方向外側に窪む第2窪み部と、を備え、
弾性変形していない状態において、前記嵌合方向に延びる環状の基準外周面及び前記嵌合方向に延びる環状の基準内周面により画成され且つ肉厚が全域に亘って一定の基準筒形状に対して、外周面に、径方向外側に突出し且つその頂部に対応する部分が前記第1シール部を構成する環状の第1突起部、及び、径方向外側に突出し且つその頂部に対応する部分が前記第2シール部を構成する環状の第2突起部が設けられ、且つ、内周面に、径方向外側に窪む環状の前記第1窪み部及び環状の前記第2窪み部が設けられた、筒形状を有しており、
前記第2突起部よりも前記嵌合方向の他方側に位置する部分の全域が前記端末部を構成し、前記端末部の外周面の全域が前記基準外周面に含まれており、
前記第2窪み部は、前記端末部と前記第2突起部との境界部の径方向内側面に設けられている、
パッキンであること。

上記[]に記載のパッキンにおいて、
前記第2窪み部の窪み寸法は、前記第1窪み部の窪み寸法よりも小さい、
パッキンであること。
【0007】
上記[1]の構成のパッキンによれば、嵌合方向に並んだ第1シール部と第2シール部とが、外周側部材の内周面と内周側部材の外周面との間の隙間を、二重に封止することができる。更に、例えば、内周側部材にパッキンを取り付ける際、パッキンの傾斜部が外周側部材に向かい合うようにパッキンを設置すれば、外周側部材と内周側部材との嵌合時に傾斜部(特に、傾斜部の傾斜面)に外周側部材から大きな外力が及ぼされても、第1窪み部の窪みを小さくするように傾斜部自体が変形することで、そのような外力に対応できる。即ち、第1窪み部の働きにより、嵌合時にパッキンに及ぼされる外力を吸収することができる。これにより、例えば、シール性を高める目的でシール部の肉厚を大きくした場合であっても、嵌合時におけるパッキンの異常変形(即ち、噛み込みや座屈など)が生じることが抑制される。したがって、本構成のパッキンは、上述した従来のパッキンに比べ、使用時における異常変形が抑制されるとともにシール性に優れている。
【0008】
更に、上記[]の構成のパッキンによれば、第2シール部の嵌合方向の他方側にある端末部に第2窪み部が設けられることで、嵌合時にパッキンに及ぼされる嵌合方向の外力により、パッキンの端末部が上述した隙間の角に押し込まれたとき、端末部が第2窪み部を基点に折れ曲がるように変形し得る。発明者による実験および検討によれば、パッキンの端末部が上述したように折れ曲がることで、上述した外力に対する適度な反力を端末部が第2シール部などに及ぼすことで、パッキンの姿勢や位置が安定することが明らかになっている。したがって、本構成のパッキンは、従来のパッキンに比べ、シール性に更に優れる。
【0009】
上記[]の構成のパッキンによれば、第2窪み部の窪み寸法は、第1窪み部の窪み寸法よりも小さい。第2窪み部は、上述した折れ曲がりの起点になりさえすればよく、第1窪み部のように外力を吸収する必要はない。第2窪み部を第1窪み部よりも小さく設計することで、パッキンの形状を求められる機能に対して最適化できる。なお、「窪み寸法」とは、例えば、窪みの深さ、窪みの開口面積、及び、窪みが画成する中空部分の体積などとして定義され得る。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、使用時における異常変形を抑制することでシール性に優れるパッキンを提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態に係るパッキンが装着されたメスハウジングとオスハウジングとの嵌合が完了してパッキンが封止機能を発揮した状態を示す主要断面図である。
図2図2は、図1に示したパッキンを示し、図2(a)はその斜視図であり、図2(b)はその側面図である。
図3図3(a)は、メスハウジングとオスハウジングとの嵌合が途中の状態(パッキンが封止機能を発揮していない状態)における図1のA部の拡大図に対応する図であり、図3(b)は、図1のA部(パッキンが封止機能を発揮した状態)の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るパッキン30について説明する。図1に示す例では、パッキン30が装着されたメスハウジング10が、オスハウジング20と嵌合することで、パッキン30が封止機能を発揮している。
【0014】
以下、説明の便宜上、図1に示すように、「前後方向」、「上下方向」、「上」及び「下」を定義し、図1の紙面奥行方向を「幅方向」と定義する。「前後方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向は、メスハウジング10及びオスハウジング20の嵌合方向と一致している。メスハウジング10及びオスハウジング20の各々に関し、嵌合方向正面側(相手側ハウジングに近づく側)を「前側」と呼び、嵌合方向解除側(相手側ハウジングから遠ざかる側)を「後側」と呼ぶ。具体的には、図1において、メスハウジング10に関して、左方向及び右方向がそれぞれ前側及び後側であり、オスハウジング20に関しては、右方向及び左方向がそれぞれ前側及び後側である。
【0015】
まず、メスハウジング10について説明する。メスハウジング10は、樹脂成形体であり、図1に示すように、前方に開口し且つ後方に窪む嵌合凹部11を有している。嵌合凹部11には、オスハウジング20の後述するフード部21が挿入されることになる。嵌合凹部11の内部には、嵌合凹部11の底面(後端面)を画成する底壁12から前方に向けて突出して前後方向に延びる端子収容部13が設けられている。端子収容部13の外周は、前後方向からみて、幅方向に長い長孔状の形状を有している。
【0016】
端子収容部13の内部には、前後方向に延びる複数の端子収容孔(図示省略)が、幅方向に並ぶように形成されている。各端子収容室には、後側から、メス端子(図示省略)が挿入されて収容されている。
【0017】
メスハウジング10の上部には、嵌合凹部11に面するように、底壁12から前方に延びる片持ち梁状のロックアーム14が形成されている。ロックアーム14は、上下方向に弾性変形可能となっている。ロックアーム14の先端部(前端部)には、上下方向に貫通する係止孔15が形成されている。係止孔15には、メスハウジング10及びオスハウジング20の嵌合時、オスハウジング20の後述するロック突起24が係止されることになる。
【0018】
次いで、オスハウジング20について説明する。オスハウジング20は、樹脂成形体であり、図1に示すように、前方に開口し且つ前後方向に延びる筒状のフード部21を有している。フード部21の内部には、前方に開口し且つ後方に窪む嵌合凹部22が形成されている。嵌合凹部22には、メスハウジング10の端子収容部13が挿入されることになる。フード部21の環状の前端面21aは、全周に亘って、径方向内側に移動するにつれて後方に向かうように傾斜している。
【0019】
嵌合凹部22の内部には、複数のメス端子に対応して、オスハウジング20に幅方向に並ぶように収容された複数のオス端子(図示省略)が、複数の嵌合凹部22の底面(後端面)を画成する底壁23から前方に向けて突出して前後方向に延びている。フード部21の上部には、ロックアーム14に対応して、上方に突出するロック突起24が形成されている。
【0020】
次いで、パッキン30について説明する。パッキン30は、樹脂(ゴム)の成形体であり、図2(特に、図2(a)参照)に示すように、メスハウジング10の端子収容部13の外周形状に対応して、長孔状の環状形状を有している。パッキン30は、図1に示すように、メスハウジング10の前側から端子収容部13の外周に挿入されて、端子収容部13の外周面と底壁12の前端面とが交差する隅部に係止される。パッキン30の詳細形状については後に詳述する。
【0021】
パッキン30が装着されたメスハウジング10には、オスハウジング20が嵌合される。メスハウジング10とオスハウジング20とを嵌合させるためには、まず、両ハウジング10,20を、前端部同士が前後方向に向かい合うように配置する。次いで、端子収容部13が嵌合凹部22に挿入され、且つ、フード部21が嵌合凹部11に挿入され、且つ、フード部21と端子収容部13との間の環状隙間にパッキン30が挟まれるように、ロック突起24がロックアーム14の係止孔15に係止されるまで、両ハウジング10,20を前後方向に互いに近づける。
【0022】
ロック突起24がロックアーム14の係止孔15に係止されると、メスハウジング10及びオスハウジング20の嵌合が完了する(図1参照)。嵌合完了状態では、ロック突起24と係止孔15との係止によって、メスハウジング10及びオスハウジング20の分離が防止される。
【0023】
嵌合完了状態では、パッキン30の後述する第1シール部33及び第2シール部34が、端子収容部13及びフード部21の間で径方向に押し潰されて、端子収容部13の外周面及びフード部21の内周面の双方と押圧接触している。この結果、パッキン30は、端子収容部13の外周面とフード部21の内周面との間の環状隙間を液密的に封止している。
【0024】
次いで、パッキン30の詳細形状について説明する。パッキン30は、図2(b)及び図3(a)に示すように、弾性変形していない状態において、前後方向に延びる環状の基準外周面30a及び前後方向に延びる環状の基準内周面30bにより画成され且つ肉厚が全域に亘って一定の基準筒形状に対して、外周面に、径方向外側に突出する環状の第1突起部31及び環状の第2突起部32が設けられ、且つ、内周面に、径方向外側に窪む環状の第1窪み部37、環状の第3窪み部38及び環状の第2窪み部41が設けられた、筒形状を有している。
【0025】
第1突起部31は、パッキン30の前側領域に設けられ、第2突起部32は、第1突起部31の後側にて第1突起部31と前後方向に並ぶように設けられている。パッキン30の前後方向における第1突起部31の頂部に対応する部分が、本発明の第1シール部33を構成し、パッキン30の前後方向における第2突起部32の頂部に対応する部分が、本発明の第2シール部34を構成している。第1シール部33及び第2シール部34の肉厚(径方向の長さ)は、同等であり、且つ、パッキン30の前後方向における他の部分の肉厚より大きい。
【0026】
第1突起部31の外周面における第1シール部33より前側の部分は、本発明の傾斜面35を構成している。傾斜面35は、第1シール部33の外周面に連続するとともに第1シール部33から前側に向けて離れるにつれて径方向内側に向かうように傾斜している。パッキン30の前後方向における傾斜面35に対応する部分は、本発明の環状の傾斜部36を構成している。
【0027】
第1窪み部37は、傾斜部36の内周面に設けられている。即ち、第1窪み部37は、第1シール部33より前側に位置している。第3窪み部38は、パッキン30の前後方向における第1シール部33と第2シール部34との間に対応する部分の内周面に設けられている。よって、第3窪み部38は、第1シール部33より後側且つ第2シール部34より前側に位置している。
【0028】
パッキン30の前後方向における第2突起部32より後側の後端部は、本発明の端末部39を構成している。端末部39の外周面の全域は、基準外周面30aとなっている。第2窪み部41は、端末部39における第2突起部32との境界部の近傍の内周面に設けられている。第2窪み部41の窪み寸法は、第1窪み部37の窪み寸法より小さい。「窪み寸法」とは、例えば、窪みの深さ、窪みの開口面積、及び、窪みが画成する中空部分の体積の何れか一つとして定義される。
【0029】
以上説明した形状を有するパッキン30は、本例では、図3(a)に示すように、パッキン30の後端面(即ち、端末部39の後端面)が、端子収容部13の外周面と底壁12の前端面とが交差する隅部に係止されるように、メスハウジング10の端子収容部13の外周に装着される。
【0030】
パッキン30が装着されたメスハウジング10へのオスハウジング20の嵌合の進行に伴い、まず、オスハウジング20のフード部21の環状の前端面21aが、パッキン30の傾斜面35に当接する。以降、前端面21aが傾斜面35を押圧することで、傾斜部36に前端面21aから大きな外力が及ぼされる。このとき、第1窪み部37の窪みを小さくするように傾斜部36自体が径方向内側に押し潰されるように変形し、これに伴い、第1シール部33も径方向内側に押し潰されるように変形する(図3(b)参照)。このような第1窪み部37の働きにより、傾斜部36が前端面21aから受ける大きな外力が効果的に吸収されて、フード部21の前端部が、第1シール部33を滑らかに乗り越えることができる。この結果、フード部21の前端部が第1シール部33を乗り越える際において、パッキン30の異常変形(即ち、噛み込みや座屈など)が生じることが抑制される。
【0031】
フード部21の前端部が第1シール部33を乗り越えた後、フード部21の前端面21aが、第2突起部32の外周面における第2シール部34より前側の部分に当接する。前端面21aがこの部分を押圧することで、第2突起部32に前端面21aから大きな外力が及ぼされる。このとき、第3窪み部38の窪みを小さくするように第2突起部32自体が径方向内側に押し潰されるように変形し、これに伴い、第2シール部34も径方向内側に押し潰されるように変形する(図3(b)参照)。このような第3窪み部38の働きにより、フード部21の前端部が、第2シール部34も滑らかに乗り越えることができる。この結果、フード部21の前端部が第2シール部34を乗り越える際においても、パッキン30の異常変形(即ち、噛み込みや座屈など)が生じることが抑制される。
【0032】
以上のようにフード部21の前端部が第1シール部33及び第2シール部34を乗り越えた段階では、図3(b)に示すように、フード部21の内周面とパッキン30の外周面との間の押圧接触領域の面積が大きいことに起因して、フード部21の内周面とパッキン30の外周面との間の擦動摩擦力が大きくなっている。このため、パッキン30の端末部39は、この擦動摩擦力に起因する後向きの大きな外力を受けて、底壁12の前端面に押し付けられる。
【0033】
このように底壁12に押し付けられた端末部39は、第2窪み部41を基点にして径方向内向きに折れ曲がるように変形する(図3(b)参照)。発明者による実験および検討によれば、パッキン30の端末部39がこのように折れ曲がることで、上述した後向きの外力に対する適度な前向きの反力を端末部39が第2シール部34などに及ぼすことで、パッキン30の姿勢や位置が安定することが明らかになっている。
【0034】
このように端末部39が折れ曲がる段階にて、ロック突起24がロックアーム14の係止孔15に係止されることで、メスハウジング10及びオスハウジング20の嵌合が完了する。嵌合完了状態では、図3(b)に示すように、パッキン30の異常変形(即ち、噛み込みや座屈など)が生じることなく、パッキン30の第1シール部33及び第2シール部34が、端子収容部13及びフード部21の間で径方向に押し潰されて、端子収容部13の外周面及びフード部21の内周面の双方と押圧接触している。この結果、パッキン30は、端子収容部13の外周面とフード部21の内周面との間の環状隙間を液密的に確実に封止している。
【0035】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係るパッキン30によれば、嵌合方向(前後方向)に並んだ第1シール部33と第2シール部34とが、フード部21の内周面と端子収容部13の外周面との間の隙間を、二重に封止することができる。更に、メスハウジング10とオスハウジング20との嵌合時に傾斜部36(特に、傾斜部36の傾斜面35)にフード部21から大きな外力が及ぼされても、第1窪み部37の窪みを小さくするように傾斜部36自体が変形することで、そのような外力に対応できる。即ち、第1窪み部37の働きにより、嵌合時にパッキン30に及ぼされる外力を吸収することができる。これにより、例えば、シール性を高める目的で第1、第2シール部33,34の肉厚を大きくした場合であっても、嵌合時におけるパッキン30の異常変形(即ち、噛み込みや座屈など)が生じることが抑制される。したがって、本実施形態に係るパッキン30は、上述した従来のパッキンに比べ、使用時における異常変形が抑制されるとともにシール性に優れている。
【0036】
更に、本実施形態に係るパッキン30によれば、第2シール部34の後側にある端末部39に第2窪み部41が設けられることで、嵌合時にパッキン30に及ぼされる嵌合方向(後向き)の外力により、パッキン30の端末部39が上述した隙間の角(底壁12の前端面)に押し込まれたとき、端末部39が第2窪み部41を基点に折れ曲がるように変形し得る。発明者による実験および検討によれば、パッキン30の端末部39が上述したように折れ曲がることで、上述した外力に対する適度な反力を端末部39が第2シール部34などに及ぼすことで、パッキン30の姿勢や位置が安定することが明らかになっている。したがって、本実施形態に係るパッキン30は、従来のパッキンに比べ、シール性に更に優れる。
【0037】
更に、本実施形態に係るパッキン30によれば、第2窪み部41の窪み寸法は、第1窪み部37の窪み寸法よりも小さい。第2窪み部41は、上述した折れ曲がりの起点になりさえすればよく、第1窪み部37のように外力を吸収する必要はない。第2窪み部41を第1窪み部37よりも小さく設計することで、パッキン30の形状を求められる機能に対して最適化できる。
【0038】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0039】
例えば、上記実施形態では、パッキン30の端末部39の内周面に第2窪み部41が設けられている。これに対し、このような第2窪み部41が設けられていなくてもよい。また、上記実施形態では、第2窪み部41の窪み寸法が第1窪み部37の窪み寸法よりも小さい。これに対し、第2窪み部41の窪み寸法が第1窪み部37の窪み寸法より大きくてもよい。
【0040】
更に、上記実施形態では、パッキン30の前後方向における第1シール部33と第2シール部34との間に対応する部分の内周面に第3窪み部38が設けられている。これに対し、このような第3窪み部38が設けられていなくてもよい。
【0041】
ここで、上述した本発明に係るパッキン30の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
互いに嵌合されることになる外周側部材(21)と内周側部材(13)との間に挟まれ、前記外周側部材(21)の内周面及び前記内周側部材(13)の外周面の双方と当接することになる、環状のパッキン(30)であって、
前記外周側部材(21)と前記内周側部材(13)との嵌合方向における一方側に位置する環状の第1シール部(33)と、
前記第1シール部(33)よりも前記嵌合方向の他方側に位置する環状の第2シール部(34)と、
前記第1シール部(33)の径方向外側の表面に連続するとともに前記第1シール部(33)から前記一方側に向けて離れるにつれて径方向内側に向かうように傾斜する傾斜面(35)を有し、前記第1シール部(33)の前記一方側に位置する、環状の傾斜部(36)と、
前記傾斜部(36)の径方向内側の面に設けられる径方向外側に窪む第1窪み部(37)と、を備える、
パッキン(30)。
[2]
上記[1]に記載のパッキン(30)であって、
前記第2シール部(34)の前記他方側に位置する環状の端末部(39)と、
前記端末部(39)の径方向内側の面に設けられる径方向外側に窪む第2窪み部(41)と、を更に備える、
パッキン(30)。
[3]
上記[2]に記載のパッキン(30)において、
前記第2窪み部(41)の窪み寸法は、前記第1窪み部(37)の窪み寸法よりも小さい、
パッキン(30)。
【符号の説明】
【0042】
13 端子収容部(内周側部材)
21 フード部(外周側部材)
30 パッキン
33 第1シール部
34 第2シール部
35 傾斜面
36 傾斜部
37 第1窪み部
39 端末部
41 第2窪み部
図1
図2
図3